近年、表示装置の薄型化および平面化が進んでおり、いわゆるフラットパネルディスプレイとして種々の開発がなされている。フラットパネルディスプレイの一つとして、例えば電界放出型カソードを用いたFEDが存在する。このFEDは、視野角を確保したまま諧調を高くすることができ、画質に優れ、生産効率が高く、応答速度も速く、非常に低温の環境下でも動作し、輝度が高く、電力効率も高い等の多くの優れた特徴を持っている。また、FEDの製造工程は、いわゆるアクティブ・マトリクス方式の液晶ディスプレイの製造工程と比較して簡単であり、製造コストは少なくともアクティブ・マトリクス方式の液晶ディスプレイの40%〜60%も低くなると期待されている。
ここで、FEDの基本構造とその動作を説明する。FEDは、電界電子放出特性を利用して電界放出型カソードから電子を放出させると共に、その電子を加速電界を印加して加速させ、蛍光体が塗布されたアノード電極に衝突させて発光を得るようにした表示素子である。
電界放出型カソードは、例えば円錐形状のカソード素子(冷陰極素子)と、このカソード素子の底面に電気的に接続されたカソード電極とで構成される。また、カソード電極に対向する側にはカソード素子を介してゲート電極が配置されている。これら対向配置されたカソード電極とゲート電極との間に電圧Vgcを印加することで、カソード素子から電子が放出される。電界放出型カソードおよびゲート電極に対向する側には、さらに加速電極であるアノード電極が配置されている。このアノード電極に高電圧HVを印加することで、カソード素子から放出された電子が加速され、アノード電極に塗布された蛍光体に衝突して発光がなされる。
一般にFEDでは、ゲート電極を行方向(Row)配線、カソード電極を列方向(Column)配線に接続して行列配線を行い、それらの各交差点にカソード素子を配置し、マトリクス状の画素を形成している。そして、列方向配線側から変調信号を入力し、行方向配線側から順次、走査信号を印加して走査を行う。行方向からゲート電極に走査信号として行配線選択電圧Vrowを印加すると共に、列方向からカソード電極に変調信号として列配線駆動電圧Vcolを印加することで、ゲート電極とカソード電極との間に電圧Vgcで表される電圧差が生じ、それにより発生する電界によって、カソード素子から電子が放出される。このとき、アノード電極に対して高電圧HVを印加しておくと、
HV>Vrow ……(1)
の条件で電子がアノード電極に引きつけられ、これによりアノード電流Iaがアノード電極からカソード電極に向かう方向に流れる。このとき、アノード電極の上に蛍光体を塗布しておくと、電子のエネルギーにより蛍光体が発光することになる。
なお、電子は電圧Vgcの大きさにより、その放出量が変化し、したがってアノード電流Iaも変化する。ここで、蛍光体の発光量すなわち発光輝度Lは、
L∝Ia ……(2)
の関係がある。したがって、電圧Vgcを変化させるようにすれば、発光輝度Lを変化させることができることになる。すなわち、電圧Vgcの大きさにより電子放出量を制御して任意の発光を得ることができる。このため、電圧Vgcを表示すべき信号に応じて変調することで輝度変調を実現できる。
図8に、カソード素子における電子放出特性(電流電圧特性(IV特性))の一例を示す。横軸は電圧Vgc、縦軸は電流Icを示す。図8に示したように、カソード素子では、ある閾値Voから微小な電流が流れ始めるものの、あるカットオフ電圧Von(例えば20V)以下では発光に寄与する電子は放出されず、Vgcとしてカットオフ電圧Vonを超える電圧が印加されたときに電子が放出され、発光に寄与する電流が発生する。
このような放出特性を有するFEDの具体的な駆動方法を説明する。行配線選択電圧Vrowとしては、例えば選択時は35V、非選択時は0Vを印加する。一方、列配線駆動電圧Vcolとしては、入力映像信号レベルに応じて、例えば0〜15Vの変調信号を印加する。
例えば、行配線選択電圧Vrowが選択状態すなわち35V印加時には、列配線駆動電圧Vcolが0Vならば、ゲート・カソード間の差電圧Vgcは35Vとなり、カソード素子から放出される電子量が増え、蛍光体における発光は高輝度となる。
また同じく、行配線選択電圧Vrowが選択状態すなわち35V印加時で、列配線駆動電圧Vcolが15Vならば、ゲート・カソード間の差電圧Vgcは20Vとなるが、放出電子は図8に示すような放出特性を有しているため、差電圧Vgcが20Vでは発光に寄与するだけの電子は放出されない。よって発光は起こらない。以上のように、行配線選択電圧Vrowを選択状態にしておいて、列配線駆動電圧Vcolを入力映像信号レベルに応じて0〜15Vで制御することで、所望の輝度表示を行うことができる。
パネルを連続表示する際には、ゲート電極に行配線選択電圧Vrowを与えることでカソード素子列を1行ずつ順次駆動(走査)するのと同期して、カソード電極群に画像1ライン分の変調信号(列配線駆動電圧Vcol)を同時に印加することにより、蛍光体への電子ビーム照射量を制御し、画像を1ラインずつ表示していく。
ここで、行配線選択電圧Vrowおよび列配線駆動電圧Vcolを生成するための従来の回路構成を簡単に説明する。行配線選択電圧Vrowおよび列配線駆動電圧Vcolは、図示しない映像信号処理部から出力される映像信号に基づいて生成される。映像信号は、例えばR(赤),G(緑),B(青)それぞれ8bitのデジタル映像信号と水平、垂直同期信号とで構成される。
このうち、R,G,Bのデジタル映像信号は図9(A)に示したように、列方向駆動電圧生成部130に入力される。列方向駆動電圧生成部130は、図示していないが主に1ライン分(=1H期間(1水平表示期間)分)のデジタル映像信号を入力するためのシフトレジスタ、その映像信号を1H期間分保持するためのラインメモリ、および1H期間分のデジタル映像信号をアナログ電圧に変換し、1H期間印加するためのD/A(デジタル/アナログ)変換器などを含んでいる。列方向駆動電圧生成部130には、R,G,Bそれぞれについて複数の列方向配線R1,G1,B1,…RN,GN,BN(以下、個々の配線を総称して列方向配線150と記す。)が接続されており、各列方向配線に1H期間分同時に列配線駆動電圧Vcolを印加するようになっている。なお、従来では一般に、図9(B)に示したように、1本の列方向配線150には、一列分のすべてのカソード電極310が接続されている。
一方、水平、垂直同期信号は、図示しない制御信号生成部に入力され、ここで列方向駆動電圧生成部130における映像取り込み開始タイミングを指示する列配線駆動用映像取り込み開始パルス、および列方向駆動電圧生成部130におけるD/A変換されたアナログ映像電圧発生タイミングを指示する列配線駆動開始パルスが作成される。
さらに制御信号生成部は、図示しない行方向選択電圧生成部における、行配線選択電圧Vrowの駆動開始タイミングを指示する行配線駆動開始パルス、および行配線選択電圧Vrowを1ラインごとに上から順次選択駆動するための基準シフトクロックとなる行配線選択用シフトクロックを作成する。
図11(A)〜(J)は、従来のFEDにおける駆動タイミングを示している。図11(B)の列配線駆動用映像入力とは、図9(A)の列方向駆動電圧生成部130にパラレル入力される例えばR,G,B各8bit、計24bitのデジタル映像信号であり、ここでは図示していないがデジタル映像信号再生用の基準ドットクロックで1画素がサンプリングされている。
列方向駆動電圧生成部130では、列配線駆動用映像入力の直前(例えばドットクロックで1クロック前)に上述の列配線駆動用映像取り込み開始パルス(図11(A))を検出し、その後、列配線駆動用映像入力を例えばドットクロックに同期して順次記憶される水平1ライン画素分のシフトレジスタに取り込むなどして保持する。
列方向駆動電圧生成部130では、次に、列配線駆動用映像入力データの1ライン分の取り込みが完了した後に検出される上述の列配線駆動開始パルス(図11(C))に同期して、例えばラインメモリにこれら1ライン分の映像データを転送し、ホールドされた1ライン分の映像データを1画素ごとに同時にD/A変換を行い、アナログ電圧である列配線駆動電圧Vcol(図11(D))として出力する。図11(D)では、例として、水平方向の第A番目の画素を駆動するための列配線駆動電圧Vcolを代表して第A列配線駆動電圧として示している。
一方、行方向選択電圧生成部では、上述の行配線駆動開始パルス(図11(F))のオン状態を例えば列配線駆動開始パルス(図11(C))の立ち上がりで検出する。そして、そこを基点として行配線選択用シフトクロック(図11(E))に同期して、第1行から最下行まで順に1ラインずつ順次択一的に行配線選択電圧Vrowを印加する(図11(G)〜(J))。なお、図では、第1行から第4行までの選択電圧を示す。
このようなタイミングで、カソード素子に行配線選択電圧Vrowと列配線駆動電圧Vcolとの差電圧Vgcが印加されることで、蛍光体への電子ビーム照射量が制御され、画像が1ラインずつ表示されていく。
マトリクス型表示装置およびその駆動方法に関する技術の従来例としては、例えば以下の文献記載のものがある。
特開2001−324955号公報
特開2002−123210号公報
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係るマトリクス型表示装置の全体構成を示している。図2は、このマトリクス型表示装置における表示パネルの概略構造を示している。図3は、その表示パネルの画素部分の概略構造を示している。本実施の形態では、表示パネルとしてFEDを用いたマトリクス型表示装置を例に説明する。
図1に示したように、このマトリクス型表示装置は、アナログ映像信号をデジタル信号に変換して出力するA/D(アナログ/デジタル)変換部10と、デジタル映像信号に対して画質調整等の各種の信号処理を施す映像信号処理部11と、表示パネルを駆動する列方向駆動電圧生成部13および行方向選択電圧生成部14と、映像信号に含まれる水平同期信号Hおよび垂直同期信号Vを入力として、列方向駆動電圧生成部13および行方向選択電圧生成部14に適切なタイミングパルスを出力する制御信号生成部12とを備えている。映像信号処理部11に入力される映像信号は、例えばR(赤),G(緑),B(青)それぞれ8bitのデジタル映像信号と水平、垂直同期信号H,Vとで構成される。なお、映像信号として初めからデジタル信号が入力される場合には、A/D変換部10を構成から省くことができる。
表示パネルは、図2および図3に示したように、アノードパネル20とカソードパネル30とを有し、それらが所定間隔をおいて対向配置された構造となっている。アノードパネル20とカソードパネル30との間の電子放出領域36は、略真空状態に保たれている。
アノードパネル20は、例えばガラス基板よりなる基板部23に、透明体からなるアノード電極21を層状に形成して構成されている。アノード電極21には、蛍光体層22が塗布されている。蛍光体層22は、R(赤),G(緑),B(青)の光の3原色に対応する3つの蛍光体層22R,22G,22Bを含んでいる。これらの蛍光体層22R,22G,22Bの発光により、カラー表示を行うことが可能となっている。各蛍光体層22R,22G,22Bの間には、ブラックマトリクス24が形成されている。なお、本実施の形態では、説明を簡略化するため、特に必要のある場合を除き、カラー表示における各色を区別することなく説明する。
カソードパネル30は、支持体17と、この上方に配置された列方向配線15および行方向配線16とを有している。列方向配線15は、列方向(図1のY方向)に延在し、行方向(図1のX方向)に複数配列されている。列方向配線15の一端は、列方向駆動電圧生成部13に電気的に接続されている。行方向配線16は、行方向に延在し、列方向に複数配列されている。行方向配線16の一端は、行方向選択電圧生成部14に電気的に接続されている。このように互いに交差するように行列状に配列された列方向配線15および行方向配線16の各交差点にマトリクス状に表示画素が形成され、列方向配線15を介して印加された列配線駆動電圧Vcolと行方向配線16を介して印加された行配線選択電圧Vrowとの電圧差に応じて、それらの交差点の表示画素が発光するようになされている。
ここで、本実施の形態において、行方向選択電圧生成部14が、本発明における「行方向電圧印加手段」の一具体例に対応し、列方向駆動電圧生成部13が、本発明における「列方向電圧印加手段」の一具体例に対応する。また本実施の形態において、行配線選択電圧Vrowが、本発明における「行方向駆動電圧」の一具体例に対応し、列配線駆動電圧Vcolが、本発明における「列方向駆動電圧」の一具体例に対応する。
カソードパネル30において、支持体17の上にはカソード電極31が形成されている。カソード電極31の上には、図3に示したように例えば円錐形状のカソード素子(冷陰極素子)32が設けられている。カソード素子32は通常、1画素につき複数個設けられる。カソード電極31とカソード素子32は、電気的に接続されている。カソード電極31とカソード素子32とで、電界放出型カソードが形成されている。
カソード電極31に対向する側にはカソード素子32および絶縁層35を介してゲート電極33が配置されている。これら対向配置されたカソード電極31とゲート電極33との間に電圧Vgcを印加することで、カソード素子32から電子eが放出されるようになっている。ゲート電極33において、カソード素子32に対応する部分には、カソード素子32から放出された電子eが通過する開口部34が設けられている。
アノード電極21は、カソード素子32から電子eが放出される方向側において、ゲート電極33に対向配置されている。アノード電極21は、加速電極の役割を有している。すなわち、アノード電極21に高電圧HVを印加することで、カソード素子32から放出された電子eがアノード電極21に向けて加速されるようになっている。
このような画素構造が、カソードパネル30において行方向配線16および列方向配線15の各交差点に形成され、マトリクス状の画素を形成している。一般に、ゲート電極33が行方向配線16に、カソード電極31が列方向配線15に電気的に接続されている。そして、行方向からゲート電極33に走査信号として行配線選択電圧Vrowが印加されると共に、列方向からカソード電極31に変調信号として列配線駆動電圧Vcolが印加されることで、ゲート電極33とカソード電極31との間に電圧Vgcで表される電圧差が生じ、それにより発生する電界によって、カソード素子32から電子eが放出されるようになっている。このとき、アノード電極21に対して高電圧HVを印加しておくことで、電子eがアノード電極21に引きつけられ、これによりアノード電流Iaがアノード電極21からカソード電極31に向かう方向に流れる。このとき、アノード電極21に到達した電子eのエネルギーにより、それに対応する位置の蛍光体層22が発光することになる。
行方向選択電圧生成部14は、各行方向配線16に順次、走査信号を印加するためのものであり、制御信号生成部12から出力されたタイミングパルスに基づいて、各行方向配線16に適切なタイミングで走査信号(行配線選択電圧Vrow)を印加するようになっている。
列方向駆動電圧生成部13は、各列方向配線15に変調信号を印加するためのものであり、図示していないが主に1ライン分(=1H期間(1水平表示期間)分)のデジタル映像信号を入力するためのシフトレジスタ、その映像信号を1H期間分保持するためのラインメモリ、および1H期間分のデジタル映像信号をアナログ電圧に変換し、1H期間印加するためのD/A(デジタル/アナログ)変換器などを含んでいる。列方向駆動電圧生成部13は、映像信号処理部11からのデジタル映像信号に応じた変調信号を、図示しないD/A変換器によってアナログ変調信号に変換し、列配線駆動電圧Vcolとして各列方向配線15に印加するようになっている。
列方向駆動電圧生成部13には、列方向配線15として、R,G,Bの各画素列それぞれについて複数の列方向配線R1,G1,B1,…RN,GN,BN(N=整数)が接続されている。
図4(A),(B)は、列方向配線15の接続構造を示している。従来では、図9(A),(B)に示したように、1本の列方向配線150に、一列分のすべてのカソード電極310が接続されている構造が一般的である。これに対し、本実施の形態では、従来の1本の列方向配線150を2本で構成し、それら2本の配線が、1列内の複数の表示画素に対して、1行置きに交互に対応するように、一列のカソード電極31に対して交互に接続した構造となっている。そして、それら2本の配線を交互に駆動するようになっている。列方向駆動電圧生成部13は、行配線選択電圧Vrowを印加するタイミングに応じて、1行分の表示画素のみが択一的に発光可能となるような列配線駆動電圧Vcolを、2本の配線に交互に印加するようになっている。列方向駆動電圧生成部13による駆動制御の具体例については後に詳述する。
すなわち、従来の構造と比較すると、図4(A)に示したように、R,G,Bそれぞれの列方向配線R1,G1,B1,…RN,GN,BNが、それぞれ2本の配線(R11,R12),(G11,G12),(B11,B12),…(RN1,RN2),(GN1,GN2),(BN1,BN2)の組で構成されている。そして、例えば配線R11,R12については、図4(B)に示したように、一列のカソード電極31−1,31−2,31−3,…に対して交互に接続されている。
以下、任意の第A列目の列方向配線15−Aが、第1および第2の配線(第A1列配線15−A1,第A2列配線15−A2)からなる2つの配線で構成され、第1の配線15−A1に第A列における奇数行目のカソード電極31−1,31−3,…が接続され、第2の配線15−A2に、偶数行目のカソード電極31−2,31−4,…が接続されているものとして説明する。
図5は、本実施の形態におけるカソードパネル30の配線構造の等価回路を示している。なお、列方向駆動電圧生成部13は、すべての列方向配線15に接続されているが、図では簡略化して1つの列方向配線15にのみ接続して示す。同様に、行方向選択電圧生成部14は、すべての行方向配線16に接続されているが、図では簡略化して示す。
この配線構造において、第A1列配線15−A1は、奇数行目の行方向配線16−1,16−3,…に対応し、第A2列配線15−A2は、偶数行目の行方向配線16−2,16−4,…に対応している。すなわち、第A1列配線15−A1と奇数行目の行方向配線16−1,16−3,…とで、第A列における奇数行目の画素が駆動され、第A2列配線15−A2と偶数行目の行方向配線16−2,16−4,…とで、第A列における偶数行目の画素が駆動されるようになっている。
この配線構造では、図10に示した従来の配線構造と同様、各列方向配線15には配線抵抗Rcが存在し、各行方向配線16には配線抵抗Rrが存在する。また、各列方向配線15および各行方向配線16の交差点には、配線容量C2が存在し、各画素位置には、カソード電極31およびゲート電極33による浮遊容量C1が存在する。なお、図5において、Rz1,Rz2は、それぞれ列方向駆動電圧生成部13および行方向選択電圧生成部14の出力インピーダンスを示している。
この配線構造では、行方向および列方向における配線抵抗Rr,Rcの大きさは、図10の従来の配線構造と比較してそれぞれ変化はない。しかしながら、容量C1,C2の大きさは、行方向および列方向ともにそれぞれ従来の配線構造とは大きく異なり、以下の特徴を有する。
すなわち、行方向配線16については、交差する列方向配線15の数が従来に比べて2倍に増えるため、それらによる配線容量C2の容量値が従来に比べて増すこととなる。一方、列方向配線15については、従来1列につき1本の配線を使用していたものを2本に分けているため、分けられた配線1本当たりにつき、カソード電極31との接続数が従来に比べて半分となる。このため、例えば第A1列配線15−A1および第A2列配線15−A2のそれぞれについて、浮遊容量C1の容量値は減少することになる。
よって、この配線構造において、行方向配線16に行配線選択電圧Vrowを印加すると、その電圧波形のなまりは従来よりも増加する。一方、各列方向配線15に列配線駆動電圧Vcolを印加すると、その電圧波形のなまりは減少することとなる。本実施の形態では、この特性を利用して、後述するように電圧波形のなまりを改善する。
次に、以上のように構成されたマトリクス型表示装置の動作を説明する。
まず、このマトリクス型表示装置の基本動作を説明する。図1において、A/D変換部10に入力されたアナログ映像信号は、デジタル映像信号に変換され、映像信号処理部11に出力される。映像信号処理部11では、デジタル映像信号に対して画質調整等の各種の信号処理を施す。映像信号には、例えばR,G,Bそれぞれ8bitのデジタル映像信号と水平、垂直同期信号H,Vとが含まれている。R,G,Bのデジタル映像信号は、列方向駆動電圧生成部13に入力される。
一方、水平、垂直同期信号H,Vは、制御信号生成部12に入力され、ここで列方向駆動電圧生成部13における映像取り込み開始タイミングを指示する列配線駆動用映像取り込み開始パルス、および列方向駆動電圧生成部13におけるD/A変換されたアナログ映像電圧発生タイミングを指示する列配線駆動開始パルスが作成される。制御信号生成部12はさらに、行方向選択電圧生成部14における、行配線選択電圧Vrowの駆動開始タイミングを指示する行配線駆動開始パルス、および行配線選択電圧Vrowを1ラインごとに上から順次選択駆動するための基準シフトクロックとなる行配線選択用シフトクロックを作成する。列方向駆動電圧生成部13および行方向選択電圧生成部14は、これら同期信号に基づいて生成された駆動タイミングパルスに基づくタイミングで、表示パネルを駆動する。
行方向選択電圧生成部14は、各行方向配線16に順次、走査信号として行配線選択電圧Vrowを印加する。列方向駆動電圧生成部13は、各列方向配線15に変調信号として列配線駆動電圧Vcolを印加する。図2および図3に示したパネル構造において、ゲート電極33が行方向配線16に、カソード電極31が列方向配線15に電気的に接続されているので、行方向からゲート電極33に行配線選択電圧Vrowが印加され、列方向からカソード電極31に列配線駆動電圧Vcolが印加される。これにより、ゲート電極33とカソード電極31との間に電圧Vgcで表される電圧差が生じ、それにより発生する電界によって、カソード素子32から電子eが放出される。放出された電子eは、アノード電極21によって加速され、アノード電極21に衝突する。その衝突した電子eのエネルギーにより、それに対応する位置の蛍光体層22が発光する。この発光により、映像表示がなされる。
次に、このマトリクス型表示装置の特徴部分である、表示パネルの駆動動作を、具体的に説明する。図6(A)〜(K)は、このマトリクス型表示装置における表示パネルの駆動タイミングを示している。図6(B)の列配線駆動用映像入力とは、図4に示したように列方向駆動電圧生成部13にパラレル入力される例えばR,G,B各8bit、計24bitのデジタル映像信号であり、ここでは図示していないがデジタル映像信号再生用の基準ドットクロックで1画素がサンプリングされている。
列方向駆動電圧生成部13では、列配線駆動用映像入力の直前(例えばドットクロックで1クロック前)に制御信号生成部12からの列配線駆動用映像取り込み開始パルス(図6(A))を検出し、その後、列配線駆動用映像入力を例えばドットクロックに同期して順次記憶される水平1ライン画素分のシフトレジスタに取り込むなどして保持する。
列方向駆動電圧生成部13では、次に、列配線駆動用映像入力データの1ライン分の取り込みが完了した後に検出される、制御信号生成部12からの列配線駆動開始パルス(図6(C))に同期して、例えばラインメモリにこれら1ライン分の映像データを転送し、ホールドされた1ライン分の映像データを1画素ごとに同時にD/A変換を行い、アナログ電圧である列配線駆動電圧Vcol(図6(D),(E))として出力する。本実施の形態では、既に図4(A),(B)および図5を参照して説明したように、第A列のカソード電極31−1,31−2,31−3,…に対して、2つの配線15−A1,15−A2が交互に接続され、それら2本の配線15−A1,15−A2に、1行分の表示画素のみが択一的に発光可能となるような列配線駆動電圧Vcolを印加して、交互に駆動するようになっている。図6(D),(E)では、それら第A1列配線15−A1,第A2列配線15−A2に印加される列配線駆動電圧Vcolを示している。
一方、行方向選択電圧生成部14では、制御信号生成部12からの行配線駆動開始パルス(図6(G))のオン状態を例えば列配線駆動開始パルス(図6(C))の立ち上がりで検出する。そして、そこを基点として行配線選択用シフトクロック(図6(F))に同期して、第1行から最下行まで順次、行配線選択電圧Vrowを印加する(図6(H)〜(K))。なお、図では、第1行から第4行までの選択電圧を示す。
このようなタイミングで、カソード素子32に行配線選択電圧Vrowと列配線駆動電圧Vcolとの差電圧Vgcが印加されることで、蛍光体への電子ビーム照射量が制御され、画像が1ラインずつ表示されていく。
ここで、図11(A)〜(J)に示した従来の駆動タイミングとの差異を説明する。まず、従来では、図9(B)に示したように例えば第A列のすべてのカソード電極310を1本の列方向配線150に接続し、その1本の列方向配線150から各カソード電極310に列配線駆動電圧Vcol(図11(D))を印加して駆動している。これに対し、本実施の形態では、図4(B)および図5に示したように第A列のカソード電極31−1,31−2,31−3,…を2つの配線15−A1,15−A2に交互に接続し、常に択一的に1行(=1ライン)分の画素のみが発光可能状態になるように、それら2本の配線15−A1,15−A2から各カソード電極31−1,31−2,31−3,…に交互に1ライン置きに、適切な列配線駆動電圧Vcol(図6(D),(E))を印加して駆動している。
また従来では、第1行から最下行まで順に、1ラインずつ順次択一的に行配線選択電圧Vrowを印加している(図11(G)〜(J))。そして、1つの行方向配線160には1H期間の間、行配線選択電圧Vrowが印加される。これに対し、本実施の形態では、各行の表示画素が実際に発光を開始する時刻よりも前の時刻から、各行方向配線16に対して、行配線選択電圧Vrowの印加を開始している。そして、行配線選択電圧Vrowを、隣接する2つの行方向配線16に同時に印加し、常に水平2ライン分同時選択している(図6(H)〜(K))。この場合、1つの行方向配線16には、1H期間のずれをもって、2H期間の間、行配線選択電圧Vrowが印加される。例えば時刻T1〜T2の期間では、第1行目と第2行目の行方向配線16−1,16−2に行配線選択電圧Vrowが同時に印加され(図6(H),(I))、次の時刻T2〜T3の期間では、第2行目と第3行目の行方向配線16−2,16−3に行配線選択電圧Vrowが同時に印加されている(図6(I),(J))。実際の第2行目の画素の発光期間は、時刻T2〜T3の間だけあるが、本実施の形態では、その直前の時刻T1〜T2の期間にも行配線選択電圧Vrowが印加される。すなわち、実際の発光開始時刻T2よりも1H期間分、前の時刻T1から電圧印加が開始され、合計2H期間の間、行配線選択電圧Vrowが印加される。この場合、本来の発光期間ではない時刻T1〜T2において、第2行目の画素が発光しないように列配線駆動電圧Vcolを適切に制御する。以下、各画素が実際にどのように発光制御されるかについて説明する。
図7(A)〜(H)は、図6(A)〜(K)に示したタイミングで駆動した場合における、実際の表示パネル上での駆動電圧波形を示している。すなわち、図7(A),(B)は、第A1列,第A2列のカソード電極31における列配線駆動電圧Vcolの波形を示し、図7(C)〜(F)は、第1行から第4行までのゲート電極33における行配線選択電圧Vrowの波形を示す。図7(A),(B)は、図6(D),(E)に示した電圧パルスに対応し、図7(C)〜(F)はそれぞれ、図6(H)〜(K)に示した電圧パルスに対応している。
図7(G)において、カソード素子32に印加されるゲート・カソード間の差電圧Vgcの波形を示す。より詳しくは、図7(G)において、波形G−1,G−3はそれぞれ、図7(A)に示した第A1列の配線駆動電圧Vcolと図7(C),(E)に示した第1行,第3行の配線選択電圧Vrowとの差電圧Vgcの波形を示す。波形G−2,G−4はそれぞれ、図7(B)に示した第A2列の配線駆動電圧Vcolと図7(D),(F)に示した第2行,第4行の配線選択電圧Vrowとの差電圧Vgcの波形を示す。図7(H)は、実際の各画素の発光状態を示している。
以下、電圧Vgcのカットオフ電圧Vonは20V、行配線選択電圧Vrowとしては選択時に35V、非選択時に0V、列配線駆動電圧Vcolとしては入力映像信号レベルに応じて0〜15Vの範囲で可変制御するものとして説明する。
例えば時刻T2〜T3の区間では、第2行目と第3行目の行方向配線16−2,16−3に同時に行配線選択電圧Vrowが印加されている(図7(D),(E))。このとき、第A2列目の列配線駆動電圧Vcolを所望の映像レベルの値(この例では輝度約50%レベルに対応する値)で出力していることにより(図7(B))、第2行、第A2列目のカソード素子32に印加される電圧Vgcは、波形なまりの少ない良好なパルス波形となり(図7(G)の波形G−2)、その部分のカソード素子32から電子放出が行われ、電子放出量に応じた発光が行われる。この場合、図7(G)の波形G−2は、従来(図12(F)の波形F−2)に比べて波形のなまりが少なく、良好なものとなっている。
これは第1に、行方向について、第2行目の行配線選択電圧Vrowが、本来の発光開始時刻T2よりも前の時刻T1から立ち上がりが開始されているため、時刻T2では十分な時間が経過しており、時刻T2では所望の電圧値35Vにまで100%立ち上がる状態となる。このため、従来よりも行方向の配線容量C2(図5)が大きく、顕著な電圧波形のなまりを有していたとしても、実際の発光期間T2〜T3では電圧Vgcが行配線選択電圧Vrowの波形なまりの影響を受けなくなる。第2に、列方向についての容量の影響に関して、図5に示した配線構造を有していることにより、その容量値が従来よりも減少しているため、列配線駆動電圧Vcolの波形なまりの影響を、従来よりも小さく抑えることができるからである。
一方、第A1列目の列配線駆動電圧Vcolとしては、黒レベルの値(ここでは15V)を出力しているため(図7(A))、第3行目の行方向配線16−3に行配線選択電圧Vrowが印加されていたとしても、第3行、第A1列目のカソード素子32に印加される電圧Vgcは、図7(A)の波形G−1と同様の波形となり、発光に寄与するような電子放出を促す電圧レベルに達しないで(ここでは20V)、いわゆるカットオフ状態となり、発光は行われない。
同様の手順で、時刻T3〜T4の区間では、第3行目と第4行目の行方向配線16−3,16−4に同時に行配線選択電圧Vrowが印加されている(図7(E),(F))。このとき、第A1列目の列配線駆動電圧Vcolを所望の映像レベルの値(この例では輝度100%の白レベルに対応する値)で出力していることにより(図7(A))、第3行、第A1列目のカソード素子32に印加される電圧Vgcは、波形なまりの少ない良好なパルス波形となり(図7(G)の波形G−3)、その部分のカソード素子32から電子放出が行われ、電子放出量に応じた発光が行われる。
一方、第A2列目の列配線駆動電圧Vcolとしては、黒レベルの値(ここでは15V)を出力しているため(図7(B))、第4行目の行方向配線16−4に行配線選択電圧Vrowが印加されていたとしても、第4行、第A2列目のカソード素子32に印加される電圧Vgcは、図7(A)の波形G−1と同様の波形となり、電子放出を促す電圧レベルに達しないで(ここでは20V)、いわゆるカットオフ状態となり、発光は行われない。
このようにして、時刻T4以降も同じように、常に択一的に1行(=1ライン)分の表示画素のみが順次発光可能状態になるように、各画素列ごとに2本の列方向配線15−A1,15−A2に印加する列方向配線駆動電圧Vcolの制御を行うことで、2ライン同時に行配線選択電圧Vrowが印加されていたとしても、2ライン分の画素が同時に発光しないようにすることができる。またこのような制御を行うことにより、波形なまりの影響の少ないゲート・カソード間電圧Vgcを形成することが可能となる。よって、所望の量の電子の放出が容易になると共に、良好な輝度の映像表示が可能となる。
また、ゲート・カソード間電圧Vgcの電圧値で低輝度から高輝度までの階調表現を行う場合において、電圧Vgcのパルスが矩形波であるものとみなして電圧レベルを調整すると、従来の駆動方法では、波形なまりによる輝度への影響が輝度の大きさによって一様にならないため、階調特性が劣化するという問題が生ずる。しかし、本実施の形態の駆動方法によれば、ゲート・カソード間電圧Vgcが良好なパルス電圧となるため、この問題も改善されることとなる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、図4(B)および図5に示したように第A列のカソード電極31−1,31−2,31−3,…を2つの配線15−A1,15−A2に交互に接続し、常に択一的に1行(=1ライン)分の画素のみが発光可能状態になるように、それら2本の配線15−A1,15−A2から各カソード電極31−1,31−2,31−3,…に適切な列配線駆動電圧Vcolの印加を行うようにしたので、第1および第2の配線15−A1,15−A2の1本当たりにつき、カソード電極31との接続数が従来に比べて半分となり、第1および第2の配線15−A1,15−A2のそれぞれについて、浮遊容量C1の容量値が減少する。これにより、列配線駆動電圧Vcolの波形なまりを従来よりも抑えることができる。
また、実際の発光開始時刻よりも1H期間前の時刻から行配線選択電圧Vrowの印加を開始するようにしたので、実際の発光開始時刻において、行配線選択電圧Vrowを所望の電圧値にまで確実に立ち上げることができる。これにより、行配線選択電圧Vrowの波形なまりをなくすことができる。これらにより、ゲート・カソード間電圧Vgcの波形なまりが改善され、表示輝度および階調表現の改善を行うことができる。
なお、本発明は、以上の実施の形態に限定されず、さらに種々の変形実施が可能である。例えば、上記実施の形態では各行方向配線16に、実際の発光開始時刻よりも1H期前から行配線選択電圧Vrowを印加する例を述べたが、行方向配線16の容量値によっては、行配線選択電圧Vrowが立ち上がるのに十分な時間が1H期間よりも相当短い時間で済む場合もある。この場合は、1H期間より短い時間、すなわち、立ち上がり時間に相当する時間(例えば0.5H期間)だけ、実際の行方向配線の選択期間より前に立ち上げておくという調整を図ってもよい。
また上記実施の形態では、ゲート・カソード間電圧Vgcの電圧レベルに応じて輝度の大きさを可変とする、電圧駆動型の駆動方法を例にして説明を行ったが、ゲート・カソード間電圧Vgcの電圧レベルを一定とし、電圧Vgcを印加する時間によって階調表現を行うようなパルス駆動型の駆動方法にした場合にも、本発明は容易に適用可能である。
また以上では表示パネルとしてFEDを用いた場合を例に説明したが、EL型の表示パネル等、他のタイプの表示パネルを用いた場合にも、本発明は適用可能である。
C1…浮遊容量、C2…配線容量、Rc,Rr…配線抵抗、Vcol…列配線駆動電圧、Vrow…行配線選択電圧、12…制御信号生成部、13…列方向駆動電圧生成部、14…行方向選択電圧生成部、15…列方向配線、16…行方向配線、20…アノードパネル、21…アノード電極、22(22R,22G,22B)…蛍光体層、30…カソードパネル、31…カソード電極、32…カソード素子、33…ゲート電極。