JP4588161B2 - 増圧ポンプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、増圧ポンプに関し、より詳しくいえば、入力ピストンと出力ピストンとの断面積比に応じて増圧させた圧力流体を吐出するポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の増圧ポンプは、入力ピストンに対面する入力室に切換弁によって圧油を給排して、その入力ピストンに連結した出力ピストンを往復駆動するようになっている。
上記の切換弁には、従来では、特開平10−78002号公報に示すように、次のように構成されたものがある。
即ち、流路切換用のスプールの一端に大径ピストンを設けると共に他端に小径ピストンを設けて、その小径ピストンの他端面に常に油圧力を作用させている。そして、上記スプールを供給位置から排出位置へ切換えるときには、上記の小径ピストンの他端面にのみ油圧力を作用させる。これに対して、上記スプールを排出位置から供給位置へ切換えるときには、上記の大径ピストンの一端面にも上記の油圧力を作用させて、その大径ピストンの一端面に作用する油圧力と前記の小径ピストンの他端面に作用する油圧力との差力によって上記スプールを移動させるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記スプール式の切換弁では、上記スプールを供給位置から排出位置へ切換えるときには、上記の大径ピストンの一端面から圧油を抜き取るので、そのスプールは小径ピストンの他端面に作用する油圧力によって円滑に切換えられる。これに対して、同上スプールを排出位置から供給位置へ切り換えるときには、上記の大径ピストンの一端面に圧油を供給しても、上記の小径ピストンの他端面に常時作用している油圧力が大きな抵抗となって、その切換速度が遅いという問題があった。
【0004】
その問題の原因は次のように理解される。即ち、上記の小径ピストンの断面積を小さくしていくと、それにつれて、上記スプールのスライド移動時の摩擦抵抗による悪影響が大きくなる。このため、その小径ピストンの断面積は所定値よりも大きい値にならざるを得ない。その結果、上記の従来技術では、上記の大径ピストンに作用する油圧力と小径ピストンに作用する油圧力との差力が小さくなって、上記スプールを排出位置から供給位置へ切換えるときの速度が遅くなる。
この問題を解消するには、上記の大径ピストンの断面積を大きくすればよいが、この場合には、上記スプールが大径になって切換弁が大形になるという問題が新たに発生する。
本発明の目的は、増圧ポンプ用切換弁のスプールを排出位置から供給位置へ速やかに切換えると共に、その切換弁をコンパクトに造ることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、請求項1の発明は、例えば、図1と図2(a)から図2(d)、又は、図3と図4(a)から図4(d)に示すように、増圧ポンプを次のように構成した。
増圧ピストン2の大径受圧面4aに入力室9を対面させると共に小径受圧面6aに出力室10を対面させ、その出力室10を入口路13を介して圧力ポートPに接続すると共に同上の出力室10に出口路15を接続し、上記の入力室9を上記の圧力ポートPに接続させる供給状態と上記の入力室9をリターンポートR又は大気側に接続させる排出状態とに切り換えられる切換弁20を、第1ピストン31とその第1ピストン31よりも小径の第2ピストン32を備えたスプール25と、上記の第1ピストン31の一端に対面されて上記スプール25を他端方向の供給位置Xへ押圧するように形成された第1作動室41と、上記の第1ピストン31の断面積S1から上記の第2ピストン32の断面積S2を差し引いた環状断面積S3に作用する流体圧力に相当する力で上記スプール25を一端方向の排出位置Yへ押圧するように形成された第2作動室42とによって構成し、上記の第2作動室42を前記の圧力ポートPに接続し、上記の第2ピストン32の他端を前記リターンポートR又は大気側に連通し、上記の切換弁20を切り換えるパイロット手段60を設け、前記の増圧ピストン2の後退移動の終期には上記のパイロット手段60によって上記の第1作動室41を上記の圧力ポートPへ接続することにより、上記第1ピストン31の断面積S1から上記の環状断面積S3を差し引いた上記第2ピストン32の断面積S2に作用する流体圧力に相当する力で上記スプール25を前記の供給位置Xへ押圧可能に構成し、上記の増圧ピストン2の進出移動の終期には上記パイロット手段60によって同上の第1作動室41を上記リターンポートR又は大気側に接続することにより、上記の環状断面積S3に作用する流体圧力に相当する力で上記スプール25を前記の排出位置Yへ押圧可能に構成したものである。
【0006】
上記の請求項1の発明は、例えば、上記の図1と図2(a)から図2(d)に示すように、次のように作用する。
図1では、増圧ピストン2は実線図の後退位置Bに切換えられ、切換弁20のスプール25が排出位置Yに切換えられている。その状態で、前記の圧力ポートPに圧力流体を供給すると、その圧力流体は、第2作動室42に供給されると共にパイロット手段60を介して前記の第1作動室41に供給される。
すると、図2(a)に示すように、上記の第1作動室41に供給された圧力流体が、前記の第1ピストン31の断面積S1に下向きに作用して、その圧力によって上記の第1ピストン31を下方へ押圧する。また、前記の第2作動室42に供給されている圧力流体が、上記の第1ピストン31の断面積S1から前記の第2ピストン32の断面積S2を差し引いた環状断面積S3に上向きに作用して、その圧力によって上記の第1ピストン31を上方へ押圧している。このため、前記スプール25は、上記の第2ピストン32の断面積S2に対応する流体圧力によって下降していく。
【0007】
図2(b)に示すように、上記スプール25が供給位置X(又はその近傍)に下降すると、前記の圧力ポートPの圧力流体が供給流路(ここでは、供給用の第5ポート55と環状の第4室44と給排用の第4ポート54)を通って前記の入力室9に供給される。これにより、前記の後退位置Bの増圧ピストン2が上昇し始める。その増圧ピストン2が図1中の一点鎖線図の進出位置A(又はその近傍)に上昇したときに、前記パイロット手段60によって第1作動室41の圧力流体が上記リターンポートRへ排出されていく。すると、図2(c)に示すように、前記スプール25は、第2作動室42から前記の環状断面積S3に作用する流体圧力によって上向きに上昇していく。
【0008】
図2(d)に示すように、上記スプール25が上死点の排出位置Y(又はその近傍)に上昇すると、前記の入力室9の圧力流体が排出流路(ここでは、給排用の第4ポート54と環状の第4室44と排出用の第6ポート56)を通って前記リターンポートRへ排出される。すると、前記の進出位置Aの増圧ピストン2は、前記の圧力ポートPから前記の出力室10に流入する圧力流体によって下降していく。そして、増圧ピストン2が実線図の後退位置B(又はその近傍)に下降したときに前記パイロット手段60によって圧力ポートPの圧力流体が前記の第1作動室41に供給される。これにより、上記の図2(d)の排出位置Yのスプール25は、前述の図2(a)に示すように、前記の第2ピストン32の断面積S2に対応する流体圧力によって下降され、図2(b)の供給位置Xへ切換わるのである。
【0009】
従って、上記の請求項1の発明は次の効果を奏する。
上記スプールを排出位置から供給位置へ切換えるときには、前述の従来技術とは異なり、第2ピストンの断面積に対応する流体圧力によって上記スプールを押圧できので、その第2ピストンの断面積が大きいほど上記スプールを強力に押圧できることになる。このため、上記スプールを排出位置から供給位置へ速やかに切換えできる。その結果、前記の増圧ピストンを後退位置から進出位置へ急速に駆動できる。
しかも、上記の効果を達成するにあたり、前述の従来技術とは異なり、前記の第1ピストンの断面積を大きくする必要がないので、スプールの外径が小さくてすみ、切換弁をコンパクトに造れる。
【0010】
請求項2の発明は、上記の請求項1の構成に次の構成を加えたものである。例えば、同上の図1と図2(a)から図2(d)に示すように、前記の第2ピストン32の長手方向の途中部に環状室44を形成して、前記の入力室9を上記の環状室44を介して前記の圧力ポートPと前記リターンポートR又は大気側とに交互に接続したものである。
その請求項2の発明は、上記スプールに連動する環状室によって流路の切換えを行えるので、圧力流体の供給用ポートに対する第2ピストンのオーバーラップ長さを大きくすることが可能となり、その圧力流体が上記の第2ピストンの他端へ漏れ出るのを防止できる。また、上記の環状室の長手方向の寸法を変更することにより、上記の流路の切換えタイミングを微調節できるので、増圧ポンプの運転能力を向上できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1と図2(a)から図2(d)は、本発明の第1実施形態を示している。図1は増圧ポンプの系統図である。図2(a)から図2(d)は、その増圧ポンプに設けた切換弁の作動説明図である。
この実施形態では、作動流体として圧油を用いた増圧ポンプを例示してある。
まず、図1よって、その増圧ポンプの全体構成を説明する。
【0012】
上記の増圧ポンプのハウジング1内に増圧ピストン2が設けられる。その増圧ピストン2は、大径シリンダ孔3に挿入した入力ピストン4と、小径シリンダ孔5に挿入した出力ピストン6と、その出力ピストン6から上記の入力ピストン4へ向けて突出した連結ロッド7によって構成される。なお、上記の入力ピストン4と出力ピストン6と連結ロッド7とは一体に形成してもよい。
上記の大径シリンダ孔3の下端壁と上記の入力ピストン4との間に、その入力ピストン4の大径受圧面4aに対面する入力室9が形成される。また、上記の小径シリンダ孔5の上端壁と上記の出力ピストン6との間に、その出力ピストン6の小径受圧面6aに対面する出力室10が形成される。さらに、上記の両ピストン4・6の間に排出室11が形成されている。
【0013】
上記の出力室10が入口路13を介して圧力ポートPに接続され、その入口路13に入口逆止弁14が配置される。また、上記の出力室10に出口路15が接続され、その出口路15に出口逆止弁16が配置されている。さらに、上記の排出室11が排出路18を介してリターンポートRに接続される。
上記の圧力ポートPには油圧ポンプ(図示せず)によって圧油が供給可能になっており、上記リターンポートRには油タンク(図示せず)が連通されている。
【0014】
上記の入力室9がスプール式の切換弁20によって上記の圧力ポートPと上記リターンポートRとに交互に接続されて、前記の増圧ピストン2が実線図の後退位置Bと一点鎖線図の進出位置Aとに往復移動する。これにより、前記の入口逆止弁14から前記の出力室10へ供給された圧油が、前記の入力ピストン4と前記の出力ピストン6との断面積比に応じた圧力に増圧され、その増圧された高圧油が前記の出口逆止弁16と前記の出口路15とを通って油圧アクチュエータ(図示せず)へ供給される。
【0015】
上記の切換弁20は次のように構成されている。
前記ハウジング1内には、直列に連通させた大径の第1シリンダ孔21および小径の第2シリンダ孔22が形成される。流路を切換えるスプール25は、上記の第1シリンダ孔21に挿入した第1ピストン31と、上記の第2シリンダ孔22に挿入した第2ピストン32と、上記の両ピストン31・32を連結するロッド33とによって一体に構成される。そのロッド33の直径は上記の第2ピストン32の直径と同じに形成されている。
なお、上記スプール25は、一体に構成することに代えて、複数の分割体によって構成してもよい。
【0016】
上記の第1シリンダ孔21の上端壁と上記の第1ピストン31との間に第1作動室41が形成され、その第1ピストン31と上記の第2ピストン32との間に第2作動室42が形成され、その第2ピストン32と前記の第2シリンダ孔22の下端壁との間に第3室43が形成される。さらに、上記の第2ピストン32の長手方向の途中部に環状の第4室(環状室)44が形成される。
【0017】
上記の第1作動室41が、パイロット用の第1ポート51と後述のパイロット路61とを経て、前記の出力室10と前記の排出室11とに交互に連通可能になっている。上記の第2作動室42が、加圧用の第2ポート52と前記の入口路13とを経て前記の圧力ポートPに連通される。上記の第3室43が、圧力開放用の第3ポート53と前記の排出路18とを経て前記リターンポートRに連通される。なお、これに代えて、上記の第3室43は、上記の第3ポート53を介して大気側に連通させてもよく、又は、直接に大気側に開放させてもよい。
上記の第4室44が、給排用の第4ポート54と給排路47とを経て前記の入力室9に連通される。さらに、その第4室44は、供給用の第5ポート55と前記の入口路13とを経て上記の圧力ポートPに連通可能にされると共に、排出用の第6ポート56と前記の排出路18とを経て上記リターンポートRに連通可能になっている。
【0018】
上記の切換弁20を切換えるパイロット手段60は次のように構成される。
前記パイロット路61の先端が前記の出力室10の下寄り部に開口され、その開口部分によって切換ポート62が構成される。
そして、図1中の実線図に示すように、前記の増圧ピストン2が後退位置Bに下降した状態では、圧力ポートPが前記の入口逆止弁14と上記の出力室10と上記の切換ポート62と上記パイロット路61とを経て前記の第1作動室41に連通される。これに対して、同上の図1中の一点鎖線図に示すように、上記の増圧ピストン2が進出位置Aに上昇した状態では、上記の第1作動室41が上記パイロット路61と切換ポート62と前記の排出室11の端壁に形成した溝11aと前記の排出路18とを経て前記リターンポートRに連通される。
【0019】
また、上記の増圧ポンプに圧抜き手段70が設けられる。即ち、前記の出口逆止弁16の下流側で前記の出口路15から圧抜き路71が分岐され、その圧抜き路71が連通路72を経て前記の圧力ポートPに連通される。上記の圧抜き路71に圧抜き用逆止弁73の逆止弁座74が形成され、その逆止弁座74に逆止部材75が接当される。その逆止部材75に強制開弁用ピストン76が対面され、そのピストン76の作動室77が前記の排出路18を経て前記リターンポートRに連通される。
【0020】
上記構成の増圧ポンプの作動を、上記の図1を参照しながら図2(a)から図2(d)によって説明する。
その図1では、増圧ピストン2は下死点の後退位置Bに切換えられて前記の切換ポート62が開いており、また、前記の切換弁20のスプール25が上死点の排出位置Yに切換えられている。
増圧ポンプの運転を開始するときには、前記圧力ポートPに圧油を供給する。
すると、その圧油は、前記の入口路13と第2ポート52とを経て第2作動室42に供給される。これと同時に、上記の圧力ポートPの圧油は、前記の入口逆止弁14を経て前記の出力室10に供給され、その出力室10の圧油が上記の切換ポート62とパイロット路61とを経て前記の第1作動室41に供給される。
【0021】
すると、図2(a)に示すように、上記の第1作動室41に供給された圧油が、前記の第1ピストン31の断面積S1に下向きに作用して、その油圧力によって上記の第1ピストン31を下方へ押圧する。また、前記の第2ポート52から前記の第2作動室42に供給されている圧油が、上記の第1ピストン31の断面積S1から前記の第2ピストン32の断面積S2を差し引いた環状断面積S3に上向きに作用して、その油圧力によって上記の第1ピストン31を上方へ押圧している。このため、前記スプール25は、上記の断面積S1から上記の環状の断面積S3を差し引いた断面積である第2ピストン32の断面積S2に対応する油圧力によって下降していく。
ちなみに、この第1実施形態では、上記の断面積S1・S2・S3の比率を、ほぼ、26:16:10の比率に設定してある。
【0022】
図2(b)に示すように、上記スプール25が供給位置X(又はその近傍)に下降すると、前記の供給用の第5ポート55が開かれて、前記の圧力ポートPの圧油が上記の第5ポート55と前記の第4室44と第4ポート54と給排路47とを経て、前記の入力室9に供給される。これにより、前記の後退位置Bの増圧ピストン2が上昇し始める。すると、まず、前記の切換ポート62が前記の出力ピストン6によって閉じられ、増圧ピストン2が一点鎖線図の進出位置A(又はその近傍)に上昇したときに上記の切換ポート62が開かれる。
【0023】
これにより、前記の第1作動室41の圧油が第1ポート51とパイロット路61と上記の切換ポート62と排出室11の溝11aと排出路18とを経て、前記リターンポートRへ排出されていく。このため、上記スプール25は、小さな力で上昇可能となり、図2(c)に示すように、第2作動室42から前記の環状断面積S3に上向きに作用する油圧力によって円滑に上昇していき、前記の供給用の第5ポート55が閉じられる。
【0024】
図2(d)に示すように、上記スプール25が上死点の排出位置Y(又はその近傍)に上昇すると、前記の排出用の第6ポート56が開かれる。これにより、前記の入力室9の圧油が、前記の給排路47と第4ポート54と第4室44と上記の第6ポート56と前記の排出路18とを経て、前記リターンポートRへ排出される。
すると、前記の進出位置Aの増圧ピストン2は、前記の出力室10から出力ピストン6に作用する残圧によって下降し始め、引き続いて、前記の入口逆止弁14から上記の出力室10に流入する圧油によって下降していく。
【0025】
その下降により、まず、前記の切換ポート62が上記の出力ピストン6によって閉じられ、増圧ピストン2が実線図の後退位置B(又はその近傍)に下降したときに上記の切換ポート62が開かれる。すると、前述したように、圧力ポートPの圧油が出力室10と上記の切換ポート62と前記パイロット路61とを経て、前記の第1作動室41に供給される。
これにより、上記の図2(d)の排出位置Yのスプール25は、まず、前記の図2(a)に示すように下降して、図2(b)の供給位置Xへ切換わるのである。
そして、上記の工程を繰り返すことにより、前記の出力室10から前記の出口路15を経て油圧アクチュエータ(図示せず)へ増圧された高圧油が吐出されるのである。
【0026】
上記の高圧油の吐出を停止するときには、前記の圧力ポートPへの圧油の供給を停止すればよい。この場合、前記の出口路15の高圧油は、前記の出口逆止弁16と前記の圧抜き用逆止弁73との各逆止作用によって、上記の圧力ポートPへ漏出することが阻止される。
なお、上記の油圧アクチュエータ(図示せず)内の高圧油を抜き取るときには、上記の圧力ポートPを前記の油タンク(図示せず)に連通させると共に、前記リターンポートRへ圧油を供給すればよい。これにより、そのリターンポートRの圧油が前記の排出路18を経て前記の圧抜き手段70の前記の作動室77へ供給され、前記の強制開弁用ピストン76が前記の逆止部材75を逆止弁座74から離間させる。すると、上記の油圧アクチュエータ内の高圧油が、前記の出口路15と圧抜き路71と上記の圧抜き用逆止弁73の離間隙間と前記の連通路72と上記の圧力ポートPとを経て、上記の油タンク(図示せず)へ排出される。
【0027】
上記の第1実施形態は次の長所を奏する。
前記の第2ピストン32の長手方向の途中部に環状室44を形成して、前記の入力室9を上記の環状室44を介して前記の圧力ポートPと前記リターンポートRとに交互に接続したので、前記の圧油が供給される供給用ポート55に対する第2ピストン32のオーバーラップ長さを大きくすることが可能となる。より詳しくいえば、上記ポート55の下端と前記の第3室43との間を上記の第2ピストン32によって上下方向に長く封止できる。このため、上記ポート55に供給された圧油が上記の第3室43へ漏れ出すのを防止できる。また、上記の環状室44の長手方向の寸法を変更することにより、流路の切換えタイミングを微調節できるので、増圧ポンプの運転能力を向上できる。
なお、上記の第2ピストン32の下寄り部にパッキンを装着した場合には、上記の圧油の漏れを確実に防止できる。
【0028】
図3と図4(a)から図4(d)は、本発明の第2実施形態を示している。この第2実施形態においては、上記の第1実施形態と同じ構成の部材には原則として同一の符号を付けてある。
この第2実施形態の増圧ポンプが前記の第1実施形態と異なる点は、前記の切換弁20を6ポート形から4ポート形へ変更したことにある。
【0029】
より詳しくいえば、前記のスプール25は、大径の第1ピストン31と、小径の第2ピストン32と、その第2ピストン32よりも小径のロッド80とによって構成される。上記の第1ピストン31の上側に第1作動室41が形成され、その第1ピストン31と上記の第2ピストン32との間に第2作動室42が形成され、その第2ピストン32の下側に第3室43が形成される。
【0030】
上記の第1作動室41が、前記の第1実施形態と同様に、パイロット用の第1ポート51とパイロット路61とを経て、前記の出力室10と前記の排出室11とに交互に連通可能になっている。上記の第2作動室42が、加圧用の第2ポート52と前記の入口路13とを経て前記の圧力ポートPに連通される。上記の第3室43が、圧力開放用の第3ポート53と前記の排出路18とを経て前記リターンポートRに連通される。さらに、前記の入力室9に連通される給排用の第4ポート54は、上記スプール25の昇降に応じて、上記の第2作動室42と上記の第3室43とに交互に連通可能になっている。
【0031】
増圧ポンプの作動を、上記の図3を参照しながら図4(a)から図4(d)によって説明する。
その図3では、増圧ピストン2は下死点の後退位置Bに切換えられて前記の切換ポート62が開いており、また、切換弁20のスプール25が上死点の排出位置Yに切換えられている。
増圧ポンプの運転を開始するときには、前記の圧力ポートPに供給された圧油は、第2ポート52を経て第2作動室42に供給され、これと同時に、前記の入口逆止弁14と出力室10と切換ポート62とパイロット路61とを経て前記の第1作動室41に供給される。
【0032】
すると、図4(a)に示すように、上記の第1作動室41に供給された圧油が、前記の第1ピストン31の断面積S1に下向きに作用して、その油圧力によって前記スプール25を下方へ押圧する。
また、前記の第2ポート52から前記の第2作動室42に供給されている圧油が、上記の第1ピストン31の断面積S1から前記ロッド80の断面積を差し引いた環状断面積に上向きに作用して、その油圧力によって上記の第1ピストン31を上方へ押圧する。これと同時に、上記の第2作動室42の圧油が前記の第2ピストン32の断面積S2から前記ロッド80の断面積を差し引いた環状断面積に下向きに作用して、その油圧力によって上記の第2ピストン32を下方へ押圧する。このため、上記の第2作動室42の圧油は、前記の第1実施形態と同様に、上記の第1ピストン31の断面積S1から上記の第2ピストン32の断面積S2を差し引いた環状断面積S3に相当する油圧力によって上記スプール25を上方へ押圧している。
【0033】
従って、上記スプール25は、前記の第1実施形態と同様に、上記の第2ピストン32の断面積S2に対応する油圧力によって下降していく。
ちなみに、この第2実施形態でも、上記の第1実施形態と同様に、上記の断面積S1・S2・S3の比率を、ほぼ、26:16:10の比率に設定してある。
【0034】
図4(b)に示すように、上記スプール25が供給位置X(又はその近傍)に下降すると、前記の給排用の第4ポート54が前記の第2作動室42に連通されて、前記の圧力ポートPの圧油が前記の第2ポート52と上記の第2作動室42と上記の第4ポート54と給排路47とを経て、前記の入力室9に供給される。これにより、前記の後退位置Bの増圧ピストン2が上昇し始める。すると、まず、前記の切換ポート62が前記の出力ピストン6によって閉じられ、前記の増圧ピストン2が一点鎖線図の進出位置A(又はその近傍)に上昇したときに上記の切換ポート62が開かれる。
【0035】
これにより、前記の第1作動室41の圧油が第1ポート51とパイロット路61と上記の切換ポート62と排出室11の溝11aと排出路18とを経て、前記リターンポートRへ排出されていく。すると、図4(c)に示すように、前記スプール25は、第2作動室42から前記の環状断面積S3に上向きに作用する油圧力によって上昇していき、前記の給排用の第4ポート54が閉じられる。
【0036】
図4(d)に示すように、上記スプール25が上死点の排出位置Y(又はその近傍)に上昇すると、上記の第4ポート54が第3室43に連通される。これにより、前記の入力室9の圧油が、前記の給排路47と第4ポート54と第3室43と前記の第3ポート53と前記の排出路18とを経て、前記リターンポートRへ排出される。
すると、前記の進出位置Aの増圧ピストン2は、前記の出力室10から出力ピストン6に作用する残圧によって下降し始め、引き続いて、前記の入口逆止弁14から上記の出力室10に流入する圧油によって下降していく。
【0037】
その下降により、まず、前記の切換ポート62が上記の出力ピストン6によって閉じられ、増圧ピストン2が実線図の後退位置B(又はその近傍)に下降したときに上記の切換ポート62が開かれる。すると、前述したように、圧力ポートPの圧油が出力室10と上記の切換ポート62と前記パイロット路61とを経て、前記の第1作動室41に供給される。
これにより、上記の図4(d)の排出位置Yのスプール25は、前記の図4(a)に示すように下降して、図4(b)の供給位置Xに切換わるのである。
【0038】
上記の各実施形態は次のように変更可能である。
前記スプール25の各封止部分の周面にはパッキンを装着してもよい。
前記の増圧ポンプは、例示した姿勢とは上下逆の姿勢に配置してもよく、さらには、横向き姿勢または斜向きの姿勢に配置してもよい。
上記の増圧ポンプの作動流体は、例示した圧油に代えて、他の種類の液体や空気等の気体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の増圧ポンプの系統図である。
【図2】図2(a)から図2(d)は、上記の増圧ポンプに設けた切換弁の作動説明図である。
【図3】本発明の第2実施形態の増圧ポンプの系統図である。
【図4】図4(a)から図4(d)は、その第2実施形態の切換弁の作動説明図である。
【符号の説明】
2…増圧ピストン、4a…大径受圧面、6a…小径受圧面、9…入力室、10…出力室、13…入口路、15…出口路、20…切換弁、25…スプール、31…第1ピストン、32…第2ピストン、41…第1作動室、42…第2作動室、44…環状室(第4室)、60…パイロット手段、P…圧力ポート、R…リターンポート、X…スプール25の供給位置、Y…スプール25の排出位置。
Claims (2)
- 増圧ピストン(2)の大径受圧面(4a)に入力室(9)を対面させると共に小径受圧面(6a)に出力室(10)を対面させ、その出力室(10)を入口路(13)を介して圧力ポート(P)に接続すると共に同上の出力室(10)に出口路(15)を接続し、
上記の入力室(9)を上記の圧力ポート(P)に接続させる供給状態と上記の入力室(9)をリターンポート(R)又は大気側に接続させる排出状態とに切り換えられる切換弁(20)を、第1ピストン(31)とその第1ピストン(31)よりも小径の第2ピストン(32)を備えたスプール(25)と、上記の第1ピストン(31)の一端に対面されて上記スプール(25)を他端方向の供給位置(X)へ押圧するように形成された第1作動室(41)と、上記の第1ピストン(31)の断面積(S1)から上記の第2ピストン(32)の断面積(S2)を差し引いた環状断面積(S3)に作用する流体圧力に相当する力で上記スプール(25)を一端方向の排出位置(Y)へ押圧するように形成された第2作動室(42)とによって構成し、
上記の第2作動室(42)を前記の圧力ポート(P)に接続し、上記の第2ピストン(32)の他端を前記リターンポート(R)又は大気側に連通し、
上記の切換弁(20)を切り換えるパイロット手段(60)を設け、前記の増圧ピストン(2)の後退移動の終期には上記のパイロット手段(60)によって上記の第1作動室(41)を上記の圧力ポート(P)へ接続することにより、上記第1ピストン(31)の断面積(S1)から上記の環状断面積(S3)を差し引いた上記第2ピストン(32)の断面積(S2)に作用する流体圧力に相当する力で上記スプール(25)を前記の供給位置(X)へ押圧可能に構成し、上記の増圧ピストン(2)の進出移動の終期には上記パイロット手段(60)によって同上の第1作動室(41)を上記リターンポート(R)又は大気側に接続することにより、上記の環状断面積(S3)に作用する流体圧力に相当する力で上記スプール(25)を前記の排出位置(Y)へ押圧可能に構成した、ことを特徴とする増圧ポンプ。 - 請求項1に記載した増圧ポンプにおいて、前記の第2ピストン(32)の長手方向の途中部に環状室(44)を形成して、前記の入力室(9)を上記の環状室(44)を介して前記の圧力ポート(P)と前記リターンポート(R)又は大気側とに交互に接続した、ことを特徴とする増圧ポンプ。
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