(実施形態1)
図1、2は、第1の実施形態に係る映像表示装置1の概略構成図であり、図1はY方向における映像表示装置1の断面図及び光路を示し、図2はX方向における映像表示装置1の断面図及び光路を示している。ただし、XYZ座標軸(XYZ方向)を同図に示すように定義する。すなわち、X方向を後述する点光源が並ぶ方向(左右方向)とし、Y方向をこの点光源が並ぶ方向と垂直な方向(上下方向)とし、Z方向は光軸方向とする(以下の各図も同様)。なお、図2に示すようにXZ平面方向で見た場合であることを“X方向”と表現し、図1で示すようにYZ平面方向で見た場合であることを“Y方向”と表現するものとする(以下同様)。X、Y、Z方向そのものの方向を示す場合には、X軸方向、Y軸方向或いはZ軸方向と表現するものとする。
図1、2に示すように、映像表示装置1は、LED光源101、第1照明レンズ102、第2照明レンズ103、拡散板104、LCD105及び接眼レンズ106を備えている。LED光源101は、所定色、例えばG色の発光ダイオード(LED)からなる点光源を複数個、例えば3つ備えてなる光源である。第1照明レンズ102は、LED光源101の光(光源光;LED光)を集光するものであり、第1の照明光学系をなすものである。第2照明レンズ103は、光源光を集光するものであり、第2の照明光学系をなすものである。拡散板104は、光源光を拡散するもの(所謂磨りガラスのようなもの)であり、LCD105の接眼レンズ106側の近接位置に配設されている。LCD105は、光源光を変調して映像を生成するものであり、例えば透過型の液晶表示パネル(LCD;Liquid Crystal Display)である。接眼レンズ106は、正のパワーを有するレンズ(凸レンズ)からなり、観察者に対する接眼光学系をなすものである。LED光源101から射出された光は、第1照明レンズ102及び第2照明レンズ103によって集光されてLCD105を照明する。この照明によりLCD105で生成された映像光は、拡散板104を介して接眼レンズ106の正のパワーにより虚像として光学瞳107(接眼光学系の射出瞳)に導かれる。観察者は光学瞳107の光を瞳に入射させてこの映像を観察することができる。
このような映像表示装置1の各部についてさらに詳細に説明する。図2に示すように、LED光源101における3つのG色の点光源(LED1011〜1013)は、それぞれ約0.3mm角のサイズを有しており、例えば約0.5mmピッチでX方向に一列に並設されている。本実施形態では、LED光源101として各点光源が一列に並んだものを用いているが、完全には整列せず、例えば、XY平面での各点光源の位置が互いに所定距離(例えば約0.5mm)だけ垂直方向(Z方向)にズレているようなものを用いてもよい(上記と同様の効果を得ることができる)。この場合、より多くの光源が直線的に並ぶ方向をX方向に設定すればよい。拡散板104は、LCD105側の面を光学的に平坦な面とし、接眼レンズ106側の面を凹凸による拡散面としており、拡散板104は、LED光源101から発散光が平坦面で屈折されて僅かに集光された状態で拡散される。
ここで、第1照明レンズ102のX方向における焦点距離(レンズ主点から焦点までの距離)を「f1x」、Y方向における焦点距離を「f1y」とし、第2照明レンズ103のX方向における焦点距離を「f2x」、Y方向における焦点距離を「f2y」とする。この焦点距離の逆数は、各レンズのパワーを示す。すなわち1/f1x及び1/f1y、1/f2x及び1/f2yは、それぞれ第1及び第2照明レンズ102、103におけるX方向及びY方向のパワー(光学パワー)を示す。また、第1照明レンズ102と第2照明レンズ103とによる合成焦点距離(第1及び第2照明レンズ102、103を1つのレンズ(合成照明レンズという)として考えた場合の、当該各第1及び第2照明レンズ102、103の焦点距離が合成されてなる仮想の焦点距離)を、X方向において「fx」、Y方向において「fy」とすると、同様に、1/fx及び1/fyは、それぞれ上記合成照明レンズにおけるX方向及びY方向の合成パワーを示す。なお、第1及び第2照明レンズ102、103の主点間距離を「d」とする。
第1照明レンズ102は、X方向にパワーが無く(1/f1x=0(ゼロ);f1xは無限(∞)であり、不図示である)、Y方向に正のパワー(例えば1/f1y=1;f1y=1mm)を有し、光を一方向に集光するシリンダーレンズ(Y方向で一方側が凸レンズに形成されてなる所謂平凸状(半円柱状)の簡易な構成のレンズ)である。すなわち第1照明レンズ102は、1/f1x<1/f1y(X方向のパワーよりもY方向のパワーの方が大きい)、且つ0<1/f1yの関係を有している。なお、ここでは、上記X方向にパワーが無いものとしているが、X方向にパワー(正のパワー)を有していてもよい。ただしこの場合も上記1/f1x<1/f1yを満たす構成とする(以降の第1照明レンズ202、302、402、502、602も同様)。また、第2照明レンズ103は、光軸Pに回転対称(軸対称)な正のパワー(0<1/f2x、0<1/f2y、例えば1/f2x=1/f2y=1/6;f2x=f2y=6mm)を有する非球面レンズである。また、これら第1及び第2照明レンズ102、103は、Y方向の物側主点位置の距離を例えばd=5mmだけ離間して配置されており、従って、上記合成照明レンズによるY方向の合成焦点距離fyは、Y方向における以下の(1)式に示す関係から求めることができ、fy=3mmとなる。
1/fy=1/f1y+1/f2y−d/(f1y*f2y) ・・・(1)
但し、記号「/」は除算を、記号「*」は乗算を示す(以下同様)。
上記(1)式に示すように、合成焦点距離は、第1及び第2照明レンズ102、103の焦点距離と、主点間距離dとから求めることができる。
ところで、上記主点間距離d=5mmは、第2照明レンズ103のY方向の焦点距離f2y(=6mm)の例えば3分の1以上の長さで且つf2y以下の長さ(f2y/3≦d≦f2y)として設定している。これは主点間距離dをより大きく設定することで、LCD105とLED光源101との距離をより長くすることができ且つX方向での均一照射が可能となって輝度ムラのない映像を得ることができるようにするためであり、また第1及び第2照明レンズ102、103間での結像を防ぎ、効率良く明るい映像を得るためである。また、第1及び第2照明レンズ102、103において、上述のように1/f1y(=1)>1/f2y(=1/6)の関係を有するよう設定しているが、これは、LCD105とLED光源101との距離をより長くすることができ且つX方向での均一照射が可能となって輝度ムラの無い映像を得ることができるようにするためである。
また、第1照明レンズ102において、1/f1x(=0)<1/f2x(=1/6)の関係を有するよう設定しているが、これは、X方向の第1照明レンズ102の主点とLED光源101との距離をより長くすることができ、X方向での均一照射が可能となって輝度ムラの無い映像を得ることができるようにするためである。さらに、第2照明レンズ103において、上記1/f2x=1/f2y(=1/6)というようにX方向とY方向とでパワーを等しく設定しているが、厳密に等しくなくともよく、略等しければよい(1/f2x≒1/f2y)。なお、ここでは接眼レンズ106の焦点距離を例えば20mmとしている。この場合、Y方向(上下方向)におけるLED光源101の像倍率は、上記fy=3mmとから約7倍(=20/3)となり、上記約0.3mm角の点光源は光学瞳107上で約2mmの大きさとなる。しかしながら実際にはLCDなどで拡散されるので約5mmの大きさとなっている。
また、上記合成照明レンズによるX方向の合成焦点距離fxは、fx=f2x及び上記f2x=6mmの関係より、fx=6mmとなる。このように、第1及び第2照明レンズ102、103の焦点距離(合成焦点距離)は、X方向とY方向とで異なるが、主点間距離dを長く設定しているため、符号108に示すX方向の物側焦点位置と、符号109に示すY方向の物側焦点位置とが互いに近接したものとなっている(設計によりこれらの位置を一致させることもできる)。つまり、1/f2x≒1/f2yとすることにより、簡易に第1照明レンズ102と第2照明レンズ103とが合成されてなす焦点位置をX方向とY方向とで略一致する構成としている。これにより、X方向、Y方向ともにケーラー照明に近い照明をすることができる。なお、上記fx=f2xの関係について、合成焦点距離fxは、X方向のパワーがゼロである第1照明レンズ102が第2照明レンズ103と合成されたとしても、第2照明レンズ103の焦点距離f2xの大きさは変化しないものの、その位置は、図2に示すように、第1照明レンズ102により屈折される分だけ後方側へズレている。
このように、第1及び第2照明レンズ102、103によって、Y方向には像倍率が大きくてより集光するパワーの強いレンズ(合成照明レンズ)として機能し、X方向には像倍率を小さくして各点光源の間隔が大きくならないパワーの弱いレンズとして機能するように構成されている。このような構成により、Y方向には一層明るく、X方向には各点光源による均一照射を容易にして輝度ムラの無い、明るい映像を得ることが可能となる。
また、LED光源101を第1及び第2照明レンズ102、103の符号110及び符号111に示す合成物側焦点位置近傍に配置し、接眼レンズ106はテレセントリックな光学系としているので、LED光源101と光学瞳107とは共役な位置関係(LED光が光学瞳107上で略集光される関係)にある。ただし、LCD105に近接配置された拡散板104によって光源光が拡散されるので、厳密には共役とならないが、光学瞳107の最も強度の強い位置はLED光源101の共役な位置と略一致する。従って、LCD105を略平行な光束で照明(ケーラー照明;照明による輝度ムラが映像に反映されないような光学配置での照明)することになり、LED光源101の輝度ムラをLCD105画面(LCD像、映像画面)内で小さくすることができる。換言すれば、拡散板104をLCD105の近傍(直近)に配設しているので、LCD105を平行な光束で照明するということは、LED光源101と、LCD105すなわち該LCD105に近接配置された拡散板104との間の距離が十分大きい(拡散板104に対してLED光源101が遠い)ということを意味することになり、従って、拡散板104に対する点光源の輝度ムラが少なく、LCD105の画面内の輝度ムラも少ないものとなる。また、光学瞳107では、LCD105近傍の拡散板104により各点光源の強度が略一致して、輝度ムラの無い映像を観察することができる。
ところで、上記第1の実施形態では、X方向とY方向とでパワーの異なる第1照明レンズ102を備えて、第2照明レンズ103とともに所要の映像を得る構成としているが、このような構成とする背景について、図3、4及び図24、25を用いて概念的に説明する。図3に示すLED151、照明レンズ153、LCD155及び接眼レンズ156は、それぞれ上記LED光源101、第2照明レンズ103、LCD105及び接眼レンズ106に相当するものである(拡散板は図示省略)。図3において、照明レンズ153の焦点距離をfL、接眼レンズ156の焦点距離をfeとし、これらの長さを例えばfL=6mm、fe=20mmとする。また、LED151における各点光源(LED)のサイズを上記0.3mm角、符号157に示す各点光源の間隔を0.5mmとする。この場合、像倍率(=fe/fL)は約3倍(=20/6)となり、当該点光源の間隔0.5mmは、符号158に示す約1.5mm(=0.5*3)の大きさの間隔に拡大される。各点光源自体の大きさは約1mm(=0.3*3)に拡大される。
例えば現状がこのような構成である映像表示装置において、さらに明るい映像(高画質な映像)を得ようとする場合、LED151自体の光の強さは決まっているため、例えば図4(a)に示すようにLED151を照明レンズ153に近づける、すなわち照明レンズ153の焦点距離fLの長さが、上記fL=6mmからfL=3mmとなるよう短く設定し(照明レンズ153のパワーを強くする)、このときの照明レンズ153の焦点位置にLED151を配置させることで、LED151の発散光の稜角が大きくなるようにすなわちLED光の放射角内のより広範囲の光を利用できるようにしたとする(LED151をfL=3mmでの焦点位置よりも照明レンズ153寄りに配置してもよいが(これは、後述するX方向では光像を拡散させて映像範囲を広げるようにするからである)、各点光源が互いに外側に離れていってしまうので、LED151は焦点位置に配置させることが望ましい)。
しかしながら、焦点距離fLを6mmから3mmと短くしてLED151を照明レンズ153側に近づけて配置すると、像倍率が上記約3倍(=20/6)から約7倍(=20/3)となる。すなわち符合158に示す間隔が上記約1.5mmから約3.5mmと大きく離間してしまう。この離間した各点光源の映像を混合するためには、より拡散度の大きな拡散板を用いなければならず、これにより光の拡散度合いが大きくなってしまい(光を逃がしてしまい)、使用できる光がさらに少なくなる。このように、明るい映像を得るためにLED151を照明レンズ153に近づけたのに、逆に、明るさを弱めることになってしまう。
例えば図24、25に示すように、上記照明レンズ159を設置せずに(照明レンズ153、159からなる合成照明レンズを構成せずに)、例えばX方向にパワーが弱く、Y方向にパワーが強い所謂アナモルフィックな1つの照明レンズ903を用いて、Y方向でLED901(RGB一体型)と光学瞳907(この光学瞳907には接眼レンズ906によってLED901の虚像が導かれる)とを共役にして、換言すれば上述のようにLED901を照明レンズ903に近づけて(焦点距離を短くして)、映像を明るくしようとした場合、X方向での共役関係が大きく崩れてしまい、X方向の照明レンズ903の主点にLED901が近づくので像倍率が増大し、光学瞳907上で輝度ムラや色ムラが大きくなる。また、LCD905とLED901との距離が短くなり、LCD905の映像内で輝度ムラや色ムラが大きくなってしまう。
そこで、図4(b)に示すように、LED151と照明レンズ153との間に照明レンズ159を設ける、すなわち照明レンズ153に加えてさらに照明レンズ159を設けて2つの照明レンズからなる照明光学系とすることで、焦点距離を短くして明るくする一方、焦点距離はそのままで(短くせずに)点光源を大きく離間させない(拡散度が大きくなりLED光をロスさせない)という相反する条件を満たすようにする。これが上記第1の実施形態において、LED光源101と第2照明レンズ103との間に第1照明レンズ102を設けることであり、この第1照明レンズ202を、光を一方向に集光する(X方向にパワーが無くY方向に正のパワーを有する)シリンダーレンズとすることで、第1照明レンズ202と第2照明レンズ103とによる合成焦点距離(合成パワー)がX方向とY方向とで異なるようにする。すなわち、拡散しない側の方向(Y方向;上下方向)に合成焦点距離が短い方(fy=3mm;図4(b)に概略的に示す合成焦点距離Fyに相当)を設定し、この方向ではより多くの光を集光させて一層明るい映像を得て、一方、拡散させて映像範囲を広げる側の方向(X方向;左右方向)に合成焦点距離が長い方(fx=6mm;図4(b)に概略的に示す合成焦点距離Fxに相当)を設定し、この方向では各点光源による均一照射を容易にして輝度ムラの無い明るい映像を得るようにする。
(実施形態2)
図5、6は、第2の実施形態に係る映像表示装置2の概略構成図であり、図5はY方向における映像表示装置2の断面図及び光路を示し、図6はX方向における映像表示装置2の断面図及び光路を示している。図5、6に示すように、映像表示装置2は、LED光源201、第1照明レンズ202、第2照明レンズ203、拡散板204、LCD205及び接眼レンズ206を備えている。映像表示装置2は、第1の実施形態の映像表示装置1と比べて、主に、LED光源201が3色光源であること、方向により拡散度が異なる拡散板204をLCD205とは別に設けたこと、接眼レンズ206が所謂テレセントリックから若干ズレていることが異なる。また、第1照明レンズ202のパワーが第1照明レンズ102のパワーと若干異なる。その他の構成については第1の実施形態と同じである。
LED光源201は、複数種類、例えばR、G、B3色のLED(R、G、B色それぞれに対応するLED201R〜201B)を点光源として備えるRGB一体型の光源である。このように複数の点光源を備えた一体型の光源のことを、以降、適宜、LEDユニットという。LED光源201の各点光源は、約0.3mm角のサイズを有しており、例えば約0.5mmピッチでX方向に一列に並設されている。本実施形態では、LED光源201として各点光源が一列に並んだものを用いているが、完全には整列せず、例えば、XY平面でのR、Gの並びに対してBの点光源(LED201B)のみが所定距離(例えば約0.5mm)だけ垂直方向(Z方向)にズレているようなものを用いてもよい(上記と同様の効果を得ることができる)。この場合、より多くの光源が直線的に並ぶ方向をX方向に設定すればよい。拡散板204は、上述したように方向によって拡散度が異なり、例えばX方向に半値で約40度、Y方向に半値で約0.5度拡散する。このように拡散板204は、LED光源201からの光をX方向に拡散し、Y方向には殆ど拡散しない。
第1照明レンズ202は、X方向にパワーが無く(1/f1x=0)、Y方向に正のパワー(1/f1y=1/2;f1y=2mm)を有するシリンダーレンズである。第2照明レンズ203は、第2照明レンズ103と同じく、光軸Pに軸対称な正のパワー(1/f2x=1/f2y=1/6;f2x=f2y=6mm)を有する非球面レンズである。これら第1及び第2照明レンズ202、203は、Y方向の物側主点位置の距離を例えばd=5mmだけ離間して配置されており、従って、第1及び第2照明レンズ202、203(合成照明レンズ)によるY方向の合成焦点距離fyは、Y方向における、上記(1)式に示す関係から求めることができ、この場合、fy=4mmとなる。合成照明レンズによるX方向の合成焦点距離fxは、fx=f2x及び上記f2x=6mmの関係より、fx=6mmとなる。このように、第1及び第2照明レンズ202、203の焦点距離(合成焦点距離)は、X方向とY方向とで異なるが、主点間距離dを長く設定しているため、第1の実施形態と同様、X方向の物側焦点位置とY方向の物側焦点位置とが互いに近接したものとなっている。
このように、第1及び第2照明レンズ202、203は、Y方向には像倍率が大きくてより集光するパワーの強いレンズ(合成照明レンズ)であり、X方向には像倍率を小さくして各点光源の間隔が大きくならないパワーの弱いレンズであるように構成されている。このような構成により、Y方向には一層明るく、X方向には各色の点光源の色混ぜを容易にして(各色の点光源による均一照射を容易にして)輝度ムラや色ムラの無い、明るい映像を得ることが可能となる。
また、LED光源201を符号210に示すY方向の合成物側焦点位置近傍に配置し、接眼レンズ206を含めてY方向でLED光源201と光学瞳207とが略共役な位置関係にある。ただし、X方向には拡散板204によって光源光が拡散されるので、厳密には共役とならないが、光学瞳207の最も強度の強い位置はLED光源201の共役な位置と略一致する。従って、X方向及びY方向でLCD205をケーラー照明に近い照明をすることになり、LED光源201の輝度ムラや色ムラをLCD205画面(LCD像、映像画面)内で小さくすることができる。また、Y方向では、このように光学瞳207とLED光源201とが略共役であるので、照明光の無駄(ロス)が少なくより明るい映像を、X方向では、拡散板204による拡散により各点光源の光(RGBの各色の光)の強度が略一致した、輝度ムラや色ムラの無い映像を観察することができる。
また、第2照明レンズ203を拡散板204とLCD205との間に配置して、拡散板204を、LCD205と光学的な距離を離して配置する構成とすることで、拡散板204の凹凸の像(影)がLCD205に映り込み、接眼レンズ206を通して観察される当該凹凸の像を、よりぼかして(像のボケを大きくして)これを観察し難くすることができる。また、第1及び第2照明レンズ202、203を用いて、その主点間距離を長くすることによって拡散板204とLED光源201との距離を長くしたので、各点光源による拡散板204への均一照射が可能となり、輝度ムラや色ムラの無い映像を観察することができる。
また、本実施形態では、Y方向において、第2照明レンズ203のパワーよりも第1照明レンズ202のパワーを強くしている(1/f1y>1/f2y;f1y<f2y)ので、Y方向の合成物側焦点位置が、X方向の第1及び第2照明レンズ202、203の物側焦点位置に近づく、つまりY方向の合成物側焦点位置を当該X方向の物側焦点位置に近づけることが容易となる。また、LED光源201の光束が小さいため有効径が小さくて済む第1照明レンズ202のパワーを強くするので、そのパワーをより強めることができる。すなわち、第1照明レンズ202のレンズ面の曲率半径を小さくすることができ、よりレンズ長を長くしながら、焦点距離を短くすることができる。これにより、輝度ムラや色ムラの無い、明るい映像を観察することができる。
また、LED光源201と光学瞳207とは略共役関係に配置されているので、拡散板204が無いと仮定した場合には、図7に示すように、LED光源201のRGBの点光源すなわち各LED201R〜201Bによる光像が、それぞれ光像201R’〜201B’として光学瞳207上で結像する。従って、X方向で照明レンズの焦点距離を短くすると、像倍率が大きくなって、上記光学瞳207上での点光源間の距離が大きくなり色混ぜが行い難くなり、また、当該色混ぜを行うべく拡散度の大きい拡散板が必要となる。従って、X方向では焦点距離を長くする(X方向における第1照明レンズ202のパワーをゼロとする)ことによって、拡散度の小さい拡散板を用いることが可能となる(拡散度の大きな拡散板を用いずともよくなる)とともに、各点光源の色混ぜが容易となり、色ムラや輝度ムラの無い明るい映像を得ることが可能となる。また、X方向において、第1照明レンズ202のパワーよりも第2照明レンズ203のパワーを強くしている(1/f1x<1/f2x)ので、X方向の合成主点位置とLED光源201との距離を長くすることができる、つまり、LED光源201の像倍率が小さくなり、輝度ムラや色ムラを小さくすることができる。
なお、LCD205には、例えばLED光源201のRGB各色のLEDを時分割照明し(各色の映像を逐次表示し)、これらを同期させて駆動(照明)することでカラー表示を行う所謂フィールドシーケンシャルタイプのLCDを用いてもよい。
(実施形態3)
図8、9は、第3の実施形態に係る映像表示装置3の概略構成図であり、図8はY方向における映像表示装置3の断面図及び光路を示し、図9はX方向における映像表示装置3の断面図及び光路を示している。ただし、図9では後述の第2透明基板308の図示を省略している。図8、9に示すように、映像表示装置3は、LED光源301、第1照明レンズ302、第2照明レンズ303、拡散板304、LCD305、HOE306、第1透明基板307及び第2透明基板308を備えている。LED光源301は、LED光源201と同様、RGB一体型の光源である。第1照明レンズ302は、LED光源301の光を集光するものであり、第1の照明光学系をなすものである。第2照明レンズ303は、LED光源301の光を集光するものであり、第2の照明光学系をなすものである。
拡散板304は、LED光源301の光を一方向に拡散する一方向拡散板であり、第1照明レンズ302及び第2照明レンズ303間における第2照明レンズ303寄りの位置に配置されている。LCD305は、波長制限フィルタを備えた透過型のカラーLCDである。HOE306は、体積位相型のホログラム光学素子(HOE;Holographic Optical Element)であり、接眼光学系をなすものである。HOE306は、光学的に軸非対称な所謂自由曲面で構成されて正のパワーを有しており、第1透明基板307の一端(図8での下端)において所定の傾斜角を有して支持されている。第1及び第2透明基板307、308は、ガラスや透明樹脂等の透明部材からなる略板状のプリズムであり、HOE306と同様、接眼光学系をなすものである。第1及び第2透明基板307、308は、それぞれ例えばクサビ状(テーパ面状)に形成された一端面同士が接合(例えば接着)されて一枚の板状に一体化されており、この接合面(界面)において上記HOE306を支持(挟持)している。
LCD305の映像光は、第1透明基板307内に、該第1透明基板307の一端側面(上端側面)である入射面3071から入射し、反射面3072、3073において全反射した後、HOE306によって回折され、HOE306の正のパワーにより虚像として光学瞳309に導かれる。観察者は光学瞳309の光を瞳に入射して映像を観察することができる。なお、HOE306に入射される映像光はS偏光としている。S偏光を反射することにより、HOE306の光効率が高く、明るい映像を観察することができる。ただし、P偏光を用いても構わない。
このような映像表示装置3の各部についてさらに詳細に説明する。LED光源301は、図9及びLED光源301の拡大正面図である図11に示すように、LED光源301a及びLED光源301bの1組(一対)のLEDユニット(パッケージ)から構成されている。各LEDユニットは正面視が略正方形の基板で構成され、その基板サイズは一辺が例えば約3mm(X=Y=3mm)となっている。このLED光源301a及びLED光源301bには、LED301R1及び301R2を中心側(中央側)に、次にLED301G1及び301G2、最も外側にLED301B1及び301B2というR、G、B色の順で、中心側から外側へ向けてX方向に波長が長いものから順にLED(発光点)が一列に並び、光軸Pを含む面(光軸面)に対称(面対称)となるよう隣接させて並べて配置されている。
このように光軸面に面対称となる配置とすることで、2つのLED光源301a、301bを足し合わせた光強度の重心を各色とも対称面(光軸面)内に配置することができる(各色の光学瞳309を光軸Pに対称に形成することができる)。つまり、各色のLED強度を、対称面(瞳中心)において各色均一な強度分布とすることができ、光学瞳309中心で色ムラの少ない映像を得ることができるとともに、色再現性が高くなる。LED光源301は、拡散板304との距離を例えば約4mmに設定しているので、該LED光源301と拡散板304との距離が十分長くなっている。従って、拡散板304に対してLED光源301は均一に照明することができる。なお、LED光源301は、図12に示すように、上記1組のLEDユニットが一体化されてなるLED光源301’を用いてもよい。この場合、1組のLED(点光源)同士の距離が短くなるので、X方向において光学瞳309の各色の強度ピーク位置が近づき、瞳中心でより明るくすることができる。
LED光源301a、301bは、図20におけるLEDの分光強度分布に示すように、各R、G、B色の点光源すなわちLED301R1、301R2、LED301G1、301G2、及びLED301B1、301B2それぞれの中心波長及び半値が462nm±12nm、525nm±17nm、635nm±11nmとなるLEDを用いており、当該LED光の強度(LED強度)がホログラム光学素子回折効率やLCD透過率を考慮して調整され、白色表示を可能にしている。また、LED光源301a、301bは、基板上に上記各R、G、B色のLEDが形成され、このLEDの上から所定の透明媒質で封止された構成となっている。
第1照明レンズ302は、平凸状のシリンダーレンズであり、シリンダーレンズの平面部を上記LEDの透明媒質に近接して配置されている。本実施形態では、当該近接させており上記平面部と透明媒質との間には空気層が存在するが、これに限らず、例えば透明な接着材等で接着するなどしてこれら同士を密着させてもよい。密着させた場合、上記LEDの透明媒質の光射出面及びレンズ入射面での反射が減少するので、より明るい映像を得ることができる。この第1照明レンズ302は、X方向にはパワーが無く(1/f1x=0)、Y方向に正のパワー(1/f1y>0)を有している。また、第2照明レンズ303は、光軸Pに軸対称な正のパワー(1/f2x=1/f2y>0)を有する非球面レンズである。
拡散板304は、方向により拡散度が異なる、すなわちX方向に半値で約40度拡散し、Y方向に半値で約0.5度拡散する。このように拡散板304は、LED光源301からの光をX方向に拡散し、Y方向には殆ど拡散しない。第1及び第2照明レンズ302、303は、LED光源301の発散光を集光し、当該拡散板304によって一方向に拡散された光が効率良く光学瞳309を形成するように配置されている。
LED光源301は、Y方向で光学瞳309と略共役になるように配置されている。また、LED光源301は、Y方向の第1及び第2照明レンズ302、303による物側焦点位置近傍に配置されており、従って、Y方向ではLCD305をケーラー照明し、LED光源301の輝度ムラをLCD305画面内で小さくすることができ、上述したように、光学瞳309とLED光源301とが略共役であるので、LED光源301の光を効率良く集光して明るい映像とすることができる。また、X方向では拡散板304により拡散されるので、LED光源301と光学瞳309とは共役ではないが、第1及び第2照明レンズ302、303による合成物側焦点をそれぞれのY方向の物側焦点に近接させたので、ケーラー照明に近い照明となっており、また、光学瞳309の最も強度の強い位置は、LED光源301の共役な位置と略一致する。
光学瞳309は、強度半値でX方向に約10mm、Y方向に約2mmの大きさとなるように設定している。従って、一方向に、観察者の瞳(径3mm程度)より大きい上記約10mmの光学瞳309であるので、映像を観察し易く、且つ、一方向には観察者の瞳より小さい上記約2mmの光学瞳309に集光したので、無駄なく明るい映像を観察することができる。
また、映像光を第1透明基板307内で反射して眼に導く構成としたので、通常の眼鏡レンズと同程度に第1透明基板307(及び第2透明基板308)の板厚を薄く(例えば3mm程度)することができ、小型化、軽量化することができる。また、第1透明基板307内での光の反射を全反射としたので、観察者は、外界光(外光)の第1透明基板307における透過率を低下させることなく(全反射する映像光によって視界を遮られることなく)該第1透明基板307の反射面3072、3073を通して外界(明るい外界)を見ることができる。また、第2透明基板308は、第1透明基板307のクサビ状部分での光の屈折をキャンセル(相殺)する、すなわち、当該クサビ状部分におけるプリズム効果により、光学瞳309側からの光が入射面3071側(上側)に折れ曲がるのを防止するので、観察者は、第1及び第2透明基板307、308、及びHOE306を通して、外界光を歪むことなく見ることができる。なお、HOE306を上記軸非対称で且つパワー(正のパワー)を有するように構成したので、すなわち、映像表示装置3を、図8に示すように軸非対称な光学系としたので、光学配置の自由度が高くなり、当該光学系をコンパクトに配置することができて装置の小型化(コンパクト化)を図ることができ、且つ、上述したように輝度ムラや色ムラの無い明るい高画質な映像を観察できる構成を容易に実現することが可能となる。
HOE306は、図21におけるホログラム光学素子の波長と回折効率との関係に示すように、回折効率半値で465nm±5nm、521nm±5nm、634nm±5nmの波長の各色の映像光を回折するように作成されている。このHOE306のピーク波長とLED光源301の中心波長とは概ね一致するので(図20、21参照)、明るい映像表示が可能となる。また、HOE306は、上記各波長に対応する各色でホログラムの半値幅(±5nm)が略同じであるので、波長の長い光ほど角度選択性が大きい。従って、LED光源301の各色の波長幅が同じ場合、HOE306によって回折されてできる光学瞳309の大きさは、波長が長いほど小さい(波長が長いほど光学瞳面での位置によって強度差が大きく、波長が短いほど同位置によって強度差が小さい)。
LED光源301は、該LED光源301の基板に垂直な方向が光の強度が強く、その周囲ほど弱い。X方向では、拡散板304によって拡散されるのでLED光源301と光学瞳309とは共役ではないものの、光学瞳309の最も強度の強い位置はLED光源301の共役な位置と略同じである。つまり、図10に示す映像中心の光学瞳309におけるX方向の光強度分布(横軸は光学瞳309内での位置座標、縦軸は光強度を示し、光強度分布R1及びR2、G1及びG2、並びにB1及びB2は、それぞれLED301R1、301R2、LED301G1、301G2、及びLED301B1、301B2に対応する)に示すように、光学瞳309が小さい長波長(=R)の瞳中心が光学瞳309の中心寄りに、光学瞳309が大きい短波長(=B)の瞳中心が光学瞳309の外寄りに位置するような各LEDの配置構成としているので、換言すれば、長い波長の光を放射するLED(LED301R1、301R2)ほど光軸中心側に配置されて、当該長い波長ほど強度が高い位置が光学瞳309の中心に近くなり、一方、短い波長ほど強度の高い位置が周辺すなわち光学瞳309の中心から離れた位置となるので、光学瞳309内での各色の強度差を小さくすることができ(HOE306の波長選択性によって映像光の波長が揃い)、色ムラの小さい映像を観察することができる。従って、光学瞳309中心及び光学瞳309周辺で色ムラの小さい、色純度(彩度)の高い映像を観察することができる。
また、LED光源301の各色のLED(発光点)を拡散が大きい方向すなわちX方向に並べているので、光学瞳309上での各色の強度ムラが小さくなり、色ムラを少なくすることができる。また、HOE306の光軸の入射面(図8におけるYZ平面;紙面方向の面)内で光軸に垂直な方向(Y方向)に光学瞳309を小さくし、光軸入射面に垂直な方向(X方向)に光学瞳309を大きくするので、波長選択性の影響を受け難く、色ムラの少ない高画質の映像を得ることができる。ただし、上記「光軸」は、映像中心と光学瞳309中心とを光学的に結ぶ線として定義する。
ところで、HOE306における上記波長選択性と入射角との関係としては、光がHOE306の干渉縞に入射角を有して入射する場合、該入射面内での入射角の角度ズレはそのまま入射角の角度ズレとなるが、入射面に垂直な方向の角度ズレは入射角のズレとしては小さい。従って、0度より大きい入射角を有する光を基準とした干渉縞のHOE306では、入射面よりも入射面に垂直な方向の波長選択性が小さい。換言すると、入射面の方向よりも入射面に垂直な方向の方が干渉縞への入射角のズレに対して上記角度選択性が低い。すなわち、HOE306の干渉縞に入射角からズレた角度の光が入射すると、同じ角度ズレであっても、入射面の方が入射面に垂直な方向よりも大きく回折波長がズレる(波長選択性の影響が大きい)。従って、光軸の入射面の方向に光学瞳309を小さくすることによって色ムラを小さくすることができ、また、入射面に垂直な方向に光学瞳309を大きくしたとしても色純度の高い映像を得ることができる。また、光学瞳309が大きいので、観察者は映像を見易い。なお、入射面外の光は、その入射面が上記光軸の入射面と若干平行でないものの、上述のように入射面に垂直な方向の角度ズレは影響が小さいので、入射面を基準にしても色ムラが大きくなることはない。
(実施形態4)
図13は、第4の実施形態に係る映像表示装置4の概略構成図であり、Y方向における映像表示装置4の断面図及び光路を示している。映像表示装置4は、第3の実施形態の映像表示装置3と比べて、主に、反射タイプのLCDを用いる構成とした点が異なる。映像表示装置4は、LED光源401、第1照明レンズ402、第2照明レンズ403、拡散板404、LCD405、HOE406及び透明基板407を備えている。LED光源401は、上記LED光源301と同様、1組(2つ)のLEDユニットからなる光源であり、各色のLEDがX方向に一列に配設されている。第1照明レンズ402は、第1の照明光学系であり、X方向にはパワーを有しないシリンダーレンズである。第2照明レンズ403は、第2の照明光学系であり、X方向にはパワーを有しないシリンダーミラー(凹面反射鏡)である。拡散板404は、LED光源401の光を一方向に拡散する一方向拡散板であり、X方向に半値で約40度拡散し、Y方向に半値で約0.5度拡散する。
LCD405は、反射ミラーを有した基板に設けられたLC(液晶)であり、偏光子4051及び検光子4052を備え、当該偏光子4051及び検光子4052との組み合わせで反射タイプLCDを構成する。HOE406は、HOE306と同様、軸非対称な正のパワーを有しており、反射タイプLCDの映像を虚像として光学瞳408に導く接眼光学系である。観察者は光学瞳408の光を瞳に入射して映像を観察することができる。なお、Y方向では、LED光源401が該光学瞳408と略共役になるように配置されている。透明基板407は、上記第1透明基板307と同様、透明部材からなる略板状のプリズム(接眼光学系)であり、一端のクサビ状部においてHOE306を支持している。映像表示装置4は、LED光源401の各色のLEDが順次点灯し、反射タイプLCDにより、当該LEDの点灯に同期して駆動される時分割カラー表示を行い、LED光を変調して映像を表示する。
また、第1及び第2照明レンズ402、403は、上述と同様、それぞれのX方向の焦点距離をf1x、f2x、Y方向の焦点距離をf1y、f2y、主点間距離をd、第1及び第2照明レンズ402、403によるX方向の合成焦点距離をfx、Y方向の合成焦点距離をfyとすると、f1y=1mm、1/f1x=0(X方向のパワーがゼロ)、f2y=10mm、1/f2x=0(Y方向のパワーがゼロ)、d=9mmと設定しており、従って、1/fx=0、fy=5mmとなる。
このようにY方向には共役であり焦点距離が短いので、効率良く、より明るい映像を観察することができる。また、X方向には照明レンズ(合成照明レンズ)のパワーが無いので、HOE406の正のパワーによって各LED光が結像される。光学瞳408とこの結像位置とは少し異なるが、拡散板404で拡散されるので、輝度ムラや色ムラの無い映像を得ることができる。また、Y方向でパワーの強い照明レンズ(合成照明レンズ)を用いてLED光源401と光学瞳408とを共役にしながら、且つ、照明レンズを2つに分けて、その間隔を十分長くすることによって、上記LCとLED光源401との距離を長くしている。これにより、反射タイプLCDの映像面内においても輝度ムラや色ムラが少ない映像とすることができる。また、本実施形態では、X方向にパワーを有しないシリンダーミラー及びシリンダーレンズを用いたが、X方向には負のパワーを有するようにしてもよい。この場合、X方向での共役関係が崩れるので明るさが少し失われることになるものの、さらにLED光源401と拡散板404との距離が長くなるので、輝度ムラや色ムラを小さくすることができる。
(実施形態5)
図14は、第5の実施形態に係る映像表示装置5の概略構成図であり、Y方向における映像表示装置5の断面図及び光路を示している。映像表示装置5は、LED光源501、第1照明レンズ502、第2照明レンズ503、拡散板504、LCD505、プリズム506及び透明基板507を備えている。LED光源501は、LED光源301における1つのLEDユニットと同様のRBG一体型の光源である。第1及び第2照明レンズ502、503は、それぞれLED光源501の光を集光するものであり、第1及び第2の照明光学系をなすものである。また、第1及び第2照明レンズ502、503は第1及び第2照明レンズ302、303と同様、それぞれシリンダーレンズ及び非球面レンズである。拡散板504は、X方向に半値で約40度拡散する一方向拡散板であり、LCD505の自由曲面プリズム506側に近接配置されている。LCD505は、波長制限フィルタを備えた透過型のカラーLCDであり、LED光源501の光を変調して映像を表示する。自由曲面プリズム506は、自由曲面5061を有するプリズム(接眼光学系)であり、光学的に軸非対称な正のパワーを有している。透明基板507は、透明部材からなるプリズム(接眼光学系)であり、上記プリズム506の自由曲面5061と接合されて一体化されている。
LCD505の映像光は、自由曲面プリズム506に入射面5062から入射し、反射面5063で全反射した後、さらに自由曲面部5061で反射され、各面の合成パワーにより虚像として光学瞳508に導かれる。観察者は光学瞳508の光を瞳に入射して映像を観察することができる。このように、軸非対称な光学系としたので、該光学系をコンパクトに配置することができ、且つ、輝度ムラや色ムラの無い明るい高画質な映像を観察できる構成を容易に実現することが可能となる。また、透明基板507は自由曲面プリズム506の屈折をキャンセルするので、観察者は透明基板507及び自由曲面プリズム506を通して、外界光を歪むことなく見ることができる。
(実施形態6)
図15、16は、第6の実施形態に係る映像表示装置6の概略構成図であり、図15はY方向における映像表示装置6の断面図及び光路を示し、図16はX方向における映像表示装置6の断面図及び光路を示している。ただし、図16では後述の第2透明基板608の図示を省略している。図15、16に示すように、映像表示装置6は、LED光源601、第1照明レンズ602、第2照明レンズ603、拡散板604、LCD605、HOE606、第1透明基板607及び第2透明基板608を備えている。映像表示装置6は、第3の実施形態の映像表示装置3と比べて、主に、第1照明レンズ602の構成(LED近接手段を備えた点)が異なる。その他の構成については第3の実施形態と同じであり、その説明を省略する。
第1照明レンズ602は、X方向にはパワーが無く、Y方向に焦点距離f1yの正のパワーを有するシリンダーレンズである。このシリンダーレンズは、図16に示すように、所謂半円弧状の面であるシリンダー面6021が中央側(光軸P側)へ向けて所定の傾斜角で傾斜した形状となっている、換言すれば、XZ断面で見て、シリンダー面6021側が略V字状(凹状)に形成されて中央部6022の厚みがX軸方向の両端部の厚みよりも小さくされた形状となっている(このようなシリンダーレンズ形状のことを「クサビ形状」と表現する)。第1照明レンズ602は、符号610の拡大図に示すように、当該クサビ形状により、各LEDユニット(LED光源601a、601b)におけるLED光が反射或いは屈折され、X方向の各LEDの見かけ上の光学的な間隔LがLEDの実際の間隔よりも小さいものとなる。このように、各LEDユニットによる離間した1組の光源(RGBの点光源)が互いに光学的に近接するように反射或いは屈折されて該光源同士の間隔が小さくなるので、図12で説明したように2つのLEDユニットが一体化されたもの(LED光源301’)を用いた場合と同様に、光学瞳609の瞳中心でより明るい映像を観察できるという効果が得られる。
このことに関し、図17、18は、光学瞳609のX軸方向のG色の光(G光)の光強度分布を示すものであり、図17は、上記各LED光源601a、601bのG光の光強度分布(それぞれ光強度分布G1’、G2’)を示し、図18は、これら2つのG光を足し合わせた光強度分布(合成光強度分布G1’+G2’)を示している。ただし、各図の横軸は光学瞳609内での位置座標を示し、その中央が瞳中心であり、縦軸は光強度を示す。上記第1照明レンズ602をクサビ形状とすることにより、図17に示すように各LED光源601a、601bのG光(光強度分布G1’、G2’)は、光学的な見かけ上において、第3の実施形態での各LED光源301a、301bのG光(光強度分布G1、G2)よりも近接したものとなり、当該近接することにより、図18に示すように、合成光強度分布G1’+G2’が第3の実施形態での合成光強度分布(G1+G2)よりも山が高くなる(光強度が瞳中心付近で増大する)。このことはG光だけでなくR、B光に対しても同様であり、従って、上記瞳中心でより明るい映像を得ることができる。なお、斜線領域はX方向における光学瞳309の使用領域である。
なお、上記LED光源601(LED光源601a、601b)及び第1照明レンズ602の構成は、図19に示す構成としてもよい。すなわち、第1照明レンズ602の代わりにミラー体622(第1の照明光学系に相当)を、LED光源601a、601bの代わりにLED光源621a、621b(これらは配置が異なるだけで実質的には同じものである)を備えるものとする。ミラー体622は、X方向で見て、V字状(テーパ状;ここでは直角状)に配置されたミラー面(シリンダーミラー面)6221、6222を備えている。これらミラー面6221、6222は、Y方向に正のパワーを有し、X方向にパワーが無い。このような構成とすることで、同図に示すように対向配置されたLED光源621a、621bからのLED光がミラー体622でY方向で集光され、且つX方向はパワーの無い反射によって、当該1組のLED光源621a、621bの各LEDを光学的に見かけ上近接させることによって、瞳中心で明るい映像を観察可能としている。
(実施形態7)
図22は、第7の実施形態に係る映像表示装置7の概略構成図である。映像表示装置7は、観察者の眼前に配置されて使用される頭部装着型表示装置(ヘッドマウンテッドディスプレイ(HMD))であり、第3の実施形態における映像表示装置3を適用したものである。同図の符号710は頭部装着型表示装置の上面図を、符号720は正面図を、符号730は側面図を示している。映像表示装置7は、表示筐体701、第1透明基板702、第2透明基板703、ブリッジ704、鼻当て部材705、左フレーム706、右フレーム707、左テンプル708、右テンプル709及びケーブル711を備えている。
表示筐体701は、LEDやLCDを備えて映像の表示駆動を行うものであり、映像表示装置3におけるLED光源301、第1及び第2照明レンズ302、303、拡散板304及びLCD305に相当する各機能部を内蔵している。第1及び第2透明基板702、703は、それぞれ第1及び第2透明基板307、308に相当する平板状のプリズム(接眼光学系)である。第1透明基板702の下端部(各透明基板同士の接合面)にはHOE306に相当するHOE7021(接眼光学系)が設けられており、第1透明基板702に上端側から入射された表示筐体701からの映像光を該HOE7021により回折し、虚像として光学瞳(この光学瞳はテンプル側に位置する)に導く。なお、第1透明基板702のクサビ状部(上記接合面部)での光の屈折は第2透明基板703によってキャンセルされる。
ブリッジ704は、第1透明基板702、鼻当て部材705及び左フレーム706を支持するものである。鼻当て部材705は、観察者の鼻頭等に当接させて映像表示装置7自体の頭部への保持及び装着位置調整を行うためのものである。左フレーム706は、ブリッジ704に支持されるとともに、ヒンジ部7061を介して左テンプル708を支持するものである。右フレーム707は、第1透明基板702を支持するとともに、ヒンジ部7071を介して右テンプル709を支持するものである。左テンプル708及び右テンプル709は、例えば弾性材からなり(可撓性を有し)、観察者の耳や側頭部に掛止して上記鼻当て部材705とともに映像表示装置7の頭部への保持及び装着位置調整を行うためのものである。ケーブル711は、表示筐体701に電源及び映像信号を供給するものであり、例えば右テンプル709に沿って該右テンプル709に支持されている。
観察者は、通常の眼鏡と同様にして映像表示装置7を眼前に保持して、表示筐体701による映像を虚像として観察することができるとともに、第1及び第2透明基板702、703を透過して通常どおりに外界を見ることができる。
映像表示装置7は、第1及び第2透明基板702、703の前方に所定の外光減光部材712を備えてもよく、これにより、第1及び第2透明基板702、703に対する外界透過率を減少させて映像を見易くすることができる。ただし、この場合、外界透過率を例えば50%以上に設定するなどして、当該映像を見易くするだけでなく外界が見難くならないよう調整することが好ましい。また、ここでは第1及び第2透明基板702、703を平板状のプリズムとしているが、これに限らず例えば曲率を有した矯正眼鏡レンズとしてもよい。また、ここでは頭部装着型表示装置に第3の実施形態を適用しているが、これに限らず例えば第6の実施形態における映像表示装置6を適用してもよい。
なお、上記映像表示装置7では、表示筐体701を片側(右側)に備え、該片側のみで映像を観察する構成としているが、図23に示す映像表示装置7aのように、表示筐体を左右両側に備えて両側で映像を観察する構成としてもよい。この場合、同図に示すように映像表示装置7に対してさらに、表示筐体801、第1及び第2透明基板802、803、HOE8021及びケーブル804が設けられている。この場合も、映像表示装置7と同様、各透明基板を曲率を有した矯正眼鏡レンズとしてもよいし、また、映像表示装置7aに第6の実施形態における映像表示装置6を適用してもよい。
以上のように、本実施形態の映像表示装置1(2、3、4、5、6、7、7a)によれば、LCD105(205、305、405、505、605)(空間変調器)によって複数の点光源(LED1011〜1013、201R〜201B、301R1〜301B1、301R2〜301B2)を備えるLED光源101(201、301、401、501、601)(光源)の光が変調されて映像が生成され、LED光源101とLCD105(205、305、405、505、605)との間に配置された第1照明レンズ102(202、302、402、502、602)(第1の照明光学系)によってLED光源101の光が集光され、第1照明レンズ102とLCD105との間に配置された第2照明レンズ103(203、303、403、503、603)(第2の照明光学系)によってLED光源101の光が集光され、接眼レンズ106(206)或いはHOE306(406、606)(接眼光学系)によってLCD105で生成された映像が虚像として光学瞳107(207、309、408、508、609)に導かれる。この第1照明レンズ102は、点光源が並ぶX方向における焦点距離をf1xとし、該X方向と垂直なY方向における焦点距離をf1yとすると、1/f1x<1/f1y、0<1/f1yの関係を有するものとされ、第2照明レンズ103は、Y方向における焦点距離をf2yとすると、0<1/f2yの関係を有するものとされ、また、X方向及びY方向における第1及び第2照明レンズ102、103の合成焦点距離をそれぞれfx、fyとすると、第1及び第2照明レンズ102、103は1/fx<1/fyの関係を有するものとされる。
このように1/f1x<1/f1y及び1/fx<1/fyであることから、点光源が並ぶ方向(X方向)にパワーが弱いので複数の点光源によりムラ無く均一な照射をしながら且つ点光源が並ぶ方向と垂直な方向(Y方向)にパワーが強いので効率良く明るい映像を得ることができる。さらに、Y方向で第1照明レンズ102と第2照明レンズ103とにパワーを二分した(1/f1yと1/f2yとの2つにパワーが分かれるような構成とした)ことにより、レンズ長が長くなり(レンズ面の曲率半径が小さくなるため)、LED光源101とLCD105との距離がより長くなるので、X方向でより均一な照射を行うことが可能となる。したがって、輝度ムラや色ムラ(この「色ムラ」については、点光源として複数種類の色例えばRGB3色のLEDを用いた場合に当たる)の無い、且つ、より明るい、高画質な映像を表示することができる。
また、第1及び第2照明レンズ102、103の主点間距離dを、第2照明レンズ103の焦点距離f2yの1/3以上としたので(f2y/3≦d)、LCD105とLED光源101との距離をより長くでき、さらにX方向に均一照射ができ、輝度ムラや色ムラの無い映像を表示することができる。また、第1及び第2照明レンズ102、103の間で結像しないので(d≦f2y)、効率良く明るい映像を表示することができる。
また、第1照明レンズ102より第2照明レンズ103のY方向の光学パワーを小さくしたので(1/f1y>1/f2y)、LCD105とLED光源101との距離をより長くでき、さらにX方向に均一照射ができ、輝度ムラや色ムラの無い映像を表示することができる。
また、光学瞳107とLED光源101とがY方向において略共役であるので、より効率良く明るい映像を表示することができる。
また、第1の照明光学系と第2の照明光学系とが合成されてなすX方向の焦点位置と、Y方向の焦点位置とが略一致することから、ケーラー照明に近い照明が可能となり、映像画面内でよりX方向に均一照明ができ、輝度ムラや色ムラの無い映像を表示することができる。
また、1/f1x<1/f2xであることから、X方向の照明光学系(第1及び第2照明レンズ102、103が合成されてなる合成レンズ)の主点とLED光源101との距離が長くなるので、より均一照明ができ、輝度ムラや色ムラの無い映像を表示することができる。
また、1/f1x=0、1/f1y>0であることから、すなわち、第1照明レンズ102が例えば簡易なレンズであるシリンダーレンズ等のシリンダー光学系となるので、第1照明レンズ102、ひいては装置の低コスト化を図ることができる。
また、上記点光源がそれぞれピークの波長が異なる、すなわちR、G、B色の波長を有する点光源であるので、映像のカラー表示が可能となる。つまり、色ムラが少なく色再現性の高い映像表示が可能となる。
また、LED光源301は、ピークの波長が異なる複数の点光源を備えるLEDユニット(LED光源301a、301b(LED光源601a、601b、LED光源621a、621b))を偶数個(ここでは1組;2個)備え、該LEDユニットがHOE106の光軸Pを含む面(光軸面)に略対称に配置されたものであることから、各点光源がピークの波長が異なる点光源であって映像のカラー表示が可能であり、且つ各色の光学瞳309が光軸Pに対称に形成されるので、色ムラが小さく色再現性が高い。
また、上記点光源間の距離が1mm以下(ここでは0.5mm)と短く、且つ第1及び第2照明レンズ102、103の合成焦点距離(fx、fy)が10mm以下と短いので、コンパクトな装置とすることができる。また、点光源間距離が短いので光強度が弱いにも拘わらず、合成焦点距離が短い第1及び第2照明レンズ102、103(又は焦点距離が短い第1照明レンズ102)を用いて、明るく、且つ、均一照明がなされて輝度ムラの無い映像を表示することができる。
また、LED光源201(301、601)の光を拡散する拡散板204(304、604)が第1照明レンズ202(302、602)と第2照明レンズ203(303、603)との間に配置されていることから、拡散板204とLED光源201との距離を長くとることができるので、LCD205を均一照明でき、輝度ムラ或いは色ムラの無い映像を表示することができる。また、拡散板204がLCD205と距離を有している(離間している)ので、接眼レンズ206(接眼光学系)によって拡散板204が直接観察されず、画質が良いものとなる。
また、拡散板204(304、404、504、604)は、該拡散板204の面内における直交方向に拡散度が異なり、且つX方向に拡散度が大きいものとされるので、離間した点光源をムラ無く拡散し、輝度ムラや色ムラの無い映像を表示することができ、また、一方向には拡散しないので、明るい映像となる。
また、第1照明レンズ602(ミラー体622)は、複数の点光源を備えるLED光源601a、601b(LED光源621a、621b)の点光源が光学的に近接するように反射又は屈折するものであるので、当該離間した偶数個(2個)のLEDユニットを光学的に近づけて(近接させて)、瞳中心でより明るい映像を表示することができる。
また、接眼光学系としてHOE306(406、606、7021、8021)を備え、このHOE306に軸非対称な構成且つパワー(正のパワー)を持たせたので、光学配置の自由度が高くなり、ひいては装置の小型化(コンパクト化)を図ることができる。
また、上記HOE306は、光軸Pの該HOE306に対する入射面がY方向と略平行となるように配置されている、すなわちHOE306の入射面と垂直な方向に点光源が並んでいるので、HOE306の波長選択性によって映像光の波長が揃い、色純度の高い映像を表示することができる。
また、接眼光学系を、HOE306において映像(映像光)と外界光とを重ねることが可能に構成された、すなわちホログラム光学素子を用いたコンバイナとしたので、外光透過率が高く、明るい外界を見ながら明るい映像を見ることが可能となる。
また、接眼光学系に、LCD305(LCD605、LCDを備える表示筐体701、702)からの映像光を全反射し且つ外光を透過する第1透明基板307(607、702、802)を用いたので、外界光の第1透明基板307における透過率を低下させることなく(外界光の透過率が高く)明るい外界を見ることができるとともに、第1透明基板307の小型化が可能となる。
また、第1透明基板307(607、702、802)における光の屈折をキャンセルしつつ外界光を透過する第2透明基板308(608、703、803)を備える構成とされるので、すなわち、このような第2透明基板308及び第1透明基板307を用いた接眼光学系とすることができるので、接眼光学系の自由度を増して小型化を可能にしながら、明るい外界を見ることが可能となる。
さらに、観察者の頭部に装着するための頭部装着手段(左右テンプル708、709や鼻当て部材705、或いは左右フレーム706、707やブリッジ704)を備えることにより(図22、23参照)、映像表示装置の頭部への装着が可能となり、ひいては快適に映像を観察することができる。