JP4518639B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は空気入りタイヤに係り、さらに詳細には排水性能を向上すると共に良好な氷雪路面走行時の性能を長期にわたり維持できる空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
排水性能を向上するために、図9に示されるように、角部が面取りされたブロックを有するトレッドを備えた空気入りタイヤが知られている。このような空気入りタイヤでは、摩耗によるブロック間の溝の容積の減少率は、角部が面取りされていないブロックを有する空気入りタイヤの場合のそれと比べて非常に大きい。
【0003】
ところで、溝の容積はタイヤの雪上性能に大きく影響しており、溝の容積が大きい程雪上性能は良好となる。図9に示すブロックを有するタイヤの初期の雪上性能は、角部が面取りされていないタイヤのそれに比べ良好であるが、前述のとおり摩耗による溝の容積の減少率が大きいので、摩耗による雪上性能の低下率が著しく大きい。
【0004】
氷雪路面用タイヤには一定の性能をある程度の期間維持することが要求されるため、初期雪上性能がいかに良好でも図9に示すようなブロックを有する空気入りタイヤを氷雪路面用タイヤとして使用することはできない。
【0005】
本発明は上記事実を考慮してなされたものであり、雪上性能の低下、さらに氷上性能の低下を抑制できると共に排水性能を向上することができる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、角部の少なくとも一部が、その表面が角部の頂点に向けて徐々に低くなるように面取りされた複数のブロックを有するトレッドを備え、面取りされた角部には、前記角部を形成する一方のブロック端面側から前記角部を形成する他方のブロック端面側に向けて前記ブロックの上面の面取りされた部分の縁と略平行に延びるサイプが形成された空気入りタイヤを提供する。
【0007】
本発明の空気入りタイヤでは、面取りされた角部の一部が摩耗により路面に接触するようになったときには、面取りされた角部に形成されたサイプが路面と接触するようになる。サイプが接地により開くと、サイプの中に雪が入り込み、雪をグリップすることができるため、溝の容積減少による雪上性能の低下を相殺できる。
【0008】
また、面取りされた角部の一部が摩耗により路面に接触するようになったときには、摩耗により溝の容積が減るだけでなく、踏面(タイヤの路面に接触する面)の面積が増加する。踏面の面積はタイヤの氷上性能に関係し、踏面の面積が大きい程氷上性能は良好となる。従って、トレッドゴムの劣化による氷上性能の低下を踏面の面積の増加により抑制することができる。さらに、摩耗により路面と接触するようになったサイプは凍った路面上の水膜を切ってブロックを路面と接触させる。これにより摩擦力、ひいては路面をグリップする力が得られ、氷上性能の低下が防止される。
【0009】
面取りされた角部に形成されるサイプの数は少なくとも1本あればよいが、複数であることが好ましい。摩耗の度合いが進むにつれて、溝の容積は減るが、サイプの数が複数である場合には、氷雪路面に有効に作用するサイプの数も増えるため、良好な氷雪性能がサイプの数が1本のときよりもさらに長期にわたって維持される。
【0010】
また、本発明の空気入りタイヤは角部を面取りすることにより得られる効果である良好な排水性能も有する。
【0011】
複数のブロックの面取りされた角部以外の部分にもサイプを形成することができ、その場合面取りされた角部以外の部分に形成されたサイプの下端(タイヤ半径方向内側の端部)の高さは角部に形成されたサイプの下端の高さと同じであることが好ましい。このようにすると、面取りされた角部に形成されたサイプが、摩耗末期まで有効に働くことができる。
【0012】
トレッドはタイヤ周方向に対して傾斜する傾斜溝を有することができ、その場合傾斜溝とタイヤ周方向との角度は45°を越えることが好ましい。このようにすると、雪路面走行時にタイヤ周方向に有効な、換言すれば駆動や制動に有効なエッジ成分が多く得られる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本実施の形態の空気入りタイヤを詳細に説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態の空気入りタイヤのトレッドの一部を示す。この図に示されるように、本実施の形態の空気入りタイヤのトレッド10には、タイヤ周方向に沿って延びる複数の主溝12が等間隔で形成されている。また、トレッド10にはトレッドの一端から他端に延びるV字の傾斜溝14が形成されており、これらの主溝12と傾斜溝14とによって複数のブロック16が区画されている。
【0015】
この空気入りタイヤは、この空気入りタイヤを車両に取り付ける際の回転方向(矢印R方向)が指定された方向性タイヤであり、各ブロック16では、タイヤ赤道面CL側で、且つ主溝12と傾斜溝14とによって形成された角度が鋭角である角部18(図1のブロック16Aでは右下の角部、ブロック16Bでは左下の角部)が先に接地する。
【0016】
図2、3に示されるように、この角部18は面取りされており、その表面はその頂点18Aに向けて徐々に低くなっており、ブロック16(図2、3では16B)の上面20の面取りされた部分の縁20Aはゆるいカ−ブを描いている。また、ブロック16の端面22、24の面取りされた部分の縁(図2では、縁22Aのみ図示)もゆるいカーブを描いている。
【0017】
また、ブロック16には、傾斜溝14に沿った端部に平行な複数のサイプ26が形成されている。さらに、角部18にも複数のサイプ28、30が形成されている。
【0018】
サイプ26の下端26Aとサイプ28の下端28Aとサイプ30の下端30Aは同じ高さに位置している。
【0019】
図4、5に示すように、このようなブロック16を備えた空気入りタイヤが摩耗し、角部18の一部が路面と接触するようになると、角部18に形成されたサイプ28、30のうち頂点18Aから最も遠いサイプ28が路面と接触する。このため、エッジ成分(ブロック16の、サイプの両側の部分)の数が増えて、凍った路面上の水膜を切りやすくなる。また、サイプ26の深さが摩耗により減少しサイプ26の排水効果が低下しても、新たにサイプ28の排水効果が得られる。このため、滑りやすい凍った路面を走行する場合の性能の低下が防止される。さらに、踏面の面積の増加によっても氷上性能の低下が抑制される。また、雪がサイプ26だけでなくサイプ28にも入り込むようになるため、雪路面走行時の性能の低下が防止される。
【0020】
さらに摩耗が進むと、溝の容積はさらに減少する反面、サイプ30の効果が新たに得られる。このため本実施の形態では、良好な氷雪路面走行時の性能が長期にわたり維持される。
【0021】
また、本実施の形態の空気入りタイヤは、ブロックの最初に接地する角部18が面取りされることにより得られる良好な排水性能も有している。
【0022】
本実施の形態の効果を実証するために、ハイドロプレーニングを発生させる速度と、氷路面又は雪路面走行時のトラクション性能を評価した。サイズが205/55R16の本実施の形態及び比較例のタイヤを、幅が6.5J×16のリムに組み付け、内圧が200kPaとなるようにタイヤに空気を充填した。
【0023】
ハイドロプレーニングを発生させる速度は、空気を充填したタイヤをテスト車両の四輪に装着し、ドライバーと588Nの荷重を加え、水深10mmの路面を除々に速度を上げながら走行し、車輪が空転状態になったときの速度を測定することにより求めた。結果を図6に示す。
【0024】
図6において、Aは、面取りされた角部にサイプが形成された本実施の形態の空気入りタイヤの結果であり、Bは面取りされた角部にサイプが形成されていない比較例1の空気入りタイヤの結果であり、Cは角部が面取りされていない比較例2の空気入りタイヤの結果である。なお、傾斜溝とタイヤ周方向との角度は60°であった。図6から、角部が面取りされた、本実施の形態の空気入りタイヤと比較例1の空気入りタイヤは、角部が面取りされていない比較例2の空気入りタイヤに比べ、ハイドロプレーニングを起こす速度が速く、優れた排水性能を有していることがわかる。
【0025】
また、トラクション性能は、前記空気入りタイヤをテスト車輪の四輪に装着し、ドライバーと588Nの荷重を加え、雪で覆われた路面又は凍った路面を走行し、スリップ率0〜100%までの発生軸力の積分値を求め、摩耗量に対する積分値の変化を調べた。結果を図7及び図8に示す。図中、○は本実施の形態の空気入りタイヤの結果であり、△は比較例1の空気入りタイヤの結果であり、×は比較例2の空気入りタイヤの結果である。
【0026】
図7において、比較例1及び本実施の形態の空気入りタイヤの初期氷上性能よりも比較例2の空気入りタイヤのそれの方が良いのは、比較例2の空気入りタイヤの踏面の面積の方が比較例1及び本実施の形態の空気入りタイヤの初期の踏面の面積より広いからである。これらの空気入りタイヤの氷上性能はトレッドゴムの劣化により低下するが、比較例1及び本実施の形態の空気入りタイヤの氷上性能の低下率が比較例2の空気入りタイヤのそれよりも小さいのは、比較例1及び本実施の形態の空気入りタイヤでは摩耗により踏面の面積が増加するからである。また、本実施の形態の空気入りタイヤでは、面取りされた角部に形成されたサイプが路面と接触するようになると、氷上性能の低下がさらに抑制される。
【0027】
図8において、比較例2の空気入りタイヤの初期雪上性能よりも比較例1及び本実施の形態の空気入りタイヤのそれの方が良いのは、比較例2の空気入りタイヤの初期の溝の容積よりも比較例1及び本実施の形態の空気入りタイヤのそれの方が大きいからである。これらの空気入りタイヤの雪上性能は摩耗による溝の容積の減少に伴い低下するが、溝の容積の減少率が大きい比較例1の空気入りタイヤの雪上性能の低下率は比較例2の空気入りタイヤのそれよりも大きい。本実施の形態の空気入りタイヤでは、初期の低下率は大きいが、面取りされた角部に形成されたサイプが路面と接触するようになると、雪上性能の低下が抑制される。
【0028】
以上のように、本実施の形態では、一定の氷雪性能が長期間維持されることがわかる。
【0029】
上記実施の形態では、ブロックの平面形状は平行四辺形であるが、菱形、その他の四角形でもよく、また4角形以外の多角形でもよい。
【0030】
さらに、上記実施の形態では、サイプ28、30の平面形状はジグザグであるが、波形でも、直線状でも、湾曲していてもよい。
【0031】
また、角部18に形成されるサイプの数は1又は3以上の整数でもよく、上から見たときの角部18の面積に応じて適宜決定される。
【0032】
さらに、角部18に形成されるサイプ28、30はサイプ26と同方向に配置されても異なる方向に配置されてもよい。また、サイプ28、30の間隔はサイプ26同士の間隔と同じでも異なってもよい。
【0033】
また、角部18に形成されるサイプの下端の高さとその他のサイプの下端の高さは同じでなくてもよい。
【0034】
【発明の効果】
本発明は、面取りされた角部にサイプを形成したので、氷雪路面走行時の性能の低下を抑制できると共に排水性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態の空気入りタイヤのトレッドの一部の平面図である。
【図2】図1のトレッドのブロックを拡大した斜視図である。
【図3】図2のブロックの平面図である。
【図4】図2のブロックが摩耗したときの斜視図である。
【図5】図4のブロックの平面図である。
【図6】ハイドロプレーニングが発生するときの速度を示すグラフである。
【図7】摩耗量と氷路面走行時のトラクション性能との関係を示すグラフである。
【図8】摩耗量と雪路面走行時のトラクション性能との関係を示すグラフである。
【図9】従来のブロックを示す斜視図である。
【符号の説明】
10 トレッド
16 ブロック
18 角部
18A 頂点
28 サイプ
30 サイプ
Claims (4)
- 角部の少なくとも一部が、その表面が角部の頂点に向けて徐々に低くなるように面取りされた複数のブロックを有するトレッドを備え、
面取りされた角部には、前記角部を形成する一方のブロック端面側から前記角部を形成する他方のブロック端面側に向けて前記ブロックの上面の面取りされた部分の縁と略平行に延びるサイプが形成された空気入りタイヤ。 - 前記面取りされた角部に複数のサイプが形成された請求項1記載の空気入りタイヤ。
- 前記複数のブロックの前記面取りされた角部以外の部分にサイプが形成され、前記面取りされた角部以外の部分に形成されたサイプの下端の高さは前記角部に形成されたサイプの下端の高さと同じである請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
- 前記トレッドはタイヤ周方向に対して傾斜する傾斜溝を有し、前記傾斜溝とタイヤ周方向との角度は45°を越える請求項1から3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
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