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JP4536487B2 - ゴルフボール用インキ、ゴルフボール用転写フィルム及びマーキングされたゴルフボール - Google Patents

ゴルフボール用インキ、ゴルフボール用転写フィルム及びマーキングされたゴルフボール Download PDF

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JP4536487B2 JP2004324656A JP2004324656A JP4536487B2 JP 4536487 B2 JP4536487 B2 JP 4536487B2 JP 2004324656 A JP2004324656 A JP 2004324656A JP 2004324656 A JP2004324656 A JP 2004324656A JP 4536487 B2 JP4536487 B2 JP 4536487B2
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Description

本発明は、ゴルフボールのマーキングの技術分野に属する。
一般に、ゴルフボールの表面には、他と区別するために、文字・数字・図形等のマーキングが施されている。マーキングは、パッド印刷や、全ベタフィルムを用いた刻印、あるいは転写フィルムを用いた熱転写等により、例えばウレタン樹脂を主材とするゴルフボール用のインキで印刷される。ゴルフボールは、クラブで打撃されたり、バンカーの砂で摩耗されたり、ラフで障害物や潅木と衝突したり、使用状態が過酷であるので、マーキングを構成するインキ層は、ボールへの接着性(はがれ難さ)に加え、耐衝撃性(割れ難さ・欠け難さ)や耐摩耗性(かすれ難さ・傷つき難さ)に優れることが要求される。
そこで、例えば特許文献1や特許文献2に開示されるように、ゴルフボール用のインキ樹脂に、所定のヒドロキシル価を有するものを用いることが知られている。こうすることにより、マーキング後に、その上からボール全面をウレタン塗装したときには、マーキングインキ層中の水酸基(−OH)と、ウレタントップコート層中のイソシアネート基(−NCO)とが反応して、これらの層間で新たなウレタン結合が生じ、インキ層の保護が強化されることとなる。
特開平7−89214号公報 特開平11−139095号公報
しかしながら、特許文献2に例示されるようなインキでは、低温で転写を可能にするためにインキ自体の軟化温度を下げたことから、転写後のインキの耐摩耗性が低下し、転写後にゴルフボール表面に印刷された図柄(パターン)部分が擦られた場合、その図柄部分の摩滅が生じ易くなった。
そこで、本発明は、低温での転写特性をそのまま維持し、転写された図柄の耐磨耗性・耐摩滅性を向上させることのできるゴルフボール用インキ、ゴルフボール用転写フィルム及びそれらによってマーキングされたゴルフボールの提供を課題とする。以下、その他の課題を含め、本発明を詳しく説明する。
本発明者等は、トップコート層との反応にあずかる水酸基は、専らインキ層の表層部に存在する水酸基であるから、インキ層の内部にある水酸基については、これを別途手段によって他の官能基と反応させて除去すれば、不具合が解消すると共に、さらなるインキ層の硬度の改良にも寄与し得ることに着目して、本発明を完成したものである。
すなわち、本発明のうち請求項1に記載の発明は、コアと、アイオノマー樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド又はこれらの混合物から形成される表面のカバー層とを有するゴルフボールのマーキングに用いるゴルフボール用インキであって、該インキは、ウレタン樹脂とポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂のいずれか一方とでなるインキ樹脂と、ブロックイソシアネートとを含有し、前記ゴルフボールのカバー表面に印刷し、加熱することにより、インキ層内で、前記インキ樹脂の水酸基と前記ブロックイソシアネートから遊離したイソシアネート基とが反応して硬度が向上し、かつ該イソシアネート基が前記カバー層を構成する材料の官能基とも結合するように、前記ウレタン樹脂のヒドロキシル価を0以上0.2未満、ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂のヒドロキシル価を60以上250以下とし、ウレタン樹脂100重量部に対し、ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂を5〜10重量部、ブロックイソシアネートを1〜15重量部としたことを特徴とする。
次に、請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載の発明において、前記ウレタン樹脂のヒドロキシル価は、0.1以上0.2未満であることを特徴とする。
次に、請求項3に記載の発明は、上記請求項1又は2に記載の発明において、ブロックイソシアネートの解離温度は90〜120℃であることを特徴とする。
次に、請求項4に記載の発明は、上記請求項1からのいずれかに記載の発明において、ゴルフボール用インキは、ブロックイソシアネートの解離触媒をさらに含有していることを特徴とする。
次に、請求項5に記載の発明は、ゴルフボールのマーキングに用いるゴルフボール用転写フィルムであって、上記請求項1から4のいずれかに記載のゴルフボール用インキにより、ゴルフボールに転写する所定のパターンがベースフィルム上に形成されていることを特徴とする。
一方、請求項6に記載の発明は、マーキングされたゴルフボールであって、上記請求項1から4のいずれかに記載のゴルフボール用インキにより、所定のパターンがマーキングされていることを特徴とする。
そして、請求項7に記載の発明は、マーキングされたゴルフボールであって、上記請求項5に記載の転写フィルムがシリコンゴムパッドを用いて圧着されることにより該転写フィルムのパターンが転写されており、該パターンの転写時のシリコンゴムパッドの表面温度が90〜150℃、転写時間が2秒以内であることを特徴とする。
このように、請求項1〜に記載の本発明は、ゴルフボールのマーキングに用いるゴルフボール用インキ、ゴルフボールのマーキングに用いるゴルフボール用転写フィルム、及びマーキングされたゴルフボールに関し、いずれにおいても、ゴルフボール用インキに、所定のヒドロキシル価を有するインキ樹脂と、ブロックイソシアネートとを含有させたことが、まず第1の特徴である。周知のように、ブロックイソシアネートは、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等のイソシアネート化合物のイソシアネート基(―NCO)を、予めフェノール等のブロック剤と反応させて、常温で不活性化(安定化)させたもので、これを加熱したときには、ブロック剤が解離して、遊離のイソシアネート基が再生するようにしたものである。
したがって、このブロックイソシアネートを含有したインキでゴルフボール表面に所定のパターンを印刷し、加熱すれば、インキ層内で、インキ樹脂の水酸基と、ブロックイソシアネートから遊離したイソシアネート基とが反応して、これらの間でウレタン結合が生じ、インキ樹脂同士の架橋が起こって、インキ層の硬度が向上することとなる。その結果、耐摩耗性にも優れるマーキングが得られる。
その場合に、ブロックイソシアネートから遊離したイソシアネート基が、インキ樹脂の水酸基とだけでなく、ボール表面のカバー層の材料であるアイオノマー樹脂や各種エラストマーの官能基とも結合するので、マーキングのボールへの接着性もまた向上する。
もちろん、このマーキング後に、その上からボール全面をウレタン塗装したときには、マーキングインキ層中の水酸基と、ウレタントップコート層中のイソシアネート基とが反応して、これらの層間で新たなウレタン結合が生じ、インキ層の強度の向上が図られて、マーキングの耐衝撃性が確保されることは従来と同様である。
このように、本発明においては、後で塗布されるウレタントップコート層との反応にあずからないインキ層の内部の残存水酸基を、ブロックイソシアネート由来のイソシアネート基と反応させることにより除去し、その結果、インキ層の軟質化及び硬度低下を回避して、耐摩耗性を確保すると共に、上記反応に伴って起こるインキ樹脂同士の架橋によって、インキ層の硬度をより一層向上させるようにしたことが最大の特徴である。
本発明で使用し得るブロックイソシアネートのイソシアネート化合物は特に限定されない。ただし、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有するものが、インキ樹脂同士を架橋させることになってより好ましい。そのようなイソシアネート化合物の例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI,HMDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、水素添加キシレンジイソシアネート(HXDI)等のジイソシアネート化合物や、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート等のポリイソシアネート化合物、あるいはイソシアヌレート型ポリイソシアネート、ビュレット型ポリイソシアネート等の脂環族系ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。
また、本発明で使用し得るブロックイソシアネートのブロック剤も特に限定されない。例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ペンチルアルコール等のアルコール化合物や、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のポリオール化合物、あるいはフェノール、p−ニトロフェノール、m−クレゾール等のフェノール化合物、もしくはアセチルアセトン、アセト酢酸エチル、マロン酸エチル等の活性メチレン化合物、又はε−カプロラクタム等のラクタム化合物、あるいはエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、キシレンジアミン、イソホロンジアミン等のアミン化合物等がいずれも好ましく使用できる。
本発明では、ブロックイソシアネートの解離温度としては、90〜120℃であることが好ましい(請求項3参照)。解離温度が90℃を下回るブロックイソシアネートは入手困難である。また、解離温度が120℃を上回ると、エネルギコストがかかると共に、インキ層の硬化時にゴルフボールが熱変形する可能性がある。一般に、ブロックイソシアネートの解離温度は、イソシアネート化合物及びブロック剤の種類及び組合せに応じて様々変化するから、例えば配合したインキ樹脂の硬化温度等に応じて適宜選択すればよい。
ただし、本発明者等の知見によれば、ブロック剤として活性メチレン化合物を用いたものが、概ね解離温度が比較的低く、低温硬化・低温印刷が可能となって好ましい。そのようなブロックイソシアネートの例としては、旭化成ケミカルズ株式会社から、デュラネート(登録商標)MF−K60Xなる商品名で、商業的に入手し得るもの(有効NCO:6.6重量%、固形分:60重量%、HDI系イソシアネート、解離温度:90℃)等が挙げられる。
また、本発明では、ゴルフボール用インキに、ブロックイソシアネートの解離触媒をさらに含有させてもよい(請求項4参照)。解離触媒は、ブロックイソシアネートの解離を促進して、解離温度を低下させると共に、インキ樹脂の水酸基と、ブロックイソシアネートから遊離したイソシアネート基との反応を促進する効果をもたらす。
本発明で使用し得る解離触媒は特に限定されない。代表的なものとして、例えば、アミン類や、有機金属化合物等が挙げられるが、本発明者等の知見によれば、オクチル酸亜鉛や、ナフテン酸亜鉛、あるいはジブチルチンジラウレート等の有機亜鉛化合物又は有機錫化合物が特に好ましく使用可能である。
さらに、本発明では、必要に応じて、ゴルフボール用インキに、紫外線吸収剤や黄変防止剤等の種々のインキ用添加剤をさらに含有させてもよい。
そして、本発明では、上記のようなゴルフボール用インキを用いて、ゴルフボールに転写する所定のパターンを、ベースフィルム上に形成することにより、ゴルフボールのマーキングに用いるゴルフボール用転写フィルムを得ることができる(請求項5参照)。その場合に、ブロックイソシアネートの解離温度と、転写フィルムからのパターンの熱転写温度とが重なるため、パターンの転写と同時に、インキ樹脂の水酸基と、ブロックイソシアネートから遊離したイソシアネート基との反応が起こって、インキ層が硬化する。このとき、前述したような、解離温度が比較的低いブロックイソシアネートや、解離温度の低下をもたらす解離触媒等を用いることによって、低温度転写が実現し、より一層のエネルギコスト削減、ゴルフボールの熱変形抑制、及びベースフィルムの熱収縮抑制を図ることができる。
添付の図面は、本発明の理解を助けるためのもので、図1に示すように、本発明のゴルフボール用転写フィルム10は、ベースフィルム11の上に、本発明のゴルフボール用インキ12が塗布されて、このインキ12により、ゴルフボールに転写する文字・数字・図形等の所定のパターンが形成されている。図中の「−NCO/B」は、イソシアネート基がブロック剤で活性阻害されていることを示している。このように、常温では、イソシアネート基が不活性であるから、この本発明の転写フィルム10は、長期間、インキ12が反応・硬化せず、貯蔵安定性に優れている。
この本発明の転写フィルムにおける好ましい転写温度は、転写フィルムをベースフィルムの側からゴルフボールに圧着させるシリコンゴムパッドの表面温度として、例えば90〜150℃、特に90〜120℃である。また、好ましい転写時間は、およそ2秒以内である。ただし、ブロックイソシアネートの解離度合い、換言すれば遊離のイソシアネート基の再生効率に応じて、それ以上でもそれ以下でもよい。
本発明のインキ樹脂は、ウレタン樹脂とポリエステル樹脂、又はウレタン樹脂とエポキシ樹脂で構成される。ポリエステル樹脂は、ウレタン樹脂と比較して軟化温度が低く、またエポキシ樹脂は低融点物質であるから、これらを含有することにより、インキ樹脂全体としての軟化温度がウレタン樹脂のみを主材とする場合に比べて低くなる。その結果、この本発明の転写フィルムからのパターンの熱転写においては、やはり低温度転写が実現し、エネルギコスト削減、ゴルフボールの熱変形抑制、及びベースフィルムの熱収縮抑制を図ることができる。
また、本発明では、ウレタン樹脂のヒドロキシル価を0以上0.2未満とし、ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂のヒドロキシル価を60以上250以下とする。ウレタン樹脂のヒドロキシル価が0.2以上となると、分子間水素結合による軟化温度上昇が顕著となってインキ樹脂全体としての低軟化温度化が阻害される場合がある。また、ウレタン樹脂のヒドロキシル価を0としても、ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂のヒドロキシル価が60以上であるから、インキ樹脂全体としてのヒドロキシル価が不足することはない。
一方、ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂のヒドロキシル価が60未満となると、インキ樹脂全体としてのヒドロキシル価が不足気味となって、インキ層内におけるブロックイソシアネート由来のイソシアネート基との反応度合い・結合度合い、及びウレタントップコート層中のイソシアネート基との反応度合い・結合度合いが小さくなる場合がある。逆に、ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂のヒドロキシル価が250を上回ると、分子間水素結合による軟化温度上昇が顕著となってインキ樹脂全体としての低軟化温度化が阻害される場合がある。なお、ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂のヒドロキシル価のより好ましい範囲は140〜210である。
さらに、本発明では、インキの配合は、100重量部のウレタン樹脂と、5〜10重量部のポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂と、1〜15重量部のブロックイソシアネートとされ、これに0.1〜3重量部の解離触媒を配合することがある。ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂が5重量部を下回ると、インキ樹脂全体としての低軟化温度化が阻害されると共に、インキ樹脂全体としてのヒドロキシル価が不足気味となって、インキ層内におけるブロックイソシアネート由来のイソシアネート基との反応度合い・結合度合い、及びウレタントップコート層中のイソシアネート基との反応度合い・結合度合いが小さくなる場合がある。逆に、ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂が10重量部を上回ると、インキ樹脂全体が過度に軟質化し、インキ層の硬度が低下して、耐摩耗性が損なわれる場合がある。
一方、ブロックイソシアネートが1重量部を下回ると、再生するイソシアネート基の数が不足気味となって、インキ層内におけるインキ樹脂の水酸基との反応度合い・結合度合い、及びボール表面のアイオノマー樹脂等の官能基との反応度合い・結合度合いが小さくなり、その結果、インキ層内の残存水酸基の除去効率や、インキ樹脂同士の架橋効率が低減して、インキ層の硬度向上効果が十分には得られなくなる場合がある。逆に、ブロックイソシアネートが15重量部を上回ると、イソシアネート基が過多となって、インキ樹脂の水酸基等と反応せずにイソシアネート化合物内で反応が起こり、やはり架橋効率が低減すると共に、パターンの転写性も劣化する場合がある。解離触媒を0.1〜3重量部とする理由もほぼ同様である。
なお、インキに、硝化綿を配合してもよい。硝化綿を配合すると、インキ塗膜表面の乾燥が速くなり、マーキングの作業性が向上し、作業時間が短縮される。
本発明の転写フィルムで使用し得るベースフィルムは特に限定されない。例えば、ポリプロピレンフィルムや、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、あるいはこれらとグラシン紙とのラミネート物等が好ましく使用可能である。
また、本発明のインキを用いて、パターンをベースフィルム上に形成する方法も、従来一般に知られているグラビア印刷やシルクスクリーン印刷等が問題なく採用できる。
そして、本発明では、上記のようなゴルフボール用転写フィルムを用いて、又は上記のようなゴルフボール用インキを用いて、所定のパターンがマーキングされたゴルフボールを得ることができる(請求項6、7参照)。すなわち、図2に示すように、本発明のゴルフボール20は、例えばコア21とそれを覆うカバー層22とが一体成形されたツーピースボールであって、カバー層22の上にマーキング23が施されており、その上からボール20全面にウレタントップコート層24が形成されている。つまり、マーキング23は、カバー層22とウレタントップコート層24との間に挟まれた状態である。

転写フィルムを用いた熱転写以外の方法で、上記のようなゴルフボール用インキでゴルフボールをマーキングする方法としては、パッド印刷が代表的であるが、それ以外にも、例えばシルクスクリーン印刷等でも構わない。
そして、いずれにおいても、上記マーキング23は、上記のようなゴルフボール用インキ12によって施されているから、図3に示すように、インキ12層内におけるインキ樹脂の水酸基とブロックイソシアネート由来のイソシアネート基との反応(符号A)によって、残存水酸基が減少し、インキ樹脂同士の架橋が起こって、インキ12層の硬度が向上し、マーキング23は、耐摩耗性に優れたものとなっている。また、ブロックイソシアネート由来のイソシアネート基とボール20表面のアイオノマー樹脂等の官能基との反応(符号B)によって、マーキング23は、ボール20表面への接着性が向上したものとなっている。さらに、インキ樹脂の水酸基とウレタントップコート層24中のイソシアネート基との反応(符号C)によって、インキ12層の強度が向上し、マーキング23は、耐衝撃性に優れたものとなっている。加えて、水酸基とイソシアネート基との反応によって生成したウレタン結合(−O−CO−NH−)中の(−NH−)部分と、ウレタントップコート層24中のイソシアネート基とが反応して新たな化学結合が生じ(符号D)、マーキング23は、耐摩耗性がさらに向上したものとなっている。そして、前述したような、解離温度が比較的低いブロックイソシアネートや、解離温度の低下をもたらす解離触媒等を用いることによって、低温度転写が実現し、ゴルフボール20表面のディンプル形状の熱変形がほとんどないものとなっている。
この本発明のゴルフボールは、ワンピースボール、ツーピースボール、スリーピースボール、あるいはその他の多層ソリッドゴルフボールであっても、また糸巻きゴルフボールであってもよい。
また、マーキングが施されるゴルフボール表面のカバー層の材料としては、前述したアイオノマー樹脂(エチレン−メタクリル酸共重合体やエチレン−アクリル酸共重合体の分子間をナトリウムや亜鉛等の金属イオンで分子間結合した特殊構造の樹脂)の他、ポリウレタンや、ポリエステル、あるいはポリアミド、又はそれらの混合物等を用いることができる。
さらに、マーキング前のゴルフボール表面の下地処理としては、周知のプラズマ処理(高周波等を用いて気体をプラズマ状態にし、その雰囲気中に樹脂製品を曝すことにより表面を改質し、塗装・コーティング・接着性・濡れ性等の改善を行う処理)の他、塩素系薬品による化学的処理等を採用することができる。
以下、実施例を通して本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されないことはいうまでもない。
[転写フィルムの作製]
まず、表1に示す配合量で、ヒドロキシル価が0.1のウレタン樹脂と、ヒドロキシル価が150のポリエステル樹脂と、ブロックイソシアネートとして旭化成ケミカルズ株式会社製のデュラネート(登録商標)MF−K60X(固形分:60重量%、HDI系イソシアネート)と、解離触媒としてオクチル酸亜鉛と、着色顔料としてカーボンブラックとを、有機溶剤に混合して、本発明に係るゴルフボール用インキを調製した。そして、ベースフィルムとして厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用い、このフィルム上に、上記インキを用いて、シルクスクリーン印刷により、パターンとして直径約1mmの大きさで内部が塗り潰された円を5μmの厚みに印刷して、本発明に係るゴルフボール用転写フィルム1〜6をそれぞれ作製した。ただし、転写フィルム6においては、硝化綿をさらに配合した。なお、表中、ブロックイソシアネートの配合量は、固形分としての配合量である。
また、比較例の転写フィルムとして、表2に示すように、インキがブロックイソシアネートを配合しないもの(したがって解離触媒も配合しないもの)を作製した。
Figure 0004536487
Figure 0004536487
[パターンの熱転写]
これらの転写フィルム(実施例1〜6及び比較例)を用いて、ゴルフボールのマーキングを行った。すなわち、ポリブタジエンゴムを主成分とする架橋ゴム製のコアを、ショアD硬度65のアイオノマー樹脂を主成分とする厚み2mmのカバー層で被覆し、ボール表面をプラズマ処理してなるツーピースボールを複数個準備した。そして、このゴルフボールの表面に、上記転写フィルムのパターンを位置決めして、ベースフィルムの側から、シリコンゴムパッドを、転写温度100℃(シリコンゴムパッド表面温度として)及び転写時間1秒間の転写条件で圧着し、上記パターンを熱転写した。その後、この転写したパターン、つまりマーキングの上からゴルフボール全面にスプレー塗装で2液反応タイプのウレタントップコートを施し、55℃で50分間、乾燥・硬化させた。そして、このようにして得られたゴルフボールについて以下の各種試験を実施した。
[転写性試験]
ゴルフボール20個につき、パターンが完全に転写されたか否かを目視にて観察・判定した。結果を表3及び表4に示す。表中、「〇」は転写良好、「△」はパターンの1部に転写不良発生、「×」はパターンの多くの部分に転写不良発生を示す。
[接着性試験]
マーキングの接着性試験として、接着テープ(住友スリーエム株式会社製のクリアテープを使用)による剥離テストを行った。結果を表3及び表4に示す。表中、「〇」は剥離なし、「△」はパターンの1部に剥離発生、「×」はパターンの多くの部分に剥離発生を示す。
[耐摩耗性試験]
パターンの転写直後及び乾燥直後でウレタントップコートを施す前のゴルフボールを1つづつ両手に持って、上記パターン同士を手で30〜60秒間擦り合わせた後の該パターンのかすれ・傷つきの度合いを目視にて観察・判定した。結果を表3及び表4に示す。表中、「〇」はかすれ・消失なし、「△」はかすれ・消失あり、「×」はかすれ・消失非常にありを示す。
[耐衝撃性試験]
#1ウッドを用い、45m/sのヘッドスピードで、ゴルフボールを布製の的に向けて200回打撃した後、マーキングの損傷の度合いを目視にて観察・判定した。結果を表3及び表4に示す。表中、「〇」は割れ・欠けなし、「△」はパターンの1部に割れ・欠け発生、「×」はパターンの多くの部分に割れ・欠け発生を示す。
[砂摩耗試験]
磁器製のボールミルにゴルフ場で実際に使用するバンカーの砂を入れ、そこにボールを入れて、2時間回転させた。その後、ボールを取り出し、マーキングの損傷の度合いを目視にて観察・判定した。結果を表3及び表4に示す。表中、「〇」はかすれ・消失なし、「△」はパターンの1部にかすれ・消失発生、「×」はパターンの多くの部分にかすれ・消失発生を示す。
[砂水摩耗試験]
同じく磁器製のボールミルにゴルフ場で実際に使用するバンカーの砂と水とを同重量入れ、そこにボールを入れて、3時間回転させた。その後、ボールを取り出し、マーキングの損傷の度合いを目視にて観察・判定した。結果を表3及び表4に示す。表中、「〇」はかすれ・消失なし、「△」はパターンの1部にかすれ・消失発生、「×」はパターンの多くの部分にかすれ・消失発生を示す。
Figure 0004536487
Figure 0004536487
表3から明らかなように、実施例1〜6は、マーキングのボールへの接着性(はがれ難さ)、耐摩耗性(かすれ難さ・傷つき難さ)、耐衝撃性(割れ難さ・欠け難さ)をはじめ、全ての試験項目において、良好な結果を示した。対して、表4から明らかなように、ブロックイソシアネート及び解離触媒を用いなかった比較例は、接着性、耐摩耗性、耐衝撃性及び砂磨耗性に著しく劣るものであった。
さらに、他の実施例として、樹脂・ブロックイソシアネート・解離触媒の種類、それらの配合量、転写温度・転写時間、ヒドロキシル価を本発明の範囲内で様々に変更してゴルフボールのマーキングを行い、これらのゴルフボールについて上記に準じて各種試験を実施したが、結果はいずれも実施例1〜6と同様に良好なものであった。
以上、具体例を挙げて詳しく説明したように、本発明によれば、ゴルフボールをマーキングするためのインキ中に、水酸基を有するインキ樹脂とブロックイソシアネートとを共存させることにより、接着性と耐衝撃性と耐摩耗性とに優れるマーキングを提供できるようになった。本発明は、ゴルフボールのマーキングの技術分野において、幅広い産業上の利用可能性を有する。
本発明に係るゴルフボール用転写フィルムの層構造を模式的に示す拡大断面図である。 本発明に係るマーキングされたゴルフボールの一部切欠きの側面図である。 上記ゴルフボールのマーキング部分の層構造を模式的に示す拡大断面図である。
符号の説明
10 転写フィルム
11 ベースフィルム
12 インキ
20 ゴルフボール
22 カバー層
23 マーキング
24 ウレタントップコート層
A インキ層内部の架橋
B インキ層とカバー層との結合
C インキ層とウレタントップコート層との結合
D ウレタン結合中の窒素とウレタントップコート層中のイソシアネート基との結合

Claims (7)

  1. コアと、アイオノマー樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド又はこれらの混合物から形成される表面のカバー層とを有するゴルフボールのマーキングに用いるゴルフボール用インキであって、該インキは、ウレタン樹脂とポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂のいずれか一方とでなるインキ樹脂と、ブロックイソシアネートとを含有し、前記ゴルフボールのカバー表面に印刷し、加熱することにより、インキ層内で、前記インキ樹脂の水酸基と前記ブロックイソシアネートから遊離したイソシアネート基とが反応して硬度が向上し、かつ該イソシアネート基が前記カバー層を構成する材料の官能基とも結合するように、前記ウレタン樹脂のヒドロキシル価を0以上0.2未満、ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂のヒドロキシル価を60以上250以下とし、ウレタン樹脂100重量部に対し、ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂を5〜10重量部、ブロックイソシアネートを1〜15重量部としたことを特徴とするゴルフボール用インキ。
  2. 前記ウレタン樹脂のヒドロキシル価は、0.1以上0.2未満であることを特徴とする請求項1に記載のゴルフボール用インキ。
  3. ブロックイソシアネートの解離温度は90〜120℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載のゴルフボール用インキ。
  4. ブロックイソシアネートの解離触媒を含有していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のゴルフボール用インキ。
  5. ゴルフボールのマーキングに用いるゴルフボール用転写フィルムであって、請求項1から4のいずれかに記載のゴルフボール用インキにより、ゴルフボールに転写する所定のパターンがベースフィルム上に形成されていることを特徴とするゴルフボール用転写フィルム。
  6. マーキングされたゴルフボールであって、請求項1から4のいずれかに記載のゴルフボール用インキにより、所定のパターンがマーキングされていることを特徴とするゴルフボール。
  7. マーキングされたゴルフボールであって、請求項5に記載の転写フィルムがシリコンゴムパッドを用いて圧着されることにより該転写フィルムのパターンが転写されており、該パターン転写時のシリコンゴムパッドの表面温度が90〜150℃、転写時間が2秒以内であることを特徴とするゴルフボール。
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