JP4428491B2 - 電着用ポリイミド樹脂組成物、その製造方法、電着成形体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電着法により金属表面の被覆及び、パターン形成を行なうことのできるポリイミド材料に関し、耐熱性、帯電防止性を有し、さらに、加熱処理により絶縁性を呈するため、耐熱摺動材料等の耐熱性を必要とされる部材、耐熱摺動材料、帯電防止剤、導電ペースト等の導電材料、また、加熱処理により絶縁膜となるため、電気製品、配線基板、半導体関連の部材を構成する材料として用いることのできるポリイミドに関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体技術の飛躍的な発展により半導体パッケージの小型化、多ピン化、ファインピッチ化、電子部品の極小化などが急速に進み、いわゆる高密度実装の時代に突入した。それに伴い、プリント配線基板も片側配線から両面配線へ、さらに多層化、薄型化が進められている(岩田、原園、電子材料,35(10),53,(1996)参照)。
【0003】
このような状況により、電子部品における金属導体層−高分子絶縁体層の薄膜化が進んでおり、それぞれ100μm以下の膜厚で用いられることが多い。このように薄膜で配線を作製した際、金属導体層−高分子絶縁体層の熱膨張係数の差により、配線基板に反りを生じてしまう。このような配線基板の反りは、高分子絶縁層および金属導体層の熱的性質がわかれば、次の数式により、算出できる(宮明、三木、日東技報,35(3),1,(1997)参照)。
【0004】
【数1】
【0005】
E1 :金属導体層の弾性率
E2:高分子絶縁層の弾性率
Δα:金属導体層−高分子絶縁層間の熱膨張係数の差
ΔT:温度差
h:膜厚
i:配線長
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
配線基板の反りを低減させる方法として、前記一般式(1)により高分子絶縁層からアプローチした場合、次の2種の目標、即ち、
i. 高分子絶縁層の弾性率の低減
ii. 高分子絶縁層と金属導電層の熱膨張率差の低減
のいずれかを達成することが考えられる。このような条件と薄膜での絶縁性を満たすような材料として、ポリイミドが報告されている。例えば、特開平4−168441号公報には、配線・回路の絶縁層を形成するのに、ポリイミド樹脂前駆体を含有した感光性材料が、また、特開平9−104839号公報には芳香族ジアミノカルボン酸を用いた電着用ポリイミド組成物が報告されている。
【0007】
前者の材料を用いたプロセスは感光性ポリイミドに代表されるように一般的であるが、露光のプロセスを伴うため、局面や立体的なものに対する適性が少ない。一方、後者の材料を用いた電着法は、そのメカニズムより曲面などに対する適性がある点において有利である。
【0008】
電着液に必須の成分として、樹脂が溶媒に溶けてなる樹脂溶液と、水がある。一般的事実として電着に用いる樹脂は有機溶媒に溶解していなければならない。しかし、高分子材料に前記した理由で低熱膨張性を与えると、塗膜剛直性が増し、溶媒可溶性が損なわれるという傾向にある。
【0009】
電着法でこのような相反する物性を両立したポリイミド薄膜を得るには、電着液としてポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を用いる提案がある(特開平3−6397号公報)。すなわち、ポリアミド酸の形で電着し、その後、加熱することにより脱水閉環させポリイミド膜を得るというものである。しかしながら、ポリアミド酸を用いる電着方法は、成形後、閉環させるために高温ベークが必要なこと、また、ポリアミド酸はただでさえ保存安定性が悪く問題となっているのに加え、電着液の状態ではポリアミド酸の分解反応を促進する水が共存しているため保存安定性がすこぶる悪いことなどから、実用上扱い難い。
【0010】
このようなポリアミド酸の保存安定性の問題を解決するためにカルボキシル基をポリイミドの骨格に導入してなる溶媒可溶なポリイミドを含んだ電着用ポリイミド組成物が提案されている(特開平9−104839号公報)。しかし、該公報による溶媒可能なポリイミドは、低熱膨張率の事例はなく、熱膨張率が大きいという問題点がある。
【0011】
そこで本発明は、溶媒可溶性でかつ低熱膨張率である耐熱性ポリイミド樹脂を含む電着用ポリイミド樹脂組成物を提供し、該樹脂組成物を用いた成形体の製造方法を提供し、該製造方法により得られた低熱膨張率で、耐熱性ポリイミド樹脂成形体、好ましくは溶媒不溶性の成形体を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記した問題点を解決するために、本発明の電着用ポリイミド樹脂組成物は、下記一般式(1)
【0013】
【化2】
【0014】
(Xは、四価の有機基、R1 は、二価又は四価の有機基であってジアミンより誘導される有機基、nは3〜800の整数を示す。)
で表される、骨格中にスルホン酸基を有する溶媒可溶性ポリイミド及び水、塩基性化合物を含み、前記ジアミンは、モル数の10〜100%が、2,2’−ベンジジンジスルホン酸であり、残りのジアミンが、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び4,4’−ジアミノジフェニルメタン、及び2,2’−トリフルオロメチルベンジジンから選ばれた1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする。
【0015】
前記一般式(1)においてXで示される四価の有機基は、有機酸二無水物より誘導される基である。
【0016】
本発明は、上記一般式(1)の骨格においてスルホン酸基が導入されているので、ポリイミドの状態でも溶媒可溶性で、かつ成形体としたときに低熱膨張率となる耐熱性ポリイミド樹脂とすることができ、本発明では該耐熱性ポリイミド樹脂を含む電着用ポリイミド樹脂組成物とする。
【0017】
本発明の成形体の製造方法は前記の電着用ポリイミド樹脂組成物を電着法により成形体とし、該成形体を乾燥後130℃〜500℃で加熱処理すること、好ましくは300℃〜450℃で3分〜120分加熱処理することを特徴とする。
【0018】
加熱処理する前は、ポリイミド骨格中においてスルホン酸基が存在するため、吸水性があり、腐食性が高いが、加熱処理することにより、スルホン酸基が分解(脱スルホン)されるので、得られたポリイミド成形体(塗膜を含む)は吸水性や、腐食性の問題の無いものとなり、且つ溶媒不溶性となる。本発明の電着成形体は、加熱処理を行う或いは行わないに係わらず、低熱膨張性、好ましくは40×10-6以下である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の電着用ポリイミド樹脂組成物における骨格中にスルホン酸基を導入したポリイミドについて具体的に説明する。
【0020】
ポリイミド
ポリイミドにスルホン酸基を導入する方法は、ポリイミド原料として、スルホン酸基を有するジアミン、及び/又はスルホン酸を有する酸無水物を用いて、構造中にスルホン酸基を導入する方法、または、濃硫酸等のスルホン酸化試薬を用いて、ポリイミドの構造内にスルホン酸を導入する方法などが挙げられるが、本発明は特に限定されない。また後者の場合、ポリアミド酸の状態で骨格内にスルホン酸基を導入し、その後、イミドへの閉環を行ってもよい。
【0021】
スルホン酸基を有するジアミンとしては、得られるポリイミド膜の機械特性、耐熱性、接着性および成膜性の観点から、三価または四価の有機基を持つジアミンである。好ましくは、三価または四価のジアミンの構造式の例を下記の一般式(2)に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。一般式(2)における三価または四価の有機基のうち、2個の有機基がアミノ基であり、残りの1個又は2個の有機基はスルホン酸基である。
【0022】
【化3】
【0023】
また、スルホン酸基を有する酸無水物として、以下の一般式(3)のようなものが挙げられるがこれに限定されるわけではない。
【0024】
【化4】
【0025】
本発明の電着用ポリイミド樹脂組成物において、ジアミン又はトリアミンは、モル数の10〜100%が、2,2’−ベンジジンジスルホン酸に代表されるスルフォン酸基を有するジアミン又はトリアミンであり、残りのジアミンが、4,4’−ジアミノフェニルエーテル、4,4’−ジアミノフェニルスルホン、4,4’−ジアミノフェニルメタン、及び2,2’−トリフルオロメチルベンジジンから選ばれた1種又は2種以上の混合物である。
【0026】
本発明の電着用ポリイミド樹脂組成物におけるポリイミド樹脂は、骨格中にスルホン酸基を有し、酸価が10mmolKOH/g以上の溶媒可溶性ポリイミドであることが望ましい。酸価が10mmolKOH/g以下であると、溶解性が低下し、溶媒可溶性を示さない。又、高度の耐吸水性を求める場合、酸価が200mmolKOH/g以上であると、塗膜にした際、吸水性が高くなるが、高度の信頼性を必要としなければ室温で放置した場合でも膨潤等を起こすことはないため、特に問題はない。
【0027】
本発明の電着用ポリイミド樹脂組成物におけるポリイミドは、主にm−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール、フェノール、N−メチル−2−ピロリドン(略語:NMP)、ジメチルホルムアミド(略語:DMF)、ジメチルアセトアミド(略語:DMAc)、γ−ブチロラクトン、DMSO、スルホラン等の有機極性溶媒に可溶性であるが、ポリイミドの組成によっては水、アセトン、THF等の汎用溶媒にも可溶となる。
【0028】
さらに本発明で熱処理後に得られたポリイミドフィルムは10%熱分解温度が好ましくは250℃以上、より好ましくは350℃以上、特に好ましくは、450℃以上であることが、多層基板等の電子材料に用いる場合には、耐熱性という観点から好ましい。
【0029】
また本発明の電着用ポリイミド樹脂組成物におけるポリイミドのイミド化率は好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上が好ましい。イミド化率が85%以下では、ポリイミド溶液の保存安定性が低下する。
【0030】
本発明のポリイミドの重量平均分子量は8,000〜1,000,000が好ましい。特に好ましくは20,000〜80,000である。分子量が8,000以下であると、均一な塗膜を得難く、1,000,000以上では高濃度の溶液が得られずプロセス適性が悪い。本発明において分子量測定は東ソー(株)製高速GPC装置を用いた。該装置のカラムは東ソー(株)製TSKgel α M、溶媒はNMP1リットルに対し、バッファとして+50mmol リン酸+50mmol LiBrを溶解させたものを用い、流速0.5cc/minで行なったものである。
【0031】
本発明の電着用ポリイミド樹脂組成物のポリイミドに用いられる酸二無水物は特に限定されないが、具体的には、ピロメリット酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフタル酸二無水物、及び2,3,3’,4’−ビフタル酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ビス(ジカルボキシルフェニル)プロパン二無水物、4,4’−〔2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル) エチリデン] ビス(1,2)−ベンゼンジカルボン酸二無水物) 、6FDA、ビストリフルオロメチル化ピロメリット酸、ビス(ジカルボキシルフェニル)スルホン酸二無水物、ビス(ジカルボキシルフェニル)エーテル二無水物、チオフェンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2、3、5、6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、等の芳香族酸二無水物;1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロオクテンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ(2,2,2)−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、5(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)3−メチル−3シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、等の脂肪族酸二無水物を挙げることができる。これらは単独、又は二種以上の組み合わせで使用することができる。また、スルホン酸基を有するジアミン及び/又は酸無水物と組み合わせて用いても良い。
【0032】
本発明の電着用ポリイミド樹脂組成物のポリイミドに使用される芳香族ジアミンには特に限定されないが、具体的には、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、及び2,2’−トリフルオロメチルベンジジン、2,4(又は、2,5)−ジアミノトルエン、1,4−ベンゼンジアミン、1,3−ベンゼンジアミン、6−メチル−1,3−ベンゼンジアミン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、4,4’−メチレンビス(ベンゼンアミン)、4,4’−オキシビス(ベンゼンアミン)、3,4’−オキシビス(ベンゼンアミン)、3,3’−カルボキシル(ベンゼンアミン)、4,4’−チオビス(ベンゼンアミン)、4,4’−スルホニル(ベンゼンアミン)、3,3’−スルホニル(ベンゼンアミン)、1−メチルエチリジン−4,4’−ビス(ベンゼンアミン)、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジニトロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、1,5−ジアミノナフタレン、1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチリジン−4,4’−ビス(ベンゼンアミン)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ビス−4(4−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノベンズブニリド、2,6−ジアミノピリジン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、2,2−ビス〔4(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、ビス〔4(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エチル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、ベンジジン−3,3−ジカルボン酸、4,4−(または、3,4’−、3,3’−、2,4’−)ジアミノ−ビフェニルエーテル、ジアミノシラン化合物、等を挙げることができる。これらは単独でも二種以上混合したポリイミド組成物とすることができる。また、カルボキシル基を有するジアミン及び/又は酸無水物と組み合わせても良い。これらの組み合わせを選ぶ際、これらの組み合わせが溶剤可溶となる組成を選ぶ必要がある。
【0033】
電着液
電着液は、上記記載のスルホン酸を有するポリイミド、水、及び/または有機溶媒(好ましくは、N−メチル−2−ピロリドン、1−アセトナフトン、クレゾール等の有機極性溶媒)と、塩基性化合物(好ましくは、三価のアミン)を含む。
【0034】
有機溶媒としては、ポリイミドに対して溶解力の強いN−メチル−2−ピロリドン、1−アセトナフトン、クレゾール等の有機極性溶媒が好ましいが、用いるポリイミドがエタノール、メタノール、テトラヒドロフラン、アセトン、トルエン等の汎用溶媒に可溶な場合はその溶媒を用いることができる。また、水を加えて電着液を調製した際に電着液の安定性を良好にするために、ポリイミドに対する溶解力が大きくない有機溶媒を用いることができる。この有機溶媒とは、入手可能な全ての有機溶媒を指し、その量は、ポリイミドを溶解している溶媒の量よりも少ない。
【0035】
塩基性化合物とは、スルホン酸基と塩を形成するような物質のことで、好ましくは、トリエチルアミン、ジエチルアミン、等の有機アミン化合物であり、さらに好ましくはトリエチルアミン等の三価のアミンである。この塩基性化合物は、ポリイミドを溶解させるために有用である。
【0036】
電着液の濃度は、固形物で好ましくは1〜50重量%であり、さらに好ましくは、2〜30重量%である。1重量%より濃度が薄いと、電着した際に液の濃度変化が大きく均一な膜を長時間にわたって得られない。また、濃度が50重量%より濃いと粘度が大きくなりすぎ、均一な電着膜が得られない。
【0037】
【実施例】
下記に示す各実施例において用いた次の化合物の入手先を示す。
【0038】
2,2’−ベンジジンジスルホン酸(略語:BzDSFA)は東京化成社のものを50℃で24時間乾燥させた後、用いた。
【0039】
3,3’4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(略語:BPDA)、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物(略語:NTCDA)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(略語:DADPM)は東京化成社のものをそのまま用いた。4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(略語:DADE)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(略語:TFMB)、p−フェニレンジアミン(略語:p−PDA)は和歌山精化社のものをそのまま用いた。
【0040】
〔実施例1〕
o−クレゾール中で次のようにして本実施例1のポリイミドAを一段階で合成した。o−クレゾール100g中にBzDSFAを2.85mmol、4,4−DPEを16.15mmol入れ、室温で40分撹拌した。BzDSFAのクレゾールに対する溶解性が低く、この状態では若干不溶物が残る為、トリエチルアミンを0.0078mol添加し、設定温度70℃(内温60〜70℃)で撹拌し均一な溶液にした。その後43℃に液温を下げ、触媒として安息香酸を0.014mol添加した。その後、NTCDAを9.5mmol、BPDAを9.5mmol添加し、設定温度55℃内温50℃まで上昇させ撹拌を行い均一な溶液を得た。その後、設定温度を210℃、内温180℃に上昇させ、内温180℃で3時間撹拌し、イミド化反応を行った。
【0041】
反応終了後、はじめにメタノール600ml/濃塩酸30ml、その後メタノール500mlを投入し再沈殿を行った。その後ミキサーにて粉砕。その後メタノール500ml中で撹拌洗浄を2回行った。その後温風乾燥を70℃で12時間行い、収量6.6gを得た。得られたポリマーをポリイミドAとした。
【0042】
〔比較例1〕
o−クレゾール中で次のようにして比較例1のポリイミドBを一段階で合成した。o−クレゾール100g中にBzDSFAを0.023mol入れ、50℃で30分撹拌した。BzDSFAのクレゾールに対する溶解性が低く、この状態では若干不溶物が残る為、トリエチルアミンを0.0604mol添加し、80℃で撹拌し均一な溶液にした。その後50℃に液温を下げ、触媒として安息香酸を0.0144mol添加し液温を70℃まで上昇させながら約20分撹拌した。その後NTCDAを0.02187mol添加し液温70℃のまま60分撹拌を行った。その後さらにNTCDAを1.1264mmol添加し液温70℃のまま30分撹拌を行った。その後、液温を160℃に上げ、15時間イミド化反応を行った。
【0043】
反応終了後、o−クレゾール、NMP100mlに希釈した。その後メタノール/concHCl=9/1vol比溶液に投入し、再沈殿を行った。その後ろ過を行い、メタノール1500ml中で洗浄ろ過、メタノール1000ml中、メタノール還流を行いながら熱洗浄ろ過を行った。減圧乾燥を室温で24時間行い、収量13.6gを得た。得られたポリマーをポリイミドBとした。
【0044】
〔比較例2〕
o−クレゾール中で次のようにして比較例2のポリイミドCを一段階で合成した。o−クレゾール100g中にDADPMを19mmol入れ、50℃で30分撹拌して均一な溶液にした。その後50℃に液温を下げ、触媒として安息香酸を200mg添加した。その後BPDAを19mmol添加し、そのまま90分撹拌を行ない、均一な溶液とした。共沸溶媒としてトルエンを50ml加えた後、液温を180℃に上げ、1.5時間撹拌を行なったところ、白色沈殿が析出し反応溶媒の粘度が急激に減少した。この粉末を、メタノールで洗浄したものをポリイミドCとした。
【0045】
〔実施例2〕
電着液の調製
150mlのNMPの入った300mlのセパラブルフラスコに前記実施例1で得たポリイミドA15gと、トリエチルアミン850mgを投入し、メカニカルスターラーで100rpmで撹拌し完全に溶解させた。得られた溶液に1−アセトナフトン45gを加え、100rpmで30分撹拌した後、700rpmで撹拌しながらイオン交換水45gを30分間かけ徐々に滴下した。液の粘度がやや高いため80mlのNMPを更に加え、2時間100rpmで撹拌した。その後、ポア径100μmのフィルターで濾過し電着液Aとした。
【0046】
一方、前記比較例2で得たポリイミドCについても、前記電着液Aと同様な手法で電着液を得ることを試みたが、溶媒に溶解しないため電着液を得ることができなかった。
【0047】
電着性評価
以下のような条件で電着を行い、電着特性を評価した。対向電極、基板ともDeepUVとオゾンによる脱脂処理が施されている。
【0048】
温度 :23℃
電極間隔 :2cm
対向電極(アノード):SUS製
対向電極面積 :10cm2 (2cm×5cm)
基板 :Cu製
基板面積 :10cm2 (2cm×5cm)
電圧印加時間 :120s
上記条件で、5、10、15、20、25、30Vの6種類の印加電圧にて、電着をそれぞれ行い、基板に電着されたポリイミド膜を流水で洗浄し、200℃のホットプレート上で10分間乾燥させた。このようにして得られた各電圧毎の基板に析出したポリイミド膜厚をデックタックで測定した。その結果を縦軸に膜厚(μm)、横軸に印加電圧(V)とったグラフとして図1に示す。
【0049】
電着膜の熱膨張係数
上記工程で得られた電着液Aを10cm×10cm膜厚12μm銅箔上に上記電着条件でコーティングし、120℃のオーブンにて30分乾燥した。その後350℃70分窒素雰囲気下において熱硬化を行い、10〜20μm膜厚の塗膜を形成した。その後、液温50℃、45ボーメ塩化第二鉄中において銅箔のエッチングを行い、ポリイミドフィルムを得た。長さ約2cm、幅5mmに切り出し、Rigaku社製ThermoPlus II TMA8310を用いて熱膨張係数の測定を行った。測定条件は荷重10g、温度範囲室温〜350℃、昇温速度10℃/分で行った。熱膨張係数は100℃から軟化点温度までの平均をとった。また、ポリイミドBを前記ポリイミドAに準じて同様に電着塗膜を作製し評価した。それらの結果を下記の表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
熱重量分析
以下に、前記ポリイミドAについての熱重量分析の結果を示す。図2はポリイミドAの各種温度(横軸)における重量(縦軸)減少を示すグラフである。図3はポリイミドAを300℃と350℃の一定の温度に保った場合の経過時間(横軸)に対する重量(縦軸)減少を示すグラフである。
【0052】
図2によれば、室温から250℃までに約7重量%の質量減少がある。これはスルホン酸基に吸着した水の脱離に下なうものである。また、320℃を過ぎたあたりから急激な重量減少があり、丁度87.9%の間で重量減少が収まっているのがわかる。仮に脱スルホン酸基反応が起こり、二酸化硫黄が発生したとした時の理論量と近い値である。
【0053】
図3によれば、上記2つの実験結果より、ポリイミドAが300℃で加熱を続けた場合より、350℃で加熱を続けた場合の方が重量減少が収まるのが早くなっていることがわかる。以上の結果より、ポリイミドAについての熱処理条件は350℃で加熱を続けた場合の方が好ましいことがわかる。
【0054】
また、ポリイミドAの加熱処理中に発生したガスをGC−MS(GC:島津製作所製GC−17A、MS:島津製作所製QP−5000)を用い、315℃で加熱し、分析することにより同定した。その結果を図4に示す。図4によれば、ポリイミドAの加熱によって、残留溶媒揮発とSO2 の発生が確認された。これらの結果を総合すると、高分子骨格中においても、脱スルホン酸基反応が起こっていることがわかる。それゆえ、耐溶剤性が向上するものと考えられる。
【0055】
【発明の効果】
本発明の電着用ポリイミド樹脂組成物は、溶媒可溶性でかつ低熱膨張率である耐熱性ポリイミド樹脂を含む電着用ポリイミド樹脂組成物である。該電着用ポリイミド樹脂組成物を電着して得られた成形体は、低熱膨張率で、耐熱性であり、溶媒不溶性の成形体である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2で得られた各電圧毎の基板に析出したポリイミド膜厚を縦軸に膜厚(μm)、横軸に印加電圧(V)とったグラフである。
【図2】ポリイミドAの各種温度(横軸)における重量(縦軸)減少を示すグラフである。
【図3】ポリイミドAを300℃と350℃の一定の温度に保った場合の経過時間(横軸)に対する重量(縦軸)減少を示すグラフである。
【図4】ポリイミドAの加熱処理中に発生したガスをGC−MSを用い、315℃で加熱し、分析した結果を示すグラフである。
Claims (8)
- 前記一般式(1)におけるXの四価の有機基は、有機酸二無水物より誘導される基である請求項1記載の電着用ポリイミド樹脂組成物。
- 前記有機酸二無水物は、ピロメリット酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフタル酸二無水物、及び2,3,3’,4’−ビフタル酸二無水物から選ばれた1種又は2種以上の混合物である請求項2記載の電着用ポリイミド樹脂組成物。
- 前記溶媒可溶性ポリイミドの重量平均分子量が8,000〜1,000,000である請求項1、2又は3記載の電着用ポリイミド樹脂組成物。
- 請求項1乃至4のいずれか1項記載の電着用ポリイミド樹脂組成物を電着法により成形体とし、該成形体を乾燥後130℃〜500℃の温度で加熱処理することを特徴とする電着成形体の製造方法。
- 前記加熱処理が300℃〜450℃で3分〜120分である請求項5記載の電着成形体の製造方法。
- 請求項5又は6記載の製造方法により得られた成形体が、脱スルホン酸基反応されて溶媒不溶性であることを特徴とする電着成形体。
- 成形体としたときの熱膨張係数が40×10-6以下である請求項7記載の電着成形体。
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