JP4596701B2 - 車輪用軸受の磁気エンコーダ付きシ−ル装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車のアンチロックブレーキシステムの制御のための回転検出装置における磁気エンコーダ等を有する車輪用軸受の磁気エンコーダ付きシール装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車のアンチロックブレーキシステム(ABS)の制御等のために、車輪等の回転体の回転速度を検出する回転検出装置が用いられる。この回転検出装置として、周方向に磁極を交互に形成した磁気エンコーダと、この磁気エンコーダに所定のエアギャップを介して対面配置されるセンサとで構成したものがある。また、上記磁気エンコーダを、車輪用軸受のシール装置の構成部品で兼用するようにしたものがある。この種の磁気エンコーダは、芯金に、円周方向に交互に磁極が形成された多極磁石を接着したものとされる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
自動車の足回りに取付けられる車輪用軸受は、泥水、塩水、高温、低温等の過酷な条件下で使用され、またその軸受に組み込まれている磁気エンコーダも、このような条件下に耐え得る性能が要求される。このような過酷な条件下では、多極磁石が芯金から剥離することが考えられ、この剥離により、要求される磁気特性を満足できなくなる可能性がある。
多極磁石の密着性を向上させる手段としては、接着剤の塗布回数を増やすことや、接着剤の膜厚を厚くすることが考えられる。しかし実験によると、塗布回数を増やしても有意義な密着性の改善は見られず、また膜厚を厚くすることでは密着性の向上効果が得られなかった。
【0004】
この発明の目的は、多極磁石と芯金との密着性を向上させることができ、多極磁石の剥離による磁気特性の低下を防止できる磁気エンコーダを添えた車輪用軸受の磁気エンコーダ付きシール装置の製造方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明の車輪用軸受の磁気エンコーダ付きシール装置は、内方部材および外方部材と、これら内外の部材間に収容される複数の転動体とを備える車輪用軸受における、上記内外の部材間の環状空間の端部を密封するシール装置を製造する方法であって、
上記シール装置は、上記内方部材および外方部材のうちの互いに異なる部材に各々取付けられた第1および第2のシール板を有し、両シール板は、各々円筒部と立板部とでなる断面L字状に形成されて互いに対向し、第1のシール板は芯金であって、上記内方部材および外方部材のうちの回転側の部材に圧入状態に嵌合され、立板部が軸受の外方側に配されると共に、この立板部に周方向に交互に磁極が形成された多極磁石が接着され、第2のシール板は、上記立板部に摺接するサイドリップおよび上記円筒部に摺接するラジアルリップを一体に有し、
上記多極磁石が、磁性体粉が混入された弾性部材であるゴム磁石であり、上記第1のシール板の上記立板部の軸受外方側の面が粗面化処理面であり、この第1のシール板の残りの面が粗面化の未処理面であり、上記第1のシール板の上記粗面化処理面の表面粗さをRa0.8以上とし、かつ上記第1のシール板の上記サイドリップと摺接する粗面化の未処理面の表面粗さをRa0.2〜0.6とし、上記円周方向に交互に磁極が形成された多極磁石が、上記第1のシール板の立板部における軸受外方側の面である上記粗面化処理面に接着されて、これら第1のシール板と多極磁石とで磁気エンコーダが構成され、上記多極磁石は、上記第1のシール板の上記立板部の先端縁から裏面の一部まで被さる裏面被せ部を有し、
上記多極磁石は、上記粗面化処理を施した第1のシール板の接着面に接着剤を塗布しておいて、ゴム材料と磁性粉体とを混練した混練材料を第1のシール板と共に成形金型内で加硫成形することにより成形した未着磁の多極磁石を、この加硫成形時に第1のシール板に対して前記接着剤により接着させ、この多極磁石の上記成形の後に、着磁による前記磁極の形成を行い、
上記第1のシール板の粗面化処理に、ショットブラスト処理のうちのドライブラスト処理を採用し、このドライブラスト処理は、第1のシール板をワークセット治具上に載せ、ブラスト用のノズルを、第1のシール板の立板部の外側面に対向させて、上記ノズルと第1のシール板とを相対的に第1のシール板の円周方向に旋回させながら、粒子を吹き付けることにより行い、上記粗面化処理を施した第1のシール板の接着面に接着剤を塗布しておいて、ゴム材料と磁性粉体とを混練した混練材料を第1のシール板と共に成形金型内で加硫成形することにより成形した未着磁の多極磁石を、この加硫成形時に第1のシール板に対して前記接着剤により接着させ、この多極磁石の上記成形の後に、着磁による前記磁極の形成を行うことを特徴とする。
上記第2のシール板の円筒部と上記第1のシール板の立板部の先端とを僅かな径方向隙間をもって対峙させても良い。
この製造方法で製造する上記構成のシール装置の場合、軸受のシール装置の一部として磁気エンコーダを組み込むことができて、組立性が良く、コンパクトに磁気エンコーダを設置できる。シール装置は、第1,第2のシール板が対向し、サイドリップが摺接するため、密封性能が優れたものとなる。また、両シール板間に上記径方向隙間を設けた場合は、ラビリンスシール効果が得られ、トルク増大を招くことなく、シール効果が高められる。磁気エンコーダは、車輪用軸受のシール装置を構成するものであるため、車輪用軸受における泥水、塩水、高温、低温等の過酷な条件下で使用されることになる。しかし、磁気エンコーダとして、上記構成のものを用いているため、このような厳しい環境下にさらされても、多極磁石の剥離が生じず、磁気特性の低下が防止され、耐久性に優れたものとなる。そのため長期にわたり安定した回転検出を行うことができる。
また、第1のシール板となる上記磁気エンコーダの芯金の接着面の表面粗さをRa0.8以上と粗くしたところ、この芯金の表面粗さがRa0.2〜0.6の場合に比べて、実験によると、多極磁石の密着性の顕著な向上効果が確認された。これは、表面粗さが粗くなることにより、接着面に凹凸が増え、接触面積が増大したことにより、密着性が改善したと考えられる。このように、密着性が向上するため、多極磁石の剥離による磁気特性の低下が防止され、耐久性に優れたものとなり、厳しい環境下においても、長期にわたり安定した回転検出を行うことができる。
通常、芯金の材料とされる鋼板は、表面粗さがRa0.2〜0.6であり、これをRa0.8以上の表面粗さとするためには、芯金の接着面を粗面化処理面とする必要がある。この粗面化処理面は、例えばショットブラスト処理面であっても良い。
ショットブラスト処理によると、簡単な処理でRa0.8以上の表面粗さとすることができる。また実験の結果、Ra0.8以上のショットブラスト処理面とした場合、多極磁石の密着性の顕著な向上効果が確認された。
【0006】
上記多極磁石は、磁性体粉が混入された弾性部材であるため、成形が容易であり、芯金に対する係合部分を形成するなど、自由な形状のものが容易に製造できる。
【0010】
【発明の実施の形態】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図5と共に説明する。図1はこの実施形態の製造方法で製造した磁気エンコーダ付きシール装置を用いた車輪用軸受の断面図を示す。この車輪用軸受は、内方部材1および外方部材2と、これら内外の部材1,2間に収容される複数の転動体3と、内外の部材1,2間の端部環状空間を密封するシール装置5,13とを備える。一端のシール装置5は、アキシアル型の磁気エンコーダ20を有するものである。内方部材1および外方部材2は、転動体3の転走面1a,2aを有しており、各転走面1a,2aは溝状に形成されている。内方部材1および外方部材2は、各々転動体3を介して互いに回転自在となった内周側の部材および外周側の部材のことであり、軸受内輪および軸受外輪の単独であっても良い。また、内方部材1は、軸であっても良い。転動体3は、ボールまたはころからなり、この例ではボールが用いられている。
【0011】
この車輪用軸受は、複列の転がり軸受、詳しくは複列のアンギュラ玉軸受とされていて、その軸受内輪は、ハブ輪6と、このハブ輪6の端部外径に嵌合した別体の内輪1Aとで構成される。これらハブ輪6および別体内輪1Aに各転動体列の転走面1aが形成されている。
【0012】
ハブ輪6には、等速自在継手7の一端(例えば外輪)が連結され、ハブ輪6のフランジ部6aに車輪(図示せず)がボルト8で取付けられる。等速自在継手7は、その他端(例えば内輪)が駆動軸(図示せず)に連結される。外方部材2は、フランジ2bを有する軸受外輪からなり、ナックル等からなるハウジング10に取付けられる。外方部材2は、両転動体列の軌道面2a,2aを有するものとされている。転動体3は各列毎に保持器4で保持されている。内方部材1と外方部材2の間の環状空間は、一端、つまりインボード側の端部が上記のシール装置5で密封されている。外方部材2とハブ輪6との間の環状空間の他端は、別のシール装置13で密封される。
【0013】
図3は、シール装置5を拡大して示す。このシール装置5は、内方部材1と外方部材2に各々取付けられた第1および第2の環状のシール板11,12を有する。これらシール板11,12は鋼板製で、各々内方部材1および外方部材2に圧入状態に嵌合させることで取付けられている。両シール板11,12は、各々円筒部11a,12aと立板部11b,12bとでなる断面L字状に形成されて互いに対向する。
第1のシール板11は、内方部材1および外方部材2のうちの回転側の部材である内方部材1に嵌合され、スリンガとなる。第1のシール板11は磁性体である。第1のシール板11の立板部11bは、軸受外方側に配され、その外方側の側面に多極磁石14が一体に接着されている。多極磁石14は、磁性体粉の混入された弾性部材からなる。この多極磁石14は、第1のシール板11を芯金としてアキシアル型の磁気エンコーダ20を構成するものであり、周方向に交互に磁極N,S(図2)が形成され、合成ゴム等の弾性材料を用いたゴム磁石とされている。磁極N,Sは、ピッチ円直径(PCD)において、所定のピッチpとなるように形成されている。この磁気エンコーダ20の多極磁石14にアキシャル方向から対面して、同図のように所定のエアギャップGを介して磁気センサ15を配置することにより、車輪回転速度の検出用の回転検出装置が構成される。センサ15は、車体に取付けられる。センサ15の出力は、例えばアンチロックブレーキシステムの制御に用いられる。
【0014】
第2のシール板12は、第1のシール板11の立板部11bに摺接するサイドリップ16aと円筒部11aに摺接するラジアルリップ16b,16cとを一体に有する。これらリップ16a〜16cは、第2のシール板12に加硫接着された弾性部材16の一部として設けられている。第2のシール板12は、固定側部材である外方部材2との嵌合部に弾性部材16を抱持したものである。第2のシール板12の円筒部12aと第1のシール板11の立板部11bの先端とは僅かな径方向隙間をもって対峙させ、その隙間でラビリンスシール17を構成している。
【0015】
図4は、磁気エンコーダ20の拡大断面を示す。第1のシール板11における多極磁石14を接着する接着面11baは、表面粗さをRa0.8以上としてある。接着面11baの表面粗さの上限は特に問わないが、例えばRa1.5以下とする。この接着面11baは、多極磁石14に対する主な接着面のことであり、同図の例では立板部11bにおける外向きの面のうち、多極磁石14が接着される部分のことである。この例の多極磁石14は、剥離防止性を高めるために、シール板11の立板部11bの外径縁から裏面側まで被さる裏面被せ部14aを有しているが、シール板11における裏面被せ部14aが被さる部分は、上記の主な接着面には含まれず、表面粗さを問わない。
第1のシール板11における上記サイドリップ16aが摺接する表面11bbの粗さはRa0.8以下、好ましくはRa0.8未満とされる。
【0016】
第1のシール板11における各部の表面粗さの具体例を挙げると、シール板11の素材となる鋼板に、表面粗さがRa0.2〜0.6のものが用いられ、多極磁石14を接着する接着面11baが、表面粗さがRa0.8以上の粗面化処理面とされている。粗面化処理面とする範囲は、立板部11bの外向きの面の全体とされている。シール板11の残りの面は、粗面化処理の未処理面であり、したがってサイドリップ16aが摺接する表面部分11bbは、表面粗さがRa0.2〜0.6となっている。
上記粗面化処理面は、ショットブラストにより粗面化処理を施した面、つまりショットブラスト処理面とされている。
【0017】
ショットブラストによる粗面化処理は、例えば図5に示すドライブラスト処理が採用できる。この処理では、第1のシール板11をワークセット治具51上に載せ、ブラスト用のノズル52を、シール板11の立板部11bの外側面に対向させてシール板11の円周方向に旋回させながら、粒子を吹き付けることにより行う。ワークセット治具51は、運搬ベース53上に設置されている。上記のようにブラスト用のノズル52を旋回させる代わりに、ブラスト用のノズル52を位置固定としてワークセット治具51と共にシール板11を回転させるようにしても良い。
【0018】
シール板11の粗面化処理方法としては、ショットブラストによる他に、化学的な処理、例えばリン酸塩被膜等の表面処理や、やすり掛け処理等を採用することもできる。
【0019】
図4において、第1のシール板11に対する多極磁石14の一体接着は、例えば接着剤を用いて行う。この場合に、多極磁石14の加硫成形と共にシール板11の接着剤による接着を行う。具体例を挙げると、ショットブラスト等による粗面化処理を施したシール板11に対して、接着面11baに接着剤を塗布しておき、ゴム材料と磁性体粉を混練した混練材料を、ひも生地等として押し出し、上記の状態のシール板11と共に、上記混練材料を成形金型(図示せず)内で加硫成形する。この加硫成形時に、その成形された多極磁石14が接着剤でシール板11に接着される。多極磁石14の着磁による磁極の形成は、多極磁石14の上記成形の後に行われる。
【0020】
上記ゴム材料は、合成ゴムであっても、天然ゴムであっても良く、例えば耐熱ニトリルゴム、アクリル系ゴム、またはフッ素樹脂ゴムが用いられる。上記磁性体粉にはフェライト等が用いられる。シール板11の素材となる鋼板は、磁性体の鋼板、例えばフェライト系のステンレス鋼板や防錆処理された圧延鋼板等が用いられる。第2のシール板12は、非磁性体のものが好ましく、例えば非磁性体であるオーステナイト系のステンレス鋼板や、防錆処理された圧延鋼板が用いられる。
【0021】
上記構成の磁気エンコーダ20によると、芯金である第1のシール板11の接着面11baの表面粗さをRa0.8以上と粗くしたため、この芯金の材料として通常に使用される鋼板のそのままの表面粗さであるRa0.2〜0.6の場合に比べて、多極磁石14の密着性につき明らかな向上効果が得られる。このことは、後に説明するように、実験により確認された。これは、表面粗さが粗くなることにより、接着面に凹凸が増え、接触面積が増大したことにより、密着性が改善したと考えられる。このように、密着性が向上するため、多極磁石14の剥離による磁気特性の低下が防止され、耐久性に優れたものとなる。
この磁気エンコーダ20は、自動車の車輪用軸受におけるシール装置5に用いられたものであり、泥水、塩水、高温、低温等の過酷な条件下で使用されることになるが、このような厳しい環境下においても、多極磁石14の剥離が容易に生じず、長期にわたり安定した回転検出を行うことができる。
【0022】
また、上記構成の車輪用軸受では、軸受の端部のシール装置5の一部として磁気エンコーダ20が組み込まれているので、コンパクトに磁気エンコーダ20を設置できる。シール装置5は、第1,第2のシール板11,12が対向し、サイドリップ16aおよびラジアルリップ16b,16cが摺接するため、密封性能が優れたものとなる。内側のラジアルリップ16cはグリース漏れの防止作用を奏する。
サイドリップ16aは第1のシール板11に摺接するが、その摺接する表面部分11bbは、粗面化処理の未処理面とし、表面粗さをRa0.8未満、例えばRa0.2〜0.6と細かくしてあるため、多極磁石14の密着性向上のための粗面化処理によってサイドリップ16aの摩耗が増大することが避けられる。
【0023】
図6は、参考提案例を示し、ラジアル型とした磁気エンコーダ70を用いた車輪用軸受を示す。この車輪用軸受は、内方部材51および外方部材52と、これら内外の部材51,52間に収容される複数の転動体53と、内外の部材51,52間の端部環状空間を密封するシール装置55,63とを備え、一端にシール装置55とは別の磁気エンコーダ70が設けられている。内方部材51および外方部材52は、転動体53の転走面を有し、各転走面は溝状に形成されている。
【0024】
内方部材51は、一対の分割型の内輪51A,51Bと、これら内輪51A,51Bの内径面に嵌合する固定の車軸(図示せず)とからなる。外方部材52は回転輪となるものであり、一体のハブ輪兼用の軸受外輪からなる。
【0025】
外方部材52の一端の外周に、上記磁気エンコーダ70が嵌合している。この磁気エンコーダ70は、図7に拡大して示すように、外方部材52の外周に嵌合した鋼板製の環状の芯金62と、この芯金62の外周に一体に接着された多極磁石64とからなる。芯金62は、その円筒部分の一端に外向きのフランジ62aを形成して、強度アップが図られている。多極磁石64は、アキシャル方向の幅に比べてラジアル方向の厚さが薄いリング状とされている。多極磁石64は、第1の実施形態と同じく、周方向に交互に磁極N,Sが形成され、ゴム磁石とされている。ただし、磁極N,Sの磁束の発生方向は、多極磁石64のラジアル方向である。磁気センサ75は、磁気エンコーダ70に対して所定のエアギャップGを介してラジアル方向に対面して、固定側の部材に設けられる。
【0026】
芯金62は、第1の実施形態と同じく、多極磁石64の接着面62baの表面粗さをRa0.8以上としてある。芯金62の材質は鋼板であり、第1の実施形態と同じく、ショットブラスト処理により、上記の表面粗さとしてある。芯金62の他の部分の表面粗さ、つまり粗面化処理していない箇所の表面粗さは、Ra0.2〜0.6である。多極磁石64の材質は、第1の実施形態における多極磁石14と同じである。
【0027】
この構成の場合、磁気エンコーダ70は、シール装置55とは別の独立したものであるが、多極磁石64の接着面62baの表面粗さをRa0.8以上としたことにより、多極磁石64の密着性が向上する効果は、上記実施形態と同様に得られる。
【0028】
次に、多極磁石の密着性試験の結果につき説明する。次の表1に試験条件および試験結果をまとめた。
【0029】
【表1】
【0030】
試験資料は、次の比較例(サンプル(1) )と実施例(サンプル(2) )である。実施例(サンプル(2) )は、図4に示す実施形態にかかる磁気エンコーダ20において、接着面11baをショットブラスト処理面とし、表面粗さをRa0.8〜1.2としたものである。比較例(サンプル(1) )は、実施例(サンプル(2) )に対して、ショットブラスト処理を行わず、接着面11baの表面粗さをRa0.2〜0.8(未満)としたものである。ただし、比較例と実施例とも、磁気エンコーダを1/4の円周方向長さに切断した資料を用いた。
試験方法は、塩化ナトリウム(NaCl)の水溶液の電気分解により、接着の剥がれを確認することにより行った。
試験条件は、次のとおりである。
NaCl濃度:5%、
電圧 :12V(直流)、
陽極 :カーボン、
陰極 :試験資料。
【0031】
この試験により、表1からわかるように、実施例(サンプル(2) )の方が、比較例(サンプル(1) )よりも密着性が優れていることが確認される。密着性の評価は、電圧印加から所定時間が経過するまでの剥離の状況によって行った。
このように、ショットブラスト処理をして芯金の多極磁石接着面の表面粗さをRa0.8〜1.2とすることにより、多極磁石の密着性が向上することが確認された。
【0032】
なお、上記試験の他に、接着剤の塗布回数を1回としたものと3回としたものとの比較を、上記試験と同じ方法,条件により行ったが、塗布回数を増やしても有意義な密着性の改善は見らなかった。
【0034】
【発明の効果】
この発明の車輪用軸受の磁気エンコーダ付きシール装置の製造方法で製造される磁気エンコーダ付きシール装置は、軸受のシール装置の一部として磁気エンコーダを組み込むことができるので、組立性良くコンパクトに磁気エンコーダを設置することができる。シール装置は、第1,第2のシール板が対向し、サイドリップが摺接するため、密封性能が優れたものとなる。磁気エンコーダは、車輪用軸受における泥水、塩水、高温、低温等の過酷な条件下で使用されることになるが、上記構成の磁気エンコーダを用いているため、このような厳しい環境下にさらされても、多極磁石の剥離が生じず、磁気特性の低下が防止され、長期にわたり安定した回転検出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の第1の実施形態にかかる製造方法で製造されるアキシアル型の磁気エンコーダ付きのシール装置を使用した車輪用軸受の断面図である。
【図2】その磁気エンコーダにおける弾性部材の部分正面図である。
【図3】同車輪用軸受の部分拡大断面図である。
【図4】同車輪用軸受における磁気エンコーダの部分拡大断面図である。
【図5】同磁気エンコーダにおけるシール板の粗面化処理方法を示す説明図である。
【図6】 参考提案例にかかるラジアル型の磁気エンコーダを用いた車輪用軸受の断面図である。
【図7】同車輪用軸受における磁気エンコーダの部分拡大断面図である。
【符号の説明】
1…内方部材
2…外方部材
3…転動体
5…シール装置
11…第1のシール板(芯金)
12…第2のシール板
11a,12a…円筒部
11b,12b…立板部
11ba…接着面
11bb…表面部分
14…多極磁石
16…弾性部材
16a…サイドリップ
16b,16c…ラジアルリップ
20…磁気エンコーダ
62…芯金
62ba…接着面
64…弾性部材
70…磁気エンコーダ
Claims (2)
- 内方部材および外方部材と、これら内外の部材間に収容される複数の転動体とを備える車輪用軸受における、上記内外の部材間の環状空間の端部を密封するシール装置を製造する方法であって、
上記シール装置は、上記内方部材および外方部材のうちの互いに異なる部材に各々取付けられた第1および第2のシール板を有し、両シール板は、各々円筒部と立板部とでなる断面L字状に形成されて互いに対向し、第1のシール板は芯金であって、上記内方部材および外方部材のうちの回転側の部材に圧入状態に嵌合され、立板部が軸受の外方側に配されると共に、この立板部に周方向に交互に磁極が形成された多極磁石が接着され、第2のシール板は、上記立板部に摺接するサイドリップおよび上記円筒部に摺接するラジアルリップを一体に有する磁気エンコーダ付きシール装置であり、
上記多極磁石が、磁性体粉が混入された弾性部材であるゴム磁石であり、上記第1のシール板の上記立板部の軸受外方側の面が粗面化処理面であり、この第1のシール板の残りの面が粗面化の未処理面であり、上記第1のシール板の上記粗面化処理面の表面粗さをRa0.8以上とし、かつ上記第1のシール板の上記サイドリップと摺接する粗面化の未処理面の表面粗さをRa0.2〜0.6とし、上記円周方向に交互に磁極が形成された多極磁石が、上記第1のシール板の立板部における軸受外方側の面である上記粗面化処理面に接着されて、これら第1のシール板と多極磁石とで磁気エンコーダが構成され、上記多極磁石は、上記第1のシール板の上記立板部の先端縁から裏面の一部まで被さる裏面被せ部を有し、
上記第1のシール板の粗面化処理に、ショットブラスト処理のうちのドライブラスト処理を採用し、上記ドライブラスト処理は、第1のシール板をワークセット治具上に載せ、ブラスト用のノズルを、第1のシール板の立板部の外側面に対向させて、上記ノズルと第1のシール板とを相対的に第1のシール板の円周方向に旋回させながら、粒子を吹き付けることにより行い、上記粗面化処理を施した第1のシール板の接着面に接着剤を塗布しておいて、ゴム材料と磁性粉体とを混練した混練材料を第1のシール板と共に成形金型内で加硫成形することにより成形した未着磁の多極磁石を、この加硫成形時に第1のシール板に対して前記接着剤により接着させ、この多極磁石の上記成形の後に、着磁による前記磁極の形成を行うことを特徴とする車輪用軸受の磁気エンコーダ付きシール装置の製造方法。 - 上記シール装置は、上記第2のシール板の円筒部と上記第1のシール板の立板部の先端とを僅かな径方向隙間をもって対峙させた請求項1記載の車輪用軸受の磁気エンコーダ付きシール装置の製造方法。
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JP2001248008A JP4596701B2 (ja) | 2001-08-17 | 2001-08-17 | 車輪用軸受の磁気エンコーダ付きシ−ル装置の製造方法 |
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