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JP4437745B2 - 高耐熱性合成石英ガラスの製造方法 - Google Patents

高耐熱性合成石英ガラスの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、多孔質石英ガラス体を熱処理して得られる高耐熱性合成石英ガラスの製造方法に関する。
合成石英ガラスの製造は、主にハロゲン化珪素の火炎加水分解により得られた多孔質体を、高温で緻密化して製造する方法がよく知られている。このようにして得られる合成石英ガラス体は、火炎加水分解工程を経ているため、多孔質体内に多量のOH基を含んでいる。石英ガラス中のOH基が多量に存在すると、ガラスの粘度が下がり、耐熱性が下がり、1000℃以上で使用される半導体工業用石英ガラス冶具用途としては、変形を起こして好ましくない。
この対策として、特許文献1では、ガラス形成原料を熱酸化または加水分解して、支持棒の端面に二酸化珪素(SiO2)を主成分とするガラス形成物質を付着させ、多孔質ガラスを作製し、この多孔質ガラス燒結体を800〜1000℃でハロゲン元素を含むガラス形成原料ガスにさらした後、透明ガラス化して、無水ガラス母材を作製することを開示している。ガラス原料としては、SiCl4、SiBr4、GeCl4、BBr3、POCl3、PCl3等を例示している。
特開昭54−127914号公報
上記の方法によって得られる合成石英ガラスは、不純物が少ないことから、半導体製造工程において使用される天然水晶を原料とする石英ガラス素材に代わるものとして期待されてきたが、高温製造工程における変形が大きな欠点として認識されていた。
本発明の目的は、天然石英ガラスと同等以上の高温粘度特性を有する高耐熱性合成石英ガラスを安全且つ収率良く製造することができる高耐熱性合成石英ガラスの製造方法を提供することにある。
従来の製造方法によって得られる合成石英ガラスは、加水分解反応をともなうため、得られる多孔質体中に多量のOH基を含む。このOH基は、ガラスの粘度を下げ、半導体工業用分野に使用される石英素材としては、好ましくなかった。
上記課題を解決する為、本発明の高耐熱性合成石英ガラスの製造方法は、水酸基を含むシリカ多孔質ガラス体と有機珪素化合物を共存反応させた後、加熱置換処理と、焼成処理をして緻密なガラス体とする合成石英ガラスの製造方法であって、該加熱置換処理の雰囲気が、水素と不活性ガスの混合ガス雰囲気であることを特徴とする。
本発明の高耐熱性合成石英ガラスの製造方法において、前記水素と不活性ガスの混合ガス中の水素の体積比率が0.5%以上4%以下であることが好適である。また、不活性ガスがArであることが好適である。また、前記シリカ多孔質ガラス体を反応温度が100℃〜1000℃で前記有機珪素化合物と反応させた後、前記水素と不活性ガスの混合ガス雰囲気中で300℃〜1400℃の温度範囲で加熱置換処理を行い、1300℃〜1900℃の温度範囲で焼成処理を施して、緻密な石英ガラス体とすることが、好適である。
本高耐熱性合成石英ガラスは本発明方法で製造されることを特徴とする。
本高耐熱性合成石英ガラス体は、不純物が少なく且つ天然水晶を原料とする天然石英ガラスと同等以上の高温時の粘度を有する高耐熱性合成石英ガラスであり、本発明の製造方法によれば、高耐熱性合成石英ガラス体を安全且つ収率良く製造することができる。
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これらは例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
水酸基を含むシリカ多孔質ガラス体を準備し、有機珪素化合物を反応ガスとして選択し、該水酸基を含むシリカ多孔質ガラス体中に該反応ガスを拡散させ、該水酸基と該有機珪素化合物を反応させ、その後さらに、水素及び不活性ガスの混合ガス雰囲気中で加熱置換処理し、焼成処理を施して、緻密な高耐熱性合成石英ガラス体を作製する。
上記水酸基を含むシリカ多孔質ガラス体としては、ハロゲン化珪素の火炎加水分解で得た多孔質体や、ゾルゲル法によって得られた多孔質体を用いることができる。なお、上記シリカ多孔質体中に含有される水酸基は、10〜2000ppmあれば充分である。上記シリカ多孔質体に反応ガスを供給するに先立ち、シリカ多孔質ガラス体を減圧雰囲気で反応温度近傍で余熱するのが好ましい。
上記有機珪素化合物(反応ガス)としては、例えば、オルガノアセトキシシラン、オルガノアルコキシシラン、オルガノクロルシラン、オルガノクロルフルシラン、オルガノジシラン、オルガノシラザン、オルガノシラノール、オルガノシラン、オルガノシランカルボン酸、オルガノシリコンイソシアナート、オルガノシリコンイソチオシアナート、オルガノシリコンエステル、オルガノシルチアン、オルガノシルメチレン、オルガノジシロキサン、オルガノヒドロゲノシラン、オルガノフルオルシラン、オルガノブロムシラン、オルガノポリシラン、が使用可能で、特に、ヘキサメチルジシラザン等のオルガノシラザンによる反応が最も粘度上昇に効果的であり好ましい。
本発明で用いられる有機珪素化合物としては、具体的には、アセトキシトリメチルシラン、ジアセトキシジメチルシラン、トリアセトキシメチルシラン、アセトキシトリエチルシラン、ジアセトキシジエチルシラン、トリアセトキシエチルシラン、アセトキシトリプロピルシラン、メトキシトリメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、トリメトキシメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、エトキシトリエチルシラン、ジエトキシジエチルシラン、トリエトキシエチルシラン、トリメチルフェノキシシラン、トリクロルメチルシラン、ジクロルジメチルシラン、クロルトリメチルシラン、トリクロルエチルシラン、ジクロルジエチルシラン、クロルトリエチルシラン、トリクロルフェニルシラン、ジクロルジフェニルシラン、クロルトリフェニルシラン、ジクロルジフェニルシラン、ジクロルメチルフェニルシラン、ジクロルエチルフェニルシラン、クロルジフルオルメチルシラン、ジクロルフルオルメチルシラン、クロルフルオルジメチルシラン、クロルエチルジフルオルシラン、ジクロルエチルフルオルシラン、クロルジフルオルプロピルシラン、ジクロルフルオルプロピルシラン、ヘキサメチルジシラン、ヘキサエチルジシラン、ヘキサプロピルシラン、ヘキサフェニルシラン、トリエチルシラザン、トリプロピルシラザン、トリフェニルシラザン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、ヘキサエチルシクロトリシラザン、オクタエチルシクロテトラシラザン、ヘキサフェニルシクロトリシラザン、トリメチルシラノール、ジメチルフェニルシラノール、トリエチルシラノール、ジエチルシランジオール、トリプロピルシラノール、ジプロピルシランジオール、トリフェニルシラノール、ジフェニルシランジオール、テトラメチルシラン、エチルトリメチルシラン、トリメチルプロピルシラン、トリメチルフェニルシラン、ジエチルジメチルシラン、トリエチルメチルシラン、メチルトリフェニルシラン、テトラエチルシラン、トリエチルフェニルシラン、ジエチルジフェニルシラン、エチルトリフェニルシラン、テトラフェニルシラン、トリフェニルシリルカルボ酸、トリメチルシリル酢酸、トリメチルシリルプロニオン酸、トリメチルシリル酪酸、トリメチルシリコnイソシアナート、ジメチルシリコンジイソシアナート、メチルシリコントリイソシアナート、ブチルシリコントリイソシアナート、トリフェニルシリコニソシアナート、ジフェニルシリコンジイソシアナート、フェニルシリコントリイソシアナート、トリメチルシリコンイソチオシアナート、ジメチルシリコンジイソチオシアナート、メチルシリコントリイソチオシアナート、トリエチルシリコンイソチオシアナート、ジエチルシリコンジイソチオシアナート、エチルシリコントリイソチオシアナート、トリフェニルシリコンイソチオシアナート、ジフェニルシリコジイソチオシアナート、フェニルシリコントリイソチオシアナート、硫酸ビス(トリメチルシリル)、硫酸ビス(トリエチルシリル)、リン酸トリス(トリメチルシリル)、シアン化トリエチルシリル、酢酸トリメチルシリル、イソシアン酸トリメチルシリル、ヘキサメチルジシルチアン、ヘキサエチルジシルチアン、ヘキサプロピルジシルチアン、テトラメチルシクロジシルチアン、ヘキサエチルシクロトリシルチアン、テトラエチルシクロジシルチアン、ヘキサメチルジシルメチレン、ヘキサエチルジシルメチレン、ヘキサプロピルジシリメチレン、オクタメチルトリシルメチレン、デカメチルテトラシルメチレン、ドデガメチルペンタシルメチレン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、ヘキサプロピルジシロキサン、ヘキサフェニルジシロキサン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、トリエチルシラン、トリプロピルシラン、ジフェニルシラン、トリフェニルシラン、トリフルオルメチルシラン、ジフルオルジメチルシラン、フルオルトリメチルシラン、エチルトリフルオルシラン、ジエチルジフルオルシラン、トリエチルフルオルシラン、トリフルオルプロピルシラン、フルオルトリプロピルシラン、トリフルオルフェニルシラン、ジフルオルジフェニルシラン、フルオルトリフェニルシラン、トリブロムメチルシラン、ジブロムジメチルシラン、ブロムトリメチルシラン、ブロムトリエチルシラン、ブロムトリプロピルシラン、ジブロムジフェニルシラン、ブロムトリフェニルシラン、ヘキサメチルジシラン、ヘキサエチルジシラン、ヘキサフェニルジシラン、オクタフェニルシクロテトラシラン、オクタシクロテトラシロキサン、などが挙げられる。上記有機珪素化合物は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
前記シリカ多孔質ガラス体と有機珪素化合物との反応は、100℃〜1000℃の温度範囲で、30分以上保持されることが好ましい。
前記加熱置換処理時の水素ガスと不活性ガスの混合ガス雰囲気において、水素ガス濃度が0.5体積%以上4体積%以下であることが好適である。水素ガス濃度が0.5体積%未満の場合は、後述する残留物の置換除去反応が不充分で、ガラス体が灰色または黒色化し発泡も起こり、粘度上昇も小さい為、好ましくない。また、水素ガス濃度が4体積%を超えると、水素によって多孔質体が大量にエッチングされて多孔質体が減量し好ましくない。
前記不活性ガスとしては、具体的には、N2、He、Ar、Kr、Xeなどが使用可能だが、Arがエッチングが最も微量に抑制され好適である。不活性ガスは単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
前記加熱置換処理は、300℃〜1400℃の範囲の加熱温度で30分以上保持されることが好適である。この加熱置換温度は、300℃未満では、置換が充分に行われず、1400℃を超えると、多孔質体の燒結が進んで置換不能となる場合がある。
前記焼成処理は、不活性ガスもしくは還元性ガス雰囲気内、又は減圧下条件のいずれでもよい。前記焼成処理は、1300℃〜1900℃の温度範囲で30分以上保持することが好ましい。該焼成処理により、緻密な石英ガラス体が得られる。
本発明の石英ガラスの製造方法の一例として、反応ガスとして使用するガスとして、ヘキサメチルジシラザン[(CH33Si]2NHを用いた態様を例にして、詳細に説明する。
まず、公知の方法でテトラクロロシランを加水分解してシリカ微粒子を堆積させて多孔質体を作る。この多孔質体を電気炉内に設けられた石英ガラス製の炉心管内にセットし、所定の温度まで昇温する。このとき多孔質体を反応温度近傍で一定時間保持することにより多孔質体に吸着している水分を除くことが好ましい。
次にヘキサメチルジシラザン蒸気を窒素ガスで希釈しながら流し、多孔質体と結合している水酸基とヘキサメチルジシラザンとを反応させる。このとき下記式(1)のような反応が起こると考えられる。
Si−OH + [(CH33Si]2NH →
Si−N−[(CH33Si]2 + H2O ・・・(1)
この反応は、100℃未満では、反応が充分に進まず、1000℃を超えると、反応の前に反応ガスが熱分解してしまい効果を得ることができない。
多孔質体中に残留したSi−N−[(CH33Si]2は、このまま、焼成処理を行うと、焼成体中において分解してCを生成し、灰色または黒色を呈したり、或いは発泡する。焼成処理の前に、加熱置換処理としてH2ガス及び不活性ガスの混合ガスを投入し、300℃〜1400℃で加熱処理することにより、上記残留物は、H2ガスと反応して、高粘度因子であるSi−N、Si−C又は、Si−Siに分解され、Cは、CH4などのガスになって、置換除去される。
前記置換除去反応を充分に行わせ、灰色又は黒色化及び発泡を防止し、粘度上昇効果を高める為には、前記混合ガス中の水素濃度を0.5体積%以上にする必要がある。また、水素濃度が多すぎると多孔質体が大量にエッチングされて多孔質体が減量する為、収率良くガラス体を得るには水素濃度を4体積%以下にすることが重要である。また、不活性ガスとしてアルゴンを用いることがエッチングの抑制に特に効果的である。
前記加熱置換処理後、多孔質体を減圧雰囲気内等に移し1300℃〜1900℃の温度範囲で焼成処理を行うことにより、緻密な石英ガラス体が得られる。上記方法により、透明かつ気泡がなく、粘度も向上した高耐熱性合成石英ガラスが高収率で得られる。
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
(実施例1)
テトラクロロシランの火炎加水分解によって得た、直径100mmの柱状をした石英ガラスの多孔質体(OH基約300ppm含有)約1kgを、電気炉内に装着された石英ガラス製の炉心管(直径200mm)内にセットした。次いで、炉心管内を排気した後、500℃に加熱し、この温度で60分間予熱した。その後600℃まで昇温し、多孔質体中のOH基と反応ガスとしてヘキサメチルジシラザン蒸気1mol/HrをN2ガス1mol/Hrで希釈しながら供給し、500℃で、1時間反応させた。
反応終了後、処理された多孔質体を加熱炉内に移し、800℃に昇温し、ArとH2ガスの比率が97:3である混合ガスを1mol/Hr掛け流しながら、1時間保持し加熱置換処理した後、1×10-3mmHg以下に減圧後、1500℃に昇温し、1時間保持した後、室温に冷却し、緻密化された透明石英ガラス体を得た。
得られた石英ガラス中に残留する水酸基(OH)、塩素(Cl)をそれぞれ赤外吸光分光及び比濁塩素分析法を用いて測定した。結果を表1に示す。また、1280℃に加熱してビームベンディング法によりその温度における粘度(単位:ポアズ)を測定した結果、このガラス体の粘度は、1280℃のlogηで、12.2であった。また、得られたガラス体の重量は、多孔質体に対して1.0wt%減少していた。
(実施例2〜7及び比較例1〜5)
表1に示すように加熱置換処理の条件を変更した以外は、実施例1と同様の条件で石英ガラス体を製造した。結果を表1に示す。
Figure 0004437745
表1に示した如く、実施例1〜6で得られたガラス体は、透明で気泡が存在せず、高温での粘度が高く、エッチングによる減量が極めて少なかった。また、実施例7で得られたガラス体は、気泡が存在せず、高温での粘度が高く、エッチングによる減量が少なかった。一方、加熱置換処理の水素濃度が0.5体積%未満の比較例1〜3は、ガラス体が灰色化され、発泡しており、水素濃度が4体積%を超える比較例4及び5では、ガラス体の減量が増加していた。

Claims (3)

  1. 水酸基を含むシリカ多孔質ガラス体と有機珪素化合物を共存反応させた後、加熱置換処理し、焼成処理をして緻密なガラス体とする合成石英ガラスの製造方法であって、該加熱置換処理の雰囲気が、水素と不活性ガスの混合ガス雰囲気であり、該混合ガス中の水素の体積比率が0.5%以上4%以下であることを特徴とする高耐熱性合成石英ガラスの製造方法。
  2. 前記不活性ガスがArであることを特徴とする請求項1記載の高耐熱性合成石英ガラスの製造方法。
  3. 前記シリカ多孔質ガラス体を反応温度が100℃〜1000℃で前記有機珪素化合物と反応させた後、前記水素と不活性ガスの混合ガス雰囲気中で300℃〜1400℃の温度範囲で加熱置換処理を行い、1300℃〜1900℃の温度範囲で焼成処理を施して、緻密な石英ガラス体とすることを特徴とする請求項1又は2記載の高耐熱性合成石英ガラスの製造方法。
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