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JP4561633B2 - 建設車両用ラジアルタイヤの製造方法 - Google Patents

建設車両用ラジアルタイヤの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、超重量の建設車両用ラジアルタイヤの製造方法に関し、更に詳しくは、特別大掛かりな保形用補助設備を使用することなく、成形工程における外力や自重に起因する変形を抑制可能にする建設車両用ラジアルタイヤの製造方法に関する。
図9〜図11は、空気入りラジアルタイヤの一般的な成形工程を例示したものである。図9はバンド成形工程で、多数本のスチールコードを平行に配列したシート状のカーカス層を成形ドラム90に巻き付けて円筒状バンド91に成形する。次いで、円筒状バンド91は成形ドラム90から取り外されて、図10に示す一次グリーンタイヤ成形工程の成形ドラム93に移し替えられる。成形ドラム93では、円筒状バンド91の両端部にそれぞれビードコア92,92が外挿された後、これらビードコア92,92をそれぞれ包み込むように円筒状バンド91の両端部が矢印で示すように折り返される。さらに折り返された両端部の外周にサイドトレッドが巻き付けられることにより一次グリーンタイヤが成形される。次いで、一次グリーンタイヤは成形ドラム93から取り外され、図11に示す二次グリーンタイヤ成形工程の成形枠98に移し替えられる。成形枠98上において、一次グリーンタイヤ94は幅方向の両端部を中央側に引き寄せられると共に、中央部を膨径させ、その膨径した中央部外周にベルト層95及びキャップトレッド層96が巻き付けられることにより円環状の二次グリーンタイヤ97に成形される。最後に、二次グリーンタイヤ97は成形枠98から取り外されて金型に挿入され、内側からブラダーを膨張させて金型内面に押し付けられた状態で加硫硬化されることにより製品タイヤになる。
一方、建設車両用空気入りラジアルタイヤは、乗用車用タイヤや通常のバス・トラック用タイヤに比べて非常に重量が大きいのが特徴である。例えば、タイヤサイズ1800R33クラスの比較的小さいタイヤでも450kg以上、中間のタイヤサイズ2700R49クラスのタイヤでは1400kgを超える。建設車両用空気入りラジアルタイヤは、このように超重量であるため、上述したタイヤ成形工程において、外部からの外力だけでなく、自重によりグリーンタイヤが変形することがあり、変形を内包したまま加硫するとユニフォミティーの低いタイヤになる。従来、このような変形を防止するため、建設車両用空気入りタイヤの各成形工程において、特別大掛かりな保形用の補助装置が使用されていた。
本発明者等の検討によれば、上述した超重量グリーンタイヤの成形工程における変形は、主としてカーカス層の接ぎ合わせ部に多く発生し、カーカスコードに対してタイヤ周方向に加わる引張力が大きな原因になっていることを知見した。例えば、バンド成形工程では、成形ドラムから円筒状バンドを取り出す際に、カーカス層の接ぎ合わせ部を中心にカーカスコード間に局部的な目開き(オープンコード)が生ている。また、円筒状バンドをバンド成形機の成形ドラムから一次グリーンタイヤ成形機の成形ドラムに移し替える際に、円筒状バンドを吊り上げるときや、一次成形ドラムに円筒状バンドを挿入後に、その一次成形ドラムを拡径する時に局部的に周方向の引張力が生じて、カーカスコード間に局部的な目開きやコード並びの乱れが起き易くなる。
さらに、二次グリーンタイヤ成形工程では、一次グリーンタイヤをトロイダル状に膨径する際に、コード間に目開きが生じ易い。また、二次グリーンタイヤを金型に組み込んで加硫成形するまでの工程では、ベルト層やトレッドゴム等が組み込まれて更に重量が増加しているため、自重による変形を起こしやすくなっている。
上述したように、このような建設車両用空気入りラジアルタイヤの成形工程における変形防止は、大掛かりな保形用補助設備を使用して行っている。しかし、大きな設備であるため、設備費用が過大になるだけでなく、設置用のスペースが必要になったり、操作工数がかかったりして、生産性を低下させる大きな要因になっていた。したがって、保形用補助設備を使用することなく、変形防止を達成することができれば、コストダウンに対する寄与は非常に大きいが、これまでその対策は見当たっていない。
建設車両用タイヤに比べて軽量な通常のトラック・バス用の重荷重用ラジアルタイヤにおいては、トレッドショルダー域におけるカーカス層とインナーライナーとの間に有機繊維コードの補強層を挿入するようにしたものがある(特許文献1参照)。しかし、このような補強層を超重量構造の建設車両用空気入りラジアルタイヤに単に適用するだけでは、カーカス層のコード間目開きの防止効果を得ることは不可能である。
特開平5−319015号公報
本発明の目的は、上述した従来の問題を解消し、特別大掛かりな保形用補助設備を使用することなく成形工程中の変形を防止する建設車両用ラジアルタイヤの製造方法を提供することにある。
上記目的を達成する本発明の建設車両用ラジアルタイヤの製造方法は、多数本のスチールコードが平行に配列した1層のカーカス層を円筒状バンドに形成し、該円筒状バンドの軸方向の両端部にそれぞれビードコアを外挿すると共に、該ビードコアを包み込むように前記両端部を折り返してなる補強構造体を埋設したグリーンタイヤを成形し、該グリーンタイヤを加硫する建設車両用ラジアルタイヤの製造方法において、前記円筒状バンドを成形する際に、前記カーカス層の外周側に多数本の有機繊維コードが平行に配列した少なくとも1層の保形層を、該カーカス層のスチールコードと前記有機繊維コードとが交差するように巻き付けることを特徴とするものである。
本発明によれば、シート状のカーカス層から円筒状バンドを成形する際に、カーカス層の外周側に、少なくとも1層の有機繊維コードからなる保形層を、その有機繊維コードがカーカス層のスチールコードと交差するように巻き付けるようにしたので、この保形層によりカーカス層のタイヤ周方向に対するせん断剛性を向上することができる。したがって、一次グリーンタイヤ及び二次グリーンタイヤの各成形工程において、保形用の補助設備を格別に使用しなくてもカーカス層におけるスチールコード間の目開きを防止することができる。その結果、低コストでユニフォミティーの高い建設車両用空気入りラジアルタイヤを製造することができる。
[図1]本発明の建設車両用ラジアルタイヤの製造方法における一次グリーンタイヤ成形工程の一例を示す模式図である。
[図2]本発明の建設車両用ラジアルタイヤの製造方法における一次グリーンタイヤ成形工程の他の一例を示す模式図である。
[図3]上記図1及び図2の各工程により製造した建設車両用ラジアルタイヤを例示する半断面図である。
[図4]本発明の建設車両用ラジアルタイヤの製造方法における一次グリーンタイヤ成形工程の更に他の一例を示す模式図である。
[図5]上記図4の工程により製造した建設車両用ラジアルタイヤを例示する半断面図である。
[図6]本発明の建設車両用ラジアルタイヤの製造方法における一次グリーンタイヤ成形工程の更に他の一例を示す模式図である。
[図7]本発明の建設車両用ラジアルタイヤの製造方法における一次グリーンタイヤ成形工程の更に他の一例を示す模式図である。
[図8]上記図6及び図7の各工程により製造した建設車両用ラジアルタイヤを例示する半断面図である。
[図9]空気入りラジアルタイヤ製造工程におけるバンド成形工程を示す説明図である。
[図10]空気入りラジアルタイヤ製造工程における一次グリーンタイヤ成形工程を示す説明図である。
[図11]空気入りラジアルタイヤ製造工程における二次グリーンタイヤ成形工程を示す説明図である。
[図12](a)〜(d)は、それぞれ従来例及び本発明により製造した建設車両用ラジアルタイヤにおけるスチールコードの目開きの検査結果を示すグラフである。
本発明の建設車両用ラジアルタイヤの製造方法は、タイヤ成形工程における最初のバンド成形工程において、多数本のスチールコードを平行にして未加硫ゴムでゴム引きされた単一層のカーカス層から円筒状バンドを形成する際に、その円筒状バンドを構成するカーカス層の外周側に、さらに多数本の有機繊維コードを平行に配列した少なくとも1層の保形層を、その有機繊維コードが上記カーカス層のスチールコードと交差するように巻き付けることからなる。
本発明に適用されるタイヤ成形工程としては、最初のバンド成形工程において上記保形層を巻き付ける操作が組み入れられる限り、図9〜図11に示す従来から一般的なタイヤ成形工程に従ってもよく、或いは一次グリーンタイヤ成形工程と二次グリーンタイヤ成形工程とを単一の成形機で一段階で実施するようにしたタイヤ成形工程に従うようにしてもよい。
本発明において、筒状バンドは単一層のカーカス層により成形される。そのカーカス層のスチールコードは、ラジアル構造のタイヤとして、タイヤ周方向(成形ドラムの周方向に対応する)に対するコード角度を85〜90°にする。保形層は少なくとも1層とするが、そのうちの少なくとも1層は、タイヤ軸方向の幅が上記円筒状バンドの両端部に配置したビードコア間の間隔の60〜100%にする。
カーカス層のスチールコードがタイヤ周方向に対してコード角度を略90°に設定する場合には、保形層は少なくとも2層を層間で互いに有機繊維コードを交差させるように配置するのがよい。また、少なくとも2層の保形層は、共に円筒状バンドの両端部に配置したビードコア間の間隔の60〜100%にするのがよい。また、保形層における有機繊維コードはカーカス層のスチールコードに対して1〜12°の交差角度にするのがよい。
また、カーカス層のスチールコードをタイヤ周方向に対して85〜90°の範囲にする場合、上記保形層としては、タイヤ軸方向の幅が上記円筒状バンドの両端部に配置したビードコア間の間隔の60〜100%である第一保形層と、該第一保形層の中央域の外周側に積層した該第一保形層よりも幅狭の第二保形層とからなり、かつ該第二保形層の有機繊維コードが前記カーカス層のスチールコードとなす交差角度を前記第一保形層の有機繊維コードが前記カーカス層のスチールコードとなす交差角度よりも大きくするとよい。
また、上記幅狭の第二保形層のタイヤ軸方向の幅は両端部のビードコア間の間隔の15〜45%にするとよい。
また、上記において、第一保形層の有機繊維コードがカーカス層のスチールコードとなす交差角度は1〜12°にし、かつ第二保形層の有機繊維コードがカーカス層のスチールコードとなす交差角度は30〜70°にするとよい。
以下、図に示す実施例を参照して具体的に説明する。
図1は、本発明の実施例において、前工程のバンド成形工程で成形された円筒状バンドBを、一次グリーンタイヤ成形工程の成形ドラムに装着した状態を示す。
円筒状バンドBは、前工程のバンド成形工程で成形された後、一次グリーンタイヤ成形工程の成形ドラム(図示せず)上に移し替えられたものである。この円筒状バンドBは、成形ドラムの回転軸Oを中心に円筒状に巻回する1層のカーカス層1と、その外周側に巻き付けられた1層の保形層2とから形成されている。カーカス層1はゴム被覆された多数本のスチールコード1aが平行に配列して構成され、かつそのスチールコード1aはタイヤ周方向(回転軸Oに直交する方向)に対して85〜90°の角度をなしている。
他方、保形層2は、ゴムを被覆された多数本の有機繊維コード2aが平行に配列して構成されている。この保形層2の有機繊維コード2aと、上記カーカス層1のスチールコード1aとは互いに交差する関係にあり、かつドラム回転軸Oを挟んで互いに反対側に傾斜している。保形層2を構成する有機繊維コード2aの種類は特に限定されないが、好ましくはナイロンコード、ポリエステルコード等が使用される。
上記のように成形ドラム上に装着された円筒状バンドBに対し、軸方向の両端部に保形層2を挟むように一対のビードコア3、3がそれぞれ外挿され、次いで両外側に延長するカーカス層1の両端部をビードコア3を包み込むように折り返すようにする。さらに、この折り返されたカーカス層1の両端部を覆うようにサイドウォールゴム(図示せず)を巻き付けて一次グリーンタイヤが成形される。以後、従来タイヤの成形と同様にして、二次グリーンタイヤ成形工程に移して二次グリーンタイヤを成形し、最後に金型に挿入して加硫成形することにより製品タイヤにすることができる。
図2は、本発明の他の実施例を示し、同じく前工程のバンド成形工程で成形された円筒状バンドBを、一次グリーンタイヤ成形工程の成形ドラムに装着した状態を示す。
この実施例において、カーカス層1はスチールコード1aがタイヤ周方向に対して85〜90°になり、かつ保形層2の有機繊維コード2aをカーカス層1のスチールコード1aと交差させる関係にした点は、図1の実施例の場合と同様であるが、その保形層2の有機繊維コード2aをカーカス層1のスチールコード1aと回転軸Oに対して同じ側に傾斜させている点で図1の場合とは異なっている。
図1及び図2の各実施例とも、いずれも保形層2の有機繊維コード2aをカーカス層1のスチールコード1aと交差するように配置しているため、カーカス層1のタイヤ周方向に対するせん断剛性を高めることができ、このせん断剛性の向上によりスチールコード1aのタイヤ周方向の動きを規制することができる。したがって、バンド成形工程以降の一次グリーンタイヤ成形工程、二次グリーンタイヤ成形工程、加硫工程などにおいて、保形用補助設備を格別使用しなくても、カーカス層1がスチールコード1aのコード間の目開きを起こさないようにすることができる。
保形層2はカーカス層1の外周側に配置することが重要で、保形層2をカーカス層1の内側に配置したのでは、加硫後のタイヤのショルダー部において保形層2の有機繊維コード2aが破断し易くなる。このように有機繊維コード2aに破断が生じると、破断部分に対応するインナーライナーが破壊を起し、その破壊部分からタイヤ内の高圧空気がカーカス層1の中に浸入することによりカーカス層1を破壊するようになる。
スチールコード1aと有機繊維コード2aとの交差角度は1〜12°であることが好ましい。交差角度が1°未満では、スチールコード1aの目開きを防止する効果が得られなくなるばかりでなく、加硫後のタイヤにおいて有機繊維コード2aがスチールコード1a間に入り込み、走行時に互いのコードが直接接触することにより有機繊維コード2aを破断させるこになる。また、12°超であると、カーカス層1のタイヤ周方向のせん断剛性が高くなりすぎるため、スチールコード1aの目開き防止には有利であるが、膨径工程においてスチールコード1aの並びが乱れ、カーカスコードウェーブの故障を引き起こす原因になる。
また、保形層2のタイヤ軸方向(成形ドラムの回転軸方向)の幅Rとしては、両端部のビードコア3、3間の間隔Wの60〜100%にし、かつカーカス層1のタイヤ軸方向の中央域(成形ドラムの軸方向の中央域)に配置することが好ましい。スチールコード1aの目開きがタイヤの品質に最も大きく影響するのは、トレッドのクラウン部からショルダー部にかけてであるので、この領域にスチールコードの目開きが発生しないようにするには、保形層2の上記幅Rが両端部のビードコア3、3間隔の60%以上にするのがよい。一方、ビードコア3、3を包み込むように折り返されたカーカス層1とビードコア3、3との間に有機繊維コード2aが介在すると、ビードコア3、3によるカーカス層1の保持力が低下し、ビード部に故障を起こしやすくなるので、上記幅Rはビードコア3、3間隔の100%以下にするのがよい。
上記図1及び図2の工程を経て加硫成形された建設車両用ラジアルタイヤは、図3に示すような断面構造になる。
図3に示す建設車両用ラジアルタイヤTにおいて、スチールコードからなるカーカス層1は1層からなり、左右のビード部7、7に延長する両端部がそれぞれ左右一対のビードコア3、3の周囲をタイヤ内側から外側に折り返されている。カーカス層1の外周側に、有機繊維コードからなる保形層2が1層配置されている。また、カーカス層1のクラウン部には複数のベルト層4が配置されている。5はクラウン部、6はサイドウォール部、7はビード部である。
図4は、本発明の更に他の実施例を示し、同じく前工程のバンド成形工程で成形された円筒状バンドBを、一次グリーンタイヤ成形工程の成形ドラムに装着した状態を示す。
図4において、前述した実施形態と同様に、成形ドラム上の円筒状バンドBは前工程のバンド成形工程で成形されたものである。この円筒状バンドBは、1層からなるカーカス層1の外周側に、2層の保形層2A、2Bを巻き付けている。この場合の保形層の数としては3層以上であってもよい。
上記カーカス層1のスチールコード1aはタイヤ周方向(回転軸Oに直交する方向)に対して略90°になっている。2層の保形層2A、2Bの有機繊維コード2a、2aは層間で互いに交差し、かつカーカス層1のスチールコード1aとも互いに交差する関係になっている。保形層2A、2Bを構成する有機繊維コード2aは、上記実施例同様に特に限定されないが、好ましくはナイロンコード、ポリエステルコードが使用される。
カーカス層1の外周側に少なくとも2層の保形層2A、2Bを配置し、しかも保形層2A、2Bが層間で有機繊維コード2aを互いに交差させた上で、さらにカーカス層1のスチールコード1aとも交差していることにより、カーカス層1のタイヤ周方向のせん断剛性が向上し、バンド成形工程以降の成形工程において保形用の補助機構を格別使用しなくてもスチールコード1aのコード間の目開きを防止することができる。
カーカス層1のスチールコード1aと保形層2A、2Bを構成する有機繊維コード2aとの交差角度は1〜12°とすることが好ましい。交差角度が1°未満ではカーカス層1のタイヤ周方向剛性向上の効果は得られない。また、12°より大きくては、膨径工程においてスチールコード1aの並びが乱れ、カーカスコードウェーブを発生する原因になりやすい。
また、少なくとも2層の保形層2A、2Bは、それぞれタイヤ軸方向(ドラム回転軸方向)の幅R1、R2を、左右一対のビードコア3、3間の間隔Wの60〜100%にし、かつカーカス層1のタイヤ軸方向の中央域に配置することが好ましい。さらに好ましくは、内層側の保形層2Aの幅R1を外層側の保形層2Bより幅R2よりも広くするのがよい(R1>R2)。上記保形層2A、2Bの幅R1及びR2は、60%未満ではトレッドのクラウン部からショルダー部におけるスチールコード1aの目開きを抑えることが難しくなる。また、100%より大きくするとビードコア3、3によるカーカス層1の保持能力が低下し、ビード部の故障を発生する原因になる。
上記実施例から得られた加硫後の建設車両用ラジアルタイヤは、図5のような断面構造になる。2層の保形層2A、2Bを備えるようになっている以外は、図3のタイヤとほぼ同様の構成である。
図6は、本発明の更に他の実施例を示し、同じく前工程のバンド成形工程で成形された円筒状バンドBを、一次グリーンタイヤ成形工程の成形ドラムに装着した状態を示す。
図6は、前述した実施形態と同様に、バンド成形工程で成形した円筒状バンドBを、一次グリーンタイヤ成形工程の成形ドラムに移し替えた状態を示す。カーカス層1の外周側に巻き付けた保形層は、第一保形層2Cと、さらに外側の第一保形層2Cよりも幅狭の第二保形層2Dとからなる。カーカス層1はスチールコード1aがタイヤ周方向に対して85〜90°の角度をなすように配置されている。
第一保形層2Cは、タイヤ軸方向の幅が左右一対のビードコア3、3間の間隔Wの60〜100%であり、その有機繊維コード2aがカーカス層1のスチールコード1aと回転軸Oの軸方向を挟んで互いに反対方向に傾斜している。また、第二保形層2Dはタイヤクラウン部とほぼ同じタイヤ軸方向の幅R4を有し、その有機繊維コード2aが第一保形層2Cの有機繊維コード2aと同方向に傾斜すると共に、カーカス層1のスチールコード1aに対して更に大きな角度で交差している。
図7は、本発明の更に他の実施例を示し、同じく前工程のバンド成形工程で成形された円筒状バンドBを、一次グリーンタイヤ成形工程の成形ドラムに装着した状態を示す。
この図7の実施例は、図6における第一保形層2Cの回転軸Oに対する傾斜方向をカーカス層1のスチールコード1aと同方向に傾斜させるように交差させた点で異なるだけで他は図6と同様の構成である。
図6及び図7のように、カーカスコード1aがタイヤ周方向に対して80〜90°をなすカーカス層1の外周側に、このカーカスコード1aと交差し、かつタイヤ周方向に交差する有機繊維コード2aにより構成された広幅の第一保形層2Cと狭幅の第二保形層2Dとを積層したことにより、タイヤクラウン部及びサイドウォール部におけるカーカス層のタイヤ周方向に対するせん断剛性をバランスを保ちながら向上するため、カーカスコード1aの目開きを防止することができる。特に、タイヤクラウン部に2層の第一保形層2C及び第二保形層2Dを配置し、第二保形層2Dの有機繊維コード2aがカーカスコード1aに対する交差角度を第一保形層2Cの有機繊維コード2aがなす交差角度より大きくしたので、タイヤクラウン部におけるカーカスコード1aの目開きを一層効果的に防止することができる。したがって、バンド成形工程以降の成形工程において、特に保形用の補助機構を格別使用しなくてもスチールコード1aのコード間の目開きを防止することができる。
上記において、第一保形層2Cの幅R3が左右一対のビードコア3、3間の間隔Wの60%未満ではタイヤクラウン部からショルダー部域におけるスチールコード1aの目開きを抑えることが難しくなり、100%超ではビードコア3、3のカーカス層1を保持する能力が低下してビード部における故障の原因となる。
また、第二保形層2Dの幅R4は、左右一対のビードコア3、3間の間隔Wの15〜45%であることが好ましく、さらに好ましくは、図示しない隣接して配置される最内ベルト層の幅より広幅にするとよい。上記幅R4が左右のビードコア3、3間隔の15%未満ではタイヤクラウン部におけるスチールコード1aの目開きが防ぎ難くなり、45%超ではタイヤショルダー部からサイドウォール部にかけてカーカスコードウェーブ故障が発生し易くなる。
スチールコード1aと第一保形層2Cの有機繊維コード2aとの交差角度は1〜12°とすることが好ましい。交差角度が1°未満では前述した実施形態と同様に、カーカス層のタイヤ周方向剛性向上効果が得られない。また、交差角度が12°より大きいと、膨径工程におけるスチールコード1aの並びが乱れてカーカスコードウェーブを発生する原因になる。
また、スチールコード1aと第二保形層2Dの有機繊維コード2aとの交差角度は30〜70°にすることが好ましい。交差角度が30°未満ではタイヤクラウン部におけるスチールコード1aの目開きが防ぎ難くなる。また、交差角度が70°より大きいと、タイヤショルダー部にカーカスコードウェーブを発生し易くなる。
図8は上述した図6及び図7の実施例により製造した建設車両用ラジアルタイヤTの断面構造を示し、保形層を除き前述した他の実施例の場合と同様の構造になっている。
タイヤサイズ2400R35の建設車両用ラジアルタイヤを製造するに当たり、円筒状バンドの成形工程で有機繊維コードの保形層を巻き付けなかった従来タイヤ(従来例)と表1のようにコード角度を異なせた6ナイロンコード(2100T/2)の保形層を巻き付けた本発明実施タイヤ(実施例1〜3)をそれぞれ製造した。
上記4種類のタイヤについて、それぞれカーカス層のスプライス部におけるスチールコード間の目開きの状況をX線検査機を用いて調べて評価を行った。評価方法は、スプライス部におけるコード間隔をΔ、スプライス部以外の正常な部分のコード間隔をδとし、後者δに対する前者Δの比Δ/δ=dを指数にして評価し、その指数dを横軸、個数nを縦軸にして分布状況を調べた結果を図12(a)〜(d)に示した。
図12(a)〜(d)から、従来タイヤ(従来例)では目開きの指数dがピーク値を1.3として1.6以上に突出する部分を含み、局部的にコード間目開きが大きくなっていることがわかる。これに対して、実施例1〜3は目開きの指数dのピーク値を1.2以下として1.6以上に突出する部分を含んでいないことがわかる。このように目開きの指数dが1.6以上になると、圧力容器としてのタイヤ性能に不具合が生ずるため、通例は市場への出荷を制限する必要がある。
Figure 0004561633

Claims (7)

  1. 多数本のスチールコードを平行に配列した1層のカーカス層を円筒状バンドに成形するバンド成形工程を含む建設車両用ラジアルタイヤの製造方法において、
    前記円筒状バンドを成形する際に、該円筒状バンドを構成する前記カーカス層の外周に多数本の有機繊維コードを平行に配列した少なくとも1層の保形層を、前記有機繊維コードと前記カーカス層のスチールコードとが交差するように巻き付けることを特徴とする建設車両用ラジアルタイヤの製造方法。
  2. 前記カーカス層のスチールコードのタイヤ周方向に対するコード角度が85〜90°であり、前記保形層のうち少なくとも1層のタイヤ軸方向の幅を前記円筒状バンドの両端部に配置したビードコア間の間隔の60〜100%にする請求項1に記載の建設車両用ラジアルタイヤの製造方法。
  3. 前記カーカス層のスチールコードのタイヤ周方向に対するコード角度が略90°であり、前記保形層を少なくとも2層にすると共に、層間で互いに有機繊維コードを交差させた請求項2に記載の建設車両用ラジアルタイヤの製造方法。
  4. 前記有機繊維コードの前記スチールコードに対する交差角度を1〜12°にした請求項1、2又は3に記載の建設車両用ラジアルタイヤの製造方法。
  5. 前記保形層をタイヤ軸方向の幅が前記円筒状バンドの両端部に配置したビードコア間の間隔の60〜100%である第一保形層と、該第一保形層の中央域の外周側に積層した該第一保形層よりも幅狭の第二保形層とからなり、かつ該第二保形層の有機繊維コードが前記カーカス層のスチールコードとなす交差角度を前記第一保形層の有機繊維コードが前記カーカス層のスチールコードとなす交差角度よりも大きくした請求項2に記載の建設車両用ラジアルタイヤの製造方法。
  6. 前記第二保形層のタイヤ軸方向の幅を前記ビードコア間の間隔の15〜45%にした請求項5に記載の建設車両用ラジアルタイヤの製造方法。
  7. 前記第一保形層の有機繊維コードが前記カーカス層のスチールコードとなす交差角度を1〜12°にし、前記第二保形層の有機繊維コードが前記カーカス層のスチールコードとなす交差角度を30〜70°にした請求項5又は6に記載の建設車両用ラジアルタイヤの製造方法。
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