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JP4569170B2 - 表示素子及び複合電極の形成方法 - Google Patents

表示素子及び複合電極の形成方法 Download PDF

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Description

本発明は銀の溶解析出を利用した電気化学的な表示素子に関する。
近年、パーソナルコンピューターの動作速度の向上、ネットワークインフラの普及、データストレージの大容量化と低価格化に伴い、従来紙への印刷物で提供されたドキュメントや画像等の情報を、より簡便な電子情報として入手し、電子情報を表示、閲覧するという機会は益々増大している。
この様な電子情報の表示閲覧手段として、従来の液晶ディスプレイやCRT、また新たに有機ELディスプレイ等の発光型が主として用いられているが、特に電子情報がドキュメント情報の場合、比較的長時間にわたって閲覧手段を注視する必要があり、これらの行為は必ずしも人間に優しい手段とは言い難い。一般的に発光型のディスプレイの欠点として、フリッカーで目が疲労する、持ち運びに不便、読む姿勢が制限され、静止画面に視線を合わせる必要が生じる、長時間読むと消費電力が嵩む、等が知られている。
これらの欠点を補う表示手段として、外光を利用し、像保持の為に電力を消費しない(メモリー性)反射型ディスプレイが知られているが、下記の理由で十分な性能を有しているとは言い難い。
すなわち、反射型液晶等の偏光板を用いる方式は、反射率が約40%と低く白表示に難があり、また構成部材の作製に用いる製法の多くは簡便とは言い難い。また、ポリマー分散型液晶は高い電圧が必要であり、また有機物同士の屈折率差を利用しているため、得られる画像のコントラストが十分でない。また、ポリマーネットワーク型液晶は電圧が高いことと、メモリー性を向上させるために複雑なTFT回路が必要である等の課題を抱えている。また、電気泳動法による表示素子は、10V以上の高い電圧が必要であり、電気泳動性粒子凝集による耐久性に懸念がある。また、エレクトロクロミック表示素子は、3V以下の低電圧駆動が可能であるが、黒色またはカラー色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブルー、グリーン、レッド等)の色品質が十分でなく、メモリー性を確保するため表示セルに蒸着膜等の複雑な膜構成が必要などの懸念点がある。
これら上述の各方式の欠点を解消する表示方式として金属または金属塩の溶解析出を利用するエレクトロデポジション(以下、EDと略す。)方式が知られている。ED方式は、3V以下の低電圧駆動が可能で、簡便なセル構成、黒と白のコントラストや黒品質に優れる等の利点があり、様々な方法が開示されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
本発明者は、上記各特許文献に開示されている技術を詳細に検討した結果、従来技術では、ED方式特有の電解質液と電極材が直接接触して酸化還元反応を行うことに由来する電極の耐久性、特に表示素子の表示部が大面積になるにつれて、その劣化の度合いが顕著になること、また、プラスチック基板を用いた場合に透明電極の折り曲げ耐性にも課題があることが判明した。加えて、電極に対する耐久性の課題及び本発明で規定する構成に関しては、一切の言及や示唆がなされていない。
米国特許第4,240,716号明細書 特許第3428603号公報 特開2003−241227号公報
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、簡便な部材構成で、低電圧駆動が可能で、表示コントラストが高い表示素子であって、かつ、電極の耐久性、折り曲げ耐性に優れた表示素子を提供することにある。
上記課題は、以下の構成により解決することができた。
(請求項1)
対向電極間に、銀、または銀を化学構造中に含む化合物を含有する電解質層を有し、銀の溶解析出を生じさせるように該対向電極の駆動操作を行う表示素子であって、該対向電極の少なくとも1方の電極が、透明電極に金属補助電極が付帯した複合電極であり、該金属補助電極が、銀または銅を含むことを特徴とする表示素子。
(請求項2)
透明電極が、イリジウムまたは錫を少なくとも1種含むことを特徴とする請求項1に記載の表示素子。
(請求項3)
透明電極が、導電性高分子を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の表示素子。
(請求項
表示素子の表示部面積が50cm2以上であることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の表示素子。
(請求項
電解質層にメルカプト基を含む化合物を含有し、前記電解質層中のメルカプト基の硫黄原子の総モル数を[−SH]、前記電解質層中の銀の総モル数を[Ag]とした時に、下記式(1)を満たすことを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の表示素子。
式(1)
2≦[−SH]/[Ag]≦10
(請求項
請求項1〜の何れか1項に記載の表示素子の複合電極の形成方法において、透明電極及び金属補助電極の少なくとも1方が、印刷法により形成されることを特徴とする複合電極の形成方法。
(請求項
請求項1〜の何れか1項に記載の表示素子の複合電極の形成方法において、透明電極及び金属補助電極の少なくとも1方が、帯電した液体を吐出する内部直径が30μm以下のノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記ノズル内に溶液を供給する供給手段と、前記ノズル内の溶液に吐出電圧を印加する吐出電圧印加手段とを備えた液体吐出装置を用いて形成されることを特徴とする複合電極の形成方法。
本発明によれば、簡便な部材構成で、低電圧での駆動が可能で、表示コントラストが高い表示素子であり、かつ、電極の耐久性、折り曲げ耐性に優れた表示素子を提供することができた。
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
本発明者は、対向電極間に、銀、または銀を化学構造中に含む化合物を含有する電解質層を有し、銀の溶解析出を生じさせるように該対向電極の駆動操作を行う表示素子であって、該対向電極の少なくとも1方の電極に、透明電極に金属補助電極が付帯した複合電極を用いることにより、簡便な部材構成で、低電圧での駆動が可能である、表示コントラストが高く、かつ、電極の耐久性、折り曲げ耐性に優れることを見いだし本発明に至ったものである。
ED法による表示素子の従来例では、透明電極としてスパッタリング法等の物理的方法で形成したITO電極を用いている例が多い。該ITO電極は、比較的低抵抗で光透過率が高い利点を有するが、ED法表示素子のような電解質材料と電極材料が直接接する場合、結晶粒界や多孔質な結晶構造等の構造欠陥から液体電解質が染み込み基板にダメージを与えて耐久性を低下させ、特に、表示素子の基板に可撓性のある樹脂基板を用いた場合、表示素子の折り曲げに応じて、この低下幅が増幅される傾向にあることが判明した。
ITO電極の構造欠陥を埋めるためにポリマー等の樹脂成分を共存させる方法も知られているが、この方法を用いると確かに液体電解質の基板への染み込みは防止できるが、電極の抵抗値が高くなり、より高電圧又はより高電気量がED法素子駆動のために必要となる。本発明の構成の金属補助電極を用いることにより電極全体の導電性が増し、低電圧化及び低電気量化が可能になる。また、複合電極の透明電極部分にそれ自体は抵抗を上げる樹脂等の添加も可能になり、液体電解質の基板への染み込み防止、更には物理的強度の可撓性向上効果が得られ、ED法特有の課題を解決できることを見いだした。
以下、本発明の表示素子の詳細について説明する。
本発明の表示素子は、対向電極間に、銀、または銀を化学構造中に含む化合物を含有する電解質層を有し、銀の溶解析出を生じさせるように対向電極の駆動操作を行う表示素子である。
〔銀または銀を化学構造中に含む化合物〕
本発明に係る銀または銀を化学構造中に含む化合物とは、例えば、酸化銀、硫化銀、金属銀、銀コロイド粒子、ハロゲン化銀、銀錯体化合物、銀イオン等の化合物の総称であり、固体状態や液体への可溶化状態や気体状態等の相の状態種、中性、アニオン性、カチオン性等の荷電状態種は、特に問わない。
〔セルの基本構成〕
図1は、本発明の表示素子の基本的な構成を示す概略断面図である。
図1において、本発明の表示装置は、一対の対向電極1の間に電解質層2を保持し、電源3から対向電極1に電圧または電流を印加することにより、電解質層2中に含まれる銀の溶解反応、または析出反応を生じさせ、銀を含む化合物の光の透過、吸収の光学的性質の違いを利用して表示状態を変更する表示素子である。
(複合電極)
本発明の請求項1の表示素子は、対向電極間に、銀、または銀を化学構造中に含む化合物を含有する電解質層を有し、銀の溶解析出を生じさせるように該対向電極の駆動操作を行う表示素子であって、該対向電極の少なくとも1方の電極が、透明電極に金属補助電極が付帯した複合電極であることを特徴とする。
本発明の透明電極は、380nm以上780nmの波長域で光透過率が80%以上で、抵抗率が1×10-3Ω・cm以下の電極のことを言う。
本発明の複合電極とは、電気的に接触した透明電極部と金属補助電極部から構成される。透明電極と金属補助電極とが接触した複合電極の形態例としては、例えば、図2、3に示す形態が挙げられる。金属電極の表示素子観察側から見た面積被覆率は30%以下が開口率低下による白表示反射率、黒表示反射率の観点から好ましく、さらに好ましくは10%以下である。
以下、透明電極部と金属補助電極部から構成される複合電極の構成例について、図2を用いて説明する。
図2(a)は、本発明に用いられる複合電極の1例を示す斜示図であり、同図(b)は同図(a)のA−A′断面図である。図2(a)、(b)に示す様に、基板10の上に複数本の透明電極11が形成されており、透明電極11の長手方向に沿った一方の端部に透明電極11の一部を覆うようにして金属補助電極12が形成されている。
図2(c)は、本発明に用いられる複合電極の1例を示す斜示図であり、同図(d)は同図(c)のB−B′断面図である。図2(c)、(d)に示す様に、基板20の上に複数本の金属補助電極22が形成されており、2本の金属補助電極22を覆うようにして長手方向に透明電極21が形成されている。図2(e)、(f)、(g)は、断面図により本発明に用いられる複合電極の他のパターン例を示す。
図3は、本発明に用いられる複合電極の平面図である。図3(a)は、透明電極61のほぼ中央に金属補助電極62が1本ずつ配置されている。図3(b)は、透明電極71の長手方向の両端に金属補助電極72が1本ずつ計2本配置されている。図3(c)では、透明電極81の両端に金属補助電極が形成されており、更にそれらの金属補助電極は梯子状に接続されていることを示す。図3(b)や(c)の構造とすることにより、一部の電極が損傷により切断されたとしても、他方の電極或いは他の接続回路を利用することにより、断線することなく低抵抗化を達成できる。
(透明電極部)
本発明の透明電極としては、透明で電気を通じるものであれば、特に制限はなく、例えばIndium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、酸化錫(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、白金、金、銀、ロジウム、銅、クロム、炭素、アルミニウム、シリコン、アモルファスシリコン、マグネシウム、BSO(Bismuth Silicon Oxide)等やこれらの混合物を用いることができる。
また、ポリチオフェン系、ポリピロール系、ポリアニリン系、ポリアセチレン系、ポリパラフェニレン系、ポリセレノフェニレン系等高分子化合物、またはその混合物の導電性高分子を透明電極として用いることができる。
350℃〜800℃で焼成済みのITO微粉末を溶媒や高分子を含む溶液に分散した液を基体に塗布して溶媒を揮発または高分子を硬化させることにより透明電極を作製することも可能である。この場合、塗布後の固化温度は40℃以上、200℃以下が好ましい。ITOの微粉末は、例えば、塩化錫水溶液と塩化インジウム水溶液を混合し、アンモニア等を添加してPHを9に保ちながら共沈反応を起こさせ、得られた水酸化物の沈殿を分別、洗浄して、500℃で2時間焼成して作製することが可能である。塩化錫と塩化インジウムの混合比率を変更することにより任意の混合割合の微粉末を形成することができる。微粉末の形状は、粒状、針状、板状、フレーク状のいづれであってもよく、針状と粒状等を混合して用いてもよい。
また、キシロール中に有機インジウムと有機錫を97:3の質量比で約10%配合された塗布液を基体上に塗布し、100℃以上150℃以下で、溶媒の揮発及び焼成を行って固化する方法も好ましく用いることができる。
以上の塗布液には、電極の機械強度向上を目的として、ブロックドイソシアネートを含むポリウレタン樹脂を形成しうる化合物種やエポキシ樹脂を形成しうる化合物種等の高分子化合物を混合させてもよい。
透明電極の表面抵抗値としては、500Ω/□以下が好ましく、特に300Ω/□以下が好ましい。また、膜厚は、0.2μm以上、50μm以下が好ましい。
(金属補助電極)
本発明の金属補助電極とは、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、ビスマス、及びそれらの合金等の金属材料を用いた電極のことを言う。金属電極部の表面抵抗値としては、10Ω/□以下が好ましく、1Ω/□以下がより好ましい。また、膜厚は0.2μm以上、50μm以下が好ましい。
(電極製法)
透明電極、金属補助電極を形成するには、公知の方法を用いることができる。例えば、基板上にスパッタリング法等でマスク蒸着するか、全面形成した後に、フォトリソグラフィー法でパターニングしてもよい。
また、電解メッキや無電解メッキ、印刷法や、インクジェット法によっても電極形成が可能である。
インクジェット方式を用いて基板上にモノマー重合能を有する触媒層を含む電極パターンを形成した後に、該触媒により重合されて重合後に導電性高分子層になりうるモノマー成分を付与して、モノマー成分を重合し、さらに、該導電性高分子層の上に銀等の金属メッキを行うことにより金属電極パターンを形成することもでき、フォトレジストやマスクパターンを使用することがないので、工程を大幅に簡略化できる。
電極材料を塗布にて形成する場合は、ディッピング法、スピナー法、スプレー法、ロールコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法等の公知の方法を用いることができる。
インクジェット方式の中でも、下記の静電インクジェットは高粘度の液体を高精度に連続的に印字することが可能であり、本発明の透明電極や金属補助電極の形成に好ましく用いられる。インクの粘度は、好ましくは30mPa・s以上であり、更に好ましくは100mPa・s以上である。
(静電インクジェット)
本発明の表示素子においては、複合電極の透明電極及び金属補助電極の少なくとも1方が、帯電した液体を吐出する内部直径が30μm以下のノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記ノズル内に溶液を供給する供給手段と、前記ノズル内の溶液に吐出電圧を印加する吐出電圧印加手段とを備えた液体吐出装置を用いて形成されることが好ましい。
さらに前記ノズル内の溶液が当該ノズル先端部から凸状に盛り上がった状態を形成する凸状メニスカス形成手段を設けた吐出装置を用いて形成されることが好ましい。
また、前記凸状メニスカス形成手段を駆動する駆動電圧の印加及び吐出電圧印加手段による吐出電圧の印加を制御する動作制御手段を備え、この動作制御手段は、前記吐出電圧印加手段による吐出電圧の印加を行わせつつ液滴の吐出に際して前記凸状メニスカス形成手段の駆動電圧の印加を行わせる第一の吐出制御部を有する液体吐出装置を用いることも好ましい。
また、前記凸状メニスカス形成手段の駆動及び吐出電圧印加手段による電圧印加を制御する動作制御手段を備え、この動作制御手段は、前記凸状メニスカス形成手段による溶液の盛り上げ動作と前記吐出電圧の印加とを同期させて行う第二の吐出制御部を有することを特徴とする液体吐出装置を用いること、前記動作制御手段は、前記溶液の盛り上げ動作及び吐出電圧の印加の後に前記ノズル先端部の液面を内側に引き込ませる動作制御を行う液面安定化制御部を有する液体吐出装置を用いることも好ましい形態である。
この様な静電インクジェットを用いて電極パターンを作製することにより、オンデマンド性に優れ、廃棄材料が少なく、寸法精度に優れた電極を得ることができ有利である。
(メルカプト化合物の硫黄原子と銀原子との比)
本発明の表示素子においては、電解質層にメルカプト化合物を含有し、前記電解質層中のメルカプト基の硫黄原子の総モル数を[−SH]、前記電解質層中の銀の総モル数を[Ag]とした時、2≦[−SH]/[Ag]≦10を満たすことを特徴とする。[−SH]/[Ag]が2未満である場合には、銀のブロックが十分ではなく、高温高湿時、又は、共存物に塩基性の化合物が存在した場合に、銀の黒化が進み、白色時の反射率の低下と、白色度の汚染を招く。また、[−SH]/[Ag]が10を超える場合には、メルカプト化合物による黒化銀の溶解速度が速くなり、メモリー性の劣化に繋がる。本発明において、更に好ましい範囲は、2.5≦[−SH]/[Ag]≦5である。なお、本発明でいう電解質層中のメルカプト化合物のメルカプト基の硫黄原子とは、メルカプト基の他に、S-あるいは硫化銀の形態で存在する硫黄原子も含む。
また、メルカプト化合物は、分子量が、50≦分子量≦149の条件を満たす化合物が好ましい。メルカプト化合物の分子量が50未満である場合には、臭気があり作業性に劣り、また、分子量が150を超えると、質量濃度が大きくなり、電気伝導性に必要な化合物の溶解度を結果的に下げることになるので、駆動速度が遅くなり不利である。
また、メルカプト化合物は複数化合物種を併用して用いることが好ましい。化合物種を複数種含有させることにより、銀の溶解モル濃度の向上と、電解質液低温時の析出防止効果が得られる。
(電解質溶媒)
本発明の表示素子においては、電解質層が、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチルラクトン、テトラメチル尿素、スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−(N−メチル)−2−ピロリジノン、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,Nジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ブチロニトリル、プロピオニトリル、アセトニトリル、アセチルアセトン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ブタノール、1−ブタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、エタノール、メタノール、無水酢酸、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ジメトキシエタン、ジエトキシフラン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル及び水から選ばれる少なくとも1種の溶媒を含むことが好ましい。
上述の溶媒の中でも、凝固点が−20℃以下で、かつ沸点が120℃以上の溶媒を少なくとも1種含むことが好ましい。凝固点が−20℃以下で、かつ沸点が120℃以上の溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチルラクトン、2−(N−メチル)−2−ピロリジノン、N−メチルプロピオンアミド、N,Nジメチルホルムアミド、アセチルアセトンが挙げられる。
本発明で用いることのできるその他の溶媒として、J.A.Riddick,W.B.Bunger,T.K.Sakano,“Organic Solvents”,4th ed.,John Wiley & Sons(1986)、Y.Marcus,“Ion Solvation”,John Wiley & Sons(1985)、C.Reichardt,“Solvents and Solvent Effects in Chemistry”,2nd ed.,VCH(1988)、G.J.Janz,R.P.T.Tomkins,“Nonaqueous Electorlytes Handbook”,Vol.1,Academic Press(1972)に記載の化合物を挙げることができる。
(電解質材料)
本発明の表示素子において、電解質が液体である場合には、以下の化合物を電解質中に含むことができる。カリウム化合物としてKCl、KI、KBr等、リチウム化合物としてLiBF4、LiClO4、LiPF6、LiCF3SO3等、テトラアルキルアンモニウム化合物として過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、ホウフッ化テトラエチルアンモニウム、ホウフッ化テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムハライド等が挙げられる。また、特開2003−187881号公報の段落番号〔0062〕〜〔0081〕に記載の溶融塩電解質組成物も好ましく用いることができる。さらに、I-/I3 -、Br-/Br3 -、キノン/ハイドロキノン等の酸化還元対になる化合物を用いることができる。
また、支持電解質が固体である場合には、電子伝導性やイオン伝導性を示す以下の化合物を電解質中に含むことができる。
パーフルオロスルフォン酸を含むフッ化ビニル系高分子、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、トリフェニルアミン類、ポリビニルカルバゾール類、ポリメチルフェニルシラン類、Cu2S、Ag2S、Cu2Se、AgCrSe2等のカルコゲニド、CaF2、PbF2、SrF2、LaF3、TlSn25、CeF3等の含F化合物、Li2SO4、Li4SiO4、Li3PO4等のLi塩、ZrO2、CaO、Cd23、HfO2、Y2O3、Nb25、WO3、Bi23、AgBr、AgI、CuCl、CuBr、CuBr、CuI、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl4、LiAlF4、AgSBr、C55NHAg56、Rb4Cu167Cl13、Rb3Cu7Cl10、LiN、Li5NI2、Li6NBr3等の化合物が挙げられる。
また、支持電解質としてゲル状電解質を用いることもできる。電解質が非水系の場合、特開平11−185836号公報の段落番号〔0057〕〜〔0059〕に記載のオイルゲル化剤を用いことができる。
(電解質添加の白色粒子)
本発明の表示素子においては、電解質層が白色粒子を含むことが好ましい。
本発明に係る白色粒子としては、例えば、二酸化チタン(アナターゼ型あるいはルチル型)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよび水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、アルカリ土類金属塩、タルク、カオリン、ゼオライト、酸性白土、ガラス、有機化合物としてポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、ポリアミド樹脂などが単体または複合混合で、または粒子中に屈折率を変化させるボイドを有する状態で使用されてもよい。
本発明では、上記白色粒子の中でも、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛が好ましく用いられる。また、無機酸化物(Al23、AlO(OH)、SiO2等)で表面処理した二酸化チタン、これらの表面処理に加えて、トリメチロールエタン、トリエタノールアミン酢酸塩、トリメチルシクロシラン等の有機物処理を施した二酸化チタンを用いることができる。
これらの白色粒子のうち、高温時の着色防止、屈折率に起因する素子の反射率の観点から、酸化チタンまたは酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
(電解質添加の増粘剤)
本発明の表示素子においては、電解質層に増粘剤を用いることができ、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アルキレングリコール)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類、疎水性透明バインダーとして、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタン等が挙げられる。
これらの増粘剤は2種以上を併用して用いてもよい。また、特開昭64−13546号公報の71〜75頁に記載の化合物を挙げることができる。これらの中で好ましく用いられる化合物は、各種添加剤との相溶性と白色粒子の分散安定性向上の観点から、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ヒドロキシプロピルセルロース類、ポリアルキレングリコール類である。
(電解質層のその他の添加剤)
本発明の表示素子においては、電解質層を含む対向電極間に設けることのできる構成層には、保護層、フィルター層、ハレーション防止層、クロスオーバー光カット層、バッキング層等の補助層を挙げることができ、これらの補助層中には、各種の化学増感剤、貴金属増感剤、感光色素、強色増感剤、カプラー、高沸点溶剤、カブリ防止剤、安定剤、現像抑制剤、漂白促進剤、定着促進剤、混色防止剤、ホルマリンスカベンジャー、色調剤、硬膜剤、界面活性剤、増粘剤、可塑剤、スベリ剤、紫外線吸収剤、イラジエーション防止染料、フィルター光吸収染料、防ばい剤、ポリマーラテックス、重金属、帯電防止剤、マット剤等を、必要に応じて含有させることができる。
上述したこれらの添加剤は、より詳しくは、リサーチディスクロージャー(以下、RDと略す)第176巻Item/17643(1978年12月)、同184巻Item/18431(1979年8月)、同187巻Item/18716(1979年11月)及び同308巻Item/308119(1989年12月)に記載されている。
これら三つのリサーチ・ディスクロージャーに示されている化合物種類と記載箇所を以下に掲載した。
添加剤 RD17643 RD18716 RD308119
頁 分類 頁 分類 頁 分類
化学増感剤 23 III 648右上 96 III
増感色素 23 IV 648〜649 996〜8 IV
減感色素 23 IV 998 IV
染料 25〜26 VIII 649〜650 1003 VIII
現像促進剤 29 XXI 648右上
カブリ抑制剤・安定剤
24 IV 649右上 1006〜7 VI
増白剤 24 V 998 V
硬膜剤 26 X 651左 1004〜5 X
界面活性剤 26〜7 XI 650右 1005〜6 XI
帯電防止剤 27 XII 650右 1006〜7 XIII
可塑剤 27 XII 650右 1006 XII
スベリ剤 27 XII
マット剤 28 XVI 650右 1008〜9 XVI
バインダー 26 XXII 1003〜4 IX
支持体 28 XVII 1009 XVII
(層構成)
本発明の表示素子の対向電極間の構成層について、更に説明する。
本発明の表示素子に係る構成層として、正孔輸送材料を含む構成層を設けることができる。正孔輸送材料として、例えば、芳香族アミン類、トリフェニレン誘導体類、オリゴチオフェン化合物、ポリピロール類、ポリアセチレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリトルイジン誘導体、CuI、CuSCN、CuInSe2、Cu(In,Ga)Se、CuGaSe2、Cu2O、CuS、CuGaS2、CuInS2、CuAlSe2、GaP、NiO、CoO、FeO、Bi23、MoO2、Cr23等を挙げることができる。
(基板)
本発明で用いることのできる基板としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリカーボネート類、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンジナフタレンジカルボキシラート、ポリエチレンナフタレート類、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアセタール類、ポリスチレン等の合成プラスチックフィルムも好ましく使用できる。また、シンジオタクチック構造ポリスチレン類も好ましい。これらは、例えば、特開昭62−117708号、特開平1−46912、同1−178505号の各公報に記載されている方法により得ることができる。更に、ステンレス等の金属製基盤や、バライタ紙、及びレジンコート紙等の紙支持体ならびに上記プラスチックフィルムに反射層を設けた支持体、特開昭62−253195号(29〜31頁)に支持体として記載されたものが挙げられる。RDNo.17643の28頁、同No.18716の647頁右欄から648頁左欄及び同No.307105の879頁に記載されたものも好ましく使用できる。これらの支持体には、米国特許第4,141,735号のようにTg以下の熱処理を施すことで、巻き癖をつきにくくしたものを用いることができる。また、これらの支持体表面を支持体と他の構成層との接着の向上を目的に表面処理を行っても良い。本発明では、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理を表面処理として用いることができる。更に公知技術第5号(1991年3月22日アズテック有限会社発行)の44〜149頁に記載の支持体を用いることもできる。更にRDNo.308119の1009頁やプロダクト・ライセシング・インデックス、第92巻P108の「Supports」の項に記載されているものが挙げられる。その他に、ガラス基板や、ガラスを練りこんだエポキシ樹脂を用いることができる。
(表示素子のその他の構成要素)
本発明の表示素子には、必要に応じて、シール剤、柱状構造物、スペーサー粒子を用いることができる。
シール剤は外に漏れないように封入するためのものであり封止剤とも呼ばれ、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エンーチオール系樹脂、シリコーン系樹脂、変性ポリマー樹脂等の、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型等の硬化タイプを用いることができる。
柱状構造物は、基板間の強い自己保持性(強度)を付与し、例えば、格子配列等の所定のパターンに一定の間隔で配列された、円柱状体、四角柱状体、楕円柱状体、台形柱状体等の柱状構造物を挙げることができる。また、所定間隔で配置されたストライプ状のものでもよい。この柱状構造物はランダムな配列ではなく、等間隔な配列、間隔が徐々に変化する配列、所定の配置パターンが一定の周期で繰り返される配列等、基板の間隔を適切に保持でき、且つ、画像表示を妨げないように考慮された配列であることが好ましい。柱状構造物は表示素子の表示領域に占める面積の割合が1〜40%であれば、表示素子として実用上十分な強度が得られる。
一対の基板間には、該基板間のギャップを均一に保持するためのスペーサーが設けられていてもよい。このスペーサーとしては、樹脂製または無機酸化物製の球体を例示できる。また、表面に熱可塑性の樹脂がコーティングしてある固着スペーサーも好適に用いられる。基板間のギャップを均一に保持するために柱状構造物のみを設けてもよいが、スペーサー及び柱状構造物をいずれも設けてもよいし、柱状構造物に代えて、スペーサーのみをスペース保持部材として使用してもよい。スペーサーの直径は柱状構造物を形成する場合はその高さ以下、好ましくは当該高さに等しい。柱状構造物を形成しない場合はスペーサーの直径がセルギャップの厚みに相当する。
(スクリーン印刷)
本発明においては、シール剤、柱状構造物、電極パターン等をスクリーン印刷法で形成することもできる。スクリーン印刷法は、所定のパターンが形成されたスクリーンを基板の電極面上に被せ、スクリーン上に印刷材料(柱状構造物形成のための組成物、例えば、光硬化性樹脂など)を載せる。そして、スキージを所定の圧力、角度、速度で移動させる。これによって、印刷材料がスクリーンのパターンを介して該基板上に転写される。次に、転写された材料を加熱硬化、乾燥させる。スクリーン印刷法で柱状構造物を形成する場合、樹脂材料は光硬化性樹脂に限られず、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂も使用できる。熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリビニールエーテル樹脂、ポリビニールケトン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニールピロリドン樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素化ポリエーテル樹脂等が挙げられる。樹脂材料は樹脂を適当な溶剤に溶解するなどしてペースト状にして用いることが望ましい。
以上のようにして柱状構造物等を基板上に形成した後は、所望によりスペーサーを少なくとも一方の基板上に付与し、一対の基板を電極形成面を対向させて重ね合わせ、空セルを形成する。重ね合わせた一対の基板を両側から加圧しながら加熱することにより、貼り合わせて、表示セルが得られる。表示素子とするには、基板間に電解質組成物を真空注入法等によって注入すればよい。あるいは、基板を貼り合わせる際に、一方の基板に電解質組成物を滴下しておき、基板の貼り合わせと同時に液晶組成物を封入するようにしてもよい。
(表示素子駆動法)
本発明の表示素子においては、上記説明した対向電極の駆動操作が単純マトリックス駆動であることが好ましい。
本発明でいう単純マトリックス駆動とは、複数の正極を含む正極ラインと複数の負極を含む負極ラインとが対向する形で互いのラインが垂直方向に交差した回路に、順次電流を印加する駆動方法のことを言う。単純マトリックス駆動を用いることにより、回路構成や駆動ICを簡略化でき安価に製造できるメリットがある。
本発明の表示素子は、アクティブマトリックス駆動を用いてもよい。アクティブマトリックス駆動は、走査線、データライン、電流供給ラインが碁盤目状に形成され、各碁盤目に設けられたTFT回路により駆動させる方式である。画素毎にスイッチングが行えるので、諧調やメモリー機能などのメリットがある。
(本発明の表示素子の適用分野)
本発明の表示素子は、IDカード関連分野、公共関連分野、交通関連分野、放送関連分野、決済関連分野、流通物流関連分野等の用いることができる。具体的には、ドア用のキー、学生証、社員証、各種会員カード、コンビニストアー用カード、デパート用カード、自動販売機用カード、ガソリンステーション用カード、地下鉄や鉄道用のカード、バスカード、キャッシュカード、クレジットカード、ハイウェーカード、運転免許証、病院の診察カード、健康保険証、住民基本台帳、パスポート等が挙げられる。又、電子書籍端末、ディスプレイ、ドキュメントビュアーとしても用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1
表示素子1の作製〈比較例〉
(電解質液1の調製)
ジメチルスルホキシドの2.5g中に、ヨウ化ナトリウムを90mg、ヨウ化銀を75mgを加えて完全に溶解させた後に、酸化チタン0.5gを加えて超音波分散機にて酸化チタンを分散させた。この溶液にポリビニルアルコール(ケン化度約87〜89%、重合度4500)を150mg加えて120℃に加熱しながら1時間攪拌し、電解質溶液1を得た。
(透明電極1の作製)
厚さ1.5mmで2cm×4cmのガラス基板上に、公知のスパッタリング法でITO膜を全面に形成した後、フォトリソグラフ法を用いて、電極間隔30μm、電極幅180μmの電極パターンをガラス基板の長手方向に有する透明電極1を得た。
(金属電極の作製)
厚さ1.5mmで2cm×4cmのガラス基板上に、公知のスパッタリング法でCu膜を全面に形成した後、フォトリソグラフ法を用いて電極間隔30μm、電極幅180μmのパターンをガラス基板の長手方向に形成し、電解メッキによりCu極上に銀を10μm堆積させて、銀電極(電極2)を得た。
(表示素子の作製)
上記調製した電解質溶液1に、平均粒子径が20μmのポリアクリル製の球形ビーズを体積分率として4体積%になるように加えて攪拌した溶液を、上記電極2の上に塗布し、その上から電極1を直角方向に組合せて挟み込み、9.8kPaの圧力で押圧し、周辺部を封止して表示素子1を作製した。重ね合わされた2cm×2cmの部分が表示部であり、残りの部分がリード部として用いられる。
表示素子2の作製〈比較例〉
透明電極1を以下に様に変更して透明電極2を用いた以外は同様にして、表示素子2を作製した。
(透明電極2の作製)
InCl3を35質量%含む水溶液と、SnCl4を80質量%含む水溶液とを混合し、27℃に溶液温度を保ちながら6.3%のアンモニア水を徐々に加えて、水溶液のpHが9になるように調整した。この溶液を27℃で50分間攪拌しIn、Snの共沈水酸化物を得た。この共沈物を濾別し、イオン交換水で洗浄した後、500度で2.5時間焼成することにより針状ITO粒子の凝集体を得た。この粒子を機械的に粉砕することにより、ITO微粉末を得た。得られたITO微粉末2質量部、ブロックイソシアネート化合物(ヘキサメチレンジイソシアネートのブウレット3量体のメチルエチルケトオキシムブロック体)1.8質量部、酢酸エチルカルビトール12質量部、テレフタル酸/イソフタル酸/セバシン酸/エチレングリコール/ネオペンチルグリコール=0.3/0.1/0.15/0.25/0.2(モル比)の組成のポリエステル樹脂4質量部を混合して透明電極溶液1を作製した。この溶液をスクリーン印刷法によりガラス基板上に60μmの膜厚で付与し、IR光により150℃2分加熱し、電極間隔30μm、電極幅180μmの電極パターンをガラス基板の長手方向に有する透明電極2を作製した。
表示素子3の作製〈本発明〉
表示素子1の透明電極1を下記の複合電極1に変更した以外は同様にして表示素子3を作製した。
(複合電極1の作製)
厚さ1.5mmで2cm×4cmのガラス基板上に、公知のNiペーストインクを用いて印刷法により210μmピッチで、幅20μmのNi電極をガラス基板の長手方向に形成した。次に、スパッタリング法でITO膜を全面に形成した後、フォトリソグラフ法を用いて、電極間隔30μm、電極幅180μmの電極パターンを、Ni電極の中心とITO電極の中心とが一致するように形成し、複合電極1を得た。図3(a)参照。
表示素子4の作製〈本発明〉
表示素子1の透明電極1を下記の複合電極2に変更した以外は同様にして表示素子4を作製した。
(複合電極2の作製)
厚さ1.5mmで2cm×4cmのガラス基板上に、公知のCuペーストインクを用いて印刷法により210μmピッチで、幅20μmのCu電極をガラス基板の長手方向に形成した。次に、スパッタリング法でZnAlO膜を全面に形成した後、フォトリソグラフ法を用いて、電極間隔30μm、電極幅180μmの電極パターンを、Cu電極の中心とZnAlO電極の中心とが一致するように形成し、複合電極2を得た。図3(a)参照。
表示素子5の作製〈本発明〉
表示素子1の透明電極1を下記の複合電極3に変更した以外は同様にして表示素子5を作製した。
(複合電極3の作製)
厚さ1.5mmで2cm×4cmのガラス基板上に、公知のAgペーストインクを用いて印刷法により210μm間隔、幅20μmのAg電極を形成した。次に、スパッタリング法でITO膜を全面に形成した後、フォトリソグラフ法を用いて、電極間隔30μm、電極幅180μmピッチの電極パターンを、Ag電極の中心とITO電極の中心とが一致するように形成し、複合電極3を得た。図3(a)参照。
表示素子6の作製〈本発明〉
表示素子1の透明電極1を下記の複合電極4に変更した以外は同様にして表示素子6を作製した。
(複合電極4の作製)
厚さ1.5mmで2cm×4cmのガラス基板上に、公知のNiペーストインクを用いて印刷法により210μmピッチで、幅20μmのNi電極をガラス基板の長手方向に形成した。次に、電極間隔30μm、電極幅180μmの電極パターンを、Ni極の中心と該極の中心とが一致するように、導電性高分子ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を用いてスクリーン印刷法で形成し、複合電極4を得た。図3(a)参照。
表示素子7の作製〈本発明〉
表示素子1の透明電極1を下記の複合電極5に変更した以外は同様にして表示素子7を作製した。
(複合電極5の作製)
厚さ1.5mmで2cm×4cmのガラス基板上に、公知のAgペーストインクを用いて印刷法により210μmピッチで、幅20μmのAg電極をガラス基板の長手方向に形成した。次に、電極間隔30μm、電極幅180μmの電極パターンを、Ag極の中心と該極の中心とが一致するように、導電性高分子ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を用いてスクリーン印刷法で形成し、複合電極5を得た。図3(a)参照。
表示素子8の作製〈本発明〉
表示素子1の透明電極1を下記の複合電極6に変更した以外は同様にして表示素子8を作製した。
(複合電極6の作製)
厚さ1.5mmで2cm×4cmのガラス基板上に、公知のAgペーストインクを用いて印刷法により210μmピッチ、幅20μmのAg電極をガラス基板の長手方向に形成した。次に、電極間隔30μm、電極幅180μmの電極パターンを、Ag極の中心と該極の中心とが一致するように、透明電極2の透明電極溶液1を用いて印刷法で形成し、複合電極6を得た。図3(a)参照。
表示素子9の作製〈本発明〉
表示素子1の透明電極1を下記の複合電極7に変更した以外は同様にして表示素子9を作製した。
(複合電極7の作製)
厚さ1.5mmで2cm×4cmのガラス基板上に、公知のノズル先端部内径10μmの静電インクジェットプリンターを用いて、Agペーストインクで、幅10μmで、間隔を160μmと30μmの交互の間隔でパターンを付与し、Ag電極をガラス基板の長手方向に形成した。次に、電極間隔160μmと2本のAg電極(10μm×2)を同時に覆うように180μmの透明電極を、静電インクジェットプリンターにより、透明電極2の透明電極溶液1を用いて形成し、複合電極7を得た。図3(b)参照。
表示素子10の作製〈本発明〉
表示素子1の電解質溶液1を下記の電解質溶液2に、透明電極1を前記複合電極7に変更した以外は同様にして表示素子10を作製した。
(電解質溶液2の作製)
プロピレンカーボネート2.5g中に、p−トルエンスルホン酸銀を20mg、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール45mgを加えて完全に溶解させた後に、酸化チタン0.5gを加えて超音波分散機にて酸化チタンを分散させた。この溶液にポリエチレングリコール(平均分子量50万)を100mg加えて120℃に加熱しながら1時間攪拌し、電解質溶液2を得た。
評価方法
(評価1 高温高湿下での耐久性の評価 反射率比)
作製した各表示素子を、80℃、相対湿度60%の恒温恒湿槽内に1週間放置して強制劣化試料を作製した。次いで、強制劣化を行っていない未処理試料を用いて、駆動の電気量を適宜調整し、分光光度計で反射率をモニターしながら、表示素子の黒化時における450nmにおける反射率が約10%(反射率1)になる電気量(電気量1)を求めた。次にこの電気量1を、強制劣化を行った試料に付与して表示素子を黒化させ、分光光度計によりこの時の反射率2を求めた。反射率比=反射率2/反射率1の比を求め、この比が1に近いほど、高温高湿下での耐久性が優れていることを表している。
(評価2 高温高湿下での耐久性の評価 電極抵抗値比)
作製した各表示素子を、80℃、相対湿度60%の恒温恒湿槽内に1週間放置して強制劣化試料を作製した。次いで、強制劣化を行っていない未処理試料を用いて、透明電極の電極10本分の抵抗値R1を求めた。次に強制劣化を行った試料に対しても同様に、透明電極の電極10本分の抵抗値2を求めた。抵抗値比=抵抗値2/抵抗値1の比を求め、この比が1に近いほど、高温高湿下での電極の耐久性が優れていることを表している。
作製した各表示素子に対して、評価1、評価2を行った結果を、表1に示す。
Figure 0004569170
表1に示すように、高温高湿下での耐久性評価において、反射率比と電極抵抗比に明瞭な相関が見られ、強制劣化後の黒化度合いの低下は、電極の断線等に起因する抵抗値の増加に起因することが明らかになった。本発明の構成を用いることにより、ED法特有の電極劣化が、改良されることが分かった。また、表1は高温高湿処理後の表示素子は処理前に比較して反射率が低下することを示している。この反射率の低下を防止するために、処理前に必要とされた電圧又は電気量以上を駆動処理後に掛ければ見かけ同等の反射率が処理前後で得られることになる。電圧又は電気量と表示素子の黒化量は正の相関関係があるので、本発明の構成がより少ない電圧又は電気量で補正でき有利であり、これは本発明の構成が比較例に比べて元々低電圧で低電気量で駆動できる利点を示している。
実施例2
実施例1で作製した表示素子1〜10のガラス基板を厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート樹脂基板に変更した以外は全く同様にして、表示素子11〜20を作製した。
(評価3 折り曲げ耐性 反射率比)
駆動の電気量を適宜調整し、分光光度計で反射率をモニターしながら、表示素子の黒化時における450nmの反射率が約10%(反射率1)になるところで黒化を停止させ、この時に必要な電気量(=電気量1)を求めた。次に、表示素子の両端を固定し、表示素子の最大曲率半径が2cm以下になるように、固定両端の位置を変える動作を50回繰り返した後、同様に電気量1を与えて表示素子を黒化させて450nmの反射率(=反射率2)を測定した。反射率比=反射率2/反射率1の比を求め、この比が1に近いほど、折り曲げ耐性に優れることを表している。
(評価4 折り曲げ耐性 電極抵抗値比)
透明電極の電極10本分の抵抗値R1を求めた。次に評価3に記載の折り曲げ試験を行い、同様に折り曲げ試験後の透明電極の電極10本分の抵抗値2を求めた。抵抗値比=抵抗値2/抵抗値1の比を求め、この比が1に近いほど、高温高湿下での電極の耐久性が優れていることを表している。作製した各表示素子に対して、評価3、評価4を行った結果を、表2に示す。
Figure 0004569170
表2に示すように、折り曲げ試験評価において、反射率比と電極抵抗比に明瞭な相関が見られ、折り曲げ試験後の黒化度合いの低下は、電極の断線等に起因する抵抗値の増加に起因することが明らかになった。本発明の構成を用いることにより、ED法特有の電極劣化が、改良されることが分かった。
実施例3
実施例1、実施例2で作製した表示素子の表示部面積を8cm×8cmに変更して、同様の評価を行った結果、比較例が実施例1、2の結果に対して約10%劣化度合いが大きいのに対して、本発明は実施例1、2とほぼ同等の結果となり、表示部画面が大きくなるほど本発明の効果がより得られることが分かった。
本発明の表示素子の基本的な構成を示す概略断面図である。 透明電極部と金属補助電極部から構成される複合電極の構成例を示す図である。 本発明に用いられる複合電極の平面図である。
符号の説明
1 対向電極
2 電解質層
3 電源
4 アース
10,20,30,40,50 基材
11,21,31,41,51,61,71,81 透明電極
12,22,32,42,52,62,72,82 金属補助電極

Claims (7)

  1. 対向電極間に、銀、または銀を化学構造中に含む化合物を含有する電解質層を有し、銀の溶解析出を生じさせるように該対向電極の駆動操作を行う表示素子であって、該対向電極の少なくとも1方の電極が、透明電極に金属補助電極が付帯した複合電極であり、該金属補助電極が、銀または銅を含むことを特徴とする表示素子。
  2. 透明電極が、イリジウムまたは錫を少なくとも1種含むことを特徴とする請求項1に記載の表示素子。
  3. 透明電極が、導電性高分子を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の表示素子。
  4. 表示素子の表示部面積が50cm 以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の表示素子。
  5. 電解質層にメルカプト基を含む化合物を含有し、前記電解質層中のメルカプト基の硫黄原子の総モル数を[−SH]、前記電解質層中の銀の総モル数を[Ag]とした時に、下記式(1)を満たすことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の表示素子。
    式(1)
    2≦[−SH]/[Ag]≦10
  6. 請求項1〜5の何れか1項に記載の表示素子の複合電極の形成方法において、透明電極及び金属補助電極の少なくとも1方が、印刷法により形成されることを特徴とする複合電極の形成方法。
  7. 請求項1〜5の何れか1項に記載の表示素子の複合電極の形成方法において、透明電極及び金属補助電極の少なくとも1方が、帯電した液体を吐出する内部直径が30μm以下のノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記ノズル内に溶液を供給する供給手段と、前記ノズル内の溶液に吐出電圧を印加する吐出電圧印加手段とを備えた液体吐出装置を用いて形成されることを特徴とする複合電極の形成方法。
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