JP4432895B2 - 導電性ペースト、積層セラミック電子部品及びその製造方法 - Google Patents
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Description
導電性粉末と、有機ビヒクルとを含み、
前記有機ビヒクル中の有機バインダが、エチルセルロースを主成分とし、
前記ビヒクル中の溶剤が、ターピニルアセテートと、イソボニルプロピオネート、イソボニルブチレート及びイソボニルイソブチレートから選択される1種以上と、を含有することを特徴とする導電性ペーストが提供される。
内部電極層と、厚さ3μm以下の誘電体層と、を有する積層セラミック電子部品が提供される。
すなわち、本発明によれば、積層セラミック電子部品の内部電極を形成するために用いられ、シートアタックを生じない導電性ペーストと、この導電性ペーストを用いて製造され、静電容量を高く保ちつつ、ショート不良率が低減され、耐電圧が高く、しかもデラミネーションが有効に防止された積層セラミック電子部品と、該積層セラミック電子部の製造方法と、を提供することができる。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図、
図2(A)は本発明の実施例に係る導電性ペーストを用いて作製した電極層の顕微鏡写真、図2(B)、図2(C)は比較例に係る導電性ペーストを用いて作製した電極層の顕微鏡写真である。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と内部電極層3とが交互に積層された構成のコンデンサ素体10を有する。このコンデンサ素体10の両側端部には、素体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4,4が形成してある。内部電極層3は、各側端面がコンデンサ素体10の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層してある。一対の外部電極4,4は、コンデンサ素体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成する。
次に、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1の製造方法の一例を説明する。
(1)まず、焼成後に図1に示す誘電体層2を構成することになるセラミックグリーンシートを製造するために、誘電体ペーストを準備する。
本実施形態では、誘電体ペーストは、セラミック粉体(誘電体原料)と有機ビヒクルとを混練して得られる有機溶剤系ペーストで構成される。
(2)次に、この誘電体ペーストを用いて、ドクターブレード法などにより、キャリアシート上に、好ましくは0.5〜30μm、より好ましくは0.5〜10μm、さらに好ましくは0.5〜5μm程度の厚みで、セラミックグリーンシートを形成する。セラミックグリーンシートは、焼成後に図1に示す誘電体層2となる。
(3)次に、キャリアシート上に形成されたセラミックグリーンシートの表面に、焼成後に図1に示す内部電極層3となる所定パターンの電極層(内部電極パターン)を形成する。
(4)次に、以上のような、所定パターンの電極層が表面に形成されたセラミックグリーンシートを複数積層して、グリーンチップを作製し、脱バインダ工程、焼成工程、必要に応じて行われるアニール工程を経て形成された、焼結体で構成されるコンデンサ素体10に、外部電極用ペーストを印刷または転写して焼成し、外部電極4,4を形成して、積層セラミックコンデンサ1が製造される。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
まず、セラミックグリーンシートを形成するための誘電体ペーストを作製した。
BaTiO3 系セラミック粉末と、有機バインダとしてのポリビニルブチラール(PVB)と、溶剤としてのメタノールを準備した。次に、セラミック粉末100重量部に対して、10重量部の有機バインダと、150重量部の溶剤とをそれぞれ秤量し、ボールミルで混練し、スラリー化して誘電体ペーストを得た。
導電性ペーストを作製するための有機ビヒクルを、次の方法により調製した。
すなわち、まず、溶剤としてのターピニルアセテート及びイソボニルイソブチレートを準備し、次いで、準備したターピニルアセテートとイソボニルイソブチレートとを表1に示す割合(重量比)で混合した(表1の試料番号1〜8)。そして、有機バインダとしてのエチルセルロースを準備し、上記にて混合した溶剤100重量部に対して10重量部のエチルセルロースを溶解させて、有機ビヒクルを調製した。
PETフィルム上に、上記にて作製した誘電体ペーストをドクターブレード法によって、所定厚みで塗布し、乾燥することで、厚みが1μmのセラミックグリーンシートを形成した。
得られた試験用試料を用い、「シートアタックの有無」と、「セラミックグリーンシートからのPETフィルムの剥離性」を評価した。
また、本実施例においては、上記各評価に加えて、ターピニルアセテートとイソボニルイソブチレートとの混合溶剤を用いた試料(試料番号4)、イソボニルイソブチレートのみを溶剤として用いた試料(試料番号1)、ターピニルアセテートのみを溶剤として用いた試料(試料番号8)について、顕微鏡観察を行うことにより、電極の印刷状態を確認した。具体的には、PETフィルム側から、試験用試料に対して光を当てた状態にて、PETフィルムと反対側(すなわち、電極パターン側)から、試験用試料を観察することにより行った。得られた顕微鏡写真を図2(A)〜図2(C)に示す。
次いで、上記にて作製した誘電体ペーストと、導電性ペーストを用い、以下のようにして、図1に示す積層セラミックチップコンデンサ1を製造した。
脱バインダは、昇温速度:15℃/時間、保持温度:280℃、保持時間:8時間、処理雰囲気:空気雰囲気、の条件で行った。
焼成は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1200〜1380℃、保持時間:2時間、降温速度:300℃/時間、処理雰囲気:還元雰囲気(酸素分圧:10−6PaにN2 とH2 との混合ガスを水蒸気に通して調整した)、の条件で行った。
アニールは、保持温度:900℃、保持時間:9時間、降温速度:300℃/時間、処理雰囲気:加湿したN2ガス雰囲気、の条件で行った。焼成及びアニールにおけるガスの加湿には、ウェッターを用い、水温は35℃とした。
次に、得られた焼結体の端面をサンドブラストにて研磨した後、In−Ga合金を塗布して、試験用電極を形成し、積層セラミックチップコンデンサ試料を得た。
得られたコンデンサ試料の静電容量、ショート不良特性、耐電圧特性(IR特性)及びデラミネーションの有無を評価した。
導電性ペーストを作製する際に、イソボニルイソブチレートの代わりに、イソボニルブチレートを使用した以外は、実施例1と同様にして、試験用試料及び積層セラミックチップコンデンサ試料(表2に示す試料番号11〜17)を作製し、実施例1と同様に評価した。
導電性ペーストを作製する際に、イソボニルイソブチレートの代わりに、イソボニルプロピオネートを使用した以外は、実施例1と同様にして、試験用試料及び積層セラミックチップコンデンサ試料(表2に示す試料番号21〜27)を作製し、実施例1と同様に評価した。
導電性ペーストを作製する際に、ターピネオールとイソボニルイソブチレートとの混合溶剤の代わりに、ターピネオール(試料番号31)、ジヒドロターピネオール(試料番号32)、ジヒドロターピニルアセテート(試料番号33)を使用した以外は、実施例1と同様にして、積層セラミックチップコンデンサ試料を作製し、実施例1と同様に評価した。結果を表4に示す。
溶剤として、表5に示すような溶剤を使用した以外は、実施例1と同様にして導電性ペーストを作製した。すなわち、実施例5においては、溶剤として、ターピニルアセテートのみを使用した導電性ペースト、イソボニルイソブチレートのみを使用した導電性ペースト、及びターピニルアセテートとイソボニルイソブチレートとを50:50(重量比)で混合した混合溶剤を使用した導電性ペーストをそれぞれ作製した。
得られた各導電性ペーストについて、「クリープ特性」を評価した。「クリープ特性」は、各導電性ペーストに1Paの応力を与えたときの最大クリープ値(クリープmax)を、粘度・粘弾性測定装置(レオストレスRS1、英弘精機社製)により測定することにより評価した。最大クリープ値が大きいほどクリープ特性に優れ、すなわちレベリング性に優れ、溶解性が高い(よく溶けている)ものと考えられる。また、溶解性が高いと経時的粘度変化も少ないと判断できる。結果を表5に示す。
10… コンデンサ素体
2… 誘電体層
3… 内部電極層
4… 外部電極
Claims (6)
- 積層セラミック電子部品の内部電極を形成するために用いる導電性ペーストであって、
導電性粉末と、有機ビヒクルとを含み、
前記有機ビヒクル中の有機バインダが、エチルセルロースを主成分とし、
前記ビヒクル中の溶剤が、ターピニルアセテートと、イソボニルプロピオネート、イソボニルブチレート及びイソボニルイソブチレートから選択される1種以上と、を含有し、
前記ターピニルアセテートと、前記イソボニルプロピオネート、イソボニルブチレート及びイソボニルイソブチレートから選択される1種以上と、の割合が、重量比で20:80〜80:20の範囲であることを特徴とする導電性ペースト。 - 前記有機ビヒクル中の溶剤が、前記導電性粉末100重量部に対して50〜200重量部含有されている請求項1に記載の導電性ペースト。
- 前記有機ビヒクル中の有機バインダが、前記導電性粉末100重量部に対して1〜10重量部含有されている請求項1または2に記載の導電性ペースト。
- 前記導電性粉末が、NiまたはNi合金を主成分とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ペースト。
- ブチラール樹脂を含む厚さ5μm以下のセラミックグリーンシートと、請求項1〜4のいずれかに記載の導電性ペーストを用いて所定パターンで形成される電極層とを、交互に複数重ねたグリーンセラミック積層体を用いて製造され、
内部電極層と、厚さ3μm以下の誘電体層と、を有する積層セラミック電子部品。 - ブチラール樹脂を含む厚さ5μm以下のセラミックグリーンシートと、請求項1〜4のいずれかに記載の導電性ペーストを用いて所定パターンで形成される電極層とを、交互に複数重ねたグリーンセラミック積層体を焼成する積層セラミック電子部品の製造方法。
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