JP4599752B2 - フェライト焼結磁石の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、希土類元素を含有する酸化物を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気特性の高い磁石としては、希土類磁石が知られている。希土類磁石は、希土類元素を含有し、かつ金属を主成分とする磁石であり、SmCo5系、Sm2Co17系などのSm−Co系磁石や、例えば特許第1431617号公報に記載されているNd2Fe14B系磁石が知られている。また、例えば特開平10−312918号公報に記載された、Sm2Fe17に窒素を固溶させた希土類窒化磁石も、希土類磁石の1種である。
【0003】
希土類磁石を製造する際には、最終段階において形状および寸法を調整するために磁石の研磨が行われる。この研磨により発生した研磨カスは、磁石と同様に金属化合物からなり、かつ、酸化が進んでいる。そのため、研磨カスは原料メーカに戻され、還元、分離などが行われて、再び希土類元素やCo等の金属素材として希土類磁石の原料などに用いられるのが一般的である。すなわち、希土類元素やCoは、金属としてリサイクルされる。また、希土類磁石製造の際には、焼結不良や組成ずれが発生することがあり、その結果、不良材が発生することがある。この不良材も酸素含有量が多いため、やはり還元、分離などが行われて金属素材としてリサイクルされるのが一般的である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
希土類磁石のリサイクル過程では、還元、分離などの精製処理に多大なコストがかかる。そのため、リサイクルされた希土類元素やCoは、研磨カスや不良材などの安価な廃材が原料であるにもかかわらず、安価に供給することは難しい。
【0005】
本発明は、希土類磁石の製造工程において生じた研磨カスや不良材などの廃材をリサイクルするに際し、リサイクルコストを低減することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)の本発明により達成される。
(1) 出発原料を仮焼した後、粉砕し、粉砕粉を成形した後、焼結するフェライト焼結磁石の製造方法であって、前記出発原料の一部として、希土類磁石の製造工程において発生した前記希土類磁石を含む廃材を用い、前記希土類磁石はSm−Co系磁石、Nd 2 Fe 14 B系磁石又はSm 2 Fe 17 に窒素を固溶させた希土類窒化磁石である、フェライト焼結磁石の製造方法。
【0007】
【発明の実施の形態】
前述したように、従来、希土類磁石の製造工程において発生した研磨カスや不良材等の廃材は、再び希土類磁石の原料として使用するために高コストの精製処理が施されている。そのため、希土類磁石の廃材のリサイクルは、資源保護の点では有意義であったが、コスト低減にはそれほど有用ではなかった。
【0008】
これに対し本発明では、希土類磁石の廃材を、希土類元素を含有する酸化物を製造する際に原料の一部として用いる。上記廃材は酸化されているが、酸化物の原料に用いる場合には酸化されていても問題はない。そのため本発明では、希土類磁石の廃材に対し還元、分離等の精製処理を施す必要がないので、希土類磁石の廃材のリサイクルコストを著しく低減することができる。
【0009】
このように本発明は、希土類磁石の廃材をリサイクルするに際し、酸化が進んだ廃材の中の金属元素を再び金属として循環させるという従来の常識的な視点から離れ、酸化が進んでいる廃材をそのままの状態でリサイクルすることを特徴とする。
【0010】
本発明において、廃材の供給源となる希土類磁石の組成は特に限定されなず、例えば、前記したSm−Co系磁石、Nd2Fe14B系磁石、Sm2Fe17に窒素を固溶させた希土類窒化磁石などのいずれであってもよい。
【0011】
本発明の製造方法が適用される酸化物は特に限定されないが、本発明は酸化物焼結体、特にフェライト焼結磁石の製造に好適であり、特に、六方晶マグネトプランバイト型(M型)であって、Fe、元素A(Aは、Sr、Ba、CaおよびPbから選択される少なくとも1種)、元素R(Rは、希土類元素またはこれとBiとから選択される少なくとも1種)および元素M(Mは、Co、Mn、NiおよびZnから選択される少なくとも1種)を含有する焼結磁石の製造に好適である。このような焼結磁石としては、
式I A1-xRx(Fe12-yMy)zO19
(上記式Iにおいて、
0.04≦x≦0.9、
0.04≦y≦1.0、
0.4≦x/y≦4、
0.7≦z≦1.2
である)
で表される組成をもつ磁石が好ましい。元素Mとしては、特にCoが好ましい。Coを含有することにより保磁力の温度特性が良好となる。このような組成をもつ磁石は例えば特開平11−154604号公報に記載されており、高い残留磁束密度と高い保磁力とを示す。
【0012】
上記式Iで表される磁石を製造するに際し、Sm−Co系磁石の廃材は、元素R(Sm)および元素M(Co)の供給源となる。また、Nd2Fe14B系磁石の廃材は、元素R(Nd)およびFeの供給源となるため、本発明ではSm−Co系磁石またはNd2Fe14B系磁石の廃材を用いることが好ましい。また、Coを含有するフェライト焼結磁石では保磁力の温度特性が良好であること、また、Coは高価であることから、特にSm−Co系磁石の廃材が有用である。
【0013】
本発明によってフェライト焼結磁石を製造する場合、希土類元素の全量を前記廃材から供給してもよく、一部だけを廃材から供給してもよい。上記フェライト焼結磁石は希土類元素としてLaを含有する場合に特に高特性が得られるが、希土類磁石にはLaを主成分とするものは存在しない。フェライト焼結磁石にLaを添加したい場合には、希土類元素供給原料として、希土類磁石の廃材に加えLa2O3等のLa化合物を原料として用いればよい。
【0014】
なお、廃材を出発原料の一部として用いると、焼結の際の結晶粒成長が過剰になりやすく、また、スピネル相が生じやすくなり、その結果、保磁力が低くなることがある。このような保磁力の低下を避けるためには、上記式Iにおいてそれぞれ廃材に由来する元素Rの比率および元素Mの比率がいずれも0.2以下となるように、廃材使用量を制御することが好ましい。例えば、元素MをCoとし、Coの全量を廃材から供給する場合、上記式Iにおけるyは0.2以下であることが好ましい。
【0015】
フェライト焼結磁石は、出発原料を秤量して配合し、これを仮焼した後、粉砕し、粉砕粉を成形した後、焼結することにより製造されることが一般的であるが、仮焼と成形との間において出発原料の一部を添加する方法も知られている。本発明は、出発原料の一部として希土類磁石の廃材を用いるほかは、従来の製造方法と同様である。希土類磁石の研磨は湿式で行われるため、研磨カスは、通常、スラッジとなっている。また、フェライト焼結磁石製造の際には、通常、出発原料を湿式で配合する。そのため、希土類磁石の研磨カスを含むスラッジは、乾燥させることなくフェライト焼結磁石の出発原料として利用できる。したがって、希土類磁石の研磨工程とフェライト焼結磁石の出発原料配合工程とを隣り合わせで配置することにより、本発明を適用したときの生産性をさらに向上させることができる。
【0016】
なお、希土類磁石の廃材は酸化が進んではいるが、通常、廃材全体が化学量論組成の酸化物となっているわけではない。出発原料の一部として用いる廃材の酸化の度合いが化学量論組成の酸化物より低い場合、仮焼時や焼結時に他の出発原料を還元することがあり、その結果、磁石特性を低下させることがある。また、廃材は常に一定の酸化度ではなく、通常、酸化の度合いにばらつきがある。そのため、出発原料の秤量時に秤量誤差が生じることがある。このような問題の発生を防ぐために、廃材全体が化学量論組成の酸化物またはこれに近い酸化度となるように、廃材に酸化処理を施してもよい。この酸化処理は、例えば、空気中等の酸化性雰囲気中で廃材を熱処理するなどの簡易な方法により行うことができる。
【0017】
【実施例】
サンプル No. 1〜 No. 4
Sm−Co系磁石の研磨カスを含むスラッジを用意し、これを出発原料の一部として用い、以下の手順でフェライト焼結磁石サンプルを作製した。この研磨カスの組成は、
CoO :49.9質量%、
Sm2O3:24.5質量%、
Fe2O3:15.7質量%、
CuO : 7.1質量%、
ZrO2 : 2.8質量%
であった。なお、この組成は、上記スラッジを乾燥させた後、金属元素の存在比率を測定し、各金属元素が上記化学量論組成の酸化物として存在すると仮定して求めた酸化物換算値である。
【0018】
出発原料として上記スラッジ、SrCO3、La2O3およびFe2O3を用意し、焼結後の組成が
Sr1-x(Sm+La)x(Fe12-yCoy)O19
においてx=y=0.1となるように秤量した。すなわち、Coの全量を上記スラッジから供給した。出発原料に対し0.2質量%のSiO2および0.15質量%のCaCO3を添加した後、アトライタを用いて湿式粉砕・混合を2時間行った。
【0019】
次いで、乾燥して整粒した後、空気中において3時間仮焼した。仮焼温度を表1に示す。
【0020】
次いで、仮焼材に対し0.4質量%のSiO2および1.25質量%のCaCO3を添加した後、乾式振動ロッドミルにより20分間粉砕し、さらにオレイン酸1.3質量%を添加した後、ボールミルによりキシレン中で40時間粉砕した。得られたスラリーを約85質量%の濃度となるまで濃縮した後、磁場中で湿式成形し、直径30mm、高さ15mmの円柱状の成形体を得た。この成形体を空気中において焼結した。焼結温度を表1に示す。
【0021】
得られた焼結体の残留磁束密度(Br)、保磁力(HcJ)、角形比(Hk/HcJ)および−80〜120℃の温度範囲におけるHcJの温度特性を、表1に示す。なお、上記Hk/HcJにおけるHkは、磁気ヒステリシスループの第2象限において磁束密度が残留磁束密度の90%になるときの外部磁界強度である。Hkが低いと高い最大エネルギー積が得られない。Hk/HcJは、磁石性能の指標となるものであり、磁気ヒステリシスループの第2象限における角張りの度合いを表わす。HcJが同等であってもHk/HcJが大きいほど磁石中のミクロ的な保磁力の分布がシャープとなるため、着磁が容易となり、かつ着磁ばらつきも少なくなり、また、最大エネルギー積が高くなる。そして、磁石使用時の外部からの減磁界や自己減磁界の変化に対する磁化の安定性が良好となり、磁石を含む磁気回路の性能が安定したものとなる。
【0022】
サンプル No. 5(比較)
出発原料として上記スラッジを用いず、かつ、最終組成が
SrFe12O19
となるように出発原料を配合したほかはサンプルNo.1〜No.4と同様にして、フェライト焼結磁石サンプルを作製した。このサンプルについて、サンプルNo.1〜No.4と同様にして磁気特性を測定した。結果を表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
表1から、SmおよびCoを含有する希土類磁石の研磨カスを出発原料に用いて製造したフェライト焼結磁石では、希土類元素を含有しないフェライト焼結磁石と同等の磁気特性が得られることがわかる。すなわち、通常の出発原料に替えて廃材を用いたことによる磁気特性の顕著な低下は認められない。また、研磨カスを用いることによりCoが添加されたため、HcJの温度特性が改善されている。
【0025】
Sm−Co系希土類磁石の廃材は、高価なCoを含有するためリサイクルが望まれるが、従来、精製処理を施すことなしにはリサイクルが不可能であると考えられていた。しかし、この廃材を本発明に基づいてフェライト焼結磁石の出発原料として利用すれば、廃材を精製することなくそれに含有されるCoの本来の効果を発揮させることができる。
【0026】
なお、
Sr1-x(Sm+La)x(Fe12-yCoy)O19
においてx=y>0.2となるように出発原料を配合した場合、Brは低下しなかったが、粒成長による結晶粒の粗大化とスピネル相の生成とによりHcJが低下した。
【0027】
【発明の効果】
本発明では、希土類磁石の廃材をフェライト焼結磁石等の酸化物の原料としてリサイクルするため、廃材の還元、分離等の精製処理が不要であり、リサイクルコストを著しく低くできる。
Claims (2)
- 出発原料を仮焼した後、粉砕し、粉砕粉を成形した後、焼結するフェライト焼結磁石の製造方法であって、
前記出発原料の一部として、希土類磁石の製造工程において発生した前記希土類磁石を含む廃材を用い、前記希土類磁石はSm−Co系磁石、Nd2Fe14B系磁石又はSm2Fe17に窒素を固溶させた希土類窒化磁石である、フェライト焼結磁石の製造方法。 - 前記フェライト焼結磁石が、下記式Iで表されるものである、請求項1記載の製造方法。
式I A1−xRx(Fe12−yMy)zO19
(式Iにおいて元素AはSr,Ba,CaおよびPbから選択される少なくとも1種、元素Rは希土類元素またはこれとBiから選択される少なくとも1種、元素MはCo,Mn,NiおよびZnから選択される少なくとも1種を表し、0.04≦x≦0.9、0.04≦y≦1.0、0.4≦x/y≦4、0.7≦z≦1.2である。)
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