本発明は結晶性を有する半導体を用いた半導体装置およびその作製方法に関する。
薄膜半導体を用いた薄膜トランジスタ(以下TFTという)が知られている。
このTFTは、基板上に薄膜半導体(活性層)を形成し、この薄膜半導体を用いて構成されるものである。このTFTは、各種集積回路に利用されているが、特に電気光学装置、特にアクティブマトリックス型の液晶表示装置の各画素の設けられたスイッチング素子、周辺回路部分に形成されるドライバー素子に用いられている。
TFTに利用される薄膜半導体としては、非晶質珪素膜を用いることが簡便であるが、その電気的特性が低いという問題がある。TFTの特性向上を得るためには、結晶性を有する珪素薄膜を利用すればよい。結晶性を有する珪素膜は、多結晶珪素(ポリシリコン)、微結晶珪素(マイクロクリスタルシリコン)等と称されている。この結晶性を有する珪素膜を得るためには、まず非晶質珪素膜を形成し、しかる後に加熱によって結晶化さればよい。
しかしながら、加熱により得た結晶性珪素薄膜はその粒径が比較的小さく、またそのサイズも揃っておらず、それらが特性のバラツキの原因となっている。また、素子を形成したときの能力の目安となる移動度(モビリティ)に関しても、単結晶珪素に比較して大きく劣っており、それら特性の向上が求められている。
〔発明の背景〕 本発明者らの研究によれば、非晶質珪素膜の表面にニッケルやパラジウム、さらには鉛等の元素を微量に堆積させ、しかる後に加熱することで、450℃〜650℃例えば550℃程度の温度で、4時間程度の処理時間で結晶化を行なえることが判明している。また得られる結晶粒も、上記結晶化の温度および時間によって制御可能であり、このことは素子に必要とされる活性層を作製できることを意味する。
上記のような微量な元素(結晶化を助長する触媒元素)を導入するには、プラズマ処理や蒸着、さらにはイオン注入を利用すればよい。プラズマ処理とは、平行平板型あるいは陽光柱型のプラズマCVD装置において、電極として触媒元素を含んだ材料を用い、窒素または水素等の雰囲気でプラズマを生じさせることによって非晶質珪素膜に触媒元素の添加を行なう方法である。
しかしながら、上記のような元素が半導体中に多量に存在していることは、これら半導体を用いた装置の信頼性や電気的安定性を阻害するものであり好ましいことではない。
即ち、上記のニッケル等の結晶化を助長する元素(本明細書では、結晶化を助長する元素を触媒元素という)は、非晶質珪素を結晶化させる際には必要であるが、結晶化した珪素中には極力含まれないようにすることが望ましい。この目的を達成するには、触媒元素として結晶性珪素中で不活性な傾向が強いものを選ぶと同時に、結晶化に必要な触媒元素の量を極力少なくし、最低限の量で結晶化を行なう必要がある。そしてそのためには、上記触媒元素の添加量を精密に制御して導入する必要がある。
本発明人は、ニッケルを触媒元素とした場合において、非晶質珪素膜を成膜し、ニッケル添加をプラズマ処理法によっておこない、さらに加熱処理により結晶性珪素膜を作製し、その結晶化過程等を詳細に検討したところ、以下の事項が判明した。
(1)プラズマ処理によってニッケルを非晶質珪素膜上に導入した場合、熱処理をおこなう以前に既に、ニッケルは非晶質珪素膜中のかなりの深さの部分まで侵入している。
(2)結晶の初期核発生は、ニッケルを導入した表面から発生している。
(3)蒸着法でニッケルを非晶質珪素膜上に成膜した場合であっても、プラズマ処理を行なった場合と同様に結晶化が起こる。
上記事項から、プラズマ処理によって導入されたニッケルが全て効果的に機能していないということが結論される。即ち、多量のニッケルが導入されても十分に機能していないニッケルが存在していると考えられる。このことから、ニッケルと珪素が接している点(面)が低温結晶化の際に機能していると考えられる。
そして、可能な限りニッケルが微細に原子状に分散していることが必要であることが結論される。即ち、「必要なのは非晶質珪素膜の表面近傍に低温結晶化が可能な範囲内で可能な限り低濃度のニッケルが原子状で分散して導入されればよい」ということが結論される。
非晶質珪素膜の表面近傍のみに極微量のニッケルを導入する方法、言い換えるならば、非晶質珪素膜の表面近傍のみに結晶化を助長する触媒元素を極微量導入する方法としては、蒸着法を挙げることができる。しかし、蒸着法は制御性が悪く、触媒元素の導入量を厳密に制御することが困難であるという問題がある。
また、触媒元素の導入量は極力少ないことが必要とされるが、この場合、結晶性が不足するという問題が生じる。
本発明は、触媒元素を用いた熱処理による結晶性を有する薄膜珪素半導体の作製において、(1)触媒元素の量を制御して導入し、その量を最小限の量とする。
(2)生産性の高い方法とする。
(3)熱処理で得られる結晶性よりさらに高い結晶性を得る。
といった要求を満たすことを目的とする。
本発明は、上記目的を満足するために以下の手段を用いて結晶性を有した珪素膜を得ることを特徴とする。即ち本発明は、非晶質珪素膜に接して該非晶質珪素膜の結晶化を助長する触媒元素単体または前記触媒元素を含む化合物を保持させ、前記非晶質珪素膜に前記触媒元素単体または前記触媒元素を含む化合物が接した状態において、450℃〜650℃、例えば550℃程度の比較的低温で加熱処理を施し、前記非晶質珪素膜を一部または全部を結晶化させる。そしてさらに前記結晶化温度よりも高い温度、例えば基板が石英の場合であれば1000℃程度の温度でアニールをおこなうことによりさらに結晶化を助長する。こうして極めて結晶性の良好な結晶性珪素膜を得る。
結晶化を助長する触媒元素の導入方法としては、触媒元素を含む溶液を非晶質珪素膜表面に塗布することによる方法が有用である。
特に本発明においては、非晶質珪素膜の表面に接して触媒元素が導入されることが特徴である。このことは、触媒元素の量を制御する上で極めて重要である。
触媒元素が導入されるのは、非晶質珪素膜の上面であっても下面であってもよい。非晶質珪素膜の上面に触媒元素を導入するのであれば、非晶質珪素膜を形成した後に、触媒元素を含有した溶液を非晶質珪素膜上に塗布すればよいし、非晶質珪素膜の下面に触媒元素を導入するのであれば、非晶質珪素膜を形成する前に下地表面に触媒元素を含有した溶液を塗布し、下地表面に接して触媒元素を保持させる状態とすればよい。
また本発明は、結晶化された結晶性珪素膜を用いて半導体装置のPN、PI、NIその他の電気的接合を少なくとも1つ有する活性領域を構成することを特徴とする。半導体装置としては、薄膜トランジスタ(TFT)、ダイオード、光センサを挙げることができる。
本発明の構成を採用することによって、以下に示すような基本的な有意性を得ることができる。
(a)溶液中における触媒元素濃度は、予め厳密に制御し結晶性をより高め、かつ、その元素の量をより少なくすることが可能である。
(b)溶液と非晶質珪素膜の表面とが接触していれば、触媒元素の非晶質珪素への導入量は、溶液中における触媒元素の濃度によって決まる。
(c)非晶質珪素膜の表面に吸着する触媒元素が主に結晶化に寄与することとなるので、必要最小限度の濃度で触媒元素を導入できる。
(d)高温プロセスを必要としないで、結晶性の良好な結晶性珪素膜を得ることができる。
非晶質珪素膜上に結晶化を助長する元素を含有させた溶液を塗布する方法において、溶液として水溶液、有機溶媒溶液等を用いることができる。ここで含有とは、化合物として含ませるという意味と、単に分散させることにより含ませるという意味との両方を含む。
触媒元素を含む溶媒としては、極性溶媒である水、アルコール、酸、アンモニアから選ばれたものを用いることができる。
触媒としてニッケルを用い、このニッケルを極性溶媒に含ませる場合、ニッケルはニッケル化合物として導入される。このニッケル化合物としては、代表的には臭化ニッケル、酢酸ニッケル、蓚酸ニッケル、炭酸ニッケル、塩化ニッケル、沃化ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、蟻酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトネ−ト、4−シクロヘキシル酪酸ニッケル、酸化ニッケル、水酸化ニッケルから選ばれたものが用いられる。
また、触媒元素を含む溶媒として、無極性溶媒であるベンゼン、トルエン、キシレン、四塩化炭素、クロロホルム、エーテルから選ばれたものを用いることができる。
この場合はニッケルはニッケル化合物として導入される。このニッケル化合物としては代表的には、ニッケルアセチルアセトネ−ト、2−エチルヘキサン酸ニッケルから選ばれたものを用いることができる。
また、触媒元素を含有させた溶液に界面活性剤を添加することも有用である。
これは、被塗布面に対する密着性を高め吸着性を制御するためである。この界面活性剤は予め被塗布面上に塗布するのでもよい。触媒元素としてニッケル単体を用いる場合には、酸に溶かして溶液とする必要がある。
以上述べたのは、触媒元素であるニッケルが完全に溶解した溶液を用いる例であるが、ニッケルが完全に溶解していなくとも、ニッケル単体あるいはニッケルの化合物からなる粉末が分散媒中に均一に分散したエマルジョンの如き材料を用いてもよい。または酸化膜形成用の溶液を用いるのでもよい。このような溶液としては、東京応化工業株式会社のOCD(Ohka Diffusion Source)を用いることができる。このOCD溶液を用いれば、被形成面上に塗布し、200℃程度でベークすることで、簡単に酸化珪素膜を形成できる。また不純物を添加することも容易であるので、本発明に利用することができる。
以上のことは、触媒元素としてニッケル以外の材料を用いた場合であっても同様である。
結晶化を助長する触媒元素としてニッケルを用い、このニッケルを含有させる溶液溶媒として水の如き極性溶媒を用いた場合において、非晶質珪素膜にこれら溶液を直接塗布すると、溶液が弾かれてしまうことがある。この場合は、100Å以下の薄い酸化膜を形成し、その上に触媒元素を含有させた溶液を塗布することで、均一に溶液を塗布することができる。また、界面活性剤の如き材料を溶液中に添加する方法により濡れを改善する方法も有効である。
また、溶液として2−エチルヘキサン酸ニッケルのトルエン溶液の如き無極性溶媒を用いることで、非晶質珪素膜表面に直接塗布することができる。この場合にはレジスト塗布の際に使用されている密着剤のごとき材料を予め塗布することは有効である。しかし塗布量が多過ぎる場合には逆に非晶質珪素中への触媒元素の添加を妨害してしまうために注意が必要である。
溶液に含ませる触媒元素の量は、その溶液の種類にも依存するが、概略の傾向としてはニッケル量として溶液に対して200ppm〜1ppm、好ましくは50ppm〜1ppm(重量換算)とすることが望ましい。これは、結晶化終了後における膜中のニッケル濃度や耐フッ酸性に鑑みて決められる値である。
また結晶化の際の加熱温度を450℃〜650℃とすることは重要である。本発明においては前述の様に触媒元素と非晶質珪素薄膜と接している部分のみから結晶化を行わせることにより、粒径のそろった結晶性の高い結晶性珪素薄膜を得ることが前提となっており、それ以外の部分から核発生あるいは結晶化が進行することは特性のばらつきに直結するので、望ましいことではない。発明者らの実験によると、上記450℃〜650℃の範囲で短時間であれば、触媒元素と接していない部分の結晶化は無視することができ、本発明の構成が得られることが判明している。上記温度範囲よりも低温では、触媒元素を添加しても充分な結晶成長がおこなえず、また、同様に上記温度範囲よりも高温では触媒に関係なく結晶成長が発生してしまう。
同様に、結晶化処理の後に、さらに高温のアニールをおこない、結晶粒の界面の特性をさらに良好にし、珪素膜の結晶性をさらに高くすることができる。この工程を有しないと、粒界における障壁が高く、代表的にはモビリティが高くならないなどの弊害が生じる。信頼性についても、粒界に存在する微量な非晶質成分と結合している触媒元素の影響により、安定した素子を形成することは困難である。
また、本発明のこの構成をさらに進め、触媒元素の量を極端に減らし、最初の加熱による結晶化を核発生直後で終了し、その後高温アニールによって結晶成長をおこなうことも可能である。この場合には、核発生プロセスと結晶成長プロセスを分けておこない、しかもそれぞれに適した温度でおこなうことが可能である。
結晶性を改善するためにおこなう高温アニールは、一般的な電気炉中でのアニール(熱アニール)以外に、強光特に赤外光を照射する方法を採用してもよい。
赤外光はガラスには吸収されにくく、珪素薄膜に吸収されやすいので、ガラス基板上に形成された珪素薄膜を選択的に加熱することができる。赤外光を用いるアニール方法は、ラピッド・サーマル・アニール(RTA)またはラピッド・サーマル・プロセス(RTP)と呼ばれる。
また、触媒元素を含んだ溶液を選択的に塗布することにより、結晶成長を選択的におこなうことができる。特にこの場合、溶液が塗布されなかった領域に向かって、溶液が塗布された領域から珪素膜の面に概略平行な方向に結晶成長させることができる。このように珪素膜の面に概略平行な方向に結晶成長がおこなわれた領域を本明細書中においては横方向に結晶成長した領域と称する。
横方向に結晶成長した領域は、触媒元素の濃度が低いことが確かめられている。半導体装置の活性層領域として、結晶性珪素膜を利用することが有利であるが、特に、活性層領域中における不純物の濃度は一般に低い方が好ましい。したがって、上記横方向に結晶成長した領域を用いて半導体装置の活性層領域を形成することはデバイス作製上、極めて有利である。
本発明においては、触媒元素としてニッケルを用いた場合に最も顕著な効果を得ることができるが、その他の利用できる触媒元素の種類としては、好ましくはPt、Cu、Ag、Au、In、Sn、Pd、P、As、Sbが挙げられる。また、VIII族元素、IIIb、IVb、Vb元素から選ばれた一種または複数種類の元素を利用することもできる。
また、触媒元素の導入方法は、水溶液やアルコール等の溶液を用いることに限定されるものではなく、触媒元素を含んだ物質を広く用いることができる。例えば、触媒元素を含んだ金属化合物や酸化物を用いることができる。
触媒元素を導入して比較的低温で大粒径の結晶性珪素膜を作製し、その後更に高温でのアニールを加えることにより、非常に結晶性の高い珪素膜とすることができる。そしてこの様な結晶性珪素膜を用いて、半導体装置を作製することで、生産性が高く、特性のよいデバイスを得ることができる。
本実施例では、結晶化を助長する触媒元素を水溶液に含有させて、非晶質珪素膜上に塗布し、しかる後に加熱により結晶化させ、さらに高温の熱アニール処理により結晶性を高める例である。
図1を用いて、触媒元素(ここではニッケルを用いる)を導入するところまでを説明する。本実施例においては、基板11として石英ガラスを用いる。またその大きさは100mm×100mmとする。
まず、非晶質珪素膜をプラズマCVD法やLPCVD法によって非晶質状の珪素膜を100〜1500Å形成する。ここでは、プラズマCVD法によって非晶質珪素膜12を1000Åの厚さに成膜する。(図1(A))
そして、汚れ及び自然酸化膜を取り除くためにフッ酸処理を行い、その後、酸化膜13を10〜50Åに成膜する。汚れが無視できる場合には、酸化膜13の代わりに自然酸化膜をそのまま用いれば良い。
なお、この酸化膜13は極薄のため正確な膜厚は不明であるが、20Å程度であると推定される。本実施例では、酸素雰囲気中でのUV光の照射により酸化膜13を作製する。成膜条件は、酸素雰囲気中においてUVを5分間照射することによっておこなった。酸化膜13の成膜方法としては、熱酸化法を用いるのでもよい。また過酸化水素による処理によるものでもよい。
酸化膜13は、後のニッケルを含んだ酢酸塩溶液を塗布する工程で、非晶質珪素膜の表面全体に酢酸塩溶液をゆき渡らせるためのものである。すなわち、濡れ性の改善のためのものである。通常の非晶質珪素膜の表面に直接、酢酸塩溶液を塗布した場合、非晶質珪素が酢酸塩溶液を弾いてしまうので、非晶質珪素膜の表面全体にニッケルを導入することができない。即ち、均一な結晶化をおこなうことができない。
つぎに、酢酸塩溶液中にニッケルを添加した酢酸塩溶液を作る。ニッケルの濃度は25ppmとする。そしてこの酢酸塩溶液を非晶質珪素膜12上の酸化膜13の表面に2ml滴下し、酢酸塩溶液水膜14を形成し、この状態を5分間保持する。そしてスピナー15を用いてスピンドライ(2000rpm、60秒)をおこなう。(図1(C)、(D))
酢酸溶液中におけるニッケルの濃度は、1ppm以上好ましくは10ppm以上であれば実用になる。また、溶液として2−エチルヘキサン酸ニッケルのトルエン溶液のごとき無極性溶媒を用いる場合、酸化膜13は不要であり、直接非晶質珪素膜上に触媒元素を導入することができる。
このニッケル溶液の塗布工程を、1回〜複数回行なうことにより、スピンドライ後の非晶質珪素膜12の表面に数Å〜数百Åの平均の膜厚を有するニッケルを含む層を形成することができる。この場合、この層のニッケルがその後の加熱工程において、非晶質珪素膜に拡散し、結晶化を助長する触媒として作用する。なお、この層というのは、完全な膜になっているとは限らない。
上記溶液の塗布の後、1分間その状態を保持させる。この保持させる時間によっても、最終的に珪素膜12中に含まれるニッケルの濃度を制御することができるが、最も大きな制御因子は溶液の濃度である。
そして、加熱炉において、窒素雰囲気中において550℃、4時間の加熱処理をおこなう。この結果、基板11上に形成された結晶性を有する珪素薄膜12を得ることができる。
上記の加熱処理は450℃以上の温度でおこなうことができるが、温度が低いと加熱時間を長くしなけらばならず、生産効率が低下する。また、あまり温度が高すぎても、ニッケルと接した部分以外から結晶成長が始まり、結果として大粒径の珪素粒からなる結晶性珪素膜を作製することができない。
本実施例においては、非晶質珪素膜上に触媒元素を導入する方法を示したが、非晶質珪素膜下に触媒元素を導入する方法を採用してもよい。この場合は、非晶質珪素膜の成膜前に触媒元素を含有した溶液を用いて、下地膜上に触媒元素を導入すればよい。
加熱処理により結晶性を有する珪素膜12を得た後、汚れ及び自然酸化膜を取り除くためにフッ酸処理を行う。そして更に1000℃で30分〜2時間、ここでは100分間のアニールを窒素中でおこない、結晶粒内部の結晶性を高め(この工程を行うことにより結晶内部の欠陥を減らす効果も期待できる)、界面の特性を改善する。なお、この工程を酸素中でおこなうことにより、結晶性向上とともに約1000Åの熱酸化膜を形成しても良い。
その後、酸化膜を除去し、TEMによる観察をおこなった結果、得られた結晶性珪素膜は、異方性を有する大径の結晶粒からなる多結晶状態を呈し、その結晶粒の長辺は長いものでは10μm以上あり、その大きさも比較的揃っていることが判明した。
本実施例は、実施例1に示す作製方法において、1200Åの酸化珪素膜を選択的に設け、この酸化珪素膜をマスクとして選択的にニッケルを導入する例である。図2に本実施例における作製工程の概略を示す。まず、石英ガラス基板(10cm角)11上に非晶質珪素膜をプラズマCVD法またはLPCVD(減圧熱CVD法)で1000Åの厚さに成膜する。
次に、マスクとなる酸化珪素膜21を1000Å以上、ここでは1200Åの厚さに成膜する。この酸化珪素膜21の膜厚については、発明者等の実験によると500Åでも問題がないことを確認しており、膜質が緻密であれば更に薄くても良い。
そして、通常のフォトリソ工程によって、必要とするパターンに酸化珪素膜21をエッチングする。そして、酸素雰囲気中における紫外線の照射で薄い酸化珪素膜20を成膜する。酸化珪素膜20の作製は、酸素雰囲気中でUV光を5分間照射することによっておこなわれる。なお、酸化珪素膜20の厚さは20〜50Å程度と考えられる(図2(A))。
酸化珪素膜20は濡れ性を改善するためのものであるが、溶液とパターンのサイズが合致した場合には、マスクの酸化珪素膜の親水性のみによっても丁度よく添加される場合がある。しかしながらこの様な場合は特殊であり、一般的には酸化珪素膜20を使用したほうが安全である。
この状態において、実施例1と同様に100ppmのニッケルを含有した酢酸塩溶液を5ml滴下(10cm角基板の場合)する。また、この際、スピナー15を用いて50rpmで10秒のスピンコートをおこない、基板表面全体に均一な水膜14を形成させる。さらに、この状態で、5分間保持した後、スピナー15を用いて2000rpm、60秒のスピンドライをおこなう。なお、この保持は、スピナー上において0〜150rpmの回転をさせながらおこなってもよい。(図2(B))
そして、550℃(窒素雰囲気)、4時間の加熱処理を施すことにより、非晶質珪素膜12の結晶化をおこなう。この際、ニッケルが導入された部分22の領域から23で示されるように、ニッケルが導入されなった領域25へと横方向に結晶成長がおこなわれる。図2(C)において、24がニッケルが直接導入され結晶化がおこなわれた領域であり、25が横方向に結晶化がおこなわれた領域である。なお25の領域においては、概略〈111〉軸方向に結晶成長がおこなわれていることが確認されている。
この段階でTEM観察をおこなうと、得られた結晶性珪素膜は、ニッケルが添加された領域から周囲に向かって放射状に幅の揃った柱状結晶が成長しており、個々の結晶の隙間には非晶質部分が残存していることが判明した。
次に、上記加熱処理による結晶化工程の後、酸化珪素膜を除去し、窒素中で加熱温度を1000℃でアニールして珪素膜12の結晶性をさらに向上させる。この工程によって、横方向に結晶成長した領域25の結晶性を大きく高めることができる。
この結晶性珪素膜をTEM観察すると、前述の柱状結晶の隙間の部分が結晶化し、しかも、柱状結晶を核とした擬似的にエピタキシャルな成長が起こっていることが判明した。また、その結果、結晶粒界は非常に判別しづらくなり、あたかも巨大な結晶粒(〜数十μm以上)のように見える結晶性珪素膜が得られた。
本実施例において、溶液濃度、保持時間を変化させることにより、ニッケルが直接導入された領域におけるニッケルの濃度を1×1015cm-3〜1×1019cm-3の範囲で制御可能であり、同様に横成長領域の濃度をそれ以下に制御することが可能である。この膜中におけるニッケル濃度は、膜厚方向にU字型の分布を有して存在するが、上記の濃度はこのU字型の分布の底の部分(最小値)を示すものである。
本実施例で示したような方法によって形成された結晶珪素膜は、耐フッ酸性が良好であるという特徴がある。本発明者らによる知見によれば、ニッケルをプラズマ処理で導入し、結晶化させた結晶性珪素膜は、耐フッ酸性が低い。
例えば、TFT作製においては、結晶性珪素膜上にゲイト絶縁膜や層間絶縁膜として機能する酸化珪素膜を形成し、それに電極の形成のために穴開け工程を経て、電極を形成をする作業が必要とされる。このような場合、酸化珪素膜を緩衝フッ酸によって除去する工程が通常採用される。しかしながら、結晶性珪素膜の耐フッ酸性が低い場合、酸化珪素膜のみを選択的に除去することは困難であり、結晶性珪素膜をも同時にエッチングしてしまうという問題がある。
しかしながら、結晶性珪素膜が耐フッ酸性を有している場合、酸化珪素膜と結晶性珪素膜のエッチングレートの違い(選択比)を大きくとることができるので、酸化珪素膜のみを選択的の除去でき、作製工程上極めて有利である。
以上述べたように、横方向に結晶成長した領域は触媒元素の濃度が小さく、しかも結晶性が良好であるので、この領域を半導体装置の活性領域として用いることは有利である。例えば、TFTのチャネル形成領域として利用することは極めて有用である。
本実施例は、本発明の方法を利用して作製した結晶性珪素膜を用いて、TFTを作製する例である。本実施例のTFTは、アクティブマトリックス型の液晶表示装置のドライバー回路や画素部分に用いることができる。なおこのようなTFTは、液晶表示装置のみではなく、一般に言われる薄膜集積回路に利用できることはいうまでもない。
図3に本実施例の作製工程の概要を示す。まずN0ガラス基板11上に下地の窒化珪素膜(図示せず)を成膜し、その上に酸化珪素膜(図示せず)を2000Åの厚さに成膜する。この窒化珪素膜および酸化珪素膜は、ガラス基板からの不純物の拡散を防ぐために設けられる。
そして、非晶質珪素膜104を実施例1と同様な方法で500Åの厚さに成膜する。成膜手段としては、シランあるいはジシランの如きポリシランを用いてLPCVDで成膜した非晶質珪素を用いることが素子の特性上有効であった。そして、自然酸化膜を取り除くためのフッ酸処理の後、薄い酸化膜を20Å程度の厚さに酸素雰囲気でのUV光の照射によって成膜する。この薄い酸化膜の作製方法は、過水処理や熱酸化による方法でもよい。
そして10ppmのニッケルを含有した酢酸塩溶液を塗布し、5分間保持し、スピナーを用いてスピンドライをおこなう。その後、緩衝フッ酸によって酸化珪素膜を取り除き、550℃、4時間の加熱によって、珪素膜を結晶化させる。
上記加熱処理をおこなうことによって、非晶質成分と結晶成分とが混在した珪素膜を得られる。この結晶成分はその後の高温における結晶成長時の結晶核が存在している領域である。
その後、800℃で窒素中で2時間のアニールをおこない、全面を結晶化させると共に、珪素膜の結晶性を助長させる。この工程よって、結晶成分に存在している結晶核を核として結晶成長がおこなわれる。
次に、結晶化した珪素膜をパターニングして、島状の領域104を形成する。
島状の領域104はTFTの活性層を構成する。そして、厚さ200〜1500Å、ここでは1000Åの酸化珪素105を形成する。この酸化珪素膜はゲイト絶縁膜として機能する。(図3(A))
この状態で電気炉中での加熱処理、あるいはKrFエキシマーレーザー(波長248nm、パルス幅20nsec)あるいはそれと同等な強光を照射することで、シリコン活性層領域104と酸化珪素膜105の界面の状態を改善してもよい。特に、赤外光を用いたRTA(ラピットサーマルアニール)は、ガラス基板を加熱せずに、珪素のみを選択的に加熱することができるため、基板の温度をN0ガラスの軟化点以下としながらより高温でのアニールと同等なアニールをおこなうことができ、珪素と酸化珪素膜との界面における界面準位を減少させることができる。
その後、厚さ2000Å〜1μmのタンタル膜を電子ビーム蒸着法によって形成して、これをパターニングし、ゲイト電極106を形成する。次に白金を陰極、このタンタルのゲイト電極を陽極として、陽極酸化を行う。陽極酸化は、最初一定電流で80Vまで電圧を上げ、その状態で1時間保持して終了させる。本実施例では定電流状態では、電圧の上昇速度は2〜5V/分が適当である。このようにして、厚さ1500〜3500Å、例えば、2000Åの陽極酸化物109を形成する。(図3(B))
その後、イオンドーピング法(プラズマドーピング法ともいう)によって、各TFTの島状珪素領域に、ゲイト電極部をマスクとして自己整合的に不純物(燐)を注入する。ドーピングガスとしてはフォスフィン(PH3 )を用いた。ドーズ量は、1〜4×1015cm-2とする。
さらに、図3(C)に示すようにKrFエキシマーレーザー(波長248nm、パルス幅20nsec)を照射して、上記不純物領域の導入によって結晶性の劣化した部分の結晶性を改善させる。レーザーのエネルギー密度は150〜400mJ/cm2 、好ましくは200〜250mJ/cm2 である。こうして、N型不純物(燐)領域108、109を形成する。これらの領域のシート抵抗は200〜800Ω/□であった。
上記工程において、レーザー光を用いる代わりに、電気炉中での加熱処理を用いても良い。また、フラッシュランプを使用して短時間に1000〜1200℃(珪素モニターの温度)まで上昇させ、試料を加熱する、いわゆるRTA(ラピッド・サーマル・アニール;RTP、ラピット・サーマル・プロセスともいう)
等のいわゆるレーザー光と同等の強光を用いてもよい。
その後、全面に層間絶縁物110として、TEOSを原料として、これと酸素とのプラズマCVD法、もしくはオゾンとの減圧CVD法あるいは常圧CVD法によって酸化珪素膜を厚さ3000Å形成する。基板温度は250〜450℃、例えば、350℃とする。成膜後、表面の平坦性を得るため、この酸化珪素膜を機械的に研磨する。(図3(D))
そして、層間絶縁物110をエッチングして、図1(E)に示すようにTFTのソース/ドレインにコンタクトホールを形成し、クロムもしくは窒化チタンの配線112、113を形成する。
従来、プラズマ処理を用いてニッケルを導入した結晶性珪素膜は、酸化珪素膜に比較して緩衝フッ酸に対する選択性が低いので、上記コンタクトホールの形成工程において、エッチングされてしまうことが多かった。
しかし、本実施例のように10ppmの低濃度で水溶液を用いてニッケルを導入した場合には、耐フッ酸性が高いので、上記コンタクトホールの形成が安定して再現性よく行なうことができる。
最後に、水素中で300〜400℃で0.1〜2時間アニールして、活性層の水素化を完了する。このようにして、TFTが完成する。そして、同時に作製した多数のTFTをマトリクス状に配列せしめてアクティブマトリクス型液晶表示装置として完成する。このTFTは、ソース/ドレイン領域108/109とチャネル形成領域114を有している。また115がNIの電気的接合部分となる。
本実施例の構成を採用した場合、活性層中に存在するニッケルの濃度は、3×1018cm-3程度、あるいは、それ以下の、1×1016cm-3〜3×1018cm-3であると考えられる。
本実施例で作製されたTFTは、移動度がNチャネルで200cm2 /Vs以上のものが得られている。また、しきい値電圧(Vth)も小さく良好な特性を有していることが確認されている。さらに、移動度のバラツキも±10%以内であることが確認されている。このバラツキの少なさは、加熱処理により不完全な結晶化と後工程の高温(本実施例では800℃)熱処理による結晶性の助長とによる工程によるものと考えられる。650℃以下の熱処理による結晶化工程のみを利用した場合には、Nチャケル型で150cm2 /Vs以上のものを容易に得ることができるが、バラツキが大きく、本実施例のような均一性を得ることができない。
本実施例においてはタンタルゲイトを用いた実施例を示したが、これをN型あるいはP型の多結晶珪素を用いた珪素ゲイトとしても良いことは言うまでもない。また、アイランドのエッチングを施した後に高温熱アニールをおこなう構成としても良い。その場合には基板の縮みによるマスク合わせの困難が生じるため、基板としては石英を用いることが望ましい。
本実施例においては、実施例2に示すようにニッケルを選択的に導入し、その部分から横方向(基板に平行な方向)に結晶成長した領域を用いて電子デバイスを形成する例を示す。このような構成を採用した場合、デバイスの活性層領域におけるニッケル濃度をさらに低くすることができ、デバイスの電気的安定性や信頼性の上から極めて好ましい構成とすることができる。
図4に本実施例の作製工程を示す。まず、石英基板201を洗浄し、TEOSと酸素を原料ガスとしてプラズマCVD法によって厚さ2000Åの酸化珪素の下地膜202を形成する。なお、汚染等の問題が無視できる場合にはこの工程は無視できる。そして、プラズマCVD法によって、厚さ500〜1500Å、例えば1000Åの真性(I型)の非晶質珪素膜203を成膜する。次に連続的に厚さ500〜2000Å、例えば1000Åの酸化珪素膜205をプラズマCVD法によって成膜する。そして、酸化珪素膜205を選択的にエッチングして、非晶質珪素の露出した領域206を形成する。
次に、実施例2に示した方法により結晶化を助長する触媒元素であるニッケル元素を含んだ溶液(ここでは酢酸塩溶液)塗布する。酢酸溶液中におけるニッケルの濃度は100ppmである。その他、詳細な工程順序や条件は実施例2で示したものと同一である。
この後、窒素雰囲気下で500〜620℃、例えば550℃、4時間の加熱アニールをおこない、珪素膜203を結晶化する。結晶化は、ニッケルと珪素膜が接触した領域206を出発点として、矢印で示されるように基板に対して平行な方向に進行する。図においては領域204はニッケルが直接導入されて結晶化した部分、領域203は横方向に結晶化した部分を示す。この203で示される横方向への結晶は、25μm程度である。またその結晶成長方向は概略〈111〉軸方向であることが確認されている。(図4(A))
上記加熱処理による結晶化工程の後に、酸化珪素膜205を全面的にエッチングし、その後、さらに1050℃で60分程度の高温熱アニールを酸素中でおこない、結晶性を向上させる。この工程において、結晶性の向上と同時に1000Å程度の熱酸化膜が形成される。応力等が問題とならないときには、この熱酸化膜をゲイト絶縁膜として使用しても良い。本実施例では応力を考慮して、ゲイト絶縁膜に熱酸化膜を用いることを避けた。
次に、熱酸化膜を除去する。そして、珪素膜204をドライエッチングして、島状の活性層領域208を形成する。この際、図4(A)で206で示された領域は、ニッケルが直接導入された領域であり、ニッケルが高濃度に存在する領域である。また、結晶成長の先端にも、やはりニッケルが高濃度に存在することが確認されている。これらの領域では、その中間の領域に比較してニッケルの濃度が高いことが判明している。したがって、本実施例においては、活性層208において、これらのニッケル濃度の高い領域がチャネル形成領域と重ならないように回路を設計した。
その後、TEOSを用いたLPCVDによって、基板を800℃〜850℃に加熱した状態で高温CVD酸化膜を形成する。これがゲイト絶縁膜として作用する酸化珪素膜209となる。この酸化珪素膜209の厚さは1000Åとする。
(図4(B))
引き続いて、ゲイト電極となるPまたはBをドープした多結晶珪素膜をLPCVD法により1000Å〜4000Åの厚さに成膜し、パターニングして、ゲイト電極210を形成する。(図4(C))
次に、イオンドーピング法(プラズマドーピング法とも言う)によって、活性層領域(ソース/ドレイン、チャネルを構成する)にゲイト電極210をマスクとして、自己整合的にN導電型を付与する不純物(ここでは燐)を添加する。ドーピングガスとして、フォスフィン(PH3 )を用い、加速電圧を60〜90kV、例えば80kVとする。ドーズ量は1×1015〜8×1015cm-2、例えば、4×1015cm-2とする。この結果、N型の不純物領域212と213を形成することができる。
その後、窒素雰囲気中で600℃、12時間加熱を行い、不純物の活性化をおこなった。この活性化工程の後に、必要に応じて水素雰囲気中で400℃、1時間熱処理することは欠陥準位密度を低下させるのに有効であった。
続いて、厚さ6000Åの酸化珪素膜214を層間絶縁物としてプラズマCVD法によって形成する。さらに、スピンコーティング法によって透明なポリイミド膜215を形成し、表面を平坦化する。
そして、層間絶縁物214、215にコンタクトホールを形成して、金属材料、例えば、窒化チタンとアルミニウムの多層膜によってTFTの電極・配線217、218を形成する。最後に、1気圧の水素雰囲気で350℃、30分のアニールをおこない、TFTを有するアクティブマトリックス回路を完成させる。(図4(F))
本実施例で作製したTFTは高移動度を得ることができるので、アクティブマトリックス型の液晶表示装置のドライバー回路に利用することができる。
図5に本実施例の作製工程の断面図を示す。まず、石英基板501上にスパッタリング法によって厚さ2000Åの酸化珪素の下地膜502を形成する。次に、プラズマCVD法またはLPCVD法によって、厚さ500〜1500Å、例えば1000Åの真性(I型)の非晶質珪素膜を成膜する。そして、実施例1で示した方法により非晶質珪素膜の表面に結晶化を助長する触媒元素としてニッケルを導入する。そして窒素雰囲気(大気圧)、550℃、4時間熱アニールして結晶化させる。そして、珪素膜を10〜1000μm角の大きさにエッチングして、島状の珪素膜(TFTの活性層)503を形成する。(図5(A))
その後、800〜1100℃、代表的には1000℃の酸素雰囲気中で2時間程度アニールを施すことにより、結晶性の向上と界面の特性を改善すると共に、熱酸化膜からなるゲート絶縁膜504を厚さ500〜1500Å、例えば1000Åの厚さに形成する。注目すべきは、かかる酸化により、初期の珪素膜は、その表面が50Å以上減少し、結果として、珪素膜の最表面部分の汚染が、珪素−酸化珪素界面には及ばないようになることである。すなわち、清浄な珪素−酸化珪素界面が得られることである。酸化珪素膜の厚さは酸化される珪素膜の2倍であるので、1000Åの厚さの珪素膜を酸化して、厚さ1000Åの酸化珪素膜を得た場合には、残った珪素膜の厚さは500Åということになる。
熱酸化によって酸化珪素膜504を形成したのち、一酸化二窒素雰囲気(1気圧、100%)、600℃で2時間アニールする。(図5(B))
引き続いて、減圧CVD法によって、厚さ3000〜8000Å、例えば6000Åの多結晶珪素(0.01〜0.2%の燐を含む)を成膜する。そして、珪素膜をエッチングして、ゲイト電極505を形成する。
さらに、この珪素膜をマスクとして自己整合的に、イオンドーピング法(プラズマドーピング法とも言う)によって、活性層領域(ソース/ドレイン、チャネルを構成する)にN導電型を付与する不純物(ここでは燐)を添加する。
ドーピングガスとして、フォスフィン(PH3 )を用い、加速電圧を60〜90kV、例えば80kVとする。ドーズ量は1×1015〜8×1015cm-2、例えば、5×1015cm-2とする。この結果、N型の不純物領域506と507が形成される。その後、窒素中600℃で12時間熱アニール処理を施して、不純物の活性化をおこなう。活性化工程はレーザー光の照射によっても良い。(図5(C))
また、同様にこの不純物の活性化工程は、近赤外光によるランプアニールによる方法でもよい。近赤外線は非晶質珪素よりも結晶化した珪素へは吸収されやすく、1000℃以上の熱アニールにも匹敵する効果的なアニールをおこなうことができる。その反面、ガラス基板へは吸収されにくい(遠赤外光はガラス基板に吸収されるが、可視・近赤外光(波長0.5〜4μm)は吸収されにくい)ので、ガラス基板を高温に加熱することがなく、また短時間の処理ですむので、ガラス基板の縮みが問題となる工程においては最適な方法であるといえる。
続いて、厚さ6000Åの酸化珪素膜508を層間絶縁物としてプラズマCVD法によって形成する。この層間絶縁物としてはポリイミドを利用してもよい。
さらにコンタクトホールを形成して、金属材料、例えば、窒化チタンとアルミニウムの多層膜によってTFTの電極・配線509、510を形成する。最後に、1気圧の水素雰囲気で350℃、30分のアニールをおこない、TFTを完成する。(図5(D))
上記に示す方法で得られたTFTの移動度は110〜150cm2 /Vs、S値は0.2〜0.5V/桁であった。また、同様な方法によってソース/ドレインにホウ素をドーピングしたPチャネル型TFTも作製したところ、移動度は90〜120cm2 /Vs、S値は0.4〜0.6V/桁であり、公知のPVD法やCVD法によってゲイト絶縁膜を形成した場合に比較して、移動度は2割以上高く、S値は20%以上も減少した。
本実施例では、図6に示す如く1枚のガラス基板上にディスプレーから、CPU、メモリーまで搭載した集積回路を用いた電気光学システムについて示す。本実施例は、各集積回路を本発明を用いた結晶性珪素膜を用いたTFTで作製する例である。
図6において、入力ポートとは、外部から入力された信号を読み取り、画像用信号に変換し、補正メモリーは、アクティブマトリクスパネルの特性に合わせて入力信号等を補正するためのパネルに固有のメモリーである。特に、この補正メモリーは、各画素固有の情報を不揮発性メモリーとして有し、個別に補正するためのものである。すなわち、電気光学装置の画素に点欠陥のある場合には、その点の周囲の画素にそれに合わせて補正した信号を送り、点欠陥をカバーし、欠陥をにより大きな信号を送って、周囲の画素同じ明るさとなるようにするものである。
CPUとメモリーは通常のコンピュータのものと同様で、特にメモリーは各画素に対応した画像メモリーをRAMとして持っている。また、画像情報に応じて、基板を裏面から照射するバックライトを変化させることもできる。
本実施例に示す如く、同一基板上に結晶性珪素膜を用いたTFTで必要とする集積回路を形成することで、高度に集積化された液晶表示装置を得ることができる。
本実施例を図7〜図11を用いて説明する。図7は本実施例でTFTを作製する工程断面図を示す。石英基板701を70℃過酸化水素水とアンモニアの混合溶液(過水アンモニア)によって洗浄したのち、スパッタ法によって厚さ2000Åの酸化珪素膜702を堆積した。さらに、プラズマCVD法によって厚さ500Åの非晶質珪素膜を堆積した。成膜時の基板温度は160℃とした。
そして、基板を70℃の過水アンモニア溶液に5分浸すことにより、非晶質珪素膜の表面にごく薄い酸化珪素膜を形成した。そして、珪素膜表面に実施例1および2と同様に酢酸ニッケル溶液をスピンコーティング法によって塗布した。酢酸ニッケルの濃度は10ppmとした。
その後、熱アニール処理をおこなって、非晶質珪素膜を結晶化せしめた。熱アニール処理は、最初に450℃、1時間の主として水素出しを目的とする工程とその後の、550℃、2時間の結晶化を目的とする工程の2段階に分けておこなった。このようにして、結晶性珪素膜703を得た。
さらに、珪素膜表面の酸化珪素膜を酢酸とフッ酸とフッ化アンモニウムが50:1:50の比率で混合されたエッチャントで除去し、この状態でKrFエキシマーレーザー光を照射して、さらに結晶性を改善した。(図7(A))
そして、550℃で1時間の熱酸化をおこなって珪素膜表面に薄い酸化珪素の保護膜(図示せず)を形成し、珪素膜をドライエッチングして、島状の活性層領域704(NチャネルTFT用)、705(PチャネルTFT用)を形成した。
(図7(B))
次に、イオンドーピング法によって、燐および硼素を選択的に活性層に注入し、Nチャネル型TFTのソース706、ドレイン707、Pチャネル型TFTのソース708、ドレイン709を形成した。燐のドーズ量は5×1014cm-2、加速電圧は10kV、硼素のドーズ量は1×1015cm-2、加速電圧は10kVとした。そして、酸化珪素の保護膜を除去した。(図7(C))
再び、550℃で1時間の熱酸化をおこなって活性層領域の表面に薄い酸化珪素膜を形成した後、TEOSを用いたプラズマCVD法によって、厚さ1200Åの酸化珪素膜710を堆積した。そして、800℃、30分の熱アニール処理をおこなった。この際、本実施例では2種類の熱アニール処理をおこなった。すなわち、第1は窒素雰囲気での熱アニール(試料A)で、第2は一酸化二窒素雰囲気での熱アニール(試料B)である。
次に、スパッタ法によって厚さ4000Åのアルミニウム膜を堆積した。アルミニウムには0.18重量%のスカンジウム(Sc)を含有せしめた。そして、アルミニウム膜をエッチングして、ゲイト電極711(NチャネルTFT用)、712(PチャネルTFT用)を形成した。この際、ゲイト電極とソース/ドレインとの位置関係を様々に形成した。すなわち、ドレインとゲイト電極との間の距離をx[μm]、ソースとゲイト電極との間の距離をy[μm]とし、x=+4、+2、+1、0、−2、y=+4、+2、+1、0、−2とした。ここで、負号はソース/ドレインとゲイト電極が重なっている状態と意味する。
さらに、酒石酸のアンモニア溶液(pH=6.9〜7.1)で陽極酸化をおこなうことにより、ゲイト電極表面に厚さ約2000Åの陽極酸化物(酸化アルミニウム)被膜713、714を形成した。陽極酸化については、特開平5−267667に記述されている方法を用いた。陽極酸化工程の後、ゲイト配線を分断した。(図7(D))
そして、層間絶縁物715をプラズマCVD法によって堆積した。層間絶縁物は厚さ500Åの窒化珪素膜(下層膜)と、厚さ5000Åの酸化珪素膜(上層膜)の2層構造とした。成膜時の基板温度は350℃とした。そして、層間絶縁物にコンタクトホールを開孔し、厚さ500Åのチタン膜と厚さ8000Åのアルミニウム膜(2%の珪素を含有する)の2層構造の金属膜をスパッタ法によって堆積した。
その後、金属膜をドライエッチングして、Nチャネル型TFTのソース電極716、ドレイン電極717、Pチャネル型TFTのソース電極718、ドレイン電極719を形成した。最後に、水素雰囲気において350℃、1時間の熱アニール処理をおこなった。以上によってTFTを形成した。(図7(E))
さらに、外部より水分・可動イオン等が進入することを防止するために窒化珪素膜によってパッシベーション膜を形成してもよい。
本実施例では、実施例3〜5とは異なり、ソース/ドレインを形成したのちに、高温(本実施例では800℃)の熱アニール処理をおこなう。この工程では、活性層の珪素の結晶性を向上させるだけでなくソース/ドレインの活性化やゲイト絶縁膜の界面特性改善も同時におこなうことができる。
本実施例では、上記の熱アニール処理の際の雰囲気を窒素(試料A)、一酸化二窒素(試料B)として、2種類の試料を作製したが、概して、試料Bの方が特性がよかった。例えば、Nチャネル型TFTのS値に関しては、試料Aでは0.16〜0.23V/桁であったのに、試料Bでは0.14〜0.19V/桁であった。このことは、一酸化二窒素によるゲイト絶縁膜の界面特性が改善されていることを示す。しかしながら、Pチャネル型TFTに関しては、大した差異は認められなかった。
ゲイト電極/ソース/ドレインのオフセット長とTFT特性の関係を図8〜図11に示す。図8は初期の電界効果移動度、図9は測定を10回繰り返したのちの電界効果移動度の変動率(負号は電界効果移動度の増加を意味する)、図10は初期のしきい値電圧、図11は初期のオフ電流を示し、いずれも(A)はPチャネル型TFT、(B)はNチャネル型TFTを示す。
電界効果移動度の変動率(図9)に関しては、電界効果移動度が10未満の素子については有為な評価ができないので、評価していない。以上の結果から、ゲイトとソース/ドレインが離れ過ぎている素子では良好な特性が得られず、ややゲイト電極とソース/ドレインが重なった素子において、好ましい特性が得られたことが分かる。(図8〜図11)
実施例の工程を示す
実施例の工程を示す。
実施例の作製工程を示す。
実施例の作製工程を示す。
実施例の作製工程を示す。
実施例の構成を示す。
実施例の作製工程を示す。
実施例のTFT特性(電界効果移動度)を示す。
実施例のTFT特性(電界効果移動度の変動率)を示す。
実施例のTFT特性(しきい値電圧)を示す。
実施例のTFT特性(オフ電流)を示す。
符号の説明
11・・・・ガラス基板
12・・・・非晶質珪素膜
13・・・・酸化珪素膜
14・・・・ニッケルを含有した酢酸溶液膜
15・・・・ズピナー
21・・・・マスク用酸化珪素膜
20・・・・酸化珪素膜
11・・・・ガラス基板
104・・・活性層
105・・・酸化珪素膜
106・・・ゲイト電極
109・・・酸化物層
108・・・ソース/ドレイン領域
109・・・ドレイン/ソース領域
110・・・層間絶縁膜(酸化珪素膜)
112・・・電極
113・・・電極