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JP4691684B2 - 海水を電気分解して得られる弱アルカリ水溶液からなる殺菌剤および海水に殺菌作用を付与する方法。 - Google Patents

海水を電気分解して得られる弱アルカリ水溶液からなる殺菌剤および海水に殺菌作用を付与する方法。 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、海水を原料として電気分解装置で弱電気分解し、その陰極側から得られる殺菌剤および海水に殺菌作用を付与する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
海水には塩化ナトリウム以外にマグネシウム、カリウム、ケイ素などが多く含まれているが、その他に人体に必須な栄養素である微量の元素をバランスよく含んでいると言われている。そしてこのような海水の持つミネラル分を利用して健康増進液の検討がなされている。例えば、特許第2580428号には、海水を煮詰めて濃縮し、その濃縮液を冷却後、濃縮液から結晶分を除去し、この繰り返しを、濃縮液の体積が元の体積の1000分の1以下に濃縮するまで続けることにより得られることを特徴とする健康増進液およびその製造法について記載されており、この溶液数滴を飲料水に加えることにより糖尿病、アレルギー性疾患、心筋梗塞などの現代病の予防に有効とされている。
【0003】
ところで、海水には表層水と区別して海洋深層水と呼ばれているものがあり、この海洋深層水とは海面下200メートルまたはそれより深い所の海水を指す。海洋汚染が進んでいる現在において表層水は飲料用としては適さないが、海洋深層水は表層水に比べて生菌数が少なく、しかも、病原生物はほとんど含まれていないため、飲料に採用した場合、安全性が極めて高いとされている(特公平7-34728号)。
【0004】
一方、水に塩化ナトリウムなどの電解質を加え、二槽式の電気分解装置で電気分解し、その陽極側から得られる強酸性酸化水(pH2.4以上2.7以下で、酸化還元電位が1000mV以上)と陰極側から得られるアルカリ還元水が知られている。強酸性酸化水の用途としては、その酸化力と酸性による殺菌作用を利用して医療用器具の消毒殺菌および食品の殺菌消毒に利用されている。アルカリ還元水については、胃腸内の異常発酵、慢性下痢、消化不良、制酸、胃酸過多などの胃腸疾患に対する効能があるとされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
海水を二槽式の電気分解装置で電気分解して陽極側から得られる酸性酸化水については、次亜塩素酸ソーダの製造、あるいは上述の酸性水と同様に殺菌・消毒に利用されている。しかし、海水を同装置で電気分解し、その陰極側から得られるアルカリ還元水についての利用法および薬理作用については未知の部分が多く、その薬理作用の解明および利用法の開発が望まれている。
【0006】
そのような状況下、本発明者らは、海洋深層水を電気分解し、陰極側から採取した溶液から製造されるアルカリ性のミネラル水の機能について種々検討した結果、pHが7より大きく10以下の弱アルカリ水溶液が殺菌作用を有することを見出した。さらに、弱電気分解による殺菌作用の付与は、海洋深層水のみでなく、表層水についても同様に行うことができること並びに海水を弱電気分解して製造されるpHが7より大きく10以下の弱アルカリ水溶液に強い殺菌作用のあることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】
以下に本発明の海水を弱電気分解して製造される殺菌剤および海水に殺菌作用を付与する方法について詳細に説明する。
【0008】
本発明で使用される海洋深層水は、海面下200メートルまたはそれより深い所から採取される海水であれば、採取地を限定されないが、例えば、日本近海では、富山湾、高知県の室戸岬沖、静岡県の駿河湾、沖縄県の久米島など、世界では、ノルウェー沖、ハワイ沖などから採取されるものが挙げられる。好ましい海洋深層水としては、富山湾から採取されたものが挙げられる。
また、本発明に使用される海洋表層水としては、海面下200メートルまたはそれより浅い所から採取される海水であれば、採取地を限定されないが、例えば、日本近海では、富山湾から採取されるものが挙げられる。
また、上記の海洋深層水または海洋表層水を凍らせて、海洋深層水氷または海洋表層氷としたものを溶かした溶液を使用してもよい。
【0009】
本発明で使用される電気分解装置としては、水を電気分解するために使用するものであれば限定されないが、例えば、隔膜で仕切られた二槽式、直流電圧をフリップ・フロップ回路で切り替えて交流荷電する三極式(特開平6-254567号)、また、二槽式の電気分解装置中で、貯水槽に給水して一定時間電解するタイプ、水道水などから連続的に水を供給するタイプなどが挙げられる。好ましい電気分解装置として、例えば、陽極としては、フェライト電極、白金メッキチタニウム電極、チタニウム白金焼成電極など、陰極としては、ステンレス電極、白金メッキチタニウム電極、チタニウム白金焼成電極など、また、隔膜としては、樹脂膜、イオン交換膜などから構成されている二槽貯水式の電気分解装置が挙げられる。
【0010】
本発明の殺菌剤を製造するには、例えば、二槽貯水式などの電気分解装置の陽極・陰極それぞれの供給槽に海洋表層水または海洋深層水を入れ、装置で定められた時間、例えば、0.01〜2.5Aの直流を1〜60分間(電気量として1Lあたり10クーロン〜600クーロン以下)通電し、電気分解終了後、陽極側または陰極側から溶液を採取すればよい。また、本発明における海水の弱電気分解とは、海水に700〜1200クーロンの電気量を流す電気分解である。
【0011】
このようにして製造したpHが7より大きく10以下の弱アルカリ水溶液は、そのまま抗菌剤して使用することができる。この弱アルカリ水溶液の好ましいものとしては、pHが8〜10、酸化還元電位が−40〜−750mVのものが挙げられ、特に、海洋深層水を原料として製造されるものが好ましい。
但し、上記弱アルカリ水溶液のpHは製造直後のものである。
また、海水を弱電気分解して得られる水溶液として好ましいものは、上記の陰極側から得られるものの他、陽極側から得られるpHが4以上で7より小さい弱酸性水溶液が挙げられ、好ましくは、pHが4〜6.5、酸化還元電位が+900〜+1100mVのものが挙げられる。
【0012】
【実施例】
次に、本発明を実施例および製造例により説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0013】
<殺菌作用1>
ミューラーヒントン寒天平板上で37℃、一夜培養した黄色ブドウ状球菌 FDA209Pおよび大腸菌NIHJの菌体を滅菌綿棒でかきとり、滅菌生理食塩液に懸濁して、0.5 McFarland相当(108CFU/mL)の菌液とした。この菌液0.1mLを9.9mLの製造例2の弱アルカリ水溶液および深層水に加え、37℃でインキュベートした。なお、対照として滅菌生理食塩液を用いた。経時的に一定量をサンプリングし、ミューラーヒントン寒天を用いた平板塗抹法で生菌数を測定した。
その結果を表1および表2に示す。なお、表中における時間以外の数値は、LogCFU/mLを示す
【0014】
【表1】
Figure 0004691684
【0015】
【表2】
Figure 0004691684
【0016】
<殺菌作用2>
実施例5、実施例6および参考例で製造した、弱電解海洋表層水、弱電解海洋深層水および48%(W/V)弱電解食塩水について、試験菌として、黄色ブドウ状球菌 FDA209P、大腸菌NIHJおよび緑膿菌IFO3445を使用し、前記の殺菌作用1と同様方法で測定し、0および5分後のLogCFU/mLを求めた。その結果を表3〜表5に示す。
【0017】
【表3】
Figure 0004691684
【0018】
【表4】
Figure 0004691684
【0019】
【表5】
Figure 0004691684
【0020】
次に、本発明の海水を電気分解して得られるpHが7より大きく10以下の弱アルカリ水溶液を製造例により説明する。
【0021】
製造例1
電流量をコントロール出来るように一部を改造した二槽式の活性カルシウムイオン水生成装置(トリムイオン TI-200;株式会社日本トリム製)の陽極、陰極側に海洋深層水を2Lずつ入れ、室温で、0.24A、60分間(電気量:871クーロン)電気分解し、陰極側より水溶液を得た。得られた水溶液のpHは、8.82、酸化還元電位は、-150mVであった。
【0022】
製造例2
製造例1で使用した装置を使用し、陽極、陰極側に海洋深層水を2Lずつ入れ、室温で、0.5A、25分間(電気量:750クーロン)電気分解し、陰極側より水溶液を得た。得られた水溶液のpHは、8.84、酸化還元電位は、-361mVであった。
【0023】
製造例3
製造例1で使用した装置を使用し、陽極、陰極側に海洋深層水を2Lずつ入れ、室温で、0.553A、35分間(電気量:1161クーロン)電気分解し、陰極側より水溶液を得た。得られた水溶液のpHは、9.20、酸化還元電位は、-565mVであった。
【0024】
製造例4
二槽式の超酸化水生成器(スーパーオキシードラボ JED-020;葵エンジニアリング製)の陽極、陰極側に海洋深層水を2Lずつ入れ、室温で、2.21A、7分間(電気量:928クーロン)電気分解し、陰極側より水溶液を得た。得られた水溶液のpHは、9.93、酸化還元電位は、−732 mVであった。
【0025】
製造例5
製造例1で使用した装置を使用し、陽極、陰極側に海洋深層水を2Lずつ入れ、室温で、0.5A、25分間(電気量:750クーロン)電気分解し、陰極側よりpH8.97、酸化還元電位-662mVの水溶液、また陽極側からはpH4.56、酸化還元電位1064mVの水溶液を得た。
【0026】
製造例6
製造例1で使用した装置を使用し、陰極、陽極側に海洋表層水を2Lずつ入れ、室温で、0.5A、25分間(電気量:750クーロン)電気分解し、陰極側よりpH9.11、酸化還元電位-691mVの水溶液、また陽極側からはpH4.16、酸化還元電位1073mVの水溶液を得た。
【0027】
参考例
製造例1と同様の装置を使用し、陰極、陽極側に3.48%(w/v)食塩水(蒸留水に特級試薬の食塩使用)を2Lずつ入れ、室温で0.1A、5分間電気分解(電気量:30クーロン)し、陰極側よりpH9.63、酸化還元電位60mVの水溶液、また陽極側からはpH4.10、酸化還元電位1030mVの水溶液を得た。
【0028】
【発明の効果】
以上より、海洋深層水および海洋表層水を電気分解し、陰極側より採取して得られるpHが7より大きく10以下である弱アルカリ水溶液は、優れた抗菌作用を示し、抗菌剤、鮮度保持剤として非常に有用である。
また、海洋深層水および海洋表層水を電気分解し、陰極側より採取して得られるpHが7より大きく10以下である弱アルカリ水溶液は、タンパク質の変性を起こすことがないため、魚類の鮮度保持剤として好ましいものである。
また、海水を弱電解することで、海水に強い抗菌作用を付与する方法は、船上等で簡便な装置により実施することができ、有用な方法である。

Claims (4)

  1. 海水を電気分解し、その陰極側から採取されるpHが7より大きく10以下の弱アルカリ水溶液からなる殺菌剤。
  2. 海水が海洋深層水である請求項2記載の殺菌剤。
  3. 海水を弱電気分解し、その陰極側からpHが7より大きく10以下の弱アルカリ水溶液を製造することを特徴とする海水に殺菌作用を付与する方法。
  4. 海水が海洋深層水である請求項3に記載の海水に殺菌作用を付与する方法。
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