JP4678631B2 - シート状不燃化粧材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はシート状不燃化粧材に関し、更に詳しくは、薄型で高度な不燃性及び耐水性を有するシート状不燃化粧材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、建築物の防火対策上、各種建築物の不燃化に際し、石綿スレート板、けい酸カルシウム板、石こうボードなどの各種不燃基材の表面に、塗装、化粧シート貼合あるいは突板貼合等を施した不燃化粧材が使用されている。また最近は、施工作業性改善のための軽量化あるいは設計、施工方法の多様化から、薄型で高度な不燃性及び耐水性を有するシート状不燃化粧材に対する必要性が高まりつつある。
【0003】
しかし、現状の不燃化粧材が所要の不燃性能を確保するには、その基材である不燃基材が所要の不燃性能を確保していなければならない。そして、係る不燃基材が所要の不燃性能を確保するには、石こうボードで9mm厚以上、けい酸カルシウム板でも4〜5mm厚以上の厚さが必要であり、一般に最も薄型でも4mm厚以上でないと所要の不燃性能を確保することが困難となることが多かった。すなわち、厚さが3mm厚以下のシート状不燃基材では、JIS A−1321の表面試験において、亀裂の発生などの防火上有害な変形を発生しやすく、不燃材料として具備すべき不燃性能を確保せしめることができない場合が多く、従って、係る厚さが3mm厚以下のシート状不燃基材の表面に化粧層を設けた化粧材も、JIS A−1321の表面試験において、亀裂の発生などの防火上有害な変形を発生しやすく、不燃材料として具備すべき不燃性能を確保せしめることができない場合が多かった。
【0004】
よって、厚さが3mm厚以下の基材の表面に化粧層を設けたものでもJIS A−1321の表面試験において亀裂の発生などの防火上有害な変形の発生がなく、不燃材料として具備すべき不燃性能を有する薄型の不燃化粧材の開発が急がれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者は、かかる課題を解決すべく鋭意試行錯誤を繰り返したところ、多量の含水無機化合物を含有するか、あるいは多量の含水無機化合物及び炭酸塩を含有し、さらに、特定繊維長を有するロックウール繊維と特定の熱硬化特性を有する熱硬化性樹脂とセルロース繊維の所定量を含有し、撥水処理され、かつ、厚さが0.5〜3mmであるシート状不燃基材の少なくとも片面に化粧層を有するシート状不燃化粧材は、その基材であるシート状不燃基材が、3mm厚以下という薄型でもJIS A−1321の表面試験において亀裂の発生などの防火上有害な変形を発生せず、不燃材料として具備すべき高度な不燃性能及び耐水性能を有することを見い出し、本発明を完成した。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るシート状不燃化粧材は、含水無機化合物及び炭酸塩を固形分で合計60〜95質量%と、セルロース繊維及び繊維長2mm以上のロックウール繊維を固形分で合計4〜40質量%と、熱硬化性樹脂を固形分で1〜20質量%とを含有し、かつ、前記含水無機化合物/炭酸塩が固形分質量比で前記含水無機化合物/炭酸塩=100/0〜50/50であり、前記セルロース繊維/ロックウール繊維が固形分質量比でセルロース繊維/ロックウール繊維=20/80〜62/38である熱圧成形体であって、前記熱硬化性樹脂の全部または一部はキュラストメータによる175℃での熱硬化速度が0.5N/分以上6N/分未満なる硬化特性を有し、撥水処理され、かつ、厚さが0.5〜3mmであるシート状不燃基材の少なくとも片面に化粧層を有するものである。
【0007】
上記した含水無機化合物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、二水和石こう及びアルミン酸化カルシウム等を挙げることができる。これらの化合物は何れも分子内に結晶水を持ち化学的に類似した構造を有する。また、含水無機化合物は、その種類によって分解温度及び吸熱量に幾分差があるが、高温加熱時に分解して吸熱作用により不燃化効果を示すという点では全く共通している。従って、基本的に前記した含水無機化合物の何れを用いてもよいが、入手価格等の経済性をも考慮すると水酸化アルミニウムが最適である。
【0008】
本発明で使用する炭酸塩としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸ベリリウム、炭酸亜鉛等を挙げることができる。これらの炭酸塩はその種類により、分解温度及び吸熱量に幾分差があるが、高温加熱時に分解して吸熱作用により不燃化効果を示すという点では全く共通している。従って、基本的に前記した炭酸塩の何れを用いてもよいが、入手価格等の経済性をも考慮すると、炭酸カルシウムが最適である。なお、炭酸塩配合によるもうひとつの重要な効果として本発明者が特開平5−112659号公報で指摘したところの発煙量低減効果を挙げることができる。
【0009】
本発明に係るシート状不燃基材中の含水無機化合物を固形分で60〜95質量%とするか、あるいは含水無機化合物と炭酸塩の合計の含有率範囲を固形分で60〜95質量%とする。好ましくは70〜92質量%、さらに好ましくは75〜88質量%である。その含有率が60質量%未満では十分な不燃性が得られない。反対に95質量%を超えた場合は、含水無機化合物の過多あるいは含水無機化合物と炭酸塩の合計量の過多により十分な抄紙性あるいは機械的強度が得られず不適である。なおシート状不燃基材中の含水無機化合物を固形分で70〜92質量%の範囲とするか、あるいは含水無機化合物と炭酸塩の合計の含有率を70〜92質量%の範囲とすることで十分な不燃性と抄紙性あるいは機械的強度を確保しやすくなり、75〜88質量%の範囲とすることで一層、十分な不燃性と抄紙性あるいは機械的強度を確保しやすくなる。
【0010】
また、含水無機化合物/炭酸塩の含有質量比率は固形分で50/50、好ましくは60/40よりも含水無機化合物過多側としなければならない。50/50よりも含水無機化合物過少側とした場合、不燃性が低下することがあり不適である。なお、含水無機化合物/炭酸塩の含有質量比率は固形分で60/40よりも含水無機化合物過多側とすることでより十分な不燃性を確保しやすくなる。
【0011】
上記したセルロース繊維としては、針葉樹系あるいは広葉樹系の化学パルプ、機械パルプ、セミケミカルパルプ等の木材パルプあるいは木綿パルプ、麻パルプ、各種古紙などの中から選ばれる1種類あるいは2種類以上を併用して使用すればよい。木材パルプは供給量及び品質が安定しており価格も比較的安価であることから最も使いやすいセルロース繊維原料である。木綿パルプ及び麻パルプは供給量が不安定であり価格も高価であるが、本発明におけるような吸熱分解性を有する無機化合物を多量に含有するシート状成形体においては、必要に応じて該木綿パルプあるいは麻パルプを使用することによりシート状不燃基材及びシート状不燃化粧材の機械的強度の低下を最小限にとどめることができる。
【0012】
本発明で使用するロックウール繊維の繊維長は2mm以上、好ましくは3mm以上でなければならない。その繊維長が2mm未満では、薄型においてJIS A−1321の表面試験で亀裂の発生等の防火上有害な変形を発生しやすくなり十分な不燃性能を確保できない。なお、その繊維長を3mm以上とすることで薄型においてもJIS A−1321の表面試験で亀裂等の防火上有害な変形が一段と発生しにくくなり一層十分な不燃性能を確保しやすくなる。
【0013】
本発明に係るシート状不燃基材中のセルロース繊維/ロックウール繊維の含有質量比率は固形分で20/80〜62/38、好ましくは25/75〜60/40、さらに好ましくは30/70〜55/45である。20/80よりもセルロース繊維過少側とした場合、セルロース繊維の過少により十分な抄紙性か得られず、62/38よりもロックウール繊維過少側とした場合、薄型においてJISA−1321の表面試験で亀裂等の防火上有害な変形を発生しやすくなり十分な不燃性能を確保できない。なお、セルロース繊維/ロックウール繊維の含有質量比率を25/75〜60/40とすることで、薄型においてもJIS A−1321の表面試験で亀裂等の防火上有害な変形が一段と発生しにくくなる。また、セルロース繊維/ロックウール繊維の含有質量比率を30/70〜55/45とすることで、さらに一層薄型での十分な不燃性能を確保しやすくなる。
【0014】
本発明に係るシート状不燃基材中のセルロース繊維と繊維長2mm以上のロックウール繊維の合計の含有率範囲は固形分で4〜40質量%、好ましくは6〜30質量%、さらに好ましくは8〜25質量%である。その合計の含有率が4質量%未満では、セルロース繊維の過少により十分な抄紙性が得られないとともに、ロックウール繊維も過少となり、薄型においてJIS A−1321の表面試験で亀裂等の防火上有害な変形を発生しやすくなり十分な不燃性能を確保できない。反対に、40質量%を超えた場合は、ロックウール繊維の過多により十分な抄紙性が得られない。
【0015】
なお、シート状不燃基材中のセルロース繊維と繊維長2mm以上のロックウール繊維の合計の含有率を6〜30質量%の範囲とすることで、薄型においてもJIS A−1321の表面試験で亀裂等の防火上有害な変形が一段と発生しにくくなり十分な不燃性能を確保しやすくなるとともに抄紙性も確保しやすくなる。また、係るシート状不燃基材中のセルロース繊維と繊維長2mm以上のロックウール繊維の合計の含有率を8〜25質量%の範囲とすることで、さらに一層薄型での十分な不燃性能と十分な抄紙性を確保しやすくなる。
【0016】
本発明で使用する熱硬化性樹脂は、その全部または一部をキュラストメータによる175℃での熱硬化速度が0.5N/分以上6N/分未満、好ましくは1N/分以上4N/分未満なる硬化特性を有するものとしなければならない。
熱硬化性樹脂の全量が、前記熱硬化速度0.5N/分未満のものの場合、得られるシート状基材及びシート状化粧材の機械的強度が不十分となる。また、熱硬化性樹脂の全量が、前記熱硬化速度6N/分以上のものの場合、薄型においてJIS A−1321の表面試験で亀裂等の防火上有害な変形を発生しやすくなり十分な不燃性能を確保できない。
【0017】
なお、本発明で使用する熱硬化性樹脂の全部または一部をキュラストメータによる175℃での熱硬化速度が1N/分以上4N/分未満なる硬化特性を有するものとすることで、薄型においてもJIS A−1321の表面試験で亀裂等の防火上有害な変形が一段と発生しにくくなり十分な不燃性能を確保しやすくなるとともに機械的強度も確保しやすくなる。
【0018】
上記した熱硬化性樹脂としてはフェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、尿素メラミン樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂など(繊維状のものを含む)の中から少なくとも1種類を選択して使用する。これらの熱硬化性樹脂は、その種類により硬化温度等に幾分差があるが、加熱処理に伴う流動硬化作用により不燃性素材に各種成形賦形効果もしくは諸強度の発現効果または曲面施工性さらには含水無機化合物あるいは炭酸塩の脱落防止効果等を与えるという点では全く共通している。従って、基本的には前記した熱硬化性樹脂の何れを用いてもよいが、好ましくは使用する熱硬化性樹脂の硬化温度が併用する含水無機化合物あるいは炭酸塩の分解温度よりも低くなるようにすべきである。さらに入手価格等の経済性をも考慮するとフェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素メラミン樹脂等が最適である。
【0019】
本発明に係るシート状不燃基材中の熱硬化性樹脂の含有率範囲は固形分で1〜20質量%、好ましくは3〜17質量%、さらに好ましくは5〜15質量%である。その含有率が1質量%未満では十分な機械的強度及び含水無機化合物あるいは炭酸塩の脱落防止効果等が得られず、また20質量%を超えた場合は有機物質の過多により十分な不燃性を得ることができない。なお、シート状不燃基材中の熱硬化性樹脂の含有率を3〜17質量%の範囲とすることで、十分な機械的強度及び含水無機化合物あるいは炭酸塩の脱落防止効果等を確保しやすくなるとともに、不燃性も確保しやすくなり、5〜15質量%の範囲とすることで、一層、機械的強度及び含水無機化合物あるいは炭酸塩の脱落防止効果等と不燃性を確保しやすくなる。
【0020】
使用する熱硬化性樹脂の全量に占める前記効果特性を有する熱硬化性樹脂の割合は、固形分で30質量%以上とするのが好ましく、より好ましくは50質量%以上とするのがよい。30質量%未満では、、薄型において、時としてJIS A−1321の表面試験で亀裂等の防火上有害な変形を発生しやすくなり十分な不燃性能を確保しにくくなったり、機械的強度が低下しやすくなったりすることがある。
【0021】
なお、熱硬化性樹脂の全量に占める前記効果特性を有する熱硬化性樹脂の割合を50質量%以上とすることで、薄型においてもJIS A−1321の表面試験で亀裂等の防火上有害な変形が一段と発生しにくくなり十分な不燃性能を確保しやすくなるとともに、機械的強度も確保しやすくなる。
【0022】
本発明に係るシート状不燃基材は撥水処理を施さなければならない。撥水処理は特に限定するものではなく、天然ワックス、石油系ワックス、塩素化パラフィン、ワックスエマルジョン等の各種ワックス系撥水剤、高級脂肪酸誘導体、合成樹脂類、クロム錯塩、ジルコニウム塩、シリコン樹脂などの撥水性付与剤を内添したり含浸もしくは塗布するなどすればよい。
また、かかる撥水性付与剤の添加量は特に限定されるものではないが、重要なことは、シート状不燃基材の少なくとも片面に化粧層を設けたシート状不燃化粧材が十分な耐水性を具備できるような添加量とすべきことである。
【0023】
本発明に係るシート状不燃基材の厚さは0.5〜3mm、好ましくは1〜3mm、さらに好ましくは1〜2.7mm、最も好ましくは1〜2.5mmである。厚さが0.5mm未満では、十分な機械的強度を確保できない。反対に、3mmを超えた場合は、十分な軽量性を確保できなくなる。なお、シート状不燃基材の厚さを1〜3mmの範囲とすることで、十分な機械的強度と軽量性を確保しやすくなり、1〜2.7mmの範囲とすることで、一層、十分な機械的強度と軽量性を確保しやすくなり、1〜2.5mmとすることで、より一層、十分な機械的強度と軽量性を確保しやすくなる。
【0024】
本発明に係るシート状不燃基材は、上記配合のもとに、含水無機化合物/セルロース繊維及び繊維長2mm以上のロックウール繊維/熱硬化性樹脂の構成あるいは含水無機化合物と炭酸塩/セルロース繊維及び繊維長2mm以上のロックウール繊維/熱硬化性樹脂という構成であればよく、その製造法としては、湿式抄造法、乾式成形法などの任意の方法が適用可能であり、特定の製造法に限定するものではないが、以下において、湿式抄造法を適用した場合を例にとって、製造法にも言及しながらさらに詳述する。
【0025】
本発明に係るシート状不燃基材は、含水無機化合物または炭酸塩の歩留を向上せしめるための各種歩留向上剤あるいは必要に応じて着色のための合成染料、顔料等を含有せしめてもよい。また、用途によっては、機械的強度もしくは後加工性の改善等を図るべく乾燥または湿潤紙力増強剤、サイズ剤、耐水化剤等を含有せしめるべきことは言うまでもない。
【0026】
本発明に係るシート状不燃基材に、熱硬化性樹脂を含有せしめる方法としては、熱硬化性樹脂の液状物、繊維状物あるいは粒状物等を原料中に内添したり、紙層形成後に塗布または含浸するなどすればよい。
【0027】
含水無機化合物または炭酸塩を含有せしめる方法としては、含水無機化合物または炭酸塩を含有する塗料を基材に塗布あるいは含浸せしめるなどの方法も考えられるが、所定の含有量を確保し、あるいは厚さ方向での品質の均一化を図るためには、原料スラリー中に含水無機化合物または炭酸塩を粉体状あるいはスラリー状にて内添する方法が最も好ましい。
【0028】
この場合、含水無機化合物、炭酸塩、セルロース繊維、ロックウール繊維及び熱硬化性樹脂の添加方法及び添加順序等は任意であり、必要に応じて叩解処理等を施してもよい。
こうして得た原料スラリーを用いて湿式抄造するには、通常の抄造法によればよい。すなわち、長網、円網あるいは傾斜網等の抄造網上に前記原料スラリーを供給し、濾過、脱水した後、圧搾、乾燥すればよい。また、必要により各種コンビネーション網や、多層円網及び各種ラミネーター等により紙層を2層以上重ね合わせてもよい。
熱圧成形については、従来慣用の熱圧プレス成形、予熱−コールドプレス成形、高周波加熱成形などを単独であるいは2種以上組み合せて適用すればよい。
【0029】
本発明のシート状不燃化粧材は、少なくとも片面に化粧層を有する。本発明に係るシート状不燃基材の少なくとも片面に化粧層を設けるには、塗装、化粧シート貼合あるいは突板貼合などの従来慣用の化粧加工によればよい。
【0030】
塗装に用いる塗料としては、メラミン系樹脂塗料、ポリエステル系樹脂塗料、フェノール系樹脂塗料、ウレタン系樹脂塗料、アクリル系樹脂塗料、各種紫外線硬化樹脂塗料及び各種電子線硬化樹脂塗料などを好適に用いることができる。
化粧シートとしては、メラミン系樹脂含浸化粧紙、ジアリルフタレート系樹脂含浸化粧紙、フェノール系樹脂含浸化粧紙、チタン紙系化粧紙、塩化ビニル樹脂フィルム系化粧シート、フッ化ビニル樹脂フィルム系化粧シート、ポリオレフィン系樹脂フィルム系化粧シート、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム系化粧シートなどを好適に用いることができる。
突板としては、ローズ、チーク、メイプル、マツ、ナラ、スギなどの各種天然木単板を好適に用いることができる。
【0031】
本発明のシート状不燃化粧材の化粧層の厚さは、0.3mm以下、より好ましくは0.2mm以下とするのが好ましい。化粧層の厚さが0.3mmを超えた場合、化粧層の種類によっては、時として、十分な不燃性能を得ることができなくなることがある。化粧層の厚さを0.3mm以下とすることで、十分な不燃性能を確保しやすくなり、0.2mm以下とすることで、より十分な不燃性能を確保しやすくなる。
【0032】
本発明のシート状不燃化粧材は、その基材であるシート状不燃基材が、含水無機化合物とロックウール繊維を含有するか、または含水無機化合物と炭酸塩とロックウール繊維を含有するだけで優れた不燃性を発揮するが、従来慣用の難燃剤の使用を妨げるものではない。併用可能な難燃剤としては、有機リン化合物、含リン含窒素化合物、スルファミン酸グアニジン等のスルファミン酸塩、無機リン酸塩、含ハロゲン化合物及びアンチモン系化合物等の公知の難燃剤を挙げることができる。また、難燃剤の使用方法としては、原料スラリー中に内添せしめるか抄造工程中もしくは抄造後または熱圧成形後に塗布または含浸せしめてシート状不燃基材中に含有せしめるか化粧層中に含有せしめる等の方法が挙げられる。ただし、この場合、シート状不燃基材中の含水無機化合物とロックウール繊維の含有率または含水無機化合物と炭酸塩とロックウール繊維の含有率及び化粧層の種類、組成、厚さ等を考慮して難燃剤の含有量を定めるべきことは当然である。
【0033】
本発明の重要な点は、シート状不燃基材を得るために、特定の繊維長を有するロックウール繊維と特定の熱硬化特性を有する熱硬化性樹脂を用いることにあり、これにより、多量の含水無機化合物とセルロース繊維と前記ロックウール繊維と前記熱硬化性樹脂の所定量を含有するか、あるいは多量の含水無機化合物及び炭酸塩とセルロース繊維と前記ロックウール繊維と前記熱硬化性樹脂の所定量を含有し、撥水処理され、かつ、前記セルロース繊維/ロックウール繊維の含有質量比率が特定範囲内であるシート状熱成形体からなるシート状不燃基材が、3mm厚以下という薄型でも、該シート状不燃基材の少なくとも片面に化粧層を有するシート状不燃化粧材が、JIS A−1321の表面試験において、亀裂等の防火上有害な変形を発生せず、不燃材料として具備すべき高度な不燃性能を有する点にある。
【0034】
既に述べたように、従来の不燃基材では、厚さが3mm以下になるとJIS A−1321の表面試験において、亀裂等の防火上有害な変形を発生しやすく、不燃材料として具備すべき不燃性能を確保できない場合が多かった。そこで本発明者は、多量の含水無機化合物あるいは多量の含水無機化合物及び炭酸塩と比較的少量のセルロース繊維と熱硬化性樹脂を含有するシート状熱成形体において、3mm厚以下という薄型でも、JIS A−1321の表面試験において、亀裂等の防火上有害な変形を発生しない高度な不燃性能を具備せしめるべく、多数次の実験を行なったところ、特定の繊維長を有するロックウール繊維と特定の熱硬化特性を有する熱硬化性樹脂を用いることにより、かかる目的を達成することができることを見出した。
【0035】
すなわち、繊維長2mm以上のロックウール繊維とキュラストメータによる175℃での熱硬化速度(以下において、この意味で単に硬化速度と言うことがある。)が0.5N/分以上6N/分未満なる硬化特性を有する熱硬化性樹脂を用い、かつ、セルロース繊維/ロックウール繊維の含有質量比率を20/80〜62/38の範囲とすることで、かかる目的に適うことを見出したのである。
【0036】
次に、後述する実施例での実験結果を引用しながらさらに説明する。
後述の実施例1、比較例1、比較例2、比較例3、比較例5及び比較例6に係るシート状化粧材は、共に、シート状基材の片面に同じ化粧シートを貼合した構成であり、その基材であるシート状基材は、含水無機化合物、炭酸塩、セルロース繊維、無機繊維、熱硬化性樹脂及び撥水剤という各構成成分の含有率という点では互いにほとんど同一の組成を有し、かつ、厚さは何れもほぼ2mmである。
【0037】
しかし、この中でJIS A−1321の表面試験で亀裂等の防火上有害な変形を発生せず、該表面試験の1級(建築基準法に規定する不燃材料に相当する。)に合格する高度な不燃性を有するものは実施例1に係るシート状基材及びシート状化粧材のみであり、他のものはすべて表面試験において、亀裂が発生し不合格である。
【0038】
次に、前記で引用した、各比較例と実施例1との違いについて説明する。実施例1では、繊維長3mmのロックウール繊維と硬化速度が2.1N/分のフェノール樹脂を用い、かつ、セルロース繊維/ロックウール繊維の含有質量比率が47/53であるのに対し、各比較例と実施例1との違いは、比較例1では、繊維長3mmのロックウール繊維に代えて、繊維長3mmのガラス繊維を用いた点のみ、比較例2では、繊維長3mmのロックウール繊維に代えて、繊維長5mmのガラス繊維を用いた点のみ、比較例3では、熱硬化性樹脂の硬化速度が2.1N/分ではなく13.7N/分である点のみ、比較例5では、ロックウール繊維の繊維長が3mmではなく1mmである点のみ、比較例6では、ロックウール繊維の繊維長が3mmではなく0.15mmである点のみである。
【0039】
また、比較例4は、実施例1とほぼ同一の処方を有し、実施例1との違いはセルロース繊維/ロックウール繊維の含有質量比率が47/53ではなく、本発明で特定する範囲外の67/33である点のみであるが、比較例4に係る1.99mm厚のシート状基材及び該シート状基材の片面に化粧シートを貼合したシート状化粧材は、JIS A−1321の表面試験で亀裂が発生し該表面試験の1級には不合格である。
【0040】
これに対し、繊維長7mmのロックウール繊維と硬化速度が2.1N/分のフェノール樹脂を用い、かつ、セルロース繊維/ロックウール繊維の含有質量比率を本発明で特定する範囲内とした実施例3及び実施例5に係るシート状基材は、それぞれ、1.47mm厚及び1.20mm厚という超薄型であるにもかかわらず、その片面に化粧紙を貼合したシート状化粧材共々JIS A−1321の表面試験で亀裂等の防火上有害な変形を発生せず、該表面試験の1級(建築基準法に規定する不燃材料に相当する。)に合格する高度な不燃性を有している。
【0041】
すなわち、多量の含水無機化合物あるいは多量の含水無機化合物及び炭酸塩と比較的少量のセルロース繊維と熱硬化性樹脂を含有するシート状熱成形体において、繊維長2mm以上のロックウール繊維と硬化速度が0.5N/分以上6N/分未満の熱硬化性樹脂を用い、かつ、セルロース繊維/ロックウール繊維の含有質量比率を20/80〜62/38の範囲とすることにより、はじめて、従来得ることができない場合の多かった厚さ3mm以下でも、JIS A−1321の表面試験において亀裂等の防火上有害な変形を発生せず、該表面試験の1級(建築基準法に規定する不燃材料に相当する。)に合格するシート状不燃基材を得ることができ、該シート状不燃基材の少なくとも片面に化粧層を有するシート状化粧材も、JIS A−1321の表面試験において亀裂等の防火上有害な変形を発生せず、該表面試験の1級(建築基準法に規定する不燃材料に相当する。)に合格する不燃材料とすることができる。
【0042】
繊維長2mm以上のロックウール繊維と硬化速度が0.5N/分以上6N/分未満の熱硬化性樹脂を用い、かつ、セルロース繊維/ロックウール繊維の含有質量比率を20/80〜62/38の範囲とした場合に、かかる好結果の得られる作用・機構の詳細は未だ不明であるが、本発明のシート状不燃化粧材の基材であるシート状不燃基材の骨格構成要素であるセルロース繊維と繊維長2mm以上のロックウール繊維による網状構造に対し、0.5N/分以上6N/分未満なる硬化速度を有する熱硬化性樹脂が熱硬化性樹脂に特有の硬質化を極力伴わずに、前記網状構造を効果的に補強する形で硬化するため、得られるシート状不燃基材は、十分な機械的強度を有すると同時に柔軟性が功を奏して熱応力を速やかに分散せしめ得ることが、薄型においても亀裂等の防火上有害な変形の発生を回避できる要因の一つと考えられる。
【0043】
また、0.5N/分以上6N/分未満なる硬化速度を有する熱硬化性樹脂を用いても、これに加え、繊維長2mm以上のロックウール繊維をセルロース繊維に対し特定の含有質量比率で用いた場合以外は、薄型において、JIS A−1321の表面試験で亀裂が発生してしまうことから、燃焼試験のごとき高温加熱時に、繊維長2mm以上のロックウール繊維がセルロース繊維及び前記熱硬化性樹脂並びに含水無機化合物または炭酸塩との相互作用の中で、該繊維長2mm以上のロックウール繊維に固有で、かつ非常に強力な形状保持効果を発揮することが、薄型においても亀裂等の防火上有害な変形を回避できるもう一つの重要な要因と考えられる。
【0044】
【実施例】
次に、本発明を以下の実施例に基づいてさらに具体的に説明する。
本実施例中の各項目の測定は次の方法によった。
▲1▼厚さ及び密度:JIS P−8118による。
▲2▼曲げ強度:JIS A−5905による。繊維配向性がある場合、繊維配向方向とこれに直角をなす方向について測定し両者の平均を求めた。また、片面に化粧層を有する場合、もしくは表裏で異なる化粧層を有する場合、表裏それぞれにクロスヘッドを接触させて測定し、両者の平均を求めた。
▲3▼耐水性1:100mm角の試験片を23℃、相対湿度50%で十分調湿し質量を測定した後、23℃の蒸留水中に24時間浸漬後に取り出す。次に、表面に付着した余剰水分を紙又は布で手早くふきとり、直ちに質量を測定し、吸水率を、
吸水率(%)=((吸水後の質量−吸水前の質量)/吸水前の質量)×100で求めた。
【0045】
▲4▼耐水性2:JAS 木−7の1類浸漬剥離試験によって試験し、
○:基材及び基材と化粧層との界面近傍に剥離を発生しない。
×:基材もしくは基材と化粧層との界面近傍に剥離を発生する。
で評価した。
▲5▼不燃性1:JIS A−1321の表面試験(1級)で亀裂等の防火上有害な変形の有無で評価した。化粧層を有する場合、化粧層を有する面を加熱面とした。
▲6▼不燃性2:JIS A−1321の表面試験の1級の合否で評価した。化粧層を有する場合、化粧層を有する面を加熱面とした。
また、熱硬化性樹脂のキュラストメータによる175℃での熱硬化速度は、硬化曲線上の最大応力の10%に達した点(応力F10(N),時間T10(分))と最大応力の90%に達した点(応力F90(N),時間T90(分))とを結んだ直線の傾き、すなわち(F90−F10)/(T90−T10)N/分で与えられる。
【0046】
実施例1
市販の針葉樹系未晒硫酸塩パルプと繊維長3mmのロックウール繊維(以下、無機繊維aと略称する。)を離解機にて離解して得たセルロース繊維と無機繊維の混合分散液の所定量を取り、これに水酸化アルミニウム粉体(平均粒径5.7μmである。以下同じ)、炭酸カルシウム粉体(平均粒径1.5μmである。以下同じ)、及びキュラストメータによる175℃での硬化速度が2.1N/分であるフェノール樹脂(以下、熱硬化性樹脂aと略称する。)を添加し、さらに、ワックスエマルジョン系撥水剤を添加し、攪拌機にて十分に分散混合後、角型テスト抄紙機にて抄造し、圧搾、乾燥した後、熱プレスにて加熱処理(温度200℃、圧力3.9MPa、時間10分)し、シート状基材A′を得た。
【0047】
次に、シート状基材A′の片面に、尿素メラミン系接着剤を介して、表面に抽象柄模様の印刷層を有するチタン紙系化粧シート(厚さ0.08mm)を固着し、シート状化粧材Aを得た。
シート状基材A′について、含水無機化合物及び炭酸塩の合計含有率、含水無機化合物/炭酸塩の含有質量比率、セルロース繊維と無機繊維の合計含有率、セルロース繊維/無機繊維の含有質量比率、熱硬化性樹脂及び撥水剤の含有率を表1に示すとともに、厚さ、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。また、シート状化粧材Aについて、厚さ、密度、曲げ強度、耐水性1、耐水性2、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【0048】
実施例2
実施例1において、シート状基材中の各成分の配合量を変え、熱プレスの加熱処理条件を、温度175℃、圧力2.0MPa、時間3分とした以外は実施例1と同様にして、シート状基材B′を得た。
次に、シート状基材B′の両面に、尿素メラミン系接着剤を介して、表面に抽象柄模様の印刷層を有するチタン紙系化粧シート(厚さ0.08mm)を固着し、シート状化粧材Bを得た。
【0049】
シート状基材B′について、含水無機化合物及び炭酸塩の合計含有率、含水無機化合物/炭酸塩の含有質量比率、セルロース繊維と無機繊維の合計含有率、セルロース繊維/無機繊維の含有質量比率、熱硬化性樹脂及び撥水剤の含有率を表1に示すとともに、厚さ、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。また、シート状化粧材Bについて、厚さ、密度、曲げ強度、耐水性1、耐水性2、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【0050】
実施例3
実施例1において、無機繊維aに代えて、繊維長7mmのロックウール繊維(以下、無機繊維bと略称する。)を用いた以外は実施例1と同様にして、シート状基材C′を得た。
次に、シート状基材C′に、実施例1と同様にして化粧シートを固着し、シート状化粧材Cを得た。
シート状基材C′について、含水無機化合物及び炭酸塩の合計含有率、含水無機化合物/炭酸塩の含有質量比率、セルロース繊維と無機繊維の合計含有率、セルロース繊維/無機繊維の含有質量比率、熱硬化性樹脂及び撥水剤の含有率を表1に示すとともに、厚さ、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。また、シート状化粧材Cについて、厚さ、密度、曲げ強度、耐水性1、耐水性2、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【0051】
実施例4
実施例2において、無機繊維aに代えて、無機繊維bを用い、熱硬化性樹脂aに代えて、キュラストメータによる175℃での硬化速度が3.3N/分であるフェノール樹脂(以下、熱硬化性樹脂bと略称する。)を用い、炭酸カルシウム粉体を配合しない以外は実施例2と同様にして、シート状基材D′を得た。
次に、シート状基材D′の片面に、尿素メラミン系接着剤を介して、突板(材種はメイプルで厚さ0.2mm)を固着し、シート状化粧材Dを得た。
シート状基材D′について、含水無機化合物及び炭酸塩の合計含有率、含水無機化合物/炭酸塩の含有質量比率、セルロース繊維と無機繊維の合計含有率、セルロース繊維/無機繊維の含有質量比率、熱硬化性樹脂及び撥水剤の含有率を表1に示すとともに、厚さ、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。また、シート状化粧材Dについて、厚さ、密度、曲げ強度、耐水性1、耐水性2、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【0052】
実施例5
実施例1において、無機繊維aに代えて、無機繊維bを用いた以外は実施例1と同様にして、シート状基材E′を得た。
次に、シート状基材E′に、実施例1と同様にして化粧シートを固着し、シート状化粧材Eを得た。
シート状基材E′について、含水無機化合物及び炭酸塩の合計含有率、含水無機化合物/炭酸塩の含有質量比率、セルロース繊維と無機繊維の合計含有率、セルロース繊維/無機繊維の含有質量比率、熱硬化性樹脂及び撥水剤の含有率を表1に示すとともに、厚さ、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。また、シート状化粧材Eについて、厚さ、密度、曲げ強度、耐水性1、耐水性2、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【0053】
実施例6
実施例5において、熱硬化性樹脂aとキュラストメータによる175℃での硬化速度が7.0N/分であるフェノール樹脂(以下、熱硬化性樹脂cと略称する。)を熱硬化性樹脂a/熱硬化性樹脂c=3/2なる固形分質量比で配合した以外は実施例5と同様にして、シート状基材F′を得た。
次に、シート状基材F′の片面に、表面に抽象柄模様の印刷層を有するジアリルフタレート樹脂含浸紙系化粧シート(厚さ0.08mm)を、もう一方の面に、印刷層のない無地のジアリルフタレート樹脂含浸紙系化粧シート(厚さ0.08mm)を、それぞれ熱圧固着し、シート状化粧材Fを得た。
シート状基材F′について、含水無機化合物及び炭酸塩の合計含有率、含水無機化合物/炭酸塩の含有質量比率、セルロース繊維と無機繊維の合計含有率、セルロース繊維/無機繊維の含有質量比率、熱硬化性樹脂及び撥水剤の含有率を表1に示すとともに、厚さ、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。また、シート状化粧材Fについて、厚さ、密度、曲げ強度、耐水性1、耐水性2、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【0054】
実施例7
実施例2において、無機繊維aに代えて、無機繊維bを用い、水酸化アルミニウム粉体に代えて、水酸化マグネシウム粉体状(平均粒径10μmである。以下同じ)を用いた以外は実施例2と同様にして、シート状基材G′を得た。
次に、シート状基材G′の片面に、ポリエステル樹脂系塗料を塗装(塗層の厚さ0.1mm)し、シート状化粧材Gを得た。
シート状基材G′について、含水無機化合物及び炭酸塩の合計含有率、含水無機化合物/炭酸塩の含有質量比率、セルロース繊維と無機繊維の合計含有率、セルロース繊維/無機繊維の含有質量比率、熱硬化性樹脂及び撥水剤の含有率を表1に示すとともに、厚さ、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。また、シート状化粧材Gについて、厚さ、密度、曲げ強度、耐水性1、耐水性2、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【0055】
実施例8
市販の針葉樹系未晒硫酸塩パルプと無機繊維bをパルパーにて離解し、これに水酸化アルミニウム粉体、炭酸カルシウム粉体及び熱硬化性樹脂aを添加し、さらに、ワックスエマルジョン系撥水剤を添加し、十分に分散混合後、長網/ワインドアップロール構成の巻取板紙抄紙機にてシート層を14層積層させて抄造し、圧搾、乾燥した後、熱プレスにて加熱処理(温度200℃、圧力3.9MPa、時間10分)し、シート状基材H′を得た。
次に、シート状基材H′の片面に、尿素メラミン系接着剤を介して、表面に抽象柄模様の印刷層を有するチタン紙系化粧シート(厚さ0.08mm)を固着し、シート状化粧材Hを得た。
シート状基材H′について、含水無機化合物及び炭酸塩の合計含有率、含水無機化合物/炭酸塩の含有質量比率、セルロース繊維と無機繊維の合計含有率、セルロース繊維/無機繊維の含有質量比率、熱硬化性樹脂及び撥水剤の含有率を表1に示すとともに、厚さ、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。また、シート状化粧材Hについて、厚さ、密度、曲げ強度、耐水性1、耐水性2、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【0056】
実施例9
実施例8において、無機繊維bに代えて、無機繊維aを用い、熱プレスの加熱処理条件を温度175℃、圧力2.0MPa、時間3分とした以外は実施例8と同様にして、シート状基材I′を得た。
次に、シート状基材I′の片面に、尿素メラミン系接着剤を介して、突板(材種はメイプルで厚さ0.2mm)を固着し、シート状化粧材Iを得た。
シート状基材I′について、含水無機化合物及び炭酸塩の合計含有率、含水無機化合物/炭酸塩の含有質量比率、セルロース繊維と無機繊維の合計含有率、セルロース繊維/無機繊維の含有質量比率、熱硬化性樹脂及び撥水剤の含有率を表1に示すとともに、厚さ、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。また、シート状化粧材Iについて、厚さ、密度、曲げ強度、耐水性1、耐水性2、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【0057】
比較例1
実施例1において、無機繊維aに代えて、繊維長3mmのガラス繊維(以下、無機繊維cと略称する。)を用いた以外は実施例1と同様にして、シート状基材J′を得た。
次に、シート状基材J′に、実施例1と同様にして化粧シートを固着し、シート状化粧材Jを得た。
シート状基材J′について、含水無機化合物及び炭酸塩の合計含有率、含水無機化合物/炭酸塩の含有質量比率、セルロース繊維と無機繊維の合計含有率、セルロース繊維/無機繊維の含有質量比率、熱硬化性樹脂及び撥水剤の含有率を表1に示すとともに、厚さ、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。また、シート状化粧材Jについて、厚さ、密度、曲げ強度、耐水性1、耐水性2、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【0058】
比較例2
実施例1において、無機繊維aに代えて、繊維長5mmのガラス繊維(以下、無機繊維dと略称する。)を用いた以外は実施例1と同様にして、シート状基材K′を得た。
次に、シート状基材K′に、実施例1と同様にして化粧シートを固着し、シート状化粧材Kを得た。
シート状基材K′について、含水無機化合物及び炭酸塩の合計含有率、含水無機化合物/炭酸塩の含有質量比率、セルロース繊維と無機繊維の合計含有率、セルロース繊維/無機繊維の含有質量比率、熱硬化性樹脂及び撥水剤の含有率を表1に示すとともに、厚さ、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。また、シート状化粧材Kについて、厚さ、密度、曲げ強度、耐水性1、耐水性2、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【0059】
比較例3
実施例1において、熱硬化性樹脂aに代えて、キュラストメータによる175℃での硬化速度が13.7N/分であるフェノール樹脂(以下、熱硬化性樹脂dと略称する。)を用いた以外は実施例1同様にして、シート状基材L′を得た。
次に、シート状基材L′に、実施例1と同様にして化粧シートを固着し、シート状化粧材Lを得た。
シート状基材L′について、含水無機化合物及び炭酸塩の合計含有率、含水無機化合物/炭酸塩の含有質量比率、セルロース繊維と無機繊維の合計含有率、セルロース繊維/無機繊維の含有質量比率、熱硬化性樹脂及び撥水剤の含有率を表1に示すとともに、厚さ、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。また、シート状化粧材Lについて、厚さ、密度、曲げ強度、耐水性1、耐水性2、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【0060】
比較例4
実施例1において、セルロース繊維/無機繊維含有質量比率を本発明で特定する範囲外しとた以外は実施例1と同様にして、シート状基材M′得た。
次に、シート状基材M′に、実施例1と同様にして化粧シートを固着し、シート状化粧材Mを得た。
シート状基材M′について、含水無機化合物及び炭酸塩の合計含有率、含水無機化合物/炭酸塩の含有質量比率、セルロース繊維と無機繊維の合計含有率、セルロース繊維/無機繊維の含有質量比率、熱硬化性樹脂及び撥水剤の含有率を表1に示すとともに、厚さ、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。また、シート状化粧材Mについて、厚さ、密度、曲げ強度、耐水性1、耐水性2、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【0061】
比較例5
実施例1において、無機繊維aに代えて、繊維長1mmのロックウール繊維(以下、無機繊維eと略称する。)を用いた以外は実施例1と同様にして、シート状基材N′を得た。
次に、シート状基材N′に、実施例1と同様にして化粧シートを固着し、シート状化粧材Nを得た。
シート状基材N′について、含水無機化合物及び炭酸塩の合計含有率、含水無機化合物/炭酸塩の含有質量比率、セルロース繊維と無機繊維の合計含有率、セルロース繊維/無機繊維の含有質量比率、熱硬化性樹脂及び撥水剤の含有率を表1に示すとともに、厚さ、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。また、シート状化粧材Nについて、厚さ、密度、曲げ強度、耐水性1、耐水性2、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【0062】
比較例6
実施例1において、無機繊維aに代えて、繊維長0.15mmのロックウール繊維(以下、無機繊維fと略称する。)を用いた以外は実施例1と同様にして、シート状基材O′を得た。
次に、シート状基材O′に、実施例1と同様にして化粧シートを固着し、シート状化粧材Oを得た。
シート状基材O′について、含水無機化合物及び炭酸塩の合計含有率、含水無機化合物/炭酸塩の含有質量比率、セルロース繊維と無機繊維の合計含有率、セルロース繊維/無機繊維の含有質量比率、熱硬化性樹脂及び撥水剤の含有率を表1に示すとともに、厚さ、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。また、シート状化粧材Oについて、厚さ、密度、曲げ強度、耐水性1、耐水性2、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【0063】
比較例7
比較例1において、各成分の配合量を変え、熱プレスの加熱処理条件を、温度175℃、圧力2.0MPa、時間3分とした以外は比較例1と同様にして、シート状基材P′を得た。
次に、シート状基材P′に、比較例1と同様にして化粧シートを固着し、シート状化粧材Pを得た。
シート状基材P′について、含水無機化合物及び炭酸塩の合計含有率、含水無機化合物/炭酸塩の含有質量比率、セルロース繊維と無機繊維の合計含有率、セルロース繊維/無機繊維の含有質量比率、熱硬化性樹脂及び撥水剤の含有率を表1に示すとともに、厚さ、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。また、シート状化粧材Pについて、厚さ、密度、曲げ強度、耐水性1、耐水性2、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【0064】
比較例8
比較例3において、各成分の配合量を変え、熱プレスの加熱処理条件を、温度175℃、圧力2.0MPa、時間3分とした以外は比較例3と同様にして、シート状基材Q′を得た。
次に、シート状基材Q′に、比較例3と同様にして化粧シートを固着し、シート状化粧材Qを得た。
シート状基材Q′について、含水無機化合物及び炭酸塩の合計含有率、含水無機化合物/炭酸塩の含有質量比率、セルロース繊維と無機繊維の合計含有率、セルロース繊維/無機繊維の含有質量比率、熱硬化性樹脂及び撥水剤の含有率を表1に示すとともに、厚さ、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。また、シート状化粧材Qについて、厚さ、密度、曲げ強度、耐水性1、耐水性2、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【0065】
比較例9
実施例8において、無機繊維aに代えて、無機繊維cを用いた以外は実施例8と同様にして、シート状基材R′を得た。
次に、シート状基材R′に、実施例8と同様にして化粧シートを固着し、シート状化粧材Rを得た。
シート状基材R′について、含水無機化合物及び炭酸塩の合計含有率、含水無機化合物/炭酸塩の含有質量比率、セルロース繊維と無機繊維の合計含有率、セルロース繊維/無機繊維の含有質量比率、熱硬化性樹脂及び撥水剤の含有率を表1に示すとともに、厚さ、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。また、シート状化粧材Rについて、厚さ、密度、曲げ強度、耐水性1、耐水性2、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【0066】
比較例10
実施例9において、セルロース繊維/無機繊維含有質量比率を本発明で特定する範囲外しとた以外は実施例9と同様にして、シート状基材S′を得た。
次に、シート状基材S′に、実施例9と同様にして突板を固着し、シート状化粧材Sを得た。
シート状基材S′について、含水無機化合物及び炭酸塩の合計含有率、含水無機化合物/炭酸塩の含有質量比率、セルロース繊維と無機繊維の合計含有率、セルロース繊維/無機繊維の含有質量比率、熱硬化性樹脂及び撥水剤の含有率を表1に示すとともに、厚さ、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。また、シート状化粧材Sについて、厚さ、密度、曲げ強度、耐水性1、耐水性2、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【0067】
比較例11
実施例1において、ワックスエマルジョン系撥水剤を添加しない以外は実施例1と同様にして、シート状基材T′を得た。
次に、シート状基材T′に、実施例1と同様にして化粧シートを固着し、シート状化粧材Tを得た。
シート状基材T′について、含水無機化合物及び炭酸塩の合計含有率、含水無機化合物/炭酸塩の含有質量比率、セルロース繊維と無機繊維の合計含有率、セルロース繊維/無機繊維の含有質量比率、熱硬化性樹脂及び撥水剤の含有率を表1に示すとともに、厚さ、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。また、シート状化粧材Tについて、厚さ、密度、曲げ強度、耐水性1、耐水性2、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【0068】
比較例12
実施例9において、ワックスエマルジョン系撥水剤を添加しない以外は実施例9と同様にして、シート状基材U′を得た。
次に、シート状基材U′に、実施例9と同様にして突板を固着し、シート状化粧材Uを得た。
シート状基材U′について、含水無機化合物及び炭酸塩の合計含有率、含水無機化合物/炭酸塩の含有質量比率、セルロース繊維と無機繊維の合計含有率、セルロース繊維/無機繊維の含有質量比率、熱硬化性樹脂及び撥水剤の含有率を表1に示すとともに、厚さ、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。また、シート状化粧材Uについて、厚さ、密度、曲げ強度、耐水性1、耐水性2、不燃性1及び不燃性2をそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。
【0069】
以下、余白
【表1】
【0070】
【発明の効果】
本発明のシート状不燃化粧材は、含水無機化合物あるいは含水無機化合物及び炭酸塩/セルロース繊維及びロックウール繊維/熱硬化性樹脂という構成で各成分を特定量含有し、かつ、ロックウール繊維の繊維長を2mm以上とし、熱硬化性樹脂の全部あるいは一部をキュラストメータによる175℃での熱硬化速度が0.5N/分以上6N/分未満なる硬化特性を有するものとし、かつ、セルロース繊維/ロックウール繊維の含有質量比率を20/80〜62/38の範囲とし、撥水処理されたシート状不燃基材の少なくとも片面に化粧層を有するようにしたので、薄型であるのに拘わらず、亀裂の発生などの防火上有害な変形が発生しない高度な不燃性を有し、かつ、優れた耐水性を有するシート状不燃化粧材が得られる。
【0071】
すなわち、従来の不燃化粧材が最低でも4mm厚以上の不燃基材に化粧加工したものでないと所要の不燃性能を確保できない場合が多かったのに対し、本発明のシート状不燃化粧材は、厚さ3mm以下という薄型のシート状不燃基材に化粧加工したものでも、JIS A−1321の表面試験で亀裂等の防火上有害な変形を発生せず、該表面試験の1級(建築基準法に規定する不燃材料に相当する。)に合格する高度の不燃性を有する。
【0072】
また、本発明のシート状不燃化粧材は、厚さが0.5〜3mmという薄型のシート状不燃基材を基材としているため、薄型化及び軽量化でき施工作業性が改善されるとともに、既存の不燃化粧材では厚さの制約から挿入できなかった部位にも適用できるなど、設計・施工方法面での自由度が拡大し、より多様な要求に対応できる。
【0073】
さらに、本発明のシート状不燃化粧材は、その基材であるシート状不燃基材が撥水処理されているため、水中浸漬しても吸水率がきわめて低く、煮沸耐久性にも優れ、キッチンパネル、浴室パネルなどの高度の耐水性を要求される部位にも好適に用いることができる。
【0074】
加えて、本発明のシート状不燃化粧材は、十分な機械的強度を有し、かつ良好な柔軟性を兼ね備えているため、0.5〜3mmという薄型のシート状不燃基材を基材としているにも拘わらず、取扱い時に、けい酸カルシウム板のごとき従来の不燃基材に化粧加工したものにおいて発生しやすいところの、折れあるいは割れといった不具合が発生しにくい上に、十分に柔軟性のある化粧層を選択することにより、溝加工あるいは屈曲自在な不燃裏打材との接着を施さずとも、曲率半径50mm以下といった、きわめて曲がりの急な曲面施工を施すことができるという利点を有する。
Claims (9)
- 含水無機化合物及び炭酸塩を固形分で合計60〜95質量%と、セルロース繊維及び繊維長2mm以上のロックウール繊維を固形分で合計4〜40質量%と、熱硬化性樹脂を固形分で1〜20質量%とを含有し、かつ、前記含水無機化合物/炭酸塩が固形分質量比で前記含水無機化合物/炭酸塩=100/0〜50/50であり、前記セルロース繊維/ロックウール繊維が固形分質量比でセルロース繊維/ロックウール繊維=20/80〜62/38である熱圧成形体であって、前記熱硬化性樹脂の全部または一部はキュラストメータによる175℃での熱硬化速度が0.5N/分以上6N/分未満なる硬化特性を有し、撥水処理され、かつ、厚さが0.5〜3mmであるシート状不燃基材の少なくとも片面に化粧層を有することを特徴とするシート状不燃化粧材。
- 上記熱硬化性樹脂の内、固形分で30質量%以上がキュラストメータによる175℃での熱硬化速度が0.5N/分以上6N/分未満なる硬化特性を有するものであることを特徴とする請求項1記載のシート状不燃化粧材。
- 上記熱硬化性樹脂は、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、尿素メラミン樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂の中から選ばれた少なくとも1種類からなる請求項1または2記載のシート状不燃化粧材。
- 上記含水無機化合物は水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、二水和石こう及びアルミン酸化カルシウムの中から選ばれた少なくとも1種類からなる請求項1、2または3記載のシート状不燃化粧材。
- 上記炭酸塩は炭酸カルシウムである請求項1、2、3または4記載のシート状不燃化粧材。
- シート状不燃基材が2層以上のシート層の積層体からなる請求項1、2、3、4または5記載のシート状不燃化粧材。
- 化粧層の厚さは0.3mm以下である請求項1、2、3、4、5または6記載のシート状不燃化粧材。
- 化粧層は、塗層、化粧シート層及び突板層の中から選ばれた少なくとも1種類からなる請求項1、2、3、4、5、6または7記載のシート状不燃化粧材。
- シート状不燃基材がJIS A−1321の表面試験(1級)で亀裂等の防火上有害な変形を発生しないものである請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載のシート状不燃化粧材。
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