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JP4541399B2 - 金属製ガスケット - Google Patents

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本発明は、エンジンのシリンダヘッドやシリンダブロック等の二つの部材の間に挟持してシールを行う金属製ガスケットに関し、より詳細には、シール対象の流体の圧力をシール面圧に利用できて、優れたシール性能を発揮できる金属製ガスケットに関する。
シリンダヘッドガスケット等の金属製ガスケットは、自動車のエンジンのシリンダヘッドとシリンダブロック(シリンダボディ)等の2つのエンジン部材の間に挟まれた状態で、ボルトにより締結され、燃焼ガス、オイル、冷却水等の流体をシールする役割を持っている。
最近のエンジンは、従来のエンジンに比べて、小型化、軽量化が進んで、材質が鋳鉄からアルミニウム合金に変わると共に、エンジンの高出力化に伴って、燃焼ガスの圧力は増加の傾向にある。また、一方で、エンジンの軽量化の面から、ガスケットに使用できる金属構成板の枚数も少なくなりつつあり、少ない枚数の金属構成板で高いシール面圧を発揮する必要が生じている。
シリンダヘッドガスケットの場合には、高温で腐食性がある燃焼ガスがガスケットの金属構成板の間に入るのを防止するために、U字形状のリングであるグロメットや、金属構成板を折り返した折り返し部がシリンダボア用穴側に凸となるように配置され使用されてきた(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、このシリンダボア用穴側に凸のグロメットや折り返し部の場合には、シール対象穴の燃焼ガスの圧力が高くなった場合に、この燃焼ガスの圧力によってシリンダヘッドをシリンダブロックから離反させる方向に力が作用するが、この時に、燃焼ガスの圧力はグロメットと折り返し部に対してガスケットを薄くする方向に作用する。そのため、エンジン部材の離間に対するガスケットのシール部材の追従性が悪くなり、シール性能が悪くなるという問題がある。
特開2006−132714号公報
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、シール対象の流体の圧力を利用して、シール対象穴周りのシール性能を高めることができると共に、シール対象穴周りに面圧調整用部材を配置できて、高いシール面圧を発生できるシール性能と耐久性に優れた金属製ガスケットを提供することにある。
上記の目的を達成するための本発明に係る金属製ガスケットは、2枚以上の金属構成板を有し、二つの部材の間に挟持してシールを行う金属製ガスケットのシール対象穴に面した部分に、断面が外周側に凸となるU字形状のリングを、2枚の金属構成板の間に配設すると共に、この2枚の金属構成板の少なくとも一方の金属構成板のシール対象穴部分を折り返して、この折り返し部の端部を前記U字形状のリングの内側に配置して構成される。
この構成によれば、断面が外周側に凸となるU字形状に形成されたリングの配設により、ガスシール対象の流体の圧力が高くなって、ガスケットを挟む部材の締結力に対抗してガスケットを挟む部材を押し広げて、ガスケットに対する押圧力が減少する場合には、高圧の流体の圧力が折り返し部の外側からU字形状のリング内に伝達され、U字形状のリングを押し広げる力が増加して、U字形状のリングを挟持している両側のガスケットの金属構成板をエンジン部材方向に押圧し、シールに必要なシール面圧を維持する。そのため、シールにおける追従性が著しく向上する。
また、シール対象の流体の圧力が低くなって、ガスケットを挟む部材の締結力によるガスケットに対する押圧力が増加する場合には、シール対象穴周辺が押圧されると折り返し部とU字形状のリングにより気密室が構成されるので、この気密室の流体の圧力を利用して押圧力に対抗できる。また、更に、押圧力が増した場合には、折り返し部の端部が面圧調整用部材となり、シムの役割を果たすので、シール対象穴周辺部における厚みを維持でき、この厚みによって発生するシール面圧により、シールに必要なシール面圧を維持できる。それと共に、U字形状のリングが押し潰されるのを、その内部に挿入された折り返し部の端部により防ぐことができるので、耐久性も増加する。
また、シール対象穴の周囲に折り返し部を設けたので、この折り返し部で金属構成板がバラバラになるのを防止できる。そのため、金属構成板がバラバラにならないようにするための点溶接やカシメが不要になる。
上記の金属製ガスケットにおいて、前記U字形状のリングを挟む2枚の金属構成板の少なくとも一方に、シール対象穴側が開くハーフビードを設け、このハーフビードの内側に前記U字形状のリングを配設して構成する。このハーフビードを設けるとU字形状のリングを配設し易くなると共に、ハーフビードのシール対象穴側の平坦部で比較的広い幅でシールラインを形成することができるので、エンジン部材の傷や圧痕の発生を抑制できると共に、ハーフビードのシール機能も加わり、シール性能がより向上する。
上記の金属製ガスケットにおいて、前記ハーフビードのシール対象穴側部分に外側に凸となるフルビードを配設して構成する。この構成によれば、ハーフビードの押圧力に加えて、フルビードの押圧力を加えることができるので、強い押圧力のシールラインを形成することができる。
本発明の金属製ガスケットによれば、断面が外周側に凸のU字形状のリングを配設したことにより、シール対象の流体の圧力が高くなると、折り返し部からU字形状のリング内に伝達された流体の圧力によりU字形状のリングを開く方向に押圧して、U字形状のリングを挟持している両側のガスケットの金属構成板を部材方向に押圧する。そのため、シール対象の流体の圧力をシール用面圧に利用できるので、シール面圧が高くなりシール性能を向上できる。
また、両側の部材がガスケットを押圧する力が増加した場合には、折り返し部とU字形状のリングで、気密室を構成できるので、この気密室の流体の圧力を利用してこの押圧力に対抗できる。この効果は流体が液体の時は特に効果が大きい。また、更に、押圧力が増した場合には、折り返し部の端部がシムと同様の圧力調整用部材の役割を果たすので、U字形状のリングの圧潰を防せぎながら、シール対象穴周辺部における厚みを維持でき、この厚みによって発生するシール面圧により、適正なシールラインを維持できる。
次に、図面を参照して本発明に係る金属製ガスケットの実施の形態についてシリンダヘッドガスケットを例にして説明する。なお、図1〜図8は、模式的な説明図であり、構成をより理解し易いように、板厚、シール対象穴の大きさ、折り返し部の大きさ、ビードの大きさ等の寸法を実際のものとは異ならせて、誇張して示している。
本発明に係る実施の形態の金属製ガスケットは、エンジンのシリンダヘッドとシリンダブロック(シリンダボディ)のエンジン部材の間に挟持されるシリンダヘッドガスケットであって、シリンダボアの高温・高圧の燃焼ガス、及び、冷却水通路や冷却オイル通路等の冷却水やオイル等の流体をシールする。
このシリンダヘッドガスケットは、軟鋼板、ステンレス焼鈍材(アニール材)、ステンレス調質材(バネ鋼板)等で形成される金属構成板(金属基板)を複数有して構成される。また、シリンダブロック等のエンジン部材の形状に合わせて製造され、シリンダボア用穴(燃焼室用穴)、冷却水やエンジンオイルの循環のための液体穴、締結ヘッドボルト用のボルト穴等が形成される。
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1は、2枚の金属構成板10,20と、断面が外周側に凸となるU字形状に形成されたリング30とからなる。この第1金属構成板10と第2金属構成板20は、例えば、ステンレス焼鈍材で形成され、U字形状のリング30は例えば、ステンレスバネ鋼板で形成される。
シリンダボア用穴2の周縁部において、第1金属構成板10には、シリンダボア用穴2側が開くハーフビード11が設けられ、第2金属構成板20には、シリンダボア用穴2側が開くハーフビード21が設けられる。この2つのハーフビード11,21の間に、外周側に丸み部(折り返し部)31を持つU字形状のリング30を配設する。
更に、第1金属構成板10のシール対象穴2の周縁部分を折り返して、この折り返し部12の端部12aをU字形状のリング30の内側に配置する。また、第2金属構成板20のシリンダボア用穴2の周縁部分を折り返して、この折り返し部22の端部22aをU字形状のリング30の内側に配置する。即ち、平面視で、U字形状のリングの直線部分の先端部よりも外周側に、折り返し部12,22の端部12a,22aが入り込んで配置される。この構成により、折り返し部12の端部12aと折り返し部22の端部22aとが、U字形状のリング30の内部で対面することになる。この両端部12a,22aの間は、図1に示すように空間部40とシリンダボア用穴2を連結する隙間があってもよいが、無くても良い。
但し、両端部12a,22aの間に隙間が無い場合には、このガスケット1がエンジン部材に挟まれた状態で、シリンダボア用穴2の燃焼ガスの圧力Pが高くなった時に、この燃焼ガスの圧力Pにより、少なくとも一時的に、図1に示すように隙間が生じて燃焼ガスの圧力PがU字形状のリング3の内側に伝達できるように構成する。
また、水穴3側においても、第1金属構成板10では水穴3側が開くハーフビード13を設け、第2金属構成板20では水穴3側が開くハーフビード23を設ける。
この構成により、エンジンの燃焼ガスの圧力Pが高くなると、図1に示すように、U字形状のリング30内に伝達された燃焼ガスの圧力PによりU字形状のリング30が開く方向に圧力Pが作用して、U字形状のリング30を挟持している両側の金属構成板10,20を部材方向に押圧する力F1が発生する。そのため、燃焼ガスの圧力Pをシール用面圧に利用できるので、シール性能が向上する。また、このU字形状のリング30により、このU字形状のリング30より外周側に対しては、金属構成板10,20の間に燃焼ガスが入り難くなるので、シール性能が向上すると共に、耐久性を向上することができる。
また、エンジンの燃焼ガスの圧力Pが低くなり、図2に示すように、両側のエンジン部材がガスケット1を両側から押圧する押圧力F2が発生する場合には、空間部40が折り返し部12,22によって閉塞され、折り返し部12,22とU字形状のリング30で気密室40aを構成できるので、U字形状のリング30の反発力と折り返し部12,22の反発力にこの気密室40aのガスの圧力を加えて、押圧力F2に対抗できる。また、更に、押圧力F2が増した場合には、折り返し部12,22の端部12a,22aが圧力調整用部材となり、シムと同様の圧力調整の役割を果たすので、シール対象穴2の周辺部における厚みを維持でき、この厚みによって発生するシール面圧により、適正なシールラインを維持できる。それと共に、U字形状のリング30が押し潰されるのを、その内部に挿入された折り返し部12,22の端部12a,22aにより防ぐことができるので、耐久性も増加する。
また、シール対象穴2の周囲に折り返し部12,22を設けたので、この折り返し部12,22で金属構成板10,20とU字形状のリング30がバラバラになるのを防止できる。そのため、金属構成板10,20とU字形状のリング30がバラバラにならないようにするための点溶接やカシメが不要になる。
また、ハーフビード11,21により、U字形状のリング30が配設し易くなると共に、シール対象穴2側の比較的広い幅の平坦部でシールラインを形成することができるので、エンジン部材の傷や圧痕の発生を抑制できる。つまり、最近のアルミニウム合金製のエンジン部材においては、剛性が低く傷が付き易いため、このシールラインの部分に傷が発生し、この傷によりシール性能が劣化して、適正なシール性能を得ることができなくなるという問題があるが、この問題の対策となる。さらに、ハーフビード11,21のシール機能も加わるので、よりシール性能が向上する。
図3に示す本発明の第2の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1Aは、3枚の金属構成板10,20,50と、断面が外周側に凸となるU字形状のリング30とからなる。この第2の実施の形態では、第1の実施の形態において第1金属構成板10と第2金属構成板20の間に、第3の金属構成板50が挟持される。この構成以外は第1の実施の形態と同じである。
この第3の金属構成板50を配設すると、ガスケット1Aの厚み調整が容易となるため、U字形状のリング30と折り返し部12,22の端部12a,22aが配設し易くなる。また、ハーフビード11,21を急傾斜で設けなくてもよくなり、ハーフビード11,21によるシール面圧の調整が容易となる。
図4に示す本発明の第3の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1Bは、3枚の金属構成板10,20,50と、断面が外周側に凸となるU字形状のリング30とからなる。この第3の実施の形態では、第2の実施の形態のように第2金属構成板20に設けたハーフビード21を設けずに、第2金属構成板20はシリンダボア用穴2の周縁部においては平坦に形成される。そして、第1の金属構成板10のハーフビード11と第2金属構成板20の平坦部との間に断面がU字形状のリング30が配設される。この構成以外は第2の実施の形態と同じである。この第3の実施の形態では、第2の実施の形態よりもハーフビード11が一つとなるので、シールラインの面圧を低くできる。
これらの第1〜第3の実施の形態の構造では、燃焼ガスの圧力Pを利用してボア面圧を発生することができるので、ガスシール能力のみならず、追従性も向上する。更に、比較的幅の広い平坦部でエンジン部材に接触するため、高面圧とはならない。従って、アルミニウム合金製のエンジン部材のボア部分の圧痕を減少できる。そのため、特に、アルミニウム合金製のオープンデッキタイプのガソリンエンジンの場合に適している。
図5〜図7に示す本発明の第4〜第6の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1C,1D,1Eは、それぞれ第1〜第3の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1,1A,1Bにおいて、第1金属構成板10のハーフビード11のシリンダボア用穴2側と、第2金属構成板20のハーフビード21のシリンダボア用穴2側に、外側に凸となるフルビード14,24を設けて構成する。このフルビード14,24で、シール面圧の高いシールラインを形成することにより、ディーゼルエンジン等の燃焼ガスの圧力が高いエンジンに適用できるようになる。
なお、図5及び図6の実施の形態では、第1金属構成板10と第2金属構成板20の両方にフルビード14,24を設けたが、何方か一方のみに設けて、シール面圧を低下させることもできる。これらのハーフビード11,21やフルビード14,24の構成は、必要とされるシール面圧に応じて適宜選択される。なお、上記では、フルビード14,24を断面形状が円弧形状のビードで説明したが、このビード形状は、本発明では特に限定されず、断面形状が、円弧形状、正弦形状(コサイン)、台形形状、三角形(山形)形状などであってもよい。
更に、図8に示す第7の実施の形態の金属製ガスケット1Fでは、第1金属構成板10には折り返し部12を設けるが、第2金属構成板20には折り返し部を設けない構成とする。あるいは、図示していないが、第2金属構成板20には折り返し部22を設けるが、第1金属構成板10には折り返し部を設けない構成とする。
この構成によれば、折り返し部12(又は22)の端部12a(又は22a)が一枚となるので、その分、シリンダボア用穴2の周縁部の厚みを、第6の実施の形態の金属製スケット1Eよりも減少することができる。従って、シリンダボア用穴2の周縁部の厚みを減少する場合には、第1〜第5の実施の形態の金属製ガスケット1〜1Dにおいても、第7の実施の形態の金属製ガスケット1Fと同様に、第1金属構成板10又は第2金属構成板20の一方の折り返し部を省くことで対応することができる。
なお、特に図示しないが、U字形状のリング30の内側にワイヤーリング等のシールリングを配設すると、U字形状のリング30の開放側が押圧された場合であっても、シールリングによりU字形状のリング30の開放側が押し潰されるのを防止できる。従って、U字形状のリング30の開放側が押し潰されて、シール対象穴2側で、U字形状のリング30とこのリング30を挟持する金属構成板10,20との間に隙間が生じて燃焼ガスがこの隙間に入るのを回避できる。そのため、よりシール性能を向上できる。
本発明の第1の実施の形態のシリンダヘッドガスケットで折り返し部の端部の間が開いている状態を示す部分断面図である。 本発明の第1の実施の形態のシリンダヘッドガスケットでシリンダボア用穴周縁部が押圧されている状態を示す部分断面図である。 本発明の第2の実施の形態のシリンダヘッドガスケットを示す部分断面図である。 本発明の第3の実施の形態のシリンダヘッドガスケットを示す部分断面図である。 本発明の第4の実施の形態のシリンダヘッドガスケットを示す部分断面図である。 本発明の第5の実施の形態のシリンダヘッドガスケットを示す部分断面図である。 本発明の第6の実施の形態のシリンダヘッドガスケットを示す部分断面図である。 本発明の第7の実施の形態のシリンダヘッドガスケットを示す部分断面図である。
符号の説明
1,1A〜1F シリンダヘッドガスケット
2 シリンダボア用穴
3 水穴
10 第1金属構成板
11,13,21,23 ハーフビード
12,22 折り返し部
12a,22a 折り返し部の端部
14,24 フルビード
20 第2金属構成板
30 U字形状のリング
40 空間部
40a 気密室
50 第3金属構成板(副板)

Claims (3)

  1. 2枚以上の金属構成板を有し、二つの部材の間に挟持してシールを行う金属製ガスケットのシール対象穴に面した部分に、断面が外周側に凸となるU字形状のリングを、2枚の金属構成板の間に配設すると共に、この2枚の金属構成板の少なくとも一方の金属構成板のシール対象穴部分を折り返して、この折り返し部の端部を前記U字形状のリングの内側に配置したことを特徴とする金属製ガスケット。
  2. 前記U字形状のリングを挟む2枚の金属構成板の少なくとも一方に、シール対象穴側が開くハーフビードを設け、このハーフビードの内側に前記U字形状のリングを配設したことを特徴とする請求項1記載の金属製ガスケット。
  3. 前記ハーフビードのシール対象穴側部分に外側に凸となるフルビードを配設したことを特徴とする請求項2記載の金属製ガスケット。
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