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JP4570736B2 - 運転状態の監視方法 - Google Patents

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JP4570736B2 JP2000201729A JP2000201729A JP4570736B2 JP 4570736 B2 JP4570736 B2 JP 4570736B2 JP 2000201729 A JP2000201729 A JP 2000201729A JP 2000201729 A JP2000201729 A JP 2000201729A JP 4570736 B2 JP4570736 B2 JP 4570736B2
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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、運転状態の監視方法に関し、更に詳しくは、製造装置や検査装置等の処理装置に付設された複数の検出器を介して検出される複数の検出値を処理装置の運転データとして利用して処理装置の運転状態を監視する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体製造工程は多種類の半導体製造装置や検査装置等の処理装置が用いられている。これらの処理装置は各種の運転データを用いてそれぞれの運転状態を監視し、運転状態に異常が認められれば、その原因究明に当たる。原因究明を行う場合には処理装置の運転状態を把握するための各種の運転データを収集し、解析することによって如何なる箇所に異常があったかを調べる。例えばプラズマ処理装置はエッチング処理や成膜処理等に用いられる。この種のプラズマ処理装置は、例えば、処理室内に互いに平行に配設された上部電極と下部電極を備え、下部電極に高周波電力を印加すると共に処理室内にプロセスガスを導入し、上部電極と下部電極間の放電によりプロセスガスのプラズマを発生させ、半導体ウエハ等の被処理体に所定のプラズマ施すようにしている。そして、プラズマ処理装置の運転状態は処理室内の圧力や下部電極の印加電力やプロセスガスの供給流量等の30数種類のデータをそれぞれの検出器を用いて検出し、それぞれの検出値を運転データとして利用して処理装置の運転状態を監視している。また、例えば新たな処理装置やメンテナンス後の処理装置を評価する場合にもそれぞれの処理装置について試運転を行い、試運転で得られた運転データと基準となる処理装置(以下、「基準処理装置」と称す。)の各検出器の検出値の大小を図11〜図15に示すように一つ一つ比較、分析して新たな処理装置やメンテナンス後の処理装置の性能を評価している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、処理装置によって長時間に渡り所定の処理を継続すると、運転状態が経時的に変動したり、場合によっては運転状態が突発的に変動することがある。その場合、例えば高周波電力、プロセスガスの流量、処理室内のプロセスガスの圧力等の運転データについて平均値、最大値、最小値及び分散値等の統計データを個別に求め、それぞれの統計データに基づいて処理装置の運転状態を評価するようにしているが、検出器の数が多いため全ての検出器の運転データについて統計データを求めて各検出器毎に運転データを評価するには作業が多く繁雑で多大な労力と時間を必要とするという課題があった。
【0004】
また、新たな処理装置やメンテナンス後の処理装置の評価を行う場合にもこれらの処理装置それぞれについて個別に試運転を行い、図11〜図15に示すように各処理装置の複数の検出器から得られた運転データと基準処理装置の対応する検出器によって得られた運転データとを一つ一つ比較、分析しているため、処理装置の評価に多大な労力と時間を必要とするという課題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、多数ある運転データを統計的に少数のデータに纏め、少数の統計的データに基づいて処理装置の運転状態を簡単且つ確実に把握することができる運転状態の監視方法を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に記載の運転状態の監視方法は、被処理体の処理装置に付設された複数の検出器を用いて上記被処理体毎に検出される上記各検出器の検出値を運転データとして利用して上記処理装置の運転状態を監視する方法であって、予め基準となる複数の被処理体それぞれについて複数の運転データを得る工程と、上記複数の被処理体の運転データを用いて主成分分析を行う工程と、上記主成分分析により上記処理装置の運転状態の経時的変化を示す第1主成分を得る工程と、上記複数の被処理体に続く被処理体について上記第1主成分の主成分得点の分散値を用いて上記処理装置の運転の停止時期を判断する工程と、を備えたことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の請求項2に記載の運転状態の監視方法は、被処理体の処理装置に付設された複数の検出器を用いて被処理体毎に検出される上記各検出器の検出値を運転データとして利用して上記処理装置の運転状態を監視する方法であって、予め基準となる複数の被処理体それぞれについて複数の運転データを得る工程と、上記複数の被処理体の運転データを用いて主成分分析を行う工程と、上記主成分分析により上記処理装置の運転状態の突発的な変化を示す第2主成分を得る工程と、上記複数の被処理体に続く被処理体について上記第2主成分の主成分得点を用いて上記処理装置の運転状態に突発的な変化があるか否かを判断する工程と、を備えたことを特徴とするものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図15に示す実施例の基づいて本発明を説明する。
まず、本発明の運転状態の監視方法が適用されたプラズマ処理装置の一例について図1を参照しながら説明する。本実施形態に用いられるプラズマ処理装置10は、例えば図1に示すように、アルミニウム等の導電性材料からなる処理室11と、この処理室11内の底面に配設され且つ被処理体としてのウエハWを載置する載置台を兼ねた下部電極12と、この下部電極12の上方に所定の間隔を隔てて配設され且つプロセスガスの供給部を兼ねた中空状の接地された上部電極13と、回転磁場を付与する磁場形成手段14とを備え、制御装置15の制御下で処理室11の上下両電極間で発生する電界に磁場形成手段14による回転磁界Bが作用し、高密度プラズマでウエハWに対して均一なプラズマ処理を行う。処理室11の上面には上部電極13に連通させたガス供給管16が接続され、ガス供給管16及び上部電極13を介してガス供給源(図示せず)から処理室11内へプロセスガスを供給する。処理室11の側面には図示しない真空排気装置に連結されたガス排出管17が接続され、真空排気装置及びガス排出管17を介して処理室11内を減圧して所定の真空度に保持する。下部電極12には高周波電源18が接続され、高周波電源18から下部電極12へ高周波電力を印加し両電極12、13間でプロセスガスのプラズマを発生させ、下部電極12上の半導体ウエハW表面に例えば所定のエッチング処理を施す。
【0017】
プラズマ処理装置10には例えば36種類の検出器が取り付けられ、これらの検出器を用いて例えば高周波電圧Vpp、高周波電力P、プロセスガス流量F等をプラズマ処理(例えばエッチング)時の運転データとして逐次検出し、それぞれの検出値を制御装置15内に逐次取り込むようにしている。この制御装置15には多変量解析プログラムとして例えば主成分分析用のプログラムが格納され、このプログラムを介して主成分分析を行って運転状態を監視するようにしている。即ち、各検出器の検出値をパラメータとして運転状態の様子を観るようにしている。
【0018】
例えば本実施形態で主成分分析を行う場合には、予め基準となる25枚のサンプルウエハに対してエッチング処理を行い、この時に各検出器から検出されるそれぞれの検出値、即ち高周波電圧Vpp、高周波電力P、プロセスガス流量F等の検出値をウエハ毎に逐次検出する。例えば、m枚のウエハそれぞれについてn個の検出値が存在すると、運転データが入った行列は数1で表される。そして、制御装置15においてそれぞれの検出値に基づいて平均値、最大値、最小値、分散値を求めた後、これらの計算値に基づいた分散共分散行列を用いて複数の運転データの主成分分析を行って固有値及びその固有ベクトルを求める。固有値は運転データの分散の大きさを表し、固有値の大きさ順に、第1主成分、第2主成分、・・・第n主成分として定義されている。また、各固有値にはそれぞれに属する固有ベクトルがある。通常、主成分の次数が高いほどデータの評価に対する寄与率が低くなり、その利用価値が薄れる。
【数1】
Figure 0004570736
【0019】
例えばm枚のウエハについてそれぞれn個の検出値を採り、i番目のウエハのj番目の固有値に対応する第j主成分は数2で表される。そして、この第j主成分tijに具体的なi番目の検出値(xi1、xi2、・・・、xinを代入して得られた値がi番目のウエハの第j主成分の得点になる。従って、第j主成分の得点tは数3で定義され、第j主成分の固有ベクトルPは数4で定義される。そして、第j主成分の得点tを行列Xと固有ベクトルPを用いると数5で表される。また、行列Xを主成分の得点とそれぞれの固有ベクトルを用いると数6で表される。
【数2】
Figure 0004570736
【数3】
Figure 0004570736
【数4】
Figure 0004570736
【数5】
Figure 0004570736
【数6】
Figure 0004570736
【0020】
従って、主成分分析では多種類の運転データがあっても例えば第1主成分及び第2主成分、多くても第3主成分までの少数の統計データとして纏め、少数の統計データを調べるだけで運転状態を評価し、把握することができる。例えば一般的に第1、第2主成分の固有値の累積寄与率が90%を超えれば、第1、第2主成分に基づいた評価は信頼性の高いものになる。第1主成分は上述のように運転データが最も大きく分散する方向を示し、処理装置の運転状態の総合的な評価を行う指標となり、処理装置の運転状態の経時的変化の判断、評価に適している。第2主成分は第1主成分とは直交する方向に分散し、正常な運転状態からの瞬間的なずれの指標となり、運転状態の突発的変化の判断、評価に適している。また、同一の処理装置を用いて同一種のウエハを処理すれば、第1、第2主成分の固有値及びその固有ベクトルは基本的には同一である。そこで、本実施形態では、所定の処理装置を用いて25枚のサンプルウエハを所定の条件下で処理し、この条件下での固有値及びその固有ベクトルを予め求める。そして、これらの固有値及びその固有ベクトルを実際のウエハに適用して稼働時における処理装置の運転状態を判断し、評価する。
【0021】
そこで、本実施形態では下記条件でウエハにエッチングを施し、この時の各検出器の検出値を主成分分析すると、固有値は分散共分散値を用いて求められ、最も大きな固有値が分散値が最も大きい第1主成分になる。第1主成分の固有ベクトルは固有値及び分散共分散値を用いて求められる。そして、第1主成分及びこれに次ぐ大きさの第2主成分を用いて運転状態を評価する。処理装置10が安定状態にある時に25枚のサンプルウエハについてウエハ毎に第1主成分得点tを求めて記録すると、図2で25枚目までのウエハに対応する。また、25枚のサンプルウエハの第1主成分得点tを用いて第1主成分得点tの標準偏差σを求めると、25枚のウエハの主成分得点tはいずれも±3σの範囲内に入っている。第1主成分得点tが±3σの範囲内にある時はプラズマ処理装置は正常な状態で運転されているものと看做すことができる。
【0022】
[処理条件]
処理装置:マグネトロンRIE型処理装置
ウエハ:200mm
被エッチング膜:シリコン酸化膜
下地層:シリコン窒化膜
処理内容:SAC
下部電極の電源高周波数及び電力:13.56MHz、1700W
電極間ギャップ:27mm
処理圧力:53mTorr
プロセスガス:C=16sccm、CO=300sccm、Ar=400sccm
バックサイドガス:He=7Torr(電極中央部)、40Torr(電極エッジ部)
静電チャック直流電圧:1.5KV
処理温度:上部電極=60℃、側壁=60℃、下部電極=20℃
【0023】
上述のようにして25枚のサンプルウエハを用いて主成分分析を行った後、同一の条件で実際にウエハのエッチングを行い、各ウエハ毎に各検出器の運転データとサンプルウエハで得られた第1主成分の固有ベクトルを用いて第1主成分得点を求め、図示したところ、図2の26枚目以降のようになった。図2から判ることは、120枚目のウエハ位までは第1主成分得点は正常な運転圏に属しているが、それ以降の第1主成分得点は正常な運転圏を徐々に外れていることが判る。
その原因としてはウエハの処理枚数の増加に伴い処理室内でプラズマ副生成物が付着、積層し、運転条件が徐々に変動していること等が考えられる。図3はエッチング時の高周波電圧Vppの経時的変動を示す図であるが、図3に示す高周波電圧Vppの変動傾向と図2に示す第1主成分得点の変動傾向は同一傾向を示していることが判る。このことからの第1主成分得点がプラズマ処理装置の運転状態の経時的変動を示していることが判る。従って、正常運転圏を外れた時点の区切りの好い時点で運転を停止し、メンテナンス等を行うことが好ましい。
【0024】
図4はサンプルウエハ及び実際のウエハにエッチング処理を施した場合の第2主成分得点を図示したものである。実際のウエハの第2主成分得点を求める時にはサンプルウエハで得られた第2主成分の固有ベクトルを用いる。第2主成分得点は基本的には変化が小さく終始安定して0の近辺に集中しているが、所々で第2主成分得点が突発的に変動して運転圏から大きく外れるウエハが認められる。エッチングの開始直後には第2主成分得点の大きな変動は認められないが、40枚を超えた当たりでは大きな変動が一箇所で認められ、120枚目以降では大きな変動が比較的多く現れる。変動の大きさは3つのグループに分かれていることから、グループによって変動原因が異なるものと考えられる。各グループの変動原因について調べたところ、図4において最も大きく変動している第1グループ▲1▼は図5において○で囲む位置での高周波電力の反射波の突発的な変動に対応していることが判った(図5の横軸はロット内のウエハ枚数を示し、図4とは直接の対応しない)。第2グループ▲2▼は図6において○で囲む位置での高周波電圧の突発的な変動に対応していることが判った(図6の横軸は1枚のウエハ処理中の時間を示す)。また、第3グループ▲3▼は図7において○で囲む位置でのプロセスガスのうちCOガスの流量が突発的に変動したことに対応していることが判った(図7の横軸は1枚のウエハ処理中の時間を示す)。
【0025】
また、本実施形態では、第1、第2主成分では把握しきれない運転状態の変化を第3の手法によってより確実に把握できるようにしてある。例えば寄与率の高い第k主成分までは累積寄与率が90%を超えてれば主成分分析を行うことで運転状態の変動を判別、評価することができるが、10%の把握漏れが生じる。そこで、寄与率の低い第(k+1)以上の高次の主成分を一つに纏めた数7で定義する残差行列E(各行の成分は各検出器の検出値に対応し、各列の成分はウエハの枚数に対応する)を作り、この残差行列Eを数6に当て填めると数6は数8で表される。この残差行列Eの残差得点Qは数9で定義される行ベクトルeを用いた数10で定義される。残差得点Qはi番目のウエハの各検出値との残差(誤差)を表し、数10で定義される。残差得点Qは行ベクトルとその転置ベクトルe の積として表され、各残差の2乗の和となり、プラス成分及びマイナス成分を相殺することなく確実に残差として求められるようにしてある。本実施形態ではこの残差得点Qを求めることによって運転状態を多面的に判別、評価するようにしてある。第1、第2主成分ではそれぞれの固有ベクトルが決まるため、各検出器の運転データ(検出値)を多面的に評価することができない。この点、残差行列Eを求めることにより各検出値の統計データとしての重みを多面的に評価することができ、第1〜第k成分では掴みきれない運転状態の変化を把握することができる。従って、あるウエハの残差得点Qがサンプルウエハの残差得点Qから外れた場合には行ベクトルeの成分を観れば、そのウエハの処理時にそのウエハのいずれの検出値に大きなズレがあったかが判り、異常の原因を特定することができる。
【数7】
Figure 0004570736
【数8】
Figure 0004570736
【数9】
Figure 0004570736
【数10】
Figure 0004570736
【0026】
例えば、第1、第2主成分の固有値の累積寄与率が90%を超えれば第1、第2主成分を用いて運転状態の経時的変動や突発的な変動を判別することができ、第1、第2主成分で把握しきれない変化を残差得点Qよって把握することができる。第1、第2主成分と残差行列Eを数8に当て填めると数11になる。
【数11】
Figure 0004570736
【0027】
上記処理条件でウエハを処理した時のウエハ毎の残差得点Qを記録したものが図8である。図8からも明らかなように残差得点Qもウエハの処理枚数の増加のともなって第1主成分得点tと同様に経時的に変動する傾向が分かり、また、第2主成分得点と同様に突発的に変動する様子も分かる。このことから残差得点Qを把握すれば、第1、第2主成分によって把握できる現象をも把握することができ、更に、第1、第2主成分で把握しきれない現象をも多面的に把握できることを示している。そして、残差行列Eの行(同一ウエハ)のうち、各検出器の残差にずれのあった運転データを観ることにより、そのウエハではいずれの検出値に異常があったかを正確に確認することができる。
【0028】
上記実施形態では多変量解析(例えば、主成分分析)を用いて処理装置をウエハを処理する場合の運転状態を評価する方法について説明したが、この手法は処理装置間の固体差(あるいは特性差)を判断、評価する場合にも利用することができる。本実施形態では残差得点Qを用いて処理装置間の特性差を把握するようにしている。残差得点Qは各検出値の変化を多面的に把握することができ、しかも変化した検出値を特定することができる。
【0029】
例えば、基準処理装置を用いて25枚のウエハを処理し、上記実施形態と同様に検出器の検出値を運転データとして得た後、この運転データをパラメータとして用いて多変量解析を行って残差行列E及びその残差得点Qを求め、この残差得点Qに基づいて基準処理装置の特性を把握する。そして、上述のように基準処理装置の残差得点Qの値を他の処理装置(以下、「比較処理装置」と称す。)の特性を判断、評価する場合の基準値として利用する。基準処理装置の残差得点Qを得た後、比較処理装置を用いて基準処理装置と同一条件でウエハ処理して各検出器の検出値をパラメータとして得る。そして、比較処理装置で得られたパラメータを基準処理装置で得られた残差得点Qにを得る時の数11に当て填めて比較処理装置の残差得点Qを求める。更に、比較処理装置の残差得点Qと基準処理装置の残差得点Qと比較し、前者の値と後者の値が一致しているか否かを確認する。比較処理装置の残差得点Qが基準処理装置の残差得点Qからずれている場合には、比較処理装置のいずれかの検出値が基準値からずれていることが判る。本実施形態では、残差行列Eの行は各処理装置における各検出器の残差で構成されている。
【0030】
本実施形態では図9に示すように基準処理装置として装置F、Iを用いて25枚のウエハを上記実施形態と同一条件でエッチング処理し、基準処理装置F、Iの各検出器の検出値をパラメータとして用いて上記実施形態と同様に主成分分析を行い、第1、第2主成分の固有値及び固有ベクトルを求めると共に残差得点Qを求めた。そして、基準処理装置で得た固有値及び固有ベクトル等の主成分分析で得られた定数を比較処理装置A〜E、G、H、Jの主成分分析プログラムに設定する。次いで、比較処理装置A〜E、G、H、Jを用いて同一ウエハのエッチング処理を行ってそれぞれの検出器の検出値を得た後、各処理装置毎に残差得点Qを求め、その結果を図9に示した。残差得点Qを得るためには数10が用いられる。
【0031】
図9の示す結果によれば、処理装置A、D、G及びJの残差得点Qは基準処理装置F、Iの残差得点Qと殆ど変わらないが、処理装置B、C、E、Hの残差得点Qは基準処理装置の残差得点Qから大きくずれている。従って、処理装置B、C、E、Hは、基準処理装置F、Iのいずれかのパラメータの残差が大きく変化していることが判る。そこで、残差の大きなパラメータを検討するために、処理装置B、C、E、Hのパラメータの残差を表示した図10を観てみると、処理装置BではパラメータG、H、Kの残差が大きく、処理装置CではパラメータC、H、J、Kの残差が大きく、処理装置EではパラメータC、Hの残差が大きく、処理装置HではパラメータG、H、Jの残差が大きくなっていることが判った。このように、比較処理装置の残差得点Qが基準処理装置F、Iの残差得点Qから大きくずれている場合には、その処理装置の各検出器の残差を比較することによりずれの原因となった検出器を簡単に特定することができる。
【0032】
以上のことから比較処理装置の残差得点Qを求め、その値を基準処理装置の残差得点Qと比較するだけで基準処理装置の特性から外れた特性を有する比較処理装置を簡単に評価することができる。しかも、その比較処理装置の各パラメータの残差が図10に示すように一目で判り、残差が大きいパラメータが認められた場合にはそのパラメータが基準処理装置から外れていることが簡単に判る。従って、新たな製造された処理装置やメンテナンス後の処理装置の性能調整を行う場合に、その処理装置の残差行列E及び残差得点Qを求めるだけで性能上の不具合などを簡単に見つけることができ、しかもその不具合を特定することができ、性能調整を短時間で行うことができる。
【0033】
また、以上の説明は分散共分散を用いた主成分分析についてのものであるが、複数の検出器の検出値はそれぞれ固有の単位を有するため、それぞれの検出値をそのまま主成分分析用のデータとして用いると、運転データを正確に反映した評価をできないことがある。そこで、全検出値データを標準化し相関行列を用いた主成分分析を行うことによって各検出値の単位の違いによる影響を予め排除することで、運転状態を正確に評価することができる。
【0034】
また、本発明は上記実施形態の他、処理条件を下記処理条件1〜5のように変更して行っても同様の作用効果を得ることができた。
[処理条件1]
処理装置:マグネトロンRIE型処理装置
ウエハ:300mm
被エッチング膜:シリコン酸化膜
下地層:Si
処理内容:コンタクトホール
下部電極:電源高周波数=13.56MHz、電源電力=4000W
電極間ギャップ:40mm
処理圧力:40mTorr
プロセスガス:C=20sccm、CO=100sccm、Ar=440sccm
=10sccm
バックサイドガス:He=10Torr(電極中央部)、50Torr(電極エッジ部)
静電チャック直流電圧:2.5KV
処理温度:上部電極=60℃、側壁=60℃、下部電極=10℃
[処理条件2]
処理装置:マグネトロンRIE型処理装置
ウエハ:300mm
被エッチング膜:シリコン酸化膜
下地層:SiN
処理内容:SAC
下部電極:電源高周波数=13.56MHz、電源電力=4000W
電極間ギャップ:40mm
処理圧力:40mTorr
プロセスガス:C=24sccm、CO=450sccm、Ar=600sccm
バックサイドガス:He=10Torr(電極中央部)、50Torr(電極エッジ部)
静電チャック直流電圧:2.5KV
処理温度:上部電極=60℃、側壁=60℃、下部電極=10℃
[処理条件3]
処理装置:二周波プラズマエッチング処理装置(上下両電極印加)
ウエハ:300mm
被エッチング膜:シリコン酸化膜
下地層:Si、金属膜
処理内容:スルーホール、ビアコンタクト
上部電極:電源周波数=60MHz、電源電力=3300W
下部電極:電源高周波数=2MHz、電源電力=3800W
電極間ギャップ:35mm
処理圧力:25mTorr
プロセスガス:C=32sccm、Ar=750sccm、O=45sccm
バックサイドガス:He=20Torr(電極中央部)、35Torr(電極エッジ部)
静電チャック直流電圧:2.5KV
処理温度:上部電極=60℃、側壁=50℃、下部電極=20℃
[処理条件4]
処理装置:二周波プラズマエッチング処理装置(上下両電極印加)
ウエハ:300mm
被エッチング膜:ポリシリコン
下地層:熱酸化膜
処理内容:ゲート
上部電極:電源周波数=60MHz、電源電力=200W
下部電極:電源高周波数=13.56MHz、電源電力=150W
電極間ギャップ:170mm
処理圧力:30mTorr
プロセスガス:HBr=400sccm
バックサイドガス:He=3Torr(電極中央部)、3Torr(電極エッジ部)
静電チャック直流電圧:3.0KV
処理温度:上部電極=80℃、側壁=60℃、下部電極=60℃
[処理条件5]
処理装置:二周波プラズマエッチング処理装置(上下両電極印加)
ウエハ:300mm
被エッチング膜:Si
下地層:−
処理内容:STI
上部電極:電源周波数=60MHz、電源電力=1800W
下部電極:電源高周波数=13.56MHz、電源電力=300W
電極間ギャップ:170mm
処理圧力:100mTorr
プロセスガス:O=5sccm、HBr=570sccm、CL=30sccm
バックサイドガス:He=3Torr(電極中央部)、3Torr(電極エッジ部)
静電チャック直流電圧:3.0KV
処理温度:上部電極=80℃、側壁=60℃、下部電極=60℃
【0035】
以上説明したように本実施形態によれば、予めサンプルウエハを使ってそのウエハの多変量解析のうちの主成分分析を行って運転状態を評価するようにしたため、全ての検出器による検出値の意味内容を個別に比較、評価して運転状態を観る従来の方法と比較して、多数の運転データがあっても、多数の運転データを主成分分析することにより自動的に第1主成分得点及び第2主成分得点という少数のデータを得て運転状態を正確に把握することができる。
【0036】
また、本実施形態によれば、運転状態の監視手法として主成分分析の第1主成分得点を用いるようにしたため、ウエハ毎の第1主成分得点の変動により運転状態の経時的変化を把握することができる。また、ウエハ毎の第1主成分得点の標準偏差σの±3倍の値を基準にプラズマ処理装置の運転の停止時期を判断するようにしたため、プラズマ処理装置の停止時期、つまり、メンテナンス時期等を簡単且つ確実に把握することができる。
【0037】
また、本実施形態によれば、ウエハ毎の第2主成分得点を用いるようにしたため、第2主成分得点が突発的に変化するウエハが認められれば、そのウエハの各検出値を確認すするだけでいずれかの検出値に異常のあったことを簡単に知ることができる。
【0038】
更に、本実施形態によれば、運転データに基づいて第1、第2主成分それぞれの得点を求める際に、これらの主成分以外の残差の小さい運転データを一つに纏めて残差得点Qとして求めるようにしたため、各検出値を多面的に把握することができ、第1、第2主成分得点では見落とがちな変化を確実に掴むことができ、運転状態をより詳細に把握することができる。しかも、残差得点Qで異常の見つかったウエハについては、更に残差行列Eの行成分を分析することによりどの検出器による検出値に異常があったを知ることができる。
【0039】
また、本実施形態では残差得点Qを用いて処理装置間の性能上の差を把握し、その処理装置の善し悪しを評価することができ、しかも残差成分を観れば性能の劣る部位を簡単迅速に特定することができる。従って、新たに製造された処理装置やメンテナンス後の処理装置の性能判断や性能評価を簡単且つ迅速に行うことができる。
【0040】
尚、上記実施形態では、主成分分析を用いて行うウエハのプラズマ処理装置の運転状態を監視する場合及び処理装置間の性能差を検出する場合について説明したが、その他の多変量解析の手法を用いて運転状態を監視することもできる。また、上記実施形態ではプラズマ処理装置を例に挙げて説明したが、プラズマ処理装置以外の半導体製造装置やその他の一般的な生産装置にも本発明を適用することができる。
【0041】
【発明の効果】
本発明の請求項1に記載の発明によれば、多数ある運転データを統計的に少数のデータに纏め、少数の統計的データに基づいて処理装置の運転状態を簡単且つ確実に把握することができ、更に、処理装置の運転停止時期を確実に判断し、正常運転圏を外れた時点で区切りの良い時点で運転を停止して処理装置のメンテナンス等を行うことができる運転状態の監視方法を提供することができる。
【0042】
また、本発明の請求項2に記載の発明によれば、多数ある運転データを統計的に少数のデータに纏め、少数の統計的データに基づいて処理装置の運転状態を簡単且つ確実に把握することができ、更に、処理装置の運転状態に突発的な変化があるか否かを確実に把握することができる運転状態の監視方法を提供することができる
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の運転状態の監視方法を適用するプラズマ処理装置の一例を示す構成図である。
【図2】本発明の一実施形態によって得られた図1に示すプラズマ処理装置に関する第1主成分得点の変動を示すグラフである。
【図3】図1に示すプラズマ処理装置に関する高周波電圧の変動を示すグラフである。
【図4】本発明の一実施形態によって得られた図1に示すプラズマ処理装置に関する第2主成分得点の変動を示すグラフである。
【図5】図4に示す第2主成分得点に関連する高周波電力の反射波の突発的変動を示すグラフである。
【図6】図4に示す第2主成分得点に関連する高周波電圧の突発的変動を示すグラフである。
【図7】図4に示す第2主成分得点に関連するCOガス供給量の突発的変動を示すグラフである。
【図8】残差得点のウエハ毎の変動状態を示すグラフである。
【図9】本発明の処理装置の評価方法の一実施形態により求めた基準処理装置及び比較処理装置の残差得点を示すグラフである。
【図10】図9に示すグラフのうち、基準処理装置から残差得点がずれた比較処理装置のパラメータの残差を示すグラフである。
【図11】従来の処理装置間の性能上の相違点を比較検討する際に用いられる処理装置間のパラメータの相違を示すグラフである。
【図12】他のパラメータを示す図11に相当するグラフである。
【図13】他のパラメータを示す図11に相当するグラフである。
【図14】他のパラメータを示す図11に相当するグラフである。
【図15】他のパラメータを示す図11に相当するグラフである。
【符号の説明】
10 プラズマ処理装置
11 処理室
12 上部電極
13 下部電極
16 高周波電源
W ウエハ(被処理体)

Claims (2)

  1. 被処理体の処理装置に付設された複数の検出器を用いて上記被処理体毎に検出される上記各検出器の検出値を運転データとして利用して上記処理装置の運転状態を監視する方法であって、予め基準となる複数の被処理体それぞれについて複数の運転データを得る工程と、上記複数の被処理体の運転データを用いて主成分分析を行う工程と、上記主成分分析により上記処理装置の運転状態の経時的変化を示す第1主成分を得る工程と、上記複数の被処理体に続く被処理体について上記第1主成分の主成分得点の分散値を用いて上記処理装置の運転の停止時期を判断する工程と、を備えたことを特徴とする運転状態の監視方法。
  2. 被処理体の処理装置に付設された複数の検出器を用いて上記被処理体毎に検出される上記各検出器の検出値を運転データとして利用して上記処理装置の運転状態を監視する方法であって、予め基準となる複数の被処理体それぞれについて複数の運転データを得る工程と、上記複数の被処理体の運転データを用いて主成分分析を行う工程と、上記主成分分析により上記処理装置の運転状態の突発的な変化を示す第2主成分を得る工程と、上記複数の被処理体に続く被処理体について上記第2主成分の主成分得点を用いて上記処理装置の運転状態に突発的な変化があるか否かを判断する工程と、を備えたことを特徴とする運転状態の監視方法。
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