JP4436029B2 - 投影光学系の製造方法及び調整方法、露光装置及びその製造方法、デバイス製造方法、並びにコンピュータシステム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、投影光学系の製造方法及び調整方法、露光装置及びその製造方法、デバイス製造方法、並びにコンピュータシステムに係り、更に詳しくは、光学装置が備える投影光学系の製造方法及び調整方法、前記製造方法により製造された投影光学系を備える露光装置及びその製造方法、前記露光装置を用いたデバイス製造方法、、並びに前記露光装置が備える投影光学系の結像特性を調整するコンピュータシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、半導体素子(CPU、DRAM等)、撮像素子(CCD等)及び液晶表示素子、薄膜磁気ヘッド等を製造するリソグラフィ工程では、基板上にデバイスパターンを形成する種々の露光装置が用いられている。近年においては、半導体素子等の高集積化に伴い、高いスループットで微細パターンを精度良くウエハ又はガラスプレート等の基板上に形成可能なステップ・アンド・リピート方式の縮小投影露光装置(いわゆるステッパ)やこのステッパに改良を加えたステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ)等の投影露光装置が主として用いられている。
【0003】
ところで、半導体素子等を製造する場合には、異なる回路パターンを基板上に幾層にも積み重ねて形成する必要があるため、回路パターンが描画されたレチクル(又はマスク)と、基板上の各ショット領域に既に形成されたパターンとを正確に重ね合わせることが重要である。かかる重ね合せを精度良く行うためには、投影光学系の光学特性を正確に計測し、これを所望の状態(例えば、基板上のショット領域(パターン)に対するレチクルパターンの転写像の倍率誤差などを補正するよう)に調整し管理する必要がある。なお、基板上の各ショット領域に第1層目のレチクルパターンを転写する場合にも、第2層目以降のレチクルパターンを精度良く各ショット領域に転写するために、投影光学系の結像特性を調整しておくことが望ましい。
【0004】
従来、投影光学系の光学特性(結像特性を含む)の計測方法として、特定の収差に顕著に反応する所定の計測用パターンが形成された計測用レチクルを用いて露光を行い、計測用パターンの投影像が転写された基板を現像して得られるレジスト像を計測した計測結果に基づいて光学特性を算出する方法(以下、「焼き付け法」と呼ぶ)が、主として用いられている。
【0005】
従来の露光装置では、いわゆるザイデルの5収差と呼ばれる球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差(ディストーション)等の低次の収差を上記焼き付け法によって計測し、この計測結果に基づいて投影光学系の上記諸収差を調整し管理することが主として行われていた。
【0006】
例えば、投影光学系のディストーションを計測する場合には、計測用マークとして、例えば100μm角の内ボックスマークと200μm角の外ボックスマークとが形成された計測用レチクルを用い、一方のマークを投影光学系を介して表面にレジストが塗布されたウエハ上に転写した後、ウエハステージを移動して他方のマークを投影光学系を介してウエハ上に重ねて転写する。投影倍率が例えば1/5倍であるとすると、このウエハを現像後には、40μm角のボックスマークの内側に20μm角のボックスマークが配置されたボックスインボックスマークのレジスト像が形成されることになる。そして、両マークの位置関係とステージ座標系の基準点からのずれ量とによって投影光学系のディストーションを測定する。
【0007】
また、例えば投影光学系のコマ収差を計測する場合には、計測用マークとして、例えば線幅0.9μmの5本のラインパターンを有するラインアンドスペース(以下、「L/S」と記述する)パターンが形成された計測用レチクルを用い、このマークを投影光学系を介して表面にレジストが塗布されたウエハ上に転写する。投影倍率が例えば1/5倍であるとすると、このウエハを現像後には、線幅0.18μmのL/Sパターンのレジスト像が形成されることになる。そして、例えば、両端のラインパターンの線幅をL1、L5として、次式(1)で表される線幅異常値を求めてコマ収差を計測する。
線幅異常値=(L1−L5)/(L1+L5) ……(1)
【0008】
また、例えば、投影光学系のベストフォーカス位置の計測は、ウエハを投影光学系の光軸方向に関する複数の位置に所定ステップピッチで移動し、各位置でL/Sパターンを投影光学系を介してウエハ上の異なる領域に順次転写し、ウエハを現像後に形成されるレジスト像の線幅が最大となるウエハの位置をベストフォーカス位置として計測する。
【0009】
球面収差を計測する場合には、デューティ比の異なる複数種類のL/Sパターンをそれぞれ用いて、上述のベストフォーカス位置の計測を行い、それらのベストフォーカス位置の差に基づいて球面収差を計測する。
【0010】
像面湾曲の計測は、投影光学系の視野内の複数の計測点について、上述したベストフォーカス位置の計測をそれぞれ行い、その計測結果に基づいて最小自乗法により像面湾曲を算出する。
【0011】
また、例えば投影光学系の非点収差は、周期方向が直交する2種類の周期パターンそれぞれについて、上述したベストフォーカス位置を求め、両者の差に基づいて非点収差を算出する。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、半導体素子は年々高集積化し、これに伴って露光装置には、より一層の高精度な露光性能が要求されるようになり、近年では、上記の手法により低次収差を計測し、この計測結果に基づいて投影光学系の光学特性を調整するのみでは不十分となっている。その理由は、次の通りである。
【0013】
すなわち、計測用パターン、例えばL/Sパターンの場合、その空間像はL/Sの周期に対応する基本波及びその高調波の空間周波数成分(固有周波数成分)を持つが、これらの空間周波数成分が投影光学系の瞳面を通過する情報はパターンによって定まる。一方、現実のデバイス製造に用いられるレチクル上には種々のパターンが存在し、その空間像は無数の空間周波数成分を含む。従って、上記従来の収差計測方法では、瞳面を通過する限られた情報を基に収差を特定し調整を行なうこととなるが、これでは現在あるいは将来的に要求される露光精度を達成することは困難だからである。
【0014】
この場合において、欠落した情報を検出するためには、その部分を補う固有周波数を持つレチクルパターンを計測する必要が生じるが、その計測は非常に膨大な計測量となるため、計測時間も膨大となり、およそ非現実的である。
【0015】
また、計測の対象がレジスト像であるため、測定精度、レジストの固有特性等が介在し、レジスト像と光学像(収差)との相関を事前に確立した上で測定データとする必要があった。
【0016】
また、収差が大きいと、パターンの空間像に対しレジスト像が線形性を失ってしまい、正確な収差計測が困難になる。このような場合、上述したレジストの固有特性を計測できる(線形性が保たれる)レベルまでレチクル上の計測用パターンのピッチ、線幅等(空間周波数)を徐々に変えるなどして正確な収差計測ができるようにする必要もあった。
【0017】
また、上述のようにレジスト像がパターンの空間像に対して線形性を失う様な収差(非線形な収差)が発生した場合には、調整対象とする収差の順番を考慮して投影光学系の調整を行う必要もあった。一例を挙げると、コマ収差が大きい場合、結像されるパターンが解像されず、ディストーション、非点収差及び球面収差を計測しても正確なデータを得られない。従って、投影光学系の調整に際しては、先にコマ収差を正しく計測できるようなパターンを用いてコマ収差を計測し、コマ収差が十分に小さくなるように投影光学系を調整した後、ディストーション、非点収差及び球面収差の計測及びその計測結果に基づいて投影光学系を調整する必要があった。このように、調整対象とする収差の順番が規定されることは、調整に使用するレンズ及びレンズ群の選択が制限されることを意味する。
【0018】
さらに、従来の投影光学系の製造方法では、上述の手順で低次収差を修正した後、高次収差の調整を行うという2段階の収差の調整が必要であった上、高次収差の調整のためには、光線追跡という高速コンピュータを用いて演算しても数日間という時間を要する作業が必要であった。
【0019】
また、従来においては、納入先である露光装置のユーザーの如何にかかわらず、それぞれの収差の計測に最適であるとされる計測用パターン(それぞれの収差に顕著に反応するパターン)を対象パターンとして、投影光学系の仕様決めや光学特性の管理等が行われていた。
【0020】
しかるに、投影光学系の各収差が、各種のパターンの結像特性に与える影響は一様でない。例えば、コンタクトホールパターンは、非点収差の影響が特に問題となる。また、細い線幅のラインアンドスペースパターンは、コマ収差の影響を大きく受ける。また、例えば、孤立線パターンとラインアンドスペースパターンとでは、ベストフォーカス位置が異なる。
【0021】
従って、要求する投影光学系の光学特性(収差等)その他の露光装置の性能等もユーザー毎(より正確にはパターン毎)に相違しているのが現実である。
【0023】
本発明の第1の目的は、投影光学系の光学特性を高精度にかつ簡易に調整することができる投影光学系の調整方法を提供することにある。
【0024】
本発明の第2の目的は、投影光学系を用いてマスクのパターンを基板上に精度良く転写することが可能な露光装置、及び露光方法を提供することにある。
【0025】
本発明の第3の目的は、高集積度のマイクロデバイスを歩留まり良く製造することができるデバイス製造方法を提供することにある。
【0033】
【課題を解決するための手段】
本明細書において、「投影光学系を調整する」とは、投影光学系を構成する少なくとも一つの光学素子の位置(他の光学素子との間隔を含む)や傾斜などを変更したりすることは勿論、特に光学素子がレンズエレメントであるときはその偏芯を変更したり、あるいは光軸を中心として回転させることも含む。この他、投影光学系の光学素子単位でその交換を行うこと、あるいは複数の鏡筒を有する投影光学系ではその鏡筒単位で交換を行うこと、投影光学系の少なくとも1つの光学素子を再加工すること、特にレンズエレメントでは必要に応じてその表面を非球面に加工することなどを含む。本明細書では、かかる意味で投影光学系を調整する、あるいは投影光学系の調整などの表現を用いる。
【0038】
本明細書で、「ツェルニケ多項式の各項の係数の感度(Zernike Sensitivity)」とは、所定の露光条件の下における、投影光学系の結像性能、例えば諸収差(あるいはその指標値)のツェルニケ多項式の各項の1λ当たりの変化量を意味する。本明細書においては、かかる意味でツェルニケ多項式の各項の係数の感度(Zernike Sensitivity)なる用語を用いる。
【0051】
本発明は第1の観点からすると、露光装置で用いられる投影光学系の調整方法であって、波面収差を規格値として仕様が決定される投影光学系の結像特性を計測する第1工程と;前記計測結果と、前記投影光学系を介して物体上に転写すべきパターン及びその露光条件に対応するツェルニケ変化表と、前記物体上でのパターン像の結像状態を調整する装置での調整量とツェルニケ多項式の所定項の係数との関係に関するデータと、に基づいて、前記投影光学系の目的収差が零ないし最小、又は所定値となる前記調整装置での調整量を決定し、前記決定された調整量を用いて前記投影光学系を調整する第2工程と;を含む投影光学系の調整方法である。
【0052】
これによれば、波面収差を規格値として仕様が決定される投影光学系の結像特性が計測され、該計測結果と、前記投影光学系を介して物体上に転写すべきパターン及びその露光条件に対応するツェルニケ変化表と、前記物体上でのパターン像の結像状態を調整する装置での調整量とツェルニケ多項式の所定項の係数との関係に関するデータと、に基づいて、前記投影光学系の目的収差が零ないし最小、又は所定値となる前記調整装置での調整量を決定し、前記決定された調整量を用いて投影光学系が調整される。このため、投影光学系の光学特性を高精度にかつ簡易に調整することが可能となる。
【0053】
本発明は、第2の観点からすると、投影光学系を介して物体上にパターンを転写する露光方法であって、本発明の投影光学系の調整方法を用いて前記投影光学系を調整し、前記露光条件のもとで前記調整された投影光学系を介して前記物体上にパターン像を生成することを特徴とする第1の露光方法である。
これによれば、物体上にパターンを精度良く転写することが可能になる。
【0054】
本発明は、第3の観点からすると、物体上にパターンを転写する露光装置において、波面収差を規格値として仕様が決定される投影光学系と、前記物体上でのパターン像の結像状態を調整する調整装置と、前記投影光学系の結像特性の計測結果と、前記投影光学系を介して物体上に転写すべきパターン及びその露光条件に対応するツェルニケ変化表と、前記調整装置での調整量とツェルニケ多項式の所定項の係数との関係に関するデータとに基づいて、前記投影光学系の目的収差が零ないし最小、又は所定値となる前記調整装置での調整量を決定し、前記投影光学系を介して前記物体上に前記パターンを転写するために、前記決定された調整量を用いて前記調整装置を制御する制御系とを備えることを特徴とする露光装置である。
【0055】
これによれば、制御系により、投影光学系を介して前記物体上に前記パターンを転写するために、投影光学系の光学特性が高精度にかつ簡易に調整される。従って、物体上にパターンを精度良く転写することが可能になる。
【0056】
本発明は、第4の観点からすると、物体上にパターンを転写する露光方法において、波面収差を規格値として仕様が決定される投影光学系の結像特性の計測結果と、前記投影光学系を介して物体上に転写すべきパターン及びその露光条件に対応するツェルニケ変化表と、前記物体上でのパターン像の結像状態を調整する装置での調整量とツェルニケ多項式の所定項の係数との関係に関するデータとに基づいて、前記投影光学系の目的収差が零ないし最小、又は所定値となる前記調整装置での調整量を決定し、前記投影光学系を介して前記物体上に前記パターンを転写するために、前記決定された調整量を用いて前記調整装置による前記パターン像の結像状態の調整を行うことを特徴とする第2の露光方法である。
これによれば、物体上にパターンを精度良く転写することが可能になる。
【0057】
本発明は、第5の観点からすると、リソグラフィ工程を含むデバイス製造方法において、前記リソグラフィ工程では、本発明の第1、第2の露光方法のいずれかを用いて物体上にパターンを形成することを特徴とするデバイス製造方法である。
【0071】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図11に基づいて説明する。
【0072】
図1には、本発明の一実施形態に係るコンピュータシステムの全体構成が示されている。
【0073】
この図1に示されるコンピュータシステム10は、露光装置等のデバイス製造装置のユーザーであるデバイスメーカ(以下、適宜「メーカA」と呼ぶ)の半導体工場内のリソグラフィシステム112と、該リソグラフィシステム112にその一部に公衆回線116を含む通信路を介して接続された露光装置メーカ(以下、適宜「メーカB」と呼ぶ)のコンピュータシステム114とを備えている。
【0074】
前記リソグラフィシステム112は、ローカルエリアネットワーク(LAN)118を介して相互に接続された第1コンピュータとしての第1通信サーバ120、光学装置としての第1露光装置1221,第2露光装置1222,第3露光装置1223、及び第1認証用プロキシサーバ124等を含んで構成されている。
【0075】
第1通信サーバ120及び第1〜第3露光装置1221〜1223のそれぞれには、識別のためのアドレスAD1〜AD4がそれぞれ割り当てられているものとする。
【0076】
前記第1認証用プロキシサーバ124は、LAN118と公衆回線116との間に設けられ、ここでは一種のファイアウォールとして機能している。すなわち、第1認証用プロキシサーバ124は、LAN118上を流れる通信データが外部に漏れないようにするとともに、アドレスAD1〜AD4が付された外部からの情報のみを通過させ、それ以外の情報の通過を阻止することによってLAN118を外部からの不正進入から保護している。
【0077】
前記コンピュータシステム114は、LAN126を介して相互に接続された第2認証用プロキシサーバ128及び第2コンピュータとしての第2通信サーバ130等を含んで構成されている。ここでは、第2通信サーバ130には、識別のためのアドレスAD5が割り当てられているものとする。
【0078】
前記第2認証用プロキシサーバ128は、前述した第1認証用プロキシサーバ124と同様に、LAN126上を流れる通信データが外部に漏れないようにするとともに、LAN126を外部からの不正進入から保護する一種のファイアウォールの役目を有している。
【0079】
本実施形態では、第1〜第3露光装置1221〜1223から外部に対するデータの送信は、第1通信サーバ120及び第1認証用プロキシサーバ124を介して行われ、外部から第1〜第3露光装置1221〜1223に対するデータの送信は、第1認証用プロキシサーバ124を介して直接に、あるいは第1認証用プロキシサーバ124及び第1通信サーバ120を介して行われるようになっている。
【0080】
図2には、前記第1露光装置1221の概略構成が示されている。この露光装置1221は、露光用光源(以下「光源」という)にパルスレーザ光源を用いたステップ・アンド・リピート方式の縮小投影露光装置、すなわちいわゆるステッパである。
【0081】
露光装置1221は、光源16及び照明光学系12から成る照明系、この照明系からのエネルギビームとしての露光用照明光ELにより照明されるマスクとしてのレチクルRを保持するマスクステージとしてのレチクルステージRST、レチクルRから出射された露光用照明光ELを基板としてのウエハW上(像面上)に投射する露光用光学系としての投影光学系PL、ウエハWを保持するZチルトステージ58が搭載されたウエハステージWST、及びこれらの制御系等を備えている。
【0082】
前記光源16としては、ここでは、F2レーザ光源(出力波長157nm)あるいはArFエキシマレーザ光源(出力波長193nm)等の真空紫外域のパルス光を出力するパルス紫外光源が用いられている。なお、光源16として、KrFエキシマレーザ光源(出力波長248nm)などの紫外域のパルス光を出力する光源を用いても良い。
【0083】
前記光源16は、実際には、照明光学系12の各構成要素及びレチクルステージRST、投影光学系PL、及びウエハステージWST等から成る露光装置本体が収納されたチャンバ11が設置されたクリーンルームとは別のクリーン度の低いサービスルームに設置されており、チャンバ11にビームマッチングユニットと呼ばれる光軸調整用光学系を少なくとも一部に含む不図示の送光光学系を介して接続されている。この光源16では、主制御装置50からの制御情報TSに基づいて、内部のコントローラにより、レーザ光LBの出力のオン・オフ、レーザ光LBの1パルスあたりのエネルギ、発振周波数(繰り返し周波数)、中心波長及びスペクトル半値幅(波長幅)などが制御されるようになっている。
【0084】
前記照明光学系12は、シリンダレンズ、ビームエキスパンダ(いずれも不図示)及びオプティカルインテグレータ(ホモジナイザ)22等を含むビーム整形・照度均一化光学系20、照明系開口絞り板24、第1リレーレンズ28A、第2リレーレンズ28B、レチクルブラインド30、光路折り曲げ用のミラーM及びコンデンサレンズ32等を備えている。なお、オプティカルインテグレータとしては、フライアイレンズ、ロッドインテグレータ(内面反射型インテグレータ)、あるいは回折光学素子などを用いることができる。本実施形態では、オプティカルインテグレータ22としてフライアイレンズが用いられているので、以下ではフライアイレンズ22とも呼ぶものとする。
【0085】
前記ビーム整形・照度均一化光学系20は、チャンバ11に設けられた光透過窓17を介して不図示の送光光学系に接続されている。このビーム整形・照度均一化光学系20は、光源16でパルス発光され光透過窓17を介して入射したレーザビームLBの断面形状を、例えばシリンダレンズやビームエキスパンダを用いて整形する。そして、ビーム整形・照度均一化光学系20内部の射出端側に位置するフライアイレンズ22は、レチクルRを均一な照度分布で照明するために、前記断面形状が整形されたレーザビームの入射により、照明光学系12の瞳面とほぼ一致するように配置されるその射出側焦点面に多数の点光源(光源像)から成る面光源(2次光源)を形成する。この2次光源から射出されるレーザビームを以下においては、「照明光EL」と呼ぶものとする。
【0086】
フライアイレンズ22の射出側焦点面の近傍に、円板状部材から成る照明系開口絞り板24が配置されている。この照明系開口絞り板24には、ほぼ等角度間隔で、例えば通常の円形開口より成る開口絞り(通常絞り)、小さな円形開口より成りコヒーレンスファクタであるσ値を小さくするための開口絞り(小σ絞り)、輪帯照明用の輪帯状の開口絞り(輪帯絞り)、及び変形光源法用に複数の開口を偏心させて配置して成る変形開口絞り(図1ではこのうちの2種類の開口絞りのみが図示されている)等が配置されている。この照明系開口絞り板24は、主制御装置50により制御されるモータ等の駆動装置40により回転されるようになっており、これによりいずれかの開口絞りが照明光ELの光路上に選択的に設定され、後述するケーラー照明における光源面形状が、輪帯、小円形、大円形、あるいは四つ目等に制限される。
【0087】
なお、開口絞り板24の代わりに、あるいはそれと組み合わせて、例えば照明光学系内に交換して配置される複数の回折光学素子、照明光学系の光軸に沿って可動なプリズム(円錐プリズム、多面体プリズムなど)、及びズーム光学系の少なくとも1つを含む光学ユニットを、光源16とオプティカルインテグレータ22との間に配置し、オプティカルインテグレータ22がフライアイレンズであるときはその入射面上での照明光の強度分布、オプティカルインテグレータ22が内面反射型インテグレータであるときはその入射面に対する照明光の入射角度範囲などを可変とすることで、照明光学系の瞳面上での照明光の光量分布(2次光源の大きさや形状)、すなわちレチクルRの照明条件の変更に伴う光量損失を抑えることが望ましい。なお、本実施形態では内面反射型インテグレータによって形成される複数の光源像(虚像)をも2次光源と呼ぶものとする。
【0088】
照明系開口絞り板24から出た照明光ELの光路上に、レチクルブラインド30を介在させて第1リレーレンズ28A及び第2リレーレンズ28Bから成るリレー光学系が配置されている。レチクルブラインド30は、レチクルRのパターン面に対する共役面に配置され、レチクルR上の矩形の照明領域IARを規定する矩形開口が形成されている。ここで、レチクルブラインド30としては、開口形状が可変の可動ブラインドが用いられており、主制御装置50によってマスキング情報とも呼ばれるブラインド設定情報に基づいてその開口が設定されるようになっている。
【0089】
リレー光学系を構成する第2リレーレンズ28B後方の照明光ELの光路上には、当該第2リレーレンズ28Bを通過した照明光ELをレチクルRに向けて反射する折り曲げミラーMが配置され、このミラーM後方の照明光ELの光路上にコンデンサレンズ32が配置されている。
【0090】
以上の構成において、フライアイレンズ22の入射面、レチクルブラインド30の配置面、及びレチクルRのパターン面は、光学的に互いに共役に設定され、フライアイレンズ22の射出側焦点面に形成される光源面(照明光学系の瞳面)、及び投影光学系PLのフーリエ変換面(射出瞳面)は光学的に互いに共役に設定され、ケーラー照明系となっている。
【0091】
このようにして構成された照明系の作用を簡単に説明すると、光源16からパルス発光されたレーザビームLBは、ビーム整形・照度均一化光学系20に入射して断面形状が整形された後、フライアイレンズ22に入射する。これにより、フライアイレンズ22の射出側焦点面に前述した2次光源が形成される。
【0092】
上記の2次光源から射出された照明光ELは、照明系開口絞り板24上のいずれかの開口絞りを通過した後、第1リレーレンズ28Aを経てレチクルブラインド30の矩形開口を通過した後、第2リレーレンズ28Bを通過してミラーMによって光路が垂直下方に折り曲げられた後、コンデンサレンズ32を経て、レチクルステージRST上に保持されたレチクルR上の矩形の照明領域IARを均一な照度分布で照明する。
【0093】
前記レチクルステージRST上にはレチクルRが装填され、不図示の静電チャック(又はバキュームチャック)等を介して吸着保持されている。レチクルステージRSTは、不図示の駆動系により水平面(XY平面)内で微小駆動(回転を含む)が可能な構成となっている。なお、レチクルステージRSTの位置は、不図示の位置検出器、例えばレチクルレーザ干渉計によって、所定の分解能(例えば0.5〜1nm程度の分解能)で計測され、この計測結果が主制御装置50に供給されるようになっている。
【0094】
なお、レチクルRに用いる材質は、使用する光源によって使い分ける必要がある。すなわち、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザを光源とする場合は、合成石英、ホタル石等のフッ化物結晶、あるいはフッ素ドープ石英等を用いることができるが、F2レーザを用いる場合には、ホタル石等のフッ化物結晶や、フッ素ドープ石英等で形成する必要がある。
【0095】
前記投影光学系PLは、例えば両側テレセントリックな縮小系が用いられている。この投影光学系PLの投影倍率は例えば1/4、1/5あるいは1/6等である。このため、前記の如くして、照明光ELによりレチクルR上の照明領域IARが照明されると、そのレチクルRに形成されたパターンが投影光学系PLによって前記投影倍率で縮小された像が表面にレジスト(感光剤)が塗布されたウエハW上の矩形の露光領域IA(通常は、ショット領域に一致)に投影され転写される。
【0096】
投影光学系PLとしては、図2に示されるように、複数枚、例えば10〜20枚程度の屈折光学素子(レンズ素子)13のみから成る屈折系が用いられている。この投影光学系PLを構成する複数枚のレンズ素子13のうち、物体面側(レチクルR側)の複数枚(ここでは、説明を簡略化するために4枚とする)のレンズ素子131,132,133,134は、結像特性補正コントローラ48によって外部から駆動可能な可動レンズとなっている。レンズ素子131〜134は、不図示の二重構造のレンズホルダをそれぞれ介して鏡筒に保持されている。このうち、レンズ素子131,132,134は、これらを保持する内側レンズホルダに保持され、この内側レンズホルダが不図示の駆動素子、例えばピエゾ素子などにより重力方向に3点で外側レンズホルダに対して支持されている。そして、これらの駆動素子に対する印加電圧を独立して調整することにより、レンズ素子131,132,134を投影光学系PLの光軸方向であるZ軸方向にシフト駆動、及びXY面に対する傾斜方向(すなわちX軸回りの回転方向及びY軸回りの回転方向)に駆動可能(チルト可能)な構成となっている。また、レンズ素子133は、不図示の内側レンズホルダに保持され、この内側レンズホルダの外周面と外側レンズホルダの内周面との間に例えばほぼ90°間隔でピエゾ素子などの駆動素子が配置されており、相互に対向する2つの駆動素子をそれぞれ一組として、各駆動素子に対する印加電圧を調整することにより、レンズ素子133をXY面内で2次元的にシフト駆動可能な構成となっている。
【0097】
その他のレンズ素子13は、通常のレンズホルダを介して鏡筒に保持されている。なお、レンズ素子131〜134に限らず、投影光学系PLの瞳面近傍、又は像面側に配置されるレンズ、あるいは投影光学系PLの収差、特にその非回転対称成分を補正する収差補正板(光学プレート)などを駆動可能に構成しても良い。更に、それらの駆動可能な光学素子の自由度(移動可能な方向)は2つ又は3つに限られるものではなく1つ又は4つ以上でも良い。
【0098】
また、投影光学系PLの瞳面の近傍には、開口数(N.A.)を所定範囲内で連続的に変更可能な瞳開口絞り15が設けられている。この瞳開口絞り15としては、例えばいわゆる虹彩絞りが用いられている。この瞳開口絞り15は、主制御装置50によって制御される。
【0099】
なお、照明光ELとしてArFエキシマレーザ光、KrFエキシマレーザ光を用いる場合には、投影光学系PLを構成する各レンズ素子としてはホタル石等のフッ化物結晶や前述したフッ素ドープ石英の他、合成石英をも用いることができるが、F2レーザ光を用いる場合には、この投影光学系PLに使用されるレンズの材質は、全てホタル石等のフッ化物結晶やフッ素ドープ石英が用いられる。
【0100】
前記ウエハステージWSTは、リニアモータ等を含むウエハステージ駆動部56によりXY2次元面内で自在に駆動されるようになっている。このウエハステージWST上に搭載されたZチルトステージ58上には不図示のウエハホルダを介してウエハWが静電吸着(あるいは真空吸着)等により保持されている。
【0101】
また、Zチルトステージ58は、ウエハステージWST上にXY方向に位置決めされ、かつ不図示の駆動系によりZ軸方向の移動及びXY平面に対する傾斜駆動が可能な構成となっている。これによってZチルトステージ58上に保持されたウエハWの面位置(Z軸方向位置及びXY平面に対する傾斜)が所望の状態に設定されるようになっている。
【0102】
さらに、Zチルトステージ58上には移動鏡52Wが固定され、外部に配置されたウエハレーザ干渉計54Wにより、Zチルトステージ58のX軸方向、Y軸方向及びθz方向(Z軸回りの回転方向)の位置が計測され、干渉計54Wによって計測された位置情報が主制御装置50に供給されている。主制御装置50は、この干渉計54Wの計測値に基づいてウエハステージ駆動部56(これは、ウエハステージWSTの駆動系及びZチルトステージ58の駆動系の全てを含む)を介してウエハステージWST(及びZチルトステージ58)を制御する。
【0103】
また、Zチルトステージ58上には、いわゆるベースライン計測用の基準マーク等の基準マークが計測された基準マーク板FMが、その表面がほぼウエハWの表面と同一高さとなるように固定されている。
【0104】
また、Zチルトステージ58の+X側(図2における紙面内右側)の側面には、着脱自在のポータブルな波面計測装置としての波面収差計測器80が取り付けられている。
【0105】
この波面収差計測器80は、図3に示されるように、中空の筐体82と、該筐体82の内部に所定の位置関係で配置された複数の光学素子から成る受光光学系84と、筐体82の内部の+Y側端部に配置された受光部86とを備えている。
【0106】
前記筐体82は、YZ断面L字状で内部に空間が形成された部材から成り、その最上部(+Z方向端部)には、筐体82の上方からの光が筐体82の内部空間に向けて入射するように、平面視円形の開口82aが形成されている。また、この開口82aを筐体82の内部側から覆うようにカバーガラス88が設けられている。カバーガラス88の上面には、クロム等の金属の蒸着により中央部に円形の開口を有する遮光膜が形成され、該遮光膜によって、投影光学系PLの波面収差の計測の際に周囲からの不要な光が受光光学系84に入射するのが遮られている。
【0107】
前記受光光学系84は、筐体82の内部のカバーガラス88の下方に、上から下に順次配置された、対物レンズ84a,リレーレンズ84b,折り曲げミラー84cと、該折り曲げミラー84cの+Y側に順次配置されたコリメータレンズ84d、及びマイクロレンズアレイ84eから構成されている。折り曲げミラー84cは、45°で斜設されており、該折り曲げミラー84cによって、上方から鉛直下向きに対物レンズ84aに対して入射した光の光路がコリメータレンズ84dに向けて折り曲げられるようになっている。なお、この受光光学系84を構成する各光学部材は、筐体82の壁の内側に不図示の保持部材を介してそれぞれ固定されている。前記マイクロレンズアレイ84eは、複数の小さな凸レンズ(レンズ素子)が光路に対して直交する面内にアレイ状に配置されて構成されている。
【0108】
前記受光部86は、2次元CCD等から成る受光素子と、例えば電荷転送制御回路等の電気回路等から構成されている。受光素子は、対物レンズ84aに入射し、マイクロレンズアレイ84eから出射される光束のすべてを受光するのに十分な面積を有している。なお、受光部86による計測データは、不図示の信号線を介して、あるいは無線送信にて主制御装置50に出力される。
【0109】
上述した波面収差計測器80を用いることにより、投影光学系PLの波面収差の計測を、オン・ボディにて行うことができる。なお、この波面収差計測器80を用いた投影光学系PLの波面収差の計測方法については後述する。
【0110】
図2に戻り、本実施形態の露光装置1221には、主制御装置50によってオン・オフが制御される光源を有し、投影光学系PLの結像面に向けて多数のピンホール又はスリットの像を形成するための結像光束を光軸AXに対して斜め方向より照射する照射系60aと、それらの結像光束のウエハW表面での反射光束を受光する受光系60bとからなる射入射光式の多点焦点位置検出系(以下、単に「焦点検出系」と呼ぶ)が設けられている。この焦点検出系(60a,60b)としては、例えば特開平6−283403号公報等に開示されるものと同様の構成のものが用いられる。
【0111】
主制御装置50では、露光時等に、受光系60bからの焦点ずれ信号(デフォーカス信号)、例えばSカーブ信号に基づいて焦点ずれが零となるようにウエハWのZ位置及びXY面に対する傾斜をウエハステージ駆動部56を介して制御することにより、オートフォーカス(自動焦点合わせ)及びオートレベリングを実行する。また、主制御装置50では、後述する波面収差の計測の際に、焦点検出系(60a,60b)を用いて波面収差計測器80のZ位置の計測及び位置合わせを行う。このとき、必要に応じて波面収差計測器80の傾斜計測も行うようにしても良い。
【0112】
さらに、露光装置1221は、ウエハステージWST上に保持されたウエハW上のアライメントマーク及び基準マーク板FM上に形成された基準マークの位置計測等に用いられるオフ・アクシス(off-axis)方式のアライメント系ALGを備えている。このアライメント系ALGとしては、例えばウエハ上のレジストを感光させないブロードバンドな検出光束を対象マークに照射し、その対象マークからの反射光により受光面に結像された対象マークの像と不図示の指標の像とを撮像素子(CCD)等を用いて撮像し、それらの撮像信号を出力する画像処理方式のFIA(Field Image Alignment)系のセンサが用いられる。なお、FIA系に限らず、コヒーレントな検出光を対象マークに照射し、その対象マークから発生する散乱光又は回折光を検出したり、その対象マークから発生する2つの回折光(例えば同次数)を干渉させて検出するアライメントセンサを単独であるいは適宜組み合わせて用いることは勿論可能である。
【0113】
さらに、本実施形態の露光装置1221では、図示は省略されているが、レチクルRの上方に、投影光学系PLを介してレチクルR上のレチクルマークと対応する基準マーク板上の基準マークとを同時に観察するための露光波長の光を用いたTTR(Through The Reticle)アライメント光学系から成る一対のレチクルアライメント顕微鏡が設けられている。これらのレチクルアライメント顕微鏡としては、例えば特開平7−176468号公報などに開示されるものと同様の構成のものが用いられている。
【0114】
前記制御系は、図2中、前記主制御装置50によって主に構成される。主制御装置50は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リード・オンリ・メモリ)、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)等からなるいわゆるワークステーション(又はマイクロコンピュータ)等から構成され、前述した種々の制御動作を行う他、装置全体を統括して制御する。主制御装置50は、例えば露光動作が的確に行われるように、例えば、ウエハステージWSTのショット間ステッピング、露光タイミング等を統括して制御する。
【0115】
また、主制御装置50には、例えばハードディスクから成る記憶装置42、キーボード,マウス等のポインティングデバイス等を含んで構成される入力装置45,CRTディスプレイ(又は液晶ディスプレイ)等の表示装置44、及びCD−ROM,DVD−ROM,MOあるいはFD等の情報記録媒体のドライブ装置46が、外付けで接続されている。さらに、主制御装置50は、前述したLAN118に接続されている。
【0116】
ドライブ装置46にセットされた情報記録媒体(以下の説明では便宜上CD−ROMとする)に、後述するようにして波面収差計測器80を用いて計測された位置ずれ量をツェルニケ多項式の各項の係数に変換する変換プログラム(以下、便宜上「第1プログラム」と呼ぶ)が格納されている。
【0117】
前記第2、第3露光装置1222、1223は、上述した第1露光装置1221と同様に構成されている。
【0118】
次に、メンテナンス時などに行われる第1〜第3露光装置1221〜1223における波面収差の計測方法について説明する。なお、以下の説明においては、説明の簡略化のため、波面収差計測器80内の受光光学系84の収差は無視できる程小さいものとする。
【0119】
前提として、ドライブ装置46にセットされたCD−ROM内の第1プログラムは、記憶装置42にインストールされているものとする。
【0120】
通常の露光時には、波面収差計測器80は、Zチルトステージ58から取り外されているため、波面計測に際しては、まず、サービスエンジニアあるいはオペレータ等(以下、適宜「サービスエンジニア等」という)によりZチルトステージ58の側面に対して波面収差計測器80を取り付ける作業が行われる。この取付けに際しては、波面計測時に波面収差計測器80が、ウエハステージWST(Zチルトステージ58)の移動ストローク内に収まるように、所定の基準面(ここでは+X側の面)にボルトあるいはマグネット等を介して固定される。
【0121】
上記の取り付け終了後、サービスエンジニア等による計測開始のコマンドの入力に応答して、主制御装置50では、アライメント系ALGの下方に波面収差計測器80が位置するように、ウエハステージ駆動部56を介してウエハステージWSTを移動させる。そして、主制御装置50では、アライメント系により波面収差計測器80に設けられた不図示の位置合わせマークを検出し、その検出結果とそのときのレーザ干渉計54Wの計測値とに基づいて位置合わせマークの位置座標を算出し、波面収差計測器80の正確な位置を求める。そして、波面収差計測器80の位置計測後、主制御装置50では以下のようにして波面収差の計測を実行する。
【0122】
まず、主制御装置50は、不図示のレチクルローダによりピンホールパターンが形成された不図示の計測用レチクル(以下、「ピンホールレチクル」と呼ぶ)をレチクルステージRST上にロードする。このピンホールレチクルは、そのパターン面の照明領域IARと同一の領域内の複数点にピンホール(ほぼ理想的な点光源となって球面波を発生するピンホール)が形成されたレチクルである。
【0123】
なお、ここで用いられるピンホールレチクルには、上面に拡散面を設けるなどして、投影光学系PLの全てのN.A.を通過する光線の波面を求めることができるように、すなわち、投影光学系PLの全N.A.に亘る波面収差が計測されるようになっているものとする。
【0124】
ピンホールレチクルのロード後、主制御装置50では、不図示のレチクルアライメント顕微鏡を用いて、ピンホールレチクルに形成されたレチクルアライメントマークを検出し、その検出結果に基づいて、ピンホールレチクルを所定の位置に位置合わせする。これにより、ピンホールレチクルの中心と投影光学系PLの光軸とがほぼ一致する。
【0125】
この後、主制御装置50では、光源16に制御情報TSを与えてレーザ光を発光させる。これにより、照明光学系12からの照明光ELが、ピンホールレチクルに照射される。そして、ピンホールレチクルの複数のピンホールから射出された光が投影光学系PLを介して像面上に集光され、ピンホールの像が像面に結像される。
【0126】
次に、主制御装置50は、ピンホールレチクル上のいずれかのピンホール(以下においては、着目するピンホールと呼ぶ)の像が結像する結像点に波面収差計測器80の開口82aのほぼ中心が一致するように、ウエハレーザ干渉計54Wの計測値をモニタしつつ、ウエハステージ駆動部56を介してウエハステージWSTを移動する。この際、主制御装置50では、焦点検出系(60a,60b)の検出結果に基づいて、ピンホール像が結像される像面に波面収差計測器80のカバーガラス88の上面を一致させるべく、ウエハステージ駆動部56を介してZチルトステージ58をZ軸方向に微少駆動する。これにより、着目するピンホールの像光束がカバーガラス88の中央の開口を介して受光光学系84に入射し、受光部86を構成する受光素子によって受光される。
【0127】
これを更に詳述すると、ピンホールレチクル上の着目するピンホールからは球面波が発生し、この球面波が、投影光学系PL、及び波面収差計測器80の受光光学系84を構成する対物レンズ84a、リレーレンズ84b、ミラー84c、コリメータレンズ84dを介して平行光束となって、マイクロレンズアレイ84eを照射する。これにより、投影光学系PLの瞳面がマイクロレンズアレイ84eにリレーされ、分割される。そして、このマイクロレンズアレイ84eの各レンズ素子によってそれぞれの光が受光素子の受光面に集光され、該受光面にピンホールの像がそれぞれ結像される。
【0128】
このとき、投影光学系PLが、波面収差の無い理想的な光学系であるならば、投影光学系PLの瞳面における波面は理想的な波面(ここでは平面)になり、その結果マイクロレンズアレイ84eに入射する平行光束が平面波となり、その波面は理想的な波面となる筈である。この場合、図4(A)に示されるように、マイクロレンズアレイ84eを構成する各レンズ素子の光軸上の位置にスポット像(以下、「スポット」とも呼ぶ)が結像する。
【0129】
しかるに、投影光学系PLには通常、波面収差が存在するため、マイクロレンズアレイ84eに入射する平行光束の波面は理想的な波面からずれ、そのずれ、すなわち波面の理想波面に対する傾きに応じて、図4(B)に示されるように、各スポットの結像位置がマイクロレンズアレイ84eの各レンズ素子の光軸上の位置からずれることとなる。この場合、各スポットの基準点(各レンズ素子の光軸上の位置)からの位置のずれは、波面の傾きに対応している。
【0130】
そして、受光部86を構成する受光素子上の各集光点に入射した光(スポット像の光束)が受光素子でそれぞれ光電変換され、該光電変換信号が電気回路を介して主制御装置50に送られ、主制御装置50では、その光電変換信号に基づいて各スポットの結像位置を算出し、更に、その算出結果と既知の基準点の位置データとを用いて、位置ずれ(Δξ,Δη)を算出してRAMに格納する。このとき、主制御装置50には、レーザ干渉計54Wのそのときの計測値(Xi,Yi)が供給されている。
【0131】
上述のようにして、1つの着目するピンホール像の結像点における波面収差計測器80による、スポット像の位置ずれの計測が終了すると、主制御装置50では、次のピンホール像の結像点に、波面収差計測器80の開口82aのほぼ中心が一致するように、ウエハステージWSTを移動する。この移動が終了すると、前述と同様にして、主制御装置50により、光源16からレーザ光の発光が行われ、同様にして主制御装置50によって各スポットの結像位置が算出される。以後、他のピンホール像の結像点で同様の計測が順次行われる。なお、上記計測時にレチクルブラインド30を用いて、レチクル上の着目するピンホールのみ、あるいは少なくとも着目するピンホールを含む一部の領域のみが照明光ELで照明されるように、例えばピンホール毎に、レチクル上での照明領域の位置や大きさなどを変更しても良い。
【0132】
このようにして、必要な計測が終了した段階では、主制御装置50のRAMには、前述した各ピンホール像の結像点における位置ずれデータ(Δξ,Δη)と、各結像点の座標データ(各ピンホール像の結像点における計測を行った際のレーザ干渉計54Wの計測値(Xi,Yi))とが格納されている。
【0133】
次に、主制御装置50では、第1プログラムをメインメモリにロードし、RAM内に格納されている各ピンホール像の結像点における位置ずれデータ(Δξ,Δη)と、各結像点の座標データとに基づいて、以下に説明する原理に従ってピンホール像の結像点に対応する、すなわち投影光学系PLの視野内の第1計測点〜第n計測点に対応する波面(波面収差)、ここでは、後述する式(4)のツェルニケ多項式の各項の係数、例えば第2項の係数Z2〜第37項の係数Z37を第1プログラムに従って演算する。
【0134】
本実施形態では、上記の位置ずれ(Δξ,Δη)に基づいて、第1プログラムに従った演算により投影光学系PLの波面を求める。すなわち、位置ずれ(Δξ,Δη)は、波面の理想波面に対する傾斜をそのまま反映した値になり、逆に位置ずれ(Δξ,Δη)に基づいて波面を復元することができる。なお、上述した位置ずれ(Δξ,Δη)と波面との物理的な関係から明らかなように、本実施形態における波面の算出原理は、周知のShack-Hartmannの波面算出原理そのものである。
【0135】
次に、上記の位置ずれに基づいて、波面を算出する方法について、簡単に説明する。
【0136】
上述の如く、位置ずれ(Δξ,Δη)は波面の傾きに対応しており、これを積分することにより波面の形状(厳密には基準面(理想波面)からのずれ)が求められる。波面(波面の基準面からのずれ)の式をW(x,y)とし、比例係数をkとすると、次式(2)、(3)のような関係式が成立する。
【0137】
【数1】
【0138】
スポット位置のみでしか与えられていない波面の傾きをそのまま積分するのは容易ではないため、面形状を級数に展開して、これにフィットするものとする。この場合、級数は直交系を選ぶものとする。ツェルニケ多項式は軸対称な面の展開に適した級数で、円周方向は三角級数に展開する。すなわち、波面Wを極座標系(ρ,θ)で表すと、次式(4)のように展開できる。
【0139】
【数2】
【0140】
直交系であるから各項の係数Ziを独立に決定することができる。iを適当な値で切ることはある種のフィルタリングを行うことに対応する。なお、一例として第1項〜第37項までのfiをZiとともに例示すると、次の表1のようになる。但し、表1中の第37項は、実際のツェルニケ多項式では、第49項に相当するが、本明細書では、i=37の項(第37項)として取り扱うものとする。すなわち、本発明において、ツェルニケ多項式の項の数は、特に限定されるものではない。
【0141】
【表1】
【0142】
実際には、その微分が上記の位置ずれとして検出されるので、フィッティングは微係数について行う必要がある。極座標系(x=ρcosθ,y=ρsinθ)では、次式(5)、(6)のように表される。
【0143】
【数3】
【0144】
ツェルニケ多項式の微分形は直交系ではないので、フィッティングは最小自乗法で行う必要がある。1つのスポット像の結像点の情報(ずれ量)はXとY方向につき与えられるので、ピンホールの数をn(nは、例えば81〜400程度とする)とすると、上記式(2)〜(6)で与えられる観測方程式の数は2n(=162〜800程度)となる。
【0145】
ツェルニケ多項式のそれぞれの項は光学収差に対応する。しかも低次の項(iの小さい項)は、ザイデル収差にほぼ対応する。ツェルニケ多項式を用いることにより、投影光学系PLの波面収差を求めることができる。
【0146】
上述のような原理に従って、第1プログラムの演算手順が決められており、この第1プログラムに従った演算処理により、投影光学系PLの視野内の第1計測点〜第n計測点に対応する波面の情報(波面収差)、ここでは、ツェルニケ多項式の各項の係数、例えば第2項の係数Z2〜第37項の係数Z37が求められる。
【0147】
以下の説明においては、上記の第1計測点〜第n計測点に対応する波面(波面収差)のデータを、次式(7)のような列マトリックスQで表現する。
【0148】
【数4】
【0149】
なお、上式(7)において、マトリックスQの要素P1〜Pnは、それぞれがツェルニケ多項式の第2項〜第37項の係数(Z2〜Z37)から成る列マトリックス(縦ベクトル)である。
【0150】
このようにして、波面のデータ(ツェルニケ多項式の各項の係数、例えば第2項の係数Z2〜第37項の係数Z37)を求めると、主制御装置50では、その波面のデータを記憶装置42に格納する。
【0151】
また、主制御装置50では、後述するように、第1通信サーバ120からの問い合わせに応じて、波面のデータを記憶装置42から読み出し、LAN118を介して前述した第1通信サーバ120に送信するようになっている。
【0152】
図1に戻り、第1通信サーバ120が備えるハードディスク等の内部には、第1〜第3露光装置1221〜1223で達成すべき目標情報、例えば解像度(解像力)、実用最小線幅(デバイスルール)、照明光ELの波長、転写対象のパターンの情報、その他の露光装置1221〜1223の性能を決定する投影光学系に関する何らかの情報であって目標値となり得る情報が格納されている。また、第1通信サーバ120が備えるハードディスク等の内部には、今後導入する予定の露光装置での目標情報、例えば使用を計画しているパターンの情報なども目標情報として格納されている。
【0153】
一方、第2通信サーバ130が備えるハードディスク等の内部には、ツェルニケ多項式の各項の係数に基づいて結像特性の調整量を演算する調整量演算プログラム(以下、便宜上「第2プログラム」と呼ぶ)、最良露光条件の設定を行う最良露光条件設定プログラム(以下、便宜上「第3プログラム」と呼ぶ)、及び第2プログラムに付属するデータベースが格納されている。
【0154】
次に、上記データベースについて説明する。このデータベースは、投影光学系の光学特性、ここでは波面収差の計測結果の入力に応じて、結像特性を調整するための前述した可動なレンズ素子(以下、「可動レンズ」と呼ぶ)131,132,133,134の目標駆動量(目標調整量)を算出するためのパラメータ群の数値データから成るデータベースである。このデータベースは、可動レンズ131,132,133,134を各自由度方向(駆動可能な方向)について単位調整量駆動した場合に、投影光学系PLの視野内の複数の計測点それぞれに対応する結像特性、具体的には波面のデータ、例えばツェルニケ多項式の第2項〜第37項の係数がどのように変化するかのデータを、投影光学系PLと実質的に等価なモデルを用いて、シミュレーションを行い、このシミュレーション結果として得られた結像特性の変動量を所定の規則に従って並べたデータ群から成る。
【0155】
ここで、このデータベースの作成手順について、簡単に説明する。特定の光学ソフトがインストールされているシミュレーション用コンピュータに、まず、露光条件、すなわち投影光学系PLの設計値(開口数N.A.、各レンズのデータ等)や照明条件(コヒーレンスファクタσ値、照明光の波長λ、2次光源の形状等)を入力する。次に、シミュレーション用コンピュータに、投影光学系PLの視野内の任意の第1計測点のデータを入力する。
【0156】
次いで、可動レンズの各自由度方向(可動方向)についての単位量のデータを入力する。例えば可動レンズ131をY方向チルトの+方向に関して単位量だけ駆動するという指令を入力すると、シミュレーション用コンピュータにより、投影光学系PLの視野内の予め定めた第1計測点についての第1波面の理想波面からの変化量のデータ、例えばツェルニケ多項式の各項(例えば第2項〜第37項)の係数の変化量が算出され、その変化量のデータがシミュレーション用コンピュータのディスプレイの画面上に表示されるとともに、その変化量がパラメータPARA1P1としてメモリに記憶される。
【0157】
次いで、可動レンズ131をX方向チルトの+方向に関して単位量だけ駆動するという指令を入力すると、シミュレーション用コンピュータにより、第1計測点についての第2波面のデータ、例えばツェルニケ多項式の上記各項の係数の変化量が算出され、その変化量のデータが上記ディスプレイの画面上に表示されるとともに、その変化量がパラメータPARA2P1としてメモリに記憶される。
【0158】
次いで、可動レンズ131をZ方向シフトの+方向に関して単位量だけ駆動するという指令を入力すると、シミュレーション用コンピュータにより、第1計測点についての第3波面のデータ、例えばツェルニケ多項式の上記各項の係数の変化量が算出され、その変化量のデータが上記ディスプレイの画面上に表示されるとともに、その変化量がパラメータPARA3P1としてメモリに記憶される。
【0159】
以後、上記と同様の手順で、第2計測点〜第n計測点までの各計測点の入力が行われ、可動レンズ131のY方向チルト,X方向チルト、Z方向シフトの指令入力がそれぞれ行われる度毎に、シミュレーション用コンピュータによって各計測点における第1波面、第2波面、第3波面のデータ、例えばツェルニケ多項式の上記各項の係数の変化量が算出され、各変化量のデータがディスプレイの画面上に表示されるとともに、パラメータPARA1P2,PARA2P2,PARA3P2、……、PARA1Pn,PARA2Pn,PARA3Pnとしてメモリに記憶される。
【0160】
他の可動レンズ132,133,134についても、上記と同様の手順で、各計測点の入力と、各自由度方向に関してそれぞれ単位量だけ+方向に駆動する旨の指令入力が行われ、これに応答してシミュレーション用コンピュータにより、可動レンズ132,133,134を各自由度方向に単位量だけ駆動した際の第1〜第n計測ポイントのそれぞれについての波面のデータ、例えばツェルニケ多項式の各項の変化量が算出され、パラメータ(PARA4P1,PARA5P1,PARA6P1,……,PARAmP1)、パラメータ(PARA4P2,PARA5P2,PARA6P2,……,PARAmP2)、……、パラメータ(PARA4Pn,PARA5Pn,PARA6Pn,……,PARAmPn)がメモリ内に記憶される。そして、このようにしてメモリ内に記憶されたツェルニケ多項式の各項の係数の変化量から成る列マトリックス(縦ベクトル)PARA1P1〜PARAmPnを要素とする次式(8)で示されるマトリックス(行列)Oのデータが、上記データベースとして、第2通信サーバ130が備えるハードディスク等の内部に格納されている。なお、本実施形態では、3自由度方向に可動なレンズが3つ、2自由度方向に可動なレンズが1つであるから、m=3×3+2×1=11となっている。
【0161】
【数5】
【0162】
次に、本実施形態における第1〜第3露光装置1221〜1223が備える投影光学系PLの調整方法について説明する。なお、以下においては、特に区別が必要な場合の他は、第1〜第3露光装置1221〜1223を代表して露光装置122と記述する。
【0163】
前提として、露光装置122の定期メンテナンス時等に、サービスエンジニア等の計測指示に応じ、露光装置122の主制御装置50により、前述した波面収差計測器80を用いた投影光学系PLの波面収差の計測が行われ、その計測された波面のデータが記憶装置42に格納されているものとする。
【0164】
まず、第1通信サーバ120では、未だ受信していない新しい波面の計測データ(第1計測点〜第n計測点に対応する波面を展開したツェルニケ多項式の各項の係数、例えば第2項の係数Z2〜第37項の係数Z37)が露光装置122の記憶装置42にあるか否かを所定のインターバルで問い合わせる。ここでは、露光装置122(実際には、第1〜第3露光装置1221〜1223のいずれか)が備える記憶装置42内に新しい波面の計測データが格納されているものとする。そこで、その露光装置122が備える主制御装置50ではLAN118を介して第1通信サーバ120にその波面の計測データを送信する。
【0165】
第1通信サーバ120では、その受信した波面の計測データを、第2通信サーバ130に対して、投影光学系PLの自動調整の指示(あるいは投影光学系PLの調整量の演算の指示)とともに送信する。これにより、これらのデータは、LAN118を介して第1認証用プロキシサーバ124を通過し、更に公衆回線116を介して第2認証用プロキシサーバ128に至る。第2認証用プロキシサーバ128では、そのデータに付された送信先のアドレスを確認してそのデータが第2通信サーバ130に対して送信されたことを認識し、LAN126を介して第2通信サーバ130に送る。
【0166】
第2通信サーバ130では、その送られてきたデータを受信し、その旨をデータの送信元とともにディスプレイに表示するとともに、波面の計測データをハードディスク等に記憶する。そして、次のようにして、投影光学系PLの調整量、すなわち前述した可動レンズ131〜134の各自由度方向の調整量を算出する。
【0167】
まず、第2通信サーバ130では、ハードディスク等から第2プログラムをメインメモリにロードし、第2プログラムに従って、前述した可動レンズ131〜134の各自由度方向の調整量を演算する。具体的には、第2通信サーバ130では、次のような演算を行う。
【0168】
第1計測点〜第n計測点に対応する波面(波面収差)のデータQと、前述したデータベースとしてハードディスク内に格納されているマトリックスOと、可動レンズ131〜134の各自由度方向の調整量Pとの間には、次式(9)のような関係が成立する。
【0169】
Q=O・P ……(9)
上式(9)において、Pは、次式(10)で表されるm個の要素から成る列マトリックス(すなわち縦ベクトル)である。
【0170】
【数6】
【0171】
従って、上式(9)より、次式(11)の演算を行うことにより最小自乗法により、Pの各要素ADJ1〜ADJm、すなわち可動レンズ131〜134の各自由度方向の調整量(目標調整量)を求めることができる。
【0172】
P=(OT・O)-1・OT・Q ……(11)
上式(11)において、OTは、行列Oの転置マトリックスであり、(OT・O)-1は、(OT・O)の逆マトリックスである。
【0173】
すなわち、第2プログラムは、上式(11)の最小自乗演算を、データベースを用いて行うためのプログラムである。従って、第2通信サーバ130では、この第2プログラムに従って、ハードディスク内のデータベースをRAM内に順次読み込みつつ、調整量ADJ1〜ADJmを算出する。
【0174】
次に、第2通信サーバ130では、その算出した調整量ADJ1〜ADJmのデータを、露光装置122の主制御装置50に対して送信する。これにより、調整量ADJ1〜ADJmのデータは、LAN126を介して第2認証用プロキシサーバ128を通過し、更に公衆回線116を介して第1認証用プロキシサーバ124に至る。第1認証用プロキシサーバ124では、その調整量ADJ1〜ADJmのデータに付されたアドレスを確認してそのデータが露光装置122に対して送信されたことを認識し、LAN118を介して露光装置122に送る。なお、実際には、調整量ADJ1〜ADJmのデータに付されたアドレスがAD2である場合には、そのデータは、第1露光装置1221に送られ、アドレスがAD3である場合には、そのデータは、第2露光装置1222に送られ、アドレスがAD4である場合には、そのデータは第3露光装置1223に送られる。
【0175】
ここで、第2通信サーバ130では、その算出した調整量ADJ1〜ADJmのデータを、第1通信サーバ120に送ることも勿論可能である。この場合には、第1通信サーバ120により、先に波面データを送ってきた露光装置122の主制御装置50に対してその調整量ADJ1〜ADJmのデータが送られることとなる。
【0176】
いずれにしても、その調整量ADJ1〜ADJmのデータを受信した露光装置122の主制御装置50では、調整量ADJ1〜ADJmのデータに従って、可動レンズ131〜134を各自由度方向に駆動すべき旨の指令値を、結像特性補正コントローラ48に与える。これにより、結像特性補正コントローラ48により、可動レンズ131〜134をそれぞれの自由度方向に駆動する各駆動素子に対する印加電圧が制御され、可動レンズ131〜134の位置及び姿勢の少なくとも一方がほぼ同時に調整され、投影光学系PLの結像特性、例えばディストーション、像面湾曲、コマ収差、球面収差、及び非点収差等が補正される。なお、コマ収差、球面収差、及び非点収差については、低次のみならず高次の収差をも補正可能である。
【0177】
上記の説明から明らかなように、本実施形態では、可動レンズ131〜134、これらの可動レンズを駆動する駆動素子、結像特性補正コントローラ48によって調整装置としての結像特性補正機構が構成されている。また、該結像特性補正機構を制御する制御装置が主制御装置50とによって構成されている。
【0178】
このように、本実施形態では、露光装置の通常使用時における、投影光学系PLの調整の際には、サービスエンジニア等が、波面収差計測器80をZチルトステージ58に取り付け、入力装置45を介して波面収差の計測指令を入力するだけで、ほぼ全自動で、遠隔操作により、投影光学系PLの結像特性が高精度に調整されるようになっている。
【0179】
なお、上の説明では、投影光学系を自動調整するものとしたが、自動調整では補正が困難な収差が含まれる場合も起こりうる。このような場合を考慮して、第2通信サーバ130側の熟練技術者が、第2通信サーバ130のハードディスク内に記憶されている波面の計測データをディスプレイに表示させ、その表示内容を分析して、問題点を把握し、自動調整では困難な収差が含まれている場合には、的確な対応策の指示内容を第2通信サーバ130のキーボード等から入力し、通信にて露光装置122の表示装置44の画面上に表示させることも可能である。メーカA側にいるサービスエンジニア等は、この画面の表示内容に基づいてレンズの組み付けを微調整する等により、短時間に投影光学系の調整を行うことが可能となる。
【0180】
次に、露光装置122(1221〜1223)の最良露光条件の設定について、第2通信サーバ130のCPUの主要な制御アルゴリズムを示す図5のフローチャートに沿って説明する。前提として、露光装置122の定期メンテナンス時等に、サービスエンジニア等の計測指示に応じ、例えば第1露光装置1221の主制御装置50により、前述した波面収差計測器80を用いた投影光学系PLの波面収差の計測が行われ、その計測された波面のデータが、前述と同様の手順により、第1通信サーバ120のハードディスク等の内部に記憶されているものとする。なお、最良露光条件の設定の場合も、第1通信サーバ120あるいは露光装置1201と第2通信サーバ130との間のデータの通信は、上述と同様にして行われるが、説明の簡略化のために、以下においては通信経路等の通信に関する説明は省略するものとする。
【0181】
図5のフローチャートがスタートするのは、メーカA側のオペレータの指示に応じて第1通信サーバ120から第2通信サーバ130に、最良露光条件の決定の対象である露光装置の指定を含む最良露光条件の決定の指示がなされ、これに応答して第2通信サーバ130により、第3プログラムがメインメモリにロードされたときである。従って、図5のステップ202以降の処理は実際には第3プログラムに従って行われる。
【0182】
まず、ステップ202では、第1通信サーバ120に対して条件入力を指示した後、ステップ204に進んで条件が入力されるのを待つ。
【0183】
このとき、第1通信サーバ120では、上記のオペレータによる最良露光条件の決定の指示に応じ、例えば露光装置1221で次に使用が予定されているレチクルの情報を、例えば露光装置1221〜1223を管理する不図示のホストコンピュータに対して問い合わせ、そのレチクルの情報に基づいて、所定のデータベースを検索し、そのパターン情報を得ている。また、第1通信サーバ120では、露光装置1221の主制御装置50に対して例えば現在の照明条件等の設定情報を問い合わせ、それらの情報をメモリに記憶しているものとする。
【0184】
あるいは、上記のパターンの情報や、照明条件等の情報は、オペレータが入力装置を介して第1通信サーバ120に手入力にて入力することも可能である。
【0185】
いずれにしても、上で入手した、シミュレーションの対象であるパターンの情報(例えばラインアンドスペースパターンの場合、線幅、デューティ比等(あるいは実際のパターンの設計データなどであっても良い))が、予め設定された目的とする結像特性(該結像特性の指標値を含む:以下、「目的収差」と呼ぶ)の情報、例えば線幅異常値等の情報とともに、第1通信サーバ120によって入力されることとなる。
【0186】
このようにして、第1通信サーバ120により条件の入力がなされその入力完了の指示がなされると、図5のステップ206に進んで上記ステップ204で入力された目的収差のツェルニケ変化表を作成するための条件設定を行った後、次のステップ208に進む。なお、ステップ204で入力される目的収差の情報は、一種類とは限らない。すなわち、投影光学系PLの複数種類の結像特性を同時に目的収差として指定することは可能である。
【0187】
ステップ208では、露光装置1221の投影光学系PLに関する情報の入力を第1通信サーバ120に指示した後、ステップ210に進んで、その情報の入力を待つ。そして、第1通信サーバ120により、投影光学系PLに関する情報、具体的には、開口数(N.A.)、照明条件(例えば照明系開口絞りの設定、あるいはコヒーレンスファクタσ値等)、波長などの情報が入力されると、ステップ212に進んで、その入力された情報をRAM内に記憶するとともに、与えたい収差の情報を設定する。一例として、ツェルニケ多項式の各項の係数の値を、例えば、第2項の係数Z2〜第37項の係数Z37として、同一の値、例えば0.05λを、個別に設定する。
【0188】
次のステップ214では、上記の入力されたパターンの情報及び投影光学系PLに関する情報などに基づいて設定した収差の情報、例えば0.05λに応じた1つの目的収差又はその指標値(例えばコマ収差の指標である線幅異常値など)を縦軸とし、横軸をツェルニケ多項式の各項の係数とするグラフ(例えば線幅異常値などのツェルニケ変化表(計算表))を作成した後、ステップ216に進む。
【0189】
ここで、ツェルニケ変化表とは、入力されたパターンを対象パターンとした場合の特定の収差、すなわち上記の目的収差(その指標値を含む)に対する、投影光学系PLの波面を展開したツェルニケ多項式の各項の係数の感度(Zernike Sensitivity)から成るテーブルデータに他ならない。このツェルニケ変化表は、入力されたパターンの情報及び投影光学系PLに関する情報、及び設定した収差の情報に基づいて、同一種類の投影光学系については、投影光学系を構成する各レンズ素子の種類や配置などを含む設計情報に基づいて一義的に定まる。従って、最良露光条件の決定の対象である露光装置の指定(例えば機種名の指定)に基づいて、メーカBの社内のデータベース等を検索してその露光装置の投影光学系の種類を確認することにより、目的収差に対応するツェルニケ変化表を作成することができる。
【0190】
次のステップ216では、上記ステップ204で入力された全ての目的収差についてツェルニケ変化表を作成したか否かを判断する。そして、この判断が否定された場合には、ステップ214に戻り、次の目的収差について変化表を作成する。
【0191】
そして、全ての目的収差についての変化表の作成が終了し、ステップ216の判断が肯定されると、次のステップ218に進む。ステップ218では、第1通信サーバ120に対し、波面の計測データの入力を指示した後、ステップ220に進んで、その計測データが入力されるのを待つ。そして、第1通信サーバ120からハードディスク内に格納されている波面の計測データ(第1計測点〜第n計測点に対応する波面を展開したツェルニケ多項式の各項の係数、例えば第2項の係数Z2〜第37項の係数Z37)が入力されると、ステップ222に進んで、先に作成したツェルニケ変化表(計算表)を用いて、計測点毎に、次式(12)のような演算を行って、先にステップ204で入力された目的収差の1つを算出し、RAM内に記憶する。
【0192】
A=K・{Z2・(変化表の値)+Z3・(変化表の値)+…+Z37・(変化表の値)} …(12)
【0193】
ここで、Aは、投影光学系PLの目的収差、例えば非点収差、像面湾曲等、あるいは、目的収差の指標、例えばコマ収差の指標である線幅異常値などである。また、Kは、レジスト感度等に応じて定まる比例定数である。
【0194】
ここで、例えば、Aが、線幅異常値である場合を考えると、例えばパターンが5本のラインを有するL/Sパターンである場合には、線幅異常値は、前述した式(1)で表せる。この式(1)から明らかなように、上式(12)の計算は、パターンを空間像(投影像)に変換する計算に他ならない。
【0195】
次のステップ224では、全ての目的収差(条件設定された収差(結像特性))を算出したか否かを判断し、この判断が否定された場合には、ステップ222に戻り、次の目的収差を算出し、RAM内に記憶する。
【0196】
このようにして、全ての目的収差の算出が終了すると、ステップ226に進んで、RAM内に記憶されている全ての目的収差の算出結果をハードディスク等に記憶した後、次のステップ228に進む。
【0197】
ステップ228では、投影光学系PLに関する情報、具体的には、開口数(N.A.)、照明条件(例えば照明系開口絞りの設定、あるいはコヒーレンスファクタσ値等)、波長などの一部を、先にステップ210で入力されたものと異なる内容に変更した後、次のステップ230に進み、予め想定している予定回数の内容変更が終了したか否かを判断する。ここでは、1回だけ投影光学系PLに関する情報を変更したのみなので、この判断は否定され、ステップ214に戻り、その後上記ステップ214以降の処理、判断を繰り返す。この際、ステップ214では、ツェルニケ変化表を作成するが、このとき上記ステップ228で変更された変更後の投影光学系PLに関する情報に基づいてツェルニケ変化表を作成する。このようにして、照明条件、開口数、波長等を順次変更しながら、ステップ214〜ステップ230の処理、判断が繰り返され、予定回数の照明条件等の変更が繰り返されると、ステップ230における判断が肯定され、次のステップ232に進む。この時点では、予定数の条件設定下における目的収差の算出結果がハードディスク等の内部に記憶されている。
【0198】
次のステップ232では、ハードディスク等の内部に格納されている目的収差が最適となる(例えば、零ないし最小となる)ような投影光学系に関する条件(照明条件、開口数、波長等)を求め、その条件を最良露光条件として決定する。
【0199】
次のステップ234では、決定した最良露光条件を第1通信サーバ120に送信した後、本ルーチンの一連の処理を終了する。
【0200】
上記の最良露光条件のデータを受信した第1通信サーバ120では、必要に応じて、最良露光条件の設定を命じる命令データを露光装置1221の主制御装置50に送り、主制御装置50では、そのデータに応じて最良露光条件を設定する。具体的には、主制御装置50では、照明系開口絞り板24の開口絞りを変更することにより照明条件を変更(設定)し、あるいは、図2に示される投影光学系PLの瞳開口絞り15を調整することにより投影光学系PLの開口数を調整することができる。あるいは、主制御装置50では、制御情報TSとして照明光ELの波長を変更する情報を光源16に与えることにより露光波長を設定することができる。
【0201】
なお、最良露光条件の設定を指示する指示データを、第2通信サーバ130が、直接露光装置1221に与えることにより、露光装置1221の最良露光条件を設定することも可能である。
【0202】
また、図5のフローチャートに対応する第3プログラムに僅かの変更を加えることにより、パターンの情報以外の設定情報を固定したまま、パターン情報を徐々に変更しながら、上記と同様のツェルニケ変化表の作成、及び波面の計測データに基づく目的収差(あるいは空間像)の算出を、繰り返し行うことにより、最良露光条件として最適なパターンの設定情報を決定することも可能である。
【0203】
同様に、図5のフローチャートに対応する第3プログラムに僅かの変更を加えることにより、与えたい収差の情報以外の設定情報を固定したまま、与えたい収差の情報を変更しながら、上記と同様のツェルニケ変化表の作成、及び波面の計測データに基づく目的収差(あるいは空間像)の算出を、繰り返し行うことにより、最良露光条件として、入力されたパターンを転写する際の投影光学系に与えるべき収差を決定することも可能である。かかる場合には、第2通信サーバ130は、投影光学系PLにそのような収差(例えばツェルニケ多項式の第2項の係数Z2〜第37項の係数Z37)が与えられるように、露光装置1221の主制御装置50を介して結像補正コントローラ48を制御することにより結像特性を調整することができる。あるいは、第2通信サーバ130は、投影光学系PLにそのような収差が与えられるように、第1通信サーバ120及び主制御装置50を介して結像補正コントローラ48を制御して結像特性を調整することができる。
【0204】
その他の露光装置1222、1223における最良露光条件の設定も上述と全く同様にして行われる。
【0205】
また、本実施形態において、例えば露光装置122の定期点検時等において、サービスエンジニア等が第1通信サーバ120側から条件設定入力、投影光学系に関する情報の入力等を行うことにより、これに応答して、第2通信サーバ130により、前述した第3プログラムを一部変更した別のプログラムを用いて、上述した最良露光条件の設定時におけるシミュレーションと同様の手順で同様のツェルニケ変化表が作成される。そして、露光装置122側でサービスエンジニア等の指示に基づき主制御装置50により波面収差の計測が実行され、その結果得られる位置ずれのデータが第1通信サーバ120を介して送信されると、第2通信サーバ130では、上述と同様にして目的収差を算出する。そして、第2通信サーバ130では、その目的収差が最適(例えば零ないし最小)となるような可動レンズ131〜134の各自由度方向の駆動量を、別のプログラムを用いて最小自乗法により算出する。そして、第2通信サーバ130では、その算出した駆動量の指令値を、主制御装置50を介して結像特性補正コントローラ48に与える。これにより、結像特性補正コントローラ48により、可動レンズ131〜134をそれぞれの自由度方向に駆動する各駆動素子に対する印加電圧が制御され、可動レンズ131〜134の少なくとも1つの位置及び姿勢の少なくとも一方が調整され、投影光学系PLの目的とする結像特性、例えばディストーション、像面湾曲、コマ収差、球面収差、及び非点収差等が補正される。なお、コマ収差、球面収差、及び非点収差については、低次のみならず高次の収差をも補正可能である。この場合、必ずしも前述した第2プログラムを用いる必要はない。
【0206】
また、本実施形態では、ドライブ装置46から記憶装置42に上述した第3プログラムを一部変更した別のプログラムを予めインストールしておくことにより、定期メンテナンス時等における露光装置122の投影光学系PLの調整時に、露光装置122自身による投影光学系PLの結像特性の自動調整を容易に実現することができる。この場合、オペレータの指示(条件設定入力、投影光学系に関する情報の入力等も含む)に基づき、主制御装置50内のCPUにより上記のシミュレーションと同様の手順で同様の処理が行われ、同様のツェルニケ変化表が作成される。そして、波面収差の計測が実行され、位置ずれのデータが入力されると、主制御装置50内のCPUにより、上述と同様にして目的収差が算出される。その後、主制御装置50内のCPUでは、それらの目的収差が最適(例えば零ないし最小)となるような可動レンズ131〜134の各自由度方向の駆動量を、別のプログラムを用いて最小自乗法により算出する。そして、主制御装置50内のCPUでは、その算出した駆動量の指令値を、結像特性補正コントローラ48に与える。これにより、結像特性補正コントローラ48により、可動レンズ131〜134をそれぞれの自由度方向に駆動する各駆動素子に対する印加電圧が制御され、可動レンズ131〜134の少なくとも1つの位置及び姿勢の少なくとも一方が調整され、投影光学系PLの目的とする結像特性、例えばディストーション、像面湾曲、コマ収差、球面収差、及び非点収差等が補正される。なお、コマ収差、球面収差、及び非点収差については、低次のみならず高次の収差をも補正可能である。
【0207】
上記の説明から明らかなように、本実施形態では、可動レンズ131〜134、これらの可動レンズを駆動する駆動素子、結像特性補正コントローラ48によって結像特性調整機構が構成され、主制御装置50によって結像特性調整機構を制御する制御装置が構成されている。
【0208】
ところで、上述の説明では、投影光学系PLの波面収差の計測を波面収差計測器80を用いて行う場合について説明したが、これに限らず、次に説明するような計測用レチクルRT(以下、適宜「レチクルRT」ともいう)を用いて波面収差を計測することも可能である。
【0209】
図6には、この計測用レチクルRTの概略斜視図が示されている。また、図7には、レチクルステージRST上に装填した状態におけるレチクルRTの光軸AX近傍のXZ断面の概略図が、投影光学系PLの模式図とともに示されている。また、図8には、レチクルステージRST上に装填した状態におけるレチクルRTの−Y側端部近傍のXZ断面の概略図が、投影光学系PLの模式図とともに示されている。
【0210】
図6から明らかなように、この計測用レチクルRTの全体形状は、通常のペリクル付きレチクルとほぼ同様の形状を有している。この計測用レチクルRTは、ガラス基板60、該ガラス基板60の図6における上面のX軸方向中央部に、固定された長方形板状の形状を有するレンズ取付け部材62、ガラス基板60の図3における下面に取り付けられた通常のペリクルフレームと同様の外観を有する枠状部材から成るスペーサ部材64、及びこのスペーサ部材64の下面に取り付けられた開口板66等を備えている。
【0211】
前記レンズ取付け部材62には、Y軸方向の両端部の一部の帯状の領域を除く、ほぼ全域にマトリックス状配置でn個の円形開口63i,j(i=1〜p、j=1〜q、p×q=n)が形成されている。各円形開口63i,jの内部には、Z軸方向の光軸を有する凸レンズから成る集光レンズ65i,jがそれぞれ設けられている(図7参照)。
【0212】
また、ガラス基板60とスペーサ部材64と開口板66とで囲まれる空間の内部には、図7に示されるように、補強部材69が所定の間隔で設けられている。
【0213】
更に、ガラス基板60の下面には、前記各集光レンズ65i,jに対向して、図7に示されるように、計測用パターン67i,jがそれぞれ形成されている。また、開口板66には、図7に示されるように、各計測用パターン67i,jにそれぞれ対向してピンホール状の開口70i,jが形成されている。このピンホール状の開口70i,jは、例えば直径100〜150μm程度とされている。
【0214】
図6に戻り、レンズ保持部材62には、Y軸方向の両端部の一部の帯状の領域の中央部に、開口721、722がそれぞれ形成されている。図8に示されるように、ガラス板60の下面(パターン面)には、一方の開口721に対向して基準パターン741が形成されている。また、図示は省略されているが、他方の開口722に対向して、ガラス板60の下面(パターン面)に、基準パターン741と同様の基準パターン(便宜上、「基準パターン742」と記述する)が形成されている。
【0215】
また、図6に示されるように、ガラス基板60のレチクル中心を通るX軸上には、レンズ保持部材62の両外側に、レチクル中心に関して対称な配置で一対のレチクルアライメントマークRM1,RM2が形成されている。
【0216】
ここで、本実施形態では、計測用パターン67i,jとして、図9(A)に示されるような網目状(ストリートライン状)のパターンが用いられている。また、これに対応して、基準パターン741、742として、図9(B)に示されるような、計測用パターン67i,jと同一ピッチで正方形パターンが配置された2次元の格子パターンが用いられている。なお、基準パターン741、742として図9(A)のパターンを用い、計測用パターンとして図9(B)に示されるパターンを用いることは可能である。また、計測用パターン67i,jは、これに限られず、その他の形状のパターンを用いても良く、その場合には、基準パターンとして、その計測用パターンとの間に所定の位置関係があるパターンを用いれば良い。すなわち、基準パターンは、計測用パターンの位置ずれの基準となるパターンであれば良く、その形状等は問わないが、投影光学系PLの結像特性(光学特性)を計測するためには、投影光学系PLのイメージフィールド又は露光領域の全面に渡ってパターンが分布しているパターンが望ましい。
【0217】
次に、露光装置122(露光装置1221〜1223)においてレチクルRTを用いる場合の投影光学系PLの波面収差の計測について説明する。
【0218】
まず、計測用レチクルRTを用いて、投影光学系PLの視野内の複数(ここでは、n個)の計測点において、以下のようにして、波面収差を計測する。
【0219】
まず、入力装置45を介してオペレータ(サービスエンジニアを含む)により波面収差の計測指令が入力されると、主制御装置50では、不図示のレチクルローダを介して計測用レチクルRTをレチクルステージRST上にロードする。次いで、主制御装置50では、レーザ干渉計54Wの出力をモニタしつつ、ウエハステージ駆動部56を介してウエハステージWSTを移動し、基準マーク板FM上の一対のレチクルアライメント用基準マークを予め定められた基準位置に位置決めする。ここで、この基準位置とは、例えば一対の第2基準マークの中心が、レーザ干渉計54Wで規定されるステージ座標系上の原点に一致する位置に定められている。
【0220】
次に、主制御装置50では、計測用レチクルRT上の一対のレチクルアライメントマークRM1,RM2とこれらに対応するレチクルアライメント用基準マークとを、前述のレチクルアライメント顕微鏡により同時に観察し、レチクルアライメントマークRM1,RM2の基準板FM上への投影像と、対応する基準マークとの位置ずれが、共に最小となるように、不図示の駆動系を介してレチクルステージRSTをXY2次元面内で微少駆動する。これにより、レチクルアライメントが終了し、レチクル中心が投影光学系PLの光軸にほぼ一致する。
【0221】
次に、主制御装置50では、不図示のウエハローダを用いて表面にレジスト(感光剤)が塗布されたウエハWをZチルトステージ58上にロードする。
【0222】
次いで、主制御装置50では、計測用レチクルRTの集光レンズ65i,jの全てが含まれ、かつ開口721,722が含まれず、レンズ保持部材62のX軸方向の最大幅以内のX軸方向の長さを有する矩形の照明領域を形成するため、不図示の駆動系を介してレチクルブラインド30の開口を設定する。また、これと同時に、主制御装置50では、駆動装置40を介して照明系開口絞り板24を回転して、所定の開口絞り、例えば小σ絞りを照明光ELの光路上に設定する。
【0223】
このような準備作業の後、主制御装置50では、制御情報TSを光源16に与えて、レーザビームLBを発光させて、照明光ELをレチクルRTに照射して露光を行う。これにより、図7に示されるように、各計測用パターン67i,jが、対応するピンホール状の開口70i,j及び投影光学系PLを介して同時に転写される。この結果、ウエハW上のレジスト層には、図10(A)に示されるような各計測用パターン67i,jの縮小像(潜像)67’i,jが、所定間隔でXY2次元方向に沿って所定間隔で形成される。
【0224】
次に、主制御装置50では、不図示のレチクルレーザ干渉計の計測値とレチクルセンタと一方の基準パターン741との設計上の位置関係とに基づいて、基準パターン741の中心位置が光軸AX上に一致するように、不図示の駆動系を介してレチクルステージRSTをY軸方向に所定距離移動する。次いで、主制御装置50では、その移動後の開口721を含むレンズ保持部材62上の所定面積の矩形領域(この領域は、いずれの集光レンズにも掛からない)にのみ照明光ELの照明領域を規定すべく、不図示の駆動系を介してレチクルブラインド30の開口を設定する。
【0225】
次に、主制御装置50では、最初の計測用パターン671,1の潜像67’1,1が形成されたウエハW上の領域のほぼ中心が、投影光学系PLの光軸上にほぼ一致するように、レーザ干渉計54Wの計測値をモニタしつつ、ウエハステージWSTを移動する。
【0226】
そして、主制御装置50では、制御情報TSを光源16に与えて、レーザビームLBを発光させて、照明光ELをレチクルRTに照射して露光を行う。これにより、ウエハW上のレジスト層の計測用パターン671,1の潜像が既に形成されている領域(領域S1,1と呼ぶ)に基準パターン741が重ねて転写される。この結果、ウエハW上の領域S1,1には、図10(B)に示されるように、計測用パターン671,1の潜像67’1,1と基準パターン741の潜像74’1が同図のような位置関係で形成される。
【0227】
次いで、主制御装置50では、レチクルRT上の計測用パターン67i,jの配列ピッチと投影光学系PLの投影倍率とに基づいて、ウエハW上の計測用パターン67i,jの設計上の配列ピッチpを算出し、そのピッチpだけ、ウエハステージWSTをX軸方向に移動して、第2番目の計測用パターン671,2の潜像が形成されたウエハW上の領域(領域S1,2と呼ぶ)のほぼ中心が、投影光学系PLの光軸上にほぼ一致するように、ウエハステージWSTを移動する。
【0228】
そして、主制御装置50では、制御情報TSを光源16に与えて、レーザビームLBを発光させて、照明光ELをレチクルRTに照射して露光を行う。これにより、ウエハW上の領域S1,2には基準パターン741が重ねて転写される。
【0229】
以後、上記と同様の領域間ステッピング動作と、露光動作とを繰り返すことにより、ウエハW上の領域Si,jに、図10(B)と同様の計測用パターンと基準パターンとの潜像が形成される。
【0230】
このようにして、露光が終了すると、主制御装置50では、不図示のウエハローダを介してウエハWをZチルトステージ58上からアンロードした後、チャンバ11にインラインにて接続されている不図示のコータ・デベロッパ(以下、「C/D」と略述する)に送る。そして、C/D内で、そのウエハWの現像が行われ、その現像後にウエハW上には、マトリックス状に配列された各領域Si,jに図10(B)と同様の配置で計測用パターンと基準パターンとのレジスト像が形成される。
【0231】
その後、現像が終了したウエハWは、C/Dから取り出され、外部の重ね合せ測定器(レジストレーション測定器)を用いて、各領域Si,jについての重ね合せ誤差の測定が行われ、この結果に基づいて、各計測用パターン67i,jのレジスト像の対応する基準パターン741に対する位置誤差(位置ずれ)が算出される。なお、この位置ずれの算出方法は、種々考えられるが、いずれにしても、計測された生データに基づいて統計演算を行うことが、精度を向上する観点からは望ましい。
【0232】
このようにして、各領域Si,jについて、基準パターンに対する計測用パターンのX,Y2次元方向の位置ずれ(Δξ’,Δη’)が求められる。そして、この各領域Si,jについての位置ずれ(Δξ’,Δη’)のデータが、前述したサービスエンジニア等により、入力装置44を介して主制御装置50に入力される。なお、外部の重ね合せ測定器から、演算した各領域Si,jについての位置ずれ(Δξ’,Δη’)のデータを、オンラインにて主制御装置50に入力することも可能である。
【0233】
いずれにしても、上記の入力に応答して、主制御装置50内のCPUでは、前述した第1プログラムと同様の演算プログラムをメインメモリにロードし、位置ずれ(Δξ’,Δη’)に基づいて、各領域Si,jに対応する、すなわち投影光学系PLの視野内の第1計測点〜第n計測点に対応する波面(波面収差)、ここでは、ツェルニケ多項式の各項の係数、例えば第2項の係数Z2〜第37項の係数Z37を上記演算プログラムに従って演算する。
【0234】
このように、主制御装置50内のCPUでは、上記の位置ずれ(Δξ’,Δη’)に基づいて、所定の演算プログラムに従った演算により投影光学系PLの波面を求めるのであるが、ここでは、その演算の前提となる、位置ずれ(Δξ’,Δη’)と波面との物理的な関係を、図7及び図8に基づいて簡単に説明する。
【0235】
図7に、計測用パターン67k,lについて、代表的に示されるように、計測用パターン67i,jで発生した回折光のうち、ピンホール状の開口70i,jを通過した光は、どの位置の計測用パターン67i,jに由来する光であるかによって、投影光学系PLの瞳面を通過する位置が異なる。すなわち、当該瞳面の各位置における波面は、その位置に対応する計測用パターン67i,jの位置を介した光の波面と対応している。そして、仮に投影光学系PLに収差が全くないものとすると、これらの波面は、投影光学系PLの瞳面では、すべて符号F1で示されるような理想波面(ここでは平面)となるはずである。しかるに、収差の全く無い投影光学系は実際には存在しないため、瞳面においては、例えば、点線で示されるような曲面状の波面F2となる。従って、計測用パターン67i,jの像は、ウエハW上で波面F1の理想波面に対する傾きに応じてずれた位置に結像される。
【0236】
この一方、基準パターン741(又は742)から発生する回折光は、図8に示されるように、ピンホール状の開口の制限を受けることなく、しかも投影光学系PLに直接入射し、該投影光学系PLを介してウエハW上に結像される。更に、この基準パターン741を用いた露光は、投影光学系PLの光軸上に基準パターン741の中心を位置決めした状態で行われることから、基準パターン741から発生する結像光束は殆ど投影光学系PLの収差の影響を受けることなく、光軸を含む微小領域に位置ずれなく結像する。
【0237】
従って、位置ずれ(Δξ’,Δη’)は、波面の理想波面に対する傾斜をそのまま反映した値になり、逆に位置ずれ(Δξ’,Δη’)に基づいて波面を復元することができる。なお、上記の位置ずれ(Δξ’,Δη’)と波面との物理的な関係から明らかなように、本実施形態における波面の算出原理は、周知のShack-Hartmannの波面算出原理そのものである。
【0238】
なお、計測用レチクルRTと同様の構成の特殊な構造のマスクを用い、そのマスク上の複数の計測用パターンのそれぞれを、個別に設けられたピンホール及び投影光学系を順次介して基板上に焼き付けるとともに、マスク上の基準パターンを集光レンズ及びピンホールを介することなく、投影光学系を介して基板上に焼き付けて、それぞれの焼き付けの結果得られる複数の計測用パターンのレジスト像それぞれの基準パターンのレジスト像に対する位置ずれを計測して所定の演算により、波面収差を算出する技術に関する発明が、米国特許第5,978,085号に開示されている。
【0239】
ところで、本実施形態の露光装置1221〜1223では、半導体デバイスの製造時には、デバイス製造用のレチクルRがレチクルステージRST上に装填され、その後、レチクルアライメント及びいわゆるベースライン計測、並びにEGA(エンハンスト・グローバル・アライメント)等のウエハアライメントなどの準備作業が行われる。
【0240】
なお、上記のレチクルアライメント、ベースライン計測等の準備作業については、例えば特開平4−324923号公報などに詳細に開示され、また、これに続くEGAについては、特開昭61−44429号公報等に詳細に開示されているので、詳細な説明は省略する。
【0241】
その後、前述した計測用レチクルRTを用いた波面収差の計測時と同様のステップ・アンド・リピート方式の露光が行われる。但し、この場合、ステッピングは、ウエハアライメント結果に基づいて、ショット間を単位として行われる。なお、露光時の動作等は通常のステッパと異なることがないので、詳細説明については省略する。
【0242】
次に、露光装置122(1221〜1223)の製造の際に行われる投影光学系PLの製造方法について説明する。
【0243】
a. 投影光学系の仕様の決定
この仕様の決定に際しては、まず、ユーザーであるメーカA側の技術者等により、不図示の入出力装置を介して第1通信サーバ120に、露光装置が達成すべき目標情報、例えば露光波長、最小線幅(又は解像力)、及び対象パターン等の情報が入力される。次に、上記技術者等は、入出力装置を介してその目標情報の送信を第1通信サーバ120に指示する。
【0244】
これにより、第1通信サーバ120では、第2通信サーバ130に対してデータの受信が可能であるか否かの問い合わせを行い、第2通信サーバ130からの受信可能である旨の回答を受けて、前記目標情報を第2通信サーバ130に送信する。
【0245】
第2通信サーバ130では、上記の目標情報を受信して、分析を行い、その分析結果に基づいて、後述するような7通りの仕様決定方法の中から、1つの方法を選択して、仕様を決定し、その決定した仕様をRAM内に記憶する。
【0246】
ここで、仕様決定方法の説明に先立って、前述した式(4)で表される、投影光学系の波面を展開したツェルニケ多項式(フリンジツェルニケ多項式)の各項の係数Ziがどのような収差に関連するかを簡単に説明する。各項は、前述した表1に示されるような、fi(ρ,θ)項、すなわちρの最高次数をn次とし、θに掛かる係数をmとするn次mθ項を含む項である。
【0247】
0次0θ項の係数Z1は、波面のポジションを示すものであり、収差とは殆ど関係がない。
1次1θ項(の係数(Z2,Z3))は、ディストーション成分を示す。
2次0θ項(の係数Z4)は、フォーカス成分を示す。
3次以上の0θ項(の係数(Z9,Z16,Z25,Z36,Z37))は、球面収差成分を示す。
2θ項(の係数(Z5,Z6,Z12,Z13,Z21,Z22,Z32,Z33))、及び4θ項(の係数(Z17,Z18,Z28,Z29))は、非点収差成分を示す。
3次以上の1θ項(の係数(Z7,Z8,Z14,Z15,Z23,Z24,Z34,Z35))、3θ項(の係数(Z10,Z11,Z19,Z20,Z30,Z31))、及び5θ項(の係数(Z26,Z27))はコマ収差成分を示す。
【0248】
以下、7通りの仕様決定方法について説明するが、いずれの方法も投影光学系が満足すべき波面収差を規格値として投影光学系の仕様を決定するものである。
【0249】
<第1の方法>
これは、投影光学系の波面を展開したツェルニケ多項式の各項の係数のうち、目標情報に基づいて選択した特定の項の係数(の値)を規格値として投影光学系の仕様を決定する方法である。この第1の方法は、一例として、目標情報に例えば解像力が含まれる場合に、例えばディストーション成分に対応する係数Z2,Z3を選択し、これらの係数の値そのものを規格値として、視野内において、これらがそれぞれ所定の値以下となるように投影光学系の仕様を決定するような場合に用いられる。
【0250】
<第2の方法>
これは、投影光学系の波面を展開したツェルニケ多項式の各項の係数のRMS値(Root-means-square value:二乗平均値の平方根)を規格値とし、投影光学系の視野内全体における前記RMS値が所定の許容値を超えないように投影光学系の仕様を決定する方法である。この第2の方法によれば、例えば像面湾曲等の視野内全体で定義される収差が抑制されることとなる。この第2の方法は、目標情報の如何によらず好適に適用できる。勿論、各項の係数の視野内におけるRMS値を規格値としても良い。
【0251】
<第3の方法>
これは、投影光学系の波面を展開したツェルニケ多項式の各項の係数の値を規格値とし、前記係数が個別に定められた各許容値をそれぞれ超えないように前記投影光学系の仕様を決定する方法である。この第3の方法では、各許容値を同一値として設定することもできるし、個別に異なる値を任意に設定することもできる。勿論、このうちのいくつかが同一値であることとすることもできる。
【0252】
<第4の方法>
この第4の方法は、投影光学系の波面を展開したツェルニケ多項式の各項の係数のうち、着目する特定の収差に対応するn次mθ項の係数のRMS値を規格値とし、前記RMS値が所定の許容値を超えないように投影光学系の仕様を決定する方法である。この第4の方法は、例えば目標情報にパターン情報が含まれている場合に、そのパターン情報を分析してそのパターンの投影像を良好な状態で像面上に形成するためには、特に抑制しなければならないのは、どの収差であるかを推測し、その推測結果に基づいて、n次mθ項の係数のRMS値を例えば次のように規格化する。
【0253】
視野内におけるZ2,Z3に関するRMS値A1を規格値とし、規格値A1≦許容値B1とする。
視野内におけるZ4のRMS値A2を規格値とし、規格値A2≦許容値B2とする。
視野内におけるZ5,Z6に関するRMS値A3を規格値とし、規格値A3≦許容値B3とする。
視野内におけるZ7,Z8に関するRMS値A4を規格値とし、規格値A4≦許容値B4とする。
視野内におけるZ9のRMS値A5を規格値とし、規格値A5≦許容値B5とする。
視野内におけるZ10,Z11に関するRMS値A6を規格値とし、規格値A6≦許容値B6とする。
視野内におけるZ12,13に関するRMS値A7を規格値とし、規格値A7≦許容値B7とする。
視野内におけるZ14,Z15に関するRMS値A8を規格値とし、規格値A8≦許容値B8とする。
視野内におけるZ16のRMS値A9を規格値とし、規格値A9≦許容値B9とする。
視野内におけるZ17,Z18に関するRMS値A10を規格値とし、規格値A10≦許容値B10とする。
視野内におけるZ19,Z20に関するRMS値A11を規格値とし、規格値A11≦許容値B11とする。
視野内におけるZ21,Z22に関するRMS値A12を規格値とし、規格値A12≦許容値B12とする。
視野内におけるZ23,Z24に関するRMS値A13を規格値とし、規格値A13≦許容値B13とする。
視野内におけるZ25のRMS値A14を規格値とし、規格値A14≦許容値B14とする。
視野内におけるZ26,Z27に関するRMS値A15を規格値とし、規格値A15≦許容値B15とする。
視野内におけるZ28,Z29に関するRMS値A16を規格値とし、規格値A16≦許容値B16とする。
視野内におけるZ30,Z31に関するRMS値A17を規格値とし、規格値A17≦許容値B17とする。
視野内におけるZ32,Z33に関するRMS値A18を規格値とし、規格値A18≦許容値B18とする。
視野内におけるZ34,Z35に関するRMS値A19を規格値とし、規格値A19≦許容値B19とする。
視野内におけるZ36,Z37に関するRMS値A20を規格値とし、規格値A20≦許容値B20とする。
【0254】
<第5の方法>
この第5の方法は、投影光学系の波面を展開したツェルニケ多項式の各項の係数のうち、着目する特定の収差に対応する各項をmθ項毎の複数のグループに分離し、各グループに含まれる各項の係数の視野内におけるRMS値を規格値とし、各グループの前記RMS値が個別に定められた各許容値を超えないように投影光学系の仕様を決定する方法である。
【0255】
例えば、3次以上の0θ項の係数Z9,Z16,Z25,Z36,Z37に関する視野内におけるRMS値C1を規格値とし、規格値C1≦許容値D1とする。
3次以上の1θ項の係数Z7,Z8,Z14,Z15,Z23,Z24,Z34,Z35に関する視野内におけるRMS値C2を規格値とし、規格値C2≦許容値D2とする。2θ項の係数Z5,Z6,Z12,Z13,Z21,Z22,Z32,Z33に関する視野内におけるRMS値C3を規格値とし、規格値C3≦許容値D3とする。
3θ項の係数Z10,Z11,Z19,Z20,Z30,Z31に関する視野内におけるRMS値を規格値C4とし、規格値C4≦許容値D4とする。
4θ項の係数Z17,Z18,Z28,Z29に関する視野内におけるRMS値を規格値C5とし、規格値C5≦許容値D5とする。
5θ項の係数Z26,Z27に関する視野内におけるRMS値を規格値C6とし、規格値C6≦許容値D6とする。
【0256】
この第5の方法も、前述の各項の係数の有する意味からわかるように、例えば目標情報にパターン情報が含まれている場合に、そのパターン情報を分析してそのパターンの投影像を良好な状態で像面上に形成するためには、特に抑制しなければならないのは、どの収差であるかを推測し、その推測結果に基づいて行うことができる。
【0257】
<第6の方法>
この第6の方法は、投影光学系PLの波面を展開したツェルニケ多項式の各項の係数に目標情報に応じて重み付けした重み付け後の各項の係数を規格値とし、重み付け後の前記各項の係数の視野内におけるRMS値が所定の許容値を超えないように投影光学系の仕様を決定する方法である。この第6の方法も、例えば目標情報にパターン情報が含まれている場合に、そのパターン情報を分析してそのパターンの投影像を良好な状態で像面上に形成するためには、特に抑制しなければならないのは、どの収差であるかを推測し、その推測結果に基づいて行うことができる。
【0258】
<第7の方法>
この第7の方法は、目標情報に、投影光学系の投影対象であるパターンの情報が含まれる場合にのみ用いられる方法であって、前記パターンの情報に基づいて、該パターンを投影光学系により投影した際に像面に形成される空間像を求めるためのシミュレーションを行い、このシミュレーション結果を分析してパターンが良好に転写されるために投影光学系に許容される波面収差を規格値として投影光学系の仕様を決定するものである。この場合、シミュレーションの方法として、例えば前述と同様のツェルニケ変化表を予め作成し、そのツェルニケ変化表から得られる、前記パターンを対象パターンとした場合に特定の収差(その指標値を含む)に対して前記パターンに応じて定まる、、投影光学系の波面を展開したツェルニケ多項式の各項の係数の感度(Zernike Sensitivity)と、投影光学系の波面を展開したツェルニケ多項式の各項の係数との線形結合に基づいて空間像を求めても良い。
【0259】
これを更に詳述すると、投影光学系の視野内のn個の計測点(評価点)における諸収差(その指標値を含む)、例えばm種類の収差から成るn行m列のマトリックスfと、前記n個の計測点における波面収差のデータ、例えば波面を展開したツェルニケ多項式の各項の係数、例えば第2項〜第37項の係数Z2〜Z37から成るn行36列のマトリックスWaと、ツェルニケ変化表のデータ(すなわち所定の露光条件下におけるm種類の諸収差のツェルニケ多項式の各項の係数、例えば第2項〜第37項の係数Z2〜Z37の1λ当たりの変化量(Zernike Sensitivity)から成る例えば36行m列のマトリックスZSとの間には、次式(13)で示される関係がある。
f=Wa・ZS ……(13)
【0260】
ここで、f、Wa、ZSは、一例としてそれぞれ次式(14)、(15)、(16)のように表すことができる。
【0261】
【数 7】
【0262】
上記式(13)から明らかなように、ツェルニケ変化表と波面収差のデータ(例えば波面を展開したツェルニケ多項式の各項の係数、例えば第2項〜第37項の係数Z2〜Z37)とを用いることにより、任意の収差を所望の値に定めることができる。換言すれば、上式(13)のfに所望の収差の値を与え、既知の(予め作成した)ツェルニケ変化表のデータを用いて、上式(13)を最小自乗法で解くことにより、特定の収差を所望の値にする投影光学系の視野内の各点におけるツェルニケ多項式の各項の係数、例えば第2項〜第37項の係数Z2〜Z37を定めることができることがわかる。
【0263】
すなわち、この第7の方法は、上記のシミュレーションにより、特定の収差、例えばコマ収差の指標値である線幅異常値が所定の値以下となるようなパターンの空間像を求め、その空間像が得られたときの波面収差(波面を展開したツェルニケ多項式の各項の係数)を規格値として投影光学系の仕様を決定するものである。
【0264】
上述した第1〜第7の仕様決定方法は、いずれも露光装置が達成すべき目標情報に基づいて、投影光学系の瞳面における波面の情報、すなわち瞳面を通過する総合的な情報を規格値として投影光学系の仕様を決定するので、この仕様を満足する投影光学系を製造すれば、結果的に露光装置が達成すべき目標を確実に達成することができる。
【0265】
b. 投影光学系の製造工程
次に、図11のフローチャートに沿って投影光学系PLの製造工程について説明する。
【0266】
〔ステップ1〕
ステップ1では、まず、所定の設計レンズデータによる設計値に従って投影光学系PLを構成する各光学部材としての各レンズ素子、並びに各レンズを保持するレンズホルダ、レンズ素子とレンズホルダとから成る光学ユニットを収納する鏡筒を製造する。すなわち、各レンズ素子は、周知のレンズ加工機を用いて所定の光学材料からそれぞれ所定の設計値に従う曲率半径、軸上厚を持つように加工され、また各レンズを保持するレンズホルダ、レンズ素子とレンズホルダとから成る光学ユニットを収納する鏡筒は、周知の金属加工機等を用いて所定の保持材料(ステンレス、真鍮、セラミック等)からそれぞれ所定の寸法を持つ形状に加工される。
【0267】
〔ステップ2〕
ステップ2では、ステップ1にて製造された投影光学系PLを構成する各レンズ素子のレンズ面の面形状を例えばフィゾー型の干渉計を用いて計測する。このフィゾー型の干渉計としては、波長633nmの光を発するHe−Ne気体レーザや波長363nmの光を発するArレーザ、波長248nmに高調波化されたArレーザ等を光源とするものが用いられる。このフィゾー型の干渉計によると、光路上に配置された集光レンズの表面に形成された参照面と被検面であるレンズ素子表面からの反射光の干渉による干渉縞をCCD等の撮像装置により計測することにより被検面の形状を正確に求めることができる。なお、フィゾー型の干渉計を用いてレンズ等の光学素子の表面(レンズ面)の形状を求めることは公知であり、このことは、例えば、特開平62−126305号、特開平6−185997号等にて開示されているので、詳細な説明は省略する。
【0268】
上述したフィゾー型の干渉計を用いた光学素子の面形状の計測は、投影光学系PLを構成する各レンズ素子の全てのレンズ面に関して行われる。そして、それぞれの計測結果をコンソール等の不図示の入力装置を介して第2通信サーバ130が備えるRAM等のメモリ、あるいはハードディスク等の記憶装置に記憶させる。
【0269】
〔ステップ3〕
ステップ2での投影光学系PLを構成する各レンズ素子の全てのレンズ面の面形状の計測が完了した後、設計値に従って加工製造された光学ユニット、すなわち、レンズ等の光学素子とその光学素子を保持するレンズホルダとからそれぞれ成る複数の光学ユニットを組み上げる。この光学ユニットのうち、複数、例えば4つは、前述した可動レンズ131〜134をそれぞれ有しており、該可動レンズ131〜134を有する光学ユニットには、前述の如く、上記レンズホルダとして、二重構造のレンズホルダが用いられている。すなわち、これらの二重構造のレンズホルダは、可動レンズ131〜134をそれぞれ保持する内側レンズホルダと、その内側レンズホルダを保持する外側レンズホルダとをそれぞれ有し、内側レンズホルダと外側レンズホルダとの位置関係が機械式の調整機構を介して調整可能な構造となっている。また、二重構造のレンズホルダには、前述した駆動素子がそれぞれ所定の位置に設けられている。
【0270】
そして、上述のようにして組み上げられた複数の光学ユニットを、鏡筒の上部開口を介して順次、スペーサを介在させながら鏡筒内に落とし込むように組み上げていく。そして、最初に鏡筒内に落としこまれた光学ユニットは、鏡筒の下端に形成された突出部によってスペーサを介して支持され、全ての光学ユニットが鏡筒内に収容されることにより組み立て工程が完了する。この組み立て工程と並行して、光学ユニットと共に鏡筒内に収納されるスペーサの厚さを加味しながら工具(マイクロメータ等)を用いて、各レンズ素子の光学面(レンズ面)の間隔に関する情報を計測する。そして、投影光学系の組み立て作業と計測作業とを交互に行いながら、ステップ3の組み立て工程が完了した段階での投影光学系PLの最終的な各レンズ素子の光学面(レンズ面)の間隔を求める。
【0271】
なお、この組み立て工程を含み、製造段階の各工程では、前述した可動レンズ131〜134は中立位置に固定されている。また、説明は省略したが、この組み立て工程において、瞳開口絞り15も組み込まれる。
【0272】
上記の組み立て工程中または組み立て完了時での投影光学系PLの各レンズ素子の光学面(レンズ面)間の間隔に関する計測結果を不図示のコンソール等の不図示の入力装置を介して第2通信サーバ130が備えるRAM等のメモリ、あるいはハードディスク等の記憶装置に記憶させる。なお、以上の組み立て工程に際して、必要に応じて光学ユニットを調整しても良い。
【0273】
このとき、例えば、機械式の調整機構を介して光学素子間の光軸方向での相対間隔を変化、あるいは光軸に対して光学素子を傾斜させる。また、鏡筒の側面を貫通する雌螺子部を通して螺合するねじ(ビス)の先端がレンズホルダに当接するように鏡筒を構成し、そのねじをねじ回し(スクリュドライバ)等の工具を介して移動させることにより、レンズホルダを光軸と直交する方向へずらし、偏心等の調整をしても良い。
【0274】
〔ステップ4〕
次に、ステップ4では、ステップ3にて組み上がった投影光学系PLの波面収差を計測する。
【0275】
具体的には、投影光学系PLを不図示の大型の波面計測装置のボディに取り付け、波面収差を計測する。この波面計測装置による波面の計測原理は、前述した波面収差計測器80と異なるところがないので、詳細説明は省略する。
【0276】
上記の波面収差の計測の結果、波面計測装置により、投影光学系の波面を展開したツェルニケ多項式(フリンジツェルニケ多項式)の各項の係数Zi(i=1、2、……、37)が得られる。従って、波面計測装置を第2通信サーバ130に接続しておくことにより、第2通信サーバ130のRAM等のメモリ(あるいはハードディスク等の記憶装置)に上記ツェルニケ多項式の各項の係数Ziが自動的に取り込まれる。なお、上記の説明では、波面計測装置では、ツェルニケ多項式の第81項までを用いるものとしたが、これは、投影光学系PLの各収差の高次成分も算出するためにこのようにしたものである。しかし、前述の波面収差計測器の場合と同様に第37項までを算出することとしても良いし、あるいは82項以上の項をも算出するようにしても良い。
【0277】
〔ステップ5〕
ステップ5では、ステップ4にて計測された波面収差が、先に説明した第1〜第7の仕様決定方法のうちから選択された決定方法に従って決定された仕様を満足するように、投影光学系PLを調整する。
【0278】
まず、投影光学系PLの調整に先立って、第2通信サーバ130は、メモリ内に記憶された各情報、すなわち上記ステップ2にて得られた各光学素子の面形状に関する情報及び上記ステップ3の組み立て工程にて得られた各光学素子の光学面の間隔に関する情報等に基づいて、メモリ内に予め記憶された光学基本データを修正して、実際に組上がった投影光学系PLの製造過程での光学データを再現する。この光学データは、各光学素子の調整量を算出するために用いられる。
【0279】
すなわち、第2通信サーバ130のハードディスク内には、投影光学系PLを構成する全てのレンズ素子について、各レンズ素子の6自由度方向それぞれの単位駆動量とツェルニケ多項式の各項の係数Ziの変化量との関係を、投影光学系の設計値に基づいて算出した、いわば前述したマトリックスOを可動レンズのみならず非可動のレンズ素子をも含むように拡張した調整用基本データベースが、予め格納されている。そこで、第2通信サーバ130では、上述した投影光学系PLの製造過程での光学データに基づいて、所定の演算により上記の調整用基本データベースを修正する。
【0280】
そして、例えば上述した第1〜第6の方法のいずれかを選択している場合には、第2通信サーバ130では、修正後の基本データベースと、波面の目標値、すなわち選択した仕様決定方法に基づきツェルニケ多項式の各項の係数Ziが満足すべき値と、上記波面計測装置の計測結果として得られたツェルニケ多項式の各項の係数Ziの実測値とに基づいて、所定の演算プログラムに従って、各レンズ素子の6自由度方向それぞれの調整量を例えば最小自乗法により算出する。
【0281】
そして、第2通信サーバ130では、ディスプレイの画面上に各レンズ素子の6自由度方向それぞれの調整量(ゼロを含む)の情報を表示する。
【0282】
この表示に従って、技術者(作業者)により、各レンズ素子が調整される。これにより、選択された仕様決定方法に従って決定された仕様を満たすように投影光学系PLが調整される。
【0283】
具体的には、仕様決定方法として、第1の方法が選択されている場合には、投影光学系PLの波面を展開したツェルニケ多項式の各項の係数のうち、目標情報に基づいて選択した特定の項の係数が所定値を超えないように投影光学系PLが調整される。また、第2の方法が選択されている場合には、投影光学系PLの視野内全体における波面を展開したツェルニケ多項式の各項の係数のRMS値が、所定の許容値を超えないように投影光学系PLが調整される。また、第3の方法が選択されている場合には、投影光学系の波面を展開したツェルニケ多項式の各項の係数が個別に定められた各許容値をそれぞれ超えないように投影光学系PLが調整される。また、第4の方法が選択されている場合には、投影光学系PLの波面を展開したツェルニケ多項式の各項の係数のうち、着目する特定の収差に対応するn次mθ項の係数の視野内におけるRMS値が所定の許容値を超えないように投影光学系PLが調整される。第5の方法が選択されている場合には、投影光学系PLの波面を展開したツェルニケ多項式の各項の係数のうち、着目すべき特定の収差に対応する各項をmθ項毎の複数のグループに分離し、各グループに含まれる各項の係数の視野内におけるRMS値が個別に定められた各許容値を超えないように投影光学系が調整される。また、第6の方法が選択されている場合には、投影光学系PLの波面を展開したツェルニケ多項式の各項の係数に目標情報に応じて重み付けした重み付け後の各項の係数の視野内におけるRMS値が所定の許容値を超えないように投影光学系PLが調整される。
【0284】
一方、第7の方法を選択している場合には、第2通信サーバ130では、前記目標情報に含まれるパターンの情報に基づいて、該パターンを投影光学系により投影した際に像面に形成される空間像を求めるためのシミュレーションを行い、このシミュレーション結果を分析してパターンが良好に転写されるために投影光学系PLに許容される波面収差を満たすように投影光学系PLを調整する。この場合において、第2通信サーバ130では、シミュレーションの方法として、例えば前述と同様のツェルニケ変化表を予め作成し、そのツェルニケ変化表から得られる、前記パターンを対象パターンとした場合の特定の収差(その指標値を含む)に対する、投影光学系の波面を展開したツェルニケ多項式の各項の係数の感度(Zernike Sensitivity)と、投影光学系の波面を展開したツェルニケ多項式の各項の係数との線形結合に基づいて空間像を求め、その空間像に基づいて前記着目する収差が許容値を超えないようなレンズ素子の調整量を例えば最小自乗法により算出する。
【0285】
そして、第2通信サーバ130では、ディスプレイの画面上に各レンズ素子の6自由度方向それぞれの調整量(ゼロを含む)の情報を表示する。この表示に従って、技術者(作業者)により、各レンズ素子が調整される。これにより、選択された第7の仕様決定方法に従って決定された仕様を満たすように投影光学系PLが調整される。
【0286】
いずれにしても、投影光学系PLの波面の計測結果に基づいて投影光学系PLが調整されるので、低次収差のみでなく高次収差も含めて同時に調整でき、しかも従来のように調整する収差の順番を考慮する必要もない。従って、投影光学系の光学特性を高精度にかつ簡易に調整することが可能となる。このようにして、決定した仕様をほぼ満たす投影光学系PLが製造されることとなる。
【0287】
なお、本実施形態では、ステップ4にて波面収差を計測した後、投影光学系の調整を行うことなく投影光学系を露光装置に組み込んでから投影光学系の調整を行うものとしたが、投影光学系を露光装置に組み込む前に投影光学系の調整(光学素子の再加工や交換など)を行い、この調整された投影光学系を露光装置に組み込むようにしても良い。このとき、前述の結像特性調整機構を用いることなく、例えば作業者が光学素子の位置調整などを行うことにより投影光学系を調整しても良い。また、投影光学系を露光装置に組み込んでから、前述の波面収差計測器80又は計測用レチクルRTを用いて波面収差を再度計測し、この計測結果に基づいて投影光学系を再調整することが望ましい。
【0288】
なお、上記の投影光学系PLの調整等に際して行われる波面収差の計測は、上述の如く、波面計測装置を用い、ピンホール及び投影光学系PLを介して形成された空間像に基づいて行うこととしても良いが、これに限らず、例えば計測用レチクルRTを用い、所定の計測用パターンをピンホール及び投影光学系PLを介してウエハW上に焼付けた結果に基づいて行うこととしても良い。また、投影光学系の光学素子の再加工又は交換が必要なときは、投影光学系を露光装置に組み込む前に再加工又は交換を行うことが好ましい。
【0289】
なお、投影光学系PLの光学素子の再加工を容易に行うため、上述の波面計測装置を用いて波面収差を計測した際に、この計測結果に基づいて再加工が必要な光学素子の有無や位置などを特定し、その光学素子の再加工と他の光学素子の再調整とを並行して行うようにしても良い。
【0290】
次に、露光装置122の製造方法について説明する。
【0291】
露光装置122の製造に際しては、まず、複数のレンズ素子、ミラー等の光学素子などを含む照明光学系12をユニット単体として組み立てるとともに、上述のようにして投影光学系PLを単体として組み立てる。また、多数の機械部品から成るレチクルステージ系やウエハステージ系などを、それぞれユニットとして組み立てる。そして、それぞれユニット単体としての所望の性能を発揮するように、光学的な調整、機械的な調整、及び電気的な調整等を行う。なお、この調整に際して、投影光学系PLについては上述した方法により調整が行われる。
【0292】
次に、照明光学系12や投影光学系PLなどを露光装置本体に組むとともに、レチクルステージ系やウエハステージ系などを露光装置本体に取り付けて配線や配管を接続する。
【0293】
次いで、照明光学系12や投影光学系PLについては、光学的な調整を更に行う。これは、露光装置本体への組み付け前と組み付け後とでは、それらの光学系、特に投影光学系PLの結像特性が微妙に変化するからである。本実施形態では、この露光装置本体に対する組み込み後に行われる投影光学系PLの光学的な調整に際し、前述した波面収差計測器80をZチルトステージ58に取り付け、前述と同様にして波面収差を計測し、その波面収差の計測結果として得られる各計測点における波面の情報を、オンラインにてその製造中の露光装置の主制御装置50から第2通信サーバ130に送る。そして、第2通信サーバ130により、上述した投影光学系PL単体の製造時における調整の際と同様にして、各レンズ素子の6自由度方向それぞれの調整量を例えば最小自乗法により算出し、その算出結果をディスプレイ上に表示させる。
【0294】
そして、この表示に従って、技術者(作業者)により、各レンズ素子が調整される。これにより、決定された仕様を確実に満たす投影光学系PLが製造される。
【0295】
なお、この製造段階における最終調整を、前述した第2通信サーバ130からの指示に基づく、主制御装置50による結像特性補正コントローラ48を介した投影光学系PLの自動調整により行うことは可能である。しかしながら、露光装置の製造が終了した段階では、各可動レンズを中立位置に保っておくことが、半導体製造工場への納入後に駆動素子の駆動ストロークを十分に確保するために望ましく、また、この段階で、修正されていない収差、主として高次収差は自動調整が困難な収差であると判断できるので、上記の如く、レンズ等の組付けなどを再調整することが望ましい。
【0296】
なお、上記の再調整により所望の性能が得られない場合などには、一部のレンズを再加工又は交換する必要も生じる。なお、投影光学系PLの光学素子の再加工を容易に行うため、前述した如く、投影光学系PLを露光装置本体に組み込む前に投影光学系PLの波面収差を前述の波面計測装置等を用いて計測し、この計測結果に基づいて再加工が必要な光学素子の有無や位置などを特定することとしても良い。また、その光学素子の再加工と他の光学素子の再調整とを並行して行うようにしても良い。
【0297】
また、投影光学系PLの光学素子単位でその交換などを行っても良いし、あるいは複数の鏡筒を有する投影光学系ではその鏡筒単位で交換などを行っても良い。更に、光学素子の再加工では必要に応じてその表面を非球面に加工しても良い。また、投影光学系PLの調整では光学素子の位置(他の光学素子との間隔を含む)や傾斜などを変更するだけでも良いし、特に光学素子がレンズエレメントであるときはその偏心を変更したり、あるいは光軸AXを中心として回転させても良い。
【0298】
その後、更に総合調整(電気調整、動作確認等)をする。これにより、光学特性が高精度に調整された投影光学系PLを用いて、レチクルRのパターンをウエハW上に精度良く転写することができる、本実施形態の露光装置122を製造することができる。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0299】
以上説明したように、本実施形態によると、投影光学系PLの製造に際して、コンピュータシステム10によって、露光装置122が達成すべき目標情報に基づいて、投影光学系PLが満足すべき波面収差を規格値として投影光学系PLの仕様が決定される。すなわち、投影光学系PLの瞳面における波面の情報を規格値として投影光学系PLの仕様が決定される。そして、投影光学系PL、ひいては露光装置の製造工程における投影光学系の調整段階では、決定された仕様を満足するように投影光学系PLが調整される。この際、低次収差のみでなく高次収差も含めて調整されるので、従来のような段階的な調整が不要となるとともに、高次収差の調整のための光線追跡等も不要となる。従って、投影光学系PLの製造工程を簡略化することが可能である。しかも、製造された投影光学系PLにより露光装置122が達成すべき目標が確実に達成されることとなる。
【0300】
また、上記の露光装置の製造工程における投影光学系の調整に際しては、投影光学系PLの波面収差を計測し、その波面収差の計測結果(実測値)に基づいて、投影光学系PLが前記仕様を満足するように投影光学系PLを調整する。従って、仕様通りの投影光学系PLを簡易かつ確実に製造することができる。
【0301】
また、本実施形態では、波面収差の計測を、投影光学系PLが露光装置本体(光学装置の本体)に組み込まれる前及び投影光学系PLが露光装置本体に組み込まれた後のいずれにおいても行われる。前者では、専用の波面収差計測装置を用いて非常に高精度に投影光学系の波面を計測することができ、また、後者により、露光装置本体に対する組み込みの前後において環境条件の変化等があっても、これに影響を受けることのない、高精度な投影光学系の光学特性の調整が可能となる。これに限らず、波面収差の計測を、投影光学系PLが露光装置本体(光学装置の本体)に組み込まれる前及び投影光学系PLが露光装置本体に組み込まれた後のいずれか一方のみにおいて行うようにしても良い。
【0302】
いずれにしても、投影光学系PLの波面の計測結果に基づいて投影光学系PLが調整されるので、低次収差のみでなく高次収差も含めて同時に調整でき、しかも従来のように調整する収差の順番を考慮する必要もない。従って、投影光学系の光学特性を高精度にかつ簡易に調整することが可能となる。このようにして、所望の仕様をほぼ満たす投影光学系PLが製造されることとなる。
【0303】
本実施形態に係る露光装置122によると、主制御装置50により前述の如くして波面収差計測器80(又は計測用レチクルRT)を用いて投影光学系PLの波面が計測される。そして、主制御装置50により、投影光学系の瞳面を通過する総合的な情報である、波面の計測結果を利用して結像特性調整機構(48、131〜134)等が制御される。従って、波面計測の結果を利用して投影光学系PLの結像特性が自動的に調整される。
【0304】
また、本実施形態に係る露光装置122によると、前述した製造方法によって製造され、製造時は勿論、その後の調整時においても、低次収差のみでなく高次収差も含めて調整された投影光学系PLを露光用光学系として具備しているので、この投影光学系PLによりレチクルRのパターンをウエハW上に精度良く転写することが可能となる。
【0305】
また、本実施形態に係るコンピュータシステム10によると、露光装置122が備える波面収差計測器80により投影光学系PLの波面が自己計測される。第1通信サーバ120では、波面収差計測器80で計測される投影光学系PLの波面の計測結果を通信路を介して第2通信サーバ130に送信する。第2通信サーバ130では、波面の計測結果を利用して結像特性調整機構(48、131〜134)を制御する。従って、投影光学系の瞳面における波面の情報、すなわち瞳面を通過する総合的な情報を利用して投影光学系PLの結像特性が精度良く調整される。この場合、第2通信サーバ130を露光装置122及びそれに接続された第1通信サーバ120から離れた位置に配置することが可能であり、かかる場合には、遠隔操作により投影光学系PLの結像特性の高精度な調整が可能となる。
【0306】
また、上記実施形態に係るコンピュータシステム10及び該コンピュータシステムによって行われる最良条件の決定方法によると、露光装置122を管理するホストコンピュータあるいはオペレータにより、第1通信サーバ120に所定のパターンの情報を含む露光条件の情報が入力されると、第2通信サーバ130では、通信路を介して第1通信サーバ120から受信した露光条件の情報に含まれる前記パターンの情報と投影光学系PLの既知の収差情報とに基づいて、前記パターンを投影光学系PLにより投影した際に像面に形成される空間像を求めるためのシミュレーションを繰り返し行い、そのシミュレーション結果を分析して最良露光条件を決定する。従って、最適な露光条件の設定をほぼ全自動で行うことが可能となる。
【0307】
また、本実施形態のコンピュータシステム10によると、露光装置122のメンテナンス時等における投影光学系PLの調整の際には、サービスエンジニア等が、波面収差計測器80をZチルトステージ58に取り付け、入力装置45を介して波面収差の計測指令を入力するだけで、ほぼ全自動で、第2通信サーバ130による遠隔操作により、投影光学系PLの結像特性を高精度に調整することができる。あるいは、サービスエンジニア等は、計測用レチクルRTを用いて露光装置122の投影光学系PLの波面収差の計測を前述した手順で行い、その結果得られた位置ずれ量のデータを露光装置122の主制御装置50に入力することによっても、ほぼ全自動で、第2通信サーバ130による遠隔操作により、投影光学系PLの結像特性を高精度に調整することができる。
【0308】
また、本実施形態の露光装置122によると、露光の際には、上述のようにして最良露光条件が設定され、かつ投影光学系PLの結像特性が精度良く調整された投影光学系PLを介してレチクルRのパターンがウエハW上に転写されるので、微細パターンを重ね合せ精度良くウエハW上に転写することが可能になっている。
【0309】
なお、上記実施形態では、投影光学系PLによるパターンの投影像の形成状態を調整する調整装置が、投影光学系PLの結像特性を調整する結像特性調整機構によって構成された場合について説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。調整装置としては、前述の結像特性調整機構に代えて、あるいはこれとともに、例えばレチクルR及びウエハWの少なくとも一方を光軸AX方向に駆動する機構や、照明光ELの波長をシフトさせる機構などを用いても良い。例えば、照明光ELの波長をシフトさせる機構を、前述の結像特性調整機構とともに用いる場合には、前述と同様に、照明光ELの単位シフト量に対する投影光学系PLの視野内の複数の計測点それぞれに対応する結像特性、具体的には波面のデータ、例えばツェルニケ多項式の第2項〜第37項の係数がどのように変化するかのデータをシミュレーション等により予め求めておき、それを前述のデータベース内のパラメータの1つとして含めることにより、前述の各可動レンズの調整量と同様の扱いが可能となる。すなわち、前述の第2プログラムに従った最小自乗演算を、そのデータベースを用いて行うことにより、投影光学系によるパターンの結像状態の調整のための照明光ELの波長の最適シフト量の算出を容易に行うことができ、この算出結果に基づく波長の自動調整が可能となる。
【0310】
なお、上記実施形態では、光学装置として露光装置が用いられる場合について説明したが、これに限らず、投影光学系を備えた光学装置であれば良い。
【0311】
また、上記実施形態では、公衆回線をその一部に含む通信路を介して第1コンピュータとしての第1通信サーバ120と第2コンピュータとしての第2通信サーバ130とが接続されたコンピュータシステムについて説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。例えば、図12に示されるように通信路としてのLAN126’を介して第1通信サーバ120と第2通信サーバ130とが接続されたコンピュータシステムであっても良い。かかる構成としては、露光装置メーカ内の研究開発部門内に設置された社内LANシステムなどが考えられる。
【0312】
このような社内LANシステムを構築する場合には、例えば、研究開発部門のクリーンルーム側、例えば露光装置の組み立て調整を行う場所(以下、「現場」と呼ぶ)に第1通信サーバ120を設置し、第2通信サーバ130を現場から離れた研究室に設置する。そして、現場側の技術者が前述した波面収差の計測や、実験段階での露光装置の露光条件の情報(パターンの情報を含む)を第1通信サーバ120を介して研究室側の第2通信サーバ130に送る。そして、研究室側の技術者は、自ら設計したソフトウェアプログラムが予めインストールされた第2通信サーバ130を用いて、送られてきた情報に基づいて、露光装置122の投影光学系PLの結像特性の自動補正を、離れた場所から行い、その結像特性の調整後の投影光学系の波面収差の計測結果を受け取ることにより、その結像特性の調整の効果を確認することができ、ソフトウェアの開発段階などにも役立てることができる。
【0313】
あるいは、現場の技術者が、第2通信サーバ130に対してパターンの情報等を第1通信サーバ120から送信することにより、第2通信サーバ130によってそのパターンに最適な投影光学系の仕様を決定することが可能となる。
【0314】
この他、第1通信サーバ120と第2通信サーバ130とは、無線回線によって接続しても良い。
【0315】
また、上記実施形態及び変形例では、露光装置122が、複数台設けられ、第2通信サーバ130が、通信路を介して複数台の露光装置1221〜1223に共通に接続された場合について説明したが、本発明がこれに限定されることはなく、露光装置は単数であっても勿論良い。
【0316】
なお、上記実施形態では、投影光学系の仕様をコンピュータシステム10を用いて決定する場合について説明したが、波面を規格値として投影光学系の仕様を決定するという技術的思想は、コンピュータシステム10とは無関係に用いることができる。すなわち、メーカAとメーカBとの商談においても、メーカAからのパターン情報等の提供を受け、メーカB側でそのパターンの露光に最適な投影光学系の仕様を波面を規格値として決定しても良い。かかる場合であっても、波面を規格値として決定された仕様に基づいて投影光学系を製造する場合には、前述の如く製造工程が簡略化されるという利点がある。
【0317】
さらに、上記実施形態では、露光装置122の投影光学系PLの波面収差の計測結果に基づいて、第2通信サーバ130が第2プログラムを用いて可動レンズ131〜134の調整量ADJ1〜ADJmを算出し、この調整量のデータを露光装置122の主制御装置50に送信する。そして、その調整量ADJ1〜ADJmのデータを受信した露光装置122の主制御装置50が、調整量ADJ1〜ADJmのデータに従って、可動レンズ131〜134を各自由度方向に駆動すべき旨の指令値を、結像特性補正コントローラ48に与えることにより、投影光学系PLの結像特性の調整を遠隔操作により行うものとした。しかし、これに限らず、露光装置122自らが第2プログラムと同様の演算プログラムを用いて、波面収差の計測結果に基づいて投影光学系の結像特性を自動調整するような構成とすることとしても良い。
【0318】
なお、例えばマイクロプロセッサなどではゲートパターンの形成時に位相シフトマスクとしての位相シフトレチクル、特に空間周波数変調型(レベンソンタイプ)の位相シフトレチクルが用いられるようになっている。この位相シフトレチクルでは小σ照明が用いられる。具体的には、コヒーレンスファクタ(σ値)が0.5よりも小さい、好ましくは0.45程度以下となる照明条件で位相シフトレチクルが照明される。このとき、投影光学系の収差(例えば、非点収差、球面収差等)などに起因して、投影光学系の視野内で露光用照明光が照射される露光領域(投影光学系に関して照明領域と共役で、レチクルのパターン像が形成される投影領域)内でベストフォーカス位置がばらついて焦点深度が小さくなる。
【0319】
そこで、上記実施形態による投影光学系の製造時に、位相シフトレチクルの使用による、投影光学系の露光領域内でのベストフォーカス位置(即ち、結像面)の変動に基づいて、例えば投影光学系の収差(像面湾曲、非点収差、または球面収差など)を調整するなどして、露光領域内でベストフォーカス位置を部分的に故意にずらしておくことが望ましい。この場合、いわゆる総合焦点差を小さくするように上記収差を補正するフォーカスの事前補正を行うこととしても良い。これにより、位相シフトレチクルの使用時にベストフォーカス位置のばらつきが大幅に低減され、従来に比べて大きな焦点深度で位相シフトレチクルのパターン像をウエハ上に転写可能となる。
【0320】
また、デバイス製造工場に出荷された露光装置で位相シフトレチクルを用いるときも上記と同様の問題が生じる。そこで、投影光学系の結像特性の調整機構(例えば、投影光学系の少なくとも1つの光学素子をアクチュエータ(ピエゾ素子など)で駆動する機構など)を用いて収差を調整するなどして、露光領域内でベストフォーカス位置を部分的に故意にずらすことが望ましい。このとき、投影光学系の像面湾曲及び非点収差の少なくとも一方、あるいはそれに加えて球面収差を調整すると良い。この場合も、いわゆる総合焦点差を小さくするように上記収差を補正するフォーカスの事前補正を行うこととしても良い。
【0321】
なお、投影光学系の調整に先立ってその結像特性、主として結像面(露光領域のほぼ全面でのベストフォーカス位置)を、投影光学系の設計データなどから計算(シミュレーションなど)にて求めても良いし、あるいは結像特性を実測しても良い。
【0322】
前者の場合、上記実施形態で説明したツェルニケ変化表を用いる計算方法などを用いることができる。また、後者では前述の波面収差から結像特性を求めても良いが、レチクルのパターン像を、ウエハステージ上に受光面が設けられる空間像計測器で検出する、あるいはレチクルのパターンをウエハ上に転写してその転写像(潜像又はレジスト像など)を検出し、この検出結果から結像特性を求めるだけでも良い。
【0323】
このとき、レチクルのパターンに位相シフト部を設けて小σ照明を用いる、すなわちデバイス製造時とほぼ同一の露光条件でパターン像を形成して、投影光学系の結像特性を求めることが好ましい。
【0324】
また、位相シフトレチクルの使用時におけるベストフォーカス位置のばらつきが低減された投影光学系はその組立(製造)又は調整後に結像特性が再計測される。
【0325】
このとき、投影光学系では残留収差などに起因してベストフォーカス位置での面内線幅ばらつきが生じることがある。そして、このばらつきが許容値を越えているときは、投影光学系の収差をより小さくしなければならないので、投影光学系の少なくとも一部を交換または調整することが好ましい。
【0326】
このとき、投影光学系の光学素子単位でその交換を行っても良いし、あるいは複数の鏡筒を有する投影光学系ではその鏡筒単位で交換を行っても良い。また、投影光学系の少なくとも1つの光学素子を再加工しても良く、特にレンズエレメントでは必要に応じてその表面を非球面に加工しても良い。この光学素子は、レンズエレメントなどの屈折光学素子だけでなく、例えば凹面鏡などの反射光学素子、あるいは投影光学系の収差(ディストーション、球面収差など)、特にその非回転対称成分を補正する収差補正板などでも良い。さらに、投影光学系の調整では光学素子の位置(他の光学素子との間隔を含む)や傾斜などを変更するだけでも良いし、特に光学素子がレンズエレメントであるときはその偏芯を変更したり、あるいは光軸を中心として回転させても良い。この調整(交換または再加工など)は上記実施形態でも同様に行っても良い。
【0327】
なお、上記実施形態では、計測用レチクルRTに計測用パターンとともに、基準パターンが設けられる場合について説明したが、基準パターンは、光学特性計測用マスク(上記実施形態では計測用レチクルRT)に設ける必要はない。すなわち、基準パターンを別のマスクに設けても良いし、基準パターンをマスク側に設けることなく、基板(ウエハ)側に設けても良い。すなわち、基準パターンが投影倍率に応じた大きさで予め形成された基準ウエハを用い、その基準ウエハ上にレジストを塗布し、そのレジスト層に計測用パターンを転写して、現像を行い、その現像後に得られる計測用パターンのレジスト像と基準パターンとの位置ずれを計測するようにすることにより、実質的に上記実施形態と同様の計測が可能となる。
【0328】
また、上記実施形態では、計測用パターン及び基準パターンをウエハW上に転写した後に、そのウエハを現像して得られるレジスト像の計測結果に基づいて、投影光学系PLの波面収差を算出するものとしたが、これに限らず、計測用パターンの投影像(空間像)をウエハ上に投影し、その投影像(空間像)を空間像計測器などを用いて計測し、あるいはレジスト層に形成された計測用パターン及び基準パターンの潜像あるいはウエハをエッチングして得られる像を計測することとしても良い。かかる場合であっても、計測用パターンの基準位置(例えば設計上の計測用パターンの投影位置)からの位置ずれを計測すれば、その計測結果に基づいて上記実施形態と同様の手順で投影光学系の波面収差を求めることは可能である。また、計測用パターンをウエハ上に転写する代わりに、予め計測用パターンが形成された基準ウエハを準備しておき、この基準ウエハ上のレジスト層に基準パターンを転写してその位置ずれを計測しても良いし、あるいは計測用パターンに対応する複数の開口を有する空間像計測器を用いてその両者の位置ずれを計測するようにしても良い。更に、上記実施形態では前述した位置ずれを重ね合せ測定器を用いて計測するものとしたが、それ以外、例えば露光装置内に設けられるアライメントセンサなどを用いても良い。
【0329】
また、上記実施形態ではツェルニケ多項式の第37項までを用いるものとしたが、第38項以上を用いても良く、例えば第81項までを用いて、投影光学系PLの各収差の高次成分も算出しても良い。すなわち、ツェルニケ多項式で使用する項の数や番号は任意で構わない。更に、照明条件などによっては、投影光学系PLの収差を積極的に発生させることもあるので、上記実施形態では目的収差を常に零ないし最小とするだけでなく、目的収差を所定値となるように投影光学系PLの光学素子を調整しても良い。
【0330】
なお、上記実施形態では、第1通信サーバ120が、例えば露光装置1221で次に使用が予定されているレチクルの情報を、例えば露光装置1221〜1223を管理する不図示のホストコンピュータに対して問い合わせ、そのレチクルの情報に基づいて、所定のデータベースを検索し、そのパターン情報を得る、あるいはパターン情報をオペレータが入力装置を介して第1通信サーバ120に手入力にて入力するものとした。しかし、これに限らず、露光装置内に図2中に仮想線で示されるバーコードリーダ等の読取装置BRを設け、この読取装置BRを用いて主制御装置50を介して第1通信サーバ120が、レチクルステージRSTに搬送される途中のレチクルRに付されたバーコード又は2次元コードなどを読み取って、そのパターン情報を自ら得るようにしても良い。
【0331】
また、波面収差の計測に例えば前述の計測用レチクルを用いる場合には、ウエハ上のレジスト層に転写され形成された計測用パターンの潜像の基準パターンの潜像に対する位置ずれを、例えば露光装置が備えるアライメント系ALGによって検出することとしても良い。また、波面収差の計測に例えば波面収差計測器を用いる場合に、その波面収差計測器として全体形状がウエハホルダと交換可能な形状を有する波面収差計測器を用いても良い。かかる場合には、この波面収差計測器は、ウエハ又はウエハホルダの交換を行う搬送系(ウエハローダなど)を用いて自動搬送することが可能である。このような種々の工夫により、前述の投影光学系PLの結像特性の自動調整や、最良露光条件の設定を、オペレータやサービスエンジニアを介在させることなくコンピュータシステム10によって全て自動的に行うようにすることも可能である。なお、上記実施形態では、ウエハステージに対して波面収差計測器80が着脱自在である場合について説明したが、波面収差計測器80は、ウエハステージに常設されていても良い。このとき、波面収差計測器80の一部のみをウエハステージに設置し、残りをウエハステージの外部に配置しても良い。また、上記実施形態では波面収差計測器80の受光光学系の収差を無視するものとしたが、その波面収差を考慮して投影光学系の波面収差を決定しても良い。
【0332】
さらに、上記実施形態で説明した第1〜第3プログラムの全て及びこれらに付属するデータベースを露光装置122のドライブ装置46にセットされた情報記録媒体又は記憶装置42に予め格納しておいて、露光装置122単独で、前述の投影光学系PLの結像特性の自動調整や、最良露光条件の設定を行うようにすることも可能である。また、メーカAの工場内にLANなどにより露光装置と接続される専用サーバ(前述の第2通信サーバ130に相当)を設置し、この専用サーバに第1〜第3プログラムなどを格納しても良い。要は、本発明は、図1の構成に限られるものではなく、第1〜第3プログラムを格納するコンピュータ(サーバなど)の設置場所などは任意で構わない。
【0333】
なお、上記実施形態では、露光装置としてステッパを用いる場合について説明したが、これに限らず、例えば米国特許第5,473,410号等に開示されるマスクと基板とを同期移動してマスクのパターンを基板上に転写する走査型の露光装置を用いても良い。
【0334】
この場合の露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシーン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線又はイオンビームなどを用いる荷電粒子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。
【0335】
また、上記実施形態の露光装置の光源は、F2レーザ光源、ArFエキシマレーザ光源、KrFエキシマレーザ光源などの紫外パルス光源に限らず、連続光源、例えばg線(波長436nm)、i線(波長365nm)などの輝線を発する超高圧水銀ランプを用いることも可能である。
【0336】
また、DFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。また、投影光学系の倍率は縮小系のみならず等倍及び拡大系のいずれでも良い。また、投影光学系としては、屈折系に限らず、反射光学素子と屈折光学素子とを有する反射屈折系(カタッディオプトリック系)あるいは反射光学素子のみを用いる反射系を用いても良い。なお、投影光学系PLとして反射屈折系又は反射系を用いるときは、前述した可動の光学素子として反射光学素子(凹面鏡や反射鏡など)の位置などを変更して投影光学系の結像特性を調整する。また、照明光ELとして、F2レーザ光、Ar2レーザ光、又はEUV光などを用いる場合には、投影光学系PLを反射光学素子のみから成るオール反射系とすることもできる。但し、Ar2レーザ光やEUV光などを用いる場合にはレチクルRも反射型とする。
【0337】
なお、半導体デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、前述した実施形態の露光装置によりレチクルのパターンをウエハに転写するステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。このデバイス製造方法によると、リソグラフィ工程で、前述した実施形態の露光装置を用いて露光が行われるので、対象パターンに応じて結像特性が調整された、あるいは波面収差の計測結果に基づいて結像特性が高精度に調整された投影光学系PLを介してレチクルRのパターンがウエハW上に転写されるので、微細パターンを重ね合せ精度良くウエハW上に転写することが可能となる。従って、最終製品であるデバイスの歩留まりが向上し、その生産性の向上が可能となる。
【0338】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1〜14にそれぞれ記載の投影光学系の製造方法によれば、製造工程を簡略化できるとともに、結果的に光学装置が達成すべき目標を確実に達成することを可能とするという効果がある。
【0339】
また、請求項15〜請求項17にそれぞれ記載の投影光学系の製造方法によれば、製造された投影光学系を用いることにより、高精度な露光が可能となるという効果がある。
【0340】
また、請求項18〜21に記載の各露光装置によれば、投影光学系を用いてパターンを基板上に精度良く転写することができるという効果がある。
【0341】
請求項22に記載の露光装置の製造方法によれば、投影光学系を用いてパターンを基板上に精度良く転写することができる露光装置を製造できる。
【0342】
また、請求項23〜33にそれぞれ記載の投影光学系の調整方法によれば、投影光学系の光学特性を高精度にかつ簡易に調整することができるという効果がある。
【0343】
また、請求項34〜36にそれぞれ記載の投影光学系の調整法法によれば、その調整の結果、高精度な露光が可能となるという効果がある。
【0344】
また、請求項37に記載のデバイス製造方法によれば、高集積度のマイクロデバイスを歩留まり良く製造することができるという効果がある。
【0345】
また、請求項38〜47に記載の各コンピュータシステムによれば、露光装置が備える投影光学系の結像特性を通信路を介して高精度に調整することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンピュータシステムの構成を示す図である。
【図2】図1の第1の露光装置1221の構成を概略的に示す図である。
【図3】波面収差計測器の一例を示す断面図である。
【図4】図4(A)は、光学系に収差が存在しない場合においてマイクロレンズアレイから射出される光束を示す図であり、図4(B)は、光学系に収差が存在する場合においてマイクロレンズアレイから射出される光束を示す図である。
【図5】露光装置の最良露光条件の設定に際し、第2通信サーバ内のCPUによって実行される制御アルゴリズムを示すフローチャートである。
【図6】計測用レチクルを示す概略斜視図である。
【図7】レチクルステージ上に装填した状態における計測用レチクルの光軸近傍のXZ断面の概略図を投影光学系の模式図とともに示す図である。
【図8】レチクルステージ上に装填した状態における計測用レチクルの−Y側端部近傍のXZ断面の概略図を投影光学系の模式図とともに示す図である。
【図9】図9(A)は、本実施形態の計測用レチクルに形成された計測用パターンを示す図であり、図9(B)は、本実施形態の計測用レチクルに形成された基準パターンを示す図である。
【図10】図10(A)は、ウエハ上のレジスト層に所定間隔で形成される計測用パターンの縮小像(潜像)を示す図であり、図10(B)は、図10(A)の計測用パターンの潜像と基準パターンの潜像の位置関係を示す図である。
【図11】投影光学系の製造工程を概略的に示すフローチャートである。
【図12】変形例に係るコンピュータシステムの構成を示す図である。
【符号の説明】
10…コンピュータシステム、131〜134…可動レンズ(調整装置としての結像特性調整機構の一部、)、48…結像特性補正コントローラ(調整装置としての結像特性調整機構の一部)、50…主制御装置(制御装置)、80…波面収差計測器(波面計測装置)、120…第1通信サーバ(第1コンピュータ)、1221〜1223…露光装置(光学装置)、130…第2通信サーバ(第2コンピュータ)、PL…投影光学系(露光用光学系)、W…ウエハ(基板)、R…レチクル(マスク)。
Claims (32)
- 露光装置で用いられる投影光学系の調整方法であって、
波面収差を規格値として仕様が決定される投影光学系の結像特性を計測する第1工程と;
前記計測結果と、前記投影光学系を介して物体上に転写すべきパターン及びその露光条件に対応するツェルニケ変化表と、前記物体上でのパターン像の結像状態を調整する装置での調整量とツェルニケ多項式の所定項の係数との関係に関するデータと、に基づいて、前記投影光学系の目的収差が零ないし最小、又は所定値となる前記調整装置での調整量を決定し、前記決定された調整量を用いて前記投影光学系を調整する第2工程と;を含む投影光学系の調整方法。 - 前記調整量は、前記投影光学系の光学素子の駆動量を含み、前記投影光学系の調整では前記光学素子を移動することを特徴とする請求項1に記載の投影光学系の調整方法。
- 前記結像特性はツェルニケ多項式の各項の係数として表されることを特徴とする請求項1又は2に記載の投影光学系の調整方法。
- 前記露光条件は、前記パターンの照明条件を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の投影光学系の調整方法。
- 前記露光条件は、前記投影光学系の開口数を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の投影光学系の調整方法。
- 前記調整量の決定では最小自乗法を用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の投影光学系の調整方法。
- 投影光学系を介して物体上にパターンを転写する露光方法であって、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の調整方法を用いて前記投影光学系を調整し、
前記露光条件のもとで前記調整された投影光学系を介して前記物体上にパターン像を生成することを特徴とする露光方法。 - 物体上にパターンを転写する露光装置において、
波面収差を規格値として仕様が決定される投影光学系と;
前記物体上でのパターン像の結像状態を調整する調整装置と;
前記投影光学系の結像特性の計測結果と、前記投影光学系を介して物体上に転写すべきパターン及びその露光条件に対応するツェルニケ変化表と、前記調整装置での調整量とツェルニケ多項式の所定項の係数との関係に関するデータとに基づいて、前記投影光学系の目的収差が零ないし最小、又は所定値となる前記調整装置での調整量を決定し、前記投影光学系を介して前記物体上に前記パターンを転写するために、前記決定された調整量を用いて前記調整装置を制御する制御系と;を備えることを特徴とする露光装置。 - 前記調整装置は、前記投影光学系の光学素子を移動し、前記制御系は、前記決定された調整量を用いて前記調整装置による前記光学素子の移動を制御することを特徴とする請求項8に記載の露光装置。
- 前記調整装置は、前記光学素子の移動を含む異なる複数の方式でそれぞれ前記物体上でのパターン像の結像状態を調整可能であり、前記制御系は、前記複数の方式での調整量をそれぞれ決定することを特徴とする請求項9に記載の露光装置。
- 前記制御系は、前記複数の方式での調整量をそれぞれ決定するために、前記光学素子の駆動量を含む複数の調整量の各々とツェルニケ多項式の所定項の係数との関係に関するデータを用いることを特徴とする請求項10に記載の露光装置。
- 前記調整装置は、前記パターン像に対して前記物体を移動し、前記制御系は、前記調整装置による前記物体の移動を制御することを特徴とする請求項8〜11のいずれか一項に記載の露光装置。
- 前記調整装置は、前記パターン像の生成に用いる照明光の波長をシフトさせ、前記制御系は、前記調整装置による前記波長のシフトを制御することを特徴とする請求項8〜12のいずれか一項に記載の露光装置。
- 前記結像特性はツェルニケ多項式の各項の係数として表されることを特徴とする請求項8〜13のいずれか一項に記載の露光装置。
- 前記投影光学系の波面収差を計測する計測装置を更に備え、前記計測結果からツェルニケ多項式の各項の係数が決定されることを特徴とする請求項14に記載の露光装置。
- 前記制御系は、前記パターンと露光条件の少なくとも一方が変更されると、前記調整量の決定で前記変更前のツェルニケ変化表と異なるツェルニケ変化表を用いることを特徴とする請求項8〜15のいずれか一項に記載の露光装置。
- 前記パターンの照明条件を変更可能な照明光学系を更に備え、前記露光条件は前記照明条件を含むことを特徴とする請求項8〜16のいずれか一項に記載の露光装置。
- 前記投影光学系はその開口数が可変であり、前記露光条件は前記投影光学系の開口数を含むことを特徴とする請求項8〜17のいずれか一項に記載の露光装置。
- 前記制御系は、前記調整量の決定で最小自乗法を用いることを特徴とする請求項8〜18のいずれか一項に記載の露光装置。
- 物体上にパターンを転写する露光方法において、
波面収差を規格値として仕様が決定される投影光学系の結像特性の計測結果と、前記投影光学系を介して物体上に転写すべきパターン及びその露光条件に対応するツェルニケ変化表と、前記物体上でのパターン像の結像状態を調整する装置での調整量とツェルニケ多項式の所定項の係数との関係に関するデータとに基づいて、前記投影光学系の目的収差が零ないし最小、又は所定値となる前記調整装置での調整量を決定し、
前記投影光学系を介して前記物体上に前記パターンを転写するために、前記決定された調整量を用いて前記調整装置による前記パターン像の結像状態の調整を行うことを特徴とする露光方法。 - 前記調整量は、前記投影光学系の光学素子の駆動量を含み、前記結像状態の調整では前記光学素子を移動することを特徴とする請求項20に記載の露光方法。
- 前記光学素子の移動を含む前記調整装置の異なる複数の方式でそれぞれ前記物体上でのパターン像の結像状態が調整され、前記複数の方式での調整量がそれぞれ決定されることを特徴とする請求項21に記載の露光方法。
- 前記複数の方式での調整量をそれぞれ決定するために、前記光学素子の駆動量を含む複数の調整量の各々とツェルニケ多項式の所定項の係数との関係に関するデータを用いることを特徴とする請求項22に記載の露光方法。
- 前記調整量は、前記パターン像に対する前記物体の駆動量を含み、前記結像状態の調整では前記物体を移動することを特徴とする請求項20〜23のいずれか一項に記載の露光方法。
- 前記調整量は、前記パターン像の生成に用いる照明光の波長を含み、前記結像状態の調整では前記波長をシフトさせることを特徴とする請求項20〜24のいずれか一項に記載の露光方法。
- 前記結像特性はツェルニケ多項式の各項の係数として表されることを特徴とする請求項20〜25のいずれか一項に記載の露光方法。
- 前記投影光学系の波面収差の計測結果からツェルニケ多項式の各項の係数が決定されることを特徴とする請求項26に記載の露光方法。
- 前記パターンと露光条件との少なくとも一方が変更されるとき、前記調整量の決定で前記変更前のツェルニケ変化表と異なるツェルニケ変化表を用いることを特徴とする請求項20〜27のいずれか一項に記載の露光方法。
- 前記露光条件は、前記パターンの照明条件を含むことを特徴とする請求項20〜28のいずれか一項に記載の露光方法。
- 前記露光条件は、前記投影光学系の開口数を含むことを特徴とする請求項20〜29のいずれか一項に記載の露光方法。
- 前記調整量の決定で最小自乗法を用いることを特徴とする請求項20〜30のいずれか一項に記載の露光方法。
- リソグラフィ工程を含むデバイス製造方法において、
前記リソグラフィ工程では、請求項7、20〜31のいずれか一項に記載の露光方法を用いて物体上にパターンを形成することを特徴とするデバイス製造方法。
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