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JP4660596B2 - フルオロスルホニルイミド類およびその製造方法 - Google Patents

フルオロスルホニルイミド類およびその製造方法 Download PDF

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JP4660596B2
JP4660596B2 JP2009012344A JP2009012344A JP4660596B2 JP 4660596 B2 JP4660596 B2 JP 4660596B2 JP 2009012344 A JP2009012344 A JP 2009012344A JP 2009012344 A JP2009012344 A JP 2009012344A JP 4660596 B2 JP4660596 B2 JP 4660596B2
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Description

本発明は、フルオロスルホニルイミド類、詳しくは、N−(フルオロスルホニル)−N−(フルオロアルキルスルホニル)イミド、ジ(フルオロスルホニル)イミド及びその塩等の誘導体、並びに、その製造方法に関する。
N−(フルオロスルホニル)−N−(フルオロアルキルスルホニル)イミドや、ジ(フルオロスルホニル)イミド等のフルオロスルホニルイミド類やその誘導体は、N(SO2F)基又はN(SO2F)2基を有する化合物の中間体として有用であり、また、電解質や、燃料電池の電解液への添加物や、選択的求電子フッ素化剤、光酸発生剤、熱酸発生剤、近赤外線吸収色素等として使用されるなど、様々な用途において有用な化合物である。
例えば上記ジ(フルオロスルホニル)イミドは、従来、フッ素化剤を使用して、ジ(クロロスルホニル)イミドをハロゲン交換反応することにより調製されてきた。例えば、非特許文献1では、三フッ化ヒ素(AsF3)、非特許文献2では、三フッ化アンチモン(SbF3)がフッ素化剤として用いられており、また、特許文献1,2では、KFやCsFなどの1価カチオンのイオン性フルオリドをフッ素化剤として用いて、ジ(クロロスルホニル)イミドをフッ素化する方法が記載されている。また、特許文献3には、尿素の存在下で、フルオロスルホン酸(HFSO3)を蒸留することによってジ(フルオロスルホニル)イミドを調製する方法が開示されている。
特表2004−522681号公報 特開2007−182410号公報 特表平8−511274号公報
John K. RuffおよびMax Lustig、Inorg.Synth. 11,138-140 (1968年) Jean’ne M. Shreeveら、Inorg. Chem. 1998, 37 (24), 6295-6303
しかしながら、フッ素化剤としてAsF3を使用する場合、生成物からの分離が困難な副生成物の発生が避け難く、また、AsF3は比較的高価であるといった問題がある。なお、AsF3に換えてSbF3を用いることで副生成物の問題は解消されるが、これらAs,Sbはいずれも高い毒性を有する元素であるので、できるだけ使用を控えることが望まれている。また、特許文献3に記載の方法では、反応時にフッ化水素が生じる。フッ化水素は、毒性および腐食性が強い物質であるため、これが生成物中に含まれていると、反応装置はもとより、ジ(フルオロスルホニル)イミドを塩として各種用途に用いる際に、周辺部材を腐食させてしまう虞がある。したがって、このような物質が副生しないようなジ(フルオロスルホニル)イミド類の製造方法が求められている。
本発明はこれらの事情に着目してなされたもので、その目的は、簡便で、且つ、効率良く、N−(フルオロスルホニル)−N−(フルオロアルキルスルホニル)イミドや、ジ(フルオロスルホニル)イミド等のフルオロスルホニルイミド類を製造する方法、および、ジ(フルオロスルホニル)イミド類を提供することにある。
上記課題を解決した本発明の製造方法とは、下記スキームで示されるフルオロスルホニルイミド塩の製造方法であって、下記スキーム中、一般式(II)で表される化合物とオニウム塩とを反応させて、一般式(VI)で表される化合物を得る工程と、上記一般式(VI)で表される化合物とアルカリ金属化合物とを反応させて、一般式(III)で表される化合物を得る工程、を含むところに特徴を有している。
上記スキーム中、R1は、第11族〜第15族、第4周期〜第6周期の元素(但し、砒素およびアンチモンは除く)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、R2はアルカリ金属、R4はフッ素又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基、R5はオニウムカチオン、mは2〜3の整数、nはオニウムカチオンR5の価数に相当し、1〜3の整数を示し、lは1である。
上記一般式(II)において、R1で示される元素はCu,Zn,Biよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であるのが好ましい。
上記製造方法により得られ、上記スキーム中一般式(III)で表されるフルオロスルホニルイミド塩も本発明に含まれる。
なお、本発明における「フルオロスルホニルイミド」との文言には、フルオロスルホニル基を有する化合物、例えば、フルオロスルホニル基を2つ有するジ(フルオロスルホニル)イミドの他、フルオロスルホニル基と、フッ化アルキル基を有するN−(フルオロスルホニル)−N−(フルオロアルキルスルホニル)イミド等が含まれる。また、「フルオロアルキル」とは、炭素数1〜6のアルキル基において、1以上の水素原子がフッ素原子で置換されたものを意味し、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基等が含まれる。
本発明によれば、オニウム塩を経由することで、フッ素化反応時に副生する金属塩を水洗等で効率よく除去できるため、従来法に比べて効率よく、N−(フルオロスルホニル)−N−(フルオロアルキルスルホニル)イミド塩、ジ(フルオロスルホニル)イミド塩が得られる。
本発明の製造方法とは、下記スキームで示されるジ(フルオロスルホニル)イミド塩及びN−(フルオロスルホニル)−N−(フルオロアルキルスルホニル)イミド塩等のフルオロスルホニルイミド塩の製造方法であって、下記スキーム1中一般式(II)で表される化合物とオニウム塩とを反応させて、一般式(VI)で表される化合物を得る工程と、上記一般式(VI)で表される化合物とアルカリ金属化合物とを反応させて、一般式(III)で表される化合物を得る工程、を含むところに特徴を有する。
なお、上記スキーム1中、R1は、第11族〜第15族、第4周期〜第6周期の元素(但し、砒素およびアンチモンは除く)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、R2はアルカリ金属、R4はフッ素又は炭素数1〜6フッ化アルキル基、R5はオニウムカチオン、mは2〜3の整数、nはオニウムカチオンR5の価数に相当し、1〜3の整数を示し、lは1である。
上記スキームにおいて、化合物(II)から化合物(VI)を得る工程と、化合物(VI)から化合物(III)を得る工程とは、同一の反応溶媒を用いることができるので、これらの工程間においては、溶媒留去などの後処理を行うことなく次工程に進むことができ、効率的にカチオン交換反応を行うことができる。また、分液抽出のみでの精製が可能であるため、簡便で、且つ、効率よく副生する金属塩を除去することができる。
以下、本発明の製造方法について、詳細に説明する。
まず、本発明の製造方法では、一般式(II)で表される化合物とオニウム塩とを反応させて、一般式(VI)で表される化合物を得る。出発物質である化合物(II)は、下記スキーム2中の化合物(I)と、フッ化物とを反応させることにより得られる。
上記式(I)中、R3は、フッ素、塩素又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基を示す。
上記一般式(I)で表される化合物としては、R3が、フッ素(F)、塩素(Cl)、又は、炭素数1〜6のフッ化アルキル基を有する化合物が挙げられる。上記フッ化アルキル基の炭素数は1〜6であるのが好ましく、より好ましくは1〜4である。具体的な炭素数1〜6のフッ化アルキル基としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ペルフルオロ−n−プロピル基、フルオロプロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、フルオロブチル基、3,3,4,4,4−ペンタフルオロブチル基、ペルフルオロ−n−ブチル基、ペルフルオロイソブチル基、ペルフルオロ−t−ブチル基、ペルフルオロ−sec−ブチル基、フルオロペンチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロイソペンチル基、ペルフルオロ−t−ペンチル基、フルオロヘキシル基、ペルフルオロ−n−ヘキシル基、ペルフルオロイソヘキシル基等が挙げられる。これらの中でもトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペルフルオロ−n−プロピル基が好ましく、より好ましいのはトリフルオロメチル基及びペンタフルオロエチル基である。
上記一般式(I)で表される化合物は、市販のものを用いてもよいが、塩化シアン(CNCl)を出発原料として合成することもできる(スキーム3)。
例えば、一般式(I)において、R3が塩素であるジ(クロロスルホニル)イミドを合成する場合、塩化シアンに、無水硫酸(SO3)とクロロスルホン酸を反応させればよい。この際、まず、塩化シアンと無水硫酸とを反応させる(スキーム3、化合物(IV)→化合物(V))。これら出発原料の配合割合は、1:0.5〜1:10(塩化シアン:無水硫酸、モル比)とするのが好ましい。より好ましくは1:1〜1:5である。
塩化シアンと無水硫酸とを反応させる際の条件は特に限定されず、反応の進行状態に応じて適宜調整することができる。例えば、反応温度は0℃〜100℃とするのが好ましく(より好ましくは10℃〜50℃)、反応時間は0.1時間〜48時間(より好ましくは1時間〜24時間)とするのが好ましい。反応は無溶媒で行うことが好ましいが、必要に応じて溶媒を使用してもよい。溶媒としては後述する非プロトン性溶媒が使用するのが好ましい。
次いで、得られたクロロスルホニルイソシアネート(ClSO2NCO、上記式(V))を、クロロスルホン酸と反応させることでジ(クロロスルホニル)イミド(上記式(I)、R3はCl)が得られる。クロロスルホニルイソシアネート(化合物(V))とクロロスルホン酸との配合割合は、1:0.5〜1:2(クロロスルホニルイソシアネート:クロロスルホン酸、モル比)とするのが好ましく、より好ましくは1:0.8〜1:1.2である。
尚、クロロスルホニルイソシアネートとクロロスルホン酸との反応は、不活性ガス雰囲気下、50℃〜200℃(より好ましくは70℃〜180℃)で、0.1時間〜48時間(より好ましくは1時間〜24時間)で行えばよい。クロロスルホン酸は液状であり、合成反応中は溶媒としても機能するが、必要に応じて他の溶媒を用いてもよい。
また、上記一般式(I)において、R3が炭素数1〜6のフッ化アルキル基を有するN−(フルオロアルキルスルホニル)−N−(クロロスルホニル)イミドは、クロロスルホニルイソシアネートとフッ化アルキルスルホン酸との反応、あるいは、フッ化アルキルスルホニルイソシアネートとクロロスルホン酸との反応により得られる。好ましい化合物としては、トリフルオロメタンスルホン酸が挙げられる。
クロロスルホニルイソシアネート(化合物(V))とフッ化アルキル化合物との配合比は、1:0.5〜1:2(クロロスルホニルイソシアネート:フルオロアルキル化合物、モル比)とするのが好ましく、より好ましくは1:0.8〜1:1.2である。反応条件は、ジ(クロロスルホニル)イミドを合成する際と同様の条件が採用できる。
なお、上記式(I)においてR3がフッ素であるN−(クロロスルホニル)−N−(フルオロスルホニル)イミドは、クロロスルホニルイソシアネートとフルオロスルホン酸との反応、あるいは、フルオロスルホニルイソシアネートとクロロスルホン酸との反応により得られる。出発原料の配合量および反応条件は、ジ(クロロスルホニル)イミドの場合と同様の条件が採用できる。
さらに、上記ジ(クロロスルホニル)イミドは、アミド硫酸と塩化チオニルとを反応させた後、さらにクロロスルホン酸を反応させることでも合成することができる(例えば、Z. Anorg. Allg. Chem 2005, 631, 55-59参照)。
アミド硫酸と塩化チオニルの配合割合は、1:1〜1:20(アミド硫酸:塩化チオニル、モル比)とするのが好ましく、より好ましくは1:2〜1:10である。また、クロロスルホン酸の配合割合は、アミド硫酸に対して1:0.5(アミド硫酸:クロロスルホン酸、モル比)とするのが好ましく、より好ましくは1:1〜1:5である。
アミド硫酸に、塩化チオニル、クロロスルホン酸を反応させる際の条件は特に限定されず、反応の進行状況に応じて適宜調整すればよい。例えば、反応温度は0℃〜200℃とするのが好ましく、より好ましくは50℃〜150℃であり、又、この温度範囲内で段階的に温度を上昇させて反応を行っても良い。反応時間は0.1時間〜100時間とするのが好ましく、より好ましくは1時間〜50時間である。反応は無溶媒で行うことが好ましいが、必要に応じて溶媒を用いてもよい。
次いで、得られた化合物(I)を、第11族〜第15族、第4周期〜第6周期の元素(但し、砒素およびアンチモンは除く)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含むフッ化物と反応させる(スキーム2、化合物(I)→化合物(II))。
上記フッ化物としては、上記元素の中でも2価以上の陽イオンとなる元素を含むものが好ましい。具体的には、Cu,Zn,Sn,Pbなどの2価の陽イオンとなる元素、Biなどの3価の陽イオンとなる元素を含むものが好ましいフッ化物として挙げられる。より好ましいフッ化物としては、CuF2、ZnF2、SnF2、PbF2およびBiF3が挙げられ、より一層好ましくはCuF2、ZnF2、BiF3であり、さらに好ましくはZnF2である。
上記フッ化物を使用することにより、化合物(I)のハロゲン(塩素→フッ素)及びプロトン(H→R1)それぞれの交換反応を1段階で行うことができる。したがって、上記元素を含むフッ化物を化合物(I)のフッ化剤として採用すれば、工程が煩雑にならず、速やかに所望の塩が得られる。また、予め、化合物(I)のプロトンを上記元素と交換しておくことで、プロトンのままである場合に比べて精製操作も容易となる。
なお、上記式(II)で表される化合物は、本発明法における出発原料であり、また、式(III)や(VI)で表されるフルオロスルホニルイミド塩の反応中間体でもある。上記式(II)で表される化合物(反応中間体)は、リチウム二次電池、キャパシタ、イオン性液体などの電解液に溶解させる電解質、あるいは、その中間体として有用である。
一般式(I)で表される化合物と上述のフッ化物との配合比は、ジ(クロロスルホニル)イミド(化合物(I))と、2価のフッ化物とを反応させる場合であれば、1:0.8〜1:10(化合物(I):フッ化物、モル比)とするのが好ましく、より好ましくは1:1〜1:5であり、さらに好ましくは1:1〜1:2である。また、3価のフッ化物と反応させる場合であれば、1:0.5〜1:7とするのが好ましく、より好ましくは1:0.7〜1:3であり、さらに好ましくは1:0.7〜1:1.3である。一方、化合物(I)としてN−(クロロスルホニル)−N−(フルオロアルキルスルホニル)イミドやN−(クロロスルホニル)−N−(フルオロスルホニル)イミドを用いる場合は、2価のフッ化物と反応させる際の配合比を1:0.4〜1:5(化合物(I):フッ化物、モル比)とするのが好ましく、より好ましくは1:0.5〜1:2.5であり、さらに好ましくは1:0.5〜1:1であり、3価のフッ化物と反応させる場合であれば、1:0.3〜1:3とするのが好ましく、より好ましくは1:0.3〜1:0.8であり、さらに好ましくは1:0.3〜1:0.7とするのが好ましい。
化合物(I)から化合物(II)を得る際の反応条件は、反応の進行状態に応じて適宜調整すればよいが、好ましくは、反応温度を0℃〜200℃とし(より好ましくは10℃〜100℃)、反応時間を0.1時間〜48時間(より好ましくは1時間〜24時間)とすることが推奨される。
反応溶媒は、出発原料が液状であり互いに溶解している場合には、必ずしも用いる必要はないが、例えば、非プロトン性溶媒を用いるのが好ましい。具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、メチルホルメート、メチルアセテート、メチルプロピオネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、アセトニトリル、スルホラン、3−メチルスルホラン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルオキサゾリジノン、バレロニトリル、ベンゾニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、ニトロメタン、ニトロベンゼン等の非プロトン性溶媒が挙げられる。フッ素化反応を円滑に進行させる観点からは極性溶媒を使用することが推奨され、上記例示の溶媒の中でも、バレロニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル及び酢酸ブチルが好ましい。なお、精製時の作業性からは、沸点が低く、水と2層状態を形成し得る溶媒が好ましい。
次いで、得られた化合物(II)をオニウム塩と反応させ、式(II)中R1で示されるカチオンをオニウムカチオンR5に交換することで、化合物(VI)が得られる。

(式中、R4、R5およびnは、上記と同様である。)
上記式(VI)で表され、オニウムカチオンを含むジ(フルオロスルホニル)イミド塩は、常温で溶融した状態を安定に保つ常温溶融塩となり、長期間の使用に耐える電気化学デバイスのイオン伝導体の材料として好適なものとなる。なお、常温溶融塩とは、例えば、100℃以下で液体の状態をとるものを指す。
上記化合物(II)から化合物(VI)へのカチオン交換反応に用いるオニウム塩としては、下記一般式(VII)で表されるオニウムカチオンとアニオンとからなる塩を用いるのが好ましい。アニオンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水酸化物イオン(OH-)、炭酸イオンおよび炭酸水素イオン等が好ましいものとして挙げられる。
(式中、Lは、C、Si、N、P、S又はOを表す。Rは、同一若しくは異なって、水素又は有機基であり、これらは2以上が互いに結合していてもよい。sは、2、3又は4であり、元素Lの価数によって決まる値である。尚、L−R間の結合は、単結合であっても良く、また二重結合であってもよい。)
上記一般式(VII)で表されるオニウムカチオンとしては、具体的には下記一般式で表される構造を有するものが挙げられる。尚、式中Rは、一般式(VII)と同様である。
これらのオニウムカチオンは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記構造を有するオニウムカチオンの中でも、好ましいものとしては、下記(1)〜(4)のオニウムカチオンが挙げられる。
(1)下記一般式で表される9種類の複素環オニウムカチオンの内の1種。
(2)下記一般式で表される5種類の不飽和オニウムカチオンの内の1種。
(3)下記一般式で表される10種類の飽和環オニウムカチオンの内の1種。
上記一般式中、R6〜R17は、同一若しくは異なって、有機基であり、互いに結合していてもよい。
(4)Rが、水素、または、炭素数1〜8のアルキル基である鎖状オニウムカチオン。中でも、一般式(VII)において、LがNであるものが好ましい。例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラヘプチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、テトラオクチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、メトキシエチルジエチルメチルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、ジメチルジステアリルアンモニウム、ジアリルジメチルアンモニウム、2−メトキシエトキシメチルトリメチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロエチル)アンモニウム等の第4級アンモニウム類、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ジエチルメチルアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウム、ジブチルメチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム等の第3級アンモニウム類、ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、ジブチルアンモニウム等の第2級アンモニウム類、メチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ヘキシルアンモニウム、オクチルアンモニウム等の第1級アンモニウム類、N−メトキシトリメチルアンモニウム、N−エトキシトリメチルアンモニウム、N−プロポキシトリメチルアンモニウム及びNH4等のアンモニウム化合物等が挙げられる。これらの中でも、アンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムおよびジエチルメチル(2−メトキシエチル)アンモニウムが好ましい鎖状オニウムカチオンとして挙げられる。
上記(1)〜(4)のオニウムカチオンの中でも好ましいものは、下記一般式;
(式中、R6〜R17は、上記と同様である。)で表される5種類のオニウムカチオン及び上記(4)の鎖状オニウムカチオンである。上記R6〜R17の有機基としては、直鎖、分岐鎖又は環状の炭素数1〜18の飽和又は不飽和炭化水素基、炭化フッ素基等が好ましく、より好ましくは炭素数1〜8の飽和又は不飽和炭化水素基、炭化フッ素基である。これらの有機基は、水素原子、フッ素原子、アミノ基、イミノ基、アミド基、エーテル基、エステル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルバモイル基、シアノ基、スルホン基、スルフィド基を有していてもよく、また、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を含んでもよい。より好ましくは、水素原子、フッ素原子、シアノ基及びスルホン基のいずれか1種以上を有するものである。なお、2以上の有機基が結合している場合は、当該結合は、有機基の主骨格間に形成されたものでも、また、有機基の主骨格と上述の置換基との間、あるいは、上記置換基間に形成されたものであっても良い。
本発明に係るジ(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩を得る際、化合物(II)と、上記オニウム塩との配合割合は、オニウムカチオンR5が1価であれば、1:0.5〜1:10(化合物(II):オニウム塩、モル比)とするのが好ましい。より好ましくは1:1〜1:5である。
オニウムカチオンへの交換反応は、化合物(II)と、上記オニウムカチオンを含む塩とを、溶媒の存在下、混合すればよい。この際の温度としては、0℃〜200℃(より好ましくは10℃〜100℃)であり、0.1時間〜48時間(より好ましくは0.1時間〜24時間)反応させればよい。溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、メチルホルメート、メチルアセテート、メチルプロピオネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、アセトニトリル、スルホラン、3−メチルスルホラン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルオキサゾリジノン、バレロニトリル、ベンゾニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、ニトロメタン、ニトロベンゼン等の非プロトン性溶媒が好ましく用いられる。精製時の作業性からは、沸点が低く、水と2層状態を形成し得る溶媒が好ましく、上記例示の溶媒の中でも、バレロニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル及び酢酸ブチルが好ましい。これらの溶媒を用いることで、副生する金属塩を効率よく除去できるからである。また、前記溶媒と水とを併用しても良い。反応後、引き続き化合物(VI)のカチオン交換反応を行ってもよいし、また、水洗、分液操作を行ってもよく、これにより副生する金属塩を一層効率よく除去することができる。
次いで、本発明法では、上記一般式(VI)で表される化合物と、アルカリ金属化合物とを反応させてカチオン交換を行って、一般式(III)で表される化合物を得る。化合物(VI)から化合物(III)へのカチオン交換反応としては、所望のアルカリ金属イオンを含む塩と化合物(VI)とを反応させる方法、化合物(VI)を陽イオン交換樹脂と接触させる方法などが挙げられる。また、化合物(VI)を適当な塩と反応させることで、R2がHのフルオロスルホニルイミドを得ることもできる。
2がアルカリ金属の化合物(III)を与える化合物(塩)としては、LiOH,NaOH,KOH,RbOH,CsOH等の水酸化物,Na2CO3,K2CO3,Rb2CO3,Cs2CO3等の炭酸塩,LiHCO3,NaHCO3,KHCO3,RbHCO3,CsHCO3等の炭酸水素化物,LiCl,NaCl,KCl,RbCl,CsCl等の塩化物,LiF,NaF,KF,RbF,CsF等のフッ化物、CH3OLi、Et2OLi等のアルコキシド化合物、及び、EtLi、BuLiおよびt−BuLi(尚、Etはエチル基、Buはブチル基を示す)等のアルキルリチウム化合物等が挙げられる。
この際、必要に応じて溶媒を使用してもよく、溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、メチルホルメート、メチルアセテート、メチルプロピオネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、アセトニトリル、スルホラン、3−メチルスルホラン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルオキサゾリジノン、バレロニトリル、ベンゾニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、ニトロメタン、ニトロベンゼン等の非プロトン性溶媒が好適である。精製時の作業性からは、沸点が低く、水と2層状態を形成し得る溶媒が好ましく、上記例示の溶媒の中でも、バレロニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル及び酢酸ブチルが好ましい。これらの溶媒は、化合物(VI)を得る工程で用いる溶媒と共通しているため、化合物(VI)の製造後、反応溶媒を変更することなく、化合物(III)を得る工程へと進むことができる。
化合物(VI)とアルカリ金属塩との配合比は、化合物(VI)のオニウムカチオンR5が1価であれば、1:1〜1:10(化合物(VI):塩、モル比)とするのが好ましい。より好ましくは1:1〜1:5であり、さらに好ましくは1:1〜1:3である。
反応時間および反応温度は特に限定されないが、0℃〜200℃(より好ましくは10℃〜100℃)、0.1時間〜48時間(より好ましくは1時間〜24時間)とすることが推奨される。
反応後は、生成物の純度を高めるため精製しても良い。本発明においては、水、有機溶媒、及び、これらの混合溶媒による分液抽出法で、容易に目的物を精製することができる。このとき使用できる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、メチルホルメート、メチルアセテート、メチルプロピオネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、アセトニトリル、スルホラン、3−メチルスルホラン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルオキサゾリジノン、バレロニトリル、ベンゾニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、ニトロメタン、ニトロベンゼン等の非プロトン性溶媒が挙げられる。精製時の作業性からは、沸点が低く、水と2層状態を形成し得る溶媒が好ましく、上記例示の溶媒の中でも、バレロニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル及び酢酸ブチルが好ましい。もちろん、上記溶媒による洗浄、再沈殿法、分液抽出法、再結晶法、晶析法及びクロマトグラフィーによる精製法など従来公知の方法を採用しても良い。
本発明の製造方法により得られるジ(フルオロスルホニル)イミド塩及びN−(フルオロスルホニル)−N−(フルオロアルキルスルホニル)イミド塩(化合物(III)及び(VI))、及び、これらの反応中間体(化合物(II))は、イオン性液体や、リチウム二次電池、キャパシタ、などの電解液に溶解させる電解質あるいはその中間体などとして有用である。特に、本発明に係るフルオロスルホニルイミドのオニウム塩やリチウム塩は、一次電池、リチウム(イオン)二次電池や燃料電池等の充電/放電機構を有する電池、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、太陽電池・エレクトロクロミック表示素子等の電気化学デバイスを構成するイオン伝導体の材料として好適に用いられる。
なお、本発明法により得られるジ(フルオロスルホニル)イミド塩又はN−(フルオロスルホニル)−N−(フルオロアルキルスルホニル)イミド塩を電解液用材料として用いる場合、電解液は、更に、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を含んでなるものであるのが好ましい。この場合において、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩は、本発明に係るジ(フルオロスルホニル)イミド又はN−(フルオロスルホニル)−N−(フルオロアルキルスルホニル)イミドをアニオンとする化合物であってもよいし(上記式(VI)の化合物)、また、これとは別に添加される化合物であってもよい。このようなアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を含んでなる電解液用材料は、電解質を含有するものとなるので、電気化学デバイスの電解液の材料として好適なものとなる。アルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が好適であり、アルカリ土類金属塩としては、カルシウム塩、マグネシウム塩が好適である。より好ましくは、リチウム塩である。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
合成例1 クロロスルホニルイソシアネートの合成
攪拌器、温度計、還流管、ガス導入管を取り付けた200mlの反応容器に、液体無水硫酸(SO3)80.1g(1.0mol)を入れ、ここに、25℃〜35℃の温度下で、塩化シアンガス(CNCl)61.5g(0.53mol)を2時間かけて導入した後、反応溶液を25℃〜30℃に調整して、0.5時間攪拌した。反応終了後、還流管およびガス導入管を反応容器から外し、常圧で蒸留し、106℃〜107℃の留分として無色透明液体を得た(118.5g、0.83mol、収率83.7%)。
合成例2 N−(クロロスルホニル)−N−(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの合成
攪拌器、温度計、還流管及び滴下装置を取り付けた500mlの反応容器に、トリフルオロメタンスルホン酸(CF3SO3H)190.6g(1.27mol)を加え、120℃まで加熱した。次いで、合成例1と同様の手法で合成したクロロスルホニルイソシアネート179.7g(1.27mol)を滴下装置から反応容器内へ2時間掛けて加えた後、混合溶液を150℃に加熱し、6時間攪拌した。反応終了後、還流管、滴下装置を反応容器からはずし、減圧蒸留を行い、無色透明の液状物を得た(212.9g、0.86mol、収率67.7%)。
1H-NMRおよび19F-NMR測定(「Unity plus 400型」、バリアン社製、内部標準物質:トリフルオロメチルベンゼン、積算回数:32回)により、生成物がN−(クロロスルホニル)−N−(トリフルオロメチルスルホニル)イミドであることを確認した。
合成例3
合成例3−1 ビス[N−(フルオロスルホニル)−N−(トリフルオロメチルスルホニル)イミド]亜鉛塩の合成
20mlの反応容器に、合成例2で得られたN−(クロロスルホニル)−N−(トリフルオロメチルスルホニル)イミド2.00g(8.1mmol)と、酢酸ブチル18gを加え、攪拌した。ここにZnF20.88g(8.5mmol)を加え、室温(25℃)で24時間反応を行った。得られた反応溶液を濾過し、合成例3と同様にして洗浄し、ろ液と洗浄液とを合わせた溶液を19F-NMR(「Unity plus 400型」、バリアン社製、内部標準物質:トリフルオロメチルベンゼン、積分回数:32回)で分析した。得られたチャートのピークの面積を計測し、塩素からフッ素への変換割合を定量した結果、反応は定量的に進行しており、ビス[N−(フルオロスルホニル)−N−(トリフルオロメチルスルホニル)イミド]亜鉛塩が生成していることを確認した。
合成例3−2 オニウム塩の合成(カチオン交換)
次いで50mlの分液ロートに得られた反応溶液を移し、ここにトリエチルアミンの塩酸塩1.7g(12.4mmol)を蒸留水1.2gに溶解した水溶液を加え、混合し、水相を除去した。さらに蒸留水1.2gを加え混合した後、水相を除去した。この分液操作を4回繰返し行った。得られた有機相を乾燥した後、19F-NMR及び1H-NMRで分析し、N−(フルオロスルホニル)−N−(トリフルオロメチルスルホニル)イミドトリエチルアンモニウム塩1.44g(4.3mmol)が生成していることを確認した(19F-NMR (CD3CN):δ56.0、1H-NMR(CD3CN):δ3.1(6H)、1.2(9H))。
合成例3−3 リチウム塩の合成(カチオン交換)
さらに、得られたN−(フルオロスルホニル)−N−(トリフルオロメチルスルホニル)イミドトリエチルアンモニウム塩を50mlの分液ロートに移し、ここに水酸化リチウム一水和物0.55g(13.1mmol)を蒸留水2.5gに溶解した水溶液を加え、混合し、分液操作により水相を除去した。得られた有機相を蒸発乾固することで、N−(フルオロスルホニル)−N−(トリフルオロメチルスルホニル)イミドのリチウム塩0.83g(3.5mmol)を得た。目的物の生成は19F-NMRと1H-NMRによる分析でトリエチルアンモニウム由来のピークが消失したことにより確認した。
合成例4
合成例4−1 フルオロスルホニルイミドの亜鉛塩の合成
3lの反応容器にジ(クロロスルホニル)イミド240.00g(1.12mol)、酢酸ブチル2160gを加え、攪拌した。ここに、ZnF2121.72g(1.18mol)を加え、室温(25℃)で3時間反応を行った。得られた反応溶液を濾過し、合成例3と同様にして洗浄した後、ろ液と洗浄液とを合わせた溶液を19F-NMRで分析したところ、反応は定量的に進行し、ビス[ジ(フルオロスルホニル)イミド]亜鉛塩が生成していることを確認した(19F-NMR (CD3CN):δ56.0)。
合成例4−2 オニウム塩の合成(カチオン交換)
次いで5lの分液ロートに反応溶液を移し、ここにトリエチルアミンの塩酸塩308.68g(2.24mol)を蒸留水214gに溶解した水溶液を加え、混合し、水相を除去した。さらに蒸留水214gを加え混合した後、水相を除去する分液操作を4回繰返し行った。得られた有機相を乾燥した後、19F-NMR及び1H-NMRで分析し、ジ(フルオロスルホニル)イミドトリエチルアンモニウム塩170.18g(0.60mol)が生成していることを確認した(19F-NMR (CD3CN):δ56.0、1H-NMR(CD3CN):δ3.1(6H)、1.2(9H))。
合成例4−3 リチウム塩の合成(カチオン交換)
さらに、得られたジ(フルオロスルホニル)イミドトリエチルアンモニウム塩を5l分液ロートに移し、ここに水酸化リチウム一水和物75.88g(1.81mol)を蒸留水455gに溶解した水溶液を加え、混合し、分液操作により水相を除去した。得られた有機相を蒸発乾固することで、ジ(フルオロスルホニル)イミドのリチウム塩90.20g(0.48mol)を得た。目的物の生成は19F-NMRと1H-NMRによる分析でトリエチルアンモニウム由来のピークの消失により確認した。
19F-NMR (CD3CN):δ56.0
合成例5
合成例5−1 フルオロスルホニルイミドの亜鉛塩の合成
100mlの反応容器にジ(クロロスルホニル)イミド2.00g(9.3mmol)、バレロニトリル18gを加え、攪拌した。ここに、ZnF21.01g(9.8mmol)を加え、室温(25℃)で3時間反応を行った。得られた反応溶液を合成例3と同様にして19F-NMRで分析したところ、反応は定量的に進行しており、ビス[ジ(フルオロスルホニル)イミド]亜鉛塩が生成していることを確認した(19F-NMR (CD3CN):δ56.0)。
合成例5−2 オニウム塩の合成
次いで、100mlの分液ロートに反応溶液を移し、ここにトリエチルアミンの塩酸塩2.57g(18.7mmol)を蒸留水1.8gに溶解した水溶液を加え、混合し、分液操作により水相を除去した。さらに蒸留水1.8gを加え、混合した後、水相を除去する分液操作を4回繰り返し行った。得られた有機相を乾燥した後、19F-NMR及び1H-NMRで分析し、ジ(フルオロスルホニル)イミドのトリエチルアンモニウム塩2.02g(7.2mmol)が生成していることを確認した(19F-NMR (CD3CN):δ56.0、1H-NMR(CD3CN):δ3.1(6H)、1.2(9H))。
合成例5−3 リチウム塩の合成
さらに、得られたジ(フルオロスルホニル)イミドのトリエチルアンモニウム塩を100mlの分液ロートに移し、ここに水酸化リチウム一水和物0.91g(21.6mmol)を蒸留水5.5gに溶解した水溶液に加え、混合した。分液操作により、水相を除去した。同様の分液操作を2回繰り返し行った。得られた有機相を蒸発乾固することで、ジ(フルオロスルホニル)イミドのリチウム塩0.75g(4.0mmol)を得た。なお、目的物の生成は、19F-NMR及び1H-NMRの分析により、トリエチルアンモニウム由来のピークが消失したことにより確認した。
19F-NMR (CD3CN):δ56.0
合成例4、5の結果より、溶媒変更を行うことなく各工程を実施することができること、また、副生する金属塩を水洗により簡便に除去でき、効率よく目的とする化合物が得られることが分かる。
合成例6 ジ(クロロスルホニル)イミドの合成
攪拌器、温度計、還流管を取り付けた500mlの反応容器に、アミド硫酸48.5g(0.5mol)、塩化チオニル178.5g、クロロスルホン酸を加え、この混合溶液を、攪拌下、70℃で4時間、130℃で20時間反応させた。反応終了後、還流管を反応容器から外し、減圧蒸留を行い、104℃〜105℃の留分として無色透明の液状物を得た(102.7g、0.48mol、収率96%)。
同定は、IR(Varian 2000 FT-IR、バリアン社製、液膜法)により行い、ジ(クロロスルホニル)イミドであることを確認した。
IR(neat):νs (N-H)3155,νas (S-O)1433,1428、νs (S-O)1183、νs (N-S)824cm-1
合成例7 ビス[ジ(フルオロスルホニル)イミド]亜鉛塩の合成
20mlの反応容器に、合成例6で得られたジ(クロロスルホニル)イミド0.50g(2.01mmol)、酢酸ブチル4.5gを加え、攪拌した。ここに、ZnF20.25g(2.5mmol)を加え、室温(25℃)で3時間反応を行った後、19F-NMR分析を行った。得られたチャートのピークの面積を計測し、塩素からフッ素への変換割合を定量した結果より、反応が定量的に進行し、ビス[ジ(フルオロスルホニル)イミド]亜鉛塩が得られていることを確認した。
19F-NMR(CD3CN):δ56.0
合成例8 オニウム塩及びリチウム塩の合成
20mlの反応容器に、合成例7で得られたビス[ジ(フルオロスルホニル)イミド]亜鉛塩を含む反応溶液を加え、ここに、酢酸ブチル5gに溶解した1,4−ジアゾビシクロ[2.2.2]オクタン0.53g(4.7mmol)を混合しながら加えた。混合溶液を室温(25℃)下で攪拌した後、析出した白色固体を濾取した。得られた固体を重DMSOに溶解し、1H-NMR及び19F-NMRで分析し、1,4−ジアゾビシクロ[2.2.2]オクタンジ(フルオロスルホニル)イミドが生成していることを確認した。
得られた固体0.35g(1.2mmol)を、水酸化リチウム一水和物0.15g(3.6mmol)を蒸留水2gに溶解した水溶液と混合したところ、カチオン交換反応が進行し、リチウムジ(フルオロスルホニル)イミドが生成していることを確認した。
本発明によれば、オニウム塩を経由するため、フッ素化反応時に副生する金属塩を水洗等で効率よく除去できるので、従来法に比べて効率よく、N−(フルオロスルホニル)−N−(フルオロアルキルスルホニル)イミドやジ(フルオロスルホニル)イミド及びその有機塩並びに金属塩類を製造することができる。
本発明法により得られるフルオロスルホニルイミド類は、一次電池、リチウム(イオン)二次電池や燃料電池等の充電/放電機構を有する電池、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、太陽電池・エレクトロクロミック表示素子等の電気化学デバイスを構成するイオン伝導体の材料として好適に用いられると考えられる。

Claims (2)

  1. 下記スキームで示されるフルオロスルホニルイミド塩の製造方法であって、
    下記スキーム中一般式(II)で表される化合物とオニウム塩とを反応させて、一般式(VI)で表される化合物を得る工程と、
    上記一般式(VI)で表される化合物とアルカリ金属化合物とを反応させて、一般式(III)で表される化合物を得る工程、
    を含むことを特徴とするフルオロスルホニルイミド塩の製造方法。
    上記スキーム中、R1は、第11族〜第15族、第4周期〜第6周期の元素(但し、砒素およびアンチモンは除く)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、R2はアルカリ金属、R4はフッ素又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基、R5はオニウムカチオン、mは2〜3の整数、nはオニウムカチオンR5の価数に相当し、1〜3の整数を示し、lは1である。
  2. 上記一般式(II)において、R1で示される元素がCu,Zn,Biよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である請求項1に記載のフルオロスルホニルイミド塩の製造方法。
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