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JP4502852B2 - 樹脂組成物、その製造方法及び成形体 - Google Patents

樹脂組成物、その製造方法及び成形体 Download PDF

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Description

本発明は、樹脂組成物、その製造方法及び成形体に関する。より詳しくは、機械部品材料、電気・電子部品材料、自動車部品材料、土木建築材料、成形材料、塗料や接着剤の材料等として有用な樹脂組成物及びその製造方法、並びに、このような樹脂組成物を用いてなる成形体に関する。
熱硬化性の樹脂組成物は、例えば、機械部品材料、電気・電子部品材料、自動車部品材料、土木建築材料、成形材料として工業的に有用なものであり、更に、塗料や接着剤の材料等としても広く用いられている。このような熱硬化性樹脂組成物においては、膨張率の低下や外観制御のために無機物質を含有させる技術が種々検討されており、例えば、無機物質と樹脂との屈折率を合わせることで樹脂組成物及びその硬化物の外観を制御し、透明性を発現させることが行われている。特に近年では、光照射時の外観劣化を抑制するために無機成分の含有量を上げることが要望されているが、無機成分の高含有化によって透明性が損なわれることから、無機成分の粒度分布をナノオーダーで制御することにより、透明性確保と光照射時の外観劣化抑制とを両立することが試みられている。
無機物質を含有する熱硬化性樹脂組成物に関し、アルコキシ基含有シラン変性フェノール、エポキシ樹脂及び溶剤を含有するソルダーレジスト組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この組成物を硬化させる場合には、硬化させる際又はその前にシラン部分の縮合を行う必要があり、その縮合で発生するメタノールを除去する必要があるため、厚みを持った成型材料として使用すると、発泡が起こり成型不良となることがある。したがって、フィルム・薄膜状でしか使用できないため、より多くの用途に好適なものとするための工夫の余地があった。
またエポキシ樹脂に分散したナノシリカとフェノール樹脂とを混合する手法が開示されている(例えば、非特許文献1参照。)。この文献には、エポキシ樹脂中に含まれるシリカ含有量が13.4質量%の組成物が記載されているが、硬化物全体では、シリカ含有量がその半分の量になると推測される。また、硬化物の熱膨張率は、表3に記載されているように、50〜100℃では43、200〜250℃では162であるため、200〜250℃の熱膨張率/50〜100℃の熱膨張率=約4となる。したがって、この手法においては、絶縁性や熱衝撃耐性に更に優れ、より高外観を呈する硬化物を形成することが可能な樹脂組成物を得るための工夫の余地があった。
特開2002−40663項公報 タカハシアキオ(Akio Takahashi)、外5名、「プリント基板用耐熱エポキシ・シリコン複合材料(Heat Resistant Epoxy−Silicon Hybrid Materials for Printed Writing Boards)」、第9回電子回路世界大会(ELECTRONIC CIRCUITS WORLD CONVENTION 9)、社団法人日本プリント回路工業会第4番(paper No.JPCA04)
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、絶縁性や熱衝撃耐性、成形性、強度等の各種物性に優れ、高外観を呈する硬化物を形成することができる樹脂組成物及びその製造方法、並びに、該樹脂組成物を用いた成形体を提供することを目的とするものである。
本発明者等は、熱硬化性の樹脂組成物について種々検討したところ、フェノール化合物、グリシジル基及び/又はエポキシ基を少なくとも1つ含む化合物並びに無機微粒子の3成分を必須とする樹脂組成物が、強度や弾性、耐熱性、低誘電特性等を有し、種々の分野で有用なものであることに着目し、該樹脂組成物において、その硬化物におけるTg以下の熱膨張率αとTg以上の熱膨張率αとの比率(α/α)を特定すると、絶縁性や熱衝撃耐性に特に優れることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。そして、このような樹脂組成物の製造方法として、無機微粒子を含有するフェノール化合物と、無機微粒子を含有するグリシジル基及び/又はエポキシ基を少なくとも1つ含む化合物とを混合する工程を含む製法とすると、樹脂組成物全体として無機微粒子の含有量を大幅に向上でき、無機微粒子に起因する特異的な性質を更に充分に発揮させることが可能となるため、熱膨張率が大幅に低減され、絶縁性や熱衝撃耐性に特に優れ、より高外観を呈する硬化物を得ることが可能となることを見いだし、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、フェノール化合物、グリシジル基及び/又はエポキシ基を少なくとも1つ含む化合物並びに無機微粒子の3成分を必須とする樹脂組成物であって、上記樹脂組成物は、その硬化物におけるTg以下の熱膨張率αとTg以上の熱膨張率αとの比率(α/α)が2.0以下である樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。
本発明の樹脂組成物は、フェノール化合物、グリシジル基及び/又はエポキシ基を少なくとも1つ含む化合物(以下、「グリシジル基及び/又はエポキシ基含有化合物」ともいう。)、並びに、無機微粒子の3成分を含んでなる。なお、これらの化合物は、それぞれ1種又は2種以上を用いてもよく、また、これらの3成分の他に更に他の成分を含んでもよいが、3成分の合計量が、樹脂組成物全体を100質量%とすると、5質量%以上であることが好適である。より好ましくは、10質量%以上である。
上記樹脂組成物において、上述した3成分のそれぞれの含有割合としては特に限定されず、後述する種々の特性等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、樹脂組成物の硬化物中に含有される無機微粒子が、硬化物全体100質量%に対し、下限が5質量%、上限が45質量%となるように各成分を調整することが好適である。5質量%未満であると、絶縁性や熱衝撃耐性等の各種物性に優れた硬化物とはならないおそれがあり、45質量%を超えると、硬化物の透明性を向上することができないおそれがある。より好ましくは、下限が10質量%、上限が40質量%であり、更に好ましくは、下限が15質量%、上限が35質量%である。なお、硬化物中の無機微粒子の含有割合が上述した範囲内となるようにするためには、樹脂組成物100質量%に対し、無機微粒子の下限が1質量%、上限が45質量%とすることが好適である。より好ましくは、下限が2質量%、上限が40質量%であり、更に好ましくは、下限が5質量%、上限が35質量%である。樹脂組成物中でこのような範囲に設定することにより、絶縁性や熱衝撃耐性、透明性等に特に優れた硬化物を得ることが可能となる。
上記樹脂組成物中に含有されるフェノール化合物、グリシジル基及び/又はエポキシ基含有化合物並びに無機微粒子の質量比(フェノール化合物/グリシジル基及び/又はエポキシ基含有化合物/無機微粒子)としては、例えば、10〜50/10〜50/2〜40であることが好適である。
上記樹脂組成物としては、その硬化物におけるTg(ガラス転移温度)以下の熱膨張率αとTg以上の熱膨張率αとの比率(α/α)が2.0以下であることが適当であるが、2.0を超えると、絶縁性や熱衝撃耐性、成形性が充分とはならないおそれがあり、種々の分野に好適に適用することができないおそれがある。好ましくは、1.9以下であり、より好ましくは、1.8以下である。
なお、上記硬化物としては、上記3成分を含む樹脂組成物を後述する硬化方法にて硬化して得られる硬化物であればよく、上記3成分に更に他の成分を含有する樹脂組成物を硬化して得られるものであってもよい。
上記ガラス転移温度(Tg)とは、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度を意味し、例えば、TMA(Thermomechanical analysis)法により得られる“温度−寸法変化量”カーブから、ガラス転移温度の前後の直線部分に接線を引き、その接線の交点をガラス転移温度とすることにより求めることができる。
上記Tg以下の熱膨張率αとは、上述したようにTMA法により求められるTgの値に対して、Tg−80℃からTg−30℃の平均熱膨張率を意味し、Tg以上の熱膨張率αとは、Tg+30℃からTg+80℃の平均熱膨張率を意味する。
上記熱膨張率としては、例えば、以下のようにして求めることができる。
(評価用サンプル板作成条件)
樹脂組成物を110℃で混練・減圧脱泡した後、厚み1mmの成形型に流し込み、110℃で3時間、150℃で3時間オーブン中で硬化させ、1mm厚の樹脂板を得る。
(熱膨張率測定方法)
得られた樹脂板を5mm×5mmに切り出し、熱機械分析装置(TMA)(圧縮法)により測定する。ガラス転移温度(Tg)、熱膨張率(α、α)は、得られる温度−変形(寸法変化量)カーブから、上述したようにして決定する。なお、測定装置としては、島津製作所製「TMA−50」を使用し、測定条件は、荷重1g、昇温速度5℃/min、測定範囲20℃〜250℃とする。
本発明の樹脂組成物において、フェノール化合物としては特に限定されず、通常使用されるものを用いればよい。具体的には、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、p−エチルフェノール、混合クレゾール、p−ヒドロキシエチルフェノール、p−n−プロピルフェノール、o−イソプロピルフェノール、p−イソプロピルフェノール、混合イソプロピルフェノール、o−sec−ブチルフェノール、m−tert−ブチルフェノ−ル、p−tert−ブチルフェノール、ペンチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、2,3−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、2,4−ジ−s−ブチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,6−ジ−s−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、3−メチル−4−イソプロピルフェノール、3−メチル−5−イソプロピルフェノール、3−メチル−6−イソプロピルフェノール、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、3−メチル−6−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4−エチルフェノール等のフェノール性水酸基を少なくとも1つ有する化合物;カテコール、レゾルシン、ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、α−ナフトール、β−ナフトール等のフェノール性水酸基を2個以上有する化合物等が挙げられる。
上記フェノール化合物としては、フェノール性水酸基を少なくとも1つ有する芳香族骨格同士が、炭素数が2以上の有機骨格を介して結合してなる構造を有するものであってもよく、上記フェノール化合物がこのような構造を有するものである形態は、本発明の好適な形態の1つである。上記フェノール化合物がこのような構造を有することにより、構造上の特徴に起因して硬化物の難燃性や絶縁性等が大幅に向上し、より多くの用途に好適なものとすることが可能となる。
上記フェノール化合物において、芳香族骨格とは、フェノール性水酸基を少なくとも1つ有する芳香環である。この芳香族骨格は、フェノール型等の構造を有する部位であり、フェノール型、ハイドロキノン型、ナフトール型、アントラセノール型、ビスフェノール型、ビフェノール型等が好適である。中でもフェノール型が好ましい。また、これらフェノール型等の構造を有する部位は、アルキル基、アルキレン基、アラルキル基、フェニル基、フェニレン基等によって適宜置換されていてもよい。
上記フェノール化合物において、有機骨格とは、フェノール化合物を構成する芳香環骨格同士を結合し、炭素原子を必須とする部位を意味するものである。また、炭素数が2以上の有機骨格としては、環構造を有することが好適である。環構造とは、脂肪族環、芳香族環等といった環を有する構造であり、環としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が好ましい。上記有機骨格としてはまた、トリアジン環、フォスファゼン環等の窒素原子を含有する環構造及び/又は芳香環を有することが好ましく、中でもトリアジン環及び/又は芳香環を有することが特に好ましい。
なお、上記フェノール化合物は、上記以外の芳香族骨格や有機骨格を有していてもよく、また、フェノール性水酸基を少なくとも1つ有する芳香族骨格同士が、炭素数が1の有機骨格(メチレン)を介して結合してなる構造を同時に有していてもよい。
上記フェノール化合物としては、有機骨格として窒素原子を含有する環構造を有する場合には窒素原子含有率の下限が1質量%、上限が50質量%であることが好ましい。この範囲外であると、難燃性や耐熱性等の硬化物物性をより向上させることができないおそれがある。より好ましくは、下限が3質量%、上限が30質量%であり、更に好ましくは、下限が5質量%、上限が20質量%である。
なお、窒素原子含有率とは、フェノール化合物を100質量%としたときのフェノール化合物を構成する窒素原子の質量割合である。
上記フェノール化合物としてはまた、フェノール性水酸基を少なくとも1つ有する芳香族骨格を形成する化合物(以下、「芳香族骨格を形成する化合物」ともいう。)と、炭素数が2以上の有機骨格を形成する化合物(以下、「有機骨格を形成する化合物」ともいう。)とを必須成分とする反応原料によって製造されるものであることが好適である。
上記反応原料とは、芳香族骨格を形成する化合物と、有機骨格を形成する化合物とを必須成分とし、必要により用いられる他の化合物を含み、また、反応を行うために必要により用いられる溶剤等を含む混合物を意味する。なお、芳香族骨格を形成する化合物、及び、有機骨格を形成する化合物はそれぞれ1種又は2種以上を用いることができる。
上記芳香族骨格を形成する化合物としては、芳香族環に1個又は2個以上のフェノール性水酸基が結合する化合物であればよく、1個又は2個以上の水酸基以外の置換基が結合していてもよい。具体的には、上述したフェノール性水酸基を少なくとも1つ有する化合物や、フェノール性水酸基を2個以上有する化合物等が挙げられる。
上記有機骨格を形成する化合物としては、(1)α−ヒドロキシアルキル基、α−アルコキシアルキル基及びα−アセトキシアルキル基のいずれかを有する芳香族系化合物、(2)不飽和結合を有する化合物、(3)アルデヒド、ケトン等のカルボニル基を有する化合物、(4)これら特定の活性基又は活性部位を2種類以上有する化合物、(5)アミノ基、ヒドロキシアルキルアミノ基及びジ(ヒドロキシアルキル)アミノ基のいずれかを有する化合物等が好適である。
上記(1)の芳香族系化合物としては、p−キシリレングリコール、p−キシリレングリコールジメチルエーテル、p−ジアセトキシメチルベンゼン、m−キシリレングリコール、m−キシリレングリコールジメチルエーテル、m−ジアセトキシメチルベンゼン、p−ジヒドロキシイソプロピルベンゼン、p−ジメトキシイソプロピルベンゼン、p−ジアセトキシイソプロピルベンゼン、トリヒドロキシメチルベンゼン、トリヒドロキシイソプロピルベンゼン、トリメトキシメチルベンゼン、トリメトキシイロプロピルベンゼン、4,4′−ヒドロキシメチルビフェニル、4,4′−メトキシメチルビフェニル、4,4′−アセトキシメチルビフェニル、3,3′−ヒドロキシメチルビフェニル、3,3′−メトキシメチルビフェニル、3,3′−アセトキシメチルビフェニル、4,4′−ヒドロキシイソプロピルビフェニル、4,4′−メトキシイソプロピルビフェニル、4,4′−アセトキシイソプロピルビフェニル、3,3′−ヒドロキシイソプロピルビフェニル、3,3′−メトキシイソプロピルビフェニル、3,3′−アセトキシイソプロピルビフェニル、2,5−ヒドロキシメチルナフタレン、2,5−メトキシメチルナフタレン、2,5−アセトキシメチルナフタレン、2,6−ヒドロキシメチルナフタレン、2,6−メトキシメチルナフタレン、2,6−アセトキシメチルナフタレン、2,5−ヒドロキシイソプロピルナフタレン、2,5−メトキシイソプロピルナフタレン、2,5−アセトキシイソプロピルナフタレン、2,6−ヒドロキシイソプロピルナフタレン、2,6−メトキシイソプロピルナフタレン、2,6−アセトキシイソプロピルナフタレン等が好適である。
上記(2)の不飽和結合を有する化合物としては、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、トリビニルベンゼン、トリイソプロペニルベンゼン、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン、テルペン類等が好適である。
上記(3)のカルボニル基を有する化合物としては、炭素数5〜15の各種アルデヒド類又はケトン類が好適であり、ベンズアルデヒド、オクタナール、シクロヘキサノン、アセトフェノン、ヒドロキシベンズアルデヒド、ヒドロキシアセトフェノン、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒド、グリオキザール、グルタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、シクロヘキサンジアルデヒド、トリシクロデカンジアルデヒド、ノルボルナンジアルデヒド、スベルアルデヒド等が好ましい。
上記(4)の特定の活性基又は活性部位を2種類以上有する化合物において、カルボニル基と不飽和結合とを有する化合物としては、イソプロペニルベンズアルデヒド、イソプロペニルアセトフェノン、シトロネラール、シトラール、ペリルアルデヒド等が好適である。
また、α−ヒドロキシアルキル基又はα−アルコキシアルキル基と、不飽和結合とを有する化合物としては、ジヒドロキシメチルスチレン、ジヒドロキシメチルα−メチルスチレン、ジメトキシメチルスチレン、ジメトキシメチルα−メチルスチレン、ヒドロキシメチルジビニルベンゼン、ヒドロキシメチルジイソプロピルベンゼン、メトキシメチルジビニルベンゼン、メトキシメチルジイソプロピルベンゼン等が好適である。
上記(5)のアミノ基、ヒドロキシアルキルアミノ基、及び、ジ(ヒドロキシアルキル)アミノ基のいずれかを有する化合物としては、メラミン、ジヒドロキシメチルメラミン、トリヒドロキシメチルメラミン、アセトグアナミン、ジヒドロキシメチルアセトグアナミン、テトラヒドロキシメチルアセトグアナミン、ベンゾグアナミン、ジヒドロキシメチルベンゾグアナミン、テトラヒドロキシメチルベンゾグアナミン、尿素、ジヒドロキシメチル尿素、テトラヒドロキシメチル尿素、エチレンジアミン、ジヒドロキシメチルエチレンジアミン、テトラヒドロキシメチルエチレンジアミン、ヘキサエチレンジアミン、ジヒドロキシメチルヘキサエチレンジアミン、テトラヒドロキシメチルヘキサエチレンジアミン、p−キシリレンジアミン、p−ジヒドロキシメチルアミノベンゼン、m−キシリレンジアミン、m−ジヒドロキシメチルアミノベンゼン、4,4′−オキシジアニリン、4,4′−オキシジヒドロキシメチルアニリン、4,4′−メチレンジアニリン、4,4′−メチレンジヒドロキシメチルアニリン等が好適である。これらの中でも、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン等のトリアジン骨格を有する化合物等が好ましい。
上記反応原料としては、芳香族骨格を形成する化合物(以下、「原料A」ともいう。)と、上記(1)〜(5)のうちの少なくともいずれか1種の有機骨格を形成する化合物(以下、原料Bともいう)とを必須成分とすることが好ましい。より好ましくは、原料Aと、上記(1)〜(4)のうちの少なくともいずれか1種の有機骨格を形成する化合物(以下、原料B1ともいう)と、上記(5)の有機骨格を形成する化合物(以下、原料B2ともいう)とを必須成分とすることである。この場合の反応原料の反応順序としては、反応開始前に原料A、原料B1及び原料B2をあらかじめ混合させておき、原料Aと原料B1との反応が完結する前に原料B2を反応させることが好ましく、例えば、原料Aと原料B1と原料B2とを同時に反応させるか、又は、一段階目に原料Aと原料B2とを反応させた後、二段階目に更に原料B1を反応させることが好ましい。これにより、難燃性をより確実に向上させることができ、また、電子材料等の成形材料や接着剤、塗料等に好適に適用することができるものとなる。より好ましくは、一段階目に原料Aと原料B2とを反応させた後、二段階目に更に原料B1を反応させることである。
上記フェノール化合物を製造するときに用いる原料Aと原料Bとの配合モル比としては、下限が1/1、上限が10/1であることが好ましい。1/1よりも原料Aが少ないと、樹脂組成物の製造の際にゲル化するおそれがあり、10/1よりも原料Aが多いと、難燃性等の硬化物物性が発現しにくくなるおそれがある。より好ましくは、樹脂組成物が高温度で高強度を発揮することが可能となることから、下限が1.3/1、上限が8/1である。更に好ましくは、下限が1.8/1、上限が5/1である。
上記フェノール化合物としては更に、上記反応原料を触媒の存在下に反応させてなるものであることが好ましい。フェノール化合物の製造に用いることができる触媒としては、上記反応原料を反応させることができるものであればよい。
上記触媒において原料B1を反応させる場合には、酸触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の無機酸や有機スルホン酸の他、三フッ化ホウ素若しくはその錯体、トリフルオロメタンスルホン酸、ヘテロポリ酸等の超強酸、活性白土、合成ゼオライト、スルホン酸型イオン交換樹脂、パーフルオロアルカンスルホン酸型イオン交換樹脂等の固体酸触媒等が好適である。
上記原料B1を反応させる場合の触媒の使用量としては、それぞれの酸強度によって適宜設定されるが、原料B1を100重量部とすると、下限が0.001重量部、上限が100重量部であることが好ましい。これらの範囲で均一系となるような触媒としては、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、三フッ化ホウ素等が好ましく、これらの使用量としては、下限が0.001重量部、上限が5重量部であることが好ましい。不均一系のイオン交換樹脂や活性白土等の使用量としては、下限が1重量部、上限が100重量部であることが好ましい。
上記触媒において原料B2を反応させる場合には、塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物及びこれらの酸化物、アンモニア、1〜3級アミン類、ヘキサメチレンテトラミン、炭酸ナトリウム等が好適であり、酸触媒としては、塩酸、硫酸、スルホン酸等の無機酸、シュウ酸、酢酸等の有機酸、ルイス酸、酢酸亜鉛等の2価金属塩等の塩基性触媒が好適である。また、本発明の難燃性樹脂組成物が電気電子材料用のエポキシ樹脂硬化剤として使用される場合には、金属等の無機物が触媒残渣として残ることは好ましくないことから、塩基性触媒としてはアミン類、酸性の触媒としては有機酸を使用するのが好ましい。
また、原料B2の反応後に必要に応じて、中和、水洗して塩類等の不純物を除去することが好ましい。なお、触媒としてアミン類を使用した場合には中和、水洗等の不純物除去は行わないことが望ましい。
上記フェノール化合物は、原料Aにおける芳香環と、原料Bにおける置換基とが縮合して得られることになるが、この際にフェノール化合物と共にカルボン酸やアルコール、水等が副生することになる。このように副生するカルボン酸やアルコール、水は、反応中や反応後に減圧下で留去したり、溶媒との共沸等の操作を行ったりすることにより煩雑な工程を必要とすることなく反応生成物から容易に取り除くことが可能である。なお、反応生成物とは、上記のように反応させることにより得られるものすべてを含む混合物を意味し、フェノール化合物や副生するカルボン酸やアルコール、水の他に、必要に応じて用いられる触媒や後述する溶媒等を含むことになる。
上記フェノール化合物の製造での反応条件において、反応温度としては、副生するカルボン酸や、アルコール、水等が揮発して留去される温度とすることが好ましく、例えば、下限が100℃、上限が240℃とすることが好ましい。より好ましくは、下限が110℃、上限が180℃であり、更に好ましくは、下限が130℃、上限が160℃である。このように、フェノール化合物の製造では、カルボン酸等が副生することになるが、反応生成物から容易に取り除くことが可能である。また、反応時間としては、使用する原料、触媒の種類や量、反応温度等に依存するが、原料Aと原料Bとの反応が実質的に完結するまで、すなわちカルボン酸やアルコール、水が生じなくなるまでとすることが好ましく、下限が30分、上限が24時間とすることが好ましい。より好ましくは、下限が1時間、上限が12時間である。
上記フェノール化合物の製造における反応方法としては、溶媒の存在下で反応を行ってもよく、溶媒としては、原料Aと原料Bとの反応に不活性な有機溶媒を用いることが好ましく、トルエン、キシレン、モノクロルベンゼン、ジクロルベンゼン等を用いることができる。溶媒を用いることにより、原料を溶媒中に溶解させて均質化することができる。また、原料B1を反応させる場合には無溶媒で反応を行うことが好ましい。
上記フェノール化合物の製造において、反応生成物からカルボン酸、アルコール、水等の副生物や溶媒を取り除く場合、0.1〜10kPaの減圧下、上記温度で蒸留することにより留去させることが好適である。このとき、未反応のフェノール類も留去されることもあるため、反応が実質的に完結した後に行うことが好ましい。
本発明の樹脂組成物において、グリシジル基及び/又はエポキシ基含有化合物としては、該基を少なくとも含有するものであれば特に限定されるものではなく、固形状の化合物であってもよく、液体状の化合物であってもよい。
上記グリシジル基及び/又はエポキシ基含有化合物としては、例えば、ビスフェノールA・ビスフェノールF・ビスフェノールS等のビスフェノール類とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるエピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を、ビスフェノールA・ビスフェノールF・ビスフェノールS等のビスフェノール類と更に付加反応させることにより得られる高分子量エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フェノール・クレゾール・キシレノール・ナフトール・レゾルシン・カテコール・ビスフェノールA・ビスフェノールF・ビスフェノールS等のフェノール類とホルムアルデヒド・アセトアルテヒド・プロピオンアルデヒド・ベンズアルデヒド・ヒドロキシベンズアルデヒド・サリチルアルデヒド・ジシクロペンタジエン・テルペン・クマリン・パラキシリレングリコールジメチルエーテル・ジクロロパラキシリレン・ビスヒドロキシメチルビフェニル等を縮合反応させて得られるフェノール類を更にエピハロヒドリンと縮合反応することにより得られるノボラック・アラルキルタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;テトラメチルビフェノール・テトラメチルビスフェノールF・ハイドロキノン・ナフタレンジオール等とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られる芳香族結晶性エポキシ樹脂、及び、更に上記ビスフェノール類やテトラメチルビフェノール・テトラメチルビスフェノールF・ハイドロキノン・ナフタレンジオール等を付加反応させることにより得られる芳香族結晶性エポキシ樹脂の高分子量体;上記ビスフェノール類やテトラメチルビフェノール・テトラメチルビスフェノールF・ハイドロキノン・ナフタレンジオール等の芳香族骨格を水素化した脂環式グリコール類やエチレングリコール・ジエチレングリコール・トリエチレングリコール・テトラエチレングリコール・PEG600・プロピレングリコール・ジプロピレングリコール・トリプロピレングリコール・プロピグリコール・プロピレングリコール・PPG・グリセロール・ジグリセロール・テトラグリセロール・ポリグリセロール・トリメチロールプロパン及びその多量体・ペンタエリスリトール及びその多量体・グルコール、フルクトース、ラクトース、マルトース等の単/多糖類とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られる脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂;(3,4−エポキシシクロヘキサン)メチル3′,4′−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート等のエポキシシクロへキサン骨格を有するエポキシ樹脂;テトラヒドロフタル酸・ヘキサヒドロフタル酸・安息香酸とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ヒダントインやシアヌール酸、メラミン、ベンゾグアナミンとエピハロヒドリンとの縮合反応により得られる3級アミン含有グリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、光照射時の外観劣化抑制を目的とする場合には、上記脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂やエポキシシクロヘキサン骨格を有するエポキシ樹脂がより好適に用いられる。
本発明の樹脂組成物において、無機微粒子としては、金属や金属化合物等の無機化合物から構成される微粒子であればよく、特に限定されるものではない。中でも、アルコキシド化合物(好ましくは金属アルコキシド)及び/又はカルボン酸塩化合物(好ましくはカルボン酸金属塩)の加水分解・縮合物であることが好適であり、ゾル−ゲル法で製造される加水分解・縮合物であることがより好ましい。更に好ましくは、アルコキシド化合物のゾル−ゲル法による加水分解・縮合物である。なお、加水分解・縮合物とは、加水分解反応により得られたものを更に縮合反応することによって得られる化合物を意味する。
以下に、アルコキシド化合物やカルボン酸塩化合物の加水分解反応及び縮合反応を示す。
M(OR+aHO(加水分解)→M(OH)+aROH
M(OH)→M(OH)→MO2/c(縮合物)
(式中、Mは金属元素を表し、Rはアルキル基又はアシル基を表す。a、b及びcは任意の数値である。)
上記アルコキシド化合物やカルボン酸塩化合物としては、下記一般式(1);
M(OR (1)
(式中、Mは金属元素、Rはアルキル基又はアシル基を表し、nは1〜7の整数を表す。)で表される化合物及び/又は下記一般式(2);
(RM(OR (2)
(式中、M及びRは一般式(I)と同様である。Rは有機基を表し、m及びpは1〜6の整数を表す。)で表される化合物が好適である。
上記一般式(1)及び(2)におけるRのアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好適であり、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等が好ましい。また、Rのアシル基としては、炭素数1〜4のアシル基が好適であり、アセチル基、プロピオニル基、ブチニル基等が好ましい。
上記一般式(2)におけるRの有機基としては、炭素数1〜8の有機基が好適であり、メチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等のアルキル基;3−フルオロプロピル基等のフッ化アルキル基;2−メルカプトプロピル基等のメルカプト基含有アルキル基;2−アミノエチル基、2−ジメチルアミノエチル基、3−アミノプロピル基、3−ジメチルアミノプロピル基等のアミノ基含有アルキル基;フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フルオロフェニル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基;2−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基等のエポキシ基含有有機基;ビニル基、3−(メタ)アクリルオキシプロピル基等の不飽和基含有有機基等が好ましい。
上記一般式(1)及び(2)における金属元素Mとしては、上記一般式(1)及び一般式(2)に示す化合物の構造を取り得る金属元素であれば周期表のどの金属でもよいが、B、Al、Ca、In、Tl等のIIIB族(13族);C、Si、Ge、Sn、Pb等のIVB族(14族);Ti、Zr、Zn、Ca、Na、Li、Te、Mg、Ni、Cr、Ba、Ta、Mo、Tb、Cs等から選ばれた少なくとも1種の金属元素等が好適である。これらの中でも、Al、In又はSiが好ましい。より好ましくは、Siである。
上記金属元素がSiである場合のアルコキシド化合物やカルボン酸塩化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−i−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン類;テトラアセチルオキシシラン、テトラプロピオニルオキシシラン等のテトラアシルオキシシラン類;メチルトリアセチルオキシシラン、エチルトリアセチルオキシシラン等のトリアシルオキシシラン類;ジメチルジアセチルオキシシラン、ジエチルジアセチルオキシシラン等のジアシルオキシシラン類等が好適である。これらの中でも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランが好ましい。このようにアルコキシド化合物としては、シリコンアルコキシドを含有してなることが好ましい。
上記金属元素がSi以外である場合である場合のアルコキシド化合物としては、例えば、LiOCH、NaOCH、Cu(OCH、Ca(OCH、Sr(OC、Ba(OC、Zn(OC、B(OCH、Al(OCH、Al(OC、Al(iso−OC、Al(OC、Ga(OC、Y(OC、Ge(OC、Pb(OC、P(OCH、Sb(OC、VO(OC、Ta(OC、W(OC、La(OC、Nd(OC、Ti(OCH、Ti(OC、Ti(iso−OC、Ti(OC、Zr(OCH、Zr(OC、Zr(OC、Zr(OC等の単一金属アルコキシド;La[Al(iso−OC、Mg[Al(iso−OC、Mg[Al(sec−OC、Ni[Al(iso−OC、(CO)Zr[Al(OC、Ba[Zr(OC等の複合金属アルコキシド等が好適である。
上記一般式(1)及び(2)で表される化合物の使用割合としては、得られる無機微粒子と樹脂組成物を構成する成分との親和性等を考慮すると、一般式(1)及び(2)で表される化合物の全量を100質量%とすると、一般式(1)で表される化合物を40質量%以上とすることが好ましい。より好ましくは50質量%以上である。
上記加水分解及び縮合反応においては、反応を促進するために、金属キレート化合物の1種又は2種以上を使用することもできる。
上記金属キレート化合物としては、例えば、Zr(OR(RCOCHCOR4−q、Ti(OR(RCOCHCOR4−r、及び、Al(OR(RCOCHCOR4−sからなる群より選択される1種以上の化合物や、これらの部分加水分解物等が好適である。
上記金属キレート化合物におけるR及びRは、同一又は異なって、炭素数1〜6の有機基を表し、Rは、炭素数1〜6の有機基又は炭素数1〜16のアルコキシル基を表し、q及びrは、0〜3の整数、sは、0〜2の整数である。R及びRにおける炭素数1〜6の有機基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、フェニル基等が好適である。また、Rにおける炭素数1〜16のアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基等が好適である。
上記金属キレート化合物としては、トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のジルコニウムキレート化合物;ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム等のチタニウムキレート化合物;ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、ジ−i−プロポキシ・アセチルアセトナートアルミニウム、i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物等が好適である。これらの中でも、トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムが好ましい。
上記金属キレート化合物の使用量としては、上記一般式(1)で表される化合物及び/又は上記一般式(2)で表される化合物100重量部に対して、30重量部以下が好ましい。30重量部を超えると、成形品の表面外観が充分とはならないおそれがある。より好ましくは、20重量部以下であり、更に好ましくは、10重量部以下である。
上記アルコキシド化合物、カルボン酸塩化合物及びこれらの加水分解・縮合物である無機微粒子には、得られる樹脂組成物の剛性を高める目的で、コロイド状シリカ及び/又はコロイド状アルミナの1種又は2種以上を配合することができる。
上記コロイド状シリカとは、高純度の無水ケイ酸を、水及び/又は親水性有機溶媒に分散した分散液であり、その平均粒子径は、5〜100nm、好ましくは10〜50nmで、固形分濃度は、10〜40質量%程度のものである。コロイド状シリカとしては、スノーテックス、イソプロパノールシリカゾル、メタノールシリカゾル(いずれも商品名、日産化学工業社製)、カタロイド、オスカル(いずれも商品名、触媒化成工業社製)、Ludex(商品名、米国デュポン社製)、Syton(商品名、米国モンサント社製)、Nalcoag(商品名、米国ナルコケミカル社製)等が好適である。
上記コロイド状アルミナとは、水を分散媒とするpH2〜6の範囲のアルミナゾル、又は、親水性有機溶媒を分散媒とするアルミナゾルであり、その平均粒子径は、5〜200nm、好ましくは10〜100nmで、固形分濃度は5〜30質量%程度のものである。アルミナとしては、合成アルミナ、ベーマイト、擬ベーマイト等が好適である。コロイド状アルミナとしては、アルミナゾル−100、アルミナゾル−200、アルミナゾル−520(いずれも商品名、日産化学工業社製)等が好適である。
上記コロイド状シリカ及び/又はコロイド状アルミナの配合量としては、アルコキシド化合物やカルボン酸塩化合物から得られる無機微粒子の固形分100重量部に対して、固形分換算で、60重量部以下が好ましい。60重量部を超えると、成形品表面外観が優れたものとはならないおそれがある。より好ましくは、40重量部以下である。
上記無機微粒子においてはまた、加水分解性金属塩の加水分解・縮合物が含まれていてもよく、加水分解性金属塩としては、Cu(NO、CuCl、CuSO等の銅塩、TiCl、TiCl、TiSO等のチタン塩、Y(NO、YCl等のイットリウム塩、ZrSO、ZrCl、Zr(NO等のジルコニウム塩、Cr(NO、CrCl等のクロミニウム塩、Al(NO、Al(SO等のアルミニウム塩、Ni(NO、NiCl等のニッケル塩等が好適であり、これらの1種又は2種以上を用いることができる。このような加水分解性金属塩の加水分解・縮合物としては、アルコキシド化合物及び/又はカルボン酸塩化合物の加水分解・縮合物を構成する1成分であってもよく、粒子として混合物を構成するものであってもよい。
本発明の無機微粒子としてはまた、酸化珪素系微粒子であることが好適である。酸化珪素系微粒子とは、ケイ素原子(Si)と酸素原子(O)とを少なくとも含む骨格を有する微粒子であり、例えば、ムライト(3Al・2SiO)、タルク(3MgO・4SiO・HO)、珪酸バリウム(BaO・8SiO)、コーディライト(2MgO・2Al/5SiO)等が好適に用いられる。
このような酸化珪素系微粒子において、構成金属成分としてのSiの含有割合としては、構成金属成分の総量100モル%に対し、下限が50モル%であることが好適である。50モル%未満であると、耐熱性等の硬化物物性を充分には向上できなきおそれがある。より好ましい下限は60モル%であり、更に好ましくは70モル%である。また、上限は99.5モル%であることが好ましく、より好ましくは99モル%である。
上記酸化珪素系微粒子としてはまた、構成金属成分として他の金属原子を含有してもよく、例えば、Zn、B、Al、Ga、In、Ge、Pb、P、Sb及びBiからなる群より選択される少なくとも1種以上の元素であることが好適である。これらの金属元素の含有量としては、構成金属成分の総量100モル%に対し、上限が50モル%であることが好適である。50モル%を超えると、耐熱性等の物性を充分には向上できないこととなる。より好ましい上限は30モル%であり、更に好ましくは20モル%である。また、下限は0.1モル%であることが好ましく、より好ましくは0.5モル%である。
上記酸化珪素系微粒子における構成金属成分量としては、例えば、樹脂組成物の硬化板をX線光電子分光法(XPS)分析に供することにより測定することができる。
上記無機微粒子の粒度分布としては、無機微粒子全体を100体積%とすると、0.5nm以上10nm未満の粒子が25〜65体積%、10nm以上100nm未満の粒子が35〜75体積%であることが好適である。0.5nm以上10nm未満の粒度の粒子が25体積%未満であると、熱膨張係数を充分に低減することができないおそれがあり、65体積%を超えると、樹脂組成物の硬化物のガラス転移点を充分には向上できないおそれがある。より好ましくは、下限が30体積%、上限が63体積%であり、更に好ましくは、下限が40体積%、上限が61体積%である。また、10nm以上100nm未満の粒度の粒子が35体積%未満であったり、75体積%を超えたりしても、熱膨張係数を充分に低減できなくなったり、ガラス転移点を充分に高くすることができなくなったりするおそれがある。より好ましくは、下限が37体積%、上限が70体積%であり、更に好ましくは、下限が30体積%、上限が60体積%である。上記範囲内に粒度分布を制御することにより、樹脂組成物を硬化させるときに生じるブリードや硬化物の破損等を抑制することが可能となる。
上記粒度分布としては、例えば、樹脂組成物の硬化板をX線小角散乱分析に供し、この測定により得られた散乱プロファイルからFankuchenの方法によりギニエプロットを作成して慣性半径を算出し、粒子の幾何学形状を球と仮定することにより粒径
分布を求めることができる。具体的には、例えば、以下のように行うことができる。
(無機微粒子の慣性半径測定)
上記熱膨張率測定方法における(評価用サンプル板作成条件)で得られた樹脂板を5cm×5cmに切り出し、X線小角散乱法に供する。X線小角散乱スペクトル測定には、理学電気社製のX線回折装置「RINT−2400」を用い、多層膜ミラーモノクロメーターを通して入射X線を単色化し、更に3個のスリットを通してから樹脂板に照射し、真空パスを通してカメラ長250mmに設置したシンチレーションカウンターで散乱X線を検出する。この際の詳細条件は、以下のとおりである。
得られた散乱プロファイルからFankuchenの方法によりギニエプロットを作成し慣性半径を算出し、粒子の幾何学形状を球として粒径半径を求める。
(詳細条件)
使用X線:CuKα
管電圧、管電流:40kV、200mA
操作方法:透過法(2θ単独操作)
走査範囲:2θ
ステップ間隔:0.1〜5.0deg、0.01deg
計数時間:30分
上記無機微粒子の特に好適な形態としては、酸化珪素系微粒子であって、構成金属成分としてSiを50〜100モル%、Zn、B、Al、Ga、In、Ge、Pb、P、Sb及びBiからなる群より選択される少なくとも1種以上の元素を50〜0モル%含有し、粒度分布として0.5nm以上10nm未満の粒子を25〜65体積%、10nm以上100nm未満の粒子を35〜75体積%有するものである形態である。
上記無機微粒子としてはまた、独立した球状粒子及び/又はその凝集体であり、凝集体としての平均粒子径が100μm以下であることが好ましい。100μmを超えると、上記無機微粒子が樹脂組成物中に均一に分散されなくなり、強度特性が充分とはならないおそれがある。より好ましくは、5μm以下である。更に好ましくは2μm以下である。
なお、「独立した球状粒子」とは、無機微粒子よりなる一次粒子を意味し、「凝集体」とは、一次粒子が凝集して新たに形成された二次粒子を意味する。
本発明の樹脂組成物において、エポキシ当量としては、下限が100g/mol(モル)、上限が4000g/molであることが好ましい。100g/mol未満であると、低誘電特性を充分に発揮できないおそれがあり、4000g/molを超えると、耐熱性や成形性が充分とはならないおそれがある。より好ましくは、下限が120g/mol、上限が3000g/molであり、更に好ましくは、下限が150g/mol、上限が2500g/molである。
上記樹脂組成物の粘度としては、25℃又は60℃において、下限が100mPa・s、上限が1000000mPa・sであることが好ましい。より好ましくは、下限が150mPa・s、上限が800000mPa・sであり、更に好ましくは、下限が200mPa・s、上限が6000000mPa・sである。
上記樹脂組成物には更に、必要に応じて他の成分を含有させてもよいが、このような他の成分としては、例えば、安定剤、離型剤、カップリング剤、着色剤、可塑剤、溶剤や反応性希釈剤等の希釈剤、可とう化剤、各種ゴム状物、光感光剤、充填材、難燃剤、顔料等が挙げられる。これらの使用量としては、本発明の作用効果を損なわない範囲内で適宜設定すればよい。
本発明の樹脂組成物としては、硬化剤を用いて熱硬化することにより、硬化物とすることができる。硬化剤としては、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水ピロメリット酸、メチルナジック酸等の酸無水物類;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、テルペンフェノール樹脂等の種々のフェノール樹脂類;種々のフェノール類とヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザール等の種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂等の各種のフェノール樹脂類;BF錯体、スルホニウム塩類、イミダゾール類等の1種又は2種以上を用いることができる。
上記硬化剤の使用量としては特に限定されないが、例えば、本発明の樹脂組成物100重量部に対し、下限が0.05重量部、上限が10重量部であることが好適である。より好ましくは、下限が0.01重量部、上限が5重量部である。
上記硬化においてはまた、硬化促進剤を用いることができ、例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルヘキサデシルホスフォニウムブロマイド、トリブチルホスフィン、トリス(ジメトキシフェニル)ホスフィン等の有機リン化合物等の1種又は2種以上が好適である。なお、硬化促進剤の使用量としては、本発明の作用効果を損なわない範囲内で適宜設定すればよい。
なお、硬化条件に関し、硬化温度としては、下限は70℃、上限は200℃であることが好ましい。より好ましくは、下限が80℃、上限が180℃である。また、硬化時間としては、下限が1時間、上限が15時間であることが好ましい。より好ましくは、下限が5時間、上限が10時間である。
上述のようにして得られる硬化物としては、異形品等の成形体が挙げられ、このような本発明の樹脂組成物を用いてなる成形体もまた、本発明の1つである。上記硬化物としてはまた、フィルム、シート、ペレット等の形態も挙げられ、このような本発明の樹脂組成物を用いてなる硬化物もまた、本発明の好適な形態の1つである。
上記樹脂組成物としては、例えば、機械部品材料、電気・電子部品材料、車両、船舶、航空機等の部品材料、土木建築材料、成形材料、塗料や接着剤の材料等として好適に用いられるものである。中でも、成形材料として特に有用なものであり、上記樹脂組成物を用いてなる成形材料もまた、本発明の好適な形態の1つである。
本発明の樹脂組成物を製造する方法としては、上記3成分を必須とする樹脂組成物が得られる限り、各成分の添加方法や混合方法等は特に限定されるものではないが、例えば、無機微粒子を含有するフェノール化合物と、無機微粒子を含有するグリシジル基及び/又はエポキシ基を少なくとも1つ含む化合物とを混合する工程を含んでなる製造方法とすることが特に好適である。この場合には、無機微粒子がそれぞれ充分に分散及び/又は溶解した状態のもの同士を混合することとなるため、樹脂組成物全体として無機微粒子の含有量を大幅に向上させることができ、無機微粒子に起因する特異的な性質を更に充分に発揮することが可能となる。具体的には、熱膨張率が大幅に低減され、絶縁性や熱衝撃耐性に特に優れた硬化物を得ることが可能となる。このように、フェノール化合物、グリシジル基及び/又はエポキシ基を少なくとも1つ含む化合物並びに無機微粒子の3成分を必須とする樹脂組成物の製造方法であって、該製造方法は、無機微粒子を含有するフェノール化合物と、無機微粒子を含有するグリシジル基及び/又はエポキシ基を少なくとも1つ含む化合物とを混合する工程を含んでなる樹脂組成物の製造方法もまた、本発明の1つである。
上記製造方法において、無機微粒子を含有するフェノール化合物と、無機微粒子を含有するグリシジル基及び/又はエポキシ基含有化合物との混合方法としては特に限定されず、通常の方法を用いることができ、また、これらの化合物の質量比としても特に限定されない。また、これらの化合物の添加方法についても特に限定されず、例えば、滴下、分割投入、一括投入、後混合等のいずれの方法を用いてもよい。なお、これらの化合物には、予め上述した他の成分を含有させてもよいし、これらの化合物を混合した後に他の成分を添加してもよい。
上記製造方法で得られる樹脂組成物の好適な形態としては、上述したとおりである。
上記製造方法において、無機微粒子を含有するフェノール化合物としては、フェノール化合物中に無機微粒子が分散及び/又は溶解してなる形態であることが好ましく、その製造方法としては、例えば、(1)フェノール化合物と無機微粒子とをそれぞれ製造した後に混合する方法、(2)フェノール化合物を製造し、そのフェノール化合物を含有してなる溶液中で、アルコキシド化合物及び/又はカルボン酸塩化合物を加水分解及び縮合して無機微粒子を得ることで混合する方法、(3)フェノール化合物用反応原料を含有してなる溶液中でアルコキシド化合物及び/又はカルボン酸塩化合物を加水分解及び縮合した後、フェノール化合物を製造する方法等が好適である。中でも、(2)又は(3)の方法が好ましい。このような製造方法を用いることにより、フェノール化合物と無機微粒子との複合化が行われ、マトリックスであるフェノール化合物中に、酸化珪素系微粒子等の無機微粒子が微細に分散した有機−無機ハイブリッド(複合体)である樹脂組成物を得ることが可能となる。なお、このようにして得られた有機−無機ハイブリッドは、優れた難燃性を発揮するものである。
上記無機微粒子を含有するフェノール化合物としてはまた、上記製造方法(2)又は(3)における加水分解・縮合反応工程により得られる化合物に、更にフェノール化合物や無機微粒子を添加して混合することにより製造してもよい。
上記(2)の製造方法としては、まず上述したようにしてフェノール化合物を製造し、そのフェノール化合物を含有してなる溶液を調製する。次に、その溶液にアルコキシド化合物及び/又はカルボン酸塩化合物と、水又はそれを含有する溶媒とを投入して、加水分解及び縮合反応を行うことになる。好ましくは、ゾル−ゲル法である。
上記フェノール化合物を含有してなる溶液としては、上述した各種溶媒の中でも、メタノール、エタノール等のアルコール類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ピリジン等の親水性有機溶媒等の溶媒にフェノール化合物を含有したものが好適である。また、必要に応じて、その他の溶媒等を添加してもよい。なお、溶媒の使用量としては、フェノール化合物100重量部に対して、下限が5重量部、上限が500重量部であることが好ましい。より好ましくは、下限が20重量部、上限が200重量部である。
上記製造方法での加水分解及び縮合の反応条件に関し、反応温度としては、例えば、下限が0℃、上限が120℃であることが好ましい。より好ましくは、下限が20℃、上限が80℃である。反応時間としては、下限が30分、上限が24時間とすることが好ましい。より好ましくは、下限が1時間、上限が12時間である。
上記(3)の製造方法としては、まず、フェノール化合物用反応原料である上述したような芳香族骨格を形成する化合物及び/又は有機骨格形成する化合物を含有してなる溶液を調製し、その溶液にアルコキシド化合物及び/又はカルボン酸塩化合物と、水又はそれを含有する溶媒とを投入して、加水分解及び縮合反応を行い、上記無機微粒子が分散したフェノール化合物用反応原料溶液を得ることになる。好ましくは、ゾル−ゲル法である。次に、上述した反応条件により、フェノール化合物を合成することとなる。
上記フェノール化合物用反応原料を含有してなる溶液に用いる溶媒及び溶媒の使用量としては、上記製造方法(2)と同様に用いることができ、また、加水分解及び縮合の反応条件についても同様である。
上記無機微粒子を含有するフェノール化合物において、無機微粒子の含有率としては、無機微粒子を含有するフェノール化合物の総量100質量%に対して、下限が3質量%、上限が80質量%であることが好適である。3質量%未満であると、樹脂組成物全体としての無機微粒子含有量を充分には向上することができず、絶縁性や熱衝撃耐性等に優れた硬化物を得られないおそれがあり、80質量%を超えると、ハンドリング性が充分とはならず、成型性を向上できないおそれがある。より好ましくは、下限が5質量%、上限が50質量%である。
上記製造方法において、無機微粒子を含有するグリシジル基及び/又はエポキシ基含有化合物としては、グリシジル基及び/又はエポキシ基含有化合物中に無機微粒子が分散及び/又は溶解してなる形態であることが好ましく、その製造方法としては、例えば、(1)グリシジル基及び/又はエポキシ基含有化合物と無機微粒子とをそれぞれ製造した後に混合する方法、(2)グリシジル基及び/又はエポキシ基含有化合物の存在下で、水を投入してアルコキシド化合物及び/又はカルボン酸塩化合物を加水分解・縮合して無機微粒子を得ることで混合する方法等が好適である。中でも、(2)の方法が好ましく、これにより、グリシジル基及び/又はエポキシ基含有化合物中に無機微粒子を均一かつ微細に分散することが可能となる。
上記無機微粒子を含有するグリシジル基及び/又はエポキシ基含有化合物としてはまた、上記製造方法(2)における加水分解・縮合反応工程により得られる化合物に、更にグリシジル基及び/又はエポキシ基含有化合物や無機微粒子を添加して混合することにより製造してもよい。
上記(2)の製造方法においては、水を用いることとなるが、アルコキシド化合物及び/又はカルボン酸塩化合物100重量部に対して、下限が10重量部、上限が50重量部の水を添加して反応させることが好適である。より好ましくは、下限が20重量部、上限が40重量部である。
上記反応に用いる水は、イオン交換水、pH調整水等のいずれを用いてもよいが、pH7前後の水を用いることが好ましい。このような水を用いることにより、組成物中のイオン性不純物量を低減させることが可能となり、低吸湿性又は高絶縁性の樹脂組成物とすることが可能となる。
上記水の使用形態としてはアルコキシド化合物及び/又はカルボン酸塩化合物に滴下する形態でもよいし、一括投入する形態でもよい。
上記(2)の製造方法における加水分解・縮合工程においては、触媒としてZn、B、Al、Ga、In、Ge、Pb、P、Sb及びBiからなる群より選択される1種類以上の元素を含有する有機金属化合物を必須として用いることが好適である。このような有機金属化合物は、加水分解性を有することが好ましく、より好ましくは、加水分解した後に金属酸化物骨格又は結晶格子中に組み込まれる化合物である。例えば、無機化合物がシリカの場合、加水分解・縮合触媒として酸・アルカリ化合物を用いてpH調整を必須とすると、酸・アルカリ化合物は組成物中にイオン性不純物として残存するため、組成物本来の低吸湿性や絶縁性を損なうことがある。それに対して上記有機金属化合物を用いる場合には、シリカ分散時にシロキサン架橋構造中に取り込まれ、樹脂組成物調製後にイオン性不純物が残存することによる物性低下を引き起こすことがなく、従来のエポキシ樹脂と同等の利用分野で使用できることとなる。
上記有機金属化合物としては、例えば以下のような化合物等が好適である。
有機亜鉛化合物:酢酸亜鉛2水和物、(メタ)アクリル酸亜鉛、オクテン酸亜鉛、シュウ酸亜鉛2水和物、亜鉛メトキシエトキシド、ネオデカン酸亜鉛、ウンデカン酸亜鉛、亜鉛ビス(ビス(トリメチルシリル)アミド)、亜鉛ジブチルジチオカーバメート、亜鉛ジエチルジチオカーバメート、亜鉛ジメチルジチオカーバメート、亜鉛N,N′−ジメチルアミノエトキシド、亜鉛8−ヒドロキシキノリネート、亜鉛2,4−ペンタンジオネート、亜鉛2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート。
有機ボロン化合物:ボラトレイン、ボロンアリロキシド、ボロン−n−ブトキシド、ボロン−tert−ブトキシド、ボロンエトキシド、ボロンイソプロポキシド、ボロンメトキシド、ボロンメトキシエトキシド、ボロン−n−プロポキシド、トリス(トリメチルシロキシ)ボロン、ボロンビニルジメチルシロキシド、ジフェニルボラン8−ヒドロキノリネート。
有機アルミニウム化合物:アルミニウム ジ−s−ブトキシド−エチルアセテート、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、ジ−i−プロポキシ・アセチルアセトナートアルミニウム、i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム。
有機ガリウム化合物:ガリウム8−ヒドロキシキノリネート、ガリウム(III)2,4−ペンタンジオネート、ガリウム(III)エトキシド、ガリウム(III)2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、ガリウム(III)トリス(ビス(トリメチルシリル)アミド)、Nトリス(ジメチルアミノ)ガリウム。
有機インジウム化合物:インジウムヘキサフルオロペンタンジオネート、インジウムメトキシエトキシド、インジウム2,4−ペンタンジオネート、インジウムメチル(トリメチル)アセチルアセテート、インジウムトリフルオロペンタンジオネート。
有機ゲルマニウム化合物:ヒドロキシゲルマトレン、メチルトリエトキシゲルマニウム、テトラ−n−ブトキシゲルマニウム、テトラ−n−エトキシゲルマニウム、テトライソプロポキシゲルマニウム、テトラメトキシゲルマニウム、テトラキス(トリメチルシロキシ)ゲルマニウム、トリ−n−ブチルアセトキシゲルマニウム、トリエチルメトキシゲルマニウム。
有機鉛化合物:酢酸鉛(II)3水和物、酢酸鉛(IV)、テトラフルオロ酢酸鉛(II)、(メタ)アクリル酸鉛(II)、プロピオン酸鉛(IV)、オクテン酸鉛(II)、ネオデカン酸鉛(II)、鉛(II)2,4−ペンタンジオネート、鉛(II)6,6,7,7,8,8,8−ヘプタフルオロ−2,2−ジメチル−3,5−オクタンジオネート、鉛(II)ヘキサフルオロペンタンジオネート、鉛(II)2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート。
有機リン化合物:ジエチルホスファイト、トリス(トリメチルシリル)ホスファイト、トリエチルホスフェート、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート、ジエチルホスフェートエチルトリエトキシシラン、ジメチル(トリメチルシリル)ホスファイト、2−(ジフェニルホスフィノ)エチルジメチルエトキシシラン、2−(ジフェニルホスフィノ)エチルトリエトキシシラン、ジフェニルホスフィン。
有機アンチモン化合物:酢酸アンチモン、アンチモン(III)n−ブトキシド、アンチモン(III)n−エトキシド、トリフェニルアンチモン、トリス(ジメチルアミノ)アンチモン。
有機ビスマス化合物:酢酸ビスマス、オクテン酸ビスマス、サリチル酸ビスマス、ビスマスヘキサフルオロペンタンジオネート、ビスマス(III)t−ペントキシド、ビスマス2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート。
上記加水分解・縮合反応においては、上述の触媒以外の触媒を用いてもよく、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸類;各種スルホン酸、スルホン酸型イオン交換樹脂等の有機酸類;テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン酸エステル類;ジブチルスズラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズアセテート、オクチル酸スズ、ナフテン酸スズ等のスズカルボン酸類;トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のジルコニウムキレート化合物類;ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム、テトラキス(アセチルアセトナート)チタニウム等のチタニウムキレート化合物類;アンモニア、ブチルアミン、オクチルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、ベンジルアミン、ベンジルジメチルアミン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2,4,6−トリスジメチルアミノフェノール、モルホリン、DBU(1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセン)等のアミン系化合物類、それらとカルボン酸等との塩等の1種又は2種以上を用いることができる。
上記加水分解・縮合触媒の使用量としては、アルコキシド化合物及び/又はカルボン酸塩化合物100重量部に対して、下限が0.1重量部、上限が20重量部であることが好ましい。より好ましくは、下限が0.5重量部、上限が10重量部である。
上記加水分解・縮合反応においてはまた、有機溶媒を用いることもでき、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、メチルエチルセロソルブ、ブチルセロソルブ(エチレングリコールモノブチルエーテル)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエーテル類;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド類;アセトン、2−ブタノン(MEK)等のケトン類;メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール類;グリシジルメタクリレート等の反応性希釈剤;ヘキサン、シクロヘキサン等のハイドロカーボン類;トルエン、キシレン、m−クレゾール、ベンゼン、ニトロベンゼン等の芳香族類;クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン類;ジメチルポリシロキサン、サイクロメチコーン等のシリコーン類;アセトニトリル、ジオキサン、ピリジン等の1種又は2種以上を用いることができる。
上記有機溶媒の使用量としては、グリシジル基及び/又はエポキシ基含有化合物100重量部に対して、下限が20重量部、上限が120重量部であることが好ましい。より好ましくは、下限が30重量部、上限が110重量部であり、更に好ましくは、上限が100重量部である。
上記製造方法での加水分解及び縮合の反応条件に関し、反応温度としては、下限が0℃、上限が200℃であることが好ましい。より好ましくは、下限が10℃、上限が150℃であり、更に好ましくは、下限が20℃、上限が100℃である。また、反応時間としては、下限が30分、上限が24時間であることが好ましい。より好ましくは、下限が1時間、上限が18時間であり、更に好ましくは、下限が2時間、上限が12時間である。
上記無機微粒子を含有するグリシジル基及び/又はエポキシ基含有化合物において、無機微粒子の含有率としては、無機微粒子を含有するグリシジル基及び/又はエポキシ基含有化合物の総量100質量%に対して、下限が3質量%、上限が80質量%であることが好適である。3質量%未満であると、樹脂組成物全体としての無機微粒子含有量を充分には向上することができず、絶縁性や熱衝撃耐性等に優れた硬化物を得られないおそれがあり、80質量%を超えると、ハンドリング性が充分とはならず、成型性を向上できないおそれがある。より好ましくは、下限が5質量%、上限が50質量%である。
本発明の樹脂組成物は、上述のような構成であるので、絶縁性や熱衝撃耐性、成形性、強度等の各種物性に優れ、高外観を呈する硬化物を形成できるものであることから、例えば、機械部品材料、電気・電子部品材料、車両、船舶、航空機等の部品材料、土木建築材料、成形材料、塗料や接着剤の材料等として好適に用いられるものである。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
製造例1:エポキシ樹脂A
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名「ESCN−220HH」、エポキシ当量220g/mol、住友化学工業社製)をそのまま使用した。
製造例2:エポキシ樹脂組成物Bの合成
ガスインレット、冷却管、熱媒循環装置の付いた1L加熱型ニーダーに、エポキシ樹脂(商品名「ESCN220」、住友化学工業社製)361.3g、ブチルセロソルブ154.9gを仕込み、40℃にてよく攪拌し均一溶液になったところで室温まで冷却し、テトラメトキシシラン255.1g、フェニルトリメトキシシラン83.1gを室温にて一括投入し、引き続きニーダー内温100℃まで昇温して4時間保持した。次に酢酸亜鉛2水和物3.18gを投入し更に2時間保持した後に、減圧下で揮発成分としてのメタノールとブチルセロソルブを留去して半透明な固体であるエポキシ樹脂組成物Bを得た。収量580g、エポキシ当量は360g/mol、無機微粒子含有率は30.6%、熱軟化温度は118℃であった。
製造例3:エポキシ樹脂組成物Cの合成
ガスインレット、冷却管、攪拌棒付きの4つ口500mLフラスコに、エポキシ樹脂(商品名「YX4000H」、ジャパンエポキシレジン社製)168.6g、ジグライム166.9gを仕込み、室温にてよく攪拌し均一溶液になったところで、テトラメトキシシラン58.1g、フェニルトリメトキシシラン75.7gを投入して室温にて攪拌し均一溶液を得た。この混合液を攪拌しながらイオン交換水48.2gを室温にて2時間かけて滴下投入し、引き続き100℃まで昇温して4時間保持した。次にトリメトキシボラン0.78gを投入し更に2時間保持した後、減圧下で揮発成分のメタノールとジグライムを留去し、冷却後に粘凋な液体であるエポキシ樹脂組成物Cを得た。収量は260g、エポキシ当量は307g/mol、無機微粒子含有率は29.8%であった。
製造例4:多価フェノール樹脂組成物Aの合成
ガスインレット、ディーンスタークトラップ、攪拌棒付きの4つ口500mlフラスコに、
フェノール310.7g、ベンゾグアナミン21.6g、メラミン43.7g、37%ホ
ルマリン溶液113.5gを仕込み、窒素気流中で60℃で白濁溶液を攪拌しながらアンモニア水5mlを滴下した。攪拌液が透明になったところで80℃まで昇温し、攪拌しながら4時間保持した後160℃まで昇湿した。その後減圧下で残存フェノール等を留去し、冷却後に褐色固体の多価フェノール(1)を得た。
ガスインレット、ディーンスタークトラップ、攪拌棒付きの4つ口500mlフラスコに、フェノール346.8g、37%ホルマリン溶液74.8g、トリエチルアミン3.7gを仕込み、窒素気流中で昇温を開始した。100℃付近で縮合反応が始まり、還流状態で1時間保持し更に37%ホルマリン溶液74.8gを加え、3時間保持した。その後180℃まで昇温し生成水/メタノール等を留去、その後160℃で真空減圧下で残存フェノール等を留去し、冷却後に褐色透明固体の多価フェノール(2)を得た。
多価フェノール(1)73.4gと多価フェノール(2)73.4gをメタノール146.8gにフラスコ中で溶解させ、そこにPTFEチューブを2本用意し、一本はフラスコに底部まで差し込み、他方は液面から上に保持した。フラスコの内温を20℃に保ちながら攪拌し、テトラメトキシシラン159.3gをフラスコ上部のチューブから、イオン交換水47.2gをフラスコ底部のチューブから、それぞれフラスコ内に、4時間かけて投入した。更に60℃まで昇温し4時間保持した後に、昇温を開始しメタノール・水を留去しながら160℃まで昇温した。その後、減圧下で揮発分を完全に留去し、冷却後に乳白色固体の多価フェノール樹脂組成物Aを得た。収量208.5g、熱軟化温度125℃、水酸基当量162g/mol、無機微粒子含有量29.6%であった。
製造例5:多価フェノール樹脂組成物Bの合成
ガスインレット、ディーンスタークトラップ、攪拌棒付きの4つ口2000mlフラスコに、p−キシリレングリコールジメチルエーテル513.9g、フェノール831.3g、p−トルエンスルホン酸8.41gを仕込み、窒素気流中で昇温を開始した。115℃付近からメタノールが生成し始めたので、トラップでメタノールを捕集しながら150℃まで昇温し、6時間保持した。メタノールを192g回収したところでメタノールの生成が終了したので、その後、減圧下で残存フェノール等を留去し、冷却後に褐色透明固体の多価フェノール(3)を得た。
多価フェノール(1)73.4gと多価フェノール(3)73.4gをメタノール146.8gにフラスコ中で溶解させ、そこにPTFEチューブを2本用意し、一本はフラスコに底部まで差し込み、他方は液面から上に保持した。フラスコの内温を20℃に保ちながら攪拌し、テトラメトキシシラン159.3gをフラスコ上部のチューブから、イオン交換水47.1gをフラスコ底部のチューブから、それぞれフラスコ内に、4時間かけて投入した。
更に60℃まで昇温し4時間保持し、その後160℃まで昇温し生成水/メタノール等を留去しながら180℃まで昇温した。その後、160℃減圧下で挿発分を完全に留去し、冷却後に乳白色固体の多価フェノール樹脂組成物Bを得た。収量209.5g、熱軟化湿度105℃、水酸基当量197g/mol、無機微粒子含有量29.2%であった。
製造例6:多価フェノール樹脂組成物Cの合成
ガスインレット、ディーンスタークトラップ、攪拌棒付きの4つ口1Lフラスコに、フェノール235.3gを仕込み窒素気流中で40℃に保持し、フェノールを溶融状態に保持した。PTFEチューブを2本用意し、一本はフラスコに底部まで差し込み、他方は液面から上に保持した。テトラメトキシシラン173.6gをフラスコ上部のチューブから、15%アンモニア水60.5gをフラスコ底部のチューブから、それぞれフラスコ内に4時間かけて投入し、その後60℃で4時間保持した。続いて37%ホルマリン溶液50.7gを投入し昇温を開始したところ、100℃付近の還流状態となった。1時間保持した後、37%ホルマリン溶液50.7gを加え、3時間保持した。その後180℃まで昇温し生成水/メタノール等を留去、その後160℃減圧下で残存フェノール等を留去し、冷却後に乳白色固体の多価フェノール樹脂組成物Cを得た。収量228.5g、熱軟化温度92℃、水酸基当量147g/molであった。
製造例7:多価フェノール樹脂組成物Dの合成
多価フェノール(2)を146.5gとメタノール146.5gをフラスコ中で溶解させ、そこにPTFEチューブを2本用意し、一本はフラスコに底部まで差し込み、他方は液面から上に保持した。フラスコの内温を20℃に保ちながら攪拌し、テトラメトキシシラン158.9gをフラスコ上部のチューブから、イオン交換水47.0gをフラスコ底部のチューブから、それぞれフラスコ内に、4時間かけて投入した。更に60℃まで昇温し4時間保持した後に、メタノール・水を留去しながら160℃まで昇温した。その後、160℃減圧下で揮発分を完全に留去し、乳白色固体の多価フェノール樹脂組成物Dを得た。収量209g、熱軟化温度94℃、水酸基当量148g/mol、無機微粒子含有量29.5%であった。
参考例1〜2、実施例〜4、比較例1〜4
成型用樹脂組成物の作成方法
容量が300mlの減圧装置を付帯した加熱型混練槽に、エポキシ樹脂Aから多価フェノール樹脂組成物Dまでを表1に示すような比率で150g投入し、110℃で溶解させ減圧下で30分間混合した。その後、硬化促進剤トリフェニルホスフィンを表1の比率で投入し、30秒間減圧下で混練した。直ぐに厚み1mmの成形型に流し込み、110℃で3時間150℃で3時間オーブン中で硬化させ、1mm厚の樹脂板を得た。
得られた樹脂板を用い、以下のようにして、ガラス転移温度(Tg)、熱膨張率(α、α)及び無機微粒子の慣性半径を求め、また、温度サイクル試験により樹脂板の外観を評価した。
<ガラス転移温度(Tg)、熱膨張率(α、α)>
得られた樹脂板を用い、上述した(熱膨張率測定方法)に従って、Tg及び熱膨張率(α、α)を決定した。具体的には、得られた樹脂板を5mm×5mmに切り出してTMAにより測定し、得られた温度−変形カーブにおけるTg前後の直線部分に接線を引き、その交点での温度をTgとした。また、Tg−80℃からTg−30℃の平均熱膨張率をα、Tg+30℃からTg+80℃の平均熱膨張率をαとした。測定装置及び測定条件は、上述した通りである。
<無機微粒子の慣性半径>
得られた樹脂板を用い、上述した(無機微粒子の慣性半径測定)手順に従って、無機微粒子の粒径半径を求めた。なお、表1では、0.1〜10.0nm、10.0〜100nm及び100nm以上の粒度分布を体積%で示した。
<温度サイクル試験>
得られた樹脂板を5cm各に切り出し、−60℃を10分、150℃を保持時間10分で1000サイクル繰り返し、その後の樹脂板の外観を光学顕微鏡で調べ、以下のように評価した。
×:膨れ・剥がれ・クラックが入っているもの
△:膨れがあるもの
○:膨れ・剥がれ・クラックが全く無いもの
Figure 0004502852

Claims (9)

  1. フェノール化合物、グリシジル基及び/又はエポキシ基を少なくとも1つ含む化合物並びに無機微粒子の3成分を必須とする樹脂組成物であって、
    該樹脂組成物は、その硬化物におけるTg以下の熱膨張率αとTg以上の熱膨張率αとの比率(α/α)が1.9以下であり、
    該無機微粒子は、酸化珪素系微粒子であって、
    構成金属成分としてSiを50〜100モル%、Zn、B、Al、Ga、In、Ge、Pb、P、Sb及びBiからなる群より選択される少なくとも1種以上の元素を50〜0モル%含有し、粒度分布として0.5nm以上10nm未満の粒子を25〜65体積%、10nm以上100nm未満の粒子を35〜75体積%有するものであることを特徴とする樹脂組成物。
  2. 前記フェノール化合物は、フェノール性水酸基を少なくとも1つ有する芳香族骨格同士が、炭素数が2以上の有機骨格を介して結合してなる構造を有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記有機骨格は、トリアジン環及び/又は芳香環を有することを特徴とする請求項2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記無機微粒子は、独立した球状粒子及び/又はその凝集体であり、凝集体としての平均粒子径が100μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
  5. 前記無機微粒子の粒度分布は、樹脂組成物の硬化板をX線小角散乱分析に供し、この測定により得られた散乱プロファイルからFankuchenの方法によりギニエプロットを作成して慣性半径を算出し、粒子の幾何学形状を球と仮定することにより求められることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
  6. 前記フェノール化合物は、有機骨格として窒素原子を含有する環構造を有し、窒素原子含有率の下限が1質量%、上限が50質量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
  7. 前記樹脂組成物は、無機微粒子を含有するフェノール化合物と、無機微粒子を含有するグリシジル基及び/又はエポキシ基を少なくとも1つ含む化合物とを混合することにより得られることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
  8. 請求項1〜のいずれかに記載の樹脂組成物を用いてなることを特徴とする成形体。
  9. フェノール化合物、グリシジル基及び/又はエポキシ基を少なくとも1つ含む化合物並びに無機微粒子の3成分を必須とする樹脂組成物の製造方法であって、
    該無機微粒子は、0.5nm以上10nm未満の粒子が25〜65体積%、10nm以上100nm未満の粒子が35〜75体積%であり、
    該製造方法は、無機微粒子を含有するフェノール化合物と、無機微粒子を含有するグリシジル基及び/又はエポキシ基を少なくとも1つ含む化合物とを混合する工程を含んでなることを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
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