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JP4529394B2 - ドライバの車両運転特性推定装置 - Google Patents

ドライバの車両運転特性推定装置 Download PDF

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Description

本発明は、ドライバの車両運転特性推定装置に係り、特に、現在の運転状態とドライバが理想とする車両運転状態との差を修正するためのドライバの反応強度及び反応時間を用いてドライバの車両運転特性を推定するドライバの車両運転特性推定装置に関する。
ドライバの集中力を推定したり、ドライバの居眠りを検知したりする従来技術としては、ドライバの眼や顔の動きを画像処理して居眠りを検知する技術、ドライバの心拍・脈拍等の生理的特徴量を用いる技術、車両の左右の揺れ(横方向加速度)やステアリングのぶれを検出する技術が知られているが、車両の縦方向のふらつき、すなわち車間距離のデータを用いる技術は非常に少ない。
車間距離のデータを利用して居眠り等を検知する従来技術には、加速度がある閾値より大きく、かつ車間距離がある閾値より小さいときに居眠りと判定する技術(特許文献1)、及び追従走行中に一定時間の車間距離の標準偏差を測定し、この標準偏差が閾値を越えたときに居眠りと判定する技術(特許文献2)が知られている。
画像処理や脈拍・心拍を用いる技術では、カメラや脈拍計等の新たなハードウエアを設置する必要があり、コストが高くなるだけではく、脈拍計等を体に取付けなければならない、という煩わしさがある。
一方、車間距離センサは、自動追従装置や衝突警報装置の普及に伴い、標準的な装備となりつつあり、車間距離を用いる技術では新たなコスト負担を最小限で済ますことができる。また、ドライバの体にセンサ等を取付ける必要がないので、ドライバは装置の存在を意識する必要が無くなる。
また、車両の車線内の横位置情報を用いてドライバの集中力を推定したり、居眠りを検知したりする技術としては、横位置の標準偏差を用いる方法(特許文献3)、操舵量の周波数分布を用いる方法(特許文献4)、操舵の時間遅れを用いる方法(特許文献5)が知られている。
特開平9−11772号公報 特開平5−162562号公報 特開平7−9879号公報 特開平9−277848号公報 特開平5−85221号公報
上記特許文献1の加速度と車間距離を用いる技術では、先行車の急ブレーキや自車のスリップ等急減速や急接近によって、居眠りの誤検出が発生することが考えられる。
特許文献2の車間距離の標準偏差を用いる技術では、適切な車間距離は道路の混み具合や交通流の速度に依存するものであり、車間距離の変化量もまたこれらに依存すると考えられる。したがって、単純に標準偏差と閾値とを比較するだけでは、これらの周辺状況の変化を考慮できず、誤検出の原因となる。
特許文献3の横位置の標準偏差を用いる方法では、風等の外乱に対して操舵を繰り返す場合と集中力の低下により蛇行を行う場合との判別が困難であり、誤検出される場合がある。
特許文献4の操舵量の周波数分布を用いる方法では、道路形状に応じて周波数分布が変化した場合と集中力の低下による蛇行等で周波数分布が変化した場合との判別が困難であり、誤検出される場合がある。
そして、特許文献5の操舵の時間遅れを用いる方法では、ステアリングの遊び部分での操舵の時間遅れと車両横位置制御のための操舵の時間遅れとの判別が困難であり、また、集中力低下により反応強度(または反応時間)が変化するという現象を考慮していないため、精度が低いという問題がある。
本発明は、上記従来技術の問題点を解消するためになされたもので、現在の運転状態とドライバが理想とする車両運転状態との差を修正するためのドライバの反応強度及び反応時間を用いて、ドライバの集中力等のドライバの車両運転特性を推定するドライバの車両運転特性推定装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明のドライバの車両運転特性推定装置は、現在の車両運転状態として、先行車と自車との車間距離、及び自車の車速である自車速を検出する検出手段と、前記検出手段で検出された現在の車両運転状態とドライバが理想とする車両運転状態に基づいて、以下の式で表される追従モデルに従って、ドライバが理想とする車両運転状態との差を修正するために素早く反応していることを表わすドライバの反応強度または反応時間を演算する演算手段と、前記演算手段で演算された反応強度または反応時間に基づいてドライバの車両運転特性として、ドライバの集中力を推定する運転特性推定手段と、を含んで構成されている。
a(t+τ)=α(V opt (s)−v)
ただし、αは、前記反応強度であり、τは前記反応時間であり、tは時間である。vは、検出された自車速であり、aは、自車速vから演算によって求まる加速度であり、V opt (s)は、検出された車間距離sに応じて定まるドライバが理想とする自車速である。
また、本発明のドライバの車両運転特性推定装置は、現在の車両運転状態として、自車の横方向位置を検出する検出手段と、前記検出手段で検出された現在の車両運転状態とドライバが理想とする車両運転状態とに基づいて、以下の式で表される追従モデルに従って、ドライバが理想とする車両運転状態との差を修正するために素早く反応していることを表わすドライバの反応強度または反応時間を演算する演算手段と、前記演算手段で演算された反応強度または反応時間に基づいて、ドライバの車両運転特性として、ドライバの集中力を推定する運転特性推定手段と、を含んで構成されている。
dy(t+τ)/dt=−α(y(t)−y 0
ただし、αは、前記反応強度であり、τは前記反応時間であり、tは時間である。y(t)は、時間の関数として表された走行車線内の車両横位置であり、y 0 は、通常走行時のドライバが理想とする車両横位置である。
現在の車両運転状態とドライバが理想とする車両運転状態との差を修正するためのドライバの反応強度は、値が大きい程、ドライバがこの差を修正するために素早く反応していることを意味しており、ドライバの集中力が高いということができる。一方、現在の車両運転状態とドライバが理想とする車両運転状態との差を修正するためのドライバの反応時間は、値が小さい程、ドライバがこの差を修正するために素早く反応しており、ドライバの集中力が高いということができる。
また、このドライバの反応強度または反応時間は、ドライバ個々において異なり、また時間的に変化している。このため、本発明では、ドライバの反応強度の時系列データまたはドライバの反応時間の時系列データに基づいて、ドライバの集中力が高いか低いかを判定するのが効果的である。
ドライバが理想とする車両運転状態は、予め求めておいて運転状態記憶手段に記憶してもよく、運転状態推定手段を設けてドライバが理想とする車両運転状態を運転中に推定するようにしてもよい。
ドライバが理想とする車両運転状態は、ドライバ各々の性格や体調等によって異なり、また運転環境や運転時間帯等によっても異なるものであり、車両運転状態の時系列データにドライバが理想とする車両運転状態の特性が現れる。そこで、ドライバが理想とする車両運転状態を推定する場合には、前記検出手段で検出された車両運転状態の時系列データを記憶する時系列データ記憶手段と、前記時系列データ記憶手段に記憶された車両運転状態の時系列データに基づいて前記ドライバが理想とする車両運転状態を推定する運転状態推定手段とを更に設ければよい。これにより、ドライバの性格、体調、及び運転環境等に応じたドライバが理想とする車両運転状態を推定することができる。
ドライバの車両運転特性推定装置において、ドライバの追従挙動を表すモデルを用いる場合には、検出手段によって、先行車と自車との車間距離及び自車の車速である自車速を車両運転状態として検出し、演算手段によって、前記時系列データ記憶手段に記憶された前記自車速の時系列データと前記車間距離の時系列データとに基づいて、車間距離に応じたドライバが理想とする自車速をドライバが理想とする車両運転状態として演算する。
また、先行車と自車との車間距離及び自車速を検出する代わりに、前記検出手段によって、自車の横方向位置を前記車両運転状態として検出し、前記演算手段によって、前記検出手段で検出された自車の横方向位置とドライバが理想とする横方向位置との差を修正するためのドライバの反応強度または反応時間を演算するようにしてもよい。
また、本発明のドライバの車両運転特性推定装置の前記運転特性推定手段は、演算手段で演算された反応強度または反応時間としきい値とを比較して、ドライバの集中力をドライバの車両運転特性として推定するようにしてもよい。
本発明において、ドライバの反応強度または反応時間を用いて集中力を判定すれば、精度よくドライバの集中力が高いか低いかを判定することができる。
前記運転特性推定手段は、前記記憶手段に記憶されている反応強度の時系列データに基づいて反応強度のしきい値を演算するか、または反応時間の時系列データに基づいて反応時間のしきい値を演算し、前記演算手段で演算された反応強度と前記反応強度のしきい値とを比較するか、または前記演算手段で演算された反応時間と前記反応時間のしきい値とを比較して、ドライバの集中力を判定するようにすることができる。この場合、反応強度がしきい値未満になった場合、または反応時間がしきい値を越えた場合にドライバの集中力が低下したと判定する。また、これらの状態が所定時間以上継続した場合にドライバの集中力が低下したと判定するようにしてもよい。
また、本発明の前記運転特性推定手段では、反応強度が運転初期の値と比較して著しく低下した場合、反応時間が運転初期の値と比較して著しく大きくなった場合、反応強度が負の値になった場合、または、反応時間が正の所定値以上になっ場合にドライバの集中力が低下したと判定するようにしてもよく、これらの状態が所定時間以上継続した場合にドライバの集中力が低下したと判定するようにしてもよい。
このように、反応強度の時系列データまたは反応時間の時系列データを用いることにより、ドライバの個人差による反応強度または反応時間の偏り等に応じた最適なしきい値を演算することができる。
なお、しきい値は、上記のように演算することなく、過去に演算した結果や、予め記憶しておいた値を記憶手段に記憶しておき、記憶した値を用いてもよい。
現在の車両運転状態とドライバが理想とする車両運転状態との差を修正するためのドライバの反応強度は、大きい程この差を修正するために素早く反応しており、ドライバの技術力が高く、ドライバの集中力が高いということができる。一方、現在の車両運転状態とドライバが理想とする車両運転状態との差を修正するためのドライバの反応時間は、小さい程この差を修正するために素早く反応しており、ドライバの技術力が高く、ドライバの集中力が高いということができる。
従って、ドライバの反応強度または反応時間に基づいて、運転安全度が高いか低いかを判定することができる。このため、本発明のドライバの車両運転特性推定装置では、演算された反応強度または反応時間に基づいて、ドライバの安全運転度を提示する提示手段を更に設けることができる。
このドライバの運転安全度としては、反応強度または反応時間自体の値、反応強度または反応時間の標準偏差等を用いることができる。
また、本発明のドライバの車両運転特性推定装置では、演算された反応強度または反応時間に基づいて、車両を自動運転する自動運転手段を更に設けることができる。
また、本発明のドライバの車両運転特性推定装置では、演算された反応強度または反応時間に基づいて、車両運転中のドライバの認証を行う認証手段を更に更に設けることができる。
そして、本発明は、自動追従装置に適用することもできる。自動追従装置は、先行車と自車との車間距離及び自車速を検出する検出手段と、前記検出手段で検出された自車速と、車間距離及び運転の激しさを表す係数に応じて定まるドライバが理想とする自車速との差を修正するためのドライバの運転操作量と、に基づいて、前記運転の激しさを表す係数を演算する演算手段と、前記演算手段で演算された運転の激しさを表す係数に基づいて、先行車を自動追従するためのパラメータを変更するパラメータ変更手段と、を含んで構成されている。
運転の激しさを表す係数は、車頭時間(先行車に対しての遅れ時間)に対応しており、この係数が小さい程攻撃的な運転であることを表し、この係数が大きい程防御的な運転であることを表している。
従って、運転の激しさを表す係数を用いることにより、先行車に自動追従するために使用される自動追従装置のパラメータを個々のドライバの運転特性(攻撃的な運転か防御的な運転か)に精度よく合致するようにチューニングすることができる。
発明のドライバの車両運転特性推定装置によれば、ドライバの反応強度または反応時間を用いているので、精度よくドライバの車両運転特性を推定することができる、という効果が得られる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。まず、本実施の形態の原理について説明する。
多くのドライバの追従挙動を表すモデルは、「τ時間後の反応=反応強度×現在の刺激」という式で定式化される(大口啓、土木学会論文集、No.660/IV−49、pp33−51、2002.)。ここで、刺激とは車間距離の変化等であり、反応とは、加速度のことであり、加速度をaで表し、係数である反応強度(反応強さ)をαで表し、反応時間(遅延時間)をτ、時間をtで表すと、このドライバの追従挙動を表すモデルは下記の式で表すことができる。なお、刺激としてドライバが理想とする車両横位置からの変化を用い、反応として横方向速度を用いることもできる。
a(t+τ)=α×刺激(t) ・・・(1)
上記(1)式より、αが大きい、またはτが小さいドライバは、車間距離の変化等の刺激に対して強く、また素早く反応し、ブレーキやアクセル操作により加速度を素早く制御している。すなわち、運転技術が高いドライバ、または集中力の高いドライバは、この反応強度αが大きいか、または反応時間τが小さいということができる。
従って、反応強度αまたは反応時間τの時間変化により、居眠り、疲労、または、わき見等による集中力の低下を判定することができる。また、反応強度αまたは反応時間τの大きさの個人差により運転技術の高さ(運転安全度)を判定することができる。
反応強度α及び反応時間τは、いずれか一方を用いることができるが、両方用いてもよい。
本発明の第1の実施の形態のドライバの車両運転特性推定装置は、反応時間αを用いて、集中力の判定、安全運転度の点数表示による提示、及び自動追従装置のパラメータのチューニングを行うようにしたものであり、これらはドライバの選択により設定できるものである。なお、以下の説明において括弧内に記載したように本実施の形態では、反応強度αに代えて反応時間τを用いることもできる。
第1の実施の形態には、図1に示すように、先行車と自車との間の車間距離sを計測するミリ波レーダ等で構成された車間距離計測センサ10、自車の車速(自車速)vを計測する車速計測センサ12、夕暮れや夜間走行等の明度が低いときにオンされるヘッドライトスイッチ14、及び雨天時にオンされるワイパースイッチ16が設けられている。ヘッドライトスイッチ14、及びワイパースイッチ16は、明度が低い状態での運転、及び雨天での運転等の運転環境を検出するためのセンサであり、その他の運転環境を検出するために温度計や湿度計等を更に設けるようにしてもよい。
これらの車間距離計測センサ10、車速計測センサ12、ヘッドライトスイッチ14、及びワイパースイッチ16は、以下で説明する処理ルーチンのプログラムが記憶されたROM、このプログラムに従って自動追従装置のパラメータのチューニング(追従モデルのフィッティング)、しきい値の演算、運転安全度の点数表示、及び運転技量・集中力の判定等の処理を行うCPU、及びRAMからなるマイクロコンピュータで構成された制御装置18に接続されている。
制御装置18には、車間距離sの時系列データ及び自車速vの時系列データを記憶する時系列データ記憶装置20、及び後述するよう演算された反応強度αの時系列データ(または、反応時間τの時系列データ)、及び運転の激しさを表す係数wの時系列データを記憶する過去解析結果記憶装置22が接続されている。
そして、更に、制御装置18には、自動追従装置のパラメータをチューニングするための自動追従装置のパラメータチューニング装置24、運転安全度を提示するために運転安全度を点数で表示する運転安全度点数表示装置26、運転技量・集中力が低下した場合にドライバの運転を補助する車両運転制御装置28、運転技量・集中力が低下した場合に警報によってドライバに運転技量・集中力が低下したことを音声情報によって提示する警報提示装置30が接続されている。
以下、図2を参照してCPUによって所定時間間間隔で実行される本実施の形態の処理ルーチンについて説明する。
ステップ100では、車間距離計測センサ10で計測された現在の車間距離sを取り込むと共に、車速計測センサ12で計測された自車速vを取り込み、ステップ102において車間距離s及び自車速vの各データを時系列データ記憶装置20に記憶する。これによって、車間距離s及び自車速vの各時系列データが時系列データ記憶装置20に順次記憶されていく。
次のステップ106では、所定時間蓄積した車間距離s及び自車速vの各時系列データの過去数分間のデータを読み出し、読み出したデータと以下の(2)式で表される自車が先行車に対してどのように追従しているかを表す追従モデルとを用いて、反応強度α(または反応時間τ)及び運転の激しさを表す係数wを演算する。
a(t+τ)=α(Vopt(s)−v)・・・(2)
ただし、
s>dのとき
Vopt(s)=Vmax[1−exp(−(s−d)/w]
s≦dのとき
Vopt(s)=0
この追従モデルは、最適速度モデル(OVモデル)と呼ばれる(M.Bando et.al.、Physical Reviw E, Vol.51, No.2 pp.1035−1042)。上記(2)式においてaは、自車速vの時系列データから演算によって求まる加速度、Vopt(s)は、自車速vと車間距離sとに応じて定まるドライバが希望する自車速、すなわち車間距離に応じたドライバが理想とする自車速である。
このVopt(s)は、図6に示すように、過去数分間の車間距離s及び自車速vの各時系列データに上記(2)式及び上記関数Vopt(s)をフィッテングし、連立方程式の解を求めることで、求めることができる。図6にこのようにして求めたドライバが理想とする自車速Vopt(s)の例、反応強度α及び運転の激しさを表す係数wの例を示す。なお、Vopt(s)は、車間距離sが無限大で一定値に漸近し、所定車間距離dで0になるという条件を満たせば、上記以外の関数を用いてもよい。さらに数式で表される関数でなく、数値で表されたテーブルを用いてもよい。
そして、上記(2)式において、反応強度αまたは反応時間τを演算する際に使用される運転の激しさを表す係数wは、ドライバ個々で異なるため、この運転の激しさを表す係数wにより、後述するように自動追従装置のパラメータをチューニングすることができる。
なお、加速度aは、演算することなく加速度センサを用いて検出し、時系列データ記憶装置に記憶するようにしてもよい。
この反応強度αは、どれだけ早くドライバが理想とする自速度へ近づけるかという反応の速さ、または入力に対するゲインを表しており、個人差があると共に時間的にも変化しているパラメータである。上記(2)式は、ドライバが理想とする自速度と実際の速度との差に比例して加速度が決定されるということを表しており、反応強度αが大きいほど速やかにドライバが理想とする自速度に達することができる、つまり反応が速いということができる。
そして、ステップ106では、演算により求めた反応強度α(または反応時間τ)、及び運転の激しさを表す係数wを過去解析結果記憶装置22に記憶する。これにより、過去数分間毎の反応強度α(または反応時間τ)、及び運転の激しさを表す係数wの時系列データが過去解析結果記憶装置22に記憶される。
図3に反応強度αの時系列データの例を示す。車両運転開始時に比較して、時間の経過と共に徐々に反応強度αの値が低下していることが理解できる。なお、反応時間τの場合は、反応時間τと逆に時間経過に伴って徐々に上昇していく。この反応強度α及び反応時間τは、個々のドライバに応じて初期の値や変化の状態が異なっている。また、運転の激しさを表す係数wは、個々のドライバによって異なっている。
また、上記(2)式の追従モデルに代えて、以下の(3)式で表される追従モデルを用いるようにしてもよい。
Figure 0004529394
次のステップ108では、集中力の判定を行うか否かを判断し、集中力の判定を行う場合には、ステップ110において過去解析結果記憶装置22に記憶されている反応強度α(または反応時間τ)の時系列データを用いて反応強度α(または反応時間τ)のしきい値を演算する。このしきい値としては、例えば、反応強度α(または反応時間τ)の平均値を用いることができる。このように、本実施の形態では、反応強度α(または反応時間τ)の時系列データを用いてしきい値を演算しているので、ドライバによって初期の値や変化の状態が異なってもドライバ毎に最適なしきい値を演算することができる。なお、しきい値は、上記のように演算することなく、過去に演算した結果や、予め記憶しておいた値をROM等の記憶手段に記憶しておき、記憶しておいた値を用いてもよい。
次のステップ112では、ライトスイッチがオンかまたはワイパスイッチがオンかを判断することにより、夜間や夕暮れ等の明度が低下した状態での運転(ライトスイッチオン)か、雨天での運転か(ワイパスイッチオン)かを判断する。明度が低下した状態での運転であると判断された場合には、しきい値を明度が低下した状態での運転に適した値に変更する。また、雨天での運転と判断された場合には、しきい値を雨天での運転に適した値に変更する。なお、明度が低下した状態でかつ雨天での運転であると判断された場合には、しきい値を明度が低下した状態でかつ雨天での運転に適した値に変更する。一般的には、明度が低下した状態での運転、及び雨天での運転の場合には、刺激に対する反応速度が低下するので、上記のしきい値が所定値低下するように変更する。これによって、しきい値が運転環境に応じた値に変更される。
ステップ116では、反応強度α(または反応時間τ)としきい値とを比較し、反応強度αがしきい値未満となったとき(または反応時間τがしきい値を越えたとき)に集中力が低下したと判定する。また、このとき、集中力判定のハンチィングを防止するために、反応強度αがしきい値未満となった状態が所定時間継続したとき(または反応時間τがしきい値を越えた状態が所定時間継続したとき)に集中力低下と判定してもよい。
なお、集中力の低下の判定は、しきい値を用いることなく、反応強度αが運転初期の値から著しく低下したとき(反応時間τが運転初期の値から著しく大きくなったとき)、または反応強度αが負の値となったとき(反応時間τが正の所定値以上となったとき)に集中力低下と判断してもよく、これらの状態が一定時間継続したときに集中力低下と判断してもよい。
そして、集中力低下の場合には、運転介入を行うか警報を発するかを判断し、運転介入の場合にはステップ120において車両運転制御装置28を制御し、介入ブレーキ等の安全装置が作動する基準を厳しくする。一方、警報と判断されたときは、音、光、振動、シートベルト巻き上げ等によってドライバに警告を与えて注意を喚起する。
なお、上記では、反応強度αまたは反応時間τを用いて集中力の低下を判断する例について説明したが、反応強度α及び反応時間τを用いて集中力の低下を判断するようにしてもよい。
集中力の判定で無いと判断されたときは、ステップ124において自動追従装置のパラメータのチューニングかまたは安全運転度点数表示かを判断し、自動追従装置のパラメータのチューニングの場合には、ステップ126において、過去解析結果記憶装置に記憶されている運転の激しさを表す係数wの時系列データを読み出し、係数wの基準値(例えば、係数wの平均値)を演算して自動追従装置のパラメータのチューニング装置24に入力する。これにより、自動追従装置のパラメータのチューニング装置24では、係数wの基準値に対応するように自動追従のパラメータが演算され、個々のドライバの運転特性に合致するようにパラメータのチューニングが行われる。従って、安全が確保される範囲内で、個々のドライバの追従特性に近い違和感のない追従運転が、自動制御で再現できるように設定される。
一方、ステップ124において、運転安全度の点数表示を行うと判断された場合には、ステップ128において反応強度α(または反応時間τ)の標準偏差を演算し、この標準偏差を運転安全度の点数として安全運転度点数表示装置26に提示する。なお、標準偏差に代えて反応強度α(または反応時間τ)をそのまま運転安全度の点数として表示してもよい。
すなわち、反応強度α及び反応時間τは、経験や訓練で改善することができる値であり、反応強度αが著しく小さい場合や反応時間τが著しく大きい場合は、運転技術が未熟であると考えることができる。従って、本実施の形態では、個々のドライバの個人差に応じて値が異なる反応強度αまたは反応時間τを用いて運転技術を採点し、表示するようにしている。なお、この運転安全度の点数は、ドライバの安全教育等に利用することができる。
上記の実施の形態では、集中力の判定、自動追従装置のパラメータのチューニング、及び運転安産度の点数表示を行う例について説明したが、集中力の判定、自動追従装置のパラメータのチューニング、及び運転安産度の点数表示のいずれか一つを行うようにしてもよく、集中力の判定及び自動追従装置のパラメータのチューニング、自動追従装置のパラメータのチューニング及び運転安産度の点数表示、または集中力の判定及び運転安産度の点数表示を行うようにしてもよい。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、車両の横方向の位置データを用いて、集中力の判定と運転安全度の提示とを行うようにしたものである。
本実施の形態は、図4に示すように、図1の車間距離s及び自車速vを検出するセンサに代えて、車両横位置計測センサ32が設けられている。車両横位置計測センサ32としては、走行車線を示すラインを撮影するカメラ及びカメラで撮影された画像の画像処理により車両横方向位置を計測する計測装置で構成されたセンサを用いることができる。その他の点は、第1の実施の形態と同様であるので、対応する部分には同一符号を付して説明を省略するが、本実施の形態では自動追従装置のパラメータチューニング装置が設けられていないの点、運転の激しさを表す係数wを演算し記憶していない点、及び記憶装置20,22に記憶するデータが異なっている点が第1の実施の形態と相違している。
次に、図5を参照して本実施の形態の処理ルーチンを説明する。ステップ130では、車両横位置計測センサ32で計測された走行車線内の現在の車両横方向位置yを取り込み、ステップ132において車両横方向位置yのデータを時系列データ記憶装置20に記憶する。これによって、車両横方向位置yの時系列データが時系列データ記憶装置20に順次記憶されていく。
次のステップ136では、所定時間蓄積した車両横方向位置yの時系列データの過去数分間のデータを読み出し、読み出したデータと以下の(4)式で表されるドライバの行動を示す追従モデルを用いて、反応強度α(または反応時間τ)を演算する。
dy(t+τ)/dt=−α(y(t)−y0)・・・(4)
上記(4)式は、τ時間後の反応が反応強度αと現在の刺激との積に等しいことを表しており、y(t)は時間の関数として表された走行車線内の車両横位置、y0は通常走行時のドライバが理想とする車両横位置、αは上記と同様の反応強度、τは上記と同様の反応時間を表している。この通常走行時のドライバが理想とする車両横位置y0は、時系列データ記憶装置20に記憶されている過去数分間の車両横位置の時系列データを読み込み、この読み込んだ車両横位置の時系列データのを上記(4)式にフィッティングして反応強度α(または反応時間τ)と共に求めることができる。
反応強度αが大きいドライバ、または反応時間τが小さいドライバは、車両横位置等の刺激に対して強く、また素早く反応し、ステアリング操舵により車両横位置を制御している。
そして、ステップ136では、演算により求めた反応強度α(または反応時間τ)を過去解析結果記憶装置22に記憶する。これにより、反応強度α(または反応時間τ)の時系列データが過去解析結果記憶装置22に記憶される。
次のステップ106では、集中力の判定か運転安全度の点数表示かを判断し、集中力の判定の場合は、上記で説明したようにステップ110〜ステップ122において集中力の判定処理を行う。また、運転安全度の点数表示の場合は、上記で説明したようにステップ128において運転安全度の点数表示処理を実行する。
上記各実施の形態では、反応強度α及び反応時間τの少なくとも一方に基づいて、集中力の判定及び運転安全度の点数提示を行う例について説明したが、ステアリングの操舵量、アクセルペダルの踏込み量、プレーキペダルの踏込み量、画像処理結果、生理的測定データと組み合わせて、より精度の高い集中力の判定または運転安全度の点数提示を行うようにしてもよい。
また、上記の各実施の形態では、警報提示装置30に代えて、または警報提示装置30と共にペパーミントの香りを提示する香り提示装置を接続し、集中力が低下したと判断されたときに香りを提示するようにしてもよい。
次に、ドライバ認証を行う本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態の概略の構成は、図1と同様であるので、図7を参照してCPUによって実行される認証ルーチンについて説明する。ステップ100〜104では、図2と同様に、車間距離計測センサ10で計測された現在の車間距離sを取り込むと共に、車速計測センサ12で計測された自車速vを取り込み、ステップ102において車間距離s及び自車速vの各データを時系列データ記憶装置20に記憶する。
次のステップ104では、所定時間蓄積した車間距離s及び自車速vの各時系列データの過去数分間のデータを読み出し、読み出したデータと上記の(2)式で表される自車が先行車に対してどのように追従しているかを表す追従モデルとを用いて、反応強度α及び運転の激しさを表す係数wを演算する。
次のステップ140では、演算した反応強度α及び運転の激しさを表す係数wをα−w平面にプロットする。図8に反応強度α及び係数wをα−w平面にプロットした例を示す。図8において、×印がドライバAの反応強度α及び係数wをプロットした点であり、○印がドライバBの反応強度α及び係数wをプロットした点である。図から理解されるように、図に示された曲線によってドライバA,Bを区別することができる。
次のステップ142では、ステップ104で演算した反応強度α及び係数wが、α−w平面のどの領域に属するが否かを判断し、ステップ144においてドライバの認証を行う。図8の例では、図に記載された曲線に対してどちらの領域に演算した反応強度α及び係数wが属するかを判断してドライバの認証を行う。例えば、反応強度α及び係数wが曲線の右側の領域に属すれば運転者はドライバAであると認証する。
なお、ドライバの認証には、線形判別関数、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン等の既存の判別方法を応用することができる。反応強度α及び係数w以外のパラメータを含め、これらを組み合わせて認証してもよいし、いずれか1つのパラメータを単独で用いて認証してもよい。また、本実施の形態では、反応強度αに代えて反応時間τを用いて認証してもよい。
本発明の第1の実施の形態を示すブロック図である。 第1の実施の形態の処理ルーチンを示す流れ図である。 反応強度αの時間変化を示す線図である。 本発明の第2の実施の形態を示すブロック図である。 第2の実施の形態の処理ルーチンを示す流れ図である。 車間距離に対してドライバが理想とする速度を表す関数を決定した例を示す線図である。 第3の実施の形態の処理ルーチンを示す流れ図である。 第3の実施の形態のα−w平面を示す線図である。
符号の説明
10 車間距離計測センサ
12 車速計測センサ
20 時系列データ記憶装置
22 過去解析結果記憶装置
24 自動追従装置のパラメータチューニング装置

Claims (8)

  1. 現在の車両運転状態として、先行車と自車との車間距離、及び自車の車速である自車速を検出する検出手段と、
    前記検出手段で検出された現在の車両運転状態とドライバが理想とする車両運転状態とに基づいて、以下の式で表される追従モデルに従って、ドライバが理想とする車両運転状態との差を修正するために素早く反応していることを表わすドライバの反応強度または反応時間を演算する演算手段と、
    前記演算手段で演算された反応強度または反応時間に基づいて、ドライバの車両運転特性として、ドライバの集中力を推定する運転特性推定手段と、
    を含むドライバの車両運転特性推定装置。
    a(t+τ)=α(Vopt(s)−v)
    ただし、αは、前記反応強度であり、τは前記反応時間であり、tは時間である。vは、検出された自車速であり、aは、自車速vから演算によって求まる加速度であり、Vopt(s)は、検出された車間距離sに応じて定まるドライバが理想とする自車速である。
  2. 現在の車両運転状態として、自車の横方向位置を検出する検出手段と、
    前記検出手段で検出された現在の車両運転状態とドライバが理想とする車両運転状態とに基づいて、以下の式で表される追従モデルに従って、ドライバが理想とする車両運転状態との差を修正するために素早く反応していることを表わすドライバの反応強度または反応時間を演算する演算手段と、
    前記演算手段で演算された反応強度または反応時間に基づいて、ドライバの車両運転特性として、ドライバの集中力を推定する運転特性推定手段と、
    を含むドライバの車両運転特性推定装置。
    dy(t+τ)/dt=−α(y(t)−y0
    ただし、αは、前記反応強度であり、τは前記反応時間であり、tは時間である。y(t)は、時間の関数として表された走行車線内の車両横位置であり、y0は、通常走行時のドライバが理想とする車両横位置である。
  3. 前記ドライバが理想とする車両運転状態を予め記憶した運転状態記憶手段を更に含む請求項1又は2記載のドライバの車両運転特性推定装置。
  4. 前記検出手段で検出された車両運転状態の時系列データを記憶する時系列データ記憶手段と、
    前記時系列データ記憶手段に記憶された車両運転状態の時系列データに基づいて前記ドライバが理想とする車両運転状態を推定する運転状態推定手段と、
    を更に含む請求項1又は2記載のドライバの車両運転特性推定装置。
  5. 予め定められた反応強度または反応時間のしきい値を記憶するしきい値記憶手段を更に備え、
    前記運転特性推定手段は、前記演算手段で演算された反応強度または反応時間と前記しきい値記憶手段に記憶されたしきい値とを比較して、ドライバの集中力をドライバの車両運転特性として推定する請求項1〜4のいずれか1項記載のドライバの車両運転特性推定装置。
  6. 前記演算手段で演算されたドライバの反応強度または反応時間に基づいて、ドライバの運転安全度を提示する提示手段を更に含む請求項1〜5のいずれか1項記載のドライバの車両運転特性推定装置。
  7. 前記演算手段で演算されたドライバの反応強度または反応時間に基づいて、車両を自動運転する自動運転手段を更に含む1〜5のいずれか1項記載のドライバの車両運転特性推定装置。
  8. 前記演算手段で演算されたドライバの反応強度または反応時間に基づいて、車両運転中のドライバの認証を行う認証手段を更に含む1〜7のいずれか1項記載のドライバの車両運転特性推定装置。
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