JP4585152B2 - 生分解性積層体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生分解性積層体に関する。さらに詳しくは、生分解性ポリエステルを用いた生分解性接着剤を介して、生分解性フィルムと、生分解性繊維布と、を積層してなる、生分解性積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境問題において、問題とされている廃棄物のうち、その多くをプラスチック製品が占めており、とくに半永久的に分解しない特性から極めて処理困難な素材として指摘されている。このような社会的なニーズから、天然素材または生分解性合成素材を利用した、土中の微生物などによって自然分解可能な生分解性プラスチックの開発が盛んに行なわれている。
【0003】
これらの生分解性プラスチックは、プラスチック製品の廃棄によるゴミ問題を解決するものと期待され、環境に優しい商品開発などに利用されている。それらの商品開発において、生分解性フィルムと生分解性繊維布を貼合せた積層体に関するニーズがあり、生分解性のラミネーション用接着剤に対する要求が高まっている。
【0004】
ここで、ラミネーションとは、乾式貼合せのことで、紙、アルミ箔、プラスチックフィルムなどを接着剤を介して積層する方法の一種であり、一方の基材に接着剤溶液を塗布し、その溶剤を乾燥した後で、基材を巻取ることなく、同一工程内で、もう一方の基材を接着する方法である。ラミネーションにおいては、一般に、接着剤としては、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、イソシアネート系樹脂、などの非生分解性樹脂を、トルエン、酢酸エチル、ヘキサンなどの有機溶剤に溶解して用いられる場合が多い。
【0005】
しかし、アクリル系、ウレタン系、イソシアネート系のラミネーション用接着剤は、繊維素材に対する接着強度、耐水性、風合いなどには問題はないものの、生分解性に欠けるという問題がある。
【0006】
また、生分解性の接着剤としては、天然高分子素材では、デンプンのり、にかわ、天然ゴム、などがあり、化学合成樹脂としては、PVA(ポリビニルアルコール)系樹脂などが開発されている。しかし、これらの接着剤は、繊維素材に対する接着強度が不足し、耐水性が乏しいという欠点を有している。また、天然高分子素材においては、品質が不安定であるという問題もある。
【0007】
そこで、繊維素材に対する接着強度、耐水性、風合い、などに優れたラミネーション用生分解性接着剤が求められ、これまでに、活発な研究開発が行なわれてきた。たとえば、特開平8−92359号公報には、ポリ乳酸系の接着剤が開示されている。しかし、この接着剤は、繊維素材に対する接着強度が十分満足できる水準ではなく、ラミネーション用として用いた場合に風合いが良くないという欠点がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記の現状に基づき、本発明の課題は、従来の生分解性接着剤に比べて、繊維素材に対する接着強度、耐水性、風合い、に優れたラミネーション用の生分解性接着剤を用いて、生分解性フィルムと生分解性繊維布を貼合せ、生分解性積層体を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するには、生分解性を有するポリ乳酸系樹脂の繊維素材に対する接着強度、耐水性、風合いを高めればよいことに着目し、鋭意検討した結果、ポリ乳酸系樹脂にポリグリセリン残基を加えることにより、ポリ乳酸系樹脂の水酸基濃度を高めて、繊維素材に対する接着強度を顕著に改善することができることを見いだし、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、ポリグリセリン残基を除いた残基のうち、乳酸残基を60〜80モル%含有し、カプロラクトン残基を20〜40モル%含有し、乳酸残基のうちL−乳酸残基とD−乳酸残基のモル比(L/D)が1〜9であり、水酸基濃度が100〜500当量/106gであり、還元粘度(ηSP/c)が0.4〜1.5dl/gである、生分解性ポリエステル、を含有する生分解性接着剤を介して、生分解性フィルムと、生分解性繊維布と、を積層してなる、生分解性積層体である。
【0011】
ここで、前記のポリグリセリン残基の重合度は3〜20の範囲にあることが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、実施の形態を示して本発明をより詳細に説明する。
【0013】
本発明は、特定の生分解性接着剤を介して、生分解性フィルムと、生分解性繊維布と、を積層してなる、生分解性積層体である。そして、本発明に用いる生分解性接着剤は、特定の生分解性ポリエステルを含有する。
【0014】
まず、本発明に用いる生分解性ポリエステルについて説明する。
本発明に用いる生分解性ポリエステルは、ポリグリセリン残基を除いた残基のうち、乳酸残基を60〜80モル%含有し、カプロラクトン残基を20〜40モル%含有し、乳酸残基のうちL−乳酸残基とD−乳酸残基のモル比(L/D)が1〜9であり、ポリグリセリン残基由来の水酸基濃度が100〜500当量/106gであり、還元粘度(ηSP/c)が0.4〜1.5dl/gである。
【0015】
ここで、本発明に用いる生分解性ポリエステルは、次の化学式(1)で示される乳酸残基を、ポリエステル全体からポリグリセリン残基を除いた残基のうち、60〜80モル%含有していることが必要である。また、前記の乳酸残基の割合は、65〜75モル%の範囲にあることが好ましい。前記の乳酸残基の割合が、60〜80モル%の範囲内であれば、良好な繊維素材に対する接着強度および生分解性が得られるが、60モル%未満の場合は、接着強度が不足するという問題があり、80モル%を超える場合は、風合いを損なうという問題がある。
【0016】
【化1】
【0017】
ここで、本発明に用いる生分解性ポリエステルの原料となる乳酸としては、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸のいずれも用いることができる。
【0018】
なお、本発明に用いる生分解性ポリエステルのL−乳酸残基とD−乳酸残基のモル比(L/D)は1〜9であることが必要である。さらに、L/Dは、1〜5の範囲にあることが好ましい。L/Dが9を超えると汎用溶剤に対するポリエステルの溶解性が悪くなり、L/Dが1未満(D−乳酸過剰)であると原料コストが高くなるという問題がある。
【0019】
さらに、本発明に用いる生分解性ポリエステルは、次の化学式(2)で示されるカプロラクトン残基(カプロラクトンが開環したもの)を、ポリエステル全体からポリグリセリン残基を除いた残基のうち、20〜40モル%含有していることが必要である。カプロラクトン残基の割合が、この範囲を外れると、良好な繊維素材に対する接着強度を得ることが出来ない。具体的には、カプロラクトン残基の割合が20モル%未満の場合は、風合いを損なうという問題があり、カプロラクトン残基の割合が40モル%を超える場合は、接着強度不足になるという問題がある。
【0020】
【化2】
【0021】
本発明に用いる生分解性ポリエステルには、乳酸、カプロラクトン、ポリグリセリン以外にも、たとえば、乳酸およびカプロラクトン以外のヒドロキシ酸、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族グリコール類、を1種または2種以上共重合させることができる。なお、乳酸およびカプロラクトン以外の前記の生分解性を有する化合物の残基は、ポリエステル全体からポリグリセリン残基を除いた残基のうち、20モル%以下含有することができるが、0%でもよい。
【0022】
乳酸およびカプロラクトン以外のヒドロキシ酸としては、たとえば、グリコール酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、16−ヒドロキシヘキサデカン酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、10−ヒドロキシステアリン酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、などが挙げられる。乳酸およびカプロラクトン以外の脂肪族グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、などのジオール類が挙げられる。
【0023】
テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、などの芳香族ジカルボン酸、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、などの芳香族ジオールなどは、少量であれば共重合されていても良いが、生分解性の面からは含まれないことが好ましい。
【0024】
なお、ジカルボン酸とジオールからなるポリエステルを共重合させた場合のモル%の算出は、ジカルボン酸、ジオールを個々の単位として計算する。
【0025】
本発明に用いる生分解性ポリエステルの水酸基濃度は、100〜500当量/106gの範囲にある必要がある。また、水酸基濃度は200〜300当量/106gの範囲にあることが好ましい。水酸基濃度が100当量/106g未満では、良好な繊維素材に対する接着強度が得らず、特に、架橋剤と併用した際の接着強度が不足したり、耐熱性が不足することがある。また、水酸基濃度が500当量/106gを超えると、耐水性が悪化する。
【0026】
ここで、水酸基濃度は、原料の仕込量およびポリエステルの酸価の測定値から計算によって求めることができるが、計算方法は、使用する原料および得られる脂肪族ポリエステルの種類により異なる。また、水酸基濃度の測定は、過剰のフェニルイソシアネートを加え樹脂水酸基を反応させ、次に未反応のフェニルイソシアネートを過剰のジエチルアミンと反応させ、未反応ジエチルアミン量を酸により滴定するなどの公知の滴定法で求めることもできる。
【0027】
本発明に用いる生分解性ポリエステルにおけるポリグリセリン残基の重合度は3〜20の範囲にあることが好ましい。重合度が3未満であると繊維素材に対する接着強度が低下し、硬化性が不十分になる傾向があり、重合度が20を超えると、耐水性が十分でない場合がある。
【0028】
本発明に用いる生分解性ポリエステルの還元粘度(ηSP/c)は、0.4〜1.5dl/gであることが必要であり、好ましくは、0.45〜1.0dl/gである。還元粘度が0.4dl/g未満であると良好な繊維素材に対する接着強度が得られず、1.5dl/gを超えると良好な塗布適性が得られない。
【0029】
還元粘度は、たとえば、ポリエステルの重合時間、重合温度、減圧の程度(減圧しながら重合させる場合)を変化させたり、共重合成分としてアルコール成分の使用量を変化させたりすることにより、調整することができる。
【0030】
なお、本発明において、還元粘度は、サンプル濃度0.125g/25ml、測定溶剤クロロホルム、測定温度25℃でウベローデ粘度管を用いて測定した値である。
【0031】
前記の諸条件を満たす、本発明に用いるポリエステルは、生分解性ポリエステルである。ここで生分解性とは、分解の一過程において、生物の代謝が関与して、低分子量化合物に変換する性質をいう。
【0032】
次に、本発明に用いる生分解性ポリエステルの製造方法について説明する。
本発明に用いる生分解性ポリエステルの製造方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。たとえば、乳酸二量体であるラクチドとカプロラクトンを溶融混合し、ポリグリセリンを重合開始剤として添加し、公知の開環重合触媒(たとえばオクチル酸スズ、アルミニウムアセチルアセトナートなど)を使用して加熱開環重合させる方法や、加熱および減圧による直接脱水重縮合を行う方法、などが挙げられる。
【0033】
また、乳酸の二量体であるラクチドとカプロラクトンと、乳酸およびカプロラクトンとポリグリセリン以外の前記の生分解性を有する化合物を用い、ポリグリセリンを重合開始剤として用いて、前記のようにして当該ポリエステルを製造することもできる。
【0034】
次に、本発明に用いる生分解性接着剤について説明する。
本発明に用いる生分解性接着剤は、本発明に用いる生分解性ポリエステルを含有する。また、本発明に用いる生分解性接着剤には、本発明に用いる生分解性ポリエステルに加えて、用途により、必要に応じて、溶剤を加えることが好ましい。
【0035】
前記の溶剤としては、特に限定されず、接着剤の溶剤として好適に使用可能な従来公知の溶剤を使用可能であるが、具体例としては、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、などのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、などのエステル系溶剤、トルエン、キシレン、などの芳香族系溶剤、などが挙げられる。
【0036】
また、本発明に用いる生分解性接着剤の使用方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を使用可能であるが、具体例を挙げれば、本発明に用いる生分解性ポリエステルを前記の溶剤に溶解した後、ロールコーター方式、スプレー方式、ディップ方式、その他の方法で対象物に塗布、乾燥後、接着させることができる。
【0037】
本発明に用いる生分解性接着剤には、多官能イソシアネート化合物などの架橋剤を添加することができる。架橋させることにより、接着強度、耐水性、耐熱性を向上させることができる。また、繊維布面より接着剤がはみだし、表面が汚れるといったトラブルを防ぐことができる。架橋剤としては、特に脂肪族多官能イソシアネート化合物が生分解性の観点から好ましい。
【0038】
架橋剤の配合量は樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部の範囲にあることが好ましく、0.5〜10重量部の範囲にあれば、さらに好ましい。架橋剤の配合量が0.1重量部未満の場合には、接着強度、耐水性、耐熱性、耐汚染性などが不足する傾向があり、20重量部を超える場合には、風合いが損なわれ、生分解性不良となる場合がある。
【0039】
また、本発明に用いる生分解性接着剤には、架橋剤以外にも、各種の添加剤を、生分解性を損なわない程度に添加することができる。
【0040】
次に、本発明の生分解性積層体について説明する。
本発明の生分解性積層体は、生分解性フィルムと、生分解性繊維布が、前記の生分解性接着剤を介して積層されたものである。
【0041】
本発明の生分解性積層体に用いる生分解性フィルムとしては、特に限定はないが、具体的には、ポリL乳酸系フィルム、ポリカプロラクトン系フィルム、ポリエチレンサクシネート系フィルム、脂肪族ポリカーボネート系フィルム、などが挙げられる。
【0042】
また、本発明の生分解性積層体に用いる生分解性繊維布としては、特に限定はないが、具体的には、ポリ乳酸系繊維布、ポリカプロラクトン系繊維布、などの合成系生分解性繊維布や、綿、ウール、麻、などの天然繊維布が挙げられる。
【0043】
そして、本発明の生分解性積層体には、本発明の生分解性接着剤に加えて、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、合成ゴム、天然ゴム、タッキファイアーなどを、生分解性を損なわない範囲で、接着剤として同時に使用可能である。
【0044】
本発明の生分解性積層体の製造方法は、特に限定はされないが、たとえば、ラミネーションなどの方法により製造可能である。
【0045】
本発明の生分解性積層体は、優れた繊維素材に対する接着強度、耐水性、耐熱性、品質の安定性、風合いの求められる、衣服、シート、介護用シーツ、エプロン、などの分野において、好適に使用可能である。
【0046】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
<実施例1>
L−ラクチド240g、DL−ラクチド240g、カプロラクトン320g、重合度が10であるポリグリセリン8g、オクチル酸スズ100mgを4つ口フラスコに加え、窒素雰囲気下、180℃で3時間加熱開環重合させて、ポリエステル(I)を得た。ポリエステル(I)の組成および特性値を表1に示す。
【0048】
次にポリエステル(I)100gをメチルエチルケトン100gに溶解させ、その後、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体である「デュラネートTPA−100(旭化成社製)」を1g配合し、接着剤(I)を得た。
【0049】
続いて、ポリカプロラクトン20gをトルエン80gに溶解させたポリマー溶液を離型紙上に乾燥厚み10μmで塗布した後、90℃で乾燥させ、次いで接着剤(I)を乾燥厚み5μmで塗布し、70℃で1分間乾燥後、平織綿生地と積層し、40℃で24時間エージング後、離型紙を剥離して、積層体(I)を得た。
【0050】
<比較例1>
L−ラクチド240g、DL−ラクチド240g、カプロラクトン320g、オクチル酸スズ100mgを4つ口フラスコに加え、窒素雰囲気下、180℃で3時間加熱開環重合させて、ポリエステル(II)を得た。ポリエステル(II)の組成および特性値を表1に示す。
【0051】
次に、ポリエステル(II)100gをメチルエチルケトン100gに溶解させ、その後、「デュラネートTPA−100(旭化成社製)」を1g配合し、接着剤(II)を得た。
【0052】
続いて、ポリカプロラクトン20gをトルエン80gに溶解させたポリマー溶液を離型紙上に乾燥厚み10μmで塗布した後、90℃で乾燥させ、次いで接着剤(II)を乾燥厚み5μmで塗布し、70℃で1分間乾燥後、平織綿生地と積層し、40℃で24時間エージング後、離型紙を剥離して、積層体(II)を得た。
【0053】
【表1】
【0054】
ここで、本発明に用いる生分解性ポリエステルの水酸基濃度を求めようとすれば、理論的には、ポリエステルの水酸基濃度は、ポリグリセリン由来の水酸基だけで決まるはずであり、また、酸価も0となるはずだが、実際には、原料には不純物が含まれていることが一般的であり、この場合、DLラクチド中に含まれるラクチル乳酸が不純物の大部分を占める。
【0055】
このような場合、ポリグリセリンの代わりに不純物のラクチル乳酸が重合開始剤として働き、不純物がなければ生じないはずの水酸基が生じることがある。また、オキシ酸であるラクチル乳酸においては、酸価と水酸基価は等量であるので、不純物由来の水酸基濃度は、ポリエステルの酸価を測定することにより知ることができる。よって、ここでは、ポリグリセリンの水酸基濃度と測定した酸価を加えることにより、求める生分解性ポリエステルの水酸基濃度を得た。
【0056】
なお、酸価は、ポリエステル0.2gを25mlのクロロホルムに溶解し、0.1NのKOHエタノール溶液で滴定して求めた。滴定の指示薬としてはフェノールフタレインを用いた。
【0057】
また、還元粘度は、サンプル濃度0.125g/25ml、測定溶剤クロロホルム、測定温度25℃、ウベローデ粘度管を用いて測定した。なお、表1において、ポリグリセリン残基を除いた残基のうち乳酸残基およびカプロラクトン残基の占めるモル%は仕込み量を規定している。ただし、500MHzのNMRにより、ポリエステル中にも、同じ量が含まれていることが確認された。
【0058】
さらに、ポリエステル中のL−乳酸とD−乳酸のモル比は、仕込み量から求めているが、ポリエステル中のL−乳酸とD−乳酸のモル比を旋光度計(堀場製作所SEPA−200)を用い決定したものと同じであることを確認した。
【0059】
<実施例2>
L−ラクチド240g、DL−ラクチド240g、カプロラクトン320g、重合度が10であるポリグリセリン2.5g、オクチル酸スズ100mgを4つ口フラスコに加え、窒素雰囲気下、180℃で3時間加熱開環重合させて、ポリエステル(III)を得た。ポリエステル(III)の組成および特性値を表1に示す。
【0060】
次にポリエステル(III)100gをメチルエチルケトン100gに溶解させ、その後、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体である「デュラネートTPA−100(旭化成社製)」を1g配合し、接着剤(III)を得た。
【0061】
続いて、ポリカプロラクトン20gをトルエン80gに溶解させたポリマー溶液を離型紙上に乾燥厚み10μmで塗布した後、90℃で乾燥させ、次いで接着剤(III)を乾燥厚み5μmで塗布し、70℃で1分間乾燥後、平織綿生地と積層し、40℃で24時間エージング後、離型紙を剥離して、積層体(III)を得た。
【0062】
<実施例3>
L−ラクチド240g、DL−ラクチド240g、カプロラクトン320g、重合度が10であるポリグリセリン14g、オクチル酸スズ100mgを4つ口フラスコに加え、窒素雰囲気下、180℃で3時間加熱開環重合させて、ポリエステル(IV)を得た。ポリエステル(IV)の組成および特性値を表2に示す。
【0063】
次にポリエステル(IV)100gをメチルエチルケトン100gに溶解させ、その後、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体である「デュラネートTPA−100(旭化成社製)」を1g配合し、接着剤(IV)を得た。
【0064】
続いて、ポリカプロラクトン20gをトルエン80gに溶解させたポリマー溶液を離型紙上に乾燥厚み10μmで塗布した後、90℃で乾燥させ、次いで接着剤(IV)を乾燥厚み5μmで塗布し、70℃で1分間乾燥後、平織綿生地と積層し、40℃で24時間エージング後、離型紙を剥離して、積層体(IV)を得た。
【0065】
【表2】
【0066】
<実施例4>
L−ラクチド240g、DL−ラクチド240g、カプロラクトン320g、重合度が10であるポリグリセリン22g、オクチル酸スズ100mgを4つ口フラスコに加え、窒素雰囲気下、180℃で3時間加熱開環重合させて、ポリエステル(V)を得た。ポリエステル(V)の組成および特性値を表2に示す。
【0067】
次にポリエステル(V)100gをメチルエチルケトン100gに溶解させ、その後、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体である「デュラネートTPA−100(旭化成社製)」を1g配合し、接着剤(V)を得た。
【0068】
続いて、ポリカプロラクトン20gをトルエン80gに溶解させたポリマー溶液を離型紙上に乾燥厚み10μmで塗布した後、90℃で乾燥させ、次いで接着剤(V)を乾燥厚み5μmで塗布し、70℃で1分間乾燥後、平織綿生地と積層し、40℃で24時間エージング後、離型紙を剥離して、積層体(V)を得た。
【0069】
<実施例5>
L−ラクチド205g、DL−ラクチド205g、カプロラクトン390g、重合度が10であるポリグリセリン8g、オクチル酸スズ100mgを4つ口フラスコに加え、窒素雰囲気下、180℃で3時間加熱開環重合させて、ポリエステル(VI)を得た。ポリエステル(VI)の組成および特性値を表2に示す。
【0070】
次にポリエステル(VI)100gをメチルエチルケトン100gに溶解させ、その後、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体である「デュラネートTPA−100(旭化成社製)」を1g配合し、接着剤(VI)を得た。
【0071】
続いて、ポリカプロラクトン20gをトルエン80gに溶解させたポリマー溶液を離型紙上に乾燥厚み10μmで塗布した後、90℃で乾燥させ、次いで接着剤(VI)を乾燥厚み5μmで塗布し、70℃で1分間乾燥後、平織綿生地と積層し、40℃で24時間エージング後、離型紙を剥離して、積層体(VI)を得た。
【0072】
<比較例2>
L−ラクチド240g、DL−ラクチド240g、カプロラクトン320g、重合度が10であるポリグリセリン27g、オクチル酸スズ100mgを4つ口フラスコに加え、窒素雰囲気下、180℃で3時間加熱開環重合させて、ポリエステル(VII)を得た。ポリエステル(VII)の組成および特性値を表3に示す。
【0073】
次にポリエステル(VII)100gをメチルエチルケトン100gに溶解させ、その後、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体である「デュラネートTPA−100(旭化成社製)」を1g配合し、接着剤(VII)を得た。
【0074】
続いて、ポリカプロラクトン20gをトルエン80gに溶解させたポリマー溶液を離型紙上に乾燥厚み10μmで塗布した後、90℃で乾燥させ、次いで接着剤(VII)を乾燥厚み5μmで塗布し、70℃で1分間乾燥後、平織綿生地と積層し、40℃で24時間エージング後、離型紙を剥離して、積層体(VII)を得た。
【0075】
【表3】
【0076】
<性能評価>
実施例および比較例で得られた、積層体(I)〜(VII)を用い、繊維素材に対する接着強度、生分解性、耐水性、風合い、の評価を下記の試験方法に基づいて行なった。結果を表4および表5に示す。
【0077】
(i)繊維素材に対する接着強度試験
積層体2.5cm×10cmを用い、引張速度200mm/分、23℃、60%RHの条件下、テンシロン(オリエンテック社製)によりTピールを測定した。
【0078】
(ii)生分解性試験
積層体10cm×10cmをコンポスター(生ゴミ処理機、三井ホーム社製「MAM」)中に入れ、7日後にサンプルの形態(分解の速度)を目視観察し、下記の基準に従って評価した。
【0079】
○:サンプルの形態が完全になし
△:サンプルの断片あり
×:サンプルの形態がほとんど残っている
(iii)耐水性試験
積層体を25℃の水中に24時間浸漬させた後、取出して水分をふき取り、積層体の接着強度を、繊維素材に対する接着強度の試験方法と同様にして測定し、耐水性試験前後の積層体の接着強度の保持率(%)により、耐水性を評価した。保持率50%以上が実用に適した範囲であると考えられる。
【0080】
(iv)風合いの評価方法
5人のパネリストにより、触った感覚を下記の基準に従って5段階評価して、平均値を四捨五入した。
【0081】
5:基材のみと同じくらいしなやかである
4:十分しなやかである
3:どちらともいえない
2:ややしなやかさにかける
1:しなやかさが失われている
【0082】
【表4】
【0083】
【表5】
【0084】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0085】
【発明の効果】
本発明に用いられる生分解性接着剤は、繊維素材に対する接着強度、耐水性、風合い、ともに優れている。生分解性フィルムと生分解性繊維布を、本発明に用いられる生分解性接着剤を介して貼り合せることにより、接着強度、耐水性、風合い、ともに優れた、生分解性積層体を得ることができる。
Claims (2)
- 生分解性ポリエステルを含有する生分解性接着剤を介して、生分解性フィルムと生分解性繊維布とが積層されてなる生分解性積層体であって、
前記生分解性ポリエステルは、
ポリグリセリン残基を含有し、
ポリグリセリン残基を除いた残基のうち、乳酸残基を60〜80モル%含有し、カプロラクトン残基を20〜40モル%含有し、
乳酸残基のうちL−乳酸残基とD−乳酸残基のモル比(L/D)が1〜9であり、
水酸基濃度が100〜500当量/106gであり、
還元粘度(ηSP/c)が0.4〜1.5dl/gである、生分解性積層体。 - 前記のポリグリセリン残基の重合度が3〜20であることを特徴とする、請求項1に記載の生分解性積層体。
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