JP4512265B2 - 乳酸菌培養上清およびその製造方法並びに当該上清を利用する皮膚外用剤 - Google Patents
乳酸菌培養上清およびその製造方法並びに当該上清を利用する皮膚外用剤 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の香気成分の低減された乳酸菌培養上清の製造方法に関し、更に詳しくは、乳酸菌の発酵過程で生じる特有の発酵臭と感じられる香気成分を低減させた乳酸菌培養上清およびその製造方法並びにそれを配合することで得られる嗜好性の高い皮膚外用剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
乳酸菌培養上清は、乳を主成分とする培地に乳酸菌を接種して得られた培養物の乳清からなり、皮膚外用剤として保湿作用(日本香粧品科学会誌,6(4),p238,1982)、抗酸化作用(日本香粧品学会第7回学術学会公演要旨,59,1982)、光防御作用(日本香粧品学会第8回学術学会公演要旨,210,1983)、皮膚菌叢のコントロール作用、皮膚pHコントロール作用(日本香粧品学会第9回学術学会公演要旨,132,1984)など多数の効果が報告されている。
【0003】
しかしながら乳酸菌培養上清は、乳酸発酵により生じた微量の香気成分を含有している。そのため乳酸菌培養上清を化粧品等に配合した場合、この特有の発酵臭が製品の腐敗など品質の低下を連想させ、その結果嗜好性が低下するといった問題を生じさせていた。
【0004】
この問題を解決するため、乳酸菌培養上清の香気成分を除去する方法が検討されており、例えば、乳清を減圧加熱して乳清中の香気成分が実質的に除去されるまで、その一部を蒸発させる方法等が知られている(特開昭58−192811等)。しかしながら、この方法では香気成分の除去が不完全であること、および乳清が熱変性をするという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、乳酸菌培養上清の香気成分を低減した乳酸菌培養上清およびその製造方法並びに当該乳酸菌培養上清を使用した皮膚外用剤組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決すべく、本発明者らは鋭意研究を行った結果、乳を主成分とする培地で乳酸菌の培養を行なうに際し、酸素を排除することにより、発酵臭と感じられる香気成分であるダイアセチルの量を大幅に低減させることができることを見出した。また更に、そのようにして製造された乳酸菌培養物を更に炭酸塩で処理することにより、更に他の香気成分量も低減させることが可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、乳を主成分とする培地に乳酸菌を接種した後、当該培地を不活性気体の置換下培養し、得られた乳酸菌培養物中から上清を分離することにより得られる香気成分の低減された乳酸菌培養上清を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、乳を主成分とする培地に乳酸菌を接種して乳酸菌の培養を行い、得られた乳酸菌培養物より上清を得る乳酸菌培養上清の製造方法において、乳酸菌の培養を不活性気体の存在下で行うことを特徴とする、香気成分の低減された乳酸菌培養上清の製造方法を提供するものである。
【0009】
更に、本発明は、前記の香気成分の低減された乳酸菌培養上清を配合することを特徴とする皮膚外用剤組成物を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の香気成分の低減された培養上清(以下、「無臭培養上清」ということがある)は、培地に乳酸菌を接種後の乳酸菌培養を不活性気体の置換下で行うことにより得られる。本発明の無臭培養上清の製造にあたり使用される不活性気体としては、窒素ガス、アルゴンガス、炭酸ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、クリプトンガス、キセノンガス、ラドンガス、水素ガス、プロパンガスなどの反応性が低い気体が挙げられ、特に費用、安全性等の点から窒素ガス、アルゴンガス、炭酸ガス、ヘリウムガスが好ましい。
【0011】
この不活性気体は、乳酸菌発酵培地を実質的に脱酸素するために充分な量であれば良いが、例えば、窒素ガスを使用する場合、乳酸菌培養培地を高温滅菌した後の冷却工程において、水蒸気の液化による減圧分を補うのに十分な量の窒素ガスを注入して常に陽圧状態を保ち続ける。また、培養中も窒素ガスを注入し続けるか、密閉することにより嫌気状態に保つことが好ましい。
【0012】
本発明の無臭培養上清の製造は、上記以外は乳酸菌培養の常法に従って実施できる。すなわち、乳酸発酵に用いる乳酸菌は乳酸菌飲料等の飲食品等に通常使用されているものであれば特に限定されることなく乳酸菌培養に利用することができ、その例としては、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ブルガリクス、ラクトバチルス・カゼイ等のラクトバチルス属、ラクトコッカス・ラクチス等のラクトコッカス属、ストレプトコッカス・ラクチス、ストレプトコッカス・サーモフィルス等のストレプトコッカス属、ロイコノストック属、ビフィドバクテリウム属等が挙げられる。特にストレプトコッカス・サーモフィルスが好ましい。
【0013】
また、乳酸菌培養の培地に用いられる乳としては特に限定されるものではなく、例えば人乳、牛乳、山羊乳等の獣乳や、これらの獣乳の脱脂乳、粉乳や脱脂粉乳からの還元乳等が挙げられ、何れも好適に使用できるが、乳酸発酵後の処理の容易性、入手の容易性、経済性等の点から、脱脂乳、または還元脱脂乳が好ましい。
【0014】
更に、製品の風味に関する影響が許容できる範囲内、あるいは本発明品の効果に影響を与えない範囲内であれば、通常、乳酸菌発酵用の培地に対して添加される酵母エキス、ペプトン等の生育促進物質や、L−アスコルビン酸、L−システイン等の還元剤等を添加してもよい。
【0015】
更にまた、乳酸菌を接種した後の培養条件は特に規定するものではなく、一般に乳酸菌の培養に用いられている条件であれば、いずれも好適に使用することができる。具体的には、例えば、上記のような培地を100℃〜115℃程度の温度で15〜100分間程度加熱殺菌した後、窒素ガス等の不活性気体をフィルターを通して充分に注入して脱酸素をすればよい。その後、培地に乳酸菌を接種して37℃にて2〜3日間培養すれば良い。また培養時には減圧していてもよい。
【0016】
乳酸菌のスターター培地への接種量は、0.1〜5質量%が良く、特に0.3〜1質量%が好ましい。培養温度は、乳酸菌が生育できる温度であればよい。具体的には30〜40℃が良く、特に35〜38℃が好ましい。また、乳酸菌の培養は、乳酸菌が定常増殖期に到達するまで行えばよく、pHが5.0〜3.5、特に4.2〜3.8に達するまで行うのが好ましい。
【0017】
かくして得られた培養物からは、常法に従い処理することにより無臭培養上清を得ることができる。すなわち、乳酸菌培養培地をろ過、遠心分離等の処理に付すことにより、ダイアセチル等の香気成分が低減した培養上精を分取することができる。
【0018】
なお、上記のようにすることにより培養上清中のダイアセチル等の香気成分は著しく低減するが、更に他の香気成分も減少させ、化粧料用配合成分としてより好ましいものとするには、乳酸菌発酵終了後の培養物へ難溶性または不溶性の炭酸塩、またはタルクを添加して攪拌後、前記と同様にして培養上清を分離取得することが好ましい。
【0019】
このような炭酸塩の添加処理に用いられる炭酸塩としては、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸ニッケル、炭酸バリウム、炭酸プラセオジム、炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウムカルシウム、炭酸ラジウム、炭酸イットリウム、炭酸カドミウム、炭酸銀、炭酸クロム、炭酸コバルト、炭酸ジスプロシウム、炭酸水銀、炭酸セリウム、炭酸鉄、炭酸銅、炭酸ストロンチウム、炭酸マンガン、炭酸鉛等が好ましく、特に炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムが好ましい。この処理における炭酸塩の添加量は培養物に対し0.005%〜10%が好ましく、より好ましくは0.1%〜2%、更に好ましくは0.3%〜1.2%、特に0.4%〜1%が好ましい。
【0020】
以上のようにして得られた無臭培養上精は、そのまま各種製品に使用してもよいが、効果を損なわない範囲で加熱処理、蒸発処理、減圧処理等の通常用いられる処理を行ってから使用しても良い。
【0021】
本発明の無臭培養上清は、常法に従って、化粧品、医薬品、医薬部外品等の皮膚外用剤組成物に配合することができ、化粧水、乳液、保湿クリーム、クレンジングクリーム、マッサージクリーム、洗顔クリーム、パック、美容液等の基礎化粧品、シャンプー、リンス、トリートメント、ヘアトニック、ヘアリキッド、ヘアクリーム、ヘアミルク等の頭髪用製品、入浴剤等の浴用化粧品、ファンデーション、口紅、マスカラ、アイシャドウ等のメーキャップ化粧品、日焼け止め等の特殊化粧品、アフターシェーブローション、ボディーソープ等種々の形態とすることができる。この場合の、無臭培養上精の配合量は、皮膚外用剤組成物の形態等によって異なるが、通常0.1〜80質量%が好ましく、特に1〜50質量%が好ましい。
【0022】
上記無臭培養上清を利用する本発明の皮膚外用剤組成物は、通常用いられている製造方法により製造される。例えば精製水や、化粧水基剤、クリーム基剤、乳液基剤等に本発明の無臭培養上精を、所望の作用効果を発揮するように適量溶解若しくは分散させれば良い。この際、無臭培養上精自体の有する効果や香気成分の低減効果を有効に発揮させるためには、皮膚外用剤組成物のpHを4.0〜10.0、特に4.5 〜8.0に調整することが望ましい。このpHの調整には通常使用されるpH調整剤を使用すれば良く、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、クエン酸、リンゴ酸等を使用することができる。
【0023】
また、本発明の皮膚外用剤組成物には、上記必須成分の他に、通常皮膚外用剤に用いられる原料、例えば界面活性剤、油分、アルコール類、保湿剤、増粘剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、pH調整剤、香料、色素、紫外線吸収・散乱剤、粉体、ビタミン類、アミノ酸類、水溶性高分子、発泡剤、顔料、植物抽出物、動物由来成分、海藻抽出物、各種薬剤、添加剤、水等を配合することができる。
【0024】
界面活性剤としては、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキセチレンソルビタン、ポリエチレングリコールモノオレート、ポリエチレングリコールアルキレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリグリコールジエーテル、ラウロイルジエタノールアマイド、脂肪酸イソプロパノールアマイド、マルチトールヒドロキシ脂肪酸エーテル、アルキル化多糖、アルキルグルコシド、シュガーエステル等の非イオン性界面活性剤、親油型グリセリンモノステアレート、自己乳化型グリセリンモノステアレート、ポリグリセリンモノステアレート、ポリグリセリンアルキレート、ソルビタンモノオレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレン化ステロール、ポリオキシエチレン化ラノリン、ポリオキシエチレン化蜜ロウ、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のノニオン界面活性剤、ステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、セチル硫酸ナトリウム、ラウリルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、パルミチン酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルリン酸ナトリウム、N−アシルグルタミン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤、塩酸アルキルアミノエチルグリシン液、レシチン等の両性界面活性剤等を例示することができる。
【0025】
油分としては、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、オリーブ油、カカオ油、椿油、ヤシ油、木ロウ、ホホバ油、グレープシード油、アボガド油等の植物油脂類、ミンク油、卵黄油等の動物油脂類、蜜ロウ、鯨ロウ、ラノリン、カルナウバロウ、キャンデリラロウ等のロウ類、流動パラフィン、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス、セレシンワックス、パラフィンワックス、ワセリン等の炭化水素類、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、ベヘニン酸、パルミチン酸、カプリン酸、ラノリン脂肪酸、リノール酸、リノレン酸等の天然および合成脂肪酸類、セタノール、ステアリルアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、ラウリルアルコール、カプリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、コレステロール、フィトステロール等の天然および合成高級アルコール類、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、コレステロールオレエート等のエステル類等を例示することができる。
【0026】
保湿剤としては、グリセリン、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール等のペンチレングリコール、イソプロピレングリコール等の多価アルコール類、アミノ酸、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等の天然保湿成分、キシログルカン、クインスシード、カラギーナン、ペクチン、マンナン、カードラン、ガラクタン、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグルカン、カロニン酸、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、コラーゲン、ムコ多糖類、コンドロイチン硫酸等の水溶性高分子物質等を例示することができる。
【0027】
防腐剤としては、安息香酸塩、サリチル酸塩、ソルビン酸塩、デヒドロ酢酸塩、パラオキシ安息香酸エステル、2,4,4'−トリクロロ−2'−ヒドロキシジフェニルエーテル、3,4,4'−トリクロロカルバニリド、塩化ベンザルコニウム、ヒノキチオール、レゾルシン、ヘキサクロロフェン、エタノール等を例示することができる。
【0028】
酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸等を、キレート剤としては、エデト酸塩、ピロリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、クエン酸、酒石酸、グルコン酸等を、pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂、リン酸水素カリウム等をそれぞれ例示することができる。
【0029】
紫外線吸収・散乱剤としては、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、3−(4’−メチルベンジリデン)−d−カンファー、3−ベンジリデン−d,1−カンファー、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル、2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン、5−(3,3−ジメチル−2−ノルボルニリデン)−3−ペンタン−2−オン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、オクチルジメチルパラアミノベンゾエート、エチルヘキシルパラメトキシサイナメート、酸化チタン、カオリン、タルク等を例示することができる。
【0030】
ビタミン類としては、β−カロチンおよびその誘導体、レチノールおよびその誘導体またはエステル等のビタミンA類、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2およびその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15およびその誘導体等のビタミンB類、アスコルビン酸、アスコルビン酸硫酸エステルおよびその塩、アスコルビン酸リン酸エステルおよびその塩、アスコルビン酸ジパルミテート、アスコルビン酸グルコシド、アシルアスコルビン酸グルコシド、アスコルビン酸テトライソパルミテート等のビタミンC類、ビタミンD、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンF、パントテン酸、パンテチン、ビタミンH、ビタミンK、ビタミンP、ビタミンU、カルニチン、フェルラ酸、γ−オリザノール、α−リポ酸、オロット酸およびそれらの誘導体等を例示することができる。
【0031】
アミノ酸類としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、タウリン、トリプトファン、シスチン、システイン、メチオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン、リジンおよびそれらの誘導体等を例示することができる。
【0032】
増粘剤としては、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、硅酸アルミニウム、マルメロ種子抽出物、アラビアガム、ヒドロキシエチレングァーガム、カルボキシメチレングァーガム、グァーガム、デキストラン、トラガントガム、デンプン、キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天等の天然高分子物質、セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、可溶性デンプン、カチオン化セルロース等の半合成高分子物質、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ビニルアルコール・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体等の合成高分子物質等を例示することができる。
【0033】
植物抽出物としては、ギシギシ、クララ、コウホネ、オレンジ、セージ、ノコギリソウ、ゼニアオイ、センブリ、タイム、トウキ、トウヒ、バーチ、スギナ、ヘチマ、マロニエ、ユキノシタ、アルニカ、ユリ、ヨモギ、シャクヤク、アロエ、クチナシ、サワラ、ブクリョウ、サンシシ、オウゴン、甘草、カワラヨモギ、クジン、ヨクイニン、ニンドウ、シャクヤク、ソウハクヒ、サンザシ、ボタンピ、セファランチン等からの抽出物を例示することができる。
【0034】
海藻抽出物としては、褐藻、紅藻、緑藻、藍藻等からの抽出液があり、具体的にはコンブ、マコンブ、ワカメ、ヒジキ、テングサ、サンゴモ、パルマリア、ツノマタ、ノリ、アオサ、アナアオサ、アスコフィラム、ヒバマタ、モズク、オキナワモズク、ヒマンタリア等からの抽出物を例示することができる。
【0035】
各種薬剤としては、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、γ−オリザノール、アラントイン、グリチルリチン酸およびその塩、グリチルレチン酸およびその誘導体、ヒノキチオール、ビサボロール、ユーカルプトーン、チモール、イノシトール、サイコサポニン、ニンジンサポニン、ヘチマサポニン、ムクロジサポニン等のサポニン類、パントテニルエチルエーテル、エチニルエストラジオール、トラネキサム酸、アルブチン、プラセンタエキス等を例示することができる。
【0036】
【実施例】
以下、試験例および実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら制約されるものではない。
【0037】
試 験 例 1
乳酸培養上清の製造:
脱脂粉乳の8%水溶液を加熱殺菌しただけの培地(以下、「好気培地」という)と前記培地に窒素ガスを飽和するまで注入した培地(以下、「窒素置換処理培地」という)を調製した。このようにして得られた2種類の培地各々に、ストレプトコッカス・サーモフィルス YIT2001(FERM P−11891)のスターターを1%接種した。その後、窒素ガスを注入した培地には、再度窒素ガスを注入し空気を追い出した後、密封した。そして両培地とも37℃で24時間攪拌培養後、48時間静置培養した。培養終了後、フィルターでろ過した。
【0038】
ろ過後、更に各々の培地を3等分し、一つはそのまま培養上清として用いた。残りのうちの一つは、65℃で減圧加熱し、培地の全量が10%減少するまで濃縮(以下、「デアレート処理」という)する工程を行った後、減水分の水を補給し培養上清として用いた。他の一つは、最終濃度が0.5%になるように炭酸マグネシウムを添加して攪拌後、フィルターでろ過する工程(以下、「炭マグ処理」という)を行った後、培養上清として用いた。
【0039】
このようにして得られた窒素置換処理培地の培養上精(以下、「窒素置換S.E.」という)、および好気培地の培養上精(以下、「好気培養S.E.」という)、並びに各々のデアレート処理培養上清および炭マグ処理培養上清について、検体をフラスコに採り、50℃の一定温度にしたのち、上部雰囲気を採取してガスクロマトグラフィーによる香気成分の定量を行った。その結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
表1の結果より、窒素置換処理によりダイアセチルの量が約95%減少し、低減効果が認められた。また、デアレート処理、炭マグ処理単独よりも、窒素置換処理を併用したほうがより高い効果が得られ、特に炭マグ処理との併用の効果が高かった。
【0042】
実 施 例 1
化粧水(1):
乳酸菌のスターターとしてはストレプトコッカス・サーモフィルスを使用し、他は試験例1と同様の方法により窒素置換S.E.を得た。この窒素置換S.E.を用い、以下に示す組成の化粧水を、下記処方より調製した。この化粧水は、1,3−ブチレングリコールおよびクエン酸ナトリウムを除く他の成分をまず混合した後、水酸化ナトリウムによりpH6.0に調製し、その後前記成分を混合して製造した。
【0043】
【0044】
比 較 例 1
化粧水(2):
実施例1の窒素置換S.E.を好気培養S.E.に変える以外は実施例1と同様に化粧水を製造した。
【0045】
試 験 例 2
使 用 感 試 験 :
専門パネル12人を対象にして、実施例1および比較例2で得られた化粧水を肌に塗布し、下記に記す測定方法および判断基準に基づいてスコアをつけて使用感試験を行った。結果を表2に示す。
【0046】
<測定方法>
保湿性:
上記のようにして得られた化粧水を乾性肌である人(5人)の前腕内側に塗布し、30分後に塗布部分の皮膚の水分量を水分量計(Skicon200型;IBS社製)を用いて測定した。同一の実験を3回行い、皮膚の水分量の平均値を求めた。
【0047】
pH調整作用:
この化粧水の処方から1,3−ブチレングリコールおよびクエン酸ナトリウムを除いた溶液の10mlをpH6.0に調整するのに必要な水酸化ナトリウム溶液(0.1mol/L)の量(mL)を求めた。
【0048】
<判断基準>
評 点 : 評 価
+3 : 発酵臭がない。
+2 : どちらともいえない。
+1 : 発酵臭がある。
【0049】
【表2】
【0050】
表2の結果より、好気培養S.E.を用いた化粧水では、保湿性、およびpH調整作用の維持ができる配合量10%以上で、10〜12名のパネラー(全体の80〜100%)が不快臭があると感じたのに対し、窒素置換S.E.を用いた化粧水では配合量が20%でも、ほとんどのパネラーが不快臭を感じなかった。
【0051】
実 施 例 2
クリーム:
以下に組成を示すクリームを常法により製造した。なお、培養上清は実施例1で製造した窒素置換処置培地でデアレート処理を行ったものを使用した。
【0052】
【0053】
実 施 例 3
ローション:
以下に組成を示すローションを、常法により製造した。なお、培養上清は実施例1で製造した窒素置換処理培地でデアレート処理を行ったものを使用した。
【0054】
【0055】
実 施 例 4
クレンジングクリーム:
以下に組成を示すクレンジングクリームを、常法により製造した。なお、培養上清は実施例1で製造した窒素置換処理培地でデアレート処理を行ったものを使用した。
【0056】
【0057】
実 施 例 5
乳液:
以下に組成を示す乳液を、常法により製造した。なお、培養上清は実施例1で製造した窒素置換処理培地でデアレート処理を行ったものを使用した。
【0058】
【0059】
実施例2〜5より得られた皮膚外用剤組成物に試験例2と同様の使用感試験を行ったところ、いずれの皮膚外用剤組成物も発酵臭がなく、嗜好性の高いものであることが分かった。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、乳酸菌発酵により生じる特有の香気成分が低減した乳酸菌培養上清を提供することができる。
【0061】
このように、本発明により得られる乳酸菌培養上清は、発酵臭として感じられる特有の香気成分が低減したものであるから、皮膚外用剤組成物に配合しても嗜好性の面での問題が少なく、乳酸菌培養上清自体の有する保湿作用、抗酸化作用、光防御作用、皮膚菌叢のコントロール作用、皮膚pHコントロール作用等の効果を有する化粧水、乳液、保湿クリーム、クレンジングクリーム、マッサージクリーム、洗顔クリーム、パック、美容液等種々の皮膚外用剤組成物として有利に利用される。
以 上
Claims (7)
- 乳を主成分とする培地に乳酸菌を接種した後、当該培地を不活性気体の置換下培養し、得られた乳酸菌培養物から上清を分離し、更に、難溶性または不溶性の炭酸塩、またはタルクを添加処理することにより得られる香気成分の低減された乳酸菌培養上清。
- 乳を主成分とする培地に乳酸菌を接種して乳酸菌の培養を行い、得られた乳酸菌培養物から上清を得る乳酸菌培養上清の製造方法において、乳酸菌の培養を不活性気体置換下で行い、更に、上清を難溶性または不溶性の炭酸塩、またはタルクを添加処理することを特徴とする、香気成分の低減された乳酸菌培養上清の製造方法。
- 香気成分がダイアセチルである請求項第2項記載の香気成分の低減された乳酸菌培養上清の製造方法。
- 乳酸菌がラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ブルガリクス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトコッカス・ラクチス、ストレプトコッカス・ラクチス、ストレプトコッカス・サーモフィルスから選ばれる乳酸菌の1種または2種以上である請求項第2項または第3項記載の香気成分の低減された乳酸菌培養上清の製造方法
- 乳を主成分とする培地に乳酸菌を接種した後、当該培地を不活性気体の置換下培養し、得られた乳酸菌培養物から上清を分離することにより得られる香気成分の少ない乳酸菌培養上清を配合することを特徴とする皮膚外用剤組成物。
- 乳酸菌培養上清が、更に、難溶性または不溶性の炭酸塩、またはタルクを上清に添加処理することにより得られたものである請求項第5項記載の皮膚外用剤組成物。
- 乳を主成分とする培地に乳酸菌を接種した後、当該培地を不活性気体の置換下培養し、得られた乳酸菌培養物から上清を分離することを特徴とする乳酸菌培養上清の香気成分の低減方法。
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