JP4688357B2 - ガス発生器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のエアカーテン式エアバッグに用いられるガス発生器に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の衝突時に生じる衝撃から乗員を保護するための安全装置の1つとして、エアバックが知られている。このエアバックは、ガス発生器が発生する多量の高温、高圧ガスにて作動するものである。近年、乗員の安全性の向上を目的に図2に示すようなサイドドア上方から開くエアカーテン式のエアバッグ51が装着されるようになってきている。
【0003】
この種のエアバッグ51は、通常は自動車の屋根の部分に縮めて収納されており、衝撃が起こった際に膨張し、乗員のドアや窓ガラスへの衝突をやわらげるようになっている。このエアバッグ51を膨張させるガス発生器は、自動車のサイドドア側の上部フレーム52内に設けられ、エアバッグに連結されている。このため、ガス発生器は、上部フレーム52内に装着できるように小型化する必要がある。小型化に適したガス発生器としては、例えば、特開平8−253100号公報に示されているようなハイブリッドガス発生器が知られている。
【0004】
特開平8-253100号公報に示されているような一般的なハイブリッドガス発生器は、衝突センサからの信号によって発火する点火器と高圧ガスが収容されているガスボンベとが同軸上に配置されている。そして、点火器からの火炎力若しくは点火器の火炎力によって可動するピストン等によってボンベの高圧ガスを密封するラプチャーディスクを破裂させ高圧ガスを放出させている。ボンベから放出されたガスは、ボンベと点火器とを対峙するように連結している外筒材の周囲に形成されたガス放出孔から放射状にガスが放出されるようになっている。
【0005】
図2に示すように、エアカーテン式のエアバッグは、自動車の車体長手方向にわたって、サイドドア部を覆うように設けられており、このようなエアバッグを瞬時に膨張させるためにはボンベから放出されるガスの勢いを利用する必要がある。ところが、従来のハイブリッド式のガス発生器では、ボンベから放出されるガスが外筒材周囲に形成されたガス放出孔から放射状に放出されるため、ボンベから放出されるガスの勢いをそのまま利用することが困難であった。そのため、図2に示すようなエアカーテン式のエアバッグの展開が遅れるという問題があった。
【0006】
そこで、エアカーテン式のエアバッグの展開遅れを防止するため、ボンベからのガスの勢いをそのまま利用できるように、ボンベからの放出ガスの方向をかえることなくエアバッグ内にガスを放出することが試みられている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来のハイブリッド方式のガス発生器では、ボンベと点火器とが同軸上に夫々対峙して配置されているため、点火器と衝突センサとを連結するケーブルが妨げとなって、ボンベからのガスの方向を変えずにエアバッグに取り付けるのが困難であった。
【0008】
本発明は、エアバッグへの取り付けに際し、点火器と衝突センサとの連結ケーブルが妨げとならず、高圧ガスを密封しているボンベからのガスの方向を変えることなく放出することができるエアカーテン式エアバッグに用いられるハイブリッド式のガス発生器を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための本発明の請求項1に記載のガス発生器は、高圧ガスが装填されたボンベと、前記ボンベの圧力を保持するとともに密封するラプチャーディスクと、前記ラプチャーディスクに対峙する火炎噴出口を有し、点火器及び伝火薬が収納されたハウジングと、前記ボンベと前記ハウジングとの間にガス滞留空間を形成するとともに、前記ガス滞留空間に連通する環状空間を前記ハウジングの周囲に形成するように前記ボンベと前記ハウジングとを連結保持する外筒材と、前記ボンベからのガスを、前記ガス滞留空間及び前記環状空間を経て前記ボンベからの放出方向と同一方向に放出するガス放出口が形成され、前記外筒材の一端にかしめ固定される蓋部材と、を備えてなり、前記ボンベ、前記ハウジング及び前記蓋部材が、それぞれの軸心を一にした同軸上に保持され、前記点火器が、前記ハウジングの軸に対して偏向して設けられていることを特徴とする。
【0010】
このような構成によると、ハウジングから放出される火炎力によってボンベを密封するラプチャーディスクが破裂され、高圧ガスがガス滞留空間に放出される。そして、ハウジングからの熱流と、ガス滞留空間で混合され、ハウジング周囲の環状空間を通過し、蓋部材に形成されているガス放出口から放出方向が変わることなく放出される。
また、点火器がハウジングの軸に対して偏向して設けられているため、衝突センサとの連結部分がエアバッグとの連結の妨げとならず、エアバッグとの連結が容易となる。
【0011】
また、請求項2に記載のガス発生器は、請求項1において、自動車のエアカーテン式エアバッグに用いられるものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るガス発生器の実施形態例を図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明に係るガス発生器1の一実施形態例の断面図を示す。
【0013】
図1において、ガス発生器1は、高圧ガスが装填されているボンベ2と、ボンベ2の圧力を保持するとともに密封するラプチャーディスク3と、ラプチャーディスク3に対峙する火炎噴出口4を有し、点火器5及び伝火薬6が収納されたハウジング7と、ボンベ2とハウジング7との間にガス滞留空間8を形成するとともに、ガス滞留空間8に連通する環状空間9をハウジング7の周囲に形成するようにボンベ2とハウジング7とを連結保持する外筒材10と、ボンベ2からのガスを、ガス滞留空間8及び環状空間9を経てボンベ2からの放出方向と同一方向に放出するガス放出口11が形成され、外筒材10の一端にかしめ固定される蓋部材12とで構成されている。
【0014】
ボンベ2は、ステンレス、アルミニウム等の金属からなり、有底の円筒形状をし、開口側は、2段階で縮径されている。ボンベ2内には、アルゴンやヘリウムガス等がエアバッグ等を膨張、作動させるに十分な量(例えば、エアカーテンには0.8〜1.2モル等)装填されており、圧力20MPa以上、好ましくは25MPa以上に維持され、一端側の開口部をラプチャーディスク3を有するボンベキャップ13によって密封されている。
【0015】
ラプチャーディスク3の厚さは、火炎噴出口4からの火炎力によって破裂できる程度の厚さであれば特に限定はされない。好ましいラプチャーディスク3の厚さとしては、0.05〜0.5mm、さらに好ましくは0.1〜0.3mmである。
【0016】
ハウジング7は、略コップ状をし、一端側14には火炎噴出口4が形成されており、他端側15の側筒部には点火器5が設けられている。そして、他端側15の内部は、図1に示すように点火器5からの火炎をハウジング7の軸方向に変向するよう肉厚に傾斜する傾斜部7aが形成されている。これによって点火器5からの火炎は方向を変えて火炎噴出口4からラプチャーディスク3に向って噴出される。
【0017】
さらに、ハウジング7内は、傾斜部7aから火炎噴出口4に向って、ドーナツ状(中空の円柱状)の第2のクッション材18、第1のクッション材17、伝火薬6が装填されている。ドーナツ状の伝火薬6及びクッション材17,18によって形成されるハウジング7内の中央部の空間は、燃焼室16をなしている。第1、第2のクッション材17,18は、セラミックファイバー、シリコンフォーム等からなり、伝火薬6と同様にドーナツ状に形成されている。これらクッション材17,18は、伝火薬6が、振動等によって破砕しないように、伝火薬6に伝わる振動を吸収している。ドーナツ状の伝火薬6は、ドーナツ状に成形された伝火薬を1又は2以上を積層して用いてもよく、より小径の粒状伝火薬を支持部材を介してドーナツ状に配置してもよい。
【0018】
火炎噴出口4は、燃焼室16からラプチャーディスク3に向けて縮径されている。これによって、火炎力が高められるとともに、放出する火炎をラプチャーディスク3の中心部に集中することができる。また、火炎噴出口4にはアルミニウム等からなる金属製のシールテープが貼付されている。このシールテープは、燃焼室16内への水分等の侵入を防ぎ、燃焼室16内に収納される伝火薬6が湿気るのを防ぐものである。また、このシールテープは、厚さ100μm以下であり、点火器5の点火による火炎によって瞬時に溶かされ、火炎の進行の妨げとならないものである。
【0019】
伝火薬6は、発熱量が、4000J/g以上、好ましくは5500J/g以上となるように、例えば、ボロン、硝酸カリウム、5アミノテトラゾール、無鉛火薬等を使用することができる。このような組成とすることによって、発熱量を、4000J/g以上、好ましくは5500J/g以上とすることが可能となる。ここで、発熱量が4000J/g未満の伝火薬の場合、ボンベ2を密閉するラプチャーディスク3が破裂して、放出されるガスが断熱膨張の為に低温化した場合に十分に加熱することが困難となる。このため、伝火薬6の量を多くする必要が生じ、ガス発生器1の小型化が達成できない。
【0020】
図1に示すように、外筒材10は、ステンレス、アルミニウム等の金属材料によって円筒状に形成されている。そして、一端側にガス放出口11を有する蓋部材12が、かしめ固定されている。外筒材10の他端側は、ボンベ2の縮径された第1段部分24と内接して嵌合され、溶接等によって溶着固定されている。そして、外筒材10の側筒部には点火器5を有するホルダ20が配置される穴25が形成されている。この穴25を通しハウジング7の側筒部にホルダ20を固定することによってハウジング7を外筒材10の所定位置に配置することができる。
【0021】
蓋部材12は、外筒材10の一端にかしめ固定されている。また、蓋部材12の内方にはフィルター材23が設けられている。このフィルター材23は、例えば、メリヤス編み金網、平織り金網やクリンプ織り金属線材の集合体によって、蓋部材12の内径と略同一な円筒状に成形されている。これによって、ボンベ2からのガスは、このフィルター材23を通過して蓋部材12に形成されているガス放出口11から放出される。
【0022】
点火器5は、ハウジング7の側筒部にハウジング7及びボンベ2の軸心に対して偏向して配置されている。本実施形態例では軸に対して直角に配置した場合について示す。点火器5としては、例えば、電気式の点火器などが採用でき、金属製のホルダ20にカシメ固定されている。このホルダ20の周囲には、ネジ21が形成されており、ネジ21によってハウジング7及び外筒材10に固定されている。これによって、点火器5は、ボンベ2からのガスの放出の妨げとならないように衝突センサー等からのケーブルとピン22とを結線することが可能となる。また、ホルダ20に形成されているネジ21によって、ハウジング7の外筒材10内部での高さを微調整することも可能である。これによって、外筒材10とハウジング7との間に形成される環状空間9を確実に形成することが可能となる。なお、ホルダ20の固定方法は、ネジ21に限定されるものではない。
【0023】
また、点火器5は、10ccタンク中で発火させた時の内圧上昇が3msec以内で4.7MPa以上のものが好ましい。これによって、確実にラプチャーディスク3を火炎力によって破断することができる。
【0024】
このような火炎力を生成するために点火器5に装填されている着火薬としては、ジルコニウム(Zr)、タングステン(W)、過塩素酸カリウム(KClO4)を成分に持ち、バインダーとしてフッ素ゴムやニトロセルロース等を用いたものを使用することが好ましい。又、ジルコニウム、タングステン、過塩素酸カリウムの組成比(重量比)は、例えば、Zr:W:KClO4=3:3.5:3.5とする。また、着火薬の装填量は、適宜設定することができ、噴出される火炎力を高める為に通常より多めに装填することが好ましい。また、各成分の組成比を調整して、高い火炎力となるようにすることもできる。
【0025】
このように、ボンベ2、ハウジング7、蓋部材12は、同一円筒からなる外筒材5によって固定されているため、それぞれの軸心を一にした同軸上に連結保持される。これによって、ラプチャーディスク3、火炎噴出口4、ガス放出口11の中心部が同軸となり、ボンベ2からのガスがその放出方向を変えることなく放出されることになる。また、点火器5は、外筒材10の側筒部に設けられることから、衝突センサー等との結線も容易に行なえる。
【0026】
次に、ガス発生器1の作動を、図1により説明する。なお、図1に示すガス発生器1は、蓋部材12若しくは外筒材10の軸端側でエアバッグ装置に直接、又は間接的に接続されているものとする。
【0027】
衝突センサーが自動車の衝突を検出すると、図1に示すように、ガス発生器1は、点火器5を通電発火させる。点火器5の火炎は、燃焼室16内に噴出される。点火器5から噴出された火炎は、ハウジング7の他端側15の内部に形成されている傾斜部7aにあたり、方向を変えて燃焼室16を通過する。このように方向を変えられた火炎は、火炎噴出口4の絞りによって火炎力が高められ、火炎噴出口4の出口に設けられている金属製のシールテープを瞬時に溶かしてラプチャーディスク3の中心部に集中的にあたり、ラプチャーディスク3を一気に破裂させる。ラプチャーディスク3から放出されたガスは、ガス滞留空間8に流出してくる。この時、放出されたガスは、ガス滞留空間8で断熱膨張するため、急激に温度が低下する。
【0028】
一方、点火器5からの火炎によって、燃焼室16内の伝火薬6が燃焼する。これによって発生した高温の熱流は、ガス滞留空間8に流入し、ボンベ2から放出され、断熱膨張によって低温化したガスと混合する。ボンベ2から放出されたガスは、これによって加熱され、適温ガスとなって、環状空間9を通過してフィルター材23を通り蓋部材12に形成されたガス放出口11から放出される。これで、このガス発生器1に接続されているエアバッグは、ガス放出口11から放出される清浄なガスによって、瞬時に、膨張される。
【0029】
このように、本発明のガス発生器1によれば、点火器5がハウジング7及び外筒材10の側筒部に設けられているため、ボンベ2からのガスが方向を変えることなく同一方向に放出される。このため、エアカーテン式のエアバッグのように長手方向に膨張させなければならないエアバッグであっても瞬時に膨張させることができる。なお、本発明のガス発生器1は、エアカーテン式のエアバッグはもちろんであるが、シートベルトプリテンショナ等のガス発生器としても利用することができる。
【0030】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成されており、点火器がボンベに対して偏向して設けられているため、エアカーテン式のエアバッグへの取付時の衝突センサーとの結線が容易に行なえる。また、ボンベから放出されるガスの放出方向を変えることなく放出することができるため、放出されるガスの勢いをそのまま利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るガス発生器の実施形態の一例の断面図である。
【図2】エアカーテン式エアバッグを説明するための図である。
【符号の説明】
1 ガス発生器
2 ボンベ
3 ラプチャーディスク
4 火炎噴出口
5 点火器
6 伝火薬
7 ハウジング
7a 傾斜部
8 ガス滞留空間
9 環状空間
10 外筒材
11 ガス放出口
12 蓋部材
13 ボンベキャップ
16 燃焼室
20 ホルダ
23 フィルター材
Claims (2)
- 高圧ガスが装填されたボンベと、
前記ボンベの圧力を保持するとともに密封するラプチャーディスクと、
前記ラプチャーディスクに対峙する火炎噴出口を有し、点火器及び伝火薬が収納されたハウジングと、
前記ボンベと前記ハウジングとの間にガス滞留空間を形成するとともに、前記ガス滞留空間に連通する環状空間を前記ハウジングの周囲に形成するように前記ボンベと前記ハウジングとを連結保持する外筒材と、
前記ボンベからのガスを、前記ガス滞留空間及び前記環状空間を経て前記ボンベからの放出方向と同一方向に放出するガス放出口が形成され、前記外筒材の一端にかしめ固定される蓋部材と、を備えてなり、
前記ボンベ、前記ハウジング及び前記蓋部材が、それぞれの軸心を一にした同軸上に保持され、前記点火器が、前記ハウジングの軸に対して偏向して設けられていることを特徴とするガス発生器。 - 自動車のエアカーテン式エアバッグに用いられる請求項1に記載のガス発生器。
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