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JP4690719B2 - 車両用補強部材 - Google Patents

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本発明は、車体の離隔した部位を連結する車両用補強部材に関する。
自動車等の車両においては、車両走行時における車体パネルの変形、各部位の相対的な変位等を抑制するために車両用補強部材が利用される。この種の補強部材としては、車体パネル自体の剛性を向上させる樹脂製のシート状の補強部材、車体パネルの裏面側に溶着される金属製のパネル状の補強部材、車体の離間した2部位を連結する金属製の補強部材等が公知である。
車体の離間した2部位を連結するものとして、略前後に延びる左右一対のサイドメンバを連結する補強部材が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この補強部材では可撓性の樹脂を介在させて各サイドメンバを連結し、車体の捻り剛性を向上させている。
独国特許出願公開第10247492号明細書
ところで、車体を構成する多数のパネル間には、その接続部分で少なからず「遊び」が存在する。すなわち、サスペンションからの入力により車体が捻られたり突き上げられたりすると、「遊び」がなくなるまで車体の各パネルが移動してから、車体の構造体でサスペンションからの入力を受け止めることとなる。この「遊び」による各パネルの移動は、サスペンションの入力による構造体の変位に比べれば小さなものであるが、入力に対して瞬間的に抗することができないために操縦安定性及び乗り心地が損なわれるという問題点がある。従って、各パネル間の「遊び」を解消しない限り、前記車両用補強部材を車体に設置したとしても、操縦安定性及び乗り心地の向上に限界がある。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両の操縦安定性及び乗り心地を飛躍的に向上させることのできる車両用補強部材を提供することにある。
前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、車体のフロアパネル上であって当該フロアパネルに形成されたフロアトンネル部を挟んで離隔した部位に固定される2つの固定部と、各固定部と個々に連結される二つのバーを、前記各固定部が接離可能となるように連結して構成された補強連結部と、前記二つのバーが離隔する方向に押圧する付勢機構と、前記二つのバーの間に設けられ、一方のバーに対する他方のバーの接離移動に抵抗を付与する減衰機構と、を備え、前記補強連結部が、車体のフロアパネルに形成された前記フロアトンネル部を跨ぐように該フロアパネルに架設されることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、付勢機構により車体のフロアトンネル部を挟んで離隔した部位に付勢力が加わって、車体を構成する各パネル間に予圧が加わった状態となる。そして、この予圧により車体の各パネルが移動して、各パネル間の「遊び」が軽減された状態となる。これにより、車両走行時における路面からの入力に対する車体のレスポンスが向上し、車両の操縦安定性及び乗り心地を飛躍的に向上させることができる。
さらに、補強連結部が、車体のフロアパネルに形成されたフロアトンネル部を跨ぐように該フロアパネルに架設されることにより、車両走行時におけるフロアパネルのフロアトンネル部の変形を抑制することができる。すなわち、フロアパネルのフロアトンネル部開口は、パネルに圧縮、引張等の力が作用した際に大きく変位するところ、このフロアトンネル部の変形が抑制されるのでフロアパネルの剛性を効果的に向上させることができる。
そして、フロアパネルは左右ピラー部、ルーフパネル等とともに車体の環状構造の一部をなすことから、フロアパネルの変形を抑制することにより車体の捻り剛性が飛躍的に向上することとなる。
さらに、補強連結部の伸縮動作が減衰されるようにしたので、車両走行時に路面からサスペンションへの振動が車体に伝達して補強連結部が伸縮する際に、振動の減衰作用を得ることができる。従って、路面からサスペンションを介して車体に伝達される振動を効果的に抑制することができ、さらに車両の操縦安定性及び乗り心地を向上させることができる。
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の車両用補強部材において、前記付勢機構はガスダンパーを含むことを特徴とする。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の作用に加え、各固定部にガスダンパーを介在させて付勢機構を構成することができる。また、ガスダンパーが伸縮自在であることから、連結補強部にガスダンパーを組み込むことにより、連結補強部に伸縮機構を別途設ける必要がなくなり、実用に際して極めて有利である。
請求項3に記載の発明では、請求項1又は2記載の車両用補強部材において、少なくとも一方の前記固定部に、前記補強連結部の前記車体に対する回動を許容する回動許容機構を設けたことを特徴とする。
請求項4に記載の発明によれば、請求項1から3のいずれか一項の作用に加え、各固定部の少なくとも一方に回動許容機構を設け、車体に対する回動が許容されるようにしたので、各固定部が固定される車体の2つの部位間の距離を変化させることなく、車体の当該各部位同士の角度変化を許容させることができる。
これにより、車体が過度に拘束されるようなことはなく、車体の当該各部位付近への応力集中を回避しつつ、車体全体としての剛性を確保することができ、実用に際して極めて有利である。
このように、本発明によれば、車両の操縦安定性及び乗り心地を飛躍的に向上させることができる。
図1から図4は本発明の一実施形態を示すもので、図1はフロアパネルに車両用補強部材が取り付けられた車体構造の概略斜視説明図、図2はフロアパネルに車両用補強部材が取り付けられた車体構造の概略正面断面図、図3は車両用補強部材の上面図、図4は車両用補強部材の一部断面図である。
図1に示すように、この車両用補強部材1は、車体のフロアパネル101に形成され前後に延びるフロアトンネル部102を補強するものである。フロアトンネル部102は、正面視にて断面略逆ハット状に形成され、車体前部の原動機の駆動力を後輪側へ伝達するプロペラシャフト103が配される。
車両用補強部材1は、凹部としてのフロアトンネル部102を跨ぐようにフロアパネル101に架設されるバー本体2と、連結補強部としてのバー本体2の両端に形成された2つの固定部3と、を有する。すなわち、各固定部3は、それぞれフロアパネル101の下面におけるフロアトンネル部102を挟んで離隔した部位に固定される。本実施形態においては、フロアパネル101の下面には、各固定部3が固定される左右一対のブラケット104が取り付けられる。
図2に示すように、各ブラケット104は、正面視で断面略逆ハット形状に形成され、複数のボルト105によりフロアパネル101に締結固定される。また、各ブラケット104は、下方に突出するピン部材106が形成され、このピン部材106を利用して車両用補強部材1が固定される。本実施形態においては、各固定部3には、ピン部材106を挿通する軸受3aが設けられる。これにより、バー本体2の車体に対する回動が許容される。
図3に示すように、バー本体2は、右側バー4と左側バー5とに分割構成され、伸縮可能なガスダンパーの機構を利用して軸方向に伸縮自在に構成されている。図4に示すように、本実施形態においては、右側バー4の左端に軸方向へ延びるシリンダ6が設けられ、左側バー5の右端に設けられたピストン7がシリンダ6の内周面と摺接する。シリンダ6内は密閉され、内周面と摺接しシリンダ6内を軸方向に仕切るフリーピストン8がピストン7の右側に配される。フリーピストン8の左側はオイルが充填されたオイル室9をなし、右側はガスが充填されたガス室10をなす。
この車両用補強部材1は、車体から取り外した状態で、バー本体2の長さが各ブラケット104間の距離より長くなるように、オイル室9及びガス室10内の圧力が調整される。そして、図1に示すように、車両用補強部材1が車体に取り付けられた状態で、バー本体2が短縮してガス室10が通常状態より圧縮され、ガス室10からフリーピストン8に圧力が加わり、この結果、バー本体2が伸張方向へ付勢されるようになっている。すなわち、シリンダ6、フリーピストン8等で付勢機構が構成され、付勢機構はガスにより伸張方向への付勢力が得られるガスダンパーを含んでいる。
また、ピストン7には、オイル室9の右側と左側を連通する複数の孔7aが形成される。これにより、バー本体2の伸縮動作によりピストン7がオイル室9内を軸方向へ移動すると、各孔7aをオイルが流通する際の抵抗により伸縮動作を減衰する減衰作用が得られるようになっている。すなわち、シリンダ6、ピストン7等で減衰機構が構成されている。
以上のように構成された車両用補強部材1では、付勢機構により車体の離隔した部位に付勢力が加わって、車体を構成する各パネル間に予圧が加わった状態となる。そして、この予圧により車体の各パネルが移動して、各パネル間の「遊び」が軽減された状態となる。これにより、車両走行時における路面からの入力に対する車体のレスポンスが向上し、車両の操縦安定性及び乗り心地を飛躍的に向上させることができる。
また、本実施形態の車両用補強部材1では、各固定部3にガスダンパーを介在させて付勢機構を構成し、このガスダンパーが伸縮自在であることから、バー本体2にガスダンパーを組み込むことにより、バー本体2に伸縮機構を別途設ける必要がなくなり、実用に際して極めて有利である。
また、本実施形態の車両用補強部材1では、車両走行時におけるフロアパネル101のフロアトンネル部102の変形を抑制することができる。すなわち、フロアパネル101の凹部開口は、パネルに圧縮、引張等の力が作用した際に大きく変位するところ、この凹部の変形が抑制されるのでフロアパネル101の剛性を効果的に向上させることができる。
そして、フロアパネル101は左右ピラー部、ルーフパネル等とともに車体の環状構造の一部をなすことから、フロアパネル101の変形を抑制することにより車体の捻り剛性が飛躍的に向上することとなる。
また、本実施形態の車両用補強部材1では、バー本体2の伸縮動作が減衰されるようにしたので、車両走行時に路面からサスペンションへの振動が車体に伝達して補強連結部が伸縮する際に、振動の減衰作用を得ることができる。従って、路面からサスペンションを介して車体に伝達される振動を効果的に抑制することができ、さらに車両の操縦安定性及び乗り心地を向上させることができる。
また、本実施形態の車両用補強部材1では、各固定部3に軸受3aを設け、フロアパネル101に対する回動が許容されるようにしたので、各固定部3が固定されるフロアパネル101の2つの部位間の距離を変化させることなく、フロアパネル101の当該各部位同士の角度変化を許容させることができる。
これにより、フロアパネル101が過度に拘束されるようなことはなく、フロアパネル101の当該各部位付近への応力集中を回避しつつ、車体全体としての剛性を確保することができ、実用に際して極めて有利である。
尚、前記実施形態においては、バー本体2がフロアパネル101のフロアトンネル部102を跨ぐものを示したが、例えば、フロアパネル101に下方へ突出して上方に凹に形成されるスペアタイヤ収納部など、他の凹部を跨ぐように配されたものであってもよい。また、車体のフロアパネル101に限らず、各固定部が車体における離隔した部位に固定されるものであれば、他の部位に取り付けられるものであってもよい。
また、前記実施形態においては、回動許容機構をフロアパネル101に固定されるブラケット104のピン部材106を挿通する軸受3aにより構成したものを示したが、例えば、ピロボールにより構成してもよい。また、2つの固定部3をフロアパネル101に対して回動自在としたものを示したが、一方の固定部3のみフロアパネル101に対して回動自在とすれば、各固定部3が固定されるフロアパネル101の2つの部位間の距離を変化させることなく、フロアパネル101の当該各部位同士の角度変化を許容させることができる。
また、前記実施形態においては、付勢機構がガス室10内に充填されたガスの圧力を利用してバー本体3を付勢するガスダンパーを含むものを示したが、付勢機構は、例えば、ばね、ゴム等の弾性体の弾性力を利用してバー本体2を付勢するものであってもよい。
また、オイル室9内のオイルの粘性抵抗を利用してバー本体2の伸縮動作を減衰するものを示したが、減衰機構は、例えば、摩擦板の組み合わせ等により伸縮動作を減衰するものであってもよい。尚、減衰機構を設けない構成とすることも可能である。
また、前記実施形態においては、補強連結部として棒状部材のバー本体2を用いたものを示したが、補強連結部の形状は棒状に限定されず、例えば、板状の部材であったり、屈曲した形状を呈するものであってもよい。また、固定部を車体に固結する構成としてもよいし、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
本発明の一実施形態を示すものでフロアパネルに車両用補強部材が取り付けられた車体構造の概略斜視説明図である。 フロアパネルに車両用補強部材が取り付けられた車体構造の概略正面断面図である。 車両用補強部材の上面図である。 車両用補強部材の一部断面図である。
符号の説明
1 車両用補強部材
2 バー本体
3 固定部
4 右側バー
5 左側バー
6 シリンダ
7 ピストン
8 フリーピストン
9 オイル室
10 ガス室
101 フロアパネル
102 フロアトンネル部

Claims (3)

  1. 車体のフロアパネル上であって当該フロアパネルに形成されたフロアトンネル部を挟んで離隔した部位に固定される2つの固定部と、
    各固定部と個々に連結される二つのバーを、前記各固定部が接離可能となるように連結して構成された補強連結部と、
    前記二つのバーが離隔する方向に押圧する付勢機構と、
    前記二つのバーの間に設けられ、一方のバーに対する他方のバーの接離移動に抵抗を付与する減衰機構と、
    を備え、
    前記補強連結部が、車体のフロアパネルに形成された前記フロアトンネル部を跨ぐように該フロアパネルに架設されることを特徴とする車両用補強部材。
  2. 前記付勢機構はガスダンパーを含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用補強部材。
  3. 少なくとも一方の前記固定部に、前記連結補強部の前記車体に対する回動を許容する回動許容機構を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用補強部材。
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