JP4565138B2 - 酒類及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は清酒、焼酎又はみりん及びそれらの製造方法に関する。更に詳細には米の風味が生き、香りの整った軽快でのど越し感の良い清酒若しくは焼酎、又は米の風味が生き、香りの整った上品なみりん、及びそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、酒類に関しても嗜好が多様化している。特に清酒においては、消費者の嗜好に合せた製品が開発されおり、製品も多様化している。その一つに純米酒があり、濃醇で旨味や甘味がバランス良く、濃厚感のある酒質を有する清酒として親しまれている。また、原料を焙炒して仕込む焙炒清酒が開発され、超淡麗でスッキリとした辛口な酒質を有する清酒として親しまれている。しかし、日本酒本来の米の風味が生き、香りが整い、軽快で飲みやすいという両者の特徴を具備した酒質は、どちらかへ偏より、また酒質のバランスがくずれるので実生産において得るには困難である。
焼酎に関しては、連続蒸留して得られる純アルコールに近い甲類焼酎と、穀物や芋類を用いて単式蒸留して得られる原料由来の香味を生かした本格焼酎がある。この単式蒸留を用いて製造した焼酎の製造は古く、江戸時代中期にはこの焼酎を清酒の醪へ添加した清酒の造り方があり、その製法を「柱焼酎」と呼ばれていた。近年になり、特許公報(特開昭52−94499号)において、清酒の仕込みにおいて汲水の全部あるいは一部に清酒以外の酒類(焼酎を含む)を使用して、これを発酵させる技術が開示されている。
また、焼酎の製造においては焙炒造りが開発されている。すなわち、200〜400℃の熱風で数秒〜5分間焙炒した掛原料穀物を用いた米焼酎で淡麗な酒質にする技術(特公平5−28591号)、原料の少なくとも一部を吸水させ、焙炒処理した原料を用いた米焼酎及び麦焼酎の技術(特許第2886252号)が開示されており、これらの技術により得られた焼酎は、主要香気エステル量が従来の蒸しの場合に比べて増加し、香味ともに良好で幅のある風味を有する酒質に仕上がることが示されている。
このように焙炒造りによる焼酎は、従来の本格焼酎とは差別化できる酒質が得られている。この焙炒造りによる焼酎は飲用に好適であるが、原料としての特性、すなわち清酒醪、焼酎醪への添加、みりん原料への利用は検討されていない。
また、焙炒造りの酒類へ、本格焼酎の利用も検討されていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
多様化する嗜好を背景にして、従来にない酒質を有する酒類が求められている。本発明の目的は、多様化する嗜好に対応した、新規な酒質を有する清酒、焼酎又はみりん及びそれらの製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明を概説すると、本発明の第1の発明は清酒又は焼酎よりなる酒類の製造において、醪後期のアルコール生成が終了した時点から上槽前までの醪へ焙炒米焼酎を添加する、又は少なくとも一部に焙炒原料を用いた、醪後期のアルコール生成が終了した時点から上槽前までの醪へ一部が焙炒米焼酎である焼酎を添加する酒類の製造方法に関し、第2の発明は第1の発明の製造方法で得られる新規な酒質の酒類に関する。
【0005】
本発明者らは、前記従来技術の問題点を解決するため鋭意研究を行った結果、醪へ焙炒焼酎を添加することによって、又は少なくとも一部に焙炒原料を用いた醪へ焼酎を添加することによって、米の風味が生き、香りの整った軽快でのど越し感の良い清酒又は焼酎、及び米の風味が生き、中高沸点香気成分が増強され、香りの整った軽快な顕著に酒質が向上した上品なみりんを製造するできることを見出し本発明の完成に至った。ここでいう焙炒焼酎の留出液の低沸点香気成分としては、例えばアセトアルデヒド、酢酸エチル、エタノール、n−プロパノール、i−ブタノール、酢酸i−アミル、n−ブタノール、i−アミルアルコール、カプロン酸エチル等が挙げられ、中高沸点香気成分としては、例えばヘキシルアルコール、カプリル酸エチル、ヘプチルアルコール、フルフラール、オクチルアルコール、カプリン酸エチル、コハク酸ジエチル、ラウリン酸エチル、β−フェネチルアルコール、ミリスチン酸エチル、パルミチン酸エチル等が挙げられる。
【0006】
これは焼酎、特に焙炒焼酎の香味成分と、清酒、焼酎又はみりんの醪中の成分が、麹の酵素的反応や成分間の非酵素的反応、更には酵母による作用により、新たな香味成分が生成されると共に、味なれ等の作用で新規な香味に特徴のある優れた酒質の清酒、焼酎及びみりんになることを見出したものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
酒類とは、清酒、焼酎及びみりんが挙げられる。例えば、清酒の製造は原料処理、仕込み、糖化・発酵、上槽及び精製工程よりなり、焼酎の製造は、原料処理、仕込み、糖化・発酵、蒸留及び精製工程よりなる。また、みりんの製造は原料処理、仕込み、糖化・熟成、上槽及び精製工程よりなる。
【0008】
本発明における酒類とは、清酒又は焼酎である。
【0009】
本発明における醪とは、麹及び掛原料を含むが、麹及び掛原料のそれぞれの処理は蒸気による蒸し、又は焙炒を用いることができる。蒸気による蒸し処理は特に限定はなく、常圧(100℃)及び加圧(100℃〜130℃)条件下で、蒸し時間は1分〜2時間、好ましくは5分〜1時間である。焙炒処理は特に限定はないが、焙炒焼酎の原料処理に準ずる方法でよい。また、醪には掛米原料の少なくとも一部に液化処理したものを含有してもよい。液化処理は、常法の酵素又は酸による液化及び/又は糖化を行ってもよい。
【0010】
本発明における焙炒焼酎とは、二つの特許公報(特公平5−28591号、又は特許第2886252号)記載の製造方法で調製された焼酎であれば良い。すなわち、特公平5−28591号公報に記載の掛用原料穀物のみを200〜400℃の熱風で数秒〜5分間焙炒する工程を含む製造方法により得られる焙炒焼酎、又は、特許第2886252号公報に記載の原料の少なくとも一部を吸水させ、次いで200〜400℃の熱風で数秒〜5分間焙炒処理した工程を含む製造方法により得られる焙炒焼酎である。
本発明における焼酎の原料として、穀類の米、麦、ヒエ、アワ、コーリャン、ソバ、トウモロコシ等、穀物以外にも地下茎、イモ類、例えばサツマイモ、ジャガイモ、タロイモ等、また焼酎の原料となるその他のものの利用も可能である。
しかしながら、本発明における焙炒焼酎について、その原料としては米を用いることが好ましく、更に本格焼酎であればより好ましい。米本来のふくよかな香味が増強され、コクのある旨み、飲みやすさが得られる。また、焙炒米焼酎を製造するに際の発酵温度は特に限定はないが、低温発酵が好ましい。
【0011】
したがって、焙炒処理した原料を用いる組合せとして、▲1▼焙炒掛米、▲2▼焙炒した原料を用いた麹、▲3▼蒸し掛米、▲4▼蒸した原料を用いた麹、▲5▼焙炒焼酎、▲6▼通常の焼酎で表すと、原料の組合せとして、A:▲1▼▲2▼▲5▼、B:▲1▼▲4▼▲5▼、C:▲3▼▲2▼▲5▼、D:▲3▼▲4▼▲5▼、E:▲1▼▲2▼▲6▼、F:▲1▼▲4▼▲6▼、G:▲3▼▲2▼▲6▼の7通りがあり、7通りのそれぞれ単独、及び7通りを組合せてもよい。いずれも焙炒原料を用いた特徴を有する酒類に仕上る。
【0012】
検討例として、米焼酎を焙炒米と蒸米の両方で造り、比較を行った。
【0013】
(検討例1)
75%精米歩合のウルチ米を水分30%になるよう吸水させた後、250℃で45秒間焙炒した焙炒米を掛米として用いた。対照としては、焙炒せず通常の方法で蒸米を調製して掛米として用いた。麹米は蒸米を用い焼酎麹菌を使用して調製した。表1に仕込配合を示す。
【0014】
【表1】
【0015】
上記仕込配合の一次仕込時に焼酎酵母を添加し、30℃で7日間発酵を行い、更に二次仕込で焙炒米を用いて常法通り発酵させた。得られた発酵醪の成分分析値と、それらを減圧ポットスチルで蒸留した低中高沸点香気成分の豊富な中留区分を25%(v/v)アルコール濃度に調整した留液の香気エステル及び官能評価の結果を表2に示す。官能評価はパネラー10名で行い、三段階(1:良、2:並、3:不良)で評価した平均値を示す。
【0016】
【表2】
【0017】
表2に示すごとく、焙炒を行ったものは、対照の蒸米に比べて発酵醪を蒸留して得られたアルコール収得量が向上した。また、留液においては、主要香気エステルが対照より増加し、官能検査の結果も米の風味が強くエステル香の優れた幅のある焼酎に仕上った。したがって、この優れた酒質を有する焙炒焼酎と清酒やみりんの醪と組合せることにより新規の酒質を有する清酒やみりんが得られるのではないかと考えた。
【0018】
本発明で用いる焙炒焼酎は、特に限定はない。しかし、清酒及びみりんが米を原料としており、米由来の風味を清酒及びみりんの製品に醸し出すには、米由来の香味成分そのもの、又は先駆体が醪中の反応過程で必要となるので焙炒米焼酎が好ましい。本格米焼酎は掛米と麹米よりなるが、焙炒米焼酎は少なくとも一部の原料を焙炒したものであれば良い。また、使用する麹菌及び酵母は特に限定はないが、米の風味を強調する点から黄麹菌及び清酒用酵母が香味の点から好ましい。
【0019】
本発明における清酒醪の種類は、特に限定はないが純米酒醪が好適である。また、醪の発酵温度も特に限定はないが、低温発酵、例えば10℃〜15℃の発酵が好ましい。
【0020】
本発明における清酒醪、焼酎醪及びみりん醪への焙炒焼酎の添加量は、酒税法に準じる範囲内で行えば良く、醪中の成分の生成、香味や風味の調整を目的によって適宜選択することができる。例えば、使用する原料としてのアルコールや従来の焼酎の少なくとも一部に用いれば良く、香味のバランスを考慮して適宜選択することができる。また、必要に応じて焙炒焼酎はアルコール濃度45%(v/v)以下で適当に希釈して使用することもできる。また、添加時期は特に限定はないが、清酒醪の場合には、醪初期及び中期に焙炒焼酎を添加すると、アルコール濃度の上昇を生じて酵母の発酵を抑制するので、醪後期のアルコール生成が終了した時点から上槽前までの添加が好ましい。みりん醪の場合については添加時期は特に限定はない。
【0021】
本発明において、少なくとも一部に焙炒原料を用いた醪へ添加する焼酎とは、アルコール含有物を蒸留したものであれば特に限定はなく、例えば連続式蒸留機で蒸留した醸造用アルコールや、単式蒸留機で蒸留した本格焼酎などがある。特に醪が米を主原料としていれば、添加する焼酎も米を原料としたものを用いることが好ましい。例えば、醸造用の米アルコールや本格焼酎の中の米焼酎などを用いると、焙炒醪の風味が生きた上、味がよくなじみ、味の幅を広げることができる。更に、添加する焼酎の原料として焙炒処理した米を少なくとも一部に用いることがより好ましい。
【0022】
清酒中に存在する溶存酸素は、清酒保存中に老香などの好ましくない香りや味などの品質劣化成分等を生成するので、清酒の品質保持のためにも溶存酸素の低減が求められるものであり、溶存酸素を制限することが望ましい。通常の清酒において、容器に充てん時に火入れを行わない場合、平衡状態になった清酒中の溶存酸素は7〜8ppm前後であるが、常温長期流通時の品質保持の面からは1.1〜4.0ppmが好ましい。また、容器に充てん時に火入れを行った場合の清酒の溶存酸素濃度は3.5〜4.0ppm前後であるが、清酒中の溶存酸素濃度を1.1〜2.9ppmの範囲にすると官能評価が良かった。
【0023】
本発明における溶存酸素を低減させる方法とは、通常の清酒の製造方法、例えば、原料処理、仕込み、糖化・発酵、上槽、精製及び容器充てん工程において、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスによる溶存酸素の置換が行えればよく、特に限定はない。例えば、インラインミキサーを用いた連続的な流れの中で不活性ガスを混合して溶存酸素を低減させても良い。
【0024】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0025】
実施例1
まず、焙炒米焼酎を調製した。精米歩合75%の粳白米を用い、吸水させ、30%含水量とした吸水米を295℃、45秒焙炒処理した焙炒米を仕込みの掛米として用いた。麹は通常の蒸し米を用いて、常法に従って清酒用黄麹菌を用いて調製した麹を用いた。表3に示す仕込配合にて総米600kgの三段仕込による方法にて行った。酵母はK−701を用い、発酵は留後5日目より最高品温が15℃となるようにし、留後13日目より降温し、留後18日目で減圧ポットスチルで蒸留して中留区分を得て、これを冷却ろ過して焙炒米焼酎を得た。
【0026】
【表3】
【0027】
得られた焙炒米焼酎を、25%(v/v)アルコール濃度になるように調製した。成分分析結果を表4に示した。
【0028】
【表4】
【0029】
表4より、焙炒米焼酎は、米由来の香りや香気成分、全体にバランスが良く、また吟醸香として知られる酢酸イソアミル、カプロン酸エチルも多い良質な焼酎が得られた。ここでいう米由来の香りとは、米中のタンパク質がアミノ酸にまで酵素分解され、更にイソアミルアルコールやブチルアルコール等に変換されたものであり、また、米脂質は、麹や酵母によって脂肪酸エステル、例えば、カプロン酸エチルに変換されたものをいう。
【0030】
次に焙炒米焼酎、粕取焼酎、通常方法で製造された米焼酎(減圧)、通常方法で製造された麦焼酎、及び醸造アルコール(対照)を用いて、通常の糖化・発酵を終了した純米酒の同一醪を1リットルずつに分け、その中へアルコール濃度40%(v/v)に調製した前記の各焼酎や醸造アルコール300mlをそれぞれ添加し、充分混合、かくはんした後、上槽して搾汁と粕に分離した。搾汁は常法通り、火入れ、活性炭処理、滓下げして精製ろ過した後、割水してアルコール濃度を15%(w/w)に調製して官能評価した。官能評価はパネラー10名で行い、三段階(1:良、2:並、3:不良)で評価した平均値1.0〜1.5未満を◎、1.5〜2.0未満を○、2.0〜2.5未満を△、2.5〜3.0を×で示した。その結果を表5に示す。
【0031】
【表5】
【0032】
表5の結果より、各種の従来の焼酎を用いた場合には、焼酎の有するクセのある香味が清酒に適合せず、相性の悪いことがわかる。また、米焼酎(減圧)はなじみが良すぎて特徴がわかりづらいという評価であった。一方、焙炒米焼酎は米由来の香りが清酒に適合し、飲みやすく軽快な感じがするとの評価であり、評価値も最も優れていた。
【0033】
実施例2
次に焙炒米焼酎の添加量については、使用原料の総米1トン当りの100%(v/v)アルコールリットル数の比の120リットル/トン及び280リットル/トンの二水準について比較した。通常の糖化・発酵を終了した醪1リットルを用い、上記の条件に適合するように焙炒米焼酎を添加し、添加後は、実施例1と同様な処理を行い、割水してアルコール濃度を15%(v/v)に調整して実施例1と同様な方法で官能評価を行った。
【0034】
官能評価の結果、焙炒米焼酎の添加量は、120リットル/トン相当では、風味がやや弱く、スッキリして物足りなく醸造アルコールを用いた従来品と差別化できないが、280リットル/トン相当では、米由来の香りが適当量で生き生きした感じがし、飲みやすく軽快であった。
【0035】
実施例3
焙炒米焼酎を用いた清酒を試醸した。精米歩合70%の精白米を用い、表6に示す仕込配合にて、焙炒米焼酎を用いる総米62.8kgで、掛米が蒸米及び蒸米を用いた麹を使用して清酒を製造した。焙炒米焼酎の添加量は、総米1トン当り280リットル(100%換算アルコール)であった。
【0036】
【表6】
【0037】
表6の仕込配合に示すように、酵母はK−701を用い、発酵は13日目より最高品温が15℃となるようにし、留後13日目より降温し、留後発酵が停止し、アルコール生成を生じなくなった時点で40%(v/v)アルコール濃度に調整した焙炒米焼酎を添加して、更に追水を追加し、混合、充分にかくはんして均一にした後上槽した。上槽により得られた清酒は、常法に従い、火入れ、活性炭処理、滓下げしろ過後、割水して製品を得た。一般的な分析値を表7に示す。
【0038】
【表7】
【0039】
得られた清酒は、米の風味が生き、香りの整った軽快でのど越し感の良いという官能評価を得て、実施例1の結果と同様な結果が再確認された。また、得られた清酒の香り成分について一般的な市販清酒を対照として比較分析した。表8にその結果を示す。
【0040】
【表8】
【0041】
表8の結果より、米の風味が生き、香りの整った軽快さを有する本発明の清酒は、低沸点香気成分値からも対照と比べ、全体にエステル、アルコール類が増強されており、いずれも米由来で清酒の風味を向上させる成分である。特に酢酸イソアミルやカプロン酸エチルの含量もバランス良く増加しているので、香り立ちの面からも優れているものである。
【0042】
実施例4
焙炒米焼酎を用いた清酒を試醸した。精米歩合70%の精白米を用い、表6に示す仕込配合にて、焙炒米焼酎を用いる総米62.8kgで、掛米が焙炒(実施例1と同様の処理後、295℃、45秒)及び蒸米を用いた麹を使用して清酒を製造した。焙炒米焼酎の添加量は、総米1トン当り280リットル(100%換算アルコール)であった。
【0043】
【表9】
【0044】
表9の仕込配合に示すように、酵母はK−701を用い、発酵は13日目より最高品温が15℃となるようにし、留後13日目より降温し、留後発酵が停止し、アルコール生成を生じなくなった時点で40%(v/v)アルコール濃度に調整した焙炒米焼酎を添加して、更に追水を追加し、混合、充分にかくはんして均一にした後上槽した。上槽により得られた清酒は、常法に従い、火入れ、活性炭処理、滓下げしろ過後、割水して製品を得た。一般的な分析値を表10に示す。
【0045】
【表10】
【0046】
得られた清酒は、米の風味が生き、香りの整った淡麗辛口でスッキリとしたのど越し感の良いという官能評価を得た。焙炒清酒の特徴を持ち、辛口傾向で香りの整った酒質に仕上った。
【0047】
実施例5
実施例4の焙炒米焼酎を通常の米焼酎におきかえて清酒を試醸した。精米歩合70%の精白米を用い、表11に示す仕込配合にて、減圧して蒸留した米焼酎を用いる総米62.8kgで、掛米が焙炒(実施例1と同様の処理後、295℃、45秒)及び蒸米を用いた麹を使用して清酒を製造した。米焼酎の添加量は、総米1トン当り280リットル(100%換算アルコール)であった。
【0048】
【表11】
【0049】
表11の仕込配合に示すように、酵母はK−701を用い、発酵は13日目より最高品温が15℃となるようにし、留後13日目より降温し、留後発酵が停止し、アルコール生成を生じなくなった時点で40%(v/v)アルコール濃度に調整した米焼酎を添加して、更に追水を追加し、混合、充分にかくはんして均一にした後上槽した。上槽により得られた清酒は、常法に従い、火入れ、活性炭処理、滓下げしろ過後、割水して製品を得た。一般成分の分析値を表12に示す。
【0050】
【表12】
【0051】
得られた清酒は、米の風味が生き、淡麗辛口でスッキリしたのど越し感の良いという官能評価を得た。焙炒清酒の特徴を持ち、更に辛口傾向で米の風味の生きた酒質に仕上った。
【0052】
実施例6
実施例3と同様な方法にて試醸して得られた搾汁は、インラインミキサー〔商品名:ノリタケスタティックミキサー、(株)ノリタケカンパニーリミテド製、サニタリー配管内径3インチ、4ユニット〕を用いて窒素ガスと混合し溶存酸素濃度を低減した。なお、容器に充てん後の溶存酸素濃度が0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0及び4.5ppmになるよう行った。清酒流量は10リットル/分、窒素ガス流量は2.3リットル/分(ガスの体積は0℃、1気圧の値)にて行った。その後容器に移しヘッドスペースを窒素置換させた後、打栓して製品を得た。なお、インラインミキサー以降のライン(受けタンク、充てん機)も窒素置換をしておいた。対照として溶存酸素を低減させずに充てん及び打栓したものを対照製品とした。得られた該製品を30℃、6ヵ月間保存して官能評価を行った。その結果、容器内の溶存酸素濃度が0.5、1.0では、味が渋く感じられ品質面で劣り、また4.5ppmの製品は、対照製品(容器内の溶存酸素濃度が8.0ppm)と同等に老香等の劣化臭を感じ、品質保持の面では、溶存酸素濃度が1.1〜4.0ppmの範囲の製品と比べて品質保持の面で劣る。したがって、容器に充てん後、平衡状態になった清酒の溶存酸素濃度は、1.1〜4.0ppmの範囲が適切であった。
【0053】
実施例7
実施例4の焙炒米の清酒醪を用い、焙炒米焼酎を米アルコールにおきかえて清酒を試醸した。表13に示す仕込配合にて、連続蒸留で得られた米アルコールを用い、総米62.8kgで、掛米が焙炒(実施例1と同様の処理後、295℃、45秒)及び蒸米を用いた麹を使用して清酒を製造した。米アルコールの添加量は、総米1トン当り280リットル(100%換算アルコール)であった。
【0054】
【表13】
【0055】
製造方法は実施例5と同様に行った。醪に40%(v/v)アルコール濃度に調整した米アルコールを添加して、更に追水を追加し、混合、充分にかくはんして均一にした後上槽した。上槽により得られた清酒は、常法に従い、火入れ、活性炭処理、滓下げしろ過後、割水して製品を得た。一般成分の分析値を表14に示す。
【0056】
【表14】
【0057】
得られた清酒は、焙炒清酒の特徴を持ち、米の風味が生き、淡麗辛口でありながら味の幅が広がっているという良好な官能評価を得た。
【0058】
実施例8
検討例1で調製した焙炒米焼酎(アルコール濃度42%(v/v))を用いて、みりんの製造を行った。蒸糯米は、精米歩合85%の糯白米を、常温で井水浸漬を24時間行い、水切り後、加圧条件下ゲージ圧1.2kg/cm2(123℃)で20分間蒸したものを用いた。米麹用の蒸米は精米歩合85%の粳白米を糯白米の場合と同様にして、浸漬、水切り後、常圧100℃で20分間蒸した。
得られた蒸粳米は放冷後、みりん用種もやし(黄麹菌の胞子)を蒸糯米重量当り0.1%(w/w)接種して種付けを行った。製麹は、相対温度90〜100%の条件下で30〜40℃の温度管理下で46時間静置培養して米麹を得た。表15にみりんの仕込配合を示す。
【0059】
【表15】
【0060】
表15に示す仕込配合で、蒸糯米、米麹、及び原料アルコール又は焙炒米焼酎を混合して醪とした。時々、3〜5日間隔でかくはんした。この醪を30℃で糖化・熟成を行った。30日間の糖化・熟成後、試験室の小型圧搾機を用いて固液分離し、搾汁と粕を得た。
【0061】
得られた搾汁は、常法に従い、火入れ75℃、30秒の加熱処理後、滓下げを行った。滓下げは柿渋(ボーメ12、10ml/kg搾汁)及び滓下げ剤(植物性タンパク質の活性グルテン主体)(1.9g/kg搾汁)で行い、凝集沈殿させた3日後、上澄液をろ紙ろ過して清澄なみりんを得た。表16には得られたみりんの一般成分値を示す。
【0062】
【表16】
【0063】
表16に示すごとく、焙炒米焼酎を使用した本発明品は、醸造用アルコールを使用した対照と比較してみると、みりん収率及び、全糖、直糖、全窒素、アミノ態窒素、アルコール分、酸度の分析値はほぼ同水準の値を示し、使用アルコールの種類による差異は認められなかった。
【0064】
次に、官能評価を検討例1の場合と同様にして、パネラー15名にて行った。
官能評価(パネラー15名の平均値)の結果を表17に示す。
【0065】
【表17】
【0066】
表17の結果から、対照のみりんに比べ、香りと味のバランスが良くなり、新規で上品な米由来の風味が付与されているとの評価であった。全体のアルコール使用量に対して、25〜50%の焙炒米焼酎を使用したものが最も好まれた。つまり、焙炒米焼酎を用いると、みりん特有の濃厚感のある香りに加え、米由来の香気が増強され香りに幅と奥行きがでた上品なみりんが得られた。
【0067】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の、醪後期のアルコール生成が終了した時点から上槽前までの清酒醪又は焼酎醪中に焙炒米焼酎を添加して、又は少なくとも一部に焙炒原料を用いた、醪後期のアルコール生成が終了した時点から上槽前までの醪へ一部が焙炒米焼酎である焼酎を添加して清酒又は焼酎を製造することにより、従来にない米由来の風味が生き、香りが整った軽快で飲みやすい新規な品質の清酒及び焼酎を提供することができる。
Claims (4)
- 清酒又は焼酎よりなる酒類の製造において、醪後期のアルコール生成が終了した時点から上槽前までの醪へ焙炒米焼酎を添加することを特徴とする酒類の製造方法。
- 清酒又は焼酎よりなる酒類の製造において、少なくとも一部に焙炒原料を用いた、醪後期のアルコール生成が終了した時点から上槽前までの醪へ一部が焙炒米焼酎である焼酎を添加することを特徴とする酒類の製造方法。
- 清酒又は焼酎よりなる酒類において、請求項1に記載の製造方法を用いることにより得られる酒類。
- 清酒又は焼酎よりなる酒類において、請求項2に記載の製造方法を用いることにより得られる酒類。
Priority Applications (1)
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