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JP4690506B2 - 伸縮性信号伝送ケーブル - Google Patents

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JP4690506B2 JP2010517634A JP2010517634A JP4690506B2 JP 4690506 B2 JP4690506 B2 JP 4690506B2 JP 2010517634 A JP2010517634 A JP 2010517634A JP 2010517634 A JP2010517634 A JP 2010517634A JP 4690506 B2 JP4690506 B2 JP 4690506B2
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Description

本発明は、伸縮性を有し、高速の信号伝送性に優れた伸縮性信号伝送ケーブルに関するものである。
信号伝送ケーブルには、主に、同軸ケーブル、ツイストペアケーブルおよびフレキシブルフラットケーブルがある。柔軟性や屈曲性にすぐれたケーブルとして、低誘電層にポリオレフイン樹脂を用いたフレキシブルフラットケーブル(特許文献1参照)やフレキシブルプリント基板を芯材に対してスパイラル状に巻き付けたフレキシブルフラットケーブル(特許文献2参照)が知られている。しかし、これらはいずれも屈曲には強いが、伸縮性を発現するものでは無い。
高速の信号伝送ケーブルを設計する場合、2本の導体線間の距離や、導体線周囲の誘電体が伝送性を左右することが知られている。このため、2本の導体線間の距離を一定に保ち樹脂などで固めることが常識となっており、独立した2本の導体線を別々に捲回し、伸縮性を発現させつつ、信号伝送させるという発想は皆無である。
一方、同軸ケーブルは一般に剛直で、所謂カールコードとして伸縮性を付与したものが知られているが、伸縮自在な芯材の周囲に捲回し、伸縮性を付与させたものは無い。
また、ツイストペアケーブルは2本の導体線が強固にツイストされており、伸縮性を付与したものは無い。
また、伸縮性を持つ電線として、例えば特許文献3には、カバーリング装置を用い、弾性長繊維などを芯部にし、その周囲に2本の導体線をS/Z(2方向)に捲回し、これを複数本束ねて1本にする方法が開示されている。当該特許文献によると、イヤホンコードや、USBの単体ケーブルとして使用できる旨開示されている。しかし、伝送特性については一切記載されていない。
伸縮自在な芯材に1方向のみに導体線を巻きつけると、捲回トルクが大きく残り、捻じれが生じる。このため、伸縮自在な芯材の周囲に2本の導体線を捲回する場合は、S/Z(2方向)に捲回することが一般的である。
信号伝送糸状体に関する特許文献6には、信号伝送用糸条を芯材の周囲に捲回する旨の記載があるが、銅平形線に代表される金属線を1本捲回したものであり、2本以上の導体線を捲回したものではない。また、伝送特性に関する記載は一切無く、本発明者らの知見によると、当該ケーブルは高速の信号伝送ができるものでは無い。
弾性支持体とワイヤーの接続方法について、弾性支持体にワイヤーを捲回する技術が特許文献7に開示されているが、これは接続部品に対する技術開示であり、ケーブルとして使用する技術開示ではなく、伸縮性と伝送性についての記載は一切無い。
ローターブレード用ケーブルに関する特許文献8には、弾性体へ導体線を捲回する旨の記載があるが、高い抗張力を有するものであり、伸縮性は無い。
最近、ロボットやウエアラブル電子機器の発展が著しく、カメラにより得た画像(動画)を瞬時に演算機(コンピューター)とやりとりさせること(すなわち高速の信号伝送)が求められるケースが増えている。
しかし、信号伝送ケーブルには伸縮性が無いため、屈曲部(例えばロボットの関節部)の配線長さは動作時の最大長さ以上が必要となる。このため、動作時にケーブルがたるみ、屈曲部に挟まったり、ひっかかったりし、ケーブルが断線したりコネクター接続部がはずれるという問題がある。
また、ウエアラブル電子機器においては、配線に伸縮性が無いため大きめのジャケットなどとして使用せざるを得ず、身体にフィットしたウエアラブル電子機器を作ることができない、着用感が悪いといった問題がある。
これらの問題を解決するために、形態変形追随性があり、高速の信号を伝送できる、長さが数cm〜数mのケーブルが求められている。
特開2008−47505号公報 特開2007−149346号公報 特開2002−313145号公報 特開2004−134313号公報 特開昭60−119013号公報 特許第3585465号公報 特開2005−347247号公報 米国特許出願公開第2007/264124号明細書
本発明の目的は、形態変形追随性があり、高速の信号を伝送できる、長さが数cm〜数mの伸縮性信号伝送ケーブルを提供することである。
本発明者等は、多彩な動きに追随して変形し、高速の信号伝送ができるケーブルにつき鋭意研究した結果、10%以上の伸縮性を有し、250MHzにおける伝送ロスが弛緩状態において10dB/m以下である伸縮性信号伝送ケーブルであって、10%以上の伸縮性を有する弾性円筒体および該弾性円筒体の周囲に同一方向に捲回されている少なくとも2本の導体線を含む導体部からなることを特徴とする伸縮信号伝送ケーブルが上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は下記の発明を提供する。
(1)10%以上の伸縮性を有し、250MHzにおける伝送ロスが弛緩状態において10dB/m以下である伸縮伝送ケーブルであって、10%以上の伸縮性を有する弾性円筒体および該弾性円筒体の周囲に同一方向に捲回されている少なくとも2本の導体線を含む導体部からなることを特徴とする伸縮性信号伝送ケーブル。
(2)導体部が、導体線の外側に導体線と逆方向に捲回されている絶縁性糸状体を含むことを特徴とする上記(1)に記載の伸縮性信号伝送ケーブル。
(3)導体部が、1本または複数本の導体線の外側と内側(弾性円筒体側)を交互に通って、導体線と逆方向に捲回されている絶縁性糸状体を含むことを特徴とする上記(1)に記載の伸縮性信号伝送ケーブル。
(4)導体線が並列に捲回され、近接する導体線の間隔のばらつきrが0≦r≦4d(dは弛緩時の近接する導体線の平均間隔)であり、伸張限界までの任意の伸張によって伸張時平均間隔d’が1/2d〜4dの範囲にあり、繰り返し伸縮によっても、この範囲を逸脱することがないことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の伸縮性信号伝送ケーブル。
(5)導体線の捲回径が0.05〜30mmであり、導体線が並列に捲回され、導体線の捲回ピッチが0.05〜50mmであり、近接する導体線の間隔が0.01〜20mmであることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の伸縮性信号伝送ケーブル。
(6)導体部の外周に絶縁繊維からなる外部被覆層をさらに有することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の伸縮性信号伝送ケーブル。
(7)導体部の外周にゴム弾性を持つ樹脂からなる外部被覆層をさらに有することを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の伸縮性信号伝送ケーブル。
(8)20%伸張荷重が5000cN未満であり、20%伸張回復率が50%以上であることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれか一項に記載の伸縮性信号伝送ケーブル。
(9)弾性円筒体を伸張する機能と、該弾性円筒体の周囲に複数の導体線または複数の導体線と少なくとも1本の絶縁性糸状体とを同一方向に捲回する機能と、少なくとも1本の絶縁性糸状体を前記方向と逆方向に捲回する機能とを有する装置により、弾性円筒体を伸張した状態で、該弾性円筒体の周囲に複数の導体線または複数の導体線と少なくとも1本の絶縁性糸状体とを同一方向に捲回し、さらに該導体線と逆方向に少なくとも1本の絶縁性糸条体を導体線の外側に捲回することを特徴とする上記(2)および(4)〜(8)のいずれか一項に記載の伸縮性信号伝送ケーブルの製造方法。
(10)弾性円筒体を伸張する機能と、該弾性円筒体の周囲に複数の導体線または複数の導体線と少なくとも1本の絶縁性糸状体とを同一方向に捲回する機能と、少なくとも1本の絶縁性糸状体を前記方向と逆方向に捲回する機能とを有する装置により、弾性円筒体を伸張した状態で、該弾性円筒体の周囲に複数の導体線または複数の導体線と少なくとも1本の絶縁性糸状体とを同一方向に捲回し、さらに該導体線と逆方向に1本または複数の導体線の外側と内側(弾性円筒体側)を交互に通って少なくとも1本の絶縁性糸条体を捲回することを特徴とする上記(3)および(4)〜(8)のいずれか一項に記載の伸縮性信号伝送ケーブルの製造方法。
本発明の伸縮性信号伝送ケーブルは、高速の信号を乱れず減衰せずに伝播でき、かつ伸縮性を有し、形態変形追随性があるので、ロボットやウエアラブル電子機器用の伝送ケーブルとして有用である。
本発明の伸縮性信号伝送ケーブルの弛緩時の模式図である。 本発明の伸縮性信号伝送ケーブルの伸張時の模式図である。 本発明の伸縮性信号伝送ケーブルの絶縁性糸状体の捲回方法の一例を示した図である。 本発明の伸縮性信号伝送ケーブルの絶縁性糸状体の捲回方法の別の一例を示した図である。 繰り返し伸縮性測定装置の模式図である。 差動特性インピーダンスの測定方法を説明する図である。
符号の説明
1 弾性円筒体
2 導体線
3 導体線
4 絶縁性糸状体
11 導体線
12 シグナルライン
13 シグナルライン
14 導体線
20 試料
21 チャック部
22 チャック部
23 ステンレス棒
30 SMAコネクター
31 シグナル端子
32 グランド端子
40 SMAコネクター
41 シグナル端子
42 グランド端子
aおよびa‘ 導体線のピッチ
dおよびd‘ 近接する導体線の間隔
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明の伸縮性信号伝送ケーブルにおいて、高周波信号が乱れず減衰せずに伝播するためには伸縮しても、シグナルラインとして用いる2本の導体線の間の距離が全長に亘って変化が少ないことが肝要である。また、伸縮性を発現させるためには、柔軟性の高い導体線を、伸縮性のある構造体と一体化することが必要である。本発明者等は、10%以上の伸縮性を有する弾性円筒体の周囲に少なくとも2本の導体線を同一方向に捲回することにより得られる信号伝送ケーブルがこれらの要求を満足することを見出した。
本発明の伸縮性信号伝送ケーブルは10%以上の伸縮性を発現する必要がある。好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上である。10%未満の場合、変形追随性に乏しく、上記目的を達成することができない。ここでいう伸縮性とは、所定の程度、例えば10%伸張した後、弛緩することによる回復率が50%以上であるものを言う。
本発明の伸縮性信号伝送ケーブルは、多関節ロボットや、身体装着の電子機器の配線として使用されるために、関節に相当する部分を経由する配線として使用することを目的としている。このため、長さは1mを目安とする。また、高速の信号伝送として、250MHzの高周波における伝送ロスが10dB/m以下である必要がある。本発明で言う伝送ロスとは、所謂ネットワークアナライザーにて、試料長1mのSパラメーター測定を行い、S21(S21:透過係数=透過波/入射波)を測定し、得られた値(単位:dB)の絶対値を言う。これ以上の場合は、伝送性が悪く高速伝送に適さない。好ましくは7dB/m以下、より好ましくは6dB/m以下、特に好ましくは5dB/m以下である。
本発明の伸縮性信号伝送ケーブルは、図1および2に示したように、10%以上の伸縮性を有する弾性円筒体(1)および該弾性円筒体の周囲に同一方向に捲回されている少なくとも2本の導体線(2および3)を含む導体部からなる。さらに、導体部の外周に絶縁性の外部被覆層を有することが好ましい(外部被覆層は図示されていない)。なお、導体線の少なくとも一部は弾性円筒体の表層内部に存在してもよい。
弾性円筒体は、弾性長繊維、弾性チューブまたはコイルバネ等から形成することができる。
また、弾性円筒体は内部に空隙を有していることが好ましい。空隙は、伸縮性を阻害せず、導体線の捲回径を大きくできるため、伸縮性を高める効果がある。空隙を形成する方法は、例えば、弾性長繊維の周囲に絶縁繊維を配置する方法、弾性長繊維または、弾性長繊維の周囲に絶縁繊維を配置した糸状体を編み組みする方法、弾性長繊維を発泡させる方法、弾性長繊維を中空にする方法、またはこれらを組み合わせた方法などがある。弾性チューブまたはコイルバネから形成した場合は当然中空になる。
弾性円筒体を形成するために用いる弾性長繊維は10%以上の伸縮性を有することが必要である。50%以上の伸縮性を有することが好ましい。伸縮性が50%未満の場合は、伸縮性能が乏しく、伸縮性信号伝送ケーブルを伸縮させる際の応力が大きくなる。100%以上の伸縮性を有する弾性長繊維を用いることがさらに好ましく、300%以上であることが特に好ましい。
本発明で用いる弾性長繊維は、上述した程度の伸縮性に富むものであればよく、ポリマーの種類は特に限定されない。例えば、ポリウレタン系弾性長繊維、ポリオレフィンン系弾性長繊維、ポリエステル系弾性長繊維、ポリアミド系弾性長繊維、天然ゴム系弾性長繊維、合成ゴム系弾性長繊維および天然ゴムと合成ゴムの複合ゴム系弾性長繊維等をあげることができる。
ポリウレタン系弾性長繊維は、伸びが大きく、耐久性にもすぐれるため本発明の弾性長繊維として最適である。
天然ゴム系長繊維は、断面積あたりの応力が他の弾性長繊維に対比して小さく、低応力で伸縮する伸縮性信号伝送ケーブルを得やすいという利点がある。しかし、劣化しやすいため、長期にわたり伸縮性を保持することが難しい。従って、短期の使用を目的とする用途に好適である。
合成ゴム系弾性長繊維は、耐久性にはすぐれるが、伸びの大きな物が得にくい。従って、あまり大きな伸びを要求しない用途に好適である。
弾性長繊維は、モノフィラメントでもマルチフィラメントでも良い。
弾性長繊維の直径は0.01〜20mmの範囲が好ましい。より好ましくは0.02〜10mmである。さらに好ましくは0.03〜5mmである。直径が0.01mm以下の場合、伸縮性が得られず、直系が20mmを超えると、伸張させるのに大きな力が必要となる。
弾性長繊維をあらかじめ、双糸もしくは多子撚りとしたもの、または、弾性長繊維を芯にしてその回りに別の弾性長繊維を捲回したものとすることで、弾性円筒体と導体部との一体化(伸縮した場合に導体部がずれないようにすること)を容易にすることもできる。
本発明において弾性円筒体を形成するために用いるコイルバネは、金属以外のコイルバネであっても、金属コイルバネであっても良い。金属以外のコイルバネは、伝送性に及ぼす影響が少ない。金属のコイルバネは高温下でも劣化せず、高温環境下で使用される用途に適する。コイル形状のバネは、コイリングマシーンの選定と選定したコイリングマシーンの条件設定で任意に設計できる。
コイルバネ単独では、その周囲に導体線を捲回できないため、あらかじめコイルバネの周囲に絶縁繊維の編み組み等を形成することで弾性円筒体を得ることができる。
コイル直径Cdと伸線(コイルを形成する線材のこと)直径Sdが24>Cd/Sd>4であることが好ましい。Cd/Sdが24以上の場合は、安定な形態のバネが得られず、変形しやすく好ましくない。好ましくはCd/Sdが、16以下である。一方Cd/Sdが4以下では、コイルを形成することが困難となると同時に、伸縮性が発現しにくい。好ましくは6以上である。
伸線の直径Sdは3mm以下であることが好ましい。3mm以上となると、バネが重くなり、伸縮応力もコイル直径も大きくなるため好ましくない。一方、伸線の直径が0.01mm以下となると、形成できるバネが弱すぎて、横から力が加わると変形しやすく、実用的ではない。
コイルのピッチ間隔は1/2Cd以下であることが望ましい。これ以上の間隔であってもコイル状のバネを形成することはできるが、コイル外周への絶縁繊維の編み組み等の形成が困難となる。さらに、伸縮性が低下するとともに、外力により変形しやすくなるので好ましくない。好ましくは1/10Cd以下である。
ピッチ間隔をほぼゼロとしたものは、伸縮性を最も高くすることができ、バネそのものがからまりにくく、巻き取ったバネを引き出しやすいという特徴があり、外力による変形にも強いという利点があり、好ましい。
コイル直径は0.02〜30mmの範囲が好ましい。より好ましくは0.05〜20mmであり、さらに好ましくは0.1〜10mmである。外径が0.02mm以下のコイルバネは製造が困難であり、30mmを越えると、導体線の捲回径が大きくなりすぎ、好ましくない。
コイルバネの材料は、公知の伸線から任意に選ぶことができる。線材の材料は、ピアノ線、硬鋼線、ステンレス鋼線、オイルテンパー線、燐青銅線、ベリウム銅線および洋白線などがある。耐食性および耐熱性に優れ、かつ入手しやすい点から、ステンレス鋼線が望ましい。
弾性チューブは、内部に空隙を有しており、そのままで弾性円筒体として用いることも、弾性チューブの外層に繊維層を形成し、弾性円筒体とすることもでききる。導体線と弾性チューブが直接接触すると、弾性チューブに傷が付きやすいため、弾性チューブの外層に繊維層を形成することが好ましい。
また、弾性チューブの中に導体線を埋め込むこともできる。例えば、ステンレス棒に導体線を捲回し、これをゴムラテックス中に浸漬または塗布した後、公知の方法(例えば、加硫処理、熱処理および乾燥処理等)を行った後、内部のステンレス棒を抜き去る等することにより、弾性チューブの中に導体線を埋め込むことができる。
弾性円筒体の伸縮性は10%以上必要であり、30%以上が好ましく、50%以上であるとさらに好ましい。伸縮性が30%未満と低い場合は、導体部および外部被覆層の被覆によって伸びが低下し伸縮性の低い伝送ケーブルになる場合がある。
弾性円筒体の20%伸長荷重は5000cN以下であることが好ましい。さらに好ましくは2000cN以下、特に好ましくは1000cN以下である。
弾性円筒体の直径は、30mm以下、好ましくは20mm以下、より好ましくは10mm以下である。直径が30mm以上となると、太く、重くなり、実用上好ましくない。
本発明で用いられる導体線は、導電性のよい物質からなる細線の集合線であることが好ましい。金属細線の集合線は、やわらかく、断線しにくいため、伸縮性信号伝送ケーブルの伸縮性や、耐久性の向上に寄与する。
信号線を構成する導体線として細線を単独で用いることもできるが、電気抵抗が大きくなると、伝送性が低下する。このため、細線を2本以上集合して1つの導体線として用いることが好ましい。集合本数の上限は特に無いが、柔軟性と、電気抵抗を勘案して任意に決めることができる。集合本数を増やすと生産性が低下するため、10000本以下が好ましい。より好ましくは1000本以下である。
導電性の良い物質とは比抵抗が1×10-4Ω・cm以下の電気伝導体を言う。特に好ましくは1×10-5Ω・cm以下の金属を言う。具体的な例としては、所謂銅(比抵抗が0.2×10-5Ω・cm)およびアルミ(比抵抗が0.3×10-5Ω・cm)などを挙げることができる。
銅線は、比較的安価で電気抵抗が低く細線化も容易で、最も好ましい。アルミニウム線は軽量であるから、銅線に続いて好ましい。銅線は軟銅線または錫銅合金線が一般的であるが、強力を高めた強力銅合金(例えば、無酸素銅に鉄、燐およびインジウム等を添加したもの)、錫、金、銀または白金などでメッキして酸化を防止したもの、電気信号の伝送特性を向上させるために金その他の元素で表面処理したものなどを用いることもできるが、これらに限定されるものではない。
導体線を構成する細線の単線直径は0.5mm以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.1mm以下であり、特に好ましくは0.05mm以下である。細線化することにより、柔軟性を高めることができる。さらに、高周波特有の表皮効果に対して、細線化により、表面積が高まり伝送性を高めることができる。あまり細すぎると加工時に断線し易いため、0.01mm以上が好ましい。
細線を集合させるには様々な方法が知られており、本発明においても公知のどのような方法で集合させてもよい。しかし、ストレートにひきそろえるだけでは捲回しづらいため、撚り線とすることが好ましい。また、可撓性を発揮するために、集合線を絶縁繊維で捲回したものを用いることもできる。
本発明で用いられる導体線は、細線各々または導体線として、絶縁されていることが好ましい。絶縁層の厚みや種類は伸縮性信号伝送ケーブルの用途により任意に設計される。
絶縁材は、絶縁性、伝送性および柔軟性を加味して選択される。絶縁材は、公知の絶縁材料から任意に選ぶことができる。
細線各々に絶縁被覆を行う絶縁材料としては、所謂エナメル被覆剤を用いることができる。例えばポリウレタン被覆剤、ポリウレタン−ナイロン被覆剤、ポリエステル被覆剤、ポリエステル−ナイロン被覆剤、ポリエステル−イミド被覆剤、及びポリエステルイミド・アミド被覆剤などを挙げることができる。
導体線として絶縁被覆を行う絶縁材としては、伝送性の観点からは、誘電率の低い素材が好ましく、フッ素系およびポリオレフィン系等の絶縁材が挙げられる。柔軟性の点からは、塩化ビニール系およびゴム系等の絶縁材が挙げられる。
空気を含んだ絶縁材を用いることもできる。空気を含んだ絶縁材を得るためには、上記絶縁材を発泡させたものを用いることもできる。空気は誘電率が低く、誘電率を下げる効果がある。
絶縁性の繊維の集合体により、導体線を覆うことにより、空気を含んだ絶縁層を形成することもできる。絶縁性の繊維は特に限定されるものでは無いが、安価で、強度が強く、取り扱い性に優れるものとして、ポリエステル繊維およびナイロン繊維が挙げられる。伝送性を高めるために、誘電率の低いフッ素繊維、ポリプロピレン繊維を用いることもできる。絹、綿およびレーヨンスフ系を用いることもできる。
水分の影響を受けにくくするために、撥水加工を施した繊維を用いることもできる。
空気を含んだ絶縁材として、絶縁紙または絶縁不織布からなるテープ状物により導体線を覆うこともできる。絶縁性を高めるために絶縁油剤を含浸させることもできる。
本発明の伸縮性信号伝送ケーブルは、10%以上の伸縮性を有する弾性円筒体の周囲に2本以上の導体線を同一方向に捲回することにより得ることができる。
当該導体線同志は、並列に捲回されることが好ましい。並列とは、導体線同志がクロスして重なり合うことが無く、好ましくは部分的にも重なり合うことがなく、同一方向に捲回されている状態を言う。重なりあう部分は、伝送性の低下の要因となり、かつ、繰り返し伸縮における断線の原因となるため、好ましくない。また、並列に捲回することで、コンパクトで伸縮性に富んだ、伸縮性信号伝送ケーブルが得やすくなる。
従来から知られている、S/Zの捲回は、導線の間隔がほぼゼロとなる点と、大きく広がる点を持つため伝送性低下の要因となる。さらに伸縮により、交差部分がこすられ、容易に短絡または断線し、実用上好ましくない。
本発明の伸縮性信号伝送ケーブルは、各々の導体線の間に空気を保有していることが好ましい。空気は、誘電率の低い媒体であり、伝送性を高める効果がある。
空気を保有させるために、導体線間に絶縁繊維からなる糸状体を介在させることも、導体線間に中空チューブを介在させることも、また導体線全体を発泡性の樹脂で覆うこともできる。
本発明の伸縮性信号伝送ケーブルは、弾性円筒体の周囲に極細同軸ケ−ブルを捲回することによっても得ることができる。極細同軸ケーブルは、中心導体と、周囲の導体の実質的に2本の導体線で構成されており、当該2本の導体線は、同一方向に捲回されるとみなすことができる。極細同軸ケーブルは、導体間の誘電体の状態が一定しており、伝送ロスを小さくできる。
当該極細同軸ケーブルは、太さ3mm以内が好ましい。中でも、屈曲性及び柔軟性の高いものを用いることが好ましい。許容曲げ半径は10mm以下のものが好ましく、5mm以下だとさらに好ましい。曲げ半径が10mm以上の場合は、捲回径が大きく成りすぎるか、または、伸縮性が低下する。
本発明の伸縮性信号伝送ケーブルは、弾性円筒体の周囲に、所謂ツイストペアケーブルを捲回することによっても得ることができる。ツイストペアケーブルを他のツイストペアケーブルと共に捲回することも、他の導体線と他のツイストペアケーブルと共に捲回することもできる。複数本のツイストペアケーブルを捲回する場合は、ツイストピッチの違うものを捲回することが好ましい。同一ピッチのものは、所謂クロストークが発生しやすい。いずれの場合も同一方向に捲回されていることが必要である。2方向に捲回されたものは、導体線同志の重なる部分があり、伝送性が低下し、高速伝送に適さない。また、繰り返し伸縮により断線しやすく、本発明の目的を達することができない。
本発明の伸縮性伝送ケーブルは、弾性円筒体の周囲に、所謂フレキシブルフラットケーブルを捲回することによっても得ることができる。フレキシブルフラットケーブルの幅は
10mm以下が好ましい。より好ましくは5mm以下である。厚みは3mm以下が好ましい。より好ましくは2mm以下である。これ以上のものは、弾性円筒体の周囲に捲回しても伸縮性が発現しにくい。当該フレキシブルフラットケーブルの中に、導体線は2本以上含まれることが必須である。伸縮性の制約から、使用できるケーブルの幅に限界があり、含まれる導体線の数も自ずと限界がある。伝送性との兼ね合いから20本以内が好ましい。より好ましくは10本以内である。
使用される導体線は2本以上が必要である。使用される導体線が1本では、伝送ケーブルとして使用できない。汎用で用いられるケースとしては、2本、3本、4本、5本、6〜10本などがある。上限は特に限定されるものでは無いが、30本以上となると、伸縮性が阻害されやすい。好ましくは20本以内である。特に好ましくは3本〜10本である。
2本の導体線のみを用いる場合は、1本をシグナルライン、他をグランドラインとする。3本の導体線を用いる場合は、シグナルライン2本、グランドラインとすることも、シグナルライン1本、電源ライン1本、グランドライン1本とすることもできる。
汎用性が高いケーブルとして、シグナルラインと電源ラインを併せ持つものが好まれる。特に高周波の領域では、差動伝送方式が用いられる傾向が強いが、シグナルライン2本、電源ライン1本、グランドライン1本の合計4本とすることで、差動伝送方式による信号伝送と、電源供給を併せ持つ伸縮性信号伝送ケーブルを得ることができる。
電源ラインにはシグナルラインよりも大きな電流が流れるため、電源ラインの太さは、シグナルラインと同等以上であることが好ましい。
高周波領域に置いては電気抵抗の影響は小さくなるため、シグナルラインには比較的抵抗値の高い導体線を用いることもできる。一方電源ラインは、電気抵抗が小さいことが好ましい。弛緩状態における伸縮性信号伝送ケーブル1m当たり、シグナルラインの電気抵抗は100Ω/m以下であることが好ましい。より好ましくは10Ω/m以下である。一方電源ラインの電気抵抗は、20Ω/m以下であることが好ましく、より好ましくは5Ω/m以下である。
グランドラインはシグナルライン同等の電気抵抗であることが好ましく、電源ライン同等の電気抵抗であることがさらに好ましい。
導体線は捲回1周毎に1箇所以上、絶縁性の糸状体で拘束されていることが好ましい。非拘束の場合は、伸縮により導体線間の間隔が変動し、伝送性が低下するため、実用上好ましくない。導体線と絶縁性糸状体で導体部が構成される。
絶縁性糸状体には、公知の絶縁性糸状体を任意に用いることができる。例えば、マルチフィラメント、モノフィラメント、または、紡績糸を用いることができる。好ましくはマルチフィラメントである。細く、柔らかく、拘束力が強く(高強度)、安価という観点からは、ポリエステル繊維、ナイロン繊維が挙げられる。誘電率が低いという観点からはフッ素繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維が挙げられる。難燃性の観点からは、塩化ビニル繊維、サラン繊維、ガラス繊維を挙げることができる。伸縮性の観点からは、ポリウレタン繊維または、ポリウレタン繊維の外部を他の絶縁繊維で被覆したもの等を挙げることができる。その他、絹、レーヨン繊維、キュプラ繊維、コットン紡績糸を用いることもできる。しかし、これらに限定されるものではなく、公知の絶縁繊維を任意に用いることができる。
導体線を1方向(例えばZ方向)に捲回し、その上から絶縁性糸条体を逆方向(S方向)に捲回することで、導体線を拘束し、伸縮によるズレを防止することができる。
図3に示したように、カバーリングマシーンにより導体線の外側に絶縁性糸状体を捲回する場合は、捲回速度を高める(スピンドル回転数を上げる)ことで、捲回張力(バルーニング張力)が増し、拘束力を高めることができる。
さらに好ましくは、図4に示したように、導体線と逆方向に導体線の内側(弾性円筒体側)と外側を交互に通って絶縁性糸状態を捲回し導体線を拘束することである。導体線の内側と外側を交互に通って、導体線と逆方向に絶縁性糸状体を捲回することで、繰り返し伸縮や、伸縮を伴う屈曲動作によっても、伸張時と弛緩時の導体線間隔の変化が少なく、かつ繰り返し伸縮によって導体線間隔の変化が少ない伸縮性信号伝送ケーブルを得ることができる。導体線の内側と外側を交互に通す場合、導体線1本ずつ交互に通してもよいし、複数の導体線を纏めて交互に通してもよい。
当該絶縁性糸条体は、導体線より細いものが好ましい。太い絶縁性糸状態を用いると、導体線そのものが、変形せざるをえなくなり、伸縮しにくくなる。
拘束力を高めるためには、1周につき1箇所以上好ましくは4箇所以上さらに好ましくは8箇所以上拘束点を持つように、絶縁性糸状態を導体線の内側と外側を交互に通って捲回することが好ましい。
捲回する糸に荷重をかけることで、捲回張力を高めることができ、拘束力を増すことができる。
また、互いの導体線の位置がずれないように、導体線間に絶縁性の糸状体を介在させて、導体線と介在させた糸状体を一緒にして、または別々に、それらの内側と外側を交互に通って前記絶縁性糸状体を捲回することもできる。この介在物により、導体線間の距離を制御し、特性インピーダンスを調整することもできる。
本発明の伸縮性信号伝送ケーブルは、導体線と弾性円筒体が接着していてもよい。通常接着剤は伸縮性が乏しく、弾性円筒体全体を被覆するように塗布すると弾性円筒体の伸縮性が失われやすい。これを防ぐため、弾性のあるポリウレタンなどを用いて接着する方法や、導体線と弾性円筒体との接触面のみを接着させるなどの方法がある。
導体線は同一方向に一定のピッチで、捲回されていることが好ましい。長さ方向でピッチがばらつくと、導体線の特性インピーダンスがばらつき、伝送性が低下する。
図1のaで示される導体線の捲回ピッチは0.05〜50mmが好ましい。0.05mm以下の場合は、捲回される導体線の長さが長くなりすぎ、伝送性が低下する。50mm以上の場合は、伸縮性が乏しくなる。好ましくは、捲回ピッチが0.1〜20mmであり、特に好ましくは捲回ピッチが1〜10mmである。
並列に捲回される独立した近接する導体線の間隔(図1においてdが近接する導体線の間隔である)は、弛緩状態で、30箇所の捲回状態を観察し求めた弛緩時平均間隔dと、ばらつきr(r=最大間隔−最小間隔)との関係が0≦r<4dであることが好ましい。4d以上のばらつきがある場合は、伝送性が低下する。好ましくは3d以下、さらに好ましくは2d以下である。なお、本発明において、近接する導体線の間隔は隣接する導体線間の距離のうち短い方で、中心間の距離で表すものとする。
本発明の伸縮伝送ケーブルは、伸張限界までの任意の伸張時において、近接する導体線の平均間隔d’が1/2d<d’<4dであることが好ましい。好ましくは3d以下、さらに好ましくは2d以下である。繰り返し伸張によっても、この範囲を逸脱しないことが好ましい。この範囲を逸脱すると伝送性が低下する。
なお、本発明で言う伸張限界とは、伸張後弛緩しても伸張率が20%以下に回復しなくなる限界伸張率に、0.7をかけた値を言う。
近接する2本の導体線の間隔は、0.01〜20mmであることが好ましい。0.01mm未満の場合は、伸縮によりショートする危険性がある。20mm以上の場合は、伸縮により特性インピーダンスの値が大きくなり、伝送性が低下する。さらに好ましくは0.02〜10mmであり、特に好ましくは0.05〜5mmである。
導体線の捲回径は0.05〜30mmが好ましい。さらに好ましくは0.1〜20mmであり、特に好ましくは0.5〜10mmである。30mm以上の場合は、できあがり外径が大きくなりすぎるため好ましくない。さらに、伸張によりインピーダンスの値が大きく変化し、伝送性を低下させる。0.05mm以下の場合は、導体線を捲回することが困難となる。
導体線のピッチ、間隔および捲回径を上記のような範囲にすると、コンパクトで伸縮性の良い伸縮性信号伝送ケーブルを得やすく、かつ、特性インピーダンスを500Ω以下に設定しやすく、伝送性の良いケーブルを得やすい。
本発明の伸縮性信号伝送ケーブルは外部被覆層を有していても良い。外部被覆層を有することにより、物理的な刺激や、化学的な刺激から保護され、耐久性が向上する。外部被覆層は絶縁繊維またはゴム弾性を持つ弾性樹脂により形成することが好ましい。
絶縁繊維による被覆は伸縮性を阻害しにくく、ソフトな伸縮性を求める用途に適する。また、絶縁繊維は、誘電率の低い空気を多量に含むため、伝送性の低下が少ない被覆を行うことができる。
誘電率の低い絶縁繊維は、伝送性を低下させることが少なく、好ましい。誘電率の低い絶縁繊維として、フッ素繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロポレン繊維を挙げることができる。
撥水性の絶縁繊維は、誘電率の高い水の浸入を防ぐ効果があり、好ましい。具体的には、フッ素繊維や、ポリプロピレン繊維などの撥水性の絶縁繊維を用いることも、ポリエステル繊維や、ナイロン繊維に撥水加工を施して用いることもできる。撥水加工剤は、公知の加工剤から任意に選定することができる。具体的にはフッ素系、シリコン系の撥水加工剤等を挙げることができる。
絶縁繊維は、マルチフィラメント、モノフィラメント、または紡績糸を用いることができる。マルチフィラメントは、被覆性が良く、毛羽も発生しにくく好ましい。
絶縁繊維は、伸縮伝送ケーブルの用途や想定される使用条件に合わせて、公知の絶縁性繊維から任意に選ぶことができる。絶縁繊維は生糸のままでも良いが、意匠性や劣化防止の観点から原着糸や先染め糸を用いることもできる。仕上げ加工により、柔軟性や摩擦性の向上を図ることもできる。さらに、難燃加工、撥油加工、防汚加工、抗菌加工、制菌加工および消臭加工など、公知の繊維の加工を施すことにより、実用時の取り扱い性を向上させることもできる。
耐熱性と耐磨耗性を両立させる絶縁繊維としては、アラミド繊維、ポリスルホン繊維およびフッ素繊維が挙げられる。耐火性の観点からは、ガラス繊維、耐炎化アクリル繊維、フッ素繊維およびサラン繊維が挙げられる。耐磨耗性や強度の観点からは、高強力ポリエチレン繊維およびポリケトン繊維が付加される。コストと耐熱性の観点からは、ポリエステル繊維、ナイロン繊維およびアクリル繊維がある。これらに、難燃性を付与した難燃ポリエステル繊維、難燃ナイロン繊維および難燃アクリル繊維(モダクリル繊維)なども好適である。摩擦熱による局部的な劣化に対しては、非溶融繊維を用いることが好ましい。その例としては、アラミド繊維、ポリスルホン繊維、コットン、レーヨン、キュプラ、ウール、絹およびアクリル繊維を挙げることができる。強度を重視する場合は、高強力ポリエチレン繊維、アラミド繊維およびポリフェニレンサルファイド繊維が挙げられる。摩擦性を重視する場合は、フッ素繊維、ナイロン繊維およびポリエステル繊維が挙げられる。
意匠性を重視する場合は、発色の良いアクリル繊維を用いることもできる。
さらに、人との接触による触感を重視する場合は、キュプラ、アセテート、コットンおよびレーヨンなどのセルロース系繊維や、絹または繊度の細い合成繊維を用いることができる。
弾性樹脂による被覆、または、ゴムチューブによる被覆は、液体が内部に侵入する危険性のある用途に好ましく用いられる。
弾性樹脂は、様々な弾性の絶縁樹脂から任意に選ぶことができ、伸縮伝送ケーブルの用途及び同時に使用する他の絶縁繊維との相性を考慮しながら、選定することができる。
考慮すべき性能として、伝送性、伸縮性、耐磨耗性、耐熱性および耐薬品性などが挙げられる。
伝送性に優れるものとしては、誘電率の低い弾性樹脂が好ましい。代表例としてはフッ素系またはオレフィン系の弾性樹脂が挙げられる。
伸縮性に優れるものとしては、所謂天然ゴム系の弾性樹脂、スチレンブタジエン系の弾性樹脂が挙げられる。
耐磨耗性、耐熱性、耐薬品性に優れるものとしては合成ゴム系弾性体が挙げられ、フッ素系ゴム、シリコーン系ゴム、エチレン・プロピレン系ゴム、クロロプレン系ゴムおよびブチル系ゴムが好ましい。
絶縁体からなる外部被覆層は、絶縁繊維により編組されたものと弾性樹脂とを組み合わせることもできる。伸縮伝送ケーブルは小さい力で伸縮させることを望むケースが多いが、弾性樹脂のみでの被覆の場合は、弾性樹脂の厚みが厚くなる傾向があり、伸縮させる力が大きくなりやすい。このような場合は、厚みの薄い弾性樹脂と、絶縁繊維による編組を組み合わせることで、被覆性と伸縮性を両立させることができる。
本発明の伸縮性信号伝送ケーブルは、シールドされていても良い。シールドの方法は、電気伝導性のある有機繊維または、電気伝導性の良い金属細線により編み組すること、電気伝導性の良いテープ状物(例えばアルミ箔)を捲回することなどにより得ることができる。
弾性円筒体の周囲に導体線を並列に捲回した後、絶縁繊維により、絶縁層を構成し、その外周にシールド層を形成する。シールド層は電気伝導性のある有機繊維又は電気伝導性の良い金属細線又はその組み合わせで編み組することにより得ることができる。シールド層を保護する目的から、シールド層の外層に絶縁体による外部被覆層を形成ことが好ましい。
電気伝導性のある有機繊維とは、比抵抗1Ω・cm以下のものを言う。例えばメッキ繊維や、導電性フィラーを充填した繊維が上げられる。より具体的には銀メッキ繊維などが挙げられる。
本発明の伸縮性信号伝送ケーブルは、伸張限界までの任意の伸張において250MHzの伝送ロスが10dB以下であることが好ましい。さらに、好ましくは、伸張時と弛緩時の250MHzにおける伝送ロスの最大値−最小値が2dB以下である。この範囲を超えると、伸縮により、信号伝送が乱れ、信号伝送ができなくなるなどのトラブルが発生する。特に好ましくは、伸張限界までの任意の伸張において500MHzの伝送ロスが10dB以下である。高速の信号伝送において用いられる矩形波は、高調波を合成して成される。高い周波数領域での伝送ロスが少ないケーブルは高調波を含めて伝送することができ、高速の情報伝送に優れる。
本発明の伸縮性信号伝送ケーブルは信号ラインとして用いる導体線の特性インピーダンスが20Ω〜500Ωであることが好ましい。さらに好ましくは50〜300Ωである。
特性インピーダンスは、接続される様々な電子機器とのインピーダンスマッチングの観点から重要で、この範囲を逸脱すると、電子機器と接続した場合の実用上の伝送性が低下する。使用される電子部品に応じて特性インピーダンスを調整することが好ましい。
特性インピーダンスは、高周波域では、インダクタンスとキャパシタンスが支配する。これらは、捲回径、捲回ピッチ、導体線間隔、に大きく依存する。同一方向に捲回することで、伸縮によるインダクタンスの変化とキャパシタンスの変化が相殺される効果があり、伝送性を維持することができる。
本発明の伸縮性信号伝送ケーブルは、2本の導体線のTDR法による差動特性インピーダンスが20〜500Ωであることが好ましい。さらに好ましくは50Ω〜300Ωの範囲である。特に好ましくは100〜200Ωである。この範囲以外の場合、信号の入出力双方で反射が起こり、伝送性が低下する。
差動信号は、対をなして信号が伝送されるため、対をなす一組の導体線は所謂平衡であることが好ましい。ここで言う平衡とは、対をなす導体線が同じ構造で電磁気的にも平衡した電圧がかかるようになっている状態をいう。このため、対をなす導体線と他の導体線を捲回する場合、他の導体線が奇数本の場合は、対をなす1組の導体線の間に他の導体線1本を配置し、対をなす導体線の両側に残りの導体線を等しく配置することが好ましい。他の導体線が偶数本の場合は、対をなす導体線の両側に他の導体線を等しく配置することが好ましい。対をなす導体線の間に他の導体線が存在すると、差動信号の電磁結合が遮断され伝送性が低下することがある。
差動信号を流す1組の導体線の外側に他の導体線(好ましくはグランドライン)を配置することが好ましい。他の導体線は、シグナルラインから放射される電波や外部から飛来する電波に対して、遮蔽する効果がある。
一方シングルモードの伝送において、複数のシグナルラインを用いる場合は、シグナルラインの間に、他の導体線(好ましくはグランドライン)を配置することが好ましい。近接するグランドラインには所謂シールド効果があり、クロストークを低減すると共に、放射電波や入射電波を遮蔽する効果もある。
シグナルラインと他の導体線の位置関係が伸縮により変化すると伝送性が低下する。このため全ての導体線が同一方向に捲回されることが必須である。
本発明の伸縮性信号伝送ケーブルは、伸張回復率の高いものが好ましい。20%伸張後の回復率(20%伸張回復率)は50%以上が好ましい。20%伸張した後に50%以上回復しないものは、形態変形追随性が乏しい。20%伸張した後、70%以上回復するものがさらに好ましい。特に好ましくは30%伸張後に70%以上回復するものである。最も好ましくは40%以上伸張した後に70%以上回復するものである。
本発明の伸縮性信号伝送ケーブルは、容易に伸張するものが好ましい。20%伸張荷重は5000cN未満が好ましい。さらに好ましくは2000cN以下、より好ましくは1000cN以下である。5000cN以上のものは、伸張させるために大きな負荷が必要となり好ましくない。
本発明の伸縮性信号伝送ケーブルは、使用時の所定伸張を、1万回以上好ましくは10万回以上、さらに好ましくは50万回以上繰り返しても断線せず、伝送性が低下しないものが好ましい。本発明は、耐繰り返し性に優れ、実用に適した伸縮伝送ケーブルを提供するものである。
本発明の伸縮性信号伝送ケーブルは、弾性円筒体を伸張する機能と、その周囲に複数の導体線を並列に捲回する機能と、導体線の捲回方向と逆方向に絶縁性糸状体を捲回する機能を有する装置により、伸張した状態の弾性円筒体に2本以上の導体線を並列に捲回し、導体線と反対方向に絶縁性糸状体を導体線の外側に捲回することによって得ることができる。
より好ましくは、導体線の捲回方向と逆方向に絶縁性糸状体を捲回する機能を、絶縁性糸状体を導体線の内側(弾性円筒体側)と外側を交互に通って捲回できる機能とし、2本以上の導体線を並列に捲回し、かつ、導体線と反対方向に1本または複数本の導体線の内側と外側を交互に通って絶縁性糸状体を捲回し、導体線を拘束する構造とすることである。
上記機能を有する装置であれば、用いる装置は特に限定されない。
上記機能を有する装置が備える主たる機構は次の通りである。
(1)弾性円筒体を供給する機構。
(2)弾性円筒体を把持し、一定速度でフィードする機構(好ましくはニップせずに把持して一定速度でフィードする機構、例えば複数のV溝を有する2連のロールのV溝に8の字掛けに沿わせて把持し、フィードする機構)。
(3)弾性円筒体を把持し、一定速度で巻き取る機構(好ましくはニップせずに把持して一定速度で巻き取る機構、例えば複数のV溝を有する2連のロールのV溝に8の字掛けに沿わせて把持し、巻き取る機構か、または、V溝を持った直径の大きなドラムのV溝に複数回巻き付けて巻き取る機構)。
(4)弾性円筒体を伸張した状態で、導体線または導体線と絶縁性糸状体とを弾性円筒体に並列に捲回する機構(例えば導体線または絶縁性糸状体を巻いたボビンを把持された弾性円筒体の周囲を旋回させる機構、把持された弾性円筒体を回転させて導体線または絶縁性糸状体を弾性円筒体の周囲に捲回する機構、または、導体線または絶縁性糸状体を巻いた複数の中空ボビンを直列に配置し、弾性円筒体を中空ボビンの中空部を通過させつつ、中空ボビンを回転させて導体線を弾性円筒体に捲回させる機構)。
(5)弾性円筒体を伸張した状態で、絶縁性糸状体を導体線の捲回方向と逆方向に弾性円筒体に並列に捲回する機構、特に好ましくは、弾性円筒体を伸張した状態で、導体線の捲回方向と逆方向に導体線の内側と外側を交互に通って絶縁性糸状体を捲回する機構(例えば、導体線を巻いた1本以上のボビンと絶縁性糸状体を巻いた1本以上のボビンが、前後または上下に移動し、相互に逆方向に弾性円筒体の回りを旋回する機構)。
以下に、本発明を実施例および比較例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
本発明で用いた評価方法は以下の通りである。
(1)伸縮性
伸縮性信号伝送ケーブルに20cm間隔で印をつける。その外側を手で持ち、印の位置が22cmになるまで引き伸ばしたのち、弛緩して長さを測定する。下記基準で区別し、22cmまで引き伸ばすことができ、かつ弛緩後21cm未満に回復したもの(A)を10%以上の伸縮性があると判断した。
A:22cmまで伸張させることができ、弛緩させると21cm未満に回復したもの。
B:22cmまで伸張させることができないか、または、22cmまで伸張させることができたが、弛緩しても21cm未満に回復しないもの。
(2)同一方向性
導体線を捲回する方向によって、下記基準により区別した。
A:導体線の捲回方向が1方向のもの。
B:導体線の捲回方向が2方向のもの。
(3)並列性
導体線を捲回した状態で、目視により100cmの長さを観察し、導体線同志が重なる部分の有無により、下記基準で判定した。
A:重なる部分が全く無い。
B:重なる部分があるが、クロスしている部分はない。
C:クロスして重なる部分がある。
(4)捲回径
導体線捲回後、弛緩状態で、ノギスにより3箇所の捲回外径を測定し、その平均値を求めL1とした。また、導体線の外径をノギスにより3箇所測定し平均値を求めL2とし、次式により捲回径を求めた。
捲回径=L1−L2
(5)ピッチ間隔
同一導体線の任意の30ピッチの距離を測定し、その平均値をピッチ間隔とした。
(6)近接導体線間隔
近接する導体線の中心間距離を任意に30箇所測定し、その平均値を近接導体線間隔(d)とした。最大値−最小値をばらつき(r)とした。
(7)20%伸張荷重
標準状態(温度20℃、相対湿度65%)に試料を2時間以上静置したのち、標準状態下でテンシロン万能試験機((株)エーアンドディ社製)を用い、長さ100mmの試料を引張り速度100mm/minで引張り、20%伸張時の荷重を求めた。
(8)伸張回復性
長さ100mmの試料をテンシロン測定機にて引張り速度100mm/minで引張り、所定伸張率で伸張後リターンし、応力がゼロになる距離(Amm:伸張ゼロ位置から当該位置までの距離)を求め次式により回復率を求めた。回復性は下記基準により判定した。
回復率(%)=((100−A)/100)×100
A:回復率≧70%
B:70%>回復率≧50%
C:50%>回復率
(9)繰り返し伸張試験
デマッチャー試験機((株)大栄科学精機製作所製)を用い、図5に示したように、チャック部(21)およびチャック部(22)を試料(20)の長さ20cmにセットし、その中間に直径1.27cmのステンレス棒(23)を配置する。チャック部(22)の可動位置を試料の伸張時である30cmに設定し、室温で、初期伸張11%および引っ張り時伸張59%で100回/minで所定回伸縮を繰り返し、繰り返し伸張試験を行う。
繰り返し伸張試験の前後で試料の全ての導体線の電気抵抗を測定し、最も変化の大きい導体線につき、次式により繰り返し伸張試験前後での電気抵抗の変化率(ΔR)を求める。
ΔR=100×(R2−R1)/R1
(但し、R1:試験前の電気抵抗、R2:試験後の電気抵抗)
電気抵抗の変化率(ΔR)に基づいて、下記基準により、耐断線性を判定した。
AA:50万回後のΔR<1%
A:10万回後のΔR<1%
B:1%≦10万回後のΔR<20%
C:20%≦10万回後のΔR<∞
D:10万回で断線(10万回後のΔRが無限大)
(10)伝送ロス
測定装置:Lightwave Component Analyzer(Hewlett Packard 8703A)
測定方法:弛緩状態で1mのケーブルを採取し両端の、シグナルラインとシグナルラインに隣接する導体線の先端を約5mm引き出し、先端約3mmをハンダ浴に浸漬し細線間の導通を高めた後、各々SMA(Sub-Miniature-type-A)コネクターのシグナル端子とグランド端子にハンダ付けをし、上記装置に接続して、Sパラメータ測定を行い、130MHz〜1000MHzのS21(S21:透過係数=透過波/入射波;単位はdB)を測定し、得られたチャートから所定の周波数の値を読み取り、その絶対値を伝送ロスとした。
(11)特性インピーダンス(TDR(time domain reflectometry)法による)
測定装置:Digital Oscillocope (Hewlett-Packard 54750A )/ Differential TDR module (Agilent 54754A)
測定方法:上記測定装置に1mの50Ω同軸ケーブルを接続し、その先端に、上記伝送ロス測定(10)で得た、両端にSMAコネクターが接続されたケーブルの一端を接続し、他端(終端)をオープンとし、TDR法により最大20ns(ナノ秒)の間の特性インピーダンス(単位Ω)を測定し、そのチャートからコネクター部分及び終端部分の値を除き、最小値および最大値を読み取った。
(12)差動特性インピーダンス(TDR法による)
測定装置:Digital Oscillocope (Hewlett-Packard 54750A )/ Differential TDR module (Agilent 54754A)
測定方法:弛緩状態で1mのケーブルを採取し、その一端の全ての導体線の先端を約5mm引き出し、先端約3mmをハンダ浴に浸漬し細線間の導通を高めた後、差動信号を送るシグナルライン2本を2個のSMAコネクターのシグナル端子にハンダ付けを行い、その他の導体線をまとめて、あらかじめ接合されたグランド端子にハンダ付けをした(図6参照)。このコネクターに、各々50Ω同軸ケーブル(1m)を接続し、当該同軸ケーブルを上記装置の2つのポートに接続し、他端(終端)をオープンとし、TDR法により最大20ns(ナノ秒)の間の差動特性インピーダンス測定を行なった。得られたチャートからコネクター部分及び終端部分の値を除き、最小値および最大値を読み取った。
(13)USBデバイス動作テスト
測定方法:弛緩状態で1mのケーブルを採取し両端の導体線の先端を約5mm引き出し、先端約3mmをハンダ浴に浸漬し細線間の導通を高めた後、各々USBコネクター(Aタイプ オス)の端子位置2および3にシグナルライン(特に断らない限り、隣接する2本の導体線)、端子位置1および4に他の2本の導体線をそれぞれハンダ付けし、接合部分を絶縁性ビニールテープで被覆し、USBコネクター(Aタイプ オス)を両端に接続したケーブルを得た。当該ケーブルの一端を、30万画素WEBカメラ(WCU204SV Arvel社製)付属のソフトウエアーをあらかじめインストールし、当該WEBカメラを直接パーソナルコンピュータに接続し、動作することを確認しておいたパーソナルコンピュータ(Dynabook Satelitet12 PST101MD4H41LX 株式会社東芝製)のUSBポートに差込み、他端にUSB変換アダプター(Aタイプメス→Aタイプメス( アイネックス(株)社製ADV-104))を差込み、当該アダプターに、30万画素WEBカメラ(WCU204SV Arvel社製)のUSBコネクターを差込み、作動を調べ、下記基準で判定した。
A:動作して、動画の動きがスムーズ。
B:動作するが動画の動きが不安定。
C:動作しない。
(14)電気抵抗
弛緩状態において、長さ1mの試料を切り取り、その両端の導体線の先端を約5mm引き出し、先端約3mmをハンダ浴に浸漬し細線間の導通を高めた後、ミリオームハイテスター3540(日置電機(株))により電気抵抗を測定した。
(15)耐水性
上記(13)のUSBデバイス動作テストにおいて、下記基準により判定した。
A:ケーブル中央部50cmを水中に30分以上浸漬した状態下でUSBデバイスが動作する。
B:ケーブル中央部に20mlの水をかけてもUSBデバイスが正常に動作するが、水中に30分以上浸漬するとUSBデバイスが動作しなくなる。
C:ケーブルにスポイトで1滴水を垂らしてもUSBデバイスが正常に作動するが、20mlの水をかけるとデバイスが動作しなくなる。
D:ケーブルにスポイトで1滴の水を垂らしただけで、USBデバイスが動作しなくなる。
(実施例1および2)
940dtexのポリウレタン弾性長繊維(旭化成せんい(株)製、商品名:ロイカ)を芯にして、伸張倍率を4.2倍下で、230dtexのウーリーナイロン(黒染め糸)を700T/Mの下撚りおよび500T/Mの上撚りで捲回し、ダブルカバー糸を得た。得られたダブルカバー糸を製紐用ボビンに巻き取り、当該ボビン4本を、8本打ち製紐機((有)桜井鉄工製)のS方向に2本、Z方向に2本、均等に配置して組み紐を作製し、直径1.8mmの弾性円筒体を得た。当該弾性円筒体を、特殊製紐機((1)弾性円筒体を芯部として供給する機構、(2)弾性円筒体を、複数のV溝を有する2連のロールのV溝に8の字掛けに沿わせて把持し、フィードする機構、(3)弾性円筒体を、複数のV溝を有する2連のロールのV溝に8の字掛けに沿わせて把持し、巻き取る機構、(4)弾性円筒体を伸張した状態で、導体線を弾性円筒体に並列に捲回する機構、および(5)弾性円筒体を伸張した状態で、導体線の捲回方向と逆方向に導体線の内側と外側を交互に通って絶縁性糸状体を捲回する機構を備えた製紐機)により、2.2倍に伸張しながら、弾性円筒体に所定の導体線((有)竜野電線社製2USTC:30μ*48本および30μ*90本)4本をZ方向に並列に等間隔で捲回し、ポリエステル繊維(56dtex(12f))4本をS方向に導体線の内側と外側を交互に通して並列に等間隔で捲回して本発明の伸縮性信号伝送ケーブルを得た。
得られた伸縮性信号伝送ケーブルの構成および評価結果を表1に示す。
(実施例3および4)
天然ゴムのNo.18角ゴム(丸栄日産株式会社製)を芯にして、4倍伸張下で、ウーリーナイロン(230dtex(黒染め糸)*3本引き揃え)を用いて、16本打ち製紐機にて外部被覆を行い、直径が2.5mmの弾性円筒体を得た。得られた弾性円筒体を用いたことを除いて、実施例1および2と同様にして本発明の伸縮性信号伝送ケーブルを作製した。得られた伸縮性信号伝送ケーブルの構成および評価結果を表1に併せて示す。
(実施例5)
市販ゴム紐(自転車荷造り用:直径6mm)を弾性円筒体として用い、当該弾性円筒体を芯部にして、当該芯部を1.4倍に伸張しながら導体線((有)竜野電線製2USTC:30μ*90本)4本をZ方向に並列に等間隔で捲回し、本発明の伸縮性信号伝送ケーブルを得た。得られた伸縮性信号伝送ケーブルの構成および評価結果を表1に併せて示す。
(実施例6)
ダブルカバーリングマシーン(片岡機械工業株式会社製型番SSC)を用いて、実施例3で得られた弾性円筒体を芯にして、当該芯部を3倍に伸張しつつ、導体線((有)竜野電線製2USTC:30μ*90本)を下撚りZ方向133T/M、上撚りZ方向125T/Mでダブルカバーし、伸縮性信号伝送ケーブルの中間体を得た。さらに、当該中間体を芯にして、特殊ダブルカバーリングマシーン(有限会社カタオカテクノ社製型式SP−D−400:(1)弾性円筒体を芯部として供給する機構、(2)弾性円筒体を、複数のV溝を有するロールのV溝に沿わせて把持し、フィードする機構、(3)弾性円筒体を、複数のV溝を有するロールのV溝に沿わせて把持し、巻き取る機構、(4)弾性円筒体を伸張した状態で、導体線を弾性円筒体に並列に捲回する機構、および(5)弾性円筒体を伸張した状態で、導体線の捲回方向と逆方向に導体線の外側に絶縁性糸状体を捲回する機構を備える)を用いて、当該芯部を2.9倍に伸張しつつ、導体線((有)竜野電線製2USTC:30μ*90本)を下撚りZ方向120T/M、上撚りZ方向110T/Mでダブルカバーし、4本の導体線をZ方向に捲回した本発明の伸縮性信号伝送ケーブルを得た。得られた伸縮性信号伝送ケーブルの構成および評価結果を表1に併せて示す。
(比較例1)
市販USBケーブル(Elecom USB2-20)の中央部を1m切り出し、両端の外部被覆を1cmの長さで剥がし、4本の導体線を露出させた。4本の中から、ツイストされている2本(緑と白)をシグナルラインとし、他の2本(赤と黒)を電源ライン及びグランドラインとして実施例1〜6と同様の評価を行った。得られた評価結果を表1に併せて示す。
Figure 0004690506
表1から、本発明の伸縮伝送ケーブルは、伸縮性があり、高速の信号伝送性ができる画期的な信号伝送ケーブルであることがわかる。
(実施例7および8)
実施例1に記載の特殊製紐機を用いて、実施例3および4で得られた伸縮性信号伝送ケーブルを芯部として、1.8倍伸張下で、ウーリーナイロン(230dtex*2本引き揃え)をS方向に8本、Z方向に8本捲回し、絶縁繊維による外部被覆層を有する伸縮性信号伝送ケーブルを得た。得られた伸縮性信号伝送ケーブルの構成および評価結果を表2に示す。
(実施例9)
導体線((有)竜野電線製2USTC:30μ*90本)を4本引き揃えて1つのボビンに巻き取った。当該ボビンを実施例6で用いた特殊ダブルカバーリングマシーン(有限会社カタオカテクノ社製型式SP−D−400)の下段に前記ボビンをセットした。実施例3で得られた弾性円筒体を芯部として、当該特殊カバーリングマシーンを用いて、当該芯部を3倍に伸張しながら、1つのボビンに巻き取られた4本の導体線をZ方向133T/Mでカバーリングした。さらに、実施例7と同様にして外部被覆層を形成し、本発明の伸縮性信号伝送ケーブルを得た。
得られた伸縮性信号伝送ケーブルの構成および評価結果を表2に併せて示す。
(実施例10)
実施例9と同様にして、導体線を捲回し、引き続いてS方向にポリエステル繊維(167dtex(48f))を210T/Mで捲回し、導体線を拘束した。さらに、実施例7と同様にして外部被覆層を形成し、本発明の伸縮性信号伝送ケーブルを得た。得られた伸縮性信号伝送ケーブルの構成および評価結果を表2に併せて示す。
(実施例11)
実施例1と同様にして得られた弾性円筒体を芯部とし、当該芯部を、2.2倍に伸張しながら、導体線((有)竜野電線製2USTC:30μ*90本)4本の各々の間に、ウーリーナイロン690dtex(230dtex*3本引き揃え)4本を配置し、Z方向に並列に捲回し、S方向にポリエステル繊維(56dt(12f))8本を交差させながら捲回して外部被覆前伸縮性信号伝送ケーブルを得た。当該ケーブルを1.8倍伸長下で、実施例1記載の特殊製紐機にてエステルウーリー(330dtex*2本引き揃え)をS方向に8本、Z方向に8本交互に捲回し、外部被覆層を形成し、本発明の伸縮性信号伝送ケーブルを得た。得られた伸縮性信号伝送ケーブルの構成および評価結果を表2に併せて示す。
(比較例2)
実施例3で得られた弾性円筒体を芯部にして、実施例6記載のダブルカバーリングマシーンを用いて、当該芯部を3倍に伸張しながら、導体線((有)竜野電線製2USTC:30μ*90本)を下撚りZ方向133T/M、上撚りS方向125T/Mでダブルカバーし、信号伝送ケーブルを得た。さらに、当信号伝送ケーブルを芯にして、当該芯部を2.9倍に伸張しながら、導体線((有)竜野電線製2USTC:30μ*90本)を下撚りZ方向133T/M、上撚りS方向125T/Mでダブルカバーし、4本の導体線をS撚り2本とZ撚り2本の2方向に捲回した伸縮性信号伝送ケーブルを得た。得られた伸縮性信号伝送ケーブルの構成および評価結果を表2に併せて示す。
(比較例3)
1870dtexのポリウレタン弾性長繊維(旭化成せんい(株)製、商品名:ロイカ)2本を引き揃えて芯部にし、ダブルカバーリングマシーン(片岡機械工業株式会社製型番SSC)を用いて、当該芯部を3倍に伸張しながら、導体線((有)竜野電線製2USTC:30μ*24本)を下撚りZ方向426T/M、上撚りS方向370T/Mでダブルカバーし、伸縮性導体線を得た。実施例1に記載の特殊製紐機を用い、当該伸縮性導体線4本を芯部にし、1.8倍伸張下でウーリーナイロン(230dtex*2本引き揃え)をS方向に8本、Z方向に8本捲回し、外部被覆層を形成し、4本の導体線を含む伸縮性信号伝送ケーブルを得た。得られた伸縮性信号伝送ケーブルの構成および評価結果を表2に併せて示す。なお、この伸縮性信号伝送ケーブルは、各伸縮性導体線のS/Zに捲回された2本の導体線を1つに纏めて結線して使用した。
Figure 0004690506
表2より、導体線と逆方向に絶縁性糸状体を捲回することで繰り返し耐久性が向上し、より好ましくは、導体線の内側と外側を交互に通って絶縁性糸状体を捲回しているものであることがわかる。また導体線間に他の絶縁繊維糸状体(空気を含む介在物)を介在させることで、伸張による導体線間隔のばらつきを低くおさえることができ、繰り返し伸縮による耐久性を向上させることができることがわかる。
実施例3、5および6の伸縮性信号伝送ケーブルを1m採取し、30%伸張し、導体線間隔を測定した。続いて当該ケーブルの中に含まれるシグナルラインと、シグナルラインに隣接する2本の導体線をSMAコネクターに接続し、中央部の50cmを30%(15cm)伸張し固定し、伸張時の伝送特性を調べた。また、差動特性インピーダンス測定用コネクター(図6)の2箇所のシグナル端子に、当該ケーブルの中に含まれる2本のシグナルラインを接続し、残りの2本をまとめてグランド端子に接続し、弛緩状態で、差動特性インピーダンスを測定した。これらの結果を表3に示した。
Figure 0004690506
この結果より本発明の伸縮伝送ケーブルは伸張により、導体線間隔がほとんど変化しないことがわかる。さらに、特性インピーダンスの変化も小さく、伝送ロスの変化も2dB未満であることがわかる。
(実施例12)
実施例3で得られた伸縮性信号伝送ケーブルを合成ゴム熱収縮性ゴムチューブNPR1241-01(アラム(株)製)の中に挿入し、120℃下で10分間熱処理をして外部被覆層を形成し、伸縮性信号伝送ケーブルを得た。
(実施例13)
実施例7で得られた伸縮性信号伝送ケーブルを、AG7000(明成化学(株)社製)5%およびイソプロパノール1%を含有する水溶液中に室温下で5分間浸漬した後、濾紙上に置き30秒間脱液し、その後80℃乾燥機中で30分間乾燥した。引き続き、あらかじめ160℃に設定した乾燥機中で2分間熱処理を行った。乾燥機から取り出し、室温で放冷し、外部被覆層が撥水処理された伸縮性信号伝送ケーブルを得た。
実施例7、12および13で得られた伸縮性信号伝送ケーブルを用い耐水試験を行い、その評価結果を表4に示した。ゴムチューブ被覆により、耐水性が著しく向上することがわかる。また、撥水処理により、簡易防水の効果を得ることができることがわかる。
Figure 0004690506
本発明の伸縮性信号伝送ケーブルは、ロボット分野をはじめとして、身体装着機器および衣服装着機器等の曲げ伸ばしなどの屈曲部を有する装置の信号配線として好適であり、特にヒューマノイド型ロボット(内部配線及び外皮配線)、パワーアシスト装置およびウエアラブル電子機器等に好適である。その他、各種ロボット(産業用ロボット、家庭用ロボット、ホビーロボット等)、リハビリ用補助具、バイタルデータ測定機器、モーションキャプチャー、電子機器付き防護服、ゲーム用コントローラー(人体装着型を含む)およびマイクロヘッドフォン等の分野に好適に利用できる。

Claims (9)

  1. 10%以上の伸縮性を有し、250MHzにおける伝送ロスが弛緩状態において10dB/m以下である伸縮性伝送ケーブルであって、10%以上の伸縮性を有する弾性円筒体および該弾性円筒体の周囲に同一方向に並列に捲回された少なくとも2本の導体線を含む導体部からなり、弛緩状態での導体線の捲回径および捲回ピッチがそれぞれ0.05〜30mmおよび0.05〜50mmであり、かつ、弛緩状態で近接する導体線の中心間距離を任意に30箇所測定した際の平均値である近接導体線間隔(d)が0.01〜20mmであり、その最大値と最小値の差である近接する導体線の間隔のばらつき(r)が0≦r≦4dの範囲であることを特徴とする伸縮性信号伝送ケーブル。
  2. 導体部が、導体線の外側に導体線と逆方向に捲回されている絶縁性糸状体を含むことを特徴とする請求項1に記載の伸縮性信号伝送ケーブル。
  3. 導体部が、1本または複数本の導体線の外側と内側(弾性円筒体側)を交互に通って、導体線と逆方向に捲回されている絶縁性糸状体を含むことを特徴とする請求項1に記載の伸縮性信号伝送ケーブル。
  4. 伸張限界まで任意の伸張下で、近接する導体線の中心間距離を任意に30箇所測定した際の平均値である伸張時近接導体線間隔(d’)が1/2d〜4dの範囲にあり、繰り返し伸縮によっても、この範囲を逸脱することがないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の伸縮性信号伝送ケーブル。
  5. 導体部の外周に絶縁繊維からなる外部被覆層をさらに有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の伸縮性信号伝送ケーブル。
  6. 導体部の外周にゴム弾性を持つ樹脂からなる外部被覆層をさらに有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の伸縮性信号伝送ケーブル。
  7. 20%伸張荷重が5000cN未満であり、20%伸張回復率が50%以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の伸縮性信号伝送ケーブル。
  8. 弾性円筒体を伸張する機能と、該弾性円筒体の周囲に複数の導体線または複数の導体線と少なくとも1本の絶縁性糸状体とを同一方向に捲回する機能と、少なくとも1本の絶縁性糸状体を前記方向と逆方向に捲回する機能とを有する装置により、弾性円筒体を伸張した状態で、該弾性円筒体の周囲に複数の導体線または複数の導体線と少なくとも1本の絶縁性糸状体とを同一方向に捲回し、さらに該導体線と逆方向に少なくとも1本の絶縁性糸条体を導体線の外側に捲回することを特徴とする請求項2に記載の伸縮性信号伝送ケーブルの製造方法。
  9. 弾性円筒体を伸張する機能と、該弾性円筒体の周囲に複数の導体線または複数の導体線と少なくとも1本の絶縁性糸状体とを同一方向に捲回する機能と、少なくとも1本の絶縁性糸状体を前記方向と逆方向に捲回する機能とを有する装置により、弾性円筒体を伸張した状態で、該弾性円筒体の周囲に複数の導体線または複数の導体線と少なくとも1本の絶縁性糸状体とを同一方向に捲回し、さらに該導体線と逆方向に1本または複数本の導体線の外側と内側(弾性円筒体側)を交互に通って少なくとも1本の絶縁性糸条体を捲回することを特徴とする請求項3に記載の伸縮性信号伝送ケーブルの製造方法。
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