JP4508470B2 - インクジェット記録用紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高光沢性、高耐久性でしかも優れたインクジェツト適性を持つインクジェット用記録用紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録は、水性インクを用いた非接触型の記録方式であり、近年その高速性、低騒音性、多色印字の容易性、記録パターンの融通性が大きいこと及び現像、定着が不要であること等を特徴としており、漢字を含むカラー図形情報のハードコピー装置をはじめ、種々の用途において急速に普及している。
さらに近年、インクジェット印字の高速化、高精細化が進み、インクジェット方式により形成される画像は通常の多色印刷、例えばオフセット印刷などによるものに比較して遜色なく、作成部数が少ない場合には通常の製版方式によるものより安価であることから、インクジェット記録方式を単なる記録用途に留めず、多色印刷やカラー写真の分野にまで応用する動きが見られている。また、耐水性の低い染料インクを耐水性や耐光性に優れた顔料インクに変更することで、大型ポスターや屋外看板用途までインクジェットプリンターで対応しようとする動きも見られる。
【0003】
このようなインクジェットプリンター装置の進化に伴い、同時に記録媒体に対してもより高度な特性が要求されるようになっている。
例えば、大型ポスターや屋外看板用途を考慮した場合、記録媒体に水性インク吸収性に加えて、悪天候時でも印字部分が消失しないといった意味での耐水性、加えて風等により媒体が引っ張られた場合でも破れないといった耐久性も要求される。
また、デジタルカメラで撮影した写真を出力するといった写真出力用途を考慮した場合は、水性インク吸収性に加えて、印字物の高級感といった意味から記録媒体に高光沢性が要求される。
【0004】
上記目的のインクジェット用紙としては、パルプ紙やプラスチックフィルム、合成紙の上に高光沢性のインク受容層を設けたインクジェット用紙が開発され、市販化されている。
しかし、上記目的のインクジェット用紙の支持体としてパルプ紙を用いた用紙は、高光沢性のインク受容層を設けることで、高光沢性およびインク吸収性は満足されるものの、支持体が破れやすく媒体の耐久性に大きな問題がある。
また、耐久性が高い支持体としてプラスチックフィルムや合成紙を用いることが提案されているが、支持体に水性インク吸収性が全くないために、高塗工量のインク受容層を設ける必要があり、コーティング工程を多数回行い、しかも高コストであるという問題があった。
【0005】
上記問題を解決するため本発明者らは、熱可塑性樹脂とジアリルアミン塩及びアルキルジアリルアミン塩より選ばれたアミン塩と非イオン親水性ビニルモノマーとの共重合体よりなる表面処理剤(A)と陰イオン性表面処理剤(B)により処理された無機及び/又は有機微細粉末よりなり、「Japan TAPPI No.51−87」により測定される液体吸収容積が0.5ml/m2 以上の範囲であることを特徴とする多孔性樹脂フィルムが、水系液体の吸収が良好であり、更に表面の水接触角が110°以下の多孔性樹脂フィルムがインクの吐出量が多い場合でも濃度ムラなくインクを吸収することができ、インクジェット等の記録媒体として好適であることを見出した。(特願平11−351889号公報参照)
しかし、上記多孔性樹脂フィルムはインク吸収性は高いものの、インク滲みが発生しやすいことに加え、インク定着性が不十分なために染料インクに対する耐水性も低く、さらに表面光沢性が低いため印字物の見映えという点では今一つであり、インク滲み性、耐水性、表面光沢性という点で改善の余地が残されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高光沢性、高耐久性であり、優れたインクジェットプリンター適性を示す安価なインクジェット用記録用紙の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決することを目的として鋭意研究を行った結果、本発明者らが提案した多孔性樹脂フィルム(特願平11−351889号公報)の上に特定割合のアルミニウム系化合物を含有するインク受容層を備えたインクジェット記録用紙が高光沢性かつ、高耐久性で、しかもインクジェット用インクを滲みを発生せず速やかに吸収することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、多孔性樹脂フィルム上にインク受容層を備えたインクジェット記録用紙において、多孔性樹脂フィルムが、熱可塑性樹脂30〜90重量%と、ジアリルアミン塩またはアルキルジアリルアミン塩(a1)と非イオン親水性ビニルモノマー(a2)との共重合体よりなる表面処理剤(A)及び陰イオン性表面処理剤(B)により表面処理された無機及び/又は有機微細粉末70〜10重量%とを含有し、「Japan TAPPI No.51−87」により測定される液体吸収容積が5〜100ml/m 2 であり、且つインク受容層が、平均粒径1〜10nmの一次粒子が凝集した平均粒径350nm以下の不定形シリカを70〜95重量%およびバインダー樹脂を5〜30%含有し、その表面光沢度(JIS−Z−8741:60度測定)が40%以上であることを特徴とするインクジェット記録用紙である。
【0009】
さらに不定形シリカがカチオン処理シリカであることが好ましい。
また本発明では、インク受容層に、架橋剤を1〜20重量%、インク定着剤を1〜20重量%含有することが好ましい。
【0010】
さらに本発明では、インク受容層の上にさらにトップコート層を設け、かつ表面光沢度(JIS−Z−8741:60度測定)が50%以上であることが好ましい。トップコート層は、350nm以下の無機フィラーを70〜95重量%およびバインダー樹脂を5〜30重量%含有し、さらにインク定着剤を1〜20重量%含有することが好ましい。
また本発明の多孔性樹脂フィルムは、表面光沢度(JIS−Z−8741;60度測定)が20%以上であることが好ましい。
多孔性樹脂フィルムの水に対する平均接触角は110°以下が好ましく、表面及び内部に空孔を有し、特に空孔率が10%以上であることが好ましい。
また、多孔性樹脂フィルムの表面および/または内部空孔の少なくとも一部が、空孔の内部または空孔に接した周囲に無機及び/又は有機微細粉末が存在することが好ましい。
【0011】
また、多孔性樹脂フィルム中の熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。
構成成分の配合割合の好ましい様態としては、熱可塑性樹脂30〜90重量%、表面処理された無機及び/又は有機微細粉末70〜10重量%を含有し、無機及び/又は有機微細粉末100重量部に対して表面処理剤(A)の量が0.01〜10重量部、陰イオン性表面処理剤(B)の量が0.01〜10重量部の範囲であるものである。さらに好ましい様態として多孔性樹脂フィルムが延伸されているものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下において、本発明のインクジェット記録用紙について詳細に説明する。
〔多孔性樹脂フィルム〕
以下において、本発明の多孔性樹脂フィルムおよび記録媒体について詳細に説明する。
本発明の多孔性樹脂フィルムの液体吸収容積は0.5ml/m2 以上、好ましくは5.0ml/m2 、より好ましくは5〜100ml/m2 の範囲である。
液体吸収容積が0.5ml/m2 未満では、インクジェット用インクの吸収が不充分である。また、吸収量を増やすためには多孔性フィルムの厚さも考慮する必要があるので、用途次第で上限は適宜選択される。
【0013】
本発明の多孔性樹脂フィルムの液体吸収容積は、「Japan TAPPI
No.51−87」(紙パルプ技術協会、紙パルプ試験方法No.51−87、ブリストー法)に準拠して測定されるものであり、本発明に於いては吸収時間が2秒以内の測定値を液体吸収容積とする。測定溶媒は水70重量%とエチレングリコール30重量%の混合溶媒を100重量%として着色用染料を加えてなるものを使用して測定されるものである。着色用染料としては、マラカイトグリーン等を使用し、量は混合溶媒を100重量部として、それに加えて2重量部程度であるが、測定に使用する溶媒の表面張力を大きく変化させない範囲であれば、使用する着色用染料の種類及び量は特に制限されない。
【0014】
測定機としては、例えば熊谷理機工業(株)製の液体吸収性試験機などが挙げられる。
また、より短い吸収時間における液体吸収容積がインクジェット用インクの吸収速度が速くなる傾向がある。本発明に於いては40ミリ秒以内の液体吸収容積が0.8ml/m2 以上、より好ましくは1〜500ml/m2 の範囲である。
更に、上述の液体吸収容積の測定に付随して測定される液体吸収速度は、より大きい方が重色部の吸収や乾燥によりよい結果を与える傾向にある。20ミリ秒〜400ミリ秒の間における吸収速度が、一般的には0.02ml/{m2 ・(ms)1/2}以上の範囲であり、より好ましくは、0.1〜100ml/{m2 ・(ms)1/2}以上の範囲である。
【0015】
本発明の多孔性樹脂フィルムの水に対する表面接触角は110°以下、好ましくは0〜100°、より好ましくは0〜90°の範囲である。110°を超える範囲では、インクジェット用インクの浸透が十分でない場合がある。また、インクジェット用インク液滴のフィルム紙面に平行な方向への広がりと、フィルムの厚さ方向への浸透のバランスをはかるという観点から、接触角に適性範囲がある場合があり、インクの種類に応じて適宜選択される。
なお、本発明におけるフィルム表面の水接触角は、市販の接触角計を用い、純水をフィルム表面に滴下して1分後に同接触角計を用いて測定されるものである。1試料にたいして測定を10回行い、1回の測定毎に純水で表面が濡れていない未測定のフィルムに交換して測定される接触角の平均値を水接触角とする。本発明の接触角測定に使用可能な市販の接触角計の例として協和界面化学(株)製、型式CA−Dが挙げられる。
【0016】
また更に、10回の接触角測定における「最大値と最小値との差」が小さいほどインクや水性媒体を使用する液体の吸収がより均一となる傾向となり、印字媒体としてよりよい印字品質を与えるが、一例としては、最大値と最小値との差は40°以内、好ましくは30°以内、より好ましくは20°以内である。
本発明の多孔性樹脂フィルムは表面に微細な空孔を有しており、この空孔により表面に接触した水性インクや水系の液体を吸収する。多孔性フィルム表面の空孔の数や形状、および表面空孔内に無機及び/又は有機微細粉末の少なくとも一部が存在することは、電子顕微鏡観察により知ることができる。
【0017】
多孔性フィルム試料より任意の一部を切り取り、観察試料台に貼り付けて、観察面に金または金−パラジウム等を蒸着し、電子顕微鏡、例えば、(株)日立製作所製の走査型電子顕微鏡S−2400等を使用して観察しやすい任意の倍率にて表面の空孔形状を観察することができ、空孔数を空孔の大きさや空孔形状を知ることができる。
多孔性フィルム表面の単位面積当たりの空孔の数は、1×106 個/m2 以上の範囲であり、水系液体の吸収をより速くするという観点から、好ましくは1×107 個/m2 以上、さらに好ましくは1×108 個/m2 以上である。また、表面強度をより良いレベルとするという観点から、好ましくは1×1015個/m2 以下、より好ましくは1×1012個/m2 以下の範囲である。
【0018】
また、多孔性フィルムの表面付近の空孔形状は、円状、楕円状等様々であるが、それぞれの空孔の最大径(L)とそれに直角な方向の最大の径(M)を測定して平均したもの[(L+M)/2]をそれぞれの空孔の平均直径とする。少なくとも15個の表面空孔につき繰り返して測定し、その平均値を本発明の多孔性フィルムの表面の空孔の平均直径とする。
少なくとも20個の表面空孔につき繰り返して測定し、その平均値を平均直径とする。より良いレベルの液体吸収性を得るという観点から、平均直径は0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは1μm以上である。多孔性フィルムの表面強度をより良いレベルとするためには、平均直径は50μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下である。
【0019】
表面やその付近の空孔のうち、その少なくとも一部、好ましくは約30%以上の数のものが、その空孔の内部や空孔に接した周囲に無機及び/又は有機の微細粉末が存在することが好ましく、その数が多いほど吸収能力は向上する傾向となる。
本発明の多孔性樹脂フィルムは内部に微細な空孔を有する多孔性構造を有しており、水性インクの吸収乾燥性をよりよいレベルとするという関連から、その空孔率は10%以上であり、好ましくは20〜75%であり、より好ましくは30〜65%の範囲である。空孔率が75%以下であれば、フィルムの材料強度が良いレベルとなる。
【0020】
また、内部の空孔のうち、その少なくとも一部のものが、その空孔の内部や空孔に接した周囲に無機及び/又は有機の微細粉末があることが好ましく、その数が多いほど吸収能力は向上する傾向となる。
内部に空孔があることおよび、内部空孔内に無機及び/又は有機微細粉末の少なくとも一部が存在することは、断面の電子顕微鏡観察により確かめることができる。
【0021】
なお、本発明における空孔率は、次式で示される空孔率、または、断面の電子顕微鏡写真観察した領域に空孔が占める面積割合(%)を示す。
【式1】
【0022】
具体的には、多孔性樹脂フィルムをエポキシ樹脂で包埋して固化させた後、ミクロトームを用いて例えばフィルムの厚さ方向に対して平行かつ面方向に垂直な切断面を作製し、この切断面をメタライジングした後、走査型電子顕微鏡で観察しやすい任意の倍率、例えば500倍乃至2000倍に拡大して観察することができる。一例として、観察した領域を写真等に撮影し、空孔をトレーシングフィルムにトレースし、塗りつぶした図を画像解析装置(ニレコ(株)製:型式ルーゼックスIID)で画像処理を行い、空孔の面積率を求めて空孔率とすることもできる。また、本発明の多孔性樹脂フィルムを表面に有する積層体の場合は、該積層体及びこれから本発明の多孔性樹脂フィルム層を取り除いた部分の厚さと坪量(g/m2 )より本発明の多孔性樹脂フィルム層の厚さと坪量を算出し、これより密度(ρ1 )を求め、さらに構成成分の組成より非空孔部分の真密度(ρ0 )を求めて上記の式により求めることもできる。
【0023】
さらに、内部空孔の形状やその寸法は、走査型電子顕微鏡で観察しやすい任意の倍率、例えば500倍または2000倍に拡大して観察する事ができる。内部空孔の寸法は、少なくとも10個の内部空孔の面方向の寸法と厚さ方向の寸法を測定してそれぞれを平均したものとする。
多孔性フィルムの空孔の面方向の平均寸法は0.1〜1000μm、好ましくは1〜500μmの範囲である。多孔性フィルムの機械的強度をよりよいレベルにするという観点から、空孔のフィルムの面方向の最大寸法は1000μm以下が良い。また、より高いレベルの水系液体吸収性を得るという観点からフィルムの面方向の最大寸法は、0.1μm以上が好ましい。
多孔性フィルムの空孔の厚さ方向の平均寸法は、通常0.01〜50μm、好ましく、0.1〜10μmの範囲である。水系液体の吸収向上には、厚さ方向の寸法が大きい方が良いが、フィルムの適度な機械的強度を得るという観点から、用途に応じて上限が選定可能である。
【0024】
<多孔性樹脂フィルムの組成、製造法>
本発明の多孔性樹脂フィルムは、構成成分として、熱可塑性樹脂と表面処理された無機及び/又は有機微細粉末の組合せよりなるものである。
本発明の多孔性樹脂フィルムにおいて使用される熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂、あるいはプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリメチル−1−ペンテン、エチレン−環状オレフィン共重合体、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10、ナイロン−6,12、ナイロン−6,T等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやその共重合体、ポリエチレンナフタレート、脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは2種以上混合して用いることもできる。
【0025】
これらの中でも、耐薬品性や低比重、コスト等の観点より、好ましくは、エチレン系樹脂、あるいはプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂であり、より好ましくは、プロピレン系樹脂である。プロピレン系樹脂としては、プロピレンを単独重合させたアイソタクティック重合体またはシンジオタクティック重合体を例示することができる。また、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンとプロピレンとを共重合体させた、様々な立体規則性を有するポリプロピレンを主成分とする共重合体を使用することもできる。共重合体は2元系でも3元系以上の多元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。プロピレン系樹脂には、プロピレン単独重合体よりも融点が低い樹脂を2〜25重量%配合して使用することが好ましい。そのような融点が低い樹脂として、高密度または低密度のポリエチレンを例示することができる。
【0026】
本発明の多孔性樹脂フィルムにおいて使用される無機及び/又は有機微細粉末の種類は特に制限はないが、その具体例として、以下のものが挙げられる。
無機微細粉末としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、凝集型軽質炭酸カルシウム、種々の細孔容積を有するシリカ、ゼオライト、クレー、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、珪藻土、酸化珪素、シリカなど水酸基含有無機微細粉末の核の周囲にアルミニウム酸化物または水酸化物を有する複合無機微細粉末等を例示することができる。
【0027】
有機微細粉末としては、空孔形成の目的より、上述の非親水性熱可塑性樹脂として使用する熱可塑性樹脂よりも融点またはガラス転移点が高くて非相溶性のものより選択される。具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの重合体や共重合体、メラミン樹脂、ポリエチレンサルファイト、ポリイミド、ボリエチルエーテルケトン、ポリフエニレンサルファイド等を例示することができる。なかでも、非親水性熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン系樹脂を使用する場合には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレンより得ればれるものが好ましい。
【0028】
無機及び/又は有機の微細粉末のうちで、燃焼時の発生熱量が少ないという観点から、より好ましくは無機微細粉末である。なかでも重質炭酸カルシウム、クレー、珪藻土を使用すれば、安価であり、延伸により成形する場合には、空孔形成性がよいために好ましい。
本発明に使用する無機及び/又は有機微細粉末の平均粒子径は、好ましくは0.01〜20μm、より好ましくは2〜10μmの範囲である。水系溶媒や水系インクの吸収性を向上させるという観点から微細粉末の粒子径は大きい方が良く、0.01μm以上が良い。また、延伸により内部に空孔を発生させて吸収性を向上させる場合に、延伸時のシート切れや表面層の強度低下等のトラブルを発生させにくくするという観点から、20μm以下が好ましい。
【0029】
本発明に使用する表面処理された無機及び/又は有機の微細粉末の粒子径は、一例として粒子計測装置、例えば、レーザー回折式粒子計測装置「マイクロトラック」((株)日機装製、商品名)により測定した累積で50%にあたる粒子径(累積50%粒径)により測定することができる。また、溶融混練と分散により非親水性樹脂や親水性樹脂中に分散した微細粉末の粒子径は、多孔性フィルム断面の電子顕微鏡観察により粒子の少なくとも20個を測定してその粒子径累積を求め、平均値とすることも可能である。
本発明に使用する無機及び/又は有機微細粉末について、種々の比表面積や吸油量のものが使用可能である。比表面積はBET法により測定され、一例として0.1〜1000m2 /g、より好ましくは0.2〜500m2 /gの範囲である。
【0030】
比表面積が大きい無機及び/又は有機の微細粉末を使用すると水系溶媒やインクの吸収がより良くなる場合があり、一例として、吸油量(JIS−K−5101−1991等)が1〜300ml/100g、好ましくは10〜200ml/100gの範囲である。
本発明の多孔性樹脂フィルムに使用する微細粉末は、上記の中から1種を選択してこれを単独で使用してもよいし、2種以上を選択して組み合わせて使用してもよい。2種以上を組み合わせて使用する場合には、有機微細粉末と無機微細粉末の組み合せであってもよい。
【0031】
本発明の処理剤(A)は、ジアリルアミン塩またはアルキルジアリルアミン塩(a1)と非イオン親水性ビニルモノマー(a2)との共重合体である。
以下、処理剤(A)における「塩」とは、塩を形成する陰イオンが塩化物イオン、臭化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、メタンスルホン酸イオンより選ばれるものを示す。
【0032】
(a1)の具体例としては、ジアリルアミン塩、炭素数1〜4の範囲のアルキルジアリルアミン塩及びジアルキルジアリルアミン塩、すなわちメチルジアリルアミン塩やエチルジアリルアミン塩、ジメチルジアリルアミン塩、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、メタクリロイルオキシエチルジメチルエチルアンモニウムやアクリロイルオキシエチルジメチルエチルアンモニウムのクロライド、ブロマイド、メトサルフェート、またはエトサルフェート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートやN,N−ジメチルアミノエチルアクリレートをエピクロロヒドリン、グリシドール、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライドなどのエポキシ化合物等でアルキル化して得られる4級アンモニウム塩、が挙げられ、これらのなかでも、好ましくはジアリルアミン塩、メチルジアリルアミン塩及びジメチルジアリルアミン塩である。
【0033】
(a2)の具体例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステルであり、これらのなかでも好ましくは、アクリルアミド、メタクリルアミドである。
(a1)と(a2)の共重合比は任意であるが、好ましい範囲として、(a1)は10〜99モル%、より好ましくは50〜97モル%、さらに好ましくは65〜95モル%であり、(a2)は90〜1モル%、より好ましくは50〜3モル%、さらに好ましくは35〜3モル%である。
【0034】
処理剤(A)は、上記モノマー混合物を水性媒体中で、過硫酸アンモニウムや2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド等に例示される開始剤を使用して、40℃〜100℃、一例として50〜80℃、にて2時間〜24時間反応させて得ることができる。該重合体は、特開平5−263010号公報、特開平7−300568号公報等、に記載された方法により製造することができ、本発明の目的を達成するために使用可能である。特開昭57−48340号公報、特開昭63−235377号公報等に記載されたものの一部を使用することもできる。
これらのなかで、好ましくはジアリルアミンまたはジアリルジメチルアミンの塩酸塩、硫酸塩とメタクリルアミド、アクリルアミドの共重合体である。
【0035】
該重合体の分子量は、1N塩化ナトリウム水溶液中の25℃での極限粘度で示すと、通常0.05〜3、好ましくは0.1〜0.7、特に好ましくは0.1〜0.45の範囲である。
また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される重量平均分子量で表すと、約5000〜950000、好ましくは、10000〜150000、更に好ましくは10000〜80000の範囲である。
上記範囲にある表面処理剤は、本発明の多孔性フィルムの水系溶媒や水系インクの吸収性を向上させる効果が大きい。
【0036】
陰イオン性表面処理剤(B)は、分子内に陰イオン性官能基を有するものであり、その具体例として以下のものが挙げられ、本発明の効果を得るよう適宜選択される。以下、陰イオン性表面処理剤(B)は「処理剤(B)」と略記する。
なお、処理剤(B)における「塩」とは、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、1〜4級アンモニウム塩、1〜4級ホスホニウム塩を示し、塩として好ましいのはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、4級アンモニウム塩、より好ましくは、ナトリウム塩またはカリウム塩である。
処理剤(B)の具体例として、(B1)炭素数4〜40の範囲の炭化水素基を有するスルホン酸塩、(B2)炭素数4〜40の範囲の炭化水素基を有するリン酸エステル塩、炭素数4〜40の範囲の高級アルコールのリン酸モノまたはジエステルの塩、炭素数4〜40の範囲の高級アルコールの酸化エチレン付加物のリン酸エステルの塩、(B3)炭素数4〜40のの範囲の炭化水素基を有するアルキルベタインやアルキルスルホベタイン、などが挙げられる。
【0037】
(B1)炭素数4〜40の範囲の炭化水素基を有するスルホン酸塩としては、炭素数4〜40、好ましくは8〜20の範囲の直鎖または分岐や環状構造を有する炭化水素基を有するスルホン酸塩、スルホアルカンカルボン酸塩であり、具体的には、炭素数4〜40、好ましくは8〜20の範囲のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸の塩、炭素数4〜30、好ましくは8〜20の範囲の直鎖または分岐や環状構造を有するアルキルナフタレンスルホン酸の塩、炭素数1〜30、好ましくは、8〜20の範囲の直鎖または分岐構造を有するアルキル基を有するジフェニルエーテルやビフェニルのスルホン酸塩;炭素数1〜30、好ましくは8〜20の範囲の直鎖または分岐や環状構造を有するアルカンスルホン酸の塩;炭素数1〜30、好ましくは8〜20の範囲のアルキル硫酸エステルの塩;スルホアルカンカルボン酸エステルの塩;炭素数8〜30、好ましくは10〜20の範囲のアルキルアルコールのアルキレンオキシド付加物のスルホン酸塩などが挙げられる。
【0038】
これらの具体例を挙げると、アルカンスルホン酸や芳香族スルホン酸、すなわち、オクタンスルホン酸塩、ドデカンスルホン酸塩、ヘキサデカンスルホン酸塩、オクタデカンスルホン酸塩、1−または2−ドデシルベンゼンスルホン酸塩、1−または2−ヘキサデシルベンゼンスルホン酸塩、1−または2−オクタデシルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルナフタレンスルホン酸塩の種々の異性体、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩、オクチルビフェニルスルホン酸塩の種々の異性体、ドデシルビフェニルスルホン酸塩、ドデシルフェノキシベンゼンスルホン酸塩の種々の異性体、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ドデシルリグニンスルホン酸塩、;アルキル硫酸エステル塩、すなわち、ドデシル硫酸塩、ヘキサデシル硫酸塩、;スルホアルカンカルボン酸の塩、すなわち、スルホコハク酸のジアルキルエステルであり、アルキル基が炭素数1〜30、好ましくは4〜20の範囲の直鎖または分岐や環状構造を有するもの、より具体的には、スルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)の塩、N−メチル−N−(2−スルホエチル)アルキルアミドの塩(アルキル基は炭素数1〜30、好ましくは12〜18)、例えば、N−メチルタウリンとオレイン酸を由来とするアミド化合物、炭素数1〜30、好ましくは10〜18のカルボン酸の2−スルホエチルエステルの塩;ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム;ポリオキシエチレンラウリル硫酸塩、ポリオキシエチレンセチル硫酸塩;炭素数8〜30、好ましくは10〜20の範囲のアルキルアルコールのアルキレンオキシド付加物のスルホン酸塩の例として、ラウリルアルコールのエチレンオキシド付加物の硫酸エステル塩、セチルアルコールのエチレンオキシド付加物の硫酸エステル塩、ステアリルアルコールのエチレンオキシド付加物の硫酸エステル塩、などが挙げられる。
【0039】
(B2)炭素数4〜40の範囲の直鎖または分岐や環状構造を有する炭化水素基を有するリン酸モノ−、又はジ−エステル塩またはリン酸トリエステル、好ましくは、炭素数8〜20の範囲の直鎖または分岐や環状構造を有する炭化水素基を有するリン酸モノ−、又はジ−エステル塩やリン酸トリエステルの具体例としては、リン酸ドデシルのジナトリウム塩またはジカリウム塩、リン酸ヘキサデシルのジナトリウム塩またはジカリウム塩、リン酸ジドデシルのジナトリウム塩またはカリウム塩、リン酸ジヘキサデシルのナトリウム塩またはカリウム塩、ドデシルアルコールの酸化エチレン付加物のリン酸トリエステル等が挙げられる。
【0040】
(B3)炭素数4〜30、好ましくは10〜20の範囲炭化水素基を有するアルキルベタインやアルキルスルホベタインの具体例としては、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ドデシルジメチル(3−スルホプロピル)アンモニウムインナーソルト、セチルジメチル(3−スルホプロピル)アンモニウムインナーソルト、ステアリルジメチル(3−スルホプロピル)アンモニウムインナーソルト、2−オクチル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、2−ラウリル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどが挙げられる。
これらのうちで、好ましくは(B1)であり、より好ましくは、炭素数10〜20の範囲のアルカンスルホン酸の塩、炭素数10〜20の範囲のアルキル基を有する芳香属スルホン酸の塩、炭素数10〜20の範囲のアルキルアルコールのアルキレンオキサイド付加物の硫酸エステル塩、より選ばれるものである。
【0041】
〔無機及び/又は有機微細粉末の表面処理方法〕
本発明においては、第一段階で処理剤(A)を無機及び/又は有機の微細粉末の表面に付着させて表面処理した後、次いで第二段階としてその表面に処理剤(B)を付着させて表面処理を行うものである。表面処理方法としては、公知の種々の方法が適用でき、特に制限されず、混合装置や混合の温度や時間も使用する成分の性状や物性に応じて適宜選択される。使用される種々の混合機のL/D(軸長/軸径)や攪拌翼の形状、センダン速度、比エネルギー、滞留時間、処理時間、処理温度等のものが使用成分の性状に合わせて選択可能である。
【0042】
第一段階の処理方法として、(I)上記処理剤(A)を、粉体、液体、ペースト状、水や有機溶剤などの溶媒等に溶解または分散させた状態、あるいは、処理剤(A)を製造する際に溶媒を使用する場合には溶媒を除去せずあるい一部を除去し、適当な濃度とした処理剤(A)の溶液や分散液の状態で、微細粉末に対して添加し、低速または高速で攪拌して混合し、微細粉末の周囲に付着させる方法、(II)水や有機溶剤などの溶媒中に懸濁させた微細粉末に処理剤(A)を添加し、またはその逆に溶媒中に処理剤(A)を溶解したのち微細粉末を添加し、両者を混合したのち溶媒を除去乾燥して微細粉末の周囲に付着させる方法、(III)乾式または湿式の粉砕法により製造される微細粉末の場合には、粉砕前あるいは粉砕の途中で処理剤(A)を添加し、粉砕の過程で微細粉末の周囲に付着させる方法、(IV)必要量の処理剤(A)を、使用する微細粉末の一部に対して必要濃度より高い濃度で添加して微細粉末と処理剤(A)よりなるマスターバッチを調製し、残りの微細粉末と混合し、微細粉末の周囲に付着させて熱可塑性樹脂と混合する方法、(V)重合により合成される有機微細粉末の場合には、重合の前や途中、または後に、微細粉末に対して、処理剤(A)を粉体、液体、ペースト状、あるいは、溶媒に溶解または分散させた状態で添加し、有機微細粉末の周囲に付着させる方法、(VI)溶融混練により熱可塑性樹脂連続相中に分散させる有機フィラーの場合には、溶融混練時に熱可塑性樹脂や未分散の有機フィラーまたは熱可塑性樹脂と未分散のフィラーの混合物に表面処理剤を添加して溶融混練して有機フィラーを微細に分散させる過程で有機フィラーの周囲に表面処理剤を付着させる方法、などが挙げられる。
【0043】
これらのなかで湿式粉砕により製造する無機微細粉末、例えば炭酸カルシウム粒子の場合には、粒径が10〜50μmと比較的大きい重質炭酸カルシウム粒子100重量部に対して必要量の処理剤(A)の存在下、水性媒体中で湿式粉砕し、所望の粒子径とし、次いで乾燥して得られたものを、さらに処理剤(B)を用いて、水性媒体中で処理し、次いで乾燥して得ることができる。
原料の炭酸カルシウムとしては、乾式粉砕により得た重質炭酸カルシウム粒子、分級、篩い分けされた炭酸カルシウム粒子等が使用される。この炭酸カルシウム粒子を水性媒体中に分散させる。
【0044】
上記処理剤(A)の存在下で重質炭酸カルシウムを湿式粉砕する。具体的には、炭酸カルシウム/水性媒体(好ましくは水)との重量比が70/30〜30/70、好ましくは60/40〜40/60の範囲となるように炭酸カルシウムに水性媒体を加え、ここにカチオン性共重合体分散剤を固形分として、炭酸カルシウム100重量部当たり0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部添加し、常法により湿式粉砕する。さらには、上記範囲の量となる処理剤(A)を予め溶解してなる水性媒体を準備し、該水性媒体を炭酸カルシウムと混合し、常法により湿式粉砕してもよい。
湿式粉砕はバッチ式でも、連続式でもよく、サンドミル、アトライター、ボールミルなどの粉砕装置を使用したミル等を使用するのが好ましい。このように湿式粉砕することにより、平均粒径が2〜20μm、好ましくは2.2〜5μmの炭酸カルシウム粒子が得られる。
【0045】
次いで湿式粉砕品を乾燥するが、乾燥前に、分級工程を設けて、350メッシュオンといった粗粉を除くことができる。乾燥は、熱風乾燥、粉噴乾燥など公知の方法により行うことができるが、媒体流動乾燥により行うのが好ましい。
媒体流動乾燥とは、乾燥塔内で熱風(80〜150℃)により流動化状態にある媒体粒子群(流動層)中にスラリー状物質を供給し、供給されたスラリー状物質は、活発に流動化している媒体粒子の表面に膜状に付着しながら流動層内に分散され、熱風による乾燥作用を受けることにより各種物質を乾燥する方法である。
このような媒体流動乾燥は、例えば(株)奈良機械製作所製の媒体流動乾燥装置「メディア スラリー ドライヤー」等を用いて容易に行うことができる。この媒体流動乾燥を用いると乾燥と凝集粒子の解砕(1次粒子化の除去)が同時に行われるので好ましい。
【0046】
この方法で得られた湿式粉砕スラリーを媒体流動乾燥すると、粗粉量が極めて少ない炭酸カルシウムが得られる。しかしながら、媒体流動乾燥後、所望の方法で粒子の粉砕と分級とを行うことも有効である。一方、媒体流動乾燥の代わりに、通常の熱風乾燥により湿式粉砕品を乾燥した場合には、得られたケーキを更に所望の方法で粒子の粉砕と分級とを行うのがよい。
この方法により得られた湿式粉砕品の乾燥ケーキは、潰れ易く、容易に炭酸カルシウム微粒子を得ることができる。従って乾燥ケーキを粉砕する工程をわざわざ設ける必要はない。このようにして得られた炭酸カルシウム微粒子を、更に処理剤(B)で、水性媒体中で処理する。
【0047】
また、処理剤(A)を溶媒に溶解または分散させた状態で、あるいはペースト状で無機及び/又は有機の微細粉末と混合させる場合、混合の温度は微細粉末や表面処理剤の性状により適宜選択可能であるが、一例として、室温〜120℃、乾燥が必要な場合の温度は40〜120℃、好ましくは80〜120℃の範囲である。また、必要に応じて減圧乾燥や、乾燥気体または熱風の使用も可能である。
処理剤(B)による処理は、上記の湿式粉砕の後に行う方法、微細粉末を水性溶媒中(好ましくは水)に分散させた状態で処理剤(A)、次いで処理剤(B)にて処理する方法、処理剤(A)にて表面処理された微細粉末を熱可塑性樹脂と混合または溶融混練する際に同時に加えて処理する方法などが挙げられる。
これらのなかでも、好ましくは、微細粒子の湿式粉砕工程で(A)を添加し、次いで処理剤(B)にて処理する方法、微細粒子を水中に分散させた状態で処理剤(A)にて処理し、次いで処理剤(B)にて処理する方法、及び、処理剤(A)にて表面処理された微細粉末を熱可塑性樹脂と混合または溶融混練する際に同時に加えて処理する方法である。
【0048】
〔構成成分の量比〕
本発明の多孔性樹脂フィルムを構成する成分の好ましい量比範囲は、熱可塑性樹脂30〜90重量%、表面処理された無機及び/又は有機微細粉末70〜10重量%である。
熱可塑性樹脂のより好ましい範囲は、30〜60重量%、さらに好ましくは35〜55重量%である。フィルムの強度をより高くするという観点から30重量以上であり、水系の溶媒やインクの吸収性をより高くするためには、90重量%以下である。
表面処理された有機または無機微細粉末の量は、一例として70〜10重量%であるが、無機微細粉末の場合には、好ましくは70〜40重量%、より好ましくは65〜45重量%の範囲である。空孔を増やすためには微細粉末の量が多い方がよいが、多孔性樹脂フィルムの表面の強度を良いレベルとするという目的のためには70重量%以下である。有機微細粉末の場合には比重が小さいものが多く、好ましくは10〜50重量%、より好ましくは15〜40重量%である。
【0049】
処理剤(A)の使用量は、本発明の多孔性樹脂フィルムの用途により異なるが、通常無機及び/又は有機微細粉末100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.04〜5重量部、より好ましくは0.07〜2重量部の範囲である。水系溶媒や、水系インクの吸収性を高めるという観点から0.01重量部以上が良い。10重量部超では、表面処理剤の効果が頭打ちとなる。
処理剤(B)の使用量は、本発明の多孔性樹脂フィルムの用途により異なるが、通常無機ないし有機微細粉末100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部、より好ましく0.5〜4重量部の範囲である。水系溶媒や、水系インクの吸収性を高めるという観点から0.01重量部以上が良い。10重量部超では、表面処理剤の効果が頭打ちとなる。
【0050】
〔任意成分〕
これらの微細粉末を熱可塑性樹脂中に配合混練する際に、必要に応じて分散剤、酸化防止剤、相溶化剤、難燃剤、紫外線安定剤、着色顔料等を添加することができる。また、本発明の多孔性樹脂フィルムを耐久資材として使用する場合には、酸化防止剤や紫外線安定剤等を添加しておくのが好ましい。
本発明の多孔性樹脂フィルムの構成成分の混合方法としては、公知の種々の方法が適用でき、特に制限されず、混合の温度や時間も使用する成分の性状に応じて適宜選択される。溶剤に溶解または分散させた状態での混合や、ロール混練、溶融混練法が挙げられるが、溶融混練法は生産効率が良く好ましい。粉体やペレットの状態の熱可塑性樹脂や処理剤(A)により表面処理された無機及び/又は有機の微細粉末及び、処理剤(B)をヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサー等で混合した後、一軸や二軸の混練機にて溶融混練し、ストランド状に押し出してカッティングし、ペレットとする方法や、ストランドダイより水中に押し出してダイ先端に取り付けられた回転刃をでカッティングする方法が挙げられる。使用される一軸や二軸の混練機としては、種々のL/D(軸長/軸径)や、センダン速度、比エネルギー、滞留時間、温度等のものが使用成分の性状に合わせて選択可能である。
【0051】
本発明の多孔性樹脂フィルムおよび記録媒体は、当業者に公知の種々の方法を組み合わせることによって製造することができる。いかなる方法により製造された多孔性樹脂フィルムや記録媒体であっても、本発明の条件を満たす多孔性樹脂フィルムを利用するものである限り本発明の範囲内に包含される。
液体吸収容積が0.5ml/m2 以上である本発明の多孔性樹脂フィルムの製造法としては、公知の種々のフィルム製造技術やそれらの組合せが可能である。例えば、延伸による空孔発生を利用した延伸フィルム法や、圧延時に空孔を発生させる圧延法やカレンダー成形法、発泡剤を使用する発泡法、空孔含有粒子を使用する方法、溶剤抽出法、混合成分を溶解抽出する方法などが挙げられる。これらのうちで、好ましくは、延伸フィルム法である。
【0052】
延伸を行うときには、必ずしも本発明の多孔性樹脂フィルムだけを延伸しなくてもよい。例えば、本発明の多孔性樹脂フィルムを基材層の上に形成した記録媒体を最終的に製造しようとする場合には、無延伸の多孔性樹脂フィルムと基材層とを積層したうえでまとめて延伸しても構わない。あらかじめ積層してまとめて延伸すれば、別個に延伸して積層する場合に比べて簡便でコストも安くなる。また、本発明の多孔性樹脂フィルムと基材層に形成される空孔の制御もより容易になる。特に記録媒体として利用する場合には、本発明の多孔性樹脂フィルムが基材層よりも多くの空孔が形成されるように制御し、多孔性樹脂フィルムがインク吸収性を改善し得る層として有効に機能させることが好ましい。
【0053】
延伸には、公知の種々の方法を使用することができる。延伸の温度は、非結晶樹脂の場合は使用する熱可塑性樹脂のガラス転移点温度以上、結晶性樹脂の場合には非結晶部分のガラス転移点温度以上から結晶部の融点以下の熱可塑性樹脂に好適な温度範囲内で行うことができる。具体的には、ロール群の周速差を利用した縦延伸、テンターオーブンを使用した横延伸、圧延、チューブ状フィルムにマンドレルを使用したインフレーション延伸、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸などにより延伸することができる。
【0054】
延伸倍率は特に限定されず、本発明の多孔性樹脂フィルムの使用目的と用いる熱可塑性樹脂の特性等を考慮して適宜決定する。例えば、熱可塑性樹脂としてプロピレン単独重合体またはその共重合体を使用するときには、一方向に延伸する場合は約1.2〜12倍、好ましくは2〜10倍であり、二軸延伸の場合は面積倍率で1.5〜60倍、好ましくは10〜50倍である。その他の熱可塑性樹脂を使用するときには、一方向に延伸する場合は1.2〜10倍、好ましくは2〜7倍であり、二軸延伸の場合には面積倍率で1.5〜20倍、好ましくは4〜12倍である。
さらに、必要に応じて高温での熱処理を施すことができる。延伸温度は使用する熱可塑性樹脂の融点より2〜60℃低い温度であり、延伸速度は10〜350m/分であるのが好ましい。
【0055】
本発明の多孔性樹脂フィルムの厚さは特に制限されないが、水性溶媒や水性インクの吸収をより高めるという観点から、例えば、5μm以上、好ましくは25μm以上、より好ましくは30μm以上である。上限は、必要とされる水系液体の吸収量により適宜選定されるが、一例として1000μm以下、好ましくは500μm、より好ましくは300μm以下である。
本発明の多孔性樹脂フィルムは、そのまま使用に供してもよいし、さらに別の熱可塑性フィルム、ラミネート紙、パルプ紙、不織布、布等に積層して使用してもよい。さらに、積層する別の熱可塑性フィルムとしては、例えばポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリオレフィンフィルム等の透明または不透明なフィルムに積層することができる。
【0056】
このように、本発明の多孔性樹脂フィルムと他のフィルムとを積層することによって形成される記録媒体は、例えば全体の厚さを50μm〜1mm程度にすることができる。
上記多孔性樹脂フィルムやこれを使用する積層体の表面には、必要に応じて表面酸化処理を施すことができる。表面酸化処理により表面の親水性や吸収性の向上、または、インク定着剤やインク受理層の塗工性の向上や基材との密着向上がはかれるケースがある。表面酸化処理の具体例としては、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、オゾン処理より選ばれた処理方法で、好ましくはコロナ処理、フレーム処理であり、より好ましくはコロナ処理である。
【0057】
処理量はコロナ処理の場合、600〜12,000J/m2 (10〜200W・分/m2 )、好ましくは1200〜9,000J/m2 (20〜150W・分/m2 )である。コロナ放電処理の効果を十分に得るには、600J/m2 (10W・分/m2 )以上であり、12,000J/m2 (200W・分/m2 )超では処理の効果が頭打ちとなるので12,000J/m2 (200W・分/m2 )以下で十分である。フレーム処理の場合、8,000〜200,000J/m2 、好ましくは20,000〜100,000J/m2 が用いられる。フレーム処理の効果を明確に得るには、8,000J/m2 以上であり、200,000J/m2 超では処理の効果が頭打ちとなるので200,000J/m2 以下で十分である。
【0058】
〔インク受容層〕
本発明では、インク吸収性に加えて高い光沢性を得るため表面光沢度(JIS−Z−8741:60度測定)が40%以上のインク受容層を設ける。
<無機フィラー>
インク受容層はインク吸収性の向上および高光沢性の実現といった目的で、平均粒径が350nm以下の無機フィラーを70〜95重量%、バインダー樹脂を5〜30重量%含有する。
平均粒径が350nmを上回る無機フィラーを使用した場合は、得られたインク受容層の表面光沢性が大きく低下するので好ましくない。
【0059】
本発明で使用する無機フィラーは、球状コロイダルシリカ、球状コロイダル炭酸カルシウム、球状酸化アルミニウム、不定形シリカ、パールネックレス状コロイダルシリカ、繊維状酸化アルミニウムおよびその水和物、板状酸化アルミニウムおよびその水和物等が挙げられる。
上記無機フィラーの中で、インクジェット用インクの吸収性や低コストであるという点から、不定形シリカを使用することが好ましく、特に中でも高光沢のインク受容層を得るためには、平均粒径1〜10nmの一次粒子が凝集した不定形シリカであることが好ましい。
【0060】
不定形シリカは、平均粒径が1〜50nmである一次粒子が凝集したような形態をとるが、一次粒子の平均粒径が1〜10nmの範囲にある不定形シリカを使用することが、塗工層の光沢が高く、加えてインク吸収性も高いので好ましい。本発明の範囲にある不定形シリカが高インク吸収性である理由は明らかではないが、一次粒子の平均粒径が1〜10nmの範囲にある不定形シリカは、一次粒子の隙間が大きいので高いインク吸収性を示すと推定される。
造法により、乾式法シリカと湿式法シリカに大別されるが、本発明では、一次粒粒子の平均粒径が1〜10nmでありかつ凝集体の平均粒径が350nm以下の不定形シリカであれば、いずれの方法で製造されたシリカでも使用することができる。
【0061】
また本発明では、市販されている平均粒径2〜10umの不定形シリカを粉砕して、平均粒径350nm以下の範囲に調製した不定形シリカも使用することができる。不定形シリカの粉砕方法は特に限定しないが、品質の均一性、低コストで粉砕可能であるという点から粉砕器を使用した機械的粉砕法が好ましい。また粉砕は、シリカ固体を直接粉砕してもよいし、水中へのシリカ分散と同時に粉砕してもかまわない。
粉砕器の具体例としては、超音波粉砕器、ジェットミル、サンドグラインダー、ローラーミル、高速回転ミル等が挙げられる。
【0062】
さらに、本発明で使用する不定形シリカは、アニオン性であるインクジェット用インクの定着性向上のために、不定形シリカの表面をカチオン処理することが好ましい。
カチオン処理とは、シリカ粉砕時もしくはシリカ製造時にシリカ表面をカチオン性化合物でシリカ表面を被覆させる処理のことであり、カチオン性化合物としては、無機金属塩やカチオン性カップリング剤やカチオン性ポリマー等が挙げられる。
無機金属塩の具体例としては、酸化アルミニウム水和物、酸化ジルコニウム水和物、酸化スズ水和物等の無機金属酸化物水和物が、また水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、酢酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化スズ等の水溶性無機金属塩等が挙げられる。
【0063】
またカチオン性カップリング剤の具体例としては、アミノ基含有シランカップリング剤、4級アンモニウム基含有シランカップリング剤等のカチオン性シランカップリング剤、およびアミノ基含有ジルコニウムカップリング剤、4級アンモニウム基含有ジルコニウムカップリング剤等のカチオン性ジルコニウムカップリング剤、およびアミノ基含有チタニウムカップリング剤、4級アンモニウム基含有チタニウムカップリング剤等のカチオン性チタンカップリング剤、およびアミノ基含有グリシジルエーテル、4級アンモニウム基含有グリシジルエーテル等のカチオン性グリシジルカップリング剤が挙げられる。
【0064】
カチオン性ポリマーの具体例としては、ポリエチレンイミンやポリプロピレンポリアミン等のポリアルキレンポリアミン類、またはその誘導体、アミノ基や4級アンモニウム基含有アクリル系ポリマー、アミノ基や4級アンモニウム塩含有ポリビニルアルコール等が挙げられる。
なお、本発明でインク受容層に使用する無機フィラーの平均粒子径および一次粒子径は、前述の多孔性基材の無機ないしは有機の微細粉末の粒子径の測定と同様の装置で測定することが可能である。
【0065】
<バインダー樹脂>
本発明において、インク受容層には、無機フィラーに加えて、接着剤としてバインダー樹脂が使用される。無機フィラーとバインダー樹脂の配合割合は、無機フィラーが70〜95重量%、バインダー樹脂が5〜30重量%であることが好ましい。
無機フィラーの割合が95重量%を上回る場合は、多孔性樹脂フィルムとの接着性が大きく低下し、また70重量%を下回る場合は、インク吸収性が大きく低下する。
【0066】
バインダー樹脂の具体例としては、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、澱粉等の水溶性樹脂、並びにウレタン系樹脂、エステル系樹脂、エポキシ系樹脂、エチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体樹脂、アクリル酸系樹脂、メタクリル酸系樹脂、ポリブチラール系樹脂、シリコン樹脂、ニトロセルロース樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、スチレン−ブタジエン系共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン系共重合体樹脂などのような非水溶性樹脂樹脂を用いることができる。上記水溶性樹脂は水溶液として、非水溶性樹脂は溶液、エマルジョン、又は、ラテックスとして用いられる。
【0067】
上記バインダー樹脂の中でも、無機フィラーとの混和性やインク吸収性といった点からポリビニルアルコールが好ましい。特にその中でも塗工膜強度の点から、重合度3000以上、ケン化度80−95%のポリビニルアルコールが好ましい。
さらに本発明では、バインダー樹脂の耐水性向上のため、架橋剤をインク受容層の1〜20重量%の範囲で使用することが好ましい。架橋剤の具体例としては、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドポリ尿素−ホルムアルデヒド樹脂、グリオキザール、エポキシ系架橋剤、ポリイソシアネート樹脂、硼酸、硼砂、各種硼酸塩等が挙げられる。
【0068】
加えて本発明ではインク定着性向上のため、インク受容層中にインク定着剤をインク受容層の1〜20重量%の範囲で使用することが好ましい。インク定着剤としては、無機金属塩やカチオン性カップリング剤やカチオン性ポリマー等が挙げられる。
無機金属塩の具体例としては、酸化アルミニウム水和物、酸化ジルコニウム水和物、酸化スズ水和物等の無機金属酸化物水和物が、また水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、酢酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化スズ等の水溶性無機金属塩等が挙げられる。
【0069】
またカチオン性カップリング剤の具体例としては、アミノ基含有シランカップリング剤、4級アンモニウム基含有シランカップリング剤等のカチオン性シランカップリング剤、およびアミノ基含有ジルコニウムカップリング剤、4級アンモニウム基含有ジルコニウムカップリング剤等のカチオン性ジルコニウムカップリング剤、およびアミノ基含有チタニウムカップリング剤、4級アンモニウム基含有チタニウムカップリング剤等のカチオン性チタンカップリング剤、およびアミノ基含有グリシジルエーテル、4級アンモニウム基含有グリシジルエーテル等のカチオン性グリシジルカップリング剤が挙げられる。
カチオン性ポリマーの具体例としては、ポリエチレンイミンやポリプロピレンポリアミン等のポリアルキレンポリアミン類、またはその誘導体、アミノ基や4級アンモニウム基含有アクリル系ポリマー、アミノ基や4級アンモニウム塩含有ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0070】
また、本発明のインク受容層では、必要に応じて一般的に塗工紙で使用される分散剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤という各種助剤を含有させることもできる。
本発明のインク受容層の塗工量は、支持体として使用される多孔性樹脂フィルムの液体吸収容量によって適宜選択されるが、塗工量は5〜30g/m2 であることが好ましい。塗工量が5g/m2 未満であると、光沢性や滲み性、耐水性が不足し、また30g/m2 を上回る場合は、インク吸収量は満足できるものの、インク受容層の表面強度が低下する。
【0071】
〔トップコート層〕
本発明では、光沢性および表面擦過性の向上といった目的で、インク受容層の上にさらに表面光沢度(JIS−Z−8741:60度測定)が50%以上のトップコート層を設けることが好ましい。
本発明のトップコート層は無機フィラーを70〜95重量%、バインダー樹脂を5〜30%含有することが好ましい。無機フィラーおよびバインダー樹脂は、インク受容層で使用した無機フィラーおよびバインダー樹脂と同種類のフィラーおよびバインダーが使用できる。
さらにトップコート層にはインク定着性向上という目的でカチオン性のインク定着剤を1〜20重量%含有させることが好ましい。インク定着剤としては、上記インク受容層に使用したインク定着剤と同種類の定着剤が使用できる。
【0072】
本発明のトップコート層の塗工量は、多孔性樹脂フィルムやインク受容層によって適宜選択されるが、0.1〜5.0g/m2 、好ましくは0.5〜3.0g/m2 であることが好ましい。塗工量が0.1g/m2 未満の場合は、トップコート層の効果が十分発現せず、また5.0g/m2 を上回る場合は効果が飽和する。
本発明のトップコート層には、必要に応じて一般的に塗工紙で使用される分散剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤という各種助剤を含有させることもできる。
【0073】
〔塗工方法〕
上記インク受容層およびトップコート層を多孔性樹脂フィルムに塗工する方法は公知の方法から適宜選択して行うことができる。塗工方法としては、ブレードコーティング法、ロッドバーコーティング法、ロールコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、グラビアコーティング法、カーテンコーティング法、ダイコーティング法、コンマコーティング法等が挙げられる。
〔その他の記録方法〕
本発明のインクジェット記録用紙は、インクジェットプリンター用記録用紙として使用できることに加えて、インクリボンを使用する溶融熱転写プリンターや昇華熱転写プリンターさらには、ページプリンター用の記録用紙としても使用可能である。
【0074】
【実施例】
以下に表面処理剤Aの調製例、実験例、製造例、実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、使用量、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
なお、以下に記載される%は、特記しない限り重量基準である。使用する材料を表1にまとめて示す。
以下の手順に従って本発明の多孔性樹脂フィルムとおよび比較用の樹脂フィルムを使用する記録媒体を製造した。
【0075】
(表面処理剤Aの調製例1)
還流冷却器、温度計、滴下ロート、攪拌装置及びガス導入管を備えた反応器にジアリルアミン塩酸塩(60重量%)500重量部とアクリルアミド(40重量%)21重量部および水90重量部を入れ、窒素ガスを流入させながら系内温度を80℃に昇温した。攪拌下で重合開始剤、過硫酸アンモニウム(25重量%)30部を4時間にわたり滴下した。同温度で1時間反応を行って粘稠な淡黄色液状物を得た。
これを50g採り、500mlのアセトン中に注ぐと白色の沈殿を生じた。沈殿を濾別し、更に2回、100mlのアセトンで、よく洗浄した後、真空乾燥して白色固体状の陽イオン性重合体の表面処理剤(略号:A1)を得た(収率95%)。得られた重合体の1Nの塩化ナトリウム水溶液中、25℃での極限粘度は0.33dl/g、GPCより求めた重量平均分子量は55000であった。
【0076】
(表面処理剤Aの調製例2)
還流冷却器、温度計、滴下ロート、攪拌装置及びガス導入管を備えた反応器にジアリルアミン塩酸塩(60重量%)500重量部とアクリルアミド(40重量%)45重量部および水190重量部を入れ、窒素ガスを流入させながら系内温度を80℃に昇温した。攪拌下で重合開始剤、過硫酸アンモニウム(25重量%)30部を4時間にわたり滴下した。同温度で1時間反応を行って粘稠な淡黄色液状物を得た。
これを50g採り、500mlのアセトン中に注ぐと白色の沈殿を生じた。沈殿を濾別し、更に2回、100mlのアセトンで、よく洗浄した後、真空乾燥して白色固体状の陽イオン性重合体表面処理剤(略号:A2)を得た(収率96%)。得られた重合体の1Nの塩化ナトリウム水溶液中、25℃での極限粘度は0.38dl/g、GPCより求めた重量平均分子量は64000であった。
【0077】
(表面処理重質炭酸カルシウムの製造)
<実験例1>
微細粉末として、重質炭酸カルシウム(平均粒子径3μm、比表面積1.8m2 /g、JIS−K−5101−1991により測定される吸油量が31ml/100g略号:炭カル1)40重量%と水60重量%を充分攪拌混合てスラリー状とし、さらに、表面処理剤(A1)を重質炭酸カルシウム100重量部あたり0.1重量部加えて混合攪拌し、次いでアンステックスSAS(主成分は炭素数14のアルカンスルホン酸ナトリウムと炭素数16のアルカンスルホン酸ナトリウムの混合物、東邦化学工業(株)製、商品名、略号:B1)の2重量%水溶液50重量部(重質炭酸カルシウム100重量部あたりの固形分添加量2.5重量部)を添加し、攪拌を行ったスラリーを(株)奈良機械製作所MSD−200媒体流動乾燥機で乾燥して表面処理された重質炭酸カルシウムを得た。このものの略号をSF1とする。
尚、本明細書の実施例に使用した炭酸カルシウム粉末の粒子径は、レーザー回折式粒子計測装置「マイクロトラック」(株式会社日機装製、商品名)により測定した累積50%粒径である。
【0078】
<実験例2>
アンステックスSASに代えて、ドデシルベンゼンスルホン酸(略号:B2)の5重量%水溶液20重量部(重質炭酸カルシウム100重量部に対する固形分添加量2.5重量部)を使用したほかは、実験例1と同様の操作により表面処理された炭酸カルシウムを得た(略号:SF2)。
【0079】
<実験例3>
平均粒径30μmの粗粒重質炭酸カルシウム(日本セメント社製、乾式粉砕品)と水とを重量比が40/60となるように配合し、ここに表面処理剤(A1)を、重質炭酸カルシウム100重量部当たり0.08重量部加え、テーブル式アトライター型媒体攪拌ミルを用いて直径1.5mmのガラスビーズ、充填率170%、周速10m/秒で湿式粉砕した。
次いで、ドデシルベンゼンスルホン酸(略号:B2)の5重量%水溶液20重量部(重質炭酸カルシウム100重量部に対する固形分添加量2重量部)を加え攪拌した。次いで、350メッシュのスクリーンを通して分級し、350メッシュを通過したスラリーを(株)奈良機械製作所MSD−200媒体流動乾燥機で乾燥した。得られた炭酸カルシウムをマイクロトラック〔日機装(株)製〕で測定した平均粒径は2.2μmであった(略号:SF3)。
【0080】
<実験例4>
微細粉末として、重質炭酸カルシウム(平均粒子径3μm、比表面積1.8m2 /g、JIS−K−5101−1991により測定される吸油量が31ml/100g略号:炭カル1)40重量%と水60重量%を充分攪拌混合てスラリー状とし、さらに、表面処理剤(A2)を重質炭酸カルシウム100重量部あたり0.1重量部加えて混合攪拌し、次いでドデシルベンゼンスルホン酸(略号:B2)の5重量%水溶液20重量部(重質炭酸カルシウム100重量部に対する固形分添加量2重量部)を加え攪拌し、このスラリーを(株)奈良機械製作所MSD−200媒体流動乾燥機で乾燥して表面処理された重質炭酸カルシウムを得た。このものの略号をSF4とする。
【0081】
<実験例5>
平均粒径30μmの粗粒重質炭酸カルシウム(日本セメント社製、乾式粉砕品)と水とを重量比が40/60となるように配合し、ここに表面処理剤(A1)を、重質炭酸カルシウム100重量部当たり0.08重量部加え、テーブル式アトライター型媒体攪拌ミルを用いて直径1.5mmのガラスビーズ、充填率120%、周速5m/秒で湿式粉砕した。
次いで、ドデシルベンゼンスルホン酸(略号:B2)の5重量%水溶液20重量部(重質炭酸カルシウム100重量部に対する固形分添加量2重量部)を加え攪拌した。次いで、350メッシュのスクリーンを通して分級し、350メッシュを通過したスラリーを(株)奈良機械製作所MSD−200媒体流動乾燥機で乾燥した。得られた炭酸カルシウムをマイクロトラック〔日機装(株)製〕で測定した平均粒径は9.5μmであった。このものの略号をSF5とする。
【0082】
(製造例1)
<基材層の調製と縦延伸>
メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が1g/10分のポリプロピレン75重量%とメルトフローレート(MFR:190℃、2.16kg荷重)が8g/10分の高密度ポリエチレン5重量%との混合物に、平均粒子径3μmの炭酸カルシウム20重量%を配合した組成物[イ]を、250℃の温度に設定した押出機にて混練し、ストランド状に押し出し、カッティングしてペレットとした。この組成物[イ]を、250℃に設定した押し出し機に接続したTダイよりシート状に押出し、これを冷却装置により冷却して無延伸シートを得た。次いで、この無延伸シートを145℃に加熱した後、縦方向に4.5倍延伸して、延伸シートを得た。
尚、各実施例中の樹脂成分またはこれと微細粉末との混合物の溶融混練において、樹脂成分と微細粉末の合計重量を100重量部として、これに加えて、酸化防止剤として、BHT(4−メチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール)0.2重量部と、イルガノックス1010(フェノール系酸化防止剤、チバガイギー社製、商品名)0.1重量部を添加した。
【0083】
<表面の多孔性樹脂フィルムの形成>
これとは別に、MFRが20g/10分のポリプロピレン40重量%(略号PP1)、実験例1記載の表面処理された炭酸カルシウム(略号:SF1)60重量%を粉体状態で充分混合し、240℃に設定した二軸混練機にて溶融混練し、ストランド状に押し出しカッティングしてペレットとした(組成物[ロ])。
この組成物を、230℃(温度a)に設定した押出機に接続したTダイよりシート状に押出した。得られたシートを上述の操作により調製した4.5倍延伸シートの両面に積層し、50℃(温度b)にまで冷却した後、154℃(温度c)に加熱してテンターで横方向に8.5倍延伸した。その後、155℃(温度d)でアニーリング処理し、50℃(温度e)にまで冷却し、耳部をスリットして3層(表側の吸収層[ロ]/基材層[イ]/裏側の吸収層[ロ]:肉厚55μm/40μm/35μm)構造の全厚130μmの多孔性樹脂フィルムを得た。該多孔性樹脂フィルムを支持体aとする。配合および製造条件、加えて支持体としての性能評価結果も表1に示す。
【0084】
多孔性樹脂フィルムの性能評価は以下の方法で行った。性能評価結果を表1に示す。
<性能評価>
(1)液体吸収容積
液体吸収容積は、「Japan TAPPI No.51−87」(紙パルプ技術協会、紙パルプ試験方法No.51−87、ブリストー法)に準拠し、熊谷理機工業(株)製、液体吸収性試験機を使用して液体吸収容積を測定した。測定溶媒は水70重量%とエチレングリコール30重量%を混合し、この混合溶媒100重量部に着色用染料として、マラカイトグリーン2重量部を溶解したものである。
(2)多孔性樹脂フィルムの水に対する平均接触角、その最大値と最小値の差
上記多孔性フィルムの表面の接触角は、純水をフィルム表面に滴下して1分後に接触角計(協和界面化学(株)製:型式CA−D)を用いて測定した。この測定を10回行い(1回の測定毎に純水で表面が濡れていない未測定のフィルムに交換)、10回測定した接触角の平均値と、最大値と最小値との差を求めた。
【0085】
(3)表面空孔の存在確認と表面空孔数及び表面空孔寸法の測定
上記の多孔性フィルムの一部を切り取り、表面及び断面に空孔が存在することを確認した。多孔性フィルム試料より任意の一部を切り取り、観察試料台に貼り付けて、観察面に金または金−パラジウムを蒸着し、(株)日立製作所製の走査型電子顕微鏡S−2400を使用し、500倍に拡大して表面の空孔の存在及び、全空孔数の少なくとも約5割以上の大多数の空孔の中あるいは空孔の端部に無機微細粉末が存在していることを確認した。また、電子顕微鏡像を感熱紙に出力または写真撮影し、表面の空孔数を計測した結果、約3.5×109 個/m2 であった。次いで、上記の89個の空孔の測定値を平均した結果、長径が14.5μm、短径が3.4μmであり、平均直径が9μmであった。なお、各2つの空孔が微細粉末の左右または上下に連結している場合、微細粉末を中心に空孔が生じているものとして、2つの空孔は連結した一つの空孔として計測した。
【0086】
(4)内部空孔の存在確認と内部空孔率の測定
上記の多孔性樹脂フィルムをエポキシ樹脂で包埋して固化させた後、ミクロトームを用いて、フィルムの厚さ方向に対して平行かつ面方向に垂直な切断面を作製し、この切断面を金−パラジウムにてメタライジングした後、(株)日立製作所製の走査型電子顕微鏡S−2400を使用し、1000倍に拡大して観察し、内部空孔の存在および、内部空孔の少なくとも一部に微細粉末が存在していることを確認した。
【0087】
全体の厚さと坪量(g/m2 )を測定し、ついで表面の吸収層を一定面積剥がし取り、残りのフィルムの坪量と厚さを測定してれぞれの差より、多孔質樹脂フィルム層の厚さと坪量(g/m2 )を求め、これより坪量を厚さで割って吸収層の密度(ρ0 )を算出した。次いで、組成物[ロ]を230℃にて厚さ1mmのプレスシートとし、密度(ρ1 )を測定し、次式により空孔率を算出した。
【式2】
【0088】
(5)インクジェットプリンター適性
下記の条件でプリンター印字し、染料インクおよび顔料インクに対する各種適性を評価した。
プリンター▲1▼:EPSON PM−770C(染料インク)
プリンター▲2▼:GRAPHTEC JP−2115(顔料インク)
印字サンプル:日本規格協会SCID カラーチャートサンプル「S7」
A4(6.6×14.3cm)
印字設定:推奨設定きれい、ドライバによる色補正なし
使用環境:Windows95 PentiumII 300MHz、
RAM128MB パラレルI/F
使用ソフト:Adobe Photoshop 4.0J
【0089】
(インク吸収性)
印字終了後、印字部分から完全にインクが消失した時間を目視にて判定して乾燥時間とした。乾燥時間を下記の4段階に評価した。
◎:乾燥時間0分(印字終了時にはインクを完全吸収している)
○:乾燥時間0〜1分
△:乾燥時間1〜3分
×:乾燥時間3分以上
【0090】
(インク滲み性)
上記インク吸収性試験で使用した印字サンプルにおいて、以下の基準でインク滲みの有無を目視にて判定した。
○:滲み観測されず
△:重色部分のみ滲み観測される
×:重色および単色部分に滲み観測される
【0091】
(耐水性)
上記インク吸収性試験と同等の条件で印刷した印字サンプルを充分な量の水道水(水温25℃)の中に4時間浸漬させた後、紙面を風乾しインクの残留程度を目視判定した。
【0092】
(製造例2)
表面処理された重質炭酸カルシウムSF1に代えて、重質炭酸カルシウムSF2を使用し、成形温度を表1に示す数値に変更したほかは、実施例1と同様の操作により、多孔性樹脂フィルムを作製した。評価結果を表1に示した。本多孔性樹脂フィルムを支持体bとした。
(製造例3)
表面処理された重質炭酸カルシウムSF1に代えて、重質炭酸カルシウムSF3を使用し、成形温度を表1に示す数値に変更したほかは、実施例1と同様の操作により、多孔性樹脂フィルムを作製した。評価結果を表1に示した。本多孔性樹脂フィルムを支持体cとした。
【0093】
(製造例4)
表面処理された重質炭酸カルシウムSF1に代えて、重質炭酸カルシウムSF4を使用し、成形温度を表1に示す数値に変更したほかは、実施例1と同様の操作により、多孔性樹脂フィルムを作製した。評価結果を表1に示した。本多孔性樹脂フィルムを支持体dとした。
(製造例5)
表面処理された炭酸カルシウムSF1に代えて、実験例1に使用した重質炭酸カルシウム(平均粒子径3μm、BET法による比表面積が1.8m2 /g、JIS−K−5101−1991により測定される吸油量が31ml/100gの炭酸カルシウム)を表面処理を何ら施さずに使用したほかは、実施例1と同様の操作により、多孔性樹脂フィルムを作製した。評価結果を表1に示した。本多孔性樹脂フィルムを支持体eとした。
【0094】
(製造例6)
表面処理された炭酸カルシウムSF1に代えて、実験例1に使用した重質炭酸カルシウム(平均粒子径3μm、BET法による比表面積が1.8m2 /g、JIS−K−5101−1991により測定される吸油量が31ml/100gの炭酸カルシウム)を使用し、さらに、表面処理剤としてステアリン酸を炭酸カルシウム100重量部に対して4重量部添加したほかは製造例1と同様の操作により、多孔性樹脂フィルムを作製した。評価結果を表1に示した。本多孔性樹脂フィルムを支持体fとした。
(製造例7)
表面処理された重質炭酸カルシウムSF1に代えて、重質炭酸カルシウムSF5を使用したほかは、実施例1と同様の操作により、多孔性樹脂フィルムを作製し、評価を行った。評価結果を表1に示した。本多孔性樹脂フィルムを支持体gとした。
【0095】
【実施例1〜10、比較例1〜7】
表2に記載される材料を所定量用いて、以下の手順にしたがってインクジェット記録用シートを製造した。
不定形シリカ、バインダー樹脂、架橋剤、インク定着剤、水を混合してインク受容層形成用塗工液を調製した。この塗工液を乾燥後の塗工量が15g/m2 になるようにメイヤバーにて多孔性樹脂フィルム表側に塗工し、110℃のオーブンで5分間乾燥・固化して受容層を形成してインクジェット記録用紙を得た。また、本インクジェット記録用紙のインクジェットプリンター適性を多孔性樹脂フィルムと同様の方法で評価した。
配合、表面光沢度、インクジェット適性評価結果を表3に示す。
【0096】
【実施例11〜13】
表2に記載される材料を所定量用いて、以下の手順にしたがってインクジェット記録用シートを製造した。
無機フィラー、バインダー樹脂、インク定着剤、水を混合してトップコート層用塗工液を調製した。
実施例5と同様な方法で、多孔性樹脂フィルム上にインク受容層を形成した上に、乾燥後の塗工量が1.0g/m2 になるようにメイヤバーにてトップコート層用塗工液を塗工、110℃のオーブンで1分間乾燥・固化してトップコート層を形成して、インクジェット記録用紙を得た。配合、表面光沢度およびインクジェットプリンター適性評価結果を表3に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
【表3】
【0100】
表1〜表3から明らかなように、本発明の無機フィラーおよびバインダーを含有するインク受容層を設けたインクジェット記録用紙(実施例1〜4)は、高光沢性であることに加え、滲みを発生せず高いインク吸収性を示す。さらに、架橋剤およびインク定着剤を配合することで(実施例5〜10)インク定着性も向上する。またインク受容層の上に、トップコート層を設けることで(実施例11〜13)、表面光沢度がさらに向上する。
対して、本発明の規定範囲から外れる多孔性フィルムを使用したインクジェット記録用紙(比較例1〜3)や本発明の規定範囲から外れるインク受容層を使用したインクジェット記録用紙を使用した場合(比較例5〜7)は、上記特性を満足することができず性能的に劣っている。また、本発明の多孔性樹脂フィルムと、従来の非吸収性樹脂フィルムとを支持体として比較すると(実施例1、比較例1、4)、本発明の多孔性樹脂フィルムを使用したインクジェット記録用紙はインク受容層の塗工量が削減できるため、低コストでインク記録用紙が製造可能である。
【0101】
【発明の効果】
本発明のインクジェット記録用紙は、高光沢性かつ、高耐久性であり、インクジェットインクを速やかに吸収することができる安価なインクジェット用記録用紙である。
Claims (8)
- 多孔性樹脂フィルム上にインク受容層を備えたインクジェット記録用紙において、多孔性樹脂フィルムが、熱可塑性樹脂30〜90重量%と、ジアリルアミン塩またはアルキルジアリルアミン塩(a1)と非イオン親水性ビニルモノマー(a2)との共重合体よりなる表面処理剤(A)及び陰イオン性表面処理剤(B)により表面処理された無機及び/又は有機微細粉末70〜10重量%とを含有し、「Japan TAPPI No.51−87」により測定される液体吸収容積が5〜100ml/m 2 であり、且つインク受容層が、平均粒径1〜10nmの一次粒子が凝集した平均粒径350nm以下の不定形シリカを70〜95重量%およびバインダー樹脂を5〜30%含有し、その表面光沢度(JIS−Z−8741:60度測定)が40%以上であることを特徴とするインクジェット記録用紙。
- 該不定形シリカがカチオン処理シリカであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用紙。
- インク受容層の上にさらにトップコート層を設け、かつ表面光沢度(JIS−Z−8741:60度測定)が50%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録用紙。
- トップコート層が平均粒径350nm以下の無機フィラーを70〜95重量%およびバインダー樹脂を5〜30%含有することを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録用紙。
- 該多孔性樹脂フィルムの表面光沢度(JIS−Z−8741:60度測定)が20%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録用紙。
- 該多孔性樹脂フィルム表面の水に対する平均接触角が110°以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット記録用紙。
- 該多孔性樹脂フィルムが表面及び内部に空孔を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェット記録用紙。
- 該多孔性樹脂フィルムの空孔率が10%以上であることを特徴とする請求項7に記載のインクジェット記録用紙。
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