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JP4597569B2 - 画像表示用パネルおよびそれを用いた画像表示装置 - Google Patents

画像表示用パネルおよびそれを用いた画像表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、画像表示用パネルおよびそれを用いた画像表示装置に関し、特には、クーロン力等による粒子の飛翔移動又は粉流体の移動を利用することで画像表示を繰り返し行いことができる可逆性画像表示装置に用いられる画像表示用パネルおよびその画像表示用パネルを搭載した画像表示装置に関するものである。
従来より、液晶(LCD)に代わる画像表示装置として、電気泳動方式、エレクトロクロミック方式、サーマル方式、2色粒子回転方式等の技術を用いた画像表示装置が提案されている。
これら従来技術は、LCDと比較すると、通常の印刷物に近い広い視野角が得られる、消費電力が小さい、メモリー機能を有している等のメリットがあることから、次世代の安価な画像表示装置に使用可能な技術として考えられており、携帯端末用画像表示、電子ペーパー等への展開が期待されている。特に最近では、分散粒子と着色溶液から成る分散液をマイクロカプセル化し、これを対向する基板間に配置して成る電気泳動方式が提案され、期待が寄せられている。
しかしながら、電気泳動方式では、液中を粒子が泳動するために液の粘性抵抗により応答速度が遅くなるという問題がある。さらに、低比重の溶液中に酸化チタン等の高比重の粒子を分散させているため沈降しやすくなっており、分散状態の安定性維持が難しく、画像繰り返し安定性に欠けるという問題を抱えている。また、マイクロカプセル化にしても、セルサイズをマイクロカプセルレベルにして、見かけ上、上述した欠点が現れにくくしているだけであって、本質的な問題は何ら解決されていない。
一方、溶液中での挙動を利用する電気泳動方式に対し、溶液を使わず、導電性粒子と電荷輸送層とを基板の一部に組み入れる方式も提案され始めている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、電荷輸送層、さらには電荷発生層を配置するために構造が複雑化するとともに、導電性粒子に電荷を一定に注入することは難しいため、安定性に欠けるという問題もある。
趙 国来、外3名、"新しいトナーディスプレイデバイス(I)"、1999年7月21日、日本画像学会年次大会(通算83回)"Japan Hardcopy’99"論文集、p.249-252
しかしながら、これらの画像表示装置においては、繰り返し使用していくと封入した粒子同士が次第に付着したまま動かなくなったり、粒子が隔壁に付着したまま動かなくなる現象が起こり、画像コントラストが損なわれるという問題があって、繰り返し使用耐久性の点で不十分であった。
その原因の一つとして、粒子(又は粉流体)が移動している際に接触する周囲環境を構成する材料が複数あることによって、粒子(又は粉流体)が受ける摩擦帯電特性における複雑な影響が考えられる。
本発明の目的は上述した問題点を解消して、粒子(又は粉流体)が受ける摩擦帯電特性における複雑な影響を回避して、繰り返し使用しても画像コントラストが低下しない、耐久性に優れた安価な画像表示用パネルおよびそれを用いた画像表示装置を提供しようとするものである。
本発明の画像表示用パネルは、少なくとも一方が透明である対向する2枚の基板間に、隔壁によって仕切られた複数のセルを形成し、セル内に、少なくとも2種以上の粒子群又は少なくとも2種以上の粉流体を封入し、粒子群又は粉流体に電界を付与することによって、粒子群又は粉流体を移動させて画像を表示する画像表示用パネルであって、前記セルを形成する隔壁の内面および基板の内面に1種類の材料をコーティングすることでコーティング層を設けるとともに、少なくとも2種以上の粒子群又は少なくとも2種以上の粉流体に含まれる光学的反射率の異なる2種類の粒子(粒子1と粒子2)又は2種類の粉流体(粉流体1と粉流体2)と、前記コーティング層を形成する材料との帯電列が、粒子1(又は粉流体1)−コーティング材料−粒子2(又は粉流体2)の順となるものであることを特徴とするものである。
本発明の画像表示用パネルの好適例としては、前記2種類の粒子又は2種類の粉流体、及び、前記コーティング材の帯電特性(帯電列の順)が、同一のキャリア粒子を用いてブローオフ法によって測定されたものであること、がある。
また、本発明の画像表示装置は、上述した構成の画像表示用パネルを搭載したことを特徴とするものである。
本発明の画像表示用パネルによれば、基板材料、隔壁材料等の複数の材料によって形成される粒子(又は粉流体)の接触環境を1種類の材料で構成することにより、粒子(又は粉流体)が受ける摩擦帯電特性における複雑な影響を回避して、繰り返し使用しても画像コントラストが低下しない、耐久性に優れた安価な画像表示用パネルおよびそれを用いた画像表示装置を得ることができる。
まず、本発明の画像表示用パネルの基本的な構成について説明する。本発明の画像表示用パネルでは、対向する2枚の基板間に粒子群又は粉流体を封入した画像表示用パネルに、何らかの手段で粒子群又は粉流体に電界が与えられる。高電位に帯電した基板部位(又は電極部位)に向かっては低電位に帯電した粒子群又は粉流体がクーロン力等によって引き寄せられ、また、低電位に帯電した基板部位(又は電極部位)に向かっては高電位に帯電した粒子群又は粉流体がクーロン力等によって引き寄せられ、それら粒子群又は粉流体が基板間(又は電極間)を往復運動することにより、画像表示がなされる。
従って、粒子群又は粉流体が、均一に移動し、かつ、繰り返し時あるいは保存時の安定性を維持できるように、画像表示用パネルを設計する必要がある。ここで、粒子又は粉流体にかかる力は、粒子同士あるいは粉流体同士のクーロン力により引き付けあう力の他に、電極との電気影像力、分子間力、液架橋力、重力などが考えられる。
本発明の画像表示用パネルの例を、図1〜図3に基づき説明する。
図1に示す例では、2種以上の色の異なる粒子3(ここでは白色粒子3Wと黒色粒子3Bを示す)を、基板1、2の外部から加えられる電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させ、黒色粒子3Bを観察者に視認させて黒色の表示を行うか、あるいは、白色粒子3Wを観察者に視認させて白色の表示を行っている。なお、基板1、2との間に例えば格子状に隔壁4を設け表示セルを画成している。
図2に示す例では、2種以上の色の異なる粒子3(ここでは白色粒子3Wと黒色粒子3Bを示す)を、基板1に設けた電極5と基板2に設けた電極6との間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させ、黒色粒子3Bを観察者に視認させて黒色の表示を行うか、あるいは、白色粒子3Wを観察者に視認させて白色の表示を行っている。なお、基板1、2との間に例えば格子状に隔壁4を設け表示セルを画成している。
図3に示す例では、1種の色の粒子3(ここでは白色粒子3W)を、基板1上に設けた電極5と電極6との間に電圧を印加させることにより発生する電界に応じて、基板1、2と平行方向に移動させ、白色粒子3Wを観察者に視認させて白色表示を行うか、あるいは、電極6または基板1の色を観察者に視認させて電極6または基板1の色の表示を行っている。なお、基板1、2との間に例えば格子状に隔壁4を設け表示セルを画成している。
以上の説明は、白色粒子3Wを白色粉流体に、黒色粒子3Bを黒色粉流体に、それぞれ置き換えた場合も同様に適用することが出来る。
図4および図5はそれぞれ本発明の画像表示用パネルの特徴部分を説明するための図である。図4は少なくとも2種以上の粒子3として白色粒子3Wと黒色粒子3Bを用いた例を示し、図5は少なくとも2種以上の粉流体3として白色粉流体3Wと黒色粉流体3Bを用いた例を示す。図4および図5に示す例において、本発明の画像表示用パネルの特徴部分は、少なくとも2種以上(ここでは、白色粒子3W又は白色粉流体3Wと黒色粒子3B又は黒色粉流体3Bの2種)を封入するセル11の内面を、言い換えると、隔壁4の内面および基板1、2の内面を、1種類の材料でコーティングすることで、セル11の内面にコーティング層12を設けた点である。
このようにセル11の内面に1種類の材料からなるコーティング層12を設けることで、通常は、基板1、2の材料、隔壁4の材料等の複数の材料によって形成される粒子3(又は粉流体3)の接触環境を1種類の材料にすることができる。その結果、粒子3(又は粉流体3)が受ける摩擦帯電特性における複雑な影響を回避して、繰り返し使用しても画像コントラストが低下しない、耐久性に優れた安価な画像表示用パネルを得ることができる。
図4および図5に示す例において、光学的反射率の異なる2種類の粒子:粒子1(例えば白色粒子3W)と粒子2(例えば黒色粒子3B)又は2種類の粉流体:粉流体1(例えば白色粉流体3W)と粉流体2(例えば黒色粉流体3B)と、セル内面を形成するコーティング材との帯電列が、粒子1(又は粉流体1)−コーティング材−粒子2(又は粉流体2)の順となるよう構成することが好ましい。このように構成することで、セル11の内面に設けたコーティング層の影響をより少なくすることができる。
また、2種類の粒子3(又は粉流体3)の帯電特性およびコーティング材の帯電特性の測定はすべて、同一のキャリア粒子を用いてブローオフ法にて行うことが好ましい。同一のキャリア粒子を基準にすることによってはじめて帯電列が規定され、規定された帯電列が粒子1(又は粉流体1)−コーティング材−粒子2(又は粉流体2)の順となるよう構成することにより、画像表示の表示特性および繰り返し使用での耐久性が向上する。
上記のように画像表示用パネルを設計することにより、画像表示の表示特性および繰り返し使用での耐久性が向上する理由については明らかではないが、2種粒子(又は粉流体)の粒子(又は粉流体)同士の衝突、コーティング材と粒子(又は粉流体)との間に働く吸着力において適正化が図られ、結果として、基板間に封入後の粒子(又は粉流体)の帯電特性のバランスが好適となるものと考えられる。
ブローオフ法による帯電特性の測定に用いるキャリア粒子は同一のものに限る。同一のキャリア粒子を用いることによって、2種類の粒子(又は粉流体)とコーティング材の帯電列の位置付けが決まるのであって、異なるキャリア粒子を用いた場合には帯電列の基準がなくなり、2種類の粒子(又は粉流体)とコーティング材の帯電列の順位付けを決めることができない。
以下、本発明の画像表示用パネルを搭載した画像表示装置の各構成部分について、粒子、粉流体、共通の構成部分の順に、詳細に説明する。
まず、本発明の画像表示装置に用いる粒子について述べる。
粒子の作製は、必要な樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を混練り粉砕しても、あるいは、モノマーから重合しても、あるいは、既存の粒子を樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他の添加剤でコーティングしても良い。
以下に、樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を例示する。
樹脂の例としては、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、アクリルフッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられ、2種以上混合することもできる。特に、基板との付着力を制御する観点から、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、アクリルフッ素樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂が好適である。
荷電制御剤としては、特に制限はないが、負荷電制御剤としては例えば、サリチル酸金属錯体、含金属アゾ染料、含金属(金属イオンや金属原子を含む)の油溶性染料、4級アンモニウム塩系化合物、カリックスアレン化合物、含ホウ素化合物(ベンジル酸ホウ素錯体)、ニトロイミダゾール誘導体等が挙げられる。正荷電制御剤としては例えば、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系化合物、4級アンモニウム塩系化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等が挙げられる。その他、超微粒子シリカ、超微粒子酸化チタン、超微粒子アルミナ等の金属酸化物、ピリジン等の含窒素環状化合物及びその誘導体や塩、各種有機顔料、フッ素、塩素、窒素等を含んだ樹脂等も荷電制御剤として用いることもできる。
着色剤としては、以下に例示するような、有機または無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。
黒色着色剤としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等がある。
青色着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC等がある。
赤色着色剤としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2等がある。
黄色着色剤としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファーストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12等がある。
緑色着色剤としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、C.I.ピグメントグリーン7、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等がある。
橙色着色剤としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31等がある。
紫色着色剤としては、マンガン紫、ファーストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等がある。
白色着色剤としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等がある。
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等がある。また、塩基性、酸性、分散、直接染料等の各種染料として、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルー等がある。
無機系添加剤の例としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、鉛白、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、チタンイエロー、紺青、群青、コバルトブルー、コバルトグリーン、コバルトバイオレット、酸化鉄、カーボンブラック、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅粉、アルミニウム粉などが挙げられる。
これらの顔料および無機系添加剤は、単独であるいは複数組み合わせて用いることができる。このうち特に黒色顔料としてカーボンブラックが、白色顔料として酸化チタンが好ましい。
また、本発明で用いる粒子は平均粒子径d(0.5)が、0.1〜50μmの範囲であり、均一で揃っていることが好ましい。平均粒子径d(0.5)がこの範囲より大きいと表示上の鮮明さに欠け、この範囲より小さいと粒子同士の凝集力が大きくなりすぎるために粒子の移動に支障をきたすようになる。
更に本発明では、各粒子の粒子径分布に関して、下記式に示される粒子径分布Spanを5未満、好ましくは3未満とする。
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
(但し、d(0.5)は粒子の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粒子の比率が10%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粒子が90%である粒子径をμmで表した数値である。)
Spanを5以下の範囲に納めることにより、各粒子のサイズが揃い、均一な粒子移動が可能となる。
さらにまた、各粒子の相関について、使用した粒子の内、最大径を有する粒子のd(0.5)に対する最小径を有する粒子のd(0.5)の比を50以下、好ましくは10以下とすることが肝要である。たとえ粒子径分布Spanを小さくしたとしても、互いに帯電特性の異なる粒子が互いに反対方向に動くので、互いの粒子サイズが近く、互いの粒子が当量ずつ反対方向に容易に移動できるようにするのが好適であり、それがこの範囲となる。
なお、上記の粒子径分布および粒子径は、レーザー回折/散乱法などから求めることができる。測定対象となる粒子にレーザー光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒子径と対応関係があることから、粒子径および粒子径分布が測定できる。
ここで、本発明における粒子径および粒子径分布は、体積基準分布から得られたものである。具体的には、Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粒子を投入し、付属の解析ソフト(Mie理論を用いた体積基準分布を基本としたソフト)にて、粒子径および粒子径分布の測定を行なうことができる。
粒子の帯電量は当然その測定条件に依存するが、画像表示装置における粒子の帯電量はほぼ、初期帯電量、隔壁との接触、基板との接触、経過時間に伴う電荷減衰に依存し、特に2種類の粒子の帯電挙動の飽和値が支配因子となっているということが分かった。また、帯電列においては、2種類の粒子および接触環境との帯電特性の差および帯電列、すなわち仕事関数の差を知ることが重要であるが、これは簡易測定では難しい。
本発明者らは鋭意検討の結果、ブローオフ法において同一のキャリア粒子を用いて、それぞれの粒子および粒子が接触するセル内面を構成する材料の帯電量測定を行うことにより、2種類の粒子の適正な帯電特性値の範囲および2種類の粒子が接触するセル内面との相対的な関係を評価できることを見出し、これを表面電荷密度によって規定することにより、画像表示装置として適当な粒子の帯電量および帯電列を予測できることを見出した。
測定方法について詳しくは後に述べるが、ブローオフ法によって、粒子とキャリア粒子とを、およびセル内面形成材料とキャリア粒子とを、十分に接触させ、それぞれその飽和帯電量を測定することにより該粒子および該セル内面形成材料の単位重量あたりの帯電量を測定することができる。そして、該粒子および該セル内面形成材料の平均粒子径と比重を別途求めることにより、該粒子および該セル内面形成材料の表面電荷密度を算出することができる。
画像表示装置においては、用いる粒子の粒子径は小さく、重力の影響はほぼ無視できるほど小さいため、粒子の比重は粒子の動きに対して影響しない。しかし、粒子の帯電量においては、同じ粒子径の粒子で単位重量あたりの平均帯電量が同じであっても、粒子の比重が2倍異なる場合に保持する帯電量は2倍異なることとなる。従って、画像表示装置に用いられる粒子の帯電特性は粒子の比重に無関係な表面電荷密度(単位:μC/m)で評価するのが好ましいことが分かった。
そして、粒子間においてこの表面電荷密度の差が適当な範囲にある時、2種類の粒子はお互いの接触により十分な帯電量を保持し、電界により移動する機能を保持するのである。
ここで、表示用パネル内で互いに近接して存在する2種の粒子の帯電性を十分なものにするために、2種の粒子の表面電荷密度はある程度の差が必要であるが、大きいほどよいというものではない。粒子移動による画像表示装置においては粒子の粒子径が大きいときは主に電気影像力が粒子の飛翔電界(電圧)を決定する因子となる傾向が強いため、この粒子を低い電界(電圧)で動かすためには帯電量が低いほうがよいこととなる。また、粒子の粒子径が小さいときは分子間力・液架橋力等の非電気的な力が飛翔電界(電圧)決定因子となることが多いため、この粒子を低い電界(電圧)で動かすためには帯電量が高いほうがよいこととなる。しかし、これは粒子の表面性(材料・形状)にも大きく依存するため一概に粒子径と帯電量で規定することはできない。
本発明者らは平均粒子径が0.1〜50μmの粒子においては、同一のキャリア粒子を用いてブローオフ法により測定した2種の粒子(粒子1と粒子2)およびセル内面形成材料の3者における帯電列が、粒子1−セル内面形成材料−粒子2の順であり、2種類の粒子の表面電荷密度の絶対値が10〜150μC/mの範囲にあり、かつ、2種類の粒子の表面電荷密度の差の絶対値が20〜100μC/mの範囲である場合に画像表示用パネルとして好適と成り得ることを見出した。
次に、本発明の画像表示装置で用いる粉流体について説明する。
本発明における「粉流体」は、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。例えば、液晶は液体と固体の中間的な相と定義され、液体の特徴である流動性と固体の特徴である異方性(光学的性質)を有するものである(平凡社:大百科事典)。一方、粒子の定義は、無視できるほどの大きさであっても有限の質量をもった物体であり、重力の影響を受けるとされている(丸善:物理学事典)。ここで、粒子でも、気固流動層体、液固流動体という特殊状態があり、粒子に底板から気体を流すと、粒子には気体の速度に対応して上向きの力が作用し、この力が重力とつりあう際に、流体のように容易に流動できる状態になるものを気固流動層体と呼び、同じく、流体により流動化させた状態を液固流動体と呼ぶとされている(平凡社:大百科事典)。このように気固流動層体や液固流動体は、気体や液体の流れを利用した状態である。本発明では、このような気体の力も、液体の力も借りずに、自ら流動性を示す状態の物質を、特異的に作り出せることが判明し、これを粉流体と定義した。
すなわち、本発明における粉流体は、液晶(液体と固体の中間相)の定義と同様に、粒子と液体の両特性を兼ね備えた中間的な状態で、先に述べた粒子の特徴である重力の影響を極めて受け難く、高流動性を示す特異な状態を示す物質である。このような物質はエアロゾル状態、すなわち気体中に固体状もしくは液体状の物質が分散質として安定に浮遊する分散系で得ることができ、本発明の画像表示装置で固体状物質を分散質とするものである。
本発明の対象となる画像表示装置は、少なくとも一方が透明な、対向する基板間に、気体中に固体粒子が分散質として安定に浮遊するエアロゾル状態で高流動性を示す粉流体を封入するものであり、このような粉流体は、低電圧の印加でクーロン力などにより容易に安定して移動させることができる。
本発明に用いる粉流体とは、先に述べたように、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。この粉流体は、特にエアロゾル状態とすることができ、本発明の画像表示装置では、気体中に固体状の物質が分散質として比較的安定に浮遊する状態で用いられる。
エアロゾル状態の範囲は、粉流体の最大浮遊時の見かけ体積が未浮遊時の2倍以上であることが好ましく、更に好ましくは2.5倍以上、特に好ましくは3倍以上である。上限は特に限定されないが、12倍以下であることが好ましい。
粉流体の最大浮遊時の見かけ体積が未浮遊時の2倍より小さいと表示上の制御が難しくなり、また、12倍より大きいと粉流体を装置内に封入する際に舞い過ぎてしまうなどの取扱い上の不便さが生じる。なお、最大浮遊時の見かけ体積は次のようにして測定される。すなわち、粉流体が透過して見える密閉容器に粉流体を入れ、容器自体を振動或いは落下させて、最大浮遊状態を作り、その時の見かけ体積を容器外側から測定する。具体的には、直径(内径)6cm、高さ10cmのポリプロピレン製の蓋付き容器(商品名アイボーイ:アズワン(株)製)に、未浮遊時の粉流体として1/5の体積相当の粉流体を入れ、振とう機に容器をセットし、6cmの距離を3往復/secで3時間振とうさせる。振とう停止直後の見かけ体積を最大浮遊時の見かけ体積とする。
また、本発明では、粉流体の見かけ体積の時間変化が次式を満たすものが好ましい。
10/V>0.8
ここで、Vは最大浮遊時から5分後の見かけ体積(cm)、V10は最大浮遊時から10分後の見かけ体積(cm)を示す。なお、本発明の画像表示装置は、粉流体の見かけ体積の時間変化V10/Vが0.85よりも大きいものが好ましく、0.9よりも大きいものが特に好ましい。V10/Vが0.8以下の場合は、通常のいわゆる粒子を用いた場合と同様となり、本発明のような高速応答、耐久性の効果が確保できなくなる。
また、粉流体を構成する粒子物質の平均粒子径(d(0.5))は、好ましくは0.1〜20μm、更に好ましくは0.5〜15μm、特に好ましくは0.9〜8μmである。0.1μmより小さいと表示上の制御が難しくなり、20μmより大きいと、表示上の鮮明さに欠けるようになる。なお、粉流体を構成する粒子物質の平均粒子径(d(0.5))は、次の粒子径分布Spanにおけるd(0.5)と同様である。
粉流体を構成する粒子物質は、下記式に示される粒子径分布Spanが5未満であることが好ましく、更に好ましくは3未満である。
粒子径分布Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
ここで、d(0.5)は粉流体を構成する粒子物質の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粉流体を構成する粒子物質の比率が10%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粉流体を構成する粒子物質が90%である粒子径をμmで表した数値である。粉流体を構成する粒子物質の粒子径分布Spanを5以下とすることにより、サイズが揃い、均一な粉流体移動が可能となる。
なお、以上の粒子径分布および粒子径は、レーザー回折/散乱法などから求めることができる。測定対象となる粉流体にレーザー光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒子径と対応関係があることから、粒子径および粒子径分布が測定できる。この粒子径および粒子径分布は、体積基準分布から得られる。具体的には、Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粉流体を投入し、付属の解析ソフト(Mie理論を用いた体積基準分布を基本としたソフト)にて、測定を行うことができる。
粉流体の作製は、必要な樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を混練り粉砕しても、モノマーから重合しても、既存の粒子を樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤でコーティングしても良い。以下、粉流体を構成する樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を例示する。
樹脂の例としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン変性アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ナイロン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂などが挙げられ、2種以上混合することもでき、特に、基板との付着力を制御する上から、アクリルウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂が好適である。
荷電制御剤の例としては、正電荷付与の場合には、4級アンモニウム塩系化合物、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール誘導体などが挙げられ、負電荷付与の場合には、含金属アゾ染料、サリチル酸金属錯体、ニトロイミダゾール誘導体などが挙げられる。
着色剤としては、以下に例示するような、有機または無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。
黒色着色剤としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等がある。
青色着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC等がある。
赤色着色剤としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2等がある。
黄色着色剤としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファーストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12等がある。
緑色着色剤としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、C.I.ピグメントグリーン7、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等がある。
橙色着色剤としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31等がある。
紫色着色剤としては、マンガン紫、ファーストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等がある。
白色着色剤としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等がある。
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等がある。また、塩基性、酸性、分散、直接染料等の各種染料として、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルー等がある。
無機系添加剤の例としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、鉛白、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、チタンイエロー、紺青、群青、コバルトブルー、コバルトグリーン、コバルトバイオレット、酸化鉄、カーボンブラック、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅粉、アルミニウム粉などが挙げられる。
これらの顔料および無機系添加剤は、単独であるいは複数組み合わせて用いることができる。このうち特に黒色顔料としてカーボンブラックが、白色顔料として酸化チタンが好ましい。
しかしながら、このような材料を工夫無く混練り、コーティングなどを施しても、エアロゾル状態を示す粉流体を作製することはできない。エアロゾル状態を示す粉流体の決まった製法は定かではないが、例示すると次のようになる。
まず、粉流体を構成する物質の表面に、平均粒子径が20〜100nm、好ましくは20〜80nmの無機微粒子を固着させることが適当である。更に、その無機微粒子がシリコーンオイルで処理されていることが適当である。ここで、無機微粒子としては、二酸化珪素(シリカ)、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化鉄、酸化銅等が挙げられる。この無機微粒子を固着させる方法が重要であり、例えば、ハイブリダイザー(奈良機械製作所(株)製)やメカノフュージョン(ホソカワミクロン(株)製)などを用いて、ある限定された条件下(例えば処理時間)で、エアロゾル状態を示す粉流体を作製することができる。
更に、本発明においては基板間の粒子群あるいは粉流体を取り巻く空隙部分の気体の管理が重要であり、表示安定性向上に寄与する。具体的には、空隙部分の気体の湿度について、25℃における相対湿度を60%RH以下、好ましくは50%RH以下、更に好ましくは35%RH以下とすることが重要である。
この空隙部分とは、図1において、対向する基板1、基板2に挟まれる部分から、電極5、6、粒子群(あるいは粉流体)3の占有部分、隔壁4の占有部分、装置シール部分を除いた、いわゆる粒子群(あるいは粉流体)が接する気体部分を指すものとする。
空隙部分の気体は、先に述べた湿度領域であれば、その種類は問わないが、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、乾燥ヘリウム、乾燥二酸化炭素、乾燥メタンなどが好適である。この気体は、その湿度が保持されるように装置に封入することが必要であり、例えば、粒子群あるいは粉流体の充填、基板の組み立てなどを所定湿度環境下にて行い、さらに、外からの湿度侵入を防ぐシール材、シール方法を施すことが肝要である。
本発明の画像表示用パネルにおける基板と基板との間隔は、粒子群又は粉流体が移動できて、コントラストを維持できればよいが、通常10〜500μm、好ましくは10〜200μmに調整される。
対向する基板間の空間における粒子群又は粉流体の体積占有率は5〜70%が好ましく、さらに好ましくは5〜60%である。70%を超える場合には粒子又は粉流体の移動の支障をきたし、5%未満の場合にはコントラストが不明確となり易い。
次に、本発明の画像表示装置で用いる基板について述べる。
基板1、基板2の少なくとも一方は装置外側から粒子群又は粉流体の色が確認できる透明基板であり、可視光の透過率が高くかつ耐熱性の良い材料が好適である。可とう性の有無は用途により適宜選択され、例えば、電子ペーパー等の用途には可とう性のある材料、携帯電話、PDA、ノートパソコン類の携帯機器表示等の用途には可とう性のない材料が好適である。基板材料を例示すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレン、ポリカーボネートなどのポリマーシートや、ガラス、石英などの無機シートが挙げられる。基板厚みは。、2〜5000μm、好ましくは5〜1000μmが好適であり、薄すぎると、強度、基板間の間隔均一性を保ちにくくなり、厚すぎると、表示機能としての鮮明さ、コントラストの低下が発生し、特に、電子ペーパー用途の場合には可とう性に欠ける。
基板に電極を設けない場合の表示方法は、基板外部表面に静電潜像を与え、その静電潜像に応じて発生する電界にて、所定の特性に帯電した、色のついた粒子群又は粉流体を基板に引き寄せあるいは反発させることにより、静電潜像に対応して配列した粒子群又は粉流体を透明な基板を通して表示用パネル外側から視認する方法である。なお、この静電潜像の形成は、電子写真感光体を用い通常の電子写真システムで行われる静電潜像を本発明の表示用パネル基板上に転写形成する、あるいは、イオンフローにより静電潜像を直接形成する等の方法で行うことができる。
基板に電極を設ける場合の表示方法は、電極部位への外部電圧入力により、基板上の各電極位置に生じた電界により、所定の特性に帯電した、色のついた粒子群又は粉流体が引き寄せられあるいは反発させられることにより、電極電位に対応して配列した粒子群又は粉流体を透明な基板を通して表示用パネル外側から視認する方法である。
透明基板側に設ける電極は、透明かつパターン形成可能である導電性材料で形成され、例示すると、酸化インジウム、アルミニウムなどの金属類、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子類が挙げられ、真空蒸着、塗布などの形成手法が例示できる。なお、電極厚みは、導電性が確保でき光透過性に支障がなければ良く、3〜1000nm、好ましくは5〜400nmが好適である。
背面基板側に設ける電極は、透明である必要はなくパターン形成可能である導電性材料で形成され、例示すると、酸化インジウム、アルミニウム、金、銀、銅などの金属類、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子類が挙げられ、真空蒸着、塗布などの形成手法が例示できる。なお、電極厚みは、導電性が確保でき光透過性に支障がなければ良く、3〜1000nm、好ましくは5〜400nmが好適である。
なお、この場合の外部電圧入力は、直流あるいは交流を重畳しても良い。
隔壁4については、その形状は表示にかかわる粒子群あるいは粉流体の種類により適宜最適設定され、一概には限定されないが、隔壁の幅は2〜100μm、好ましくは3〜50μmに、隔壁の高さは10〜1000μm、好ましくは10〜500μmに調整される。また、隔壁を形成するにあたり、対向する両基板の各々にリブを形成した後に接合する両リブ法、片側の基板上にのみリブを形成する片リブ法が考えられる。本発明では、いずれの方法も好適に用いられる。
これらのリブからなる隔壁により形成される表示セルは、図6に示すごとく、基板平面方向からみて形状としては四角状、三角状、ライン状、円形状、六角状が例示され、配置としては格子状、ハニカム状が例示される。表示側から見える隔壁断面部分に相当する部分(表示セルの枠部の面積)はできるだけ小さくした方が良く、画像表示の鮮明さが増す。ここで、隔壁の形成方法を例示すると、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、フォトリソ法、アディティブ法が挙げられる。
次に、本発明の画像表示用パネルで用いるセル11の内面形成材料について述べる。
本発明では、図4および図5に示すように、粒子(又は粉流体)3と接触するセル11の内面を均一なものとするために、隔壁4と基板1、2とで形成されるセル11の内面を1種類の材料でコーティングして、コーティング層12を形成する。セル内面形成材料(コーティング材料)には、セル11内に充填する帯電特性の異なる2種類の粒子(又は粉流体)との帯電列において、粒子1(又は粉流体1)−コーティング材−粒子2(又は粉流体2)の順となるものを選ぶことが肝要である。
コーティング材としては、帯電列において上記要件を満たす材料であれば特に制限されないが、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン変性アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ナイロン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂などの樹脂が挙げられ、2種以上混合することもできる。特に、粒子(又は粉流体)と基板との付着力を制御する観点から、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂が好適である。これらの樹脂に荷電制御剤を添加して、2種粒子(又は粉流体)との帯電列を調整することもできる。コーティング方法としては、ディッピング法、スプレー法、ロールコーター法、刷毛塗り法等いずれの方法を用いてもよい。
次に実施例、比較例を示して、本発明を更に具体的に説明する。但し本発明は以下の実施例により限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で得られた画像表示用パネルについて、以下の基準に従い評価を行った。
「画像表示用パネルの作製」
まず、電極付き基板(7cm×7cm□)を準備し、基板上に、高さ200μmのリブを作り、ストライプ状の隔壁を形成した。
リブの形成は次のように行なった。先ずペーストは、無機粉体としてSiO2 、Al23 、B23 、BiおよびZnOの混合物を、溶融、冷却、粉砕したガラス粉体を、樹脂として熱硬化性のエポキシ樹脂を準備して、溶剤にて粘度12000cpsになるように調製したペーストを作製した。次に、ペーストを準備した基板上に塗布し、150℃で加熱硬化させ、この塗布〜硬化を繰り返す事により、厚み(隔壁の高さに相当)50μmになるように調整した。次に、ドライフォトレジストを貼り付けて、露光〜エッチングにより、ライン50μm、スペース400μm、ピッチ450μmの隔壁パターンが形成されるようなマスクを作製した。次に、サンドブラストにより、所定の隔壁形状になるように余分な部分を除去し、所望とするストライプ状隔壁を形成した。
このようにして作製された隔壁付き基板およびもう一方の基板において粒子(又は粉流体)と接触するセル内面となる面に対して、1種類の材料でコーティングを行ってから粒子(又は粉流体)をセル内に封入して画像表示用パネルを作製した。
「粒子(又は粉流体)およびコーティング材の帯電特性の測定」
<ブローオフ測定原理及び方法>
ブローオフ法においては、両端に網を張った円筒容器中に粉体とキャリア粒子の混合体を入れ、一端から高圧ガスを吹き込んで粉体とキャリア粒子とを分離し、網の目開きから粉体のみをブローオフ(吹き飛ばし)する。この時、粉体が容器外に持ち去った帯電量と等量で逆の帯電量がキャリア粒子に残る。そして、この電荷による電束の全てはファラデーケージで集められ、この分だけコンデンサーは充電される。そこでコンデンサー両端の電位を測定することにより粉体の電荷量Qは、
Q=CV (C:コンデンサー容量、V:コンデンサー両端の電圧)
として求められる。
ブローオフ粉体帯電量測定装置としては東芝ケミカル社製のTB-200を用いた。
本発明ではキャリア粒子として同一のもの(パウダーテック(株)製のキャリア粒子F963-2535)を用い、被測定物(粒子又は粉流体および粒子状にしたコーティング材)の単位重量あたりの電荷密度(μC/g)を測定し、別途求めた平均粒子径及び比重から粒子(又は粉流体)およびコーティング材の表面電荷密度(μC/mm)を算出した。
なお、平均粒子径は前述した方法により、具体的には、Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粒子(又は粉流体)、粒子状にしたコーティング材をそれぞれ投入し、付属の解析ソフト(Mie理論を用いた体積基準分布を基本としたソフト)にてそれぞれについて測定し、比重についても、株式会社島津製作所製比重計(商品名:マルチボリウム密度計H1305)を用いてそれぞれ測定した。
「表示機能の評価」
作製した画像表示用パネルを組み込んだ画像表示装置に、250Vの電圧を印加して電位を反転させることにより、黒色〜白色の表示を繰り返した。表示機能の評価は、コントラスト比について行い、それぞれ、初期、10000回繰り返し後、100000回繰り返し後を、反射画像濃度計を用いて測定した。ここで、コントラスト比とは、コントラスト比=黒色表示時反射濃度/白色表示時反射濃度とした。
<実施例1>
粒子1は以下の方法によって作製した。まず、アクリルウレタン樹脂EAU53B(亜細亜工業(株)製)/IPDI系架橋剤エクセルハードナーHX(亜細亜工業(株)製)に、カーボンブラック(MA100:三菱化学(株)製)4重量部、荷電制御剤ボントロンN07(オリエント化学(株)製)2重量部を添加し、混練りした。次に、ジェットミルにて粉砕、分級して粒子径を調整した。
粒子2は以下の方法によって作製した。まず、アクリルウレタン樹脂EAU53B(亜細亜工業(株)製)/IPDI系架橋剤エクセルハードナーHX(亜細亜工業(株)製)に、酸化チタン10重量部、荷電制御剤ボントロンE89(オリエント化学(株)製)2重量部を添加し、混練りした。次に、ジェットミルにて粉砕、分級して粒子径を調整した。
セル内面のコーティングは、アクリルウレタン樹脂EAU53B(亜細亜工業(株)製)/IPDI系架橋剤エクセルハードナーHX(亜細亜工業(株)製)にて行った。
これらの粒子群にて作製した画像表示用パネルを組み込んだ画像表示装置を用いて、表示機能の評価を行った。結果を表1に示す。
<実施例2>
粉流体1は以下のようにして作製した。まず、スチレンモノマー、アゾ系化合物(5重量部)、荷電制御剤ボントロンN07(オリエント化学(株)製、5重量部)、開始剤AIBN(0.5重量部)を用いて懸濁重合した後、分級装置にて粒子径を揃えた。次に、ハイブリダイザー装置(奈良機械製作所(株)製)を用いて、これらの粒子にシリカH2050(ワッカー社製)とシリカSS20(日本シリカ(株)製)を投入し、4800回転で5分間処理して、重合した粒子表面に固定し、粉流体になるように調整した。
粉流体2は以下のようにして作製した。まず、メチルメタクリレートモノマー、TiO(20重量部)、荷電制御剤ボントロンE89(オリエント化学(株)製、5重量部)開始剤AIBN(0.5重量部)を用いて懸濁重合した後、分級装置にて粒子径を揃えた。次に、ハイブリダイザー装置(奈良機械製作所(株)製)を用いて、これらの粒子にシリカH2000/4(ワッカー社製)とシリカSS20(日本シリカ(株)製)を投入し、4800回転で5分間処理して、重合した粒子表面に固定し、粉流体になるように調整した。
セル内面のコーティングはメチルメタクリレートにて行った。
これらの粉流体にて作製した画像表示用パネルを組み込んだ画像表示装置を用いて、表示機能の評価を行った。結果を表1に示す。
<比較例1>
セル内面のコーティングを行わなかった以外は実施例1と同様に作製した画像表示用パネルを組み込んだ画像表示装置を用いて、表示機能の評価を行った。結果を表1に示す。
<比較例2>
セル内面のコーティングを行わなかった以外は実施例2と同様に作製した画像表示用パネルを組み込んだ画像表示装置を用いて、表示機能の評価を行った。結果を表1に示す。
<比較例3>
セル内面のコーティングを荷電制御剤ボントロンE89(オリエント化学(株)製)10重量部添加したアクリルウレタン樹脂EAU53B(亜細亜工業(株)製)/IPDI系架橋剤エクセルハードナーHX(亜細亜工業(株)製)にて行った以外は実施例1と同様に作製した画像表示用パネルを組み込んだ画像表示装置を用いて、表示機能の評価を行った。結果を表1に示す。
<比較例4>
セル内面のコーティングを荷電制御剤ボントロンE89(オリエント化学(株)製)10重量部添加したメチルメタクリレートモノマーにて行った以外は実施例2と同様に作製した画像表示用パネルを組み込んだ画像表示装置を用いて、表示機能の評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 0004597569
表1の結果から、本発明に係る実施例1、2は、比較例1〜4と比べて、繰り返し後のコントラスト比を高く保つことができることがわかる。
本発明の画像表示用パネルは繰り返し使用しても画像コントラストが低下せず、この画像表示用パネルを搭載した画像表示装置は、ノートパソコン、PDA、携帯電話、ハンディターミナル等のモバイル機器の表示部、電子ブック、電子新聞等の電子ペーパー、看板、ポスター、黒板等の掲示板、電卓、家電製品、自動車用品等の表示部、ポイントカード、ICカード等のカード表示部、電子広告、電子POP、電子値札、電子楽譜、RF−ID機器の表示部などに好適に用いられる。
本発明の画像表示装置で用いる画像表示用パネルにおける駆動方法の一例を示す図である。 本発明の画像表示装置で用いる画像表示用パネルにおける駆動方法の他の例を示す図である。 本発明の画像表示装置で用いる画像表示用パネルの構造の一例を示す図である。 本発明の画像表示装置で用いる画像表示用パネルの特徴部分の一例を説明するための図である。 本発明の画像表示装置で用いる画像表示用パネルの特徴部分の他の例を説明するための図である。 本発明の画像表示装置で用いる画像表示用パネルにおける隔壁の形状の一例を示す図である。
符号の説明
1、2 基板
3 粒子(粉流体)
3W 白色粒子(白色粉流体)
3B 黒色粒子(黒色粉流体)
4 隔壁
5、6 電極
11 セル
12 コーティング層

Claims (3)

  1. 少なくとも一方が透明である対向する2枚の基板間に、隔壁によって仕切られた複数のセルを形成し、セル内に、少なくとも2種以上の粒子群又は少なくとも2種以上の粉流体を封入し、粒子群又は粉流体に電界を付与することによって、粒子群又は粉流体を移動させて画像を表示する画像表示用パネルであって、前記セルを形成する隔壁の内面および基板の内面に1種類の材料をコーティングすることでコーティング層を設けるとともに、少なくとも2種以上の粒子群又は少なくとも2種以上の粉流体に含まれる光学的反射率の異なる2種類の粒子(粒子1と粒子2)又は2種類の粉流体(粉流体1と粉流体2)と、前記コーティング層を形成する材料との帯電列が、粒子1(又は粉流体1)−コーティング材料−粒子2(又は粉流体2)の順となるものであることを特徴とする画像表示用パネル。
  2. 前記2種類の粒子又は2種類の粉流体、及び、前記コーティング材の帯電特性が、同一のキャリア粒子を用いてブローオフ法によって測定されたものであることを特徴とする請求項に記載の画像表示用パネル。
  3. 請求項1または2に記載の画像表示用パネルを搭載したことを特徴とする画像表示装置。
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