JP4667611B2 - アルミニウム合金溶湯に対する非濡れ性を改善したチタン酸アルミニウムセラミックス製部材とその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば、アルミニウム合金溶湯等の溶融金属に接触するセラミックス部材の非濡れ性を付与及び維持するための技術に関し、特に、チタン酸アルミニウムセラミックスで構成されるアルミニウム合金溶湯接触部材の非濡れ性の付与及び維持に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム合金鋳造設備において、溶解保持炉、成形機、溶湯搬送装置などの溶湯接触部材には、アルミニウム合金溶湯に対して非濡れ性に優れることが要求される。例えば、アルミニウム合金溶湯を一定量、溶解保持炉から成形機に移す場合には、チタン酸アルミニウムセラミックス製のラドルが使用されている。
【0003】
ここで、チタン酸アルミニウムセラミックスは低熱膨張性を有し、耐熱衝撃性に優れることが知られている。しかしながら、チタン酸アルミニウムセラミックスにおける低熱膨張性は、結晶粒界に生じる亀裂による見かけ上のものである。
したがって、この粒界亀裂により機械的強度が著しく弱いことが問題となっていた。
そこで、見かけの低熱膨張性を維持しながら機械的強度を高めるために、一般に1〜10wt%のシリカが添加されている。これにより、チタン酸アルミニウムの焼結過程における粒成長が抑制され、その結果として、焼結させた後の冷却過程で発生する結晶粒界応力が低減され、亀裂の発生が抑制されるためセラミックスの機械的強度が向上する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、チタン酸アルミニウム製のラドルは、溶湯汲み取り回数が1000回程度の連続使用により非濡れ性が大きく低下し、ラドル内とその注ぎ口にアルミニウムが残留するようになる。その結果、成形機への定量供給が困難となり、鋳造部品重量の変動に起因する不良品発生率の増大をもたらすことにもなる。
さらに、ラドル注ぎ口に付着固化したアルミニウム合金塊が鋳造システム装置と接触し、ラドル自身の破壊あるいはラドルマシンの損傷に至る。
【0005】
現状では、非濡れ性低下後に溶湯供給用ラドル装置を止めて、ラドルに付着したアルミニウム合金を機械的に剥ぎ取る等の方法が取られている。生産性の向上のためには、少なくとも10000回において非濡れ性を維持することが要求されている。
【0006】
そこで、本発明では、チタン酸アルミニウムセラミックスのアルミニウム合金溶湯に対する非濡れ性及びその持続性の付与を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らが、チタン酸アルミニウムセラミックスのアルミニウム合金に対する非濡れ性の低下について検討したところ、チタン酸アルミニウムセラミックスに添加されるシリカがアルミニウム合金溶湯中のAlやMgによって還元されてチタン酸アルミニウムセラミックスの表面に生成されるSi粒子の存在によって非濡れ性の低下が生じることがわかった。また、シリカの還元に伴って、MgOやAl2O3が生成し、さらにこれらから、チタン酸アルミニウムセラミックスの表面にMgAl2O4が生成していることもわかった。
【0008】
以上の知見により、以下の手段が提供される。
すなわち、チタン酸アルミニウムセラミックス製アルミニウム合金溶湯接触部材であって、
少なくともアルミニウム合金溶湯と接触する部位に、実質的にSiを含有しないAl2O3被膜および/またはMgAl2O4被膜を備える部材が提供される。
また、チタン酸アルミニウムセラミックス製アルミニウム合金溶湯接触部材であって、
少なくともアルミニウム合金溶湯と接触する部位に、実質的にSiを含有しないチタン酸アルミニウム層を備える部材が提供される。
【0009】
チタン酸アルミニウムセラミックス製アルミニウム合金溶湯接触部材の製造方法であって、
チタン酸アルミニウムセラミックス製部材の少なくともアルミニウム合金溶湯と接触する部位に、実質的にSiを含有しないAl2O3被膜を形成する工程と、Al2O3被膜を備えるチタン酸アルミニウムセラミックス製部材にマグネシウムを作用させてMgAl2O4を生成させる工程、
とを備える、方法が提供される。
また、アルミニウム合金溶湯接触部材の製造方法であって、
チタン酸アルミニウムセラミックス製の2以上の部材が接合される部位であって、少なくともアルミニウム合金溶湯と接触する部位に対して、前記MgAl2O4を生成させる工程、を備える方法も提供される。
また、アルミニウム合金鋳物の製造方法であって、
少なくともアルミニウム合金溶湯と接触する部位に、実質的にSiを含有しないAl2O3被膜を備えるチタン酸アルミニウムセラミックス製のアルミニウム合金溶湯接触部材を、鋳造工程の少なくとも一部において、Mgを含有するアルミニウム合金溶湯に接触させて、前記Al2O3被膜においてMgAl2O4を生成させる工程、
とを有する、方法も提供される。
【0010】
さらに、本発明によれば、アルミニウム合金溶湯接触部材の製造方法であって、
少なくともアルミニウム合金溶湯と接触する部位に、実質的にSiを含有しないAl2O3被膜を備えるチタン酸アルミニウムセラミックス製のアルミニウム合金溶湯接触部材を、鋳造工程の少なくとも一部において、Mgを含有するアルミニウム合金溶湯に接触させて、前記Al2O3被膜においてMgAl2O4を生成させる工程、
とを有する、方法が提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明におけるアルミニウム合金は、アルミニウムを主成分とする合金を意味する。具体的には、アルミニウムの他、Cu、Si、Mg、Zn、Fe、Mn、Ni、Ti等のアルミニウムと合金を構成可能な金属を少なくとも1種以上を含有していればよい。好ましくは、Mgを含む。本発明において使用できるアルミニウム合金としては、例えば、表1(単位:wt%)に例示されるものがある。
【表1】
【0012】
本発明の合金溶湯接触部材は、合金溶湯に接触する可能性のある部位を備える溶湯用部材に使用することが好ましい。具体的には、ラドル、溶湯搬送管路、攪拌機等を挙げることができる。かかる部位のメインテナンスが容易となり、溶湯汲み取り精度が向上される。
また、管路や成形型材等、チタン酸アルミニウムセラミックスの接合部位を備える部材においても好ましく適用できる。接合部位界面の非濡れ性が向上される結果、接合部位の隙間への毛細管力による溶湯の侵入を効果的に抑制できるからである。これにより、接合部位のメインテナンスが容易となる。
なお、本発明の合金溶湯接触部材は、電磁ポンプ式の金属溶湯供給装置に適用されることが好ましい。
【0013】
本発明におけるチタン酸アルミニウムセラミックスは、チタン酸アルミニウム(Al2TiO5)を主体とするセラミックスであり、Siを含有している。なお、Siは、典型的には、シリカ(SiO2)であるが、その形態は問わないで、酸化物等の形態でも金属元素でもありうる。本発明のチタン酸アルミニウムセラミックスにおけるシリカの含有量は、特に限定しないが、通常0.1〜10wt%程度である。好ましくは、4〜8wt%である。なお、チタン酸アルミニウムセラミックスには、Fe2O3、MgO等を含んでいてもよい。
【0014】
チタン酸アルミニウムセラミックス製の接触部材の、少なくとも合金溶湯と接触する部位には、Al2O3あるいはMgAl2O4の被膜を備える。かかる被膜を供えることにより、アルミニウム合金溶湯と接触する場合において、効果的に、チタン酸アルミニウムセラミックス中のSiの合金溶湯接触側への拡散を抑制できる。
また、合金溶湯中にSiが含まれる場合に、そのSiとチタン酸アルミニウムセラミックスとの接触を回避できる。
Al2O3被膜は、好ましくは、α−Al2O3被膜であることが好ましい。α−Al2O3被膜は、アルミナゾルのディップコーティング等によりアルミナ膜を形成した後、大気中で焼成(好ましくは1100〜1500℃)することにより得られる。
MgAl2O4被膜は、Al2O3被膜を形成した後、この被膜にMgを作用させることにより得られる。また、MgAl2O4を得られるように調製した原料の被膜を形成し、焼成によりスピネルを生成させることによっても得られる。好ましくは、α−Al2O3被膜を形成した後に、溶融マグネシウム、Mgを含む溶湯(例えばアルミニウム合金溶湯)中に、当該部材を一定時間浸漬することによりその場生成させることができる。
【0015】
Al2O3膜及びMgAl2O4膜は、実質的にSiを含有しない。ここでSiを実質的に含有しないとは、Siの含有量が0.1wt%以下であることを意味する。
【0016】
Al2O3膜及びMgAl2O4膜は、チタン酸アルミニウムセラミックス中のSi(Siの他、シリカ(SiO2)が典型的である)の拡散を抑制できる程度の緻密さおよび/または膜厚を備えていることが好ましい。チタン酸アルミニウムセラミックス中のSiの拡散とは、Siのチタン酸アルミニウムセラミックスの外方向(溶湯側)への拡散を意味する。
また、当該膜は、アルミニウム合金溶湯中のAl及びMgのチタン酸アルミニウムセラミックス側への拡散を抑制できる程度の緻密さおよび/または膜厚を備えていることが好ましい。また、アルミニウム合金溶湯中にSiを含む場合に、このSiのチタン酸セラミックス側への拡散を抑制できる程度になっていることが好ましい。
これらの膜は、さらに、これらの3種類の拡散抑制機能のうち、2種以上を備えていることが好ましい。最も好ましくは、いずれの拡散機能も備える。
これらの膜の膜厚としては、0.1μm〜1000μmであることが好ましい。0.1μm未満であると、合金溶湯との繰り返しの接触における溶湯流れにより被膜が早期に磨耗し、拡散阻止効果及び実質的に非濡れ性を実現できないからである。また、1000μmを超えると、チタン酸アルミニウムセラミックスと被膜との熱膨張係数の差により、コーティング焼付け後の冷却工程で被膜に亀裂や剥離が生じ、拡散阻止効果を発揮できないからである。より好ましくは、1μm〜500μmである。
【0017】
また、緻密度の観点からは、Al2O3被膜及びMgAl2O4被膜は、いずれも、気孔率30%以下であることが好ましい。気孔率が30%を超えるとアルミニウム合金溶湯中のAl、Mg、Siの拡散や、チタン酸アルミニウムセラミックス中のSiの拡散を抑制し難くなる。
なお、Al2O3被膜及びMgAl2O4被膜はいずれも、他のセラミックス成分を実質的に含まない当該セラミックス成分の単相となっていることが好ましい。
【0018】
実質的にSiを含有しない保護膜としては、さらに、チタン酸アルミニウム(Al2TiO5)層であってもよい。当該層を形成することにより、当該層の表面において、合金溶湯と接触することにより、α−Al2O3やMgAl2O4が生成し非濡れ性を付与及び維持できる保護膜がその場生成されるからである。
かかるチタン酸アルミニウム層においても、アルミニウム合金溶湯中のAl、Mg,あるいはSiの拡散抑制、チタン酸アルミニウムセラミックス中のSiの拡散を抑制できる程度の緻密さおよび/または膜厚を備えるように形成されることが好ましい。すなわち、0.1〜1000μmの厚みであることが好ましく、より好ましくは、1〜500μmであり、気孔率30%以下であることが好ましく、チタン酸アルミニウム層においても、Siを実質的に含有しないが、好ましくは、0.1wt%以下である。なお、実質的にチタン酸アルミニウムの単相となっていることが好ましい。
【0019】
本発明における実質的にSiを含有しないAl2O3被膜、MgAl2O4被膜、および/またはAl2TiO5被膜を備えることにより、いずれの被膜の場合でも、アルミニウム合金溶湯との接触によるSiのチタン酸アルミニウムセラミックス表面への拡散を抑制して、非濡れ性を確保でき、さらに、引き続いては、アルミニウム合金溶湯との接触等により最終的に得られるMgAl2O4膜により、接触部位の非濡れ性を効率的に確保できる。よって長期にわたって非濡れ性を維持することができる。
また、最終的に得られるMgAl2O4被膜も、Siの浸透拡散を抑制するため、安定して非濡れ性を維持できる。
したがって、これらのいずれかの被膜をアルミニウム合金溶湯との接触部位に供える部材を用いて、アルミニウム合金鋳物を製造すると、精度が高い鋳造を効率よく達成できる。
【0020】
また、本発明に係るMgAl2O4被膜を備えるチタン酸アルミニウムセラミックス部材ば、所定部位にAl2O3被膜やAl2TiO5被膜を形成して、実際のアルミニウム合金の鋳造工程において使用して、これらの部位を、Mgを含むアルミニウム合金溶湯に接触させることにより、MgAl2O4被膜を形成することによって得ることができる。これにより、特に、MgAl2O4被膜を形成することなく、Al2O3被膜等を形成するだけで、容易にMgAl2O4被膜を得ることができる。
また、鋳造工程中において、当初は、Al2O3膜等により非濡れ性が確保されるが、接触時間の増大に伴い、引き続いては、MgAl2O4被膜がその場生成され、このMgAl2O4膜によって非濡れ性が確保されるため、チタン酸アルミニウムセラミックス製部材の非濡れ性寿命を効率よく延長することができる。
【0021】
【実施例】
実施例1:チタン酸アルミニウムセラミックスの作製
チタン酸アルミニウム(Al2TiO5)の原料粉末として、丸ス釉薬合資会社製のTA−2(SiO2添加量5wt%)を使用した。この原料粉末に、水とアルミナボールを、原料:アルミナボール:水(1:1:0.7)の重量比になるように調整して63時間ボールミル混合した。その後、このAl2TiO5スラリーを篩い(200メッシュ)に通した後、フィルタープレス機による脱水を行いAl2TiO5のプレスケーキを得た。
このプレスケーキに、水、解こう剤(中京油脂製、商品名:D−305)、バインダー(中京油脂製、商品名WE−518)を適当量添加し、スラリー比重が2.1〜2.3g/cm3になるように調整した。
その後、このスラリーを石膏型に流し込み、鋳込み成形した後、室温にて乾燥させてグリーン成形体を得た。グリーン成形体は、図1に示すラドル形状のものと図2に示す接合部位を備える容器状の接合体セット(2部材)のものの2種とした。ラドル形状体2は、図1(a)及び(b)に示すように、一つの湯口を備える半球状の容器であり、接合体セットは、図2(a)に示すように、上下に2部材からなる容器6であり、図2(b)に示すように、下部部材8の開口部にはテーパ状の内周面部10を有し、上部部材12がこの内周面部10に嵌め合う外周面部14を備える略環状体に形成される。上下2部材12、8が嵌め合わされることにより一体の容器をなすようになっている。
さらに、このグリーン成形体を、1600℃の大気中において1時間焼成することにより、Al2TiO5セラミックス焼結体を得た。
【0022】
実施例2:Al2O3層及びMgAl2O4層の形成
得られたAl2TiO5セラミックス焼結体(計3種類)にアルミナゾル(日産化学株式会社製、商品名:アルミナゾル200あるいはアルミナゾル520)をディップコーティングした後、室温にて乾燥した。その後、1100℃の大気中で1時間焼成することにより、各Al2TiO5セラミックス焼結体の表面全体に5μmの厚みのα−Al2O3層を形成させた。
【0023】
その後、微量のMg(0.5wt%)を含むアルミニウム合金溶湯中(A4C:組成は表1に示されている)、700℃)に1時間浸漬させる。これにより、Al2TiO5セラミックス表面のα−Al2O3層がA4C溶湯中のMgと反応して、単一相のMgAl2O4層がAl2TiO5セラミックス表面にその場形成した。MgAl2O4層の厚さは、A4C溶湯含浸前のα−Al2O3層と同様5μmであった。
なお、A4C溶湯浸漬前後のAl2TiO5セラミックス焼結体の表面を、X線回折分析することで、α−Al2O3(溶湯浸漬前)あるいはMgAl2O4(溶湯浸漬後)の存在を確認した。また、各層の厚さは、エネルギー分散型X線回折分析により測定した。
【0024】
実施例3:非濡れ性の評価
(1)濡れ角
アルミニウム合金溶湯(A4C)に対するAl2TiO5セラミックス焼結体の非濡れ性評価として濡れ角の測定を行った。
使用したAl2TiO5セラミックス試験片としては以下の3種類である。すなわち、i)実施例1で作製した焼結体の表面を25mm×25mm×6mmに切断した後、#800のダイヤモンド砥石により25mm×25mm面を表面仕上げし(厚さ5mm)、表面粗さ(中心線平均粗さ)を約3μmにしたもの、ii)この表面仕上げした焼結体を用いて実施例2により、その表面に5μmの厚みのα−Al2O3層を形成させたもの、iii) さらにα−Al2O3層を形成させたAl2TiO5セラミックス焼結体をアルミニウム合金溶湯中(A4C、720℃)に50時間浸漬させて、表面のα−Al2O3層をMgAl2O4層に変化させたものを使用した。
濡れ角の測定には、ユニオン光学(株)製のMH型誘導連動観測機を使用した。
本装置加熱部に上記の試験片を最終処理面(25mm×25mm面)を上にして設置した後、その面に直径10mm、長さ10mmの円柱状のアルミニウム合金塊(A4C)を載せる。その後、アルゴンガス雰囲気中(流量2500cc/min)において、室温から700℃まで5℃/minで昇温した後、30秒間保持する。その後、700℃において、ランプ光線をアルミニウム合金と試験片にあてて生じた影をスクリーンに投影し、その画像から試験片表面とアルミニウム合金との接触角を測定した。
700℃における濡れ角は以下の通りである。Al2TiO5焼結体=120°、α−Al2O3コーティングAl2TiO5焼結体=135°、MgAl2O4コーティングAl2TiO5焼結体=128°となり、α−Al2O3コーティングおよびMgAl2O4コーティングによって、Al2TiO5焼結体のアルミニウム合金に対する非濡れ性が向上することがわかった。
【0025】
(2)非濡れ性寿命
ラドル形態のAl2TiO5セラミックス焼結体(α−Al2O3層を備えるもの)の内側に、700℃のアルミニウム合金(A4C)溶湯を2kg注入し、50秒間保持した後、ラドル内の溶湯を排出する、という工程を、溶湯排出時に溶湯がラドル内壁に付着し残留するようになるまで繰り返した。その結果、実施例で作製したラドルによれば、この工程を12000回終了するまでは、溶湯の付着は全く認められなかった。このことから、当該ラドルは、良好な非濡れ性を保有しかつ維持できることがわかった。また、12000回終了の時点において、ラドル内壁には、MgAl2O4層の生成が確認された。
対照として、Al2O3層形成前のAl2TiO5セラミックス製ラドルにて同様の注入排出工程を実施したところ、2000回程度で溶湯の付着が認められた。
【0026】
(3)接合部位を備える接合体のシール性
α−Al2O3層を備えるAl2TiO5セラミックスの接合体セットの各部材を接合部位において嵌め合わせして接合体とし、接合部位の外周をアルミナ繊維シート(三井鉱山マテリアル(株)製、商品名:ALMAX)を介して、ステンレス製のバンド(幅20mm)で締め付けた。この接合体内部にアルミニウム合金塊(A4C)を入れた後、アルゴン雰囲気中(流量100cc/min)にて720℃まで昇温(20℃/min)して溶解した。溶解後、1時間720℃保持した後、降温(20℃/min)する工程を50回繰り返した。
この結果、この繰り返し工程中、接合部位から溶湯漏れは全く観察されなかった。また、接合体内壁の溶湯接触部位に、溶湯の付着は全く認められず、良好な非濡れ性を維持しているのを確認した。なお、接合体内部の溶湯接触部位には、表面にMgAl2O4層が形成されていることが確認された。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、チタン酸アルミニウムセラミックスのアルミニウム合金溶湯に対する非濡れ性の付与及び維持が容易に達成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で作製したセラミックス製ラドルの形態を示す図(a)及び(b)である。(a)は平面図であり、(b)は、(a)のA−A線断面図である。
【図2】実施例で作製したセラミックス製接合体セットの形態を示す図(a)及び(b)である。(a)は、接合体セットを上下に分離した状態の縦断面図であり、(b)は、下部部材の平面図である。
Claims (6)
- チタン酸アルミニウムセラミックス製アルミニウム合金溶湯接触部材であって、
少なくともアルミニウム合金溶湯と接触する部位に、実質的にSiを含有しないAl2O3被膜および/またはMgAl2O4被膜を備える部材。 - チタン酸アルミニウムセラミックス製アルミニウム合金溶湯接触部材であって、
少なくともアルミニウム合金溶湯と接触する部位に、実質的にSiを含有しないチタン酸アルミニウム層を備える部材。 - チタン酸アルミニウムセラミックス製アルミニウム合金溶湯接触部材の製造方法であって、
チタン酸アルミニウムセラミックス製部材の少なくともアルミニウム合金溶湯と接触する部位に、実質的にSiを含有しないAl2O3被膜を形成する工程と、
Al2O3被膜を備えるチタン酸アルミニウムセラミックス製部材にマグネシウムを作用させてMgAl2O4を生成させる工程、
とを備える、方法。 - アルミニウム合金溶湯接触部材の製造方法であって、
少なくともアルミニウム合金溶湯と接触する部位に、実質的にSiを含有しないAl2O3被膜を備えるチタン酸アルミニウムセラミックス製のアルミニウム合金溶湯接触部材を、アルミニウム合金の鋳造工程の少なくとも一部において、Mgを含有するアルミニウム合金溶湯に接触させて、前記Al2O3被膜においてMgAl2O4を生成させる工程、
とを備える、方法。 - アルミニウム合金溶湯接触部材の製造方法であって、
チタン酸アルミニウムセラミックス製の2以上の部材が接合される部位であって、少なくともアルミニウム合金溶湯と接触する部位に、実質的にSiを含有しないAl2O3被膜を備えるチタン酸アルミニウムセラミックス製のアルミニウム合金溶湯接触部材を、当該部位をアルミニウム合金の鋳造工程の少なくとも一部において、Mgを含有するアルミニウム合金溶湯に接触させて、前記Al2O3被膜においてMgAl2O4を生成させる工程、
を備える方法。 - アルミニウム合金鋳物の製造方法であって、
少なくともアルミニウム合金溶湯と接触する部位に、実質的にSiを含有しないAl2O3被膜を備えるチタン酸アルミニウムセラミックス製のアルミニウム合金溶湯接触部材を、アルミニウム合金の鋳造工程の少なくとも一部において、Mgを含有するアルミニウム合金溶湯に接触させて、前記Al2O3被膜においてMgAl2O4を生成させる工程、
とを有する、方法。
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