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JP4565214B2 - 超音波口腔清掃具 - Google Patents

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JP4565214B2
JP4565214B2 JP2003424552A JP2003424552A JP4565214B2 JP 4565214 B2 JP4565214 B2 JP 4565214B2 JP 2003424552 A JP2003424552 A JP 2003424552A JP 2003424552 A JP2003424552 A JP 2003424552A JP 4565214 B2 JP4565214 B2 JP 4565214B2
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Description

本発明は、口腔内に挿入し、超音波発生部から発生させた超音波を利用して口腔内の洗浄を行う超音波口腔清掃具に関し、特に、超音波を水や薬液等の液体を通じて歯や歯茎等に照射し、口腔内の洗浄を行う超音波口腔清掃具に関する。
従来より、特許文献1,2等において、歯ブラシのヘッド部から超音波を発生させ、歯垢等を除去し口腔内を洗浄する超音波歯ブラシ等が知られている。
これらのうち、特許文献1に記載の歯ブラシは、ヘッドに植えた毛及び歯磨き剤を介して、超音波を歯の表面に伝え、歯の表面の柔らかい歯垢を除去するものである。
一方、特許文献2には、歯ブラシのヘッド部に洗浄水の溜まりやすい空間を構成し、この空間に洗浄水を供給し、溜まった洗浄水を通じて、超音波を伝え、歯垢等の除去を行うものである。
特表平7−509151号公報 特開平9−206130号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の発明では、超音波エネルギーは、毛あるいは歯磨き剤を通じてのみ歯の表面に届く構成としたため、実際のところでは、毛を伝わる超音波は途中で減衰して歯にそのエネルギーを十分に伝達できない。また、歯磨き剤あるいは歯磨き剤と唾液や水との混合物は気泡を多く含むため、これらを通じても超音波エネルギーを十分に歯の表面に伝達できない。このため、超音波出力は10mW程度と弱いものであり、その洗浄力は限定的であった。
一方、上記特許文献2に記載のように、洗浄水などの液体を通じて超音波のエネルギーを伝達する場合には、超音波の減衰が少なく、効率的に歯や歯茎に超音波エネルギーを伝えることができる。例えば、超音波出力を500mW以上とすることも可能である。このため、歯垢除去効果も大きくできる。
ところで、この特許文献2に記載の歯ブラシでは、空間内に洗浄水等の液体が溜まっている場合には、液体が超音波発生器の負荷となる。このため、超音波発生器の振動が抑制され、発熱も抑制されるから、超音波発生器が破壊することはない。
しかしながら、使用中あるいは使用前または使用後などにおいて、超音波発生器で超音波を発生させている間に、液体を溜めている部分を下向きにするなど、何らかの理由でこの部分に溜まっていた液体が流れ出てしまい、超音波発生器の超音波放射面が空中に露出した状態となると、この超音波発生器は無負荷駆動となる。このため、超音波発生器に大きな振動が発生すると共に発熱により大きく昇温し、超音波発生器の圧電素子などが破壊する恐れがある。
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、液溜め部を有し、この液溜め部に液体がない状態で超音波を発生させても、超音波発生部が破壊しない超音波口腔清掃具を提供することを目的とする。
その解決手段は、筒形状をなし、先端側が開放され、内部に第1液体を保持可能とした液溜め部と、前記液溜め部の基端側に配置された超音波発生部であって、前記液溜め部に第1液体を保持したときにこの第1液体に接する超音波放射面を有し、この超音波放射面から超音波を放射する超音波発生部と、を備える超音波口腔清掃具であって、前記超音波発生部は、電気信号により振動する振動素子と、板表面と板裏面とを有し、この板裏面に前記振動素子が接着された振動板と、フィルム表面とフィルム裏面とを有し、樹脂からなり、このフィルム表面が前記超音波放射面をなすフィルムと、前記振動板の板表面と前記フィルムのフィルム裏面との間に保持され、第2液体からなる液体層と、を含み、前記振動板は、樹脂からなり、この振動板における超音波振動の波長をλsとし、nを4以上の自然数としたとき、nλs/2の厚さを有する超音波口腔清掃具である。
前述したように、液溜め部を有する超音波口腔清掃具では、液溜め部に液体(第1液体)が溜まっていて、第1液体が超音波放射面に接触している場合には、第1液体が超音波発生部の負荷となる。このため、超音波発生部の振動が抑制され、振動素子に破壊を生じることがなく、適切に超音波振動を起こさせることができる。
しかし、液溜め部に第1液体がない場合には、超音波発生部は無負荷駆動となる。このため、超音波発生部が振動素子と振動板とからなるものでは、振動素子及び振動板が大きく振動し、発熱によって振動素子が大きく昇温して、振動素子と振動板との接着部分が破壊したり、振動素子自身が破壊する恐れがある。
これに対し、本発明の超音波口腔清掃具は、振動板上に第2液体からなる液体層を設け、これを振動板とフィルムとの間に保持している。このような液体層を設けても、液溜め部に第1液体がある場合には、液体層が振動素子や振動板と共に振動し、フィルムを通じて、第1液体に超音波振動を伝えることができる。
一方、液溜め部に第1液体がない状態でも、液体層が音響的な負荷となってある程度の損失を生じさせるため、振動素子の振動が抑制され、発熱による昇温も抑制されて、振動板と振動素子との接着部分が破壊したり、振動素子が破壊することが防止できる。
本発明の振動素子としては、電気信号により振動を生じさせる素子であればよいが、例えば、PZT,BaTiO3等の圧電素子や、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN)などの電歪素子、磁歪素子などが挙げられる。
振動板としては、金属や樹脂板からなり、所定の厚さを有する板であればよい。具体的には、ステンレスやチタン等の金属板、ABS、アクリル、PET、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、変性ポリフェニレネンエーテル、変性PPEなどの樹脂や、PTFE等のフッ素系樹脂や、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の樹脂板が挙げられる。また、タルク等の粉末を含む樹脂からなる樹脂板も挙げられる。振動板の厚さは、この超音波口腔清掃具の超音波発生部や液溜め部が口腔内に挿入されることによる寸法制限や、振動板における超音波振動の波長λsの大きさ、振動板で生じる負荷等を考慮して適宜選択すればよい。
フィルムとしては、樹脂からなり、振動板との間に液体層を保持すると共に、そのフィルム表面が超音波放射面を構成するものであればよい。例えば、ポリイミド、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、ABS、アクリル、PET、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、変性ポリフェニレネンエーテル、変性PPEなどの樹脂や、PTFE等のフッ素系樹脂や、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂からなるものが挙げられる。また、タルク等の粉末を含む樹脂からなるものでもよい。
液体層としては、液体(第2液体)からなるものであればよいが、例えば、精製水、食塩水、砂糖水、食用油、薬液、洗浄液などからなるものが挙げられる。また、ジェル状の液体を利用して液体層を構成してもよい。液体層の厚さは、この超音波口腔清掃具の超音波発生部や液溜め部が口腔内に挿入されることによる寸法制限等を考慮して適宜選択すればよい。なお、本発明の第1液体と第2液体とは、同一の液体であっても、異なる液体であっても構わない。
液溜め部としては、筒形状をなし、先端側が開放され、内部に第1液体を保持可能であればよく、例えば、柔らかなシリコーン等のゴム状弾性体からなる筒状の液溜め筒部で構成することができる。あるいは、筒状のスポンジで液溜め筒部を構成することもできる。更には、多数の毛束を筒を構成するように植毛して、この毛束による筒状部分を液溜め部としてもよい。更に、液溜め部に薬液、洗浄液、水等を供給するための供給口が設けられていてもよい。
さらに、液溜め部に第1液体がない状態では、液溜め部に第1液体がある場合に比して、超音波発生部の負荷が少なくなる。このため、振動板として例えば金属板を用い、その厚さを4λ/2未満、例えば、3λ/2,2λ/2,λ/2とすると、振動素子及び振動板が比較的大きく振動し、発熱によって振動素子が比較的大きく昇温して、振動素子と振動板との接着部分が破壊したり、振動素子が破壊する恐れもある。
これに対し、本発明の超音波口腔清掃具は、振動板に振動によって損失が生じやすい樹脂を用い、しかも、その厚さをnλs/2の厚さ(n:4以上の自然数)としている。具体的には、4λs/2、5λs/2、…とする。このため、液溜め部に第1液体がある場合には、振動板は振動素子とともに振動し、液体層及びフィルムを通じて、第1液体に超音波振動をより確実に伝えることができる。
一方、液溜め部に液体がない場合でも、振動板自身にある程度の損失が生じるので、超音波発生部全体としては、液体層と共に振動板も負荷となる。このため、振動素子の振動がより効果的に抑制され、発熱による昇温もより効果的に抑制されて、振動板と振動素子との接着部分が破壊したり、振動素子が破壊することを防止できる。
更に、上記のいずれかに記載の超音波口腔清掃具であって、前記フィルムは、このフィルムにおける超音波振動の波長をλfとしたとき、λf/8以下の厚さを有する超音波口腔清掃具とすると良い。
フィルムの厚みが厚くなると、振動素子から生じた超音波振動が効率よく第1液体に伝わらなくなり、十分な超音波出力が得られない恐れがある。
これに対し、本発明では、フィルムの厚さをλf/8以下と薄くしているため、音響的にみればフィルムが存在しないのとほぼ等しい。このため、振動素子から生じた超音波振動を効率よく第1液体に伝え、十分に高い超音波出力を確保できる。
更に、上記のいずれかに記載の超音波口腔清掃具であって、前記振動板の板表面は、平面をなし、前記フィルムのフィルム裏面は、曲面をなす、または、前記振動板の板表面に対し平行でない平面をなす超音波口腔清掃具とすると良い。
液溜め部に第1液体がある場合には、液体とフィルムとは音響的に似たインピーダンスであるから、フィルムでの反射はそれほど大きくない。このため、第1液体と第2液体(液体層)との間にフィルムがあっても、その存在には関係なく、振動素子から生じた超音波振動が十分に第1液体に伝わる。
しかし、振動板の板表面とフィルムのフィルム裏面とが共に平面で互いに平行な場合においては、液溜め部に第1液体がない場合には、フィルム裏面である程度反射が起きるため、定在波となって共振する恐れがある。
これに対し、本発明では、振動板の板表面は平面をなすが、フィルムのフィルム裏面は、曲面、または、振動板の板表面に対し平行でない平面をなす。このような構成とすることで、液溜め部に第1液体がなく、フィルム裏面である程度反射が起きても、それが定在波となって共振することが避けられる。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
本実施形態に係る超音波歯ブラシ100(超音波口腔清掃具)について、図1及び図2を参照して説明する。図1は超音波歯ブラシ100の概要を示す説明図であり、図2はそのヘッド部150の構造を示す説明図である。
超音波歯ブラシ100は、ヒトの口腔内にヘッド部150を挿入して、口腔内の歯、歯茎等の歯垢その他を除去するのに用いる。この超音波歯ブラシ100は、手指でこの歯ブラシを把持するための把持部110、ブラシをなす毛束が植設されたヘッド部150、及び、これらを結ぶ軸状の頸部120からなる。
このうち、把持部110をなす把持部ケース111内には、駆動用回路基板112、薬液タンク114、液送ポンプ116、バッテリ117などが内蔵されており、駆動用回路基板112の制御によって、薬液タンク114に貯留されていた薬液(第1液体)が液送ポンプ116によって、頸部120内の薬液供給チューブ123を通じて、ヘッド部150の薬液保持筒(液溜め部)174内(図2参照)に供給される。薬液は、使用者が適宜、薬液補給口115から薬液タンク114に補充する。更に、駆動用回路基板112の制御によって、頸部120及びヘッド部150内のリード線を通じて、圧電素子(振動素子)162(図2参照)が、約3MHzで駆動される。また、駆動用回路基板112、液送ポンプ116等は、バッテリ117によって駆動されており、このバッテリ117は、充電用回路118を通じて適宜充電される。
頸部120は、軸状をなし、筒状の頸部ケース121と、この内部に挿通された薬液供給チューブ123及びリード線を有している。
ヘッド部150は、図2に拡大して示すように、超音波発生部161を保持する箱状のブラシ本体部151と、このブラシ本体部151に着脱交換可能に装着されたブラシカップ部材171とからなる。
ブラシカップ部材171は、ABS樹脂からなり、ブラシ本体部151を包囲するようにして、これに装着されたブラシ基部172と、これの先端側面172B(図2中上面)にリング状に植設された毛束173とからなる。
このブラシカップ部材171の中央部には、ブラシ基部172の中央部から図2中上方に延びる形態を有する薬液保持筒174が配設されている。そして、この薬液保持筒174、後述する超音波発生部161等により、薬液(第1液体)を内部に保持するための液保持空間SLが構成されている。
薬液保持筒174は、ゴム状弾性を有するシリコーンからなり、基端側(図2中下方)に位置する略円錐台形状の基端部174Bと、この基端部174Bから延びる円筒状の先端部174T(外形4.5mmφ、内径2.5mmφ)とを有する。薬液保持筒174の基端部174Bの内壁面と、超音波発生部161のうちこの液保持空間SLに面する超音波放射面165B(8mmφ)とは、約60度の角度をなしている。薬液保持筒174の先端部174Tの先端には、開口174Kが設けられ、液保持空間SLを外部に開放している。
液保持空間SLには、薬液供給チューブ123、及び、ブラシ本体部151に形成した薬液供給路153を通じて、この液保持空間SLに開口する薬液供給口152から、薬液タンク114内の薬液が液送ポンプ116によって適量ずつ供給されて、液保持空間SL内を満たし、更には、使用者による使用中に開口174Kから薬液が口腔内に供給される。
薬液保持筒174(液保持空間SL)の基端側(図2中下方)には、圧電素子162と振動板163と液体層164とフィルム165等からなる超音波発生部161が配設され、その周縁がブラシ本体部151に保持されている。
このうち、圧電素子162は、公知のPZT系セラミックからなる円板状の圧電素子であり、リード線を通じて駆動用回路基板112から与えられた高周波信号によって共振し、約3MHzの厚み方向(図2中上下方向)の超音波振動を生じる。この圧電素子162の直径は8mmφ、厚さは0.67mmであり、この圧電素子162の音速は4000m/sである。従って、この圧電素子162を伝わる超音波の波長λpは、λp=1.33mmであり、圧電素子163の厚さは、λp/2に相当する。
振動板163は、平坦な板表面163B(図2中上面)と板裏面163C(図2中下面)とを有し、圧電素子162よりやや大径(11mmφ)の円板状をなす。振動板163の板裏面163Bには、上述の圧電素子162が接着されている。振動板163は、樹脂、具体的にはABSからなる。振動板162は、この振動板162における超音波振動の波長をλsとし、nを自然数としたとき、nλs/2の厚さを有する。具体的には、ABSにおける音速は2400m/sであるので、周波数を3MHzとしたとき、振動板163を伝わる超音波の波長λs は、λs =0.8mmである。そこで、振動板163の厚さを、0.4mm(λs/2)、0.8mm(2λs/2)、1.2mm(3λs/2)、1.6mm(4λs/2)、2.0mm(5λs/2)、2.4mm(6λs/2)、…とする。特に、n=4以上、即ち、1.6mm(4λs/2)、2.0mm(5λs/2)、2.4mm(6λs/2)、…とするのが好ましい。
液体層164は、振動板163の板表面163Bと、後述するフィルム164のフィルム裏面164Cとの間に保持された水からなる。また、液体層164の周囲は、振動板163の板表面163B及びフィルム164のフィルム裏面164Cに接着された筒状のガイド166によって取り囲まれている。
フィルム165は、平坦なフィルム表面165B(図2中上面)とフィルム裏面(図2中下面)とを有する樹脂からなる薄膜であり、上述したように、液体層164を振動板163上に保持している。詳しくは、フィルム165は、振動板163に対して1〜10度傾けた状態で配設されている。従って、振動板163の板表面163Bとフィルム165のフィルム裏面165Cとは平行でない。このフィルム165のフィルム表面165Bは、液保持空間SLに露出する超音波放射面165Bをなしている。
なお、本実施形態のフィルム165は、平坦なフィルム表面165Bとフィルム裏面とを有するが、先端側(図2中上方)に凸、あるいは、基端側(図2中下方)に凸となる曲面を有するフィルムを用いることもできる。
超音波発生部161は、このような構成となっているため、圧電素子162で発生した超音波振動は、振動板163、液体層164、及び、フィルム165を伝わり、液保持空間SLに溜められた薬液内に超音波が放射される。
このような超音波歯ブラシ100では、ブラシカップ部材171の毛束173によって、歯の表面や歯と歯茎の間の歯垢を掻き取ることができる。更に、この超音波歯ブラシ100では、薬液保持筒174内の液保持空間SLに薬液を溜めた上で、口腔内にヘッド部150を挿入し、薬液保持筒174の開口部174Kを歯の表面や歯と歯茎の間に密接させ、圧電素子162を超音波駆動させることで、超音波が薬液を通じて歯の表面や歯と歯茎の間に照射される。これにより、歯の表面や歯と歯茎の間の歯垢が剥離され、乳化、除去される。特に、薬液を通じて超音波を直接歯や歯茎に照射するため、強力な超音波(500mW以上)によって、通常のブラシによる掻き取りでは除去しにくい、歯の表面に強固に密着した歯垢や歯周ポケット内の歯垢をも除去することができる。
ところで、このような超音波歯ブラシ100では、薬液保持筒174内の液保持空間SLに薬液が溜まっている場合には、薬液が超音波発生部161の負荷となるため、その振動が抑制される。このため、圧電素子162の昇温も抑制される。
一方、超音波歯ブラシ100の使用中あるいは使用前後に、使用者が薬液保持筒174の先端を下向きにするなどによって、液保持空間SL内の薬液が薬液保持筒174の開口174Kから、多量にあるいは全量抜け出てしまう場合があり得る。従来のものでは、このように液保持空間SL内に薬液がない状態であるにも拘わらず、圧電素子162を駆動した場合には、圧電素子162にとって負荷となるべき薬液がないため、その振動が抑制されずに極めて大きくなる。その結果、圧電素子162自身が破壊したり、その特性が低下したり、圧電素子162と振動板163との接着部分が破壊することもある。
これに対し、本実施形態の超音波歯ブラシ100では、振動板163上に液体層164を設けている。このため、液保持空間SLに薬液がなくなった場合でも、液体層164が音響的な負荷となってある程度の損失を生じさせるため、圧電素子162の振動が抑制され、発熱による昇温も抑制されて、圧電素子162と振動板163との接着部分が破壊したり、圧電素子162が破壊することを防止できる。
更に、本実施形態では、振動板163に振動によって損失が生じやすい樹脂を用い、しかも、その厚さをnλs/2の厚さ(n:4以上の自然数)としている。このため、液保持空間SLに薬液がある場合には、振動板163が圧電素子162と共に振動し、液体層164及びフィルム165を通じて、薬液に超音波振動をより確実に伝えることができる。
一方、液保持空間SLに薬液がなくなった場合でも、振動板163自身にある程度の損失が生じるので、超音波発生部161全体としては、液体層164と共に振動板163も負荷となる。このため、圧電素子162の振動がより効果的に抑制され、発熱による昇温もより効果的に抑制されて、圧電素子162と振動板163との接着部分が破壊したり、圧電素子162が破壊することをより効果的に防止できる。
また、本実施形態では、フィルム164の厚みをλf/8以下と薄くしている。このため、音響的にみればこのフィルム164は存在しないのとほぼ等しい。このため、圧電素子162から生じた超音波振動を効率よく薬液に伝え、十分高い超音波出力を確保できる。
また、本実施形態では、振動板163の板表面163B及びフィルム164のフィルム裏面164Cは、共に平面をなすが互いに平行ではない。このため、液保持空間SLに薬液がなく、フィルム裏面164Cである程度反射が起きても、それが定在波となって共振することが避けられる。
(実施例1〜3)
次いで、本発明の実施例1〜3について説明する。
実施例1に係る超音波歯ブラシ100は、振動板163を厚さ2.0mm(5λs/2)のABS板とし、液体層164を厚さ0.9mmの水層とし、フィルム165を厚さ30μmのポリエチレン(PE)フィルムとした。そして、フィルム165(フィルム裏面165C)を振動板163(板表面163B)に対し、5度程度傾斜させた。
実施例2に係る超音波歯ブラシ100は、液体層164を厚さを3.0mmとした。それ以外は実施例1と同様である。
実施例3に係る超音波歯ブラシ100は、振動板163を厚さ1.2mm(3λs/2)とした。それ以外は実施例1と同様である。
(比較例1,2)
実施例との比較のために、比較例1,2の超音波歯ブラシを用意した。
比較例1,2に係る超音波歯ブラシは、超音波発生部の構成が上記実施例1〜3と異なる。即ち、比較例1,2に係る超音波歯ブラシの超音波発生部は、上記実施例1〜3と同様な圧電素子162と、これに接着された振動板163のみからなり、液体層及びフィルムは存在しない。
具体的には、比較例1に係る超音波歯ブラシは、振動板163が厚さ 2.0mmのABS板からなる(実施例1,2と同様)。
比較例2に係る超音波歯ブラシは、振動板163が厚さ1.2mmのABS板からなる(実施例3と同様)。
次に、本発明の効果を検証するために、実施例1〜3及び比較例1,2の超音波歯ブラシ100等について、その特性を調査した。具体的には、超音波歯ブラシ100等の液保持空間SLに薬液がある場合とない場合のそれぞれについて、圧電素子162の周波数とインピーダンスとの関係を調べた。その結果を図3〜図7に示す。横軸は圧電素子162の周波数を示し、縦軸は圧電素子162のインピーダンスを示す。破線は液保持空間SLに薬液がある場合の特性変化を示し、実線は液保持空間SLに薬液がない場合の特性変化を示す。
なお、図3は実施例1に係る超音波歯ブラシ100についての結果を示す。図4は実施例2に係る超音波歯ブラシ100についての結果を示す。図5は実施例3に係る超音波歯ブラシ100についての結果を示す。図6は比較例1に係る超音波歯ブラシについての結果を示す。図7は比較例2に係る超音波歯ブラシについての結果を示す。
実施例1に係る超音波歯ブラシ100の結果について見ると(図3参照)、液保持空間SLに薬液がある場合(破線)には、約3.0MHzにおいて、インピーダンスが最小値を示し、約36Ωであった。また、液保持空間SLに薬液がない場合(実線)にも、約3.0MHzにおいて、インピーダンスが最小値を示し、約36Ωであった。従って、液保持空間SLに薬液がある場合とない場合とで、インピーダンスの差はほとんどなかった。更に、周波数を変化させたときのインピーダンスの変化が、液保持空間SLに薬液がある場合とない場合とほぼ同じ傾向を示した。なお、入力電圧は17.3Vである。また、超音波出力は500mWである。
実施例2に係る超音波歯ブラシ100では(図4参照)、液保持空間SLに薬液がある場合(破線)には、約3.0MHzにおいて、インピーダンスが最小値を示し、約32Ωであった。また、液保持空間SLに薬液がない場合(実線)には、約3.0MHzにおいて、インピーダンスが最小値を示し、約33Ωであった。従って、液保持空間SLに薬液がある場合とない場合とで、インピーダンスの差は僅か約1Ωであった。更に、周波数を変化させたときのインピーダンスの変化が、液保持空間SLに薬液がある場合とない場合とほぼ同じ傾向を示した。なお、入力電圧は17.3Vである。また、超音波出力は500mWである。
実施例3に係る超音波歯ブラシ100では(図5参照)、液保持空間SLに薬液がある場合(破線)には、約3.0MHzにおいて、インピーダンスが最小値を示し、約34Ωであった。また、液保持空間SLに薬液がない場合(実線)にも、約3.0MHzにおいて、インピーダンスが最小値を示し、約34Ωであった。従って、液保持空間SLに薬液がある場合とない場合とで、インピーダンスの差はほとんどなかった。更に、周波数を変化させたときのインピーダンスの変化が、液保持空間SLに薬液がある場合とない場合とほぼ同じ傾向を示した。なお、入力電圧は17.5Vである。また、超音波出力は500mWである。
一方、比較例1に係る超音波歯ブラシでは(図6参照)、液保持空間に薬液がある場合(破線)には、約3.0MHzにおいて、インピーダンスが最小値を示し、約32Ωであった。一方、液保持空間に薬液がない場合(実線)には、約3.0MHzにおいて、インピーダンスが最小値を示し、約16Ωであった。従って、液保持空間に薬液がある場合とない場合とで、インピーダンスの差が約16Ωもあった。その上、周波数を変化させたときのインピーダンスの変化が、液保持空間に薬液がある場合とない場合とで大幅に異なる結果となった。なお、入力電圧は16.7Vである。また、超音波出力は500mWである。
比較例2に係る超音波歯ブラシでは(図7参照)、液保持空間に薬液がある場合(破線)には、約3.0MHzにおいて、インピーダンスが最小値を示し、約37Ωであった。一方、液保持空間に薬液がない場合(実線)には、約3.0MHzにおいて、インピーダンスが最小値を示し、約16Ωであった。従って、液保持空間に薬液がある場合とない場合とで、インピーダンスの差が約21Ωもあった。その上、周波数を変化させたときのインピーダンスの変化が、液保持空間に薬液がある場合とない場合とで大幅に異なる結果となった。なお、入力電圧は17.1Vである。また、超音波出力は500mWである。
これらの結果を考察すると、まず、比較例1,2に係る超音波歯ブラシでは、液保持空間に薬液がある場合とない場合とで、約3.0MHzにおけるインピーダンスの差が大きく、液保持空間に薬液がない場合には、インピーダンスが極端に小さくなる。このため、液保持空間に薬液がない場合には、薬液がある場合と比較して、圧電素子162が激しく振動することになる。そうすると、圧電素子162が大きく昇温し、圧電素子162が破壊したり、圧電素子162が振動板163から剥がれるなどの不具合が発生しやすい。
これに対し、実施例1〜3に係る超音波歯ブラシ100では、液保持空間SLに薬液がある場合とない場合とで、約3.0MHzにおけるインピーダンスの差が殆どなく、液保持空間SLに薬液がない場合でも、インピーダンスが小さくならない。このような結果が生じる主たる理由は、液体層164が音響的な負荷となるためと考えられる。このため、液保持空間SLに薬液がない場合でも、圧電素子162が激しく振動することはない。従って、圧電素子162が大きく昇温することもなく、圧電素子162が破壊したり、圧電素子162が振動板163から剥がれるなどの不具合を防止できる。
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上述の実施形態等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、上記実施形態では、ヘッド部150の他、頸部120や把持部110を有する超音波歯ブラシ100に本発明を適用したが、液溜め部と超音波発生部とを備える超音波口腔清掃具であればよく、頸部や把持部を備えない形態の清掃具にも適用することができる。
また、上記実施形態では、薬液保持筒174の周囲に毛束173を植設したが、薬液保持筒の周囲に毛束を設けない形態の清掃具としてもよい。
また、上記実施形態では、超音波振動子として、約3MHzの超音波を発生する圧電素子162を例示して説明したが、各部の寸法その他を考慮して、適宜の周波数の超音波を用いればよい。
また、上記実施形態では、ヘッド部150は、ブラシ本体部151と、これに対して着脱、交換可能で、薬液保持筒174や毛束173を備えるブラシカップ部材171とからなるものを例示した。しかし、ヘッド部として、薬液保持筒や毛束などが着脱及び交換不能のものに本発明を適用しても良い。また、毛束は着脱、交換可能であるが、薬液保持筒は交換不能のものに本発明を適用することもできる。
実施形態に係る超音波歯ブラシの概要を示す説明図である。 実施形態に係る超音波歯ブラシのヘッド部の構造を示す説明図である。 実施例1に係る超音波歯ブラシの特性変化を示すグラフである。 実施例2に係る超音波歯ブラシの特性変化を示すグラフである。 実施例3に係る超音波歯ブラシの特性変化を示すグラフである。 比較例1に係る超音波歯ブラシの特性変化を示すグラフである。 比較例2に係る超音波歯ブラシの特性変化を示すグラフである。
符号の説明
100 超音波歯ブラシ(超音波口腔清掃具)
110 把持部
120 頸部
150 ヘッド部
151 ブラシ本体部
161 超音波発生部
162 圧電素子(振動素子)
163 振動板
163B 板表面
163C 板裏面
164 液体層
165 フィルム
165B フィルム表面、超音波放射面
165C フィルム裏面
171 ブラシカップ部材
172 ブラシ基部
173 毛束
174 薬液保持筒(液溜め部)
174K 開口部
SL 液保持空間

Claims (3)

  1. 筒形状をなし、先端側が開放され、内部に第1液体を保持可能とした液溜め部と、
    前記液溜め部の基端側に配置された超音波発生部であって、前記液溜め部に第1液体を保持したときにこの第1液体に接する超音波放射面を有し、この超音波放射面から超音波を放射する超音波発生部と、
    を備える超音波口腔清掃具であって、
    前記超音波発生部は、
    電気信号により振動する振動素子と、
    板表面と板裏面とを有し、この板裏面に前記振動素子が接着された振動板と、
    フィルム表面とフィルム裏面とを有し、樹脂からなり、このフィルム表面が前記超音波放射面をなすフィルムと、
    前記振動板の板表面と前記フィルムのフィルム裏面との間に保持され、第2液体からなる液体層と、
    を含み、
    前記振動板は、
    樹脂からなり、
    この振動板における超音波振動の波長をλsとし、nを4以上の自然数としたとき、
    nλs/2の厚さを有する
    超音波口腔清掃具。
  2. 請求項1に記載の超音波口腔清掃具であって、
    前記フィルムは、このフィルムにおける超音波振動の波長をλfとしたとき、λf/8以下の厚さを有する
    超音波口腔清掃具。
  3. 請求項1または請求項2に記載の超音波口腔清掃具であって、
    前記振動板の板表面は、平面をなし、
    前記フィルムのフィルム裏面は、曲面をなす、または、前記振動板の板表面に対し平行でない平面をなす
    超音波口腔清掃具。
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