JP4674962B2 - ポリウレタンエマルジョン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐候性、耐加水分解性、耐オレイン酸性、耐アルカリ性、と共に、さらに低温柔軟性、低温屈曲性に優れた、接着剤、塗料、コーティング剤、合成皮革、人工皮革を与えるポリウレタンエマルジョンおよび、該ポリウレタンエマルジョンを用いて製造した合成皮革及び、人工皮革に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリウレタンエマルジョンは、耐磨耗性、接着性、非粘着性、ゴム弾性を有する塗膜を与えることから、床材、壁材、木工、カーペット、建築、不織布、テキスタイル用コーティング剤、塗料(自動車用、建築用)、接着剤(ビル用、建築用、自動車用、その他雑用)、さらにビニール、人工皮革、合成皮革(カーシート、スポーツシューズ、家具、衣料、他)等に用いるコーティング剤として多く用いられてきた。ポリカーボネート系ポリウレタンエマルジョンについては、その耐加水分解性、耐熱性などの有利性が認められ、その用途を伸ばしつつあったが、さらに耐オレイン酸性、耐アルカリ性のバランスに優れたポリウレタンエマルジョンが得られ、それから得られる塗料、合成皮革、人工皮革などへの用途も拡大しつつある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐アルカリ性、耐加水分解性、耐熱性等を維持したまま、さらに低温屈曲性や低温柔軟性の優れた、コーティング剤、接着剤、塗料原料、合成皮革、人工皮革の製造に有用なポリウレタンエマルジョンを提供すること、さらにそれから製造する耐加水分解性、耐アルカリ性、の優れた性能を維持したまま、さらに低温屈曲性、低温柔軟性の優れた合成皮革、人工皮革を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の技術的問題点を解決するため、使用するポリウレタンエマルジョンのジオール成分と、得られるポリウレタンエマルジョンとの関係、さらにそのポリウレタンエマルジョンを用いて製造した合成皮革、人工皮革の物性、接着剤、塗料、コーティング剤の物性との関係を、詳細に、実際的用途に適した尺度の計測によって、検討を重ねた。その結果、有機ジイソシアネートと反応させるジオール成分としては、ポリカーボネートジオールと、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種のポリアルキレングリコールとの混合ジオールを用い、かつ1個の親水性中心と少なくとも2個のイソシアネート反応性の基を有する化合物とからウレタンプレポリマーを形成し、これを鎖延長剤と反応させてなるポリウレタンエマルジョンが上記用途において要求される製品物性に適合するものであることを見出し、さらに検討を重ねて本発明に至った。
【0005】
すなわち、本発明は、
1.有機ジイソシアネート、(2)下記式(A)及び(B)からなるポリカーボネートジオール、(3)ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種のポリアルキレングリコール、(4)1個のカルボン酸基又はスルホン酸基と少なくとも2個のイソシアネート反応性の基を有する化合物からなるウレタンプレポリマーと鎖延長剤との反応生成物からなるポリウレタンエマルジョンにおいて、該(2)ポリカーボネートジオールと該(3)ポリアルキレングリコールとの合計量に対するそれぞれの使用重量比率が、前者が95%〜50%、後者が5%〜50%であリ、該ポリアルキレングリコール中に含まれる、ポリテトラメチレングリコール以外のポリアルキレングリコールの含有量は20重量%以下であるポリウレタンエマルジョン。
【化1】
(ただしm、nは4〜6の整数で、m≠n、(A)と(B)の割合が9:1〜1:9(モル比)であるものである。)
2.前記1.記載のポリウレタンエマルジョンを用いて製造した合成皮革及び、人工皮革、
に関する。
【0006】
本発明に使用するポリカーボネートジオールは脂肪族のポリカーボネートジオールが好ましく、とくにその繰り返し単位が下記(A)および(B)からなるものがより好ましい。
【0007】
【化1】
【0008】
(ただしm、nは4〜6の整数で、m≠n、(A)と(B)の割合が9:1〜1:9(モル比)であるものである。)
【0009】
本発明においては、上記(A)および(B)の繰り返し単位からなる、コポリカーボネートジオールと、該(3)ポリテトラメチレングリコールを主体とするポリアルキレングリコールとの混合物をジオール成分として、ウレタンプレポリマーの製造に使用することが好ましい。
【0010】
そして、該(2)ポリカーボネートジオールと該(3)ポリテトラメチレングリコールを主体とするポリアルキレングリコールとをそれらの合計量に対してそれぞれの使用重量比率を前者95%〜50%、後者5%〜50%とした混合物を用いたポリウレタンエマルジョンが最適な結果を与えることが判明した。また必要に応じて、ポリエチレングリコールおよび/またはポリプロピレングリコールをポリテトラメチレングリコールとの混合グリコールを使用してもよい
【0011】
公知のように、ポリカーボネートジオールは1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、などの脂肪族ジオールの単独、またはそれらの組み合わせと、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニールカーボネートなどから選ばれるカーボネート化剤との反応によって得られ、ホモポリカーボネートジオール、コポリカーボネートジオールがあり、用途によって選択される。このなかで、コポリカーボネートジオールの方が柔軟性、低温屈曲性の点から好ましい。
【0012】
本発明に使用するポリテトラメチレングリコールを主体とするポリアルキレングリコールとは、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種のポリアルキレングリコールであって、該ポリアルキレングリコール中に含まれる、ポリテトラメチレングリコール以外のポリアルキレングリコールの含有量は20重量%以下、より好ましくは10モル%以下である。
【0013】
本発明に用いる有機ジイソシアネートとしては、たとえば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、及びその混合物(TDI)、ジフェニールメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート(TODI)、ポリメチレンポリフェニールジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、フェニレンジイソシアネートなどの芳香脂環族ジイソシアネート、さらには、4,4’−メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート(水添MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサンジイソシアネート(水添XDI)などの脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。この中で脂肪族ジイソシアネートが好ましい。
【0014】
また1個の親水性中心と少なくとも2個のイソシアネート反応性の基を有する化合物において、親水性中心とは、例えばカルボン酸基やスルホン酸基であって、アルカリ性基で中和可能な基を示す。また、イソシアネート反応性基とは、アルコール、アミン等の一般的にイソシアネートと反応してウレタン結合、ウレア結合を形成する基を示す。具体的には、例えば、下記式
【0015】
【化2】
(式中Rは1〜3個の炭素原子を有するアルキル基)
【0016】
で表されるジオールであって、たとえば、2,2’−ジメチロールプロピオン酸、2,2−メチロール酪酸および2,2’−ジメチロール吉草酸等が挙げられる。また、ジアミノカルボン酸類、例えば、リジン、シスチン、および3,5−ジアミノカルボン酸等が挙げられる。これらを実際に用いる場合には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン等のアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等で中和して用いる。
【0017】
当然のことながら、適当な、界面活性剤、たとえば、高級脂肪酸、樹脂酸、酸性脂肪アルコール、硫酸エステル、スルフォン酸高級アルキル、スルフォン酸高級アルキル、スルフォン酸アルキルアリール、スルフォン化ひまし油、スルフォこはく酸エステルなどに代表されるアニオン性界面活性剤、あるいはエチレンオキサイドと長鎖脂肪アルコールまたはフェノール類との公知の反応生成物に代表されるノニオン性界面活性剤等を併用して、乳化安定性を保持してもよい。
【0018】
本発明に用いる鎖延長剤としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、などの短鎖ジオール類、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニールジアミン、ジアミノジフェニールメタン、ジアミノヘキシルシクロヘキシルメタン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、イソフォロンジアミン等の各種ジアミンおよび水が挙げられる。
【0019】
本発明のポリウレタンエマルジョンは、たとえば、有機ジイソシアネート、ポリカーボネートジオール、ポリテトラメチレングリコールを主体とするポリアルキレングリコールおよび、1個の親水性中心と少なくとも2個のイソシアネート反応性の基を有する化合物とを反応させ、NCO末端のウレタンプレポリマーを得る。
【0020】
この反応は一般に、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、ジオキサン、ジメチルフォルムアミド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン等のイソシアネートに対して不活性な有機溶媒を用いて溶媒中で行うことができる。
【0021】
次に得られたプレポリマーを必要なら、中和した後、水中に分散させ、鎖延長剤との反応により高分子量化する。溶剤を用いてプレポリマー反応を行った場合は、例えば、鎖延長反応を終えてから減圧蒸留等の方法で溶媒を除去する必要がある。
【0022】
本発明のポリウレタンエマルジョンは、上記のように、塗料、(主として自動車用、建築用)、接着剤(とくに靴底と上皮との接着に好適)、合成皮革、人工皮革(とくに、カーシート、家具、衣料、スポーツシューズ用)への利用が好適であり、それら製品への要求をみたすための調査、研究の結果本発明に到ったものである。
【0023】
次に、このようにして、得られたポリウレタンエマルジョンから製造する人工皮革の製造とその物性を例にとって説明する。
極細繊維を主体とする不織布シート状物に各種の高分子化合物を付与加工して、合成皮革、人造皮革を得ることは広く知られており、この場合の高分子化合物としては、柔軟でかつ弾性のある、風合い、耐久性、寸法安定性などの物性を与えるにふさわしいポリウレタン等の弾性高分子化合物が多く用いられている。とくに、近年、有機溶剤を使用しない種々の水系ポリウレタンエマルジョンの使用が検討されている。
【0024】
また、同時に、接着剤、塗料としてのポリウレタンエマルジョンも有用であり、本発明のポリウレタンエマルジョンが、その用途分野でとくに好ましい性能を発揮することも後述する。
【0025】
本発明の人工皮革の製造に用いる、不織シート状物としては、表面層として、0.5デニール以下の極細繊維を主体としてなる繊維層を有するものが好ましい。たとえば、表面繊維層と同一構成の繊維層で不織シート状物全体を構成してもよく、また表面層繊維につながる層に表面繊維層で片面全体が覆われ、かつ三次元交絡している編織物からなる層を配置してもよい。前記、0.5デニール以下の極細繊維の繊維素材としてはとくに制限はないが、通常、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン66、ポリアクリロニトリル、レーヨンなどが用いられる。
【0026】
このような不織シート状物をエメリペーパー、サンドロールなどで表面をバフィングし、これを、下記するような水溶性高分子化合物と本発明のポリウレタンエマルジョンを混合した液中に浸漬し、のちこれを取り出し、絞り機にかけ、混合物の含浸量を適切に調整し、加熱乾燥する。得られたものは、起毛がみられないが、このシート状複合物を熱水中に入れ、水溶性高分子化合物を抽出し、水洗後、乾燥すると、スエード調合成皮革を得る。
勿論上述の方法以外の製造方法にも、本発明のポリウレタンエマルジョンが適用できることは言うまでもない。
【0027】
上記水溶性高分子化合物としては、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カゼイン、部分鹸化または部分鹸化ポリビニールアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸等が用いられる。
【0028】
このようにして得られた、人工皮革、とくにスエード調人工皮革については、一般に、以下の事項について評価されている。
柔軟度 :JIS L1079 A法 (45 カンチレバー法)
耐しわ率 :JIS L1079 A法 (針金法)
剥離強度 :サンプル皮革の一端から不織布層を剥離し、テンシロン型引っ張り試験機で、その剥離強度を測定する。
【0029】
以上は、合成皮革の検査基準として、一般的に使用されるものであるが、本発明における合成皮革については、その用途、とくにカーシート、家具、衣料、スポーツシューズ用等としての厳しい要求に対応するために、さらに以下の検査基準により、これらをクリアーするものを、製造することを、本発明の目的としている。
【0030】
低温屈曲性 :−35℃で100,000回の繰り返し屈曲に充分耐えるものをそれぞれ◎とし、やや満足なものを○、やや不満足のものを△、不足のものを×として表現した。
耐オレイン酸性 :これは耐汗性を示すものとして、しばしば用いられている。皮革サンプルをオレイン酸中に室温で1週間浸漬後、表面のべとつき感を指触によって評価する。
良好なものを◎とし、やや満足なものを○とし、やや不満足なものを△とし、不満足なものを×として表現した。
【0031】
さて、ここで、要求される人工皮革の上記評価は、皮革製造に用いるポリウレタンエマルジョン、さらに詳しく調べたところ、ポリウレタンエマルジョンの製造に使用するポリオールの分子構造に大きく影響されること、さらに、カーボネートジオールとポリテトラメチレングリコールを併用してウレタンプレポリマーをつくり、これから得たポリウレタンエマルジョンが、各種の利用面で有効かつ、新規な特徴、特に重要な低温屈曲性を発揮できることを実地試験によって、突き止めることが出来た。
【0032】
この状況は、ポリカーボネートジオールが、ホモポリカーボネートジオールであれ、コポリカーボネートジオールであれ、類似であるが、一般に、コポリカーボネートジオールの場合により好ましく現れる。
【0033】
上記と同様に、ポリテトラメチレングリコールと併用するポリアルキレングリコールの主鎖が炭素数2個である(オキシエチレン結合を含む)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールの場合もその使用量にも類似の制約があって、主鎖が炭素数2個のオキシアルキレン単位の総含量をオキシアルキレン単位の総含量に対して全体の20%以下、より好ましくは10%以下に保つことが望ましい。
【0034】
合成皮革についても、一般的に知られている方法で製造し、その物性評価を行った結果、人工皮革と同様の結果を得た。
次に、参考例、実施例および比較例によって本発明を説明する。
【0035】
参考例1
(ポリカーボネートジオール製造)
ジャケット、撹拌機、真空ポンプおよび規則充填物を充填した精留塔を備えた30 lの反応槽を重合に用いた(図1参照)。1,5−ペンタンジオールを7.5kg、1,6−ヘキサンジオールを8.1kg、エチレンカーボネートを12.4kg反応槽に仕込んだ。ジャケットに65℃の熱媒を循環して反応槽を加熱し、撹拌しながら、反応槽内を窒素で3回置換した。ジャケットの温度を250℃に上げ、反応槽内の温度が150℃となるように圧力を調整した。精留塔出口にはコンデンサーを取り付け、留出した液を留出液タンクに集めた後、全量を精留塔上部から返した。反応槽内の温度が150℃となった時、反応槽の圧力は10kPaであり、留出液タンクには5.5 l/hrで留出液が送られた。その状態で、1hr 反応を行った後、留出液タンクより1.5 l/hrで3hr、さらに1.2 l/hrで7hr留出液の一部を抜き出しタンクに抜きながら反応を行った。抜き出しタンク内液組成のガスクロマトグラフィーで分析したところ、エチレングリコールが80重量%、エチレンカーボネートが17重量%含まれていた。配管を切り替え、反応槽から精留塔出口のコンデンサーに直結した。反応槽内の圧力を0.5kPaまで逐次落としながら、反応槽内の温度が170℃を越えないようにジャケット温度を調節しながら、更に2hr反応を行い15.1kgのポリカーボネートジオールを得た。留出した液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、エチレンカーボネートが24重量%、1,5−ペンタンジオールが33重量%、1,6−ヘキサンジオールが27重量%、エチレングリコールが7重量%含まれていた。得られたポリカーボネートジオール(C5C6PCDL)の数平均分子量は2,000であった。
【0036】
参考例2
(ポリカーボネートジオール製造)
撹拌機、温度計、分留塔、真空ポンプを備えた反応器に、1,6−ヘキサンジオール 944部(8.0モル)を加え、70〜80℃で金属ナトリウム1.84部(0.08モル)を撹拌下に添加した。ナトリウムが完全に反応した後、472部(8.0モル)のジエチルカーポボネートを導入した。反応温度を59〜100℃に上昇させるとエタノールを溜出し始めた。徐々に、温度を上昇させ、約6時間で160℃とした。この間約10%のジエチルカーボネートを含むエタノールが溜出した。その後、さらに反応器の圧力を10mmHg以下とし、強撹拌下で200℃にて4時間反応させた。生成したポリマーは、冷却後ジクロロメタンに溶解させ、希酸で中和した後、水洗を数回繰り返し、無水硫酸ナトリウムで脱水してから、溶媒を蒸留除去し、さらに2〜3mmHg、140℃で数時間乾燥させた。得られたポリカーボネートジオール(以下C6PCDLと略記する。)の数平均分子量は2000であった。
【0037】
実施例1
(ポリウレタンエマルジョンの製造)(I)
参考例1で製造したC5C6PCDL400部、数平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール(PTMG)52部、イソホロンジイソシアネート(IPDI)111部、トリエチルアミンでカルボキシル基を中和した、ジメチロールプロピオン酸39部、メチルエチルケトン(MEK)975部を反応装置に入れ、80℃で4時間ウレタン化反応をおこない、NCO末端のプレポリマーを得た。該プレポリマー溶液に7部のドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ(Na−DBS)を溶解し、30℃に温度設定した1578部の蒸留水に、撹拌しながら徐々に添加してプレポリマー溶液のエマルジョンを作成した。その後106部の水を添加した後、温度を40℃にし、1.5時間反応させて高分子量化を行った。減圧下にMEKを除去して固形分30%のポリウレタンエマルジョンを得た。
【0038】
(人工皮革の製造と評価)
直接紡糸法によって、0.1デニール(250d/2500f)のPET極細繊維を製造し、長さ5mmに切断した。水中に分散せしめ抄造用スラリーとした。このスラリーを抄造し、目付け80g/m2不織ウェブを製造し75デニール/36フィラメントのPET繊維からなる目付け50g/m2の平織物の両面に上記不織ウェブを積層し、高速水流の噴射により三次元的に交絡一体化させた。高速水流は孔経0.1mmの直進流噴射ノズルから30kg/cm2の圧力で噴射した。積層シートの表裏両面から、この操作を行い、目付量210g/m2、厚さ0.95mm、見かけ密度0.22g/m2のシート状物を製造した。このシート状物を240番のエメリーペーパーを用い、ペーパー速度700m/分で表面をパフィングし、厚さ0.9mmとした。これに粘度6.0センチポイズでケン化度86〜89モル%のポリビニルアルコール(PVA)の18%水溶液と実施例1で得られたポリウレタンエマルジョンを混合したPVA濃度6%、ポリウレタンエマルジョン固形分濃度7%からなる混合物に、前記工程で立毛させた不織シート状物を浸漬し、マングルで絞って混合物の含浸量をシート状物の2.5倍に合わせた後に、130℃のピンチテンター方式熱風乾燥機で4分熱乾燥した。このシート状複合物を顕微鏡で観察すると立毛表面はPVAが付着し、全く立毛が見られなかった。次いで、このシート状複合物を熱水中に投入し、PVAを抽出し、よく水洗した後に乾燥してスエード調人工皮革を得た。このスエード調人工皮革の低温屈曲性及び耐オレイン酸性を評価した。その結果を表1に示した。
【0039】
比較例1、2
実施例1のポリウレタンエマルジョンの製造において、ポリオール量を下記の通りに変える以外は、実施例1と同様の方法でポリウレタンエマルジョンの製造を行った。
【0040】
【0041】
次いで、上記方法で製造した比較例1及び比較例2のポリウレタンエマルジョンを用いて実施例1と同様にして人工皮革を製造し、その評価を行った。その結果を表1に示した。
【0042】
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のポリウレタンエマルジョンは、とくに低温柔軟性、低温屈曲性、耐汗性に優れた合成皮革等の製造に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】参考例に示すポリカーボネートジオールの製造に使用した装置の概略図。
Claims (2)
- (1)有機ジイソシアネート、(2)下記式(A)及び(B)からなるポリカーボネートジオール、(3)ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種のポリアルキレングリコール、(4)1個のカルボン酸基又はスルホン酸基と少なくとも2個のイソシアネート反応性の基を有する化合物からなるウレタンプレポリマーと鎖延長剤との反応生成物からなるポリウレタンエマルジョンにおいて、該(2)ポリカーボネートジオールと該(3)ポリアルキレングリコールとの合計量に対するそれぞれの使用重量比率が、前者が95%〜50%、後者が5%〜50%であリ、該ポリアルキレングリコール中に含まれる、ポリテトラメチレングリコール以外のポリアルキレングリコールの含有量は20重量%以下であるポリウレタンエマルジョン。
- 請求項1記載のポリウレタンエマルジョンを用いて製造した合成皮革及び、人工皮革。
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