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JP4578707B2 - 合成樹脂製の蓋体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、蓋体の外表面をほぼ全面にわたって覆うことができるように、特にヒンジブロックにまで達する範囲で蓋体の天面を覆うように、固定金型の成形面全域にわたってシート材が展設されるとともに、ゲートがヒンジブロックの成形面に設定された場合の蓋体のインサート成形において、ヒンジブロック周辺のシート材表面が合成樹脂材で汚損されることを確実に防止でき、美麗に成形することが可能な合成樹脂製の蓋体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、合成樹脂製の容器、特に装飾性が求められる化粧料容器などにあっては、その外観を美麗に仕上げるために、印刷などにより加飾を施したシート材を別途作成し、このシート材をインサート成形により容器表面に添着するようにしている。
【0003】
図10には、容器本体にヒンジを介して開閉自在に連結される化粧料容器の蓋体aの成形状態が示されている。成形金型bは固定金型cと可動金型dとで構成され、固定金型cに凹設された成形面eにより蓋体aの天面が成形され、可動金型dに凹設された成形面fにより蓋体aの裏面が成形されるようになっていて、蓋体aの外観を形作る固定金型cの成形面eにシート材gが配設されている。
【0004】
特にシート材gについては、蓋体aの外表面をほぼ全面にわたって覆うことができるように、蓋体aの周側縁h全周を被覆しつつ、ヒンジピンが打ち込まれるピン孔iが形成されるヒンジブロックjに達する範囲で蓋体aの天面に覆着されるように、固定金型cの成形面e全域にわたって展設されるようにインサートされる場合がある。
【0005】
従ってこのような場合、固定金型cと可動金型dとの成形面e,f間に形成されるキャビティk内に合成樹脂材を射出するためのゲートlは、シート材gの展設領域外となるヒンジブロックj後面を成形する成形面(可動金型dの成形面)fに対応した固定金型cと可動金型dとの境界部分に設定されていた。そしてキャビティk内にゲートlから溶融状態の合成樹脂材を射出し、当該合成樹脂材の硬化後に型開きすることによって、シート材gが一体的に覆着された合成樹脂製の蓋体aが成形されるようになっていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで上述したように、蓋体aの外表面をほぼ全面にわたって、特にヒンジブロックjに達する範囲までも蓋体aの天面を覆うように、固定金型cの成形面e全域にわたってシート材gがインサートされるとともに、ゲートlがヒンジブロックjの成形面fに設定された場合の蓋体aのインサート成形にあっては、ゲートlから相当の射出圧力で射出される合成樹脂材が、当該ゲートlの設定されたヒンジブロックjの成形面fに近接するシート材gの周縁部分mに衝突するように流れ込み、その圧力で当該周縁部分mをキャビティk内側へめくり上げたり巻き込むなどしてシート材gと成形面(固定金型cの成形面)eとの間に回り込むこととなり、ヒンジブロックj周辺のシート材g表面が、回り込んだ合成樹脂材の付着で汚損されてしまうという課題があった。
【0007】
そこで、本発明はかかる従来の課題に鑑みて成されたもので、蓋体の外表面をほぼ全面にわたって覆うことができるように、特にヒンジブロックにまで達する範囲で蓋体の天面を覆うように、固定金型の成形面全域にわたってシート材が展設されるとともに、ゲートがヒンジブロックの成形面に設定された場合の蓋体のインサート成形において、ヒンジブロック周辺のシート材表面が合成樹脂材で汚損されることを確実に防止でき、美麗に成形することが可能な合成樹脂製の蓋体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために本発明の合成樹脂製の蓋体にあっては、成形面にシート材が展設された成形金型内にゲートから合成樹脂材を射出して、容器本体に回動自在に連結されるヒンジブロックを含みかつ天面には当該ヒンジブロックに達する範囲で上記シート材が覆着されてインサート成形される合成樹脂製の蓋体において、上記シート材の周縁のうち、上記ゲートが設定された上記ヒンジブロックの成形面に近接する該シート材の周縁部分近傍に、当該周縁部分に作用する射出圧力を減圧するために上記ゲートと当該周縁部分との間を遮る鍔状金型片によって成形された溝部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1および図2には、合成樹脂製の蓋体として、化粧料容器の容器本体を開閉する蓋体1が示されている。
【0010】
この蓋体1は、外表面をなす天面4aとは反対側の裏面4bに鏡板2が接着されて容器本体3の収納部3aを覆う比較的薄肉に形成された蓋本体部4と、この蓋本体部4の一端縁にこれより垂下させて一体的に形成され、容器本体3から突出するヒンジピン5が挿通されて容器本体3に対し回動自在に連結される厚肉のヒンジブロック6と、このヒンジブロック6とは反対側の他端縁にこれより垂下させて一体的に形成され、容器本体3の係合部7に係脱自在に係合して蓋体1を閉止状態に維持するフック8とから主に構成され、フック8を係合部7から外すことにより蓋体1はヒンジピン5周りのヒンジブロック6の回動によって、容器本体3を開閉できるようになっている。
【0011】
特に本実施形態の蓋体1にあっては、当該蓋体1の外表面をほぼ全面にわたって覆うことができるように、天面4aからその周側縁4c全周を被覆しつつ、ヒンジブロック6にまで達する範囲で、蓋体1を加飾するために印刷などが施されたシート材9が覆着されている。そしてヒンジブロック6には、これに達したシート材9の周縁部分9aに対し僅かな隙間を隔てて、かつ当該周縁部分9aに沿ってヒンジブロック6全幅に亘って溝部10が形成されている。そして、後述する成形金型によってこのような溝部10がヒンジブロック6に成形されることによって、そのような成形がなされた蓋体1では上述した本発明の目的が達成される。
【0012】
上記実施形態の合成樹脂製の蓋体1は図3〜図6に示すように、インサート成形によって成形される。成形金型11は、上方に位置された固定金型12と、固定金型12の下方に位置され、上昇されることにより固定金型12と当接して型締めされ、下降されることにより固定金型12から離されて型開き状態とされる昇降自在な可動金型13と、型締めに際しては固定金型12と可動金型13との間に形成されるキャビティ14に向かって進出され、型開きに際しては反対方向に後退されるスライドブロック15とから主に構成される。
【0013】
固定金型12には、昇降される可動金型13に面して窪ませて成形面16が形成され、この成形面16により蓋体1の蓋本体部4の天面4aが成形される。可動金型13には、固定金型12の成形面16に面して窪ませて成形面17が形成され、この成形面17により蓋体1の蓋本体部4の裏面4bやフック8、並びにヒンジブロック6が成形される。そして蓋体1の外観を形作る固定金型12の成形面16には、予めその成形面16に沿って成形された上記シート材9がインサートされる。このシート材9は上述したように、蓋体1の外表面をほぼ全面にわたって覆うべく、天面4aからその周側縁4c全周を被覆しつつ、ヒンジブロック6に達する範囲で蓋本体部4に覆着されるように、固定金型12の成形面16ほぼ全域にわたって展設される。
【0014】
可動金型13には、これと固定金型12との成形面16,17間に形成されるキャビティ14内に合成樹脂材を射出するための上方が開放された細溝状のゲート18が設けられる。このゲート18は、ヒンジブロック6の成形面17の適宜箇所、図示例ではヒンジブロック6後面を成形する成形面17aに設定される。
このようにゲート18を設定することにより、固定金型12の成形面16ほぼ全域にわたって展設されるシート材9と干渉することなく、合成樹脂材を射出できる。また、可動金型13には、型開き後に、成形された蓋体1を離型するための離型ピン19がその成形面17から出没自在に設けられている。
【0015】
さらにスライドブロック15は、可動金型13に形成された溝部20内のレール21に沿ってキャビティ14へ向かってスライド移動自在に設けられ、その進出方向後端には傾斜させて押圧面15aが形成されるとともに、進出方向前端には可動金型13の溝部端面との間にリターンスプリング22が配設される。そしてこのスライドブロック15は、型締めおよび型開きと同期して進退移動されるようになっていて、固定金型12と可動金型13とが次第に接近する型締めに際しては、固定金型12に設けられたロッキングブロック23の傾斜面23aがスライドブロック15の押圧面15aに当接してこれを順次押圧することにより、当該スライドブロック15はキャビティ14へ向かって進出され、他方、固定金型12と可動金型13とが次第に距離をあける型開きに際しては、スライドブロック15はリターンスプリング22によって押し戻されるようになっている。
【0016】
そして特にこのスライドブロック15のキャビティ側先端にはヒンジブロック6の全幅に相当する幅で形成され、ゲート18の直上に形成されたスライド面24上でスライドされて、可動金型13と固定金型12との境界面に沿って進退する鍔状金型片25が設けられている。そしてこの鍔状金型片25は、型締めに際してスライドブロック15がキャビティ14側へ進出されることで、ゲート18と固定金型12との間、ひいてはヒンジブロック6の成形面17aに近接するシート材9の周縁部分9a近傍との間に介在されるとともに、型開きによりスライドブロック15がキャビティ14側から後退されることで、キャビティ14から抜け出すようになっている。
【0017】
従ってまた、上方が開放された細溝状のゲート18は、型締め時にその直上に進出する鍔状金型片25との間で合成樹脂材の射出通路を形成するようになっている。そしてこの鍔状金型片25は、ゲート18と当該ゲート18が近接するシート材9の周縁部分9aとの間を遮って、当該周縁部分9aに作用する射出圧力を減圧するようになっている。
【0018】
さらに、このようなスライド動作を行う鍔状金型片25を避けて合成樹脂材をゲート18に供給するために、可動金型13には、鍔状金型片25のスライド領域外方へ延出させて、ゲート18と連通する溝状のランナー26が形成されるとともに、固定金型12には、型締め時にランナー26と連通されるスプルー27が形成される。そしてランナー26にあっても、型締めにより固定金型12との間で合成樹脂材の供給孔を形成するようになっている。なお、28は、ヒンジブロック6にヒンジピン孔29を形成するための軸体である。
【0019】
上述したような合成樹脂製の蓋体1は、以下のようにして成形される。固定金型12の成形面16にシート材9をインサートした後、型締めを行う。この型締めの過程で、スライドブロック15はロッキングブロック23に押されることで、リターンスプリング22に抗してキャビティ14側に進出し、これにより鍔状金型片25は、細溝状ゲート18の直上を覆いつつ、かつシート材9の周縁のうちヒンジブロック6の成形面17aに近接するシート材9の周縁部分9a直下に棚状に張り出され、当該ヒンジブロック6の成形面17aから突出された状態でキャビティ14内に位置固定される。これにより、ゲート18と当該周縁部分9aとは鍔状金型片25によって遮られることになる。
【0020】
次いで、合成樹脂材を、型締めによって相互に連通されたスプルー27およびランナー26を介して供給して、ゲート18からキャビティ14内に向かって射出させる。この射出時にあっては、合成樹脂材はキャビティ14内に相当の圧力で充填されていくが、この際、鍔状金型片25周りでは、合成樹脂材の流れは直進することができずに当該鍔状金型片25を回り込むように流れることとなり、これにより鍔状金型片25周囲での合成樹脂材の流動圧や流速を低速化させて、結果的に上記周縁部分9aに作用する射出圧力を減圧することができる。
【0021】
これにより、合成樹脂材が当該周縁部分9aをキャビティ14内側へめくり上げたり巻き込むなどしてシート材9と成形面16との間に回り込むことを防止することができ、すなわち、鍔状金型片25によって上記溝部10がヒンジブロック6に成形されることによって、そのような成形がなされた蓋体1では、ヒンジブロック6周辺のシート材9表面が、回り込んだ合成樹脂材の付着で汚損されることを確実に防ぐことができて、蓋体1のヒンジブロック6周辺にまで達する範囲でシート材9を覆着するようにしても、蓋体1を美麗に成形することができる。
【0022】
型開きにあっては、通常通りに単に可動金型13を下降させれば、その過程でスライドブロック15がリターンスプリング22で押し戻されて鍔状金型片25はキャビティ14から後退することとなり、従って当該鍔状金型片25が成形品の離型の障害となることはない。続いて、離型ピン19の作用で、成形された蓋体1が可動金型13から相対的に持ち上げられ、これにより当該蓋体1は成形金型11から離型されることになる。なお、図1中、30はヒンジブロック6に残されたゲート跡である。
【0023】
図7には、鍔状金型片25によって蓋体1のヒンジブロック6に形成される溝部10の変形例が示されていて、上記実施形態では溝部10をヒンジブロック6の全幅に亘る長さで形成する場合を示したが、射出圧力が比較的低圧である場合には、ゲート18近くのみを鍔状金型片25で成形するようにして、溝部10がヒンジブロック6の全幅に亘らないように形成してもよい。
【0024】
図8および図9には、ゲート18の位置を変更した変形例が示されている。図8は、ゲート18を下方に向けて設定したサブマリンゲートの例、図9はゲート18をヒンジブロック6の下部に上方へ向けて設定したピンゲートの例である。
図9の場合には、ゲート18と鍔状金型片25は独立していて、これら両者で射出通路を形成する必要はない。これら変形例にあっても、ゲート18が設定されたヒンジブロック6の成形面17aに近接するシート材9の周縁部分9aとゲート18との間を鍔状金型片25によって遮ることができて、当該周縁部分9a近傍に作用する射出圧力を減圧できることはもちろんである。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明にかかる合成樹脂製の蓋体にあっては、蓋体の外表面をほぼ全面にわたって覆うことができるように、特にヒンジブロックにまで達する範囲で蓋体の天面を覆うように、固定金型の成形面全域にわたってシート材が展設されるとともに、ゲートがヒンジブロックの成形面に設定された場合の蓋体のインサート成形において、鍔状金型片によって溝部がヒンジブロックに成形されることにより、そのような成形がなされた蓋体では、ヒンジブロック周辺のシート材表面が回り込んだ合成樹脂材の付着で汚損されることを確実に防止でき、蓋体のヒンジブロック周辺にまで達する範囲でシート材を覆着するようにしても、蓋体を美麗に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる合成樹脂製の蓋体の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の蓋体を適用した容器の一例である化粧料容器の側断面図である。
【図3】図1の蓋体を成形するための成形金型の一例を示す成形準備段階の側断面図である。
【図4】図1の蓋体を成形するための成形金型の一例を示す型締め段階の側断面図である。
【図5】図4の要部平面図である。
【図6】図1の蓋体を成形するための成形金型の一例を示す型開き段階の側断面図である。
【図7】本発明にかかる合成樹脂製の蓋体の変形例を示す一部破断斜視図である。
【図8】図1の蓋体を成形するための成形金型の他の例を示す型締め段階の要部側断面図である。
【図9】図1の蓋体を成形するための成形金型のさらに他の例を示す型締め段階の要部側断面図である。
【図10】従来における合成樹脂製の蓋体を成形するための成形金型を示す型締め段階の側断面図である。
【符号の説明】
1 合成樹脂製の蓋体
3 容器本体
4a 天面
6 ヒンジブロック
9 シート材
9a シート材の周縁部分
10 溝部
11 成形金型
16,17 成形面
17a ヒンジブロックの成形面
18 ゲート
25 鍔状金型片

Claims (1)

  1. 成形面にシート材が展設された成形金型内にゲートから合成樹脂材を射出して、容器本体に回動自在に連結されるヒンジブロックを含みかつ天面には当該ヒンジブロックに達する範囲で上記シート材が覆着されてインサート成形される合成樹脂製の蓋体において、
    上記シート材の周縁のうち、上記ゲートが設定された上記ヒンジブロックの成形面に近接する該シート材の周縁部分近傍に、当該周縁部分に作用する射出圧力を減圧するために上記ゲートと当該周縁部分との間を遮る鍔状金型片によって成形された溝部が形成されていることを特徴とする合成樹脂製の蓋体。
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