JP4564192B2 - 可変速制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、原動機と軸結合した巻線形誘導機の一次側を系統に接続し、二次側に周波数変換器を接続してなる可変速システムを制御する可変速制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の可変速発電システムの制御装置としては、図56に示すような構成例のものがある。
【0003】
図56において、1は原動機5の回転軸に直結された巻線形誘導機で、この巻線形誘導機1の一次側は発電機側遮断器2、主変圧器3を介して図示していない系統へ接続され、また巻線形誘導機1の二次側は周波数変換器4を介して発電機側遮断器2の出力側電路に接続されている。
【0004】
ここで、上記周波数変換器4はサイクロコンバータ、インバータなど半導体を用いた変換器が用いられ、また原動機5は水車、ポンプ水車、タービン、風車などが用いられる。
【0005】
また、主変圧器3は電圧調整用のタップが設けられており、図示していないがタップ切替制御装置で制御され、原動機5はその機械的入/出力が原動機制御装置6で制御されるようになっている。
【0006】
一方、16は発電機側遮断器2の出力側電路に接続された電圧検出器12により検出された電圧が入力される周波数検出器、17は同じく発電機側遮断器2の出力側電路に接続された有効電力検出器、10はこの有効電力検出器17で検出された有効電力と周波数検出器16で検出された周波数とが入力され、出力信号を原動機制御装置6に入力する有効電力制御器である。
【0007】
また、8は巻線形誘導機1の回転軸に取付けられた速度検出器15より出力される速度信号及び有効電力制御器10の出力信号がそれぞれ入力される速度制御器、11は電圧検出器12により検出された電圧が入力される電圧制御器である。
【0008】
さらに、7は速度制御器8及び電圧制御器11の出力信号、周波数変換器4と巻線形誘導機1の二次側とを結ぶ電路に設けられた電流検出器14からの電流検出信号及び電圧検出器12からの電圧検出信号、巻線形誘導機1の回転軸に取付けられた位相検出器13からの位相検出信号がそれぞれ入力され、その出力信号を周波数変換器4に与える周波数変換器電流制御装置である。
【0009】
上記周波数変換器電流制御装置7は、図57に示すように位相基準演算器71、有効分/無効分演算器72、減算器73,75、制御器74,76、出力電圧演算器77、三角波発生器78、ゲートパルス発生器79、アンド回路7Aで構成される。
【0010】
ここで、上記位相基準演算器71は、電圧検出器12からの系統電圧vLと位相検出器13からの回転位相θRとから変換器電流位相基準θI0を演算する。
有効分/無効分演算器72は、電流検出器14からの電流と変換器電流位相基準θI0とから有効分電流Iq、無効分電流Idを演算する。減算器73は、速度制御器8からの有効分電流指令値Iq*と有効分電流Iqとの偏差を求め、その偏差を制御器74に入力する。同様に減算器75は、電圧制御器11からの無効分電流指令値Id*と無効分電流Idとの偏差を求め、その偏差を制御器76に入力する。出力電圧演算器77は、制御器74の出力である有効分出力電圧Vq*と制御器76の出力である無効分出力電圧Vd*と変換器電流位相基準θI0から出力電圧vIを演算する。三角波発生器78は発振周波数OSCにもとずいて三角波CRYを発生する。ゲートパルス発生器79は、出力電圧vIと三角波CRYの交点から決まるタイミングで、アンド回路7Aを介してゲートパルスを周波数変換器4に出力する。アンド回路7Aはゲートブロック(GB)信号が入力されると、ゲートパルスをブロックして変換器を停止する。
【0011】
上記速度制御器8は、図58に示すように減算器81、制御器82で構成される。
【0012】
ここで、減算器81は、有効電力制御器10からの速度目標値ω0 *を速度指令値ω*とし、速度検出器15からの速度ωとの偏差を求めて制御器82に入力する。制御器82は、減算器81で求められた偏差が入力されると、出力8aを有効分電流指令値Iq*として周波数変換器電流制御装置7に出力する。
【0013】
上記有効電力制御器10は、図59に示すように減算器101、調定率演算器102と、制限器103、加算器104と減算器105、制御器106と最適開度演算器107で構成される。
【0014】
ここで、減算器101は、基準周波数f0と周波数検出器16により検出された系統周波数fLとから系統周波数変動Δfを求める。調定率演算器102は、系統周波数変動分Δfとそれに応じて変動すべき有効電力10aの比率を決めるものである。制限器103は、図示していない中央給電所からの自動周波数制御(AFC)信号PAFCが入力され、信号範囲と変化速度を制限する。加算器104は、変動すべき有効電力10aとAFC信号PAFCと有効電力設定値PSから有効電力目標値10dを求めている。制御器106は、減算器105の出力である有効電力目標値10dと有効電力Pの偏差10eが入力され、この偏差10eが零になるように速度目標値ω0 *を求めて、速度制御器8に出力する。また、最適開度演算器104は、落差Hと有効電力目標値10dとから原動機の機械的入/出力をきめる制御弁開度目標値CV0 *を求めて、原動機制御装置6に出力する。
【0015】
上記電圧制御器11は、図60に示すように減算器111、制御器112で構成される。
【0016】
ここで、減算器111は、電圧指令値VSと電圧検出器12からの系統電圧vLとの偏差を求め、制御器112に入力する。また、制御器112は、減算器111から偏差が入力されると、出力信号として無効分電流指令値Id*を周波数変換器電流制御装置7に出力する。
【0017】
以上の構成で、有効電力設定値PSに応じた有効電力を系統と授受している。
そのためには巻線形誘導機1の一次側周波数が系統周波数と同期していていなければならない。従って、周波数変換器4の周波数は系統周波数と巻線形誘導機1の速度との差に応じて制御されている。
【0018】
なお、本システムでは、速度ωと周波数fは巻線形誘導機1の極数で決まる一対一の関係が有り、pu値で表現すると同一の値となる。従って、以下は周波数と速度を同一の量として扱い、系統周波数fLと同期速度ωSYNは同一量として扱う。
【0019】
また、すべり周波数Sは次のように定義する。
【0020】
S=ω−ωSYN=ω−fL
ところで、基準周波数から決まる基準同期速度ωSYN0からの速度差(ω−ωSYN0)をすべり速度、またはすべり周波数と仮称することもあるが、混乱を防ぐため、ここでは(ω−ωSYN0)を近似すべり周波数S´と仮称して、すべり周波数Sと区別する。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
巻線形誘導機1の速度ωが一定の変化率で同期速度ωSYNを通過した場合には、周波数変換器に流れる電流(以下変換器電流と称する)は図61に示すようになる。但し、電流振幅は一定とし、一相分の電流分を示す一例である。(以下R相電流として説明する。)
図61に示すように、変換器電流の周波数fIは速度ωと系統周波数fLとの差、即ちすべり周波数Sとなり、電流位相はすべり周波数を積分した値となる。
【0022】
ところで、周波数変換器を構成する素子は、一方向にしか電流を流せないので、R相の正側電流を流す素子(R相正側素子と称する)は図61のハッチングで示す正の半波を流すことになる。R相正側素子はすべり周波数によって、連続して通電する時間幅が変化し、同期速度付近では導通時間が長くなる。
【0023】
従って、同期速度を通過する可変速揚水発電システムに用いられる周波数変換器は、定格電流を連続通電できるように設計する必要があり、電流容量が大きくなってしまう問題がある。
【0024】
そこで、設置スペースや経済性から変換器容量を必要以上に大きくしないために、変換器電流の周波数fIに下限周波数fBNDを設けて、下限周波数fBND以下での運転を避けるように工夫している。即ち、−fBNDからfBNDを禁止帯として、変換器電流の周波数fIが禁止帯の中での運転になることを避けている。以下ではfBNDを禁止帯幅とも称す。
【0025】
従来は、変換器電流の周波数fIの禁止帯を速度の禁止帯に置き換えて、上記を実現している。即ち、禁止帯下限速度ω´Lと禁止帯上限速度ω´Uを、基準同期速度ωSYN0と禁止帯幅fBNDから(1)式のように決め、ω´Lからω´U迄の間の速度域を速度禁止帯としている。
【0026】
ω´L=ωSYN0−fBND、 ω´U=ωSYN0+fBND(1)
そして、速度禁止帯での運転をしないようにすることで、変換器電流の周波数fIが禁止帯内の値にならないようにしている。これにより、周波数変換器は下限周波数fBNDで決まる通電時間で設計できるので、周波数変換器の電流容量の低減が可能となる(特許公報第2851490号,特開平9−37596号公報参照)。
【0027】
従来の方式を図62に示す。図62は図56に示す構成に対して、有効電力制御器10と速度制御器8との間に速度禁止帯回避制御器9を追加したもので、それ以外は図56の構成と同じである。
【0028】
上記速度禁止帯回避制御器9は、図63に示すようにヒステリシス関数手段91と変化率制限器92とで構成される。
【0029】
ここで、ヒステリシス関数手段91は、有効電力制御器10からの速度目標値ω0 *が入力されると、ヒステリシス関数手段91の出力9aを変化率制限器92に入力する。変化率制限器92は出力9bを速度指令値ω*として速度制御器8に出力する。なお、ヒステリシス関数手段91の入力ω0 *と出力91aの関係は図64に示される。即ち、ω0 *が増加する場合は、
ω0 *<ω´Lまたはω´U<ω0 * では ω*=ω0 *,
ω´L≦ω0 *≦ω´U では ω*=ω´L
また、ω0 *が減少する場合は、
ω0 *<ω´Lまたはω´U<ω0 * では ω*=ω0 *,
ω´L≦ω0 *≦ω´U では ω*=ω´U
従来の方法による速度指令値の特性を図65に示す。速度目標値ω0 *が時刻t1から時刻t2迄かかって速度禁止帯を通過しても、速度指令値ω*は時刻t2迄禁止帯下減速度で待機して、時刻t2から時刻t3の短時間に禁止帯を通過する。
【0030】
以上のように、従来は速度目標値が速度禁止帯内に入らないようにすることで、変換器電流の周波数fIが禁止帯に入る運転を避けていた。しかし、速度目標値が速度禁止帯に入っていなにもかかわらず、系統周波数の変動により変換器の周波数fIが下限周波数fBND以下になり、変換器の素子を破損する恐れがあった。例えば、速度目標値ω0 *と速度指令値ω*は図65のように制御されている時に、系統周波数が変動して基準周波数、即ち基準同期速度からΔf低下した場合は、近似すべりS´はfBNDであるが、すべりSは−(fBND−Δf)となる。変換器の周波数fIは、すべりSに等しいので、下限周波数fBNDよりも小さくなり、素子を破壊する恐れがある。
【0031】
また、禁止帯通過時変換器電流を絞り込んで禁止帯通過時の素子の負担を軽減することが提案されている(特許公報第2851490号)が、電流を絞り込むことで禁止帯通過時間が延びて、逆に素子の負担を大きくして素子を破損する恐れがある。
【0032】
本発明は上記のような事情に鑑みなされたもので、素子にとって過酷な運転状態になった場合には、素子の負担を軽減することを第1の目的とし、また周波数変換器の容量を大きくすることなく、系統周波数が変動しても変換器の素子の破損を避けることを可能にすることを第2の目的とし、さらに禁止帯通過時の素子の負担を軽くすることを第3の目的とする可変速制御装置を提供することにある。
【0033】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の目的を達成するため、次のような手段により可変速制御装置を構成するものである。
【0034】
請求項1に対応する発明は、原動機と軸結合した巻線形誘導機の一次側を主変圧器、発電機側遮断器を介して系統に接続し、二次側に電流制御装置により制御される周波数変換器を接続してなる可変速システムを制御する可変速制御装置において、前記周波数変換器の素子が熱的に厳しい状態にあることを検出すると停止信号を出力して前記周波数変換器を停止させる素子異常検出手段を具備し、前記素子異常検出手段は、各素子の放熱フィンの温度を検出する温度検出器と、周波数変換器を冷却する冷却水の温度検出器と、素子の放熱フィンの温度と冷却水の温度とから各素子の温度を推定する温度推定器と、各素子の温度推定値と規定値とを各々比較する比較器と、いずれかの素子の温度推定値が規定値を超えると前記周波数変換器に停止信号を出力するオア回路とで構成される。
【0035】
ここで、上記素子異常検出手段は、周波数変換器の素子の温度が所定値を超えたことを条件とすることで素子の異常を検出できる。
【0040】
請求項2に対応する発明は、原動機と軸結合した巻線形誘導機の一次側を主変圧器、発電機側遮断器を介して系統に接続し、二次側に電流制御装置により制御される自励式周波数変換器を接続してなる可変速システムを制御する可変速制御装置において、前記自励式周波数変換器の素子が熱的に厳しい状態にあることを検出すると停止信号を出力して前記自励式周波数変換器を停止させる素子異常検出手段を具備し、前記素子異常検出手段は、変換器電流制御装置より出力され、且つ変換器電流が正側のときのゲートパルスおよび変換器電流が負側のときのゲートパルスをそれぞれ計数し、その各半波毎のゲートパルス数の積算値により前記素子異常を検出して前記自励式周波数変換器に停止信号を出力する正側および負側ゲートパルス数カウンタとで構成される。
【0058】
ここで、上記周波数変換器の制御状態変更手段は、禁止帯通過時にはゲートパルスを低減するゲートパルス数低減手段で構成できる。この場合、ゲートパルス数低減手段としては、周波数分周期器とキャリア周波数選択回路とで構成してもよく、また次のような周波数変換器の出力電圧を修正する出力電圧修正手段で構成してもよい。すなわち、周波数変換器の出力電圧修正手段を、周波数変換器電流制御装置の出力電圧演算器とゲートパルス発生器のと間に不感帯を挿入してもよく、また変換器電流最大相のゲートパルスを低減するようにバイアスを加えるようにしてもよい。
【0059】
さらに、上記周波数変換器の制御状態変更手段は、自励式周波数変換器の直流リンク電圧を高める直流リンク電圧修正手段で構成して、禁止帯通過時の変換器電流を低減することにより周波数変換器の素子の破損を回避できる。
【0071】
請求項3に対応する発明は、原動機と軸結合した巻線形誘導機の一次側を主変圧器、発電機側遮断器を介して系統に接続し、二次側に電流制御装置により制御される周波数変換器を接続してなる可変速システムを制御する可変速制御装置において、速度目標値が系統周波数と禁止帯幅から決まる速度禁止帯に入らないように速度目標値を修正する速度目標値修正手段とこの速度目標値修正手段により修正された速度目標値から速度指令値を演算する手段とからなる速度禁止帯回避制御器と、速度目標値が速度禁止帯に入ると速度目標値の変動分を抑制する変動抑制手段とを具備する。
【0072】
ここで、上記変動抑制手段として、ガバナフリーロック手段で構成し、速度目標値が速度禁止帯に入ると速度目標値に含まれるガバナフリー制御成分よる変動を除去することにより、速度目標値が速度禁止帯内に入る頻度を軽減できる。
【0073】
また、変動抑制手段として、AFCロック手段で構成し、速度目標値が速度禁止帯に入ると速度目標値に含まれるAFC制御成分よる変動を除去することにより、速度目標値が速度禁止帯内に入る頻度を軽減できる。
【0074】
さらに、変動抑制手段として、ローパスフィルタで構成し、速度目標値が速度禁止帯に入ると速度目標値に含まれる速い変動を除去することにより、速度目標値が速度禁止帯内に入る頻度を軽減できる。
【0079】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0080】
図1は本発明による可変速制御装置の第1の実施の形態を示す回路構成図で、図56と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分について述べる。
【0081】
第1の実施の形態では、図1に示すように周波数変換器4の素子が熱的に厳しい状態にあることを検出する素子異常検出手段21を設け、この素子異常検出手段21により周波数変換器4の素子の異常が検出されると周波数変換器電流制御装置7に素子異常検出信号21aとして変換器停止信号(GB)を入力するようにしたものである。
【0082】
このような構成の可変速制御装置とすれば、素子異常検出手段21により周波数変換器4の素子が熱的に厳しい状態にあることを検出すると、この素子異常検出手段21は素子異常検出信号21aを変換器停止信号GBとして、周波数変換器電流制御装置7に入力することで、周波数変換器4を停止する。
【0083】
従って、周波数変換器4の素子が熱的に厳しい状態にあることを素子異常検出手段21により検出されると、周波数変換器4が停止するので、周波数変換器4の素子の破損を回避することができる。
【0084】
ここで、上記素子異常検出手段21として素子温度異常検出装置を用いた場合の具体例について説明する。
【0085】
図2は素子温度異常検出装置の第1の具体例を示す回路構成図である。
【0086】
図2に示す素子温度異常検出装置23において、231−1〜231−nはn個の素子の放熱フィンに埋め込まれたn個の温度検出器、232は冷却水の温度検出器、233−1〜233−nはフィン温度と冷却水の温度から素子接合部の温度を推定するn個の温度推定器、234−1〜234−nはn個の比較器、235はオア回路である。
【0087】
このような構成の素子温度異常検出装置23において、温度推定器233−1はNo.1のフィン温度TF−1と冷却水の温度TWから(2)式によりNo.1の素子の接合部温度TJ−1を推定する。
【0088】
TJ−1=TF−1+RJF(TF−1−TW)/RF (2)
ただし、RJFは素子接合部からフィンまでの熱抵抗、RFはフィンの熱抵抗である。
【0089】
比較器234−1は、接合部温度TJ−1が規定値を越えると温度異常信号23aを出力する。
【0090】
以上はNo1の温度検出について説明したが、他の温度検出についても同様である。オア回路235はいずれかの温度検出信号が規定値を超えていると、変換器停止信号23bを周波数変換器電流制御装置7に入力することで、周波数変換器4を停止する。なお、接合部の温度の規定値は、素子に劣化を残すことなく使用できる上限温度で、一般には125°Cの値を用いる。
【0091】
従って、このような構成の素子温度異常検出装置23を備えた可変速制御装置によれば、周波数変換器のいずれかの素子の接合部温度が規定値を越えた場合は変換器が停止するので、周波数変換器の素子の破損を回避することができる。
【0092】
図3は素子素子温度異常検出装置の第2の具体例を示す回路構成図である。
【0093】
図3に示す素子温度異常検出装置24において、241−R〜241−Tは各相の素子の損失推定器で、これら各損失推定器241−R〜241−Tは、変換器電流検出器14で検出された三相瞬時値電流iI−R〜iI−Tと周波数変換器電流制御装置7の出力電圧vI−R〜vI−Tがそれぞれ入力され、損失推定値PL−R〜PL−Tを接合部温度推定器242−R〜242−Tに出力する。
243−R〜243−Tは接合部温度推定器242−R〜242−Tより入力される損失推定値PL−R〜PL−Tを規定値と比較する比較器、244はこれら各比較器243−R〜243−Tの出力が入力それるオア回路である。
【0094】
このような構成の素子温度異常検出装置24において、損失推定器241−Rは、R相電流を流す素子の損失推定値pLRを周波数変換器のR相回路の瞬時値電流iI−Rと出力電圧vI−Rの関数として推定する。ただし、損失推定値pLRと電流iI−Rと出力電圧vI−Rの関係は素子特性,電源電圧から予め求めている。接合部温度推定器242−Rは、損失推定値pLRと接合部から冷却水までの熱抵抗RJWと、素子の熱容量Cから接合部の温度TJRを(3)式で一定周期毎に推定する。
【0095】
TJR´=TJRO´+(pLR−TJRO´/RJW)/C
TJR=TJR´+TW (3)
ただし、TJR′,TJRO′は今回,前回の接合部温度上昇値で、冷却水温度TWからの上昇値である。また、冷却水の温度TWは使用状態で決まる一定値で近似している。
【0096】
以上はR相の接合部温度推定について説明したが、他の相についても同様である。また比較器243−R〜243−T、オア回路244の動作は、図2のオア回路235と同様である。
【0097】
このような構成の素子温度異常検出装置24を備えた可変速制御装置によれば、周波数変換器電流制御装置7の出力電圧と変換器電流から素子の損失を推定し、損失推定値から接合部温度を推定し、この推定温度から周波数変換器の素子の異常温度を検出して変換器を停止させるようにしているので、周波数変換器の素子の破損を回避することができる。また、直接温度を計測していないので、第1の具体例に比べて温度推定値の精度は落ちるが、推定誤差を見込んで異常温度高の規定値を決めれば実用上問題はなく、しかもフィン温度、冷却水温度の計測が省略できるので、簡便であり信頼性も高い。
【0098】
図4は素子温度異常検出装置の第3の具体例を示す回路構成図である。
【0099】
図4に示す素子温度異常検出装置25において、251−R〜251−Tは変換器電流検出器14により検出された三相瞬時値電流iI−R〜iI−Tが入力される各相の比較器で、これら各比較器251−R〜251−Tの出力である電流極性信号25a−R〜25a−Tを信号反転器252−R〜252−Tとオンディレイタイマ253−R〜253−Tに出力する。信号反転器252−R〜252−Tの出力信号25b−R〜25b−Tはオンディレイタイマ254−R〜254−Tに入力される。オア回路255にはオンディレイタイマ253−R〜253−Tおよび254−R〜254−Tの出力信号が入力され、出力信号である素子温度信号25eを変換器停止信号として周波数変換器電流制御装置7に出力する。
【0100】
この場合、比較器251−Rは、R相回路の瞬時値電流iI−Rが正の時に出力信号25a−Rをロジックレベル1に、負の時にロジックレベル0にする。オンディレイタイマ253ーRは、信号25a−Rが規定時間ロジックレベル1になっていると出力信号25c−Rをロジックレベル1とする。また、オンディレイタイマ254−Rは信号25b−Rが規定時間ロジックレベル1になっていると出力信号25d−Rをロジックレベル1とする。
【0101】
以上により、R相の電流が連続的に正または負になる時間が規定時間以上になると、オンディレイタイマの出力信号がロジックレベル1になることが分かる。
他の相についても同様である。また、オア回路255の動作は図2のオア回路235と同様である。
【0102】
なお、オンディレイタイマの規定時間は、禁止帯通過時の最大電流振幅の直流電流を流し続けても、素子に劣化を残すことなく使用できる最長時間とする。
【0103】
このような構成の素子温度異常検出装置25を備えた可変速制御装置によれば、何れかの相の電流が規定時間以上同一極性であり続けた場合に、変換器を停止することができる。ところで、周波数変換器の素子が熱的に過酷な状況になるのは、同一素子に連続的に電流が流れることによって、その素子の接合部温度が上昇することである。
【0104】
従って、素子の温度を推定しなくても、周波数変換器の素子の破損を回避することができる。また、温度を推定していないので、素子の熱的余裕の推定は第2の具体例に比べて精度は落ちるが、推定誤差を見込んで規定時間を決めれば実用上問題はない。しかも、複雑な温度推定演算が省略できるので、簡便であり信頼性も高くなる。
【0105】
さらに、図4に示す回路に三相瞬時値電流iI−R〜iI−Tから変換器電流の振幅をもとめる演算器と、変換器電流の振幅からオンディレイタイマの規定時間を決める演算器とを追加することにより、オンディレイタイマの規定時間を変換器電流の振幅によって決めることができるので、素子の熱的余裕を推定する精度を向上させることができる。
【0106】
図5は素子温度異常検出装置の第4の具体例を示す回路構成図である。
【0107】
図5に示す素子温度異常検出装置26において、261−R〜261−Tは変換器電流検出器14で検出された三相瞬時値電流iI−R〜iI−Tが入力される各相の零検出器で、これら零検出器261ーR〜261−Tは、リセット信号26a−R〜26a−Tを積分器262−R〜262−Tに出力する。これら積分器262−R〜262−Tは三相瞬時値電流iI−R〜iI−Tとリセット信号26a−R〜26a−Tが入力され、その出力信号を比較器263−R〜263−Tに入力する。オア回路264には比較器263−R〜263−T出力信号26c−R〜26c−Tが入力され、出力信号である素子温度信号26dを変換器停止信号として周波数変換器電流制御装置7に出力する。
【0108】
このような構成の素子温度異常検出装置26において、零検出器261−Rは、R相回路の瞬時値電流iI−Rが零の時に出力信号26a−Rをロジックレベル1にし、積分器262−Rの出力を零にリセットする。積分器262−Rは電流iI−Rを積分するが、電流iI−Rが零の時にリセットされるので、その出力26b−Rは正の電流のみ、または負の電流のみを積分した値となる。比較器263−Rは積分器262−Rの出力26b−Rが規定値を越えると出力信号26cーRをロジックレベル1にする。
【0109】
従って、比較器263−Rの出力信号26c−Rは図4の25c−R,25d−Rと同様の意味を持つ。以上はR相について説明したが、他の相についても同様である。またオア回路264の動作は図2のオア回路235と同様である。
【0110】
なお、上記規定値は、定格電流の振幅の直流電流を流し続けても素子に劣化を残すことなく使用できる最長時間と、定格電流の振幅との積で決められる。
【0111】
このような構成の素子温度異常検出装置26を備えた可変速制御装置によれば、同一極性の電流の積分値が規定値以上になると変換器を停止することができる。また、図4の場合と同様に素子の温度を推定しなくても、周波数変換器の素子の破損を回避することができる。
【0112】
図6は素子温度異常検出装置の第5の具体例を示す回路構成図である。
【0113】
ただし、この場合の周波数変換器4としては、自励式の周波数変換器を対象としている。
【0114】
図6に示す素子温度異常検出装置27において、周波数変換器電流制御装置7より周波数変換器4の正側電流を流す素子に与えられるゲート信号であるゲートパルスPP−R〜PP−Tが、ゲートパルス数カウンタ271−R〜271−Tのカウント端子及びゲートパルス数カウンタ272−R〜272−Tのリセット端子にそれぞれ入力される。同様に、負側電流を流す素子のゲート信号であるゲートパルスPN−R〜PN−Tが、ゲートパルス数カウンタ272−R〜272−Tのカウント端子及びゲートパルス数カウンタ271−R〜271−Tのリセット端子にそれぞれ入力される。
【0115】
これら各ゲートパルス数カウンタ271−R〜271−Tの出力であるカウント高信号27a−R〜27a−Tとゲートパルス数カウンタ272−R〜272−Tの出力であるカウント高信号27b−R〜27b−Tとがオア回路273に入力され、このオア回路273は出力信号である素子温度高信号27cを変換器停止信号27cとして周波数変換器電流制御装置7に出力する。
【0116】
このような構成の素子温度異常検出装置27において、R相の変換器電流が正の時はゲートパルスPP−Rが出力され、R相の変換器電流が負の時はゲートパルスPN−Rが出力されているので、ゲートパルス数カウンタ271−Rは変換器電流が連続して正である期間のパルスをカウントしていることになる。一般にゲートパルスは一定周期で出力されるので、ゲートパルス数カウンタ271−Rの出力であるカウント高信号27a−Rは図4のオンディレイタイマ25c−Rと同様な意味を持つ。同様にゲートパルス数カウンタ272−Rの出力であるカウント高信号27b−Rは図4のオンディレイタイマ25d−Rと同様な意味を持つ。他の相も同様に図4と同様の作用となる。
【0117】
また、オア回路273の動作は、図4のオア回路255と同様である。
【0118】
このような構成の素子温度異常検出装置27を備えた可変速制御装置によれば、各半波毎のゲートパルス数の積算値を求め、この積算値から導通時間が長いことによる素子の温度上昇が過大であることを検出できるので、図4と同様の効果が得られる他、図4に比べて回路構成が簡単になる効果もある。
【0119】
以上は図1における素子異常検出手段21として素子温度異常検出装置の具体例について述べたが、次に素子温度異常検出装置以外の素子異常検出装置の他の具体例について述べる。
【0120】
図7は素子異常検出装置の第1の具体例を示す回路構成図である。
【0121】
図7において、速度検出器15で検出された速度ωと周波数検出器16で検出された系統周波数fLが減算器281に入力され、この減算器281の出力Sが、比較器282に入力される。この比較器282の出力28aは、オンディレイタイマ284に入力され、変換器停止信号として出力信号28bを周波数変換器電流制御装置7に出力する。なお、減算器281と比較器282は禁止帯滞留検出器283を構成している。
【0122】
このような構成の素子異常検出装置28において、減算器281は速度ωと系統周波数fLの差であるすべり周波数Sを検出する。比較器282はすべり周波数Sが周波数禁止帯に入っていると出力信号28aをロジックレベル1にする。
信号28aが規定時間以上ロジックレベル1であると、オンディレイタイマ284は出力信号28bをロジックレベル1にして、周波数変換器電流制御装置7を介して周波数変換器4を停止する。
【0123】
この場合、オンディレイタイマの規定時間は、禁止帯に滞留して禁止帯通過時の最大電流を流し続けても素子に劣化を残すことなく使用できる最長時間とする。
【0124】
このような構成の素子異常検出装置28を備えた可変速制御装置によれば、すべり周波数が小さいときのすべり周波数禁止帯に入っている時間を求めることにより、導通時間の長い素子の温度上昇が過大であることを検出し、すべり周波数から何れかの相の電流が規定時間以上同一極性であり続けた場合に、変換器を停止させるようにしているので、図4と同様の効果が得られと共に、図4に比べて回路が簡単になる効果もある。
【0125】
図8は素子異常検出装置の第2の具体例を示す回路構成図である。
【0126】
図8において、図7のオンディレイタイマ284の代わりに、制御外乱検出手段291を設け、この制御外乱検出手段291と禁止帯滞留検出器283の出力信号をアンド回路292に入力し、アンド回路292の出力29bを変換器停止信号として,周波数変換器電流制御装置7に出力する。
【0127】
この場合、素子異常検出装置29において、禁止帯滞留中に変換器電流制御に外乱が入ると、AND回路292は出力信号29bをロジックレベル1にして、周波数変換器電流制御装置7を介して周波数変換器4を停止する。
【0128】
このような構成の素子異常検出手段を備えた可変速制御装置によれば、禁止帯滞留中に変換器電流を増加させるような外乱が入ると、導通している素子の温度上昇を招く過酷な運転が続く恐れがあるが、本例の素子異常検出装置ではこのような状態でも変換器を停止することができる。また、図7と同様の効果が得られほか、図7と比べて回路が簡単になる効果もある。
【0129】
図9は素子異常検出装置の第3の具体例を示す回路構成図である。
【0130】
図9において、図8の制御外乱検出手段291を水位検出器301と比較器302に置き換えたものである。この比較器302は制御外乱検出信号30aを変換器停止信号として、周波数変換器電流制御装置7に出力するものである。
【0131】
このような構成の素子異常検出装置において、サージタンク水位検出器301の出力30aが規定値を越えると、比較器302は出力信号30bをロジックレベル1にして、周波数変換器電流制御装置7を介して周波数変換器4を停止する。
【0132】
このような構成の素子異常検出装置を備えた可変速制御装置によれば、原動機がポンプ水車の場合、サージタンク水位が上昇すると、ポンプ水車のトルクが増加する。このため速度が変化するが、速度変化を抑制するように速度制御器8が変換器電流を増加させる。
【0133】
従って、禁止帯滞留中にサージタンク水位が上昇すると、変換器の素子にとって過酷な運転が続く恐れがある。また、このような状態では変換器を停止することができ、図8の場合と同様の効果が得られる。
【0134】
なお、上記サージタンク水位に代えて、制御弁にかかる水圧、ポンプ水車の流量、ガイドベーン開度を用いても同様の効果が得られる。
【0135】
以上は原動機がポンプ水車の場合で説明したが、原動機が蒸気タービンの場合は、タービン入り口蒸気圧力、第一段落蒸気圧力、タービン蒸気流量を用いると同様の効果が得られる。また、風車の場合は風速,羽角度を用いると同様の効果が得られる。
【0136】
図10は素子異常検出手装置の第4の具体例を示す回路構成図である。
【0137】
図10において、図8の制御外乱検出手段291を電圧変換器311と比較器312とで構成したものである。
【0138】
このような構成の素子異常検出装置において、電圧検出器12の出力vLは電圧変換器311を介して比較器312に入力される。比較器312は出力信号31aを変換器停止信号として、周波数変換器電流制御装置7に出力する。
【0139】
また、電圧検出器12の出力vLは電圧変換器321で直流電圧信号31aに変換される。比較器312は、入力信号31aが規定値以下になると出力信号31bをロジックレベル1にして、周波数変換器電流制御装置7を介して周波数変換器4を停止する。
【0140】
このような構成の素子異常検出装置を備えた可変速制御装置によれば、系統故障あるいは隣接機の故障等が発生した場合は、巻線形誘導機の電圧が低下して変換器電流が急増し、導通している素子の温度が上昇する。従って、巻線形誘導機の電圧低下を検出して周波数変換器を停止することができるので、図8の場合と同様の効果が得られる。
【0141】
図11は素子異常検出装置の第5の具体例を示す回路構成図である。
【0142】
図11において、図8の制御外乱検出手段291を別に設置された系統保護リレーの接点321と単パルス発生器322に置き換えたものである。
【0143】
このような構成の素子異常検出装置32において、系統故障が発生して系統保護リレーの接点321が閉じると、単パルス発生器322は、一定時間出力32aを変換器停止信号として周波数変換器電流制御装置7に出力し、周波数変換器4を停止する。この場合、一定時間は系統故障の影響が及ぶ時間から決められる。
【0144】
このような構成の素子異常検出装置32を備えた可変速制御装置において、系統故障が発生すると変換器電流が急増し、導通している素子の温度が上昇する。
しかし、上記回路構成によれば、系統故障時には周波数変換器を停止することができるので、図8の場合と同様の効果が得られる。また、系統故障が除去された後は、運転を再開できる。
【0145】
図12は素子異常検出装置の第6の具体例を示す回路構成図である。
【0146】
図12において、図8の制御外乱検出手段291を別に設置された隣接機のトリップ接点331と単パルス発生器332に置き換えたものである。
【0147】
すなわち、図12において、隣接機がトリップして接点331が閉じると、単パルス発生器332は、一定時間出力33aを変換器停止信号として周波数変換器電流制御装置7に出力し、周波数変換器4を停止する。この場合、一定時間は隣接機のトリップの影響が及ぶ時間から決められる。
【0148】
このような構成の素子異常検出装置において、隣接機のトリップ時に、原動機を介して或いは潮流の変化によって周波数変換器の電流増加が発生する場合がある。例えば可変速機と水路を共用している隣接機がトリップした場合は、隣接機の流量急変によって原動機の有効落差が増大して、可変速機の原動機トルクの急増が発生する。このような場合でも、電流増加による素子の温度上昇を事前に予測できる。
【0149】
このような構成の素子異常検出装置を備えた可変速制御装置によれば、隣接機がトリップすると変換器電流が急増し、導通している素子の温度が上昇するが、隣接機のトリップにより周波数変換器を停止することができるので、図8の場合と同様の効果が得られる。また、隣接機がトリップの影響が無くなった後は運転を再開できる。
【0150】
図13は本発明による可変速制御装置の第2の実施の形態を示す回路構成図で、図1の構成に対して素子異常検出手段21と周波数変換器電流制御器7との間に運転点変更手段140を設けるようにしたもので、その他の構成については図1と同様なので、ここではその説明を省略する。
【0151】
図13において、上記運転点変更手段140は、素子異常検出手段21により、周波数変換器4を直ちに停止する必要はないが素子が過酷な運転状態であることを検出した第2の素子異常信号21bが入力されると、運転点を変更するための各種指令値の修正結果を出力するものである。
【0152】
このような構成の可変速制御装置において、素子異常検出手段21が変換器を直ちに停止する必要はないが素子に過酷な運転状態であることを検出すると、運転点変更能140が、運転点を決めている指令値を変更し、その結果として、素子にとって楽な運転状態に変わる。
【0153】
従って、素子にとって楽な運転に変更されるので、素子を破損することなく温度上昇が抑制され、運転を継続することができる。
【0154】
ここで、上記運転点変更手段140として速度変更装置を用いた場合の具体例について述べる。
【0155】
図14は速度変更装置の第1の具体例を示す回路構成図である。
【0156】
図14において、速度変更装置35は速度偏移量演算手段351と速度指令値修正手段352で構成したものである。
【0157】
上記速度偏移量演算手段351には、速度検出器15からの速度ωと、周波数検出器16からの系統周波数fLが入力されて、速度偏移量35aを速度指令値修正手段352に出力する。速度指令値修正手段352は有効電力制御器10からの速度目標値ω0 *と、素子異常検出手段21からの素子異常検出信号21bと、速度偏移量35aが入力されて、出力35bを速度指令値ω*として速度制御器8に出力する。
【0158】
このような速度変更装置35において、速度偏移量演算手段351は、速度ωと系統周波数fLとから速度偏移量を求め、また速度指令値修正手段352は素子異常検出手段21が変換器を直ちに停止する必要はないが素子に過酷な運転状態であることを検出すると、速度目標値ω0 *を速度偏移量35aに基ずいて修正して運転点を決めている指令値ω*が変更される。その結果、速度ωが変更されて素子にとって楽な運転状態に変わる。
【0159】
このような構成の速度変更装置を備えた可変速制御装置によれば、変換器を直ちに停止する必要はないが素子に過酷な運転状態であることを検出すると、速度と系統周波数から禁止帯での運転を避けるために必要な速度偏移量が求められ、速度指令値はその速度偏移量分だけ修正される。このため確実に禁止帯から離れた運転に移行し、素子の温度上昇が抑制されるので、素子を損傷することなく運転を継続することができる。
【0160】
図15は速度変更装置の第2の具体例を示す回路構成図である。
【0161】
図15において、速度変更装置36は比較器361とアナログスイッチ362,363,364,365で構成したものである。
【0162】
上記比較器361は、速度検出器15からの速度ωと、周波数検出器16からの系統周波数fLが入力され、その大小を比較するものである。アナログスイッチ362及び363は直列に接続され、比較器361からの切替指令によりアナログスイッチ362がオンすると修正速度設定値ω01を取込み、またアナログスイッチ362がオンすると修正速度設定値ω02がを取込んでこれらアナログスイッチ362及び363の接続間より導出された出力回路に出力するものである。この出力回路にはアナログスイッチ364が設けられ、さらにこのアナログスイッチ364の出力側に有効電力制御器10からの速度目標値ω0 *を入力するアナログスイッチ365が接続される。
【0163】
ここで、出力信号36bは、アナログスイッチ362がオンの時に修正速度設定値ω01となり、アナログスイッチ363がオンの時に修正速度設定値ω02となる。また、出力信号36cはアナログスイッチ364がオンの時に出力信号36bとなり、アナログスイッチ365がオンの時は有効電力制御器10からの速度目標値ω0 *となる。出力信号36cは修正された速度指令値として速度制御器8に出力される。
【0164】
このような速度変更手段36において、比較器361はω>fLでアナログスイッチ362をオンし、ω≦fLでアナログスイッチ363をオンさせる。素子異常検出信号21bがロジックレベル1の時にアナログスイッチ364がオンし、ロジックレベル0の時にアナログスイッチ365がオンする。
【0165】
上記修正速度設定値ω01は禁止帯上限速度以上の速度で素子にとって楽な運転ができる速度に決められている。また、修正速度設定値ω02は禁止帯下限速度以下の速度で素子にとって楽な運転ができる速度に決められている。
【0166】
このような構成の速度変更装置を備えた可変速制御装置によれば、素子にとって過酷な運転状態にあることを検出すると、素子にとって楽な速度に変更されるので、運転を継続することができる。
【0167】
図16は速度変更装置の第3の具体例を示す回路構成図である。
【0168】
図16において、速度変更装置37は図14の速度偏移量演算手段351と速度指令値修正手段352とで構成したものである。
【0169】
上記速度偏移量演算手段351は、減算器371、比較器372、アナログスイッチ373,374、加算器375とアナログスイッチ376で構成される。
【0170】
また、上記速度指令値修正手段352は、係数器377と加算器378とで構成される。
【0171】
また、減算器371は、速度検出器15からの速度ωと周波数検出器16からの系統周波数fLとを入力して、その減算出力信号37aを比較器372に出力する。減算器375は、加算器371の出力信号37aと比較器372の切替指令によりアナログスイッチ373がオンのとき禁止帯幅fBNDが、アナログスイッチ374がオンのとき禁止帯幅−fBNDがそれぞれ出力信号37bとして入力され、その減算出力37cを速度偏移量ωBIASとしてアナログスイッチッ376を介して係数器377に出力する。加算器378は係数器377の出力信号37dと速度度目標値ω0 *を加算して、出力信号37eを速度指令値ω*として速度制御器8に出力する。
【0172】
このような構成の速度変更装置37において、減算器371の出力信号37aは、速度ωと系統周波数fLの差、即ちすべり周波数Sとなる。比較器372は、すべり周波数Sが正の時にアナログスイッチ373をオンし、すべり周波数Sが負の時にアナログスイッチ374をオンする。従って、減算器375の出力信号37cは(4)式で表される速度偏移量ωBIASを求めていることになる。
【0173】
S<0の時……ωBIAS=k(−fBND−S)=k(ωL−ω)
S≧0の時……ωBIAS=k(fBND−S)=k(ωU−ω) (4)
ここに、ωL´は禁止帯下限速度,ωUは禁止帯上限速度であり、(5)式で表される。(1)式で表される従来の禁止帯下限速度ω´L、禁止帯上限速度ω´Uと異なり、ωL,ωUは系統周波数により変化する。
【0174】
ωL=fL−fBND, ωU=fL+fBND (5)
次に、速度ωが速度禁止帯内で同期速度以下の速度ωXで滞留して、素子異常が検出された場合を例に、速度変更手段37の作用を説明する。なお、簡単のため速度指令値ω*、速度目標値ω0 *ともに速度ωXであるとする。
【0175】
素子異常が検出されると、速度指令値ω*はωX+k(ωL−ω)に修正されるので、速度ωはωL+(ωX−ωL)/(k+1)に制御される。従って、kを十分に大きくしておけば、速度目標値ω0 *がωXに留まっていたとしても、速度ωは禁止帯下限速度ωLに制御される。
【0176】
同様に速度ωが速度禁止帯内で同期速度以上の速度ωYで滞留した場合は、禁止帯上限速度ωUに制御される。
【0177】
このような構成の速度変更装置を備えた可変速制御装置によれば、変換器を直ちに停止する必要はないが素子が過酷な運転状態であることを検出すると、速度指令値、即ち速度が禁止帯上限速度または禁止帯下限速度になる。しかも、禁止帯上限速度または禁止帯下限速度は系統周波数によって変化するので、速度禁止帯とすべり周波数禁止帯が一致し、確実に禁止帯外の運転となる。従って、素子にとって楽な運転となり、運転継続可能となる。
【0178】
図17は図14における速度偏移量演算手段351の他の構成例を示す回路図である。
【0179】
図17において、速度偏移量演算手段38は、比較器381、アナログスイッチ382,383,384,385、積分器386と係数器387で構成される。
【0180】
上記比較器381は、速度検出器15からの速度ωと、周波数検出器16からの系統周波数fLが入力される。また、積分器386は入力信号38bとして、アナログスイッチ382が素子異常信号によりオンの状態で、アナログスイッチ383がオンの時に、加速バイアスω+となり、アナログスイッチ384がオンの時に減速バイアスω―が入力される。
【0181】
また、アナログスイッチ382がオフの状態では、アナログスイッチ385がオンし、積分器386の出力38cが係数器387を介して、積分器386の入力信号38bとなる。積分器386の出力信号38cは、速度偏移量ωBIASとして図14の速度指令値修正手段352に出力される。
【0182】
このような構成の速度偏移量演算手段38において、素子異常検出信号21bがロジックレベル1の時にアナログスイッチ382がオンし、ロジックレベル0の時にアナログスイッチ385がオンする。また、比較器381はω>ωSYNでアナログスイッチ383をオンし、ω≦fLでアナログスイッチ384をオンさせる。この積分器386は、入力38bがω+の時には加速バイアスω+により決まる変化率で出力を増加させ,入力38bがω―の時には減速バイアスω―により決まる変化率で出力を減少させ、アナログスイッチ385がオンしている場合には、積分器係数器387の係数で決まる速さで零に向かって変化する。
【0183】
次に、速度ωが禁止帯内で同期速度以下の速度ωXで滞留して、素子異常が検出された場合を例に、速度偏移量演算手段38の作用を説明する。なお、簡単のため速度指令値ω*、速度目標値ω0 *ともに速度ωXであるとする。
【0184】
速度ωが禁止帯に入るまでは、アナログスイッチ385がオンしているので、積分器出力38cは零になっている。素子異常信号21bがロジックレベル1になると、アナログスイッチ382がオンするが、速度が系統周波数以下であるので、積分器386の入力信号38bはω―となる。従って、積分器386は出力38c即ち速度偏移量ωBIASを減じ、速度指令値ω*下げる方向に修正する。この動作は素子異常検出がリセットされ、アナログスイッチ385オンするまで続く。
【0185】
従って、確実に素子にとって楽な速度まで下降して運転を継続する。素子異常検出信号がリセットされると、積分器386はゆっくりと速度偏移量ωBIASを零に戻すことにより、素子異常要因が除かれている場合は、元の運転状態に戻す。異常の要因が継続している場合は、素子異常検出信号とアナログスイッチ385がオン、オフを繰り返し、素子異常検出信号の限界点で運転を継続することになる。
【0186】
このような構成の速度変更装置を備えた可変速制御装置によれば、素子にとって過酷な運転状態にあることを検出すると、禁止帯の外に出るまで速度偏移量が増加または減少するので、系統周波数が変動しても、確実に禁止帯から離れた運転に移行できる。従って、速度指令値、即ち速度が素子にとって楽な運転となり、運転継続が可能となる。また、速度が速度禁止帯を外れただけでは異常要因が回復し、異常要因がない場合でも、素子にとって楽な状態まで、確実に変更できる。
【0187】
図18は図13の運転点変更手段140として図14に示す速度変更装置35に速度目標値追従装置39を追加した場合の構成例を示す回路図である。
【0188】
図18において、速度目標値追従装置39は、減算器391と切替スイッチ392で構成される。この減算器391は速度変更装置35から修正された速度指令値ω*と図13に示す有効電力制御器10の制御器106からの速度目標値ω0 *が入力され、その出力39aを切り替えスイッチ392に与える。
【0189】
この切替スイッチ392は、有効電力制御器10からの偏差信号10eと減算器391の出力39aの何れかを選択して、出力39bを有効電力制御器10の制御器106への入力とする。
【0190】
このような構成の速度目標値追従装置39において、素子異常検出信号21bがロジックレベル1の時に出力信号39b=39aとなる。この状態では、制御器106は減算器391の出力信号39aが零になるように速度目標値ω0 *を修正する。速度目標値が修正されるに従って、速度変更装置35の速度偏移量演算手段351の出力である速度偏移量ωBIASが減少していく。即ち、速度偏移量ωBIASが速度目標値の修正から速度目標値の修正に切り替わっていく。
【0191】
このように速度変更装置35及び速度目標値追従装置39からなる運転点変更装置140を備えた可変速制御装置によれば、速度目標値を無視して速度を変更すると、有効電力が電力設定値からずれることから、有効電力制御器が速度目標値を変化させて速度禁止帯に接近させることがあるが、このような場合でも速度目標値は速度禁止帯に接近しないので、確実に禁止帯から離れた運転に移行できる。従って、素子にとって過酷な運転状態にあることを検出すると、速度指令値のみならず速度目標値も素子にとって楽な運転の値に変更されるので、より安定に運転を継続することができる。
【0192】
図19は図14の速度指令値修正手段352を有効電力設定値修正手段40に置き換えた速度変更装置の構成例を示す回路図である。
【0193】
図19において、有効電力設定値修正手段40は有効電力偏移量演算器401と加算器402で構成される。
【0194】
上記有効電力偏移量演算器401は、ゲイン付きの一次遅れ演算器が用いられる。この有効電力偏移量演算器401は速度偏移量演算手段351の出力である速度偏移量ωBIASが入力され、その出力信号40aを加算器402に与える。この加算器402は、有効電力設定値PSと出力信号40aとを加算し、出力信号40bが修正された有効電力設定値PS1として、有効電力制御器10に出力する。
【0195】
このような構成の有効電力設定値修正装置40において、有効電力偏移量演算器401は速度偏移量ωBIASを有効電力偏移量に変換する。ゲインは速度変化と有効電力変化の比で決める。一次遅れの時定数は、有効電力設定値を変化させてから速度が変化する迄の遅れ時間から決める。
【0196】
このような構成の速度変更装置を備えた可変速制御装置によれば、素子にとって過酷な運転状態にあることを検出すると、有効電力設定値が修正され、有効電力制御の応答で速度目標値が変更されるので、原動機とのバランスを崩すことなく、素子にとって楽な運転に変更でき、より安定な運転継続が可能となる。
【0197】
図20は図13の運転点変更手段140を無効電流指令値修正手段41に置き換えた構成例を示す回路図である。
【0198】
図20において、無効電流指令値修正手段41は切替スイッチ411により構成され、この切替スイッチ411には電圧制御器11からの無効電流指令値11b(Id*)と修正無効電流設定値Id01が入力され、出力信号41bを修正された無効電流指令値として周波数変換器7に出力するものである。
このような構成の無効電流指令値修正手段41において、素子異常検出器21の出力信号21bがロジックレベル1で41b=41aとなる。この状態では変換器の無効電流は修正無効電流設定値Id01に制御される。
【0199】
この修正無効電流設定値Id01は、零または無負荷定格励磁時の無効電流に選ばれる。この場合、Id01は通常の運転時の無効電流に比べて小さな値であるので、変換器電流は減少する。
【0200】
このような構成の無効電流指令値修正手段41を備えた可変速制御装置によれば、変換器を停止する必要はないが素子にとって過酷な運転状態にあることを検出すると、周波数変換器電流制御装置の無効分電流指令値が修正され、その結果変換器電流が減少するので、素子の温度上昇が抑制され、運転継続が可能となる。
【0201】
図21は図19に示す有効電力設定値修正手段40に電圧設定値追従手段42を追加した場合の構成例を示す回路図である。
【0202】
図21において、電圧設定値追従手段42は減算器421と切替スイッチ422で構成される。
【0203】
上記減算器421は無効電流修正手段35から修正された無効電流指令値Id*と制御器112の出力11bである無効電流目標値Id0 *が入力され、出力42aを切替スイッチ422に出力する。また、切替スイッチ422は電圧制御器11からの偏差信号11aと減算器421の出力信号42aの何れかを選択して、出力42bを電圧制御器11の制御器112への入力とする。
【0204】
このような構成の電圧設定値追従手段42において、素子異常検出信号21bがロジックレベル1の時に42b=42aとなる。この状態では、制御器112は入力信号42aが零になるように無効電流目標値Id0 *を修正する。
【0205】
従って、無効電流目標値Id0 *も無効電流指令値が零になるように修正されることになる。
【0206】
このような構成の可変速制御装置によれば、変換器を直ちに停止する必要はないが、素子にとって過酷な運転状態にあることを検出すると、修正された無効分無効電流指令値に電圧制御器の出力が追従するので、電圧制御器が無効分電流指令値を増大するような胴さを防止することができる。従って、確実に無効分電流が減少するので、素子の温度上昇が抑制されて、安定に運転が継続できる。
【0207】
図22は、図14の速度指令値修正手段352を制御弁開度指令値修正手段43に置き換えた構成例を示す回路図である。
【0208】
図22において、制御弁開度指令値修正手段43は、制御弁開度指令値偏移量演算器431と加算器432で構成される。制御弁開度指令値偏移量演算器431は、ゲイン付きの一次遅れ演算器が用いられる。制御弁開度指令値偏移量演算器431は速度偏移量演算手段351より出力される速度偏移量ωBIASが入力され、出力43aを加算器432に出力する。加算器432は有効電力制御器10からの制御弁開度目標値CV0 *と出力43aを加算し、出力43bが修正された制御弁開度指令値として、原動機制御装置6に出力する。
【0209】
このような構成の制御弁開度指令修正手段43において、制御弁開度指令値偏移量演算器431は速度偏移量ωBIASを制御弁開度指令値偏移量に変換する。ゲインは速度変化と制御弁開度変化の比で決める。一次遅れの時定数は、制御弁開度指令値を変化させてから速度が変化する迄の遅れ時間から決める。
【0210】
このような構成の可変速制御装置によれば、変換器を直ちに停止する必要はないが、素子にとって過酷な運転状態にあることを検出すると、原動機制御弁開度指令値が修正されて原動機のトルクが減少し、これに伴って変換器電流が減少するので、素子の温度上昇が抑制され、運転の継続が可能となる。
【0211】
図23は図13の運転点変更手段140を制御状態変更手段44で構成した回路図である。
【0212】
上記制御状態変更手段44は第2の素子異常検出信号21bが入力されると、周波数変換器電流制御装置7に制御状態の変更を指令するものである。
【0213】
このような構成の制御状態変更手段44において、周波数変換器電流制御装置7の制御状態を決める設定値を変更することによって、運転点を変えることなく制御状態を変更して、素子にとって楽な運転状態に変る。
【0214】
このような構成の可変速制御装置によれば、変換器を直ちに停止する必要はないが、素子にとって過酷な運転状態にあることを検出すると、周波数変換器は素子にとって楽な制御状態に変更されるので、素子の温度上昇が抑制され、変換器の運転を継続できる。
【0215】
図24は、図23における制御状態変更手段44をパルス数低減手段45で構成した回路図である。但し、本構成は変換器が自励式の変換器に限られる。
【0216】
上記パルス数低減手段45は、素子異常検出信号21bが入力されると、周波数変換器電流制御装置7に制御状態の変更を指令するものである。
【0217】
このような構成のパルス数低減手段45において、周波数変換器4のスイッチング回数を低減するすることで、周波数変換器の素子の損失を低減できる。従って、運転点を変えることなく、素子にとって楽な運転状態となる
このような構成の可変速制御装置によれば、周波数変換器を直ちに停止する必要はないが、素子にとって過酷な運転状態にあることを検出した場合には、周波数変換器4のスイッチング回数を低減することによって、素子にとって楽な運転状態に変更されるので、素子を損傷することなく運転を継続できる。
【0218】
図25は図24におけるパルス数低減手段45をキャリア周波数修正手段46で構成した回路図である。
【0219】
上記キャリア周波数修正手段46は、分周器461と切り替えスイッチ462と禁止帯滞留検出器463とアンド回路464とで構成される。
【0220】
上記分周器461は発信周波数OSCが入力され、出力信号46aを切替スイッチ462に出力する。禁止帯滞留検出器463は速度ωと系統周波数fLが入力されて、出力信号46bをアンド回路464に出力する。アンド回路464は素子異常検出信号21bと出力信号46bのアンド条件が成立すると切替スイッチ462を切り替えて、出力信号46cが信号46bとなるようにする。切替スイッチ462は出力46cを修正された発信周波数として、周波数変換器7の三角波発生器79に出力する。
【0221】
このような構成のキャリア周波数修正手段46において、分周器461は発信周波数OSCを1/nに分周する。禁止帯滞留検出器463は
|ω−fL|<fBND
の場合に出力信号46bをロジックレベル1とする。即ち、速度が禁止帯に滞留している時に出力信号46bはロジックレベル1となる。従って、禁止帯滞留時に素子異常検出信号21bが検出されると、三角波発生器79への発信周波数は元の発信周波数OSCが1/nに修正される。この結果、素子のスイッチング周波数は1/nに低減する。分周比1/nは制御特性が悪くならない範囲で決める。
【0222】
このような構成の可変速制御装置によれば、周波数変換器を直ちに停止する必要はないが、素子にとって過酷な運転状態にあることを検出した場合には、周波数分周器で三角波発振器の周波数が低減さ、周波数変換器7のスイッチング回数が低減することによって、素子にとって楽な運転状態に変更されるので、素子の温度上昇が抑制され、周波数変換器の運転を継続できる。
【0223】
なお、禁止帯での運転時は変換器電流の周波数が小さいので、スイッチング回数を低減しても制御特性は悪化しない。
【0224】
図26は図24におけるパルス数低減手段45を出力電圧修正手段47で構成した回路図である。
【0225】
上記出力電圧修正手段47は、周波数変換器7の電圧演算器77から出力電圧信号vIが入力されると、出力信号47aを修正した後の出力電圧信号として、三角波発生器78に出力する。
【0226】
なお、本構成は自励式周波数変換器に対する効果が大きいので、自励式周波数変換器に適用した場合で説明する。
【0227】
このような構成の出力電圧修正手段47において、自励式の周波数変換器は、出力電圧に応じてゲートパルスを発生しているので、実質上のゲートパルスが低減するように出力電圧を修正することにより、素子のスイッチング損失を低減できる。
【0228】
このような構成の可変速制御装置によれば、周波数変換器を直ちに停止する必要はないが、素子にとって過酷な運転状態にあることを検出した場合には、周波数変換器7のスイッチング損失を低減することによって、素子にとって楽な運転状態に変更されるので、素子を損傷することなく運転を継続できる。
【0229】
図27は、図26における出力修正手段47の具体例を示す回路構成図である。
【0230】
図26において、出力電圧修正手段48は禁止帯滞留検出器481と不感帯482で構成される。
【0231】
上記禁止帯滞留検出器481は、図25の禁止帯滞留検出器463と同様であるので説明は省略する。不感帯482は、周波数変換器7の出力電圧演算器77から出力電圧信号vIが入力され、出力信号48aを修正後の出力電圧信号として、三角波発生器78に出力するものである。
【0232】
なお、本方式は三角波比較のPWM方式に有効である。
【0233】
このような構成の禁止帯滞留検出器481と出力電圧信号vIが不感帯幅以下になると、三角波発生器78に出力する修正後の出力電圧信号は零となり、ゲートパルスは発生しなくなる。なお、不感帯幅は、最小パルス幅に対応した値とする。
【0234】
自励式周波数変換器に用いられている三角波比較によるPWMゲートパルス発生方式では、素子の制約から規定値以下の狭いパルスは発生できず、必ず規定値以上の幅のゲートパルスを出力する必要がある。
【0235】
ところで、周波数変換器電流制御装置7の出力電圧は出力周波数に比例する割合が高いので、禁止帯近傍では出力電圧信号は小さくなる。この場合でも、最小幅以上のパルスを出し続けることになり、制御上は不要なパルスのためにスイッチング損失を増やしている傾向にある。
【0236】
このような構成の可変速制御装置によれば、周波数変換器を直ちに停止する必要はないが、素子にとって過酷な運転状態にあることを検出した場合には、制御上不要スイッチングを無くすることができるので、制御特性を損なうことなく素子の損失を低減できる。従って、素子にとって楽な運転状態に変更されるので、素子を損傷することなく運転を継続できる。
【0237】
図28は、図26における出力電圧修正手段の具体例を示す回路構成図である。
【0238】
図28において、出力電圧修正手段49は、絶対値検出器491−R〜491−Tと最大相検出器492と偏移量検出器493と加算器494−R〜494−Tで構成される。
【0239】
上記絶対値検出器491−R〜491−Tは変換器の瞬時値電流i−R〜i−Tが入力され、出力49a−R〜49a−Tを最大相検出器492に出力するものである。また、偏移量検出器493は出力電圧vI−R〜vI−Tと信号49bが入力され、出力信号49cを加算器494−R〜494−Tに出力するものである。さらに、加算器494−R〜494−TはvI−R〜vI−Tと変位量検出器493の出力49cとを加算し、出力49−R〜49−Tを修正された出力電圧として、周波数変換器電流制御装置7のゲートパルス発生器79に出力するものである。
【0240】
このような構成の出力電圧修正手段49において、変換器のR相電流の絶対値49a−Rが最大の場合で説明する。49a−Rが最大であるので、49b−Rがロジックレベル1となる。偏移量検出器493は49b−Rがロジックレベル1であることから出力電圧vI−Rを偏移量出力49c=vI−Rとする。
【0241】
以上はR相電流が最大として説明したが、49cは電流の絶対値が最大の相の出力電圧信号となる。従って、電流の絶対値が最大の相の修正された出力電圧は零となる。
【0242】
このような構成の可変速制御装置によれば、周波数変換器を直ちに停止する必要はないが、素子にとって過酷な運転状態にあることを検出した場合には、電流が最大で最も過酷な状態にある相の出力電圧が零になり、その相のスイッチング損失が低減され、変換器電流は線間電圧で制御されるので、全相に同一の偏移量を与えるても、電流制御上は影響ない。従って、制御特性を損なうことなく最過酷な素子の損失を低減でき、素子にとって楽な運転状態に変更できる。
【0243】
なお、本手段は図27の構成と併用することにより、より一層その効果を高めることができる。
【0244】
図29は、図23における制御状態変更手段44を直流リンク電圧修正手段50で構成した回路図である。但し、本構成は周波数変換器が自励式の変換器に限られる。
【0245】
上記リンク電圧修正手段50は、素子異常検出信号が入力され、周波数変換器電流制御装置7にリンク電圧変更を指令するものである。
【0246】
自励式周波数変換器では、コンバータとインバータとが直流リンクコンデンサを介して接続されており、コンバータが直流リンク電圧を制御し、インバータが周波数変換器の出力電圧を制御している。直流リンク電圧修正手段50は、素子異常検出信号21bにより、予め設定された偏移量にもとずいて、コンバータ制御に用いられる電圧設定値を高めることができる。これにより、リンク電圧は高くなり、決められた有効電力,無効電力を実現する変換器電流が減少する。
【0247】
このような構成の可変速制御装置によれば、周波数変換器を直ちに停止する必要はないが、素子にとって過酷な運転状態にあることを検出した場合には、周波数変換器7の直流リンク電圧が高くなり、そのため同一の運転状態(有効電力、無効電力)を小さな変換器電流で実現できる。従って、電流を低減することによって、素子にとって楽な運転状態に変更されるので、素子を損傷することなく運転を継続できる。
【0248】
図30は本発明による可変速制御装置の第3の実施の形態を示す回路構成図で、図62と同一構成部には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分について述べる。
【0249】
第3の実施の形態では、図30に示すように図62における速度禁止帯制御器9に代えて速度禁止帯回避制御器51を設けるようにしたものである。
【0250】
図31はこの速度禁止帯回避制御器51の第1の具体例を示す回路構成図である。
【0251】
図31において、速度禁止帯回避制御器51は、速度禁止帯検出手段511と速度目標値修正手段512と速度指令値修正手段513とで構成される。
【0252】
上記速度禁止帯検出手段511は、系統周波数fLが入力されると、禁止帯上限速度ωUと禁止帯下限速度ωLを速度目標値修正手段512に出力するものである。また、速度目標値修正手段512は、速度目標値ω0 *とωU,ωLが入力されると、修正された速度目標値ω1 *を速度指令値修正手段513に出力するものである。さらに、速度指令値修正手段513は、出力51aを速度指令値ω*として速度制御器8に出力するものである。
【0253】
このような構成の速度禁止帯回避制御器51において、禁止帯上限速度ωUと禁止帯下限速度ωLは、各々(4)式で求められる。従って、図32の破線に示されるように、系統周波数が変化した場合はωL,ωUともに変化する。なお、従来は一点鎖線で示されるように系統周波数が変化しても一定であった。
【0254】
また、速度目標値修正手段512は、速度目標値ω0 *がωLとωUの間の値になっても、その間の値は取らないように修正して、修正された速度目標値ω1 *を求める。
【0255】
さらに、速度指令値修正手段513は修正された速度目標値ω1 *が急変しても、巻線形誘導機の速度が制御出来る速度変化率に抑えるようにしている。
【0256】
このような構成の可変速制御装置によれば、禁止帯上限速度ωUと禁止帯下限速度ωLを系統周波数から決めている点が従来の速度禁止帯回避制御と異り、系統周波数が変動すると速度禁止帯も変化する。
【0257】
従って、系統周波数が変動しても、すべり周波数即ち変換器の周波数は禁帯内に入ることはないので、素子にとって過酷な運転になることはない。しかも、速度指令値が急変することはないので、急激な有効電力の変動もなく系統に悪影響を及ぼさない。
【0258】
図33は図30に示す速度禁止帯回避制御器の第2の具体例を示す構成図である。
【0259】
図33において、速度禁止帯回避制御器52は、減算器521、加算器522、ヒステリシス関数器523および変化率制限器524とで構成される。
【0260】
上記減算器521と加算器522は、系統周波数と禁止帯幅fBNDとが入力され、禁止帯下限速度ωLと禁止帯上限速度ωUをヒステリシス関数器523に出力する。ヒステリシス関数器523は速度目標値ω0 *とωU,ωLが入力されると、修正された速度目標値ω1 *を変化率制限器524に出力するものである。変化率制限器524は出力52aを速度指令値ω*として、速度制御器8に出力するものである。
【0261】
このような構成の速度禁止帯回避制御器52において、ヒステリシス関数器523と変化率制限器524の作用は図64と同様であるので、説明は省略する。
ヒステリシス関数器523の飛び上がり点と飛び下がり点が周波数変動で変化する点が、図65と異なる。
【0262】
図34は速度目標値ω0 *が一定の変化率で上昇中に系統周波数が変化した場合の動作を示している。図32では、ω0 *を実線で、ωUとωLを点線で、ω1 *を一点鎖線で、ω*を破線で示している。
【0263】
図34に示すように、ω0 *がωLに到達するタイミングt4と、ω0 *がωUを越えるタイミングt5の間は、ω1 *はωLと同一になる。タイミングt5でω1 *はステップ状に変化して、ω0 *に等しくなる。系統周波数やω0 *の変化は緩やかなので、タイミングt5迄は速度指令値ω*はω1 *とほぼ等しい。タイミングt5でω1 *はステップ状に変化するが,ω*は破線のように予め決められた変化率で変化する。
【0264】
このような構成の可変速制御装置によれば、図34に示すように速度指令値ω*が速度禁止帯に入っている時間は短時間に限られる。従来は、系統周波数が変動すると禁止帯に止まる時間が長くなる恐れがあったが、図34に示すように、速度指令値ω*が禁止帯に止まっている時間は(t6−t5)の短時間に限られる。
【0265】
従って、系統周波数が変動しても、すべり周波数即ち変換器の周波数は禁帯内に入ることはないので、素子にとって過酷な運転になることない。しかも、速度指令値が急変することはないので、急激な有効電力の変動もなく系統に悪影響を及ぼさない。
【0266】
図35は、図30の速度禁止帯回避制御器51に比例制御器53を追加した構成を示す回路図である。但し、有効電力制御器10の制御器106は積分制御器と比例制御活殺器で構成され、入力は制御偏差10eを共用しているが、積分制御用の制御偏差10eIと比例制御用の制御偏差10ePが分離されているものである。
【0267】
上記比例制御活殺器53は、比較器531とアナログスイッチ532で構成される。比較器531はヒステリシス関数器523の入力ω0 *と出力ω1 *が入力され、比較結果でアナログスイッチ532をオンするものである。アナログスイッチ532は有効電力制御器10の制御器106に含まれる比例制御用の制御偏差10ePを活殺する。
【0268】
このような構成の比例制御器53において、速度目標値ω0 *が速度禁止帯に入っているとω0 *とω1 *に差があるので、比較器531はアナログスイッチ532をオフさせる。従って、比例制御用の制御偏差10ePは0となり、制御器106は積分制御のみとなる。
【0269】
また、制御器106に比例制御があると、制御偏差10eの変化によって、速度目標値ω0 *がヒステリシス幅を越えて変化することがある。この場合は、ω1 *がωLとωUの値を交互に繰り返すことになり,速度指令値ω*が速度禁止帯の中に滞留する恐れがある。
【0270】
このような構成の可変速制御装置によれば、制御偏差10eの変動があっても、制御偏差10eの積分値でω0 *が変化するので、ω*が速度禁止帯を越える前にω0 *が逆の方向へ変化することは防止できる。これにより、禁止帯内での運転が回避でき、素子にとって過酷な運転は避けられる。
【0271】
図36は図30における速度禁止帯回避制御器51に禁止帯通過待ち手段54を追加した構成を示す回路図である。
【0272】
図36において、禁止帯通過待ち手段54は高値選択器541、低値選択器542、比較器543,544、オフディレイタイマ545およびアナログスイッチ546,547,548,549とで構成される。
【0273】
上記高値選択器541は、修正された速度目標値ω1 *と禁止帯上限速度ωUとが入力されると、オン、オフ指令54aをアナログスイッチ546に出力するものである。低値選択器542はω1 *と禁止帯下限速度ωLとが入力されると、出力信号54bをアナログスイッチ547に出力するものである。比較器543はω1 *と系統周波数fLとが入力されると、アナログスイッチ546,547を切換えるものである。比較器544はω1 *と速度目標値ω0 *とが入力されると、出力信号54dをオフディレイタイマ545に出力するものである。オフディレイタイマ545はアナログスイッチ548,549を切換えるものである。アナログスイッチ549はω1*が入力され、またアナログスイッチ546,547,548,549を介して信号54a、54b,ω1 *の何れかが選択されると信号54eとなり、この信号54eは第2の修正された速度目標値ω2 *として速度指令値修正手段513に入力される。
【0274】
このような構成の禁止帯通過待ち手段54において、高値選択器541は修正された速度目標値ω1 *と禁止帯上限速度ωUから高い方の値を選択して出力54aとする。低値選択器542は修正された速度目標値ω1 *と禁止帯下限速度ωLから低い方の値を選択して出力54bとする。比較器543は速度指令値ω*が系統周波数以上時アナログスイッチ546をオンし、系統周波数以下の時アナログスイッチ547をオンする。比較器544はω0 *とω1 *とが等しい時出力54dがロジックレベル1となる。オフディレイタイマ545は出力54dがロジックレベル1でアナログスイッチ548をオンし、出力54dがロジックレベル0になって規定時間経過後にアナログスイッチ549をオンする。
【0275】
次に図34を用いて禁止帯通過待ち手段54の作用を説明する。
【0276】
速度目標値ω0 *が速度禁止帯に入った後は、ω0 *が系統周波数fLを越えるタイミングt0までは、
(a):ω2 *=ω1 *,ω1 *=ωL,54c=54b,54a=ωU,54b=ωL
となっている。タイミングt0から速度目標値ω0 *が禁止帯上限速度ωUに達するタイミングt1までは、
(b):ω2 *=ω1 *,ω1 *=ωL,54c=54a,54a=ωU,54b=ωL,
となる。タイミングt1で速度目標値ω0 *が禁止帯上限速度ωUを越えると、
(c):ω2 *=54c,54c=54a,54a=ω1 *,ω1 *=ω0 *,54b=ωL,
となる。その後はオフディレイタイマ545が復帰するタイミングt2の前に速度目標値ω0 *が禁止帯下限速度ωL以下となっても、
(d):ω2 *=54c,54c=54a,54a=ωU,54b=ω1 *,ω1 *=ωL
となり、ω2 *はωUに止まる。タイミングt2以降で速度目標値ω0 *が速度禁止帯外に出た後は通常の動作に戻る。
【0277】
以上説明したように、修正された速度目標値が速度禁止帯を通過した後は、規定時間を経過した後でないと、修正された速度目標値は禁止帯を通過することはない。
【0278】
図35において、制御器106に比例制御があると、制御偏差10eの変化によって、速度目標値ω0 *が禁止帯幅を越えて変化することがある。この場合は、ω1 *がωLとωUの値を交互に繰り返すことになり、速度指令値ω*が速度禁止帯の中に滞留する恐れがある。
【0279】
このような構成の可変速制御装置によれば、速度指令値ω*が速度禁止帯を通過した後は、必ずタイマ設定時間以上は禁止帯外に止まる。従って、禁止帯通過頻度が押さえられるので、素子にとって過酷な運転は避けられる。
【0280】
図37は、図31における速度禁止帯回避制御器51に禁止帯滞留検出器(比較器)551とゲートパルス数低減手段45とからなるゲートパルス数低減手段55を追加した構成を示す回路図である。
【0281】
上記禁止帯滞留検出器551には速度目標値ω0 *と修正された速度目標値ω1 *とを入力する。ゲートパルス数低減手段45は図24と同一である。
【0282】
このような構成のゲートパルス数低減手段55において、速度禁止帯通過中は比較器551がロジックレベル1となり、ゲートパルス数低減手段45を起動して、周波数変換器電流制御装置7のゲートパルスは低減される。
【0283】
このような構成の可変速制御装置によれば、速度禁止帯通過時のゲートパルスは低減される。速度禁止帯とすべり周波数禁止帯が一致しているので、禁止帯通過時に素子にとって過酷な状態に陥ることはない。
【0284】
図38は、図37におけるゲートパルス数低減手段45を電流振幅修正手段562に置き換えた構成を示す回路図である。
【0285】
上記電流振幅修正手段562は、電流振幅を決めている各種設定値を変更するものである。
【0286】
このような構成のゲートパルス数低減手段56によれば、禁止帯通過中は比較器551がロジックレベル1となり、電流振幅修正手段562を起動して、周波数変換器4の電流は修正される。但し、禁止帯通過時間を延ばすことなく素子の損失を低減するように、変換器電流の振幅を修正する。
【0287】
このような構成の可変速制御装置によれば、禁止帯通過時は素子の損失を低減するように変換器電流が修正される。しかも、禁止帯通過時間を延ばすことはないので、禁止帯通過時に素子にとって過酷な状態に陥ることはない。
【0288】
図39は、図38における電流振幅修正手段562を無効電流指令値修正手段57で構成した回路図であり、図20と同様な構成となる。
【0289】
このような構成の無効電流指令値修正手段57において、速度禁止帯通過中は比較器551の出力信号がロジックレベル1となり、無効電流指令値修正手段571を起動して、周波数変換器電流制御装置7の無効電流指令値は予め決められた無効電流設定値Id02に低減される。無効電流設定値Id02は速度禁止帯通過時に要求される最少の値とする。
【0290】
このような構成の可変速制御装置によれば、禁止帯通過時には周波数変換器電流制御装置7の無効電流指令値は低減されるので、素子に流れる電流は低減される。しかも、無効電流を低減しても速度制御には影響しないので、禁止帯通過時間を延ばすことはない。従って、禁止帯通過時に素子にとって過酷な状態に陥ることはない。
【0291】
図40は、図38に於ける電流振幅修正手段562の具体例を示す有効分電流修正手段58の回路構成図である。
【0292】
上記有効分電流修正手段58は、比較器581、アナログスイッチ582,583および加算器584とで構成される。
【0293】
上記比較器581は、速度禁止帯回避制御器51からの速度指令値ω*と、周波数検出器16からの系統周波数fLが入力される。アナログスイッチ582,583は比較器581からの切替指令によりオン、オフするもので、アナログスイッチ582がオンの時に加算器584に入力される信号58aは増バイアス設定値Iq+となり、アナログスイッチ363がオンの時に加算器584に入力される信号58aは減バイアス設定値Iqーとなる。この加算器584には、信号58aと速度制御器8からの有効分電流指令値Iq*とが入力され、出力58bが修正された有効分電流指令値として周波数変換器電流制御器7に出力する。
【0294】
このような構成の有効分電流修正手段58において、周波数変換器が自励式であり、すべり周波数が正の時周波数変換器は回生運転、すべり周波数が負の時周波数変換器は力行運転である場合を例にしてその作用を説明する。
【0295】
比較器581は、ω*>fL、即ちすべり周波数が正でアナログスイッチ362をオンし、ω*≦fL、即ちすべり周波数が負でアナログスイッチ363をオンさせる。従って、回生運転時には増バイアス設定値Iq+分有効分電流指令値が増加する。また、力行運転時には減バイアス設定値Iqー分有効分電流指令値が減少する。従って、禁止帯通過所要時間は上記修正をしない場合とほぼ同じである。
【0296】
図41は、R相の電流が流れる経路を示している。即ち、有効分電流が周波数変換器から巻線形誘導機の方向に流れるタイミングでは、GTO―UかダイオードD−Xの何れかに電流が流れる。そして、GTO−Uの通電時間とダイオードD−Xの通電時間の差が出力電圧に比例する。従って、出力電圧が正、即ち力行運転時はGTO−Uの通電時間が長くなり、出力電圧が負即ち回生運転時はGTO−Uの通電時間が短くなる。同様に有効分電流の向きが逆の場合に、力行運転時はGTO−Xの通電時間が長くなり、回生運転時はGTO−Xの通電時間が短くなる。いずれにしても力行運転時にGTOは素子の損失が大きくなる。
【0297】
従って、素子の損失が大きくなる力行運転時には有効分電流は減少して損失を抑制できる。しかも、禁止帯通過所要時間は上記修正をしない場合とほぼ同じである。
【0298】
このような構成の可変速制御装置によれば、禁止帯通過時に素子の損失を低減できるので、素子にとって楽な制御状態で禁止帯を通過できる。しかも、禁止帯通過所要時間は延びることはない。
【0299】
図42は、図38における電流振幅修正手段562を禁止帯通過タイミング制御器59で構成した回路図である。
【0300】
図42において、禁止帯通過タイミング制御器59は比較器591,592、位相検出器593、関数発生器594,595、アンド回路596,597、増方向阻止器598および減方向阻止器599で構成される。
【0301】
上記比較器591,592には速度目標値ω0 *を入力し、出力59a,59bをアンド回路596,597に出力する。位相検出器593は変換器電流の瞬時値iI−R,iI−S,iI−Tが入力されると、出力信号θを関数発生器594,595に出力するものである。関数発生器594,595は出力信号59c,59dをアンド回路596,597に出力する。増方向阻止器598と減方向阻止器599は有効電力制御器器10の制御偏差10eが入力されると、その出力信号を制御器106に出力するものである。但し、アンド回路596,597の出力信号59e,59fがロジックレベル1の時に各々増方向阻止、減方向阻止手段が働く。
【0302】
このような構成の禁止帯通過タイミング制御器において、比較器591は速度目標値ω0 *がωU−ΔωからωUの間にある場合にロジックレベル1となり、比較器592は速度目標値ω0 *がωLからωL+Δωの間にある場合にロジックレベル1となる。また、位相検出器593は三相の電流からR相を基準とした電流ベクトルの位相θを求める。関数発生器594はθがθ1からθ2、または120°+θ1から120°+θ2または240°+θ1から240°+θ2の間ロジックレベル1となる。同様に関数発生器595はθが−θ1から−θ2、または−(120°+θ1)から−(120°+θ2)、または−(240°+θ1)から−(240°+θ2)の間ロジックレベル1となる。但し、θ1からθ2の間は禁止帯通過開始が好ましくない位相である。
【0303】
アンド回路596の出力信号59eがロジックレベル1の時には、増方向阻止手段が活き、アンド回路597の出力信号59fがロジックレベル1の時には減方向阻止手段が働く。即ち
59e=1,10e>0では59g=0
59e=1,10e≦0では59g=10e
59f=1,10e≧0では59g=10e
59f=1,10e<0では59g=0
59e=0,59f−0では59g=10e
となる。
【0304】
次に、速度目標値ω0 *が昇速方向、即ち10e正で禁止帯を通過する場合を説明する。ω0 *がωU−Δω迄は出力信号59a,59eがロジックレベル0であるので、ω0 *は通常通リ上昇するが、ωU−Δωに到達した時、禁止帯通過開始に好ましくない位相である場合は59eがロジックレベル1となり、ω0 *はωU−Δωで止まる。変換器電流の位相が進んで59cがロジックレベル0に戻ると、出力信号59eは復帰して、ω0 *は上昇してωUに至る。そこで、修正された電流目標値ω1 *がωUとなり、電流指令値ω*は上昇開始する。
【0305】
以上述べたように、禁止帯を通過する際は、通過開始、即ちω*が上昇開始する時の電流ベクトルの位相が好ましい値に制御される。
【0306】
このような構成の禁止帯通過タイミング制御器59において、禁止帯通過時の変化率を一定にして、禁止帯下限速度通過時の位相θをパラメータとして、禁止帯を通過した時のR相の電流の一例を示すと図43のようになる。但し、タイミングt1,t2は速度目標値が禁止帯下限速度,禁止帯上限速度を通過したタイミングである。禁止帯下限速度通過時の位相によって、禁止帯通過中の電流波形が異なることが分かる。R相の正側電流を流す素子からみると、θIが−30°から大きくなるに従って通電面積が大きくなることがわかる。以上から、禁止帯通過開始時の電流べクトルの位相を適切に選ぶと禁止帯通過中の電流面積を小さくできることがわかる。
【0307】
このような構成の可変速制御装置によれば、禁止帯通過開始時の電流の位相を適切に選ぶことで、禁止帯通過中の電流面積を小さくできる。従って、禁止帯通過時の変換器電流が低減されるので、素子に流れる電流は低減され、禁止帯通過時に素子にとって過酷な状態に陥ることを避けられる。
【0308】
図44は図38における電流振幅修正手段562をタップ上げ指令演算器60で構成した回路図である。
【0309】
上記タップ上げ指令演算器60は、禁止帯検出信号56aを入力し、タップ上げ指令値60aを図示していない主変圧器タップ制御器に出力する。
【0310】
このような構成において、禁止帯通過中は比較器561がロジックレベル1となり、タップ上げ指令演算器60により、主変圧器タップ制御器を介して主変圧器のタップを上げる。
【0311】
このような構成の可変速制御装置によれば、禁止帯通過に先だって主変圧器のタップが上がり、周波数変換器7の電流は低減される。従って、禁止帯通過時に、素子にとって楽な状態となる。
【0312】
図45は図38における電流振幅修正手段562を自励式周波数変換器の直流リンク電圧修正手段61で構成した回路図である。
【0313】
このような構成において、速度目標値が速度禁止帯に入るとコンバータ制御により直流リンク電圧設定値を高める。速度指令値は速度目標値が速度禁止帯を通過完了後に速度禁止帯を通過するので、この時はコンバータによる直流リンク電圧を高める制御は完了している。このため、同一の有効電力であっても、巻線形誘導機の一次電流は小さくなる。これに伴い変換器電流も小さくなる。
【0314】
従って、禁止帯通過時の素子の損失が軽減され、素子にとって過酷な運転状態に陥ることは避けられる。しかも、禁止帯通過所要時間を変えることなく実現できる効果もある。
【0315】
図46は、図38における電流振幅修正手段562を原動機トルク修正手段62に置き換えた回路構成図である。
【0316】
上記原動機トルク修正手段62は、比較器621と切換えスイッチ622,623で構成される。
【0317】
上記切換えスイッチ622は、比較器621で切換えられ、切換えスイッチ623は禁止帯検出信号56aによって切換えられる。切換えスイッチ622の入力信号62bは、禁止帯を昇速方向で通過する時に変換器電流にとって楽になる原動機トルクを得る制御弁の開度指令値である。また、この入力信号62bは禁止帯を降速方向で通過する時に変換器電流にとって楽になる原動機トルクを得る制御弁の開度指令値である。
【0318】
このような構成の原動機トルク修正手段62において、比較器621は、速度目標値ω0 *が基準同期速度以下で切換えスイッチ622の出力信号62cとして62aを選択し、基準同期速度以上で62bを選択する。禁止帯通過に先だって、禁止帯検出信号56aにより、切換えスイッチ623は62cが選択される。これにより原動機トルクは減少し、その結果変換器電流も減少する。
【0319】
このような構成の可変速制御装置によれば、禁止帯通過に先だって、周波数変換器7の電流は低減される。従って、禁止帯通過時の素子の損失が軽減され、素子にとって過酷な運転状態に陥ることが避けられ、しかも禁止帯通過所要時間を変えずに実現できる効果もある。
【0320】
図47は、図31に示す速度禁止帯回避制御器51に変動抑制器63を追加した回路構成図である。
【0321】
図47において、変動抑制器63は比較器631と変動分除去手段632で構成したものである。
【0322】
上記比較器431は、有効電力制御器10からのω0 *と速度禁止帯回避制御器51からの速度指令値ω*が入力されると、変動分除去手段632を介して有効電力制御器11に変動分の除去信号を出力するものである。
【0323】
このような構成の変動抑制器63において、比較器631の出力信号63aは禁止帯回避制御中にロジックレベル1となる。変動分活除去能632は出力信号63aがロジックレベル1の時、有効電力制御器11の変動分を除去する。
【0324】
このような構成の可変速制御装置によれば、速度目標値が速度禁止帯に入ると、速度目標値の変動分が抑制されるため、速度目標値が速度禁止帯を通過する頻度が抑制され、素子にとって過酷な運転状態である禁止帯通過の頻度が抑制されるので、素子にとって過酷な運転状態に陥ることが避けられる。
【0325】
図48は図47における変動抑制器63をアナログスイッチ64で構成した第1の例を示す回路図である。
【0326】
図48において、有効電力制御器10内の調定率演算器102の出力10bをアナログスイッチ64を介して加算器101に入力するようにしたものである。
【0327】
このような構成において、速度目標値が速度禁止帯に入ると禁止帯滞留検出器551からの切替指令56aによりアナログスイッチ64が開放してガバナーフリー制御成分がロックされ、ガバナーフリー制御成分による速度目標値の変動分が抑制されるので、速度目標値が速度禁止帯を通過する頻度が抑制される。
【0328】
従って、素子にとって過酷な運転状態である禁止帯通過の頻度が抑制されるので、素子にとって過酷な運転状態に陥ることを避けることができる。
【0329】
図49は、図47における変動抑制器63をアナログスイッチ64で構成した第2の例を示す回路図である。
【0330】
図49において、有効電力制御器10内の制限器103の出力10cを加算器101に入力するようにしたものである。
【0331】
このような構成において、速度目標値が速度禁止帯に入ると禁止帯滞留検出器551からの切替指令56aによりアナログスイッチ64が開放してAFC制御成分がロックされ、AFC制御成分による速度目標値の変動分が抑制される。
【0332】
従って、素子にとって過酷な運転状態である禁止帯通過の頻度が抑制されるので、素子にとって過酷な運転状態に陥ることを避けることができる。
【0333】
図50は図47における変動抑制器63をローパスフィルタ661、比較器662および切換えスイッチ663で構成した回路図である。
【0334】
上記ローパスフィルタ661は、有効電力制御器10からのω0 *が入力されると速度度目標値の速い変動成分を抑制するものである。また、比較器662は有効電力制御器10からのω0 *と速度禁止帯回避制御器51からのω*が入力され、禁止帯回避制御中は切換えスイッチ663がローパスフィルタ661の出力を選択して、速度制御器8に入力するものである。
【0335】
このような構成の可変速制御装置によれば、速度目標値が速度禁止帯に入るとローパスフィルタにより速度目標値に含まれる速い変動成分が抑制されるので、速度目標値が速度禁止帯を通過する頻度が抑制される。従って、素子にとって過酷な運転状態である禁止帯通過の頻度が抑制されるので、素子にとって過酷な運転状態に陥ることが避けられる。
【0336】
図51は本発明による可変速制御装置の第4の実施の形態を示す回路構成図で、図62と同一構成部には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分について述べる。
【0337】
第4の実施の形態では、図51に示すように図62における速度禁止帯制御器9と速度制御器8を各々すべり周波数禁止帯回避制御器67とすべり周波数制御器18に置き換えたものである。
【0338】
図52はすべり周波数禁止帯回避制御器67とすべり周波数制御器18の具体例を示す回路構成図である。
【0339】
図52において、すべり周波数禁止帯回避制御器67は、すべり周波数目標値演算器671、すべり周波数目標値修正手段672およびすべり周波数指令値演算器673とで構成される。
【0340】
上記すべり周波数目標値演算器671は、速度目標値値ω0 *が入力されると、出力信号S0 *をすべり周波数目標値修正手段672に出力する。すべり周波数目標値修正手段672の出力信号S1 *は、すべり周波数指令値演算器673を介してすべり周波数指令値S*として、すべり周波数制御器18に出力される。
【0341】
また、すべり周波数制御器18は、すべり周波数検出手段181と減算器182と制御器183で構成される。
【0342】
すべり周波数検出手段181は、速度、系統周波数、周波数変換器電流制御内の位相基準等からすべりSを検出するが、本構成においては検出方法に依存しない。減算器182はS*とSが入力されると、出力信号18aを制御器183に出力するものである。
【0343】
このような構成の可変速制御装置において、すべり周波数目標値演算器67の各信号S0 *,S1 *,S*は各々すべり周波数目標値、修正されたすべり目標値、すべり周波数指令値の意味を持つ。修正されたすべり目標値S1 *はすべり周波数禁止帯内に入らないように決められる。
【0344】
但し、すべり周波数禁止帯は禁止幅fBNDから決まり,系統周波数の影響は受けない。−fBNDからfBNDの間が禁止帯となる。修正されたすべり目標値S1 *に従って、すべり周波数指令値S*、すべり周波数Sが制御されるので、すべり周波数Sもすべり周波数禁止帯に入ることはない。すべり周波数Sは周波数変換器4の周波数そのものであるので、素子に過酷となる−fBNDからfBNDの間の低周波数での運転は避けられる。
【0345】
このような構成の可変速制御装置によれば、従来は系統周波数が変動すると、禁止帯に止まる時間が長くなる恐れがあったが、すべり周波数指令値S*がすべり周波数禁止帯に止まっている時間は短時間に限られる。また、有効電力制御のマイナループがすべり周波数制御であるので、直接すべり周波数を制御でき、すべり周波数禁止帯回避制御が系統周波数の変動の影響を受けない。従って、素子にとって過酷な運転状態である低周波数での運転が確実に避けられる。
【0346】
図53は図51のすべり周波数禁止帯回避制御器の具体例を示す回路構成図である。
【0347】
図53において、すべり周波数禁止帯回避制御器68は、減算器681とヒステリシス関数器682と変化率制限器683とで構成される。
【0348】
上記減算器681は、速度目標値ω0 *と系統周波数が入力されると、その出力68aをすべり周波数目標値S0 *としてヒステリシス関数器682に出力する。ヒステリシス関数器682は出力68bを修正されたすべり周波数目標値S1 *として変化率制限器683に出力する。変化率制限器683は出力68cをすべり周波数指令値S*として、すべり周波数制御器18に出力する。
【0349】
ヒステリシス関数器682の飛び上り点と飛び下がり点が禁止帯幅fBNDから決まるfBND,−fBNDになる。他は図33と同様である。
【0350】
上記構成の可変速制御装置によれば、ヒステリシス関数によってすべり周波数目標値がすべり周波数禁止帯に入らないように修正され、この修正されたすべり周波数目標値からすべり周波数指令値が決まり、すべり周波数が禁止帯に滞留せずに短時間で通過するので、図51と同様の効果が得られる。また、ヒステリシス関数に系統周波数を用いなくても良いので、簡単な関数で実現できる。
【0351】
図54は図53のすべり周波数禁止帯回避制御器68に比例制御活殺器69を追加した回路構成図である。但し、有効電力制御器10の制御器106は積分制御器と比例制御器で構成され、積分制御用の制御偏差10eIと比例制御用の制御偏差10ePが分離されているものである。
【0352】
上記比較器691は、ヒステリシス関数器682の入力S0 *と出力S1 *とが入力され、比較結果でアナログスイッチ692をオンする。アナログスイッチ692は有効電力制御器10の制御器106のに含まれる比例制御用の制御偏差10ePを活殺する。
【0353】
このような構成のすべり周波数禁止帯回避制御器68において、すべり周波数目標値S0 *がすべり周波数禁止帯に入っているとS0 *とS1 *に差があるので、比較器691はアナログスイッチ692をオフさせる。従って,比例制御用の制御偏差10ePは0となり、制御器106は積分制御のみとなる。
【0354】
従って、制御器106に比例制御があると、制御偏差10eの変化によって、すべり周波数目標値S0 *がヒステリシス幅を越えて変化することがある。この場合は、S1 *が−fBNDとfBNDの値を交互に繰り返すことになり,すべり周波数指令値S*が禁止帯の中に滞留する恐れがある。
【0355】
このような可変速制御装置によれば、制御偏差10eの変動があっても、制御偏差10eの積分値でS0 *が変化するので、S*が禁止帯を越える前にS0 *が逆の方向へ変化することを防止できる。これにより、禁止帯内での運転が回避でき、素子にとって過酷な運転は避けられる。
【0356】
図55は、図51におけるすべり周波数禁止帯回避制御器67に禁止帯通過待ち手段70を追加した回路構成図である。
【0357】
図55において、禁止帯通過待ち手段70は、高値選択器701、低値選択器702、比較器703,704、オフディレイタイマ705およびアナログスイッチ706,707,708,709とで構成したものである。
【0358】
上記高値選択器701は、修正されたすべり周波数目標値S1 *と禁止帯幅とが入力されると、その出力70aをアナログスイッチ706に出力する。低値選択器702は、S1 *と禁止帯幅とが入力されると、その出力70bをアナログスイッチ707に出力する。比較器703は、S1 *と系統周波数fLが入力されると、アナログスイッチ570,707を切換えるものである。
【0359】
また、比較器704は、S1 *とすべり周波数目標値S0 *とが入力されると、その出力70dをオフディレイタイマ705に出力する。オフディレイタイマ705は、アナログスイッチ708,709を切換えるものである。
【0360】
さらに、アナログスイッチ709はS1 *が入力され、またアナログスイッチ706,707,708,709を介して信号70a、70b,S1 *の何れかが選択されて信号70eとなり、信号70eは第二の修正された速度目標値S2 *としてすべり周波数指令値修正手段673に入力される。
【0361】
このような構成の禁止帯通過待ち手段70は、すべり周波数目標値が禁止帯に入った後は、一定時間異常すべり周波数目標値が禁止帯の中の値になることはない。このため、変換器電流の周波数が短時間の間に禁止帯を繰り返し通過することがなくなり、従って図35の禁止帯待ち手段と同様に素子にとって過酷な運転状態に陥ることを避けることができる。
【0362】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、素子にとって過酷な運転状態になった場合には、素子の負担を軽減することができ、また周波数変換器の容量を大きくすることなく、系統周波数が変動しても変換器の素子の破損を避けることが可能となり、さらに禁止帯通過時の素子の負担を軽くすることができる可変速制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による可変速制御装置の第1の実施の形態を示す回路構成図。
【図2】同実施の形態における素子温度異常検出装置の第1の具体例を示す回路構成図。
【図3】同実施の形態における素子温度異常検出装置の第2の具体例を示す回路構成図。
【図4】同実施の形態における素子温度異常検出装置の第3の具体例を示す回路構成図。
【図5】同実施の形態における素子温度異常検出装置の第4の具体例を示す回路構成図。
【図6】同実施の形態における素子温度異常検出装置の第5の具体例を示す回路構成図。
【図7】同実施の形態における素子異常検出装置の第1の具体例を示す回路構成図。
【図8】同実施の形態における素子異常検出装置の第2の具体例を示す回路構成図。
【図9】同実施の形態における素子異常検出装置の第3の具体例を示す回路構成図。
【図10】同実施の形態における素子異常検出装置の第4の具体例を示す回路構成図
【図11】同実施の形態における素子異常検出装置の第5の具体例を示す回路構成図。
【図12】同実施の形態における素子異常検出装置の第6の具体例を示す回路構成図
【図13】本発明による可変速制御装置の第2の実施の形態を示す回路構成図。
【図14】同実施の形態における速度変更装置の第1の具体例を示す回路構成図。
【図15】同実施の形態における速度変更装置の第2の具体例を示す回路構成図。
【図16】同実施の形態における速度変更装置の第3の具体例を示す回路構成図。
【図17】図14における速度偏移量演算手段の他の構成例を示す回路図。
【図18】図13の運転点変更手段として図14に示す速度変更装置に速度目標値追従装置を追加した場合の構成例を示す回路図。
【図19】図14の速度指令値修正手段を有効電力設定値修正手段に置き換えた速度変更装置の構成例を示す回路図。
【図20】図13の運転点変更手段を無効電流指令値修正手段に置き換えた構成例を示す回路図。
【図21】図19に示す有効電力設定値修正手段に電圧設定値追従手段を追加した場合の構成例を示す回路図。
【図22】図14の速度指令値修正手段を制御弁開度指令値修正手段に置き換えた構成例を示す回路図。
【図23】図13の運転点変更手段を制御状態変更手段で構成した回路図。
【図24】図23における制御状態変更手段をパルス数低減手段で構成した回路図。
【図25】図24におけるパルス数低減手段をキャリア周波数修正手段で構成した回路図。
【図26】図24におけるパルス数低減手段を出力電圧修正手段で構成した回路図。
【図27】図26における出力修正手段の具体例を示す回路構成図。
【図28】図26における出力電圧修正手段の具体例を示す回路構成図。
【図29】図23における制御状態変更手段を直流リンク電圧修正手段で構成した回路図。
【図30】本発明による可変速制御装置の第3の実施の形態を示す回路構成図。
【図31】同実施の形態における速度禁止帯回避制御器の第1の具体例を示す回路構成図。
【図32】系統周波数の動きと速度禁止帯回避制御器における禁止帯上限速度ωUおよび禁止帯下限速度ωLとの関係図。
【図33】同実施の形態における速度禁止帯回避制御器の第1の具体例を示す回路構成図。
【図34】同じく速度禁止帯回避制御器において、速度目標値ω0 *が一定の変化率で上昇中に系統周波数が変化した場合の動作説明図。
【図35】同実施の形態における速度禁止帯回避制御器に比例制御器を追加した構成を示す回路図。
【図36】同実施の形態における速度禁止帯回避制御器に禁止通過待ち手段を追加した構成を示す回路図。
【図37】図31における速度禁止帯回避制御器にゲートパルス数低減手段を追加した構成を示す回路図。
【図38】図37におけるゲートパルス数低減手段を電流振幅修正手段に置き換えた構成を示す回路図。
【図39】図38における電流振幅修正手段を無効電流指令値修正手段で構成した回路図。
【図40】図38における電流振幅修正手段の具体例を示す有効分電流修正手段の回路構成図。
【図41】図40の有効分電流修正において、有効分電流が周波数変換器のR相に流れるときの経路を示す図。
【図42】図38における電流振幅修正手段を禁止帯通過タイミング制御器で構成した回路図。
【図43】図42の禁止帯通過タイミング制御器において、禁止帯下限速度通過時の位相θをパラメータとして、禁止帯を通過した時のR相の電流の一例を示す図。
【図44】図38における電流振幅修正手段をタップ上げ指令演算器で構成した回路図。
【図45】図38における電流振幅修正手段を自励式周波数変換器の直流リンク電圧修正手段で構成した回路図。
【図46】図38における電流振幅修正手段を原動機トルク修正手段に置き換えた回路構成図。
【図47】図31に示す速度禁止帯回避制御器に変動抑制器を追加した回路構成図。
【図48】図47における変動抑制器をアナログスイッチで構成した第1の例を示す回路図。
【図49】図47における変動抑制器をアナログスイッチで構成した第2の例を示す回路図。
【図50】図47における変動抑制器をローパスフィルタ、比較器および切換えスイッチで構成した回路図。
【図51】本発明による可変速制御装置の第4の実施の形態を示す回路構成図。
【図52】同実施の形態におけるすべり周波数禁止帯回避制御器とすべり周波数制御器の具体例を示す回路構成図。
【図53】同実施の形態におけるすべり周波数禁止帯回避制御器の具体例を示す回路構成図。
【図54】図53のすべり周波数禁止帯回避制御器に比例制御活殺器を追加した回路構成図。
【図55】同実施の形態におけるすべり周波数禁止帯回避制御器に禁止帯通過待ち手段を追加した回路構成図。
【図56】従来の可変速発電システムの制御装置の構成例を示す回路図。
【図57】図56に示す周波数変換器電流制御装置の詳細を示す回路構成図。
【図58】図57の周波数変換器電流制御装置における速度制御器の回路構成図。
【図59】図56における有効電力制御器の詳細を示す回路構成図。
【図60】図56に示す電圧制御器の詳細を示す回路構成図。
【図61】同制御装置において、周波数変換器に流れる電流波形図。
【図62】従来の他の可変速発電システムの制御装置を示す回路構成図。
【図63】同システムの制御装置における速度禁止帯回避制御器の構成例を示す回路図。
【図64】同システムの制御装置において、速度指令値の特性を示す図。
【図65】同システムの制御装置において、速度目標値ω0 *と速度指令値ω*の制御について説明図。
【符号の説明】
1…巻線形誘導機
2…発電機遮断器
3…主変圧器
4…周波数変換器
5…原動機
6…原動機制御装置
7…周波数変換器電流制御装置
8…速度制御器
10…有効電力制御装置
11…電圧制御器
12…電圧検出器
13…位相検出器
14…電流検出器
15…速度検出器
16…周波数検出器
17…有効電力検出器
21…素子異常検出手段
23〜27…素子温度異常検出装置
28〜33…素子異常検出装置
140…運転点変更手段
35〜37…速度変更装置
38…速度偏移量演算手段
39…速度目標値追従装置
40…有効電力設定値修正手段
42…電圧設定値追従手段
43…制御弁開度指令値修正手段
44…制御状態変更手段
45…パルス数低減手段
46…キャリア周波数修正手段
47〜49…出力電圧修正手段
50…直流リンク電圧修正手段
51、52…速度禁止帯回避制御器
54…禁止帯通過待ち手段
55,56…ゲートパルス低減手段
57…無効電流指令値修正手段
58…有効分電流修正手段
59…禁止帯通過タイミング制御器
60…タップ上げ指令演算器
61…直流リンク電圧修正手段
62…原動機トルク修正手段
63…変動抑制器
64,65…アナログスイッチ
67…すべり周波数禁止帯回避制御器
68…比例制御活殺器
70…禁止帯通過待ち手段
Claims (3)
- 原動機と軸結合した巻線形誘導機の一次側を主変圧器、発電機側遮断器を介して系統に接続し、二次側に電流制御装置により制御される周波数変換器を接続してなる可変速システムを制御する可変速制御装置において、
前記周波数変換器の素子が熱的に厳しい状態にあることを検出すると停止信号を出力して前記周波数変換器を停止させる素子異常検出手段を具備し、
前記素子異常検出手段は、各素子の放熱フィンの温度を検出する温度検出器と、周波数変換器を冷却する冷却水の温度検出器と、素子の放熱フィンの温度と冷却水の温度とから各素子の温度を推定する温度推定器と、各素子の温度推定値と規定値とを各々比較する比較器と、いずれかの素子の温度推定値が規定値を超えると前記周波数変換器に停止信号を出力するオア回路とで構成されたことを特徴とする可変速制御装置。 - 原動機と軸結合した巻線形誘導機の一次側を主変圧器、発電機側遮断器を介して系統に接続し、二次側に電流制御装置により制御される自励式周波数変換器を接続してなる可変速システムを制御する可変速制御装置において、
前記自励式周波数変換器の素子が熱的に厳しい状態にあることを検出すると停止信号を出力して前記自励式周波数変換器を停止させる素子異常検出手段を具備し、
前記素子異常検出手段は、変換器電流制御装置より出力され、且つ変換器電流が正側のときのゲートパルスおよび変換器電流が負側のときのゲートパルスをそれぞれ計数し、その各半波毎のゲートパルス数の積算値により前記素子異常を検出して前記自励式周波数変換器に停止信号を出力する正側および負側ゲートパルス数カウンタとで構成されたことを特徴とする可変速制御装置。 - 原動機と軸結合した巻線形誘導機の一次側を主変圧器、発電機側遮断器を介して系統に接続し、二次側に電流制御装置により制御される周波数変換器を接続してなる可変速システムを制御する可変速制御装置において、
速度目標値が系統周波数と禁止帯幅から決まる速度禁止帯に入らないように速度目標値を修正する速度目標値修正手段とこの速度目標値修正手段により修正された速度目標値から速度指令値を演算する手段とからなる速度禁止帯回避制御器と、速度目標値が速度禁止帯に入ると速度目標値の変動分を抑制する変動抑制手段とを具備したことを特徴とする可変速度制御装置。
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