JP4565214B2 - 超音波口腔清掃具 - Google Patents
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これらのうち、特許文献1に記載の歯ブラシは、ヘッドに植えた毛及び歯磨き剤を介して、超音波を歯の表面に伝え、歯の表面の柔らかい歯垢を除去するものである。
一方、特許文献2には、歯ブラシのヘッド部に洗浄水の溜まりやすい空間を構成し、この空間に洗浄水を供給し、溜まった洗浄水を通じて、超音波を伝え、歯垢等の除去を行うものである。
しかしながら、使用中あるいは使用前または使用後などにおいて、超音波発生器で超音波を発生させている間に、液体を溜めている部分を下向きにするなど、何らかの理由でこの部分に溜まっていた液体が流れ出てしまい、超音波発生器の超音波放射面が空中に露出した状態となると、この超音波発生器は無負荷駆動となる。このため、超音波発生器に大きな振動が発生すると共に発熱により大きく昇温し、超音波発生器の圧電素子などが破壊する恐れがある。
しかし、液溜め部に第1液体がない場合には、超音波発生部は無負荷駆動となる。このため、超音波発生部が振動素子と振動板とからなるものでは、振動素子及び振動板が大きく振動し、発熱によって振動素子が大きく昇温して、振動素子と振動板との接着部分が破壊したり、振動素子自身が破壊する恐れがある。
一方、液溜め部に第1液体がない状態でも、液体層が音響的な負荷となってある程度の損失を生じさせるため、振動素子の振動が抑制され、発熱による昇温も抑制されて、振動板と振動素子との接着部分が破壊したり、振動素子が破壊することが防止できる。
振動板としては、金属や樹脂板からなり、所定の厚さを有する板であればよい。具体的には、ステンレスやチタン等の金属板、ABS、アクリル、PET、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、変性ポリフェニレネンエーテル、変性PPEなどの樹脂や、PTFE等のフッ素系樹脂や、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の樹脂板が挙げられる。また、タルク等の粉末を含む樹脂からなる樹脂板も挙げられる。振動板の厚さは、この超音波口腔清掃具の超音波発生部や液溜め部が口腔内に挿入されることによる寸法制限や、振動板における超音波振動の波長λsの大きさ、振動板で生じる負荷等を考慮して適宜選択すればよい。
フィルムとしては、樹脂からなり、振動板との間に液体層を保持すると共に、そのフィルム表面が超音波放射面を構成するものであればよい。例えば、ポリイミド、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、ABS、アクリル、PET、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、変性ポリフェニレネンエーテル、変性PPEなどの樹脂や、PTFE等のフッ素系樹脂や、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂からなるものが挙げられる。また、タルク等の粉末を含む樹脂からなるものでもよい。
液溜め部としては、筒形状をなし、先端側が開放され、内部に第1液体を保持可能であればよく、例えば、柔らかなシリコーン等のゴム状弾性体からなる筒状の液溜め筒部で構成することができる。あるいは、筒状のスポンジで液溜め筒部を構成することもできる。更には、多数の毛束を筒を構成するように植毛して、この毛束による筒状部分を液溜め部としてもよい。更に、液溜め部に薬液、洗浄液、水等を供給するための供給口が設けられていてもよい。
一方、液溜め部に液体がない場合でも、振動板自身にある程度の損失が生じるので、超音波発生部全体としては、液体層と共に振動板も負荷となる。このため、振動素子の振動がより効果的に抑制され、発熱による昇温もより効果的に抑制されて、振動板と振動素子との接着部分が破壊したり、振動素子が破壊することを防止できる。
これに対し、本発明では、フィルムの厚さをλf/8以下と薄くしているため、音響的にみればフィルムが存在しないのとほぼ等しい。このため、振動素子から生じた超音波振動を効率よく第1液体に伝え、十分に高い超音波出力を確保できる。
しかし、振動板の板表面とフィルムのフィルム裏面とが共に平面で互いに平行な場合においては、液溜め部に第1液体がない場合には、フィルム裏面である程度反射が起きるため、定在波となって共振する恐れがある。
これに対し、本発明では、振動板の板表面は平面をなすが、フィルムのフィルム裏面は、曲面、または、振動板の板表面に対し平行でない平面をなす。このような構成とすることで、液溜め部に第1液体がなく、フィルム裏面である程度反射が起きても、それが定在波となって共振することが避けられる。
本実施形態に係る超音波歯ブラシ100(超音波口腔清掃具)について、図1及び図2を参照して説明する。図1は超音波歯ブラシ100の概要を示す説明図であり、図2はそのヘッド部150の構造を示す説明図である。
超音波歯ブラシ100は、ヒトの口腔内にヘッド部150を挿入して、口腔内の歯、歯茎等の歯垢その他を除去するのに用いる。この超音波歯ブラシ100は、手指でこの歯ブラシを把持するための把持部110、ブラシをなす毛束が植設されたヘッド部150、及び、これらを結ぶ軸状の頸部120からなる。
ブラシカップ部材171は、ABS樹脂からなり、ブラシ本体部151を包囲するようにして、これに装着されたブラシ基部172と、これの先端側面172B(図2中上面)にリング状に植設された毛束173とからなる。
薬液保持筒174は、ゴム状弾性を有するシリコーンからなり、基端側(図2中下方)に位置する略円錐台形状の基端部174Bと、この基端部174Bから延びる円筒状の先端部174T(外形4.5mmφ、内径2.5mmφ)とを有する。薬液保持筒174の基端部174Bの内壁面と、超音波発生部161のうちこの液保持空間SLに面する超音波放射面165B(8mmφ)とは、約60度の角度をなしている。薬液保持筒174の先端部174Tの先端には、開口174Kが設けられ、液保持空間SLを外部に開放している。
液保持空間SLには、薬液供給チューブ123、及び、ブラシ本体部151に形成した薬液供給路153を通じて、この液保持空間SLに開口する薬液供給口152から、薬液タンク114内の薬液が液送ポンプ116によって適量ずつ供給されて、液保持空間SL内を満たし、更には、使用者による使用中に開口174Kから薬液が口腔内に供給される。
このうち、圧電素子162は、公知のPZT系セラミックからなる円板状の圧電素子であり、リード線を通じて駆動用回路基板112から与えられた高周波信号によって共振し、約3MHzの厚み方向(図2中上下方向)の超音波振動を生じる。この圧電素子162の直径は8mmφ、厚さは0.67mmであり、この圧電素子162の音速は4000m/sである。従って、この圧電素子162を伝わる超音波の波長λpは、λp=1.33mmであり、圧電素子163の厚さは、λp/2に相当する。
なお、本実施形態のフィルム165は、平坦なフィルム表面165Bとフィルム裏面とを有するが、先端側(図2中上方)に凸、あるいは、基端側(図2中下方)に凸となる曲面を有するフィルムを用いることもできる。
これに対し、本実施形態の超音波歯ブラシ100では、振動板163上に液体層164を設けている。このため、液保持空間SLに薬液がなくなった場合でも、液体層164が音響的な負荷となってある程度の損失を生じさせるため、圧電素子162の振動が抑制され、発熱による昇温も抑制されて、圧電素子162と振動板163との接着部分が破壊したり、圧電素子162が破壊することを防止できる。
一方、液保持空間SLに薬液がなくなった場合でも、振動板163自身にある程度の損失が生じるので、超音波発生部161全体としては、液体層164と共に振動板163も負荷となる。このため、圧電素子162の振動がより効果的に抑制され、発熱による昇温もより効果的に抑制されて、圧電素子162と振動板163との接着部分が破壊したり、圧電素子162が破壊することをより効果的に防止できる。
また、本実施形態では、振動板163の板表面163B及びフィルム164のフィルム裏面164Cは、共に平面をなすが互いに平行ではない。このため、液保持空間SLに薬液がなく、フィルム裏面164Cである程度反射が起きても、それが定在波となって共振することが避けられる。
次いで、本発明の実施例1〜3について説明する。
実施例1に係る超音波歯ブラシ100は、振動板163を厚さ2.0mm(5λs/2)のABS板とし、液体層164を厚さ0.9mmの水層とし、フィルム165を厚さ30μmのポリエチレン(PE)フィルムとした。そして、フィルム165(フィルム裏面165C)を振動板163(板表面163B)に対し、5度程度傾斜させた。
実施例2に係る超音波歯ブラシ100は、液体層164を厚さを3.0mmとした。それ以外は実施例1と同様である。
実施例3に係る超音波歯ブラシ100は、振動板163を厚さ1.2mm(3λs/2)とした。それ以外は実施例1と同様である。
実施例との比較のために、比較例1,2の超音波歯ブラシを用意した。
比較例1,2に係る超音波歯ブラシは、超音波発生部の構成が上記実施例1〜3と異なる。即ち、比較例1,2に係る超音波歯ブラシの超音波発生部は、上記実施例1〜3と同様な圧電素子162と、これに接着された振動板163のみからなり、液体層及びフィルムは存在しない。
具体的には、比較例1に係る超音波歯ブラシは、振動板163が厚さ 2.0mmのABS板からなる(実施例1,2と同様)。
比較例2に係る超音波歯ブラシは、振動板163が厚さ1.2mmのABS板からなる(実施例3と同様)。
なお、図3は実施例1に係る超音波歯ブラシ100についての結果を示す。図4は実施例2に係る超音波歯ブラシ100についての結果を示す。図5は実施例3に係る超音波歯ブラシ100についての結果を示す。図6は比較例1に係る超音波歯ブラシについての結果を示す。図7は比較例2に係る超音波歯ブラシについての結果を示す。
例えば、上記実施形態では、ヘッド部150の他、頸部120や把持部110を有する超音波歯ブラシ100に本発明を適用したが、液溜め部と超音波発生部とを備える超音波口腔清掃具であればよく、頸部や把持部を備えない形態の清掃具にも適用することができる。
また、上記実施形態では、超音波振動子として、約3MHzの超音波を発生する圧電素子162を例示して説明したが、各部の寸法その他を考慮して、適宜の周波数の超音波を用いればよい。
また、上記実施形態では、ヘッド部150は、ブラシ本体部151と、これに対して着脱、交換可能で、薬液保持筒174や毛束173を備えるブラシカップ部材171とからなるものを例示した。しかし、ヘッド部として、薬液保持筒や毛束などが着脱及び交換不能のものに本発明を適用しても良い。また、毛束は着脱、交換可能であるが、薬液保持筒は交換不能のものに本発明を適用することもできる。
110 把持部
120 頸部
150 ヘッド部
151 ブラシ本体部
161 超音波発生部
162 圧電素子(振動素子)
163 振動板
163B 板表面
163C 板裏面
164 液体層
165 フィルム
165B フィルム表面、超音波放射面
165C フィルム裏面
171 ブラシカップ部材
172 ブラシ基部
173 毛束
174 薬液保持筒(液溜め部)
174K 開口部
SL 液保持空間
Claims (3)
- 筒形状をなし、先端側が開放され、内部に第1液体を保持可能とした液溜め部と、
前記液溜め部の基端側に配置された超音波発生部であって、前記液溜め部に第1液体を保持したときにこの第1液体に接する超音波放射面を有し、この超音波放射面から超音波を放射する超音波発生部と、
を備える超音波口腔清掃具であって、
前記超音波発生部は、
電気信号により振動する振動素子と、
板表面と板裏面とを有し、この板裏面に前記振動素子が接着された振動板と、
フィルム表面とフィルム裏面とを有し、樹脂からなり、このフィルム表面が前記超音波放射面をなすフィルムと、
前記振動板の板表面と前記フィルムのフィルム裏面との間に保持され、第2液体からなる液体層と、
を含み、
前記振動板は、
樹脂からなり、
この振動板における超音波振動の波長をλsとし、nを4以上の自然数としたとき、
nλs/2の厚さを有する
超音波口腔清掃具。 - 請求項1に記載の超音波口腔清掃具であって、
前記フィルムは、このフィルムにおける超音波振動の波長をλfとしたとき、λf/8以下の厚さを有する
超音波口腔清掃具。 - 請求項1または請求項2に記載の超音波口腔清掃具であって、
前記振動板の板表面は、平面をなし、
前記フィルムのフィルム裏面は、曲面をなす、または、前記振動板の板表面に対し平行でない平面をなす
超音波口腔清掃具。
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