本発明は、地上デジタル放送を受信するデジタル受信機に関する。
近年、地上放送のデジタル化が進められ、新たな放送メデアとして地上デジタル放送が開始されている。
地上デジタル放送では、固定受信だけでなく、例えば携帯電話や移動体端末装置、移動型テレビ受信機、携帯ラジオ受信機等による移動受信にも適した放送を提供するため、伝送路符号化方式としてOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)方式が採用されると共に、キャリア変調方式として、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation)、64QAM(64 Quadrature Amplitude Modulation)等が採用され、更に、情報源符号化方式としてMPEG-2ビデオ及びMPEG-2 ACC(Advanced Audio Coding)等が採用され、多重化方式としてMPEG-2System及び伝送多重制御信号(Transmission and Multiplexing Configuration Control:TMCC)が採用されている。
すなわち、地上デジタル放送では、地上波を伝送するという伝送環境の性質上、地形や建物の影響によるマルチパス妨害や、移動によるドップラーシフトやフェージングの影響等を受けることとなるため、これらの妨害や悪影響に対して強い放送方式を構築すべく、上述の伝送路符号化方式とキャリア変調方式、情報源符号化方式及び多重化方式等が採用されている。
しかし、実際の移動受信では、その受信環境の悪化によっては良好な受信状態を維持できなくなる場合があるため、受信機側で更なる対策を講じる必要があり、例えば、特開2004-112200号公報(特許文献1)や特開2004-112202号公報(特許文献2)に開示されたものがある。
これら特許文献1,2に開示されている受信機(デジタルテレビ放送受信機)は、フェージング等による受信環境の悪化に伴って再生映像に生じるブロックノイズを低減するために提案されたものであり、受信した放送信号を復調する復調部と、該復調部から出力される受信映像信号を逆量子化する逆量子化部と、該受信映像信号の映像劣化度合いを検出するための映像劣化度合い検出部と、逆量子化部の出力信号をフィルタリングすることによってブロックノイズの低減化を図る低域フィルタとを備えて構成されている。
そして、映像劣化度合い検出部からの検出出力に基づいて低域フィルタのフィルタ係数を調整することにより、ブロックノイズの要因を低減した信号を出力させ、その出力信号をMPEG-2ビデオに準拠したMPEGビデオデコーダで復号することにより、ブロックノイズの目立たない再生映像をディスプレイ表示することを可能にするビデオ信号を生成するようにしている。
特開2004-112200号公報
特開2004-112202号公報
ところが、上記従来の受信機では、映像劣化度合い検出部が、復調部から出力される受信映像信号のデータ誤りについての誤り検出数/誤り訂正数の比に基づいて映像劣化度合いを検出し、その検出結果に基づいて低域フィルタのフィルタ係数を調整することで、ブロックノイズを低減することとしている。つまり、復調部から出力される復調後の受信映像信号についての映像劣化度合いを検出するという構成が採用されている。
したがって、上記従来の受信機は、マルチパス妨害やドップラーシフトやフェージング等の悪影響をもたらす移動体の移動状況に即してブロックノイズを低減するというよりも、復調部で復調された受信映像信号に基づいて事後的に検出した映像劣化度合いに応じて、いわゆる対処療法的手法でブロックノイズを低減しようとするものである。
このため、マルチパス妨害やドップラーシフトやフェージング等の悪影響に対してより強い移動受信を実現するには、技術的に限界を招くという課題がある。
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、例えばマルチパス妨害やドップラーシフトやフェージング等の悪影響に対して、強い移動受信を実現するデジタル受信機を提供することを目的とするものである。
請求項1に記載の発明は、地上デジタル放送を受信するデジタル受信機であって、受信する放送に含まれる番組を再生する受信再生手段と、前記デジタル受信機の移動速度を検出する速度情報検出手段と、異なる移動速度の情報に関連付けて、地上デジタル放送の伝送路符号化方式における劣化耐性に関する伝送パラメータ群の各伝送パラメータについて、移動速度の影響で変化する劣化耐性に優れた順番を示す優先順位情報が記憶されている記憶手段と、受信中の地上デジタル放送に含まれている番組のうち、前記速度情報検出手段で検出される移動速度と前記受信中の地上デジタル放送に含まれている番組の伝送路符号化時の伝送パラメータとを引数として前記記憶手段を検索し、検索した各伝送パラメータのうちで前記優先順位情報により最も劣化耐性に優れた順番が示されている伝送パラメータと同じ伝送パラメータで伝送路符号化がなされている番組を選択し、該選択した番組を有効番組として前記受信再生手段に再生させる選択制御手段と、を具備することを特徴とする。
本発明の好適な実施形態について、図1ないし図3を参照して説明する。図1は、地上デジタル放送の放送方式を概説するための図、図2は本実施形態のデジタル受信機の構成を表したブロック図、図3は要部の構成を説明するための図である。
まず、本実施形態のデジタル受信機について説明する前に、図1を参照して、地上デジタル放送方式について概説する。なお、放送局側では、地上デジタル放送方式の規格内での各種変更が可能であることから、一般的内容の範囲内に止めて説明することとする。
地上デジタル放送では、伝送路符号化方式としてOFDM方式が採用されており、放送局側では、割り当てられた1放送チャンネル当たりの伝送帯域幅を複数個のOFDMセグメント(以下、単に「セグメント」と称する)に分け、各セグメント毎に個々の番組を放送したり、複数個のセグメントの組み合わせによって各番組を多重放送することが可能となっている。
例えば、現行の地上デジタルテレビ放送では、図1(a)に示すように、伝送帯域幅(約6MHz)を13セグメントに分け、そのうち1セグメントを使用して音声番組のデータセグメント、残りの12セグメントを使用してハイビジョン番組のデータセグメントを伝送することにより、音声番組とハイビジョン番組とを同じ時間帯で放送することが可能となっている。
また、地上デジタルテレビ放送では、図1(b)に例示するように、音声番組と、移動受信と固定受信用の標準テレビ番組との各データセグメントに対応させて、13セグメントを3つのグループに分け、第1グループである1セグメントを使用して音声番組のデータセグメント、残り2グループにおける複数個ずつのセグメントを使用して移動受信と固定受信用の標準テレビ番組のデータセグメントを各々伝送することにより、音声番組と、同一内容の2つのテレビ番組とを同じ時間帯で放送することも可能となっている。
また、現行の地上デジタルラジオ放送では、図1(c)に例示するように、伝送帯域幅(約4MHz)を8個の音声番組のデータセグメントに対応させて8セグメントに分け、各セグメントによって合計8個の音声番組を連結送信したり、図1(d)に例示するように、8セグメントのうちの所定の3セグメントで、音声番組とテキストデータ等のデータコンテンツを伝送し、残りの5セグメントで5個の音声番組を連結送信することも可能となっている。
このように、放送局側で伝送帯域幅を複数セグメントに分けて、1又は複数セグメントの組み合わせによって番組を多重放送することで、受信機側では高品位のハイビジョン番組を受信したり、一部のセグメントによる番組を部分受信することで固定受信と移動受信の何れか一方を選択したり、音声番組だけを部分受信する等の多様性に富んだ受信形態を実現することが可能となっている。
図1(e)は、放送局側に設けられている伝送路符号化部の概略構成を表したブロック図である。
図1(e)において、放送局側では、各番組を構成するデータセグメントをいわゆる圧縮及びパケット化して放送するために、所定の規格(IEC/ISO13818-1)に従ってトランスポートストリームTSを生成して伝送路符号化部に入力する。
すなわち、放送局側では、まず、番組に関する映像や音声、データコンテンツ等のデータをMPEG-2ビデオやMPEG-2 ACC等の符号化方式で符号化(エンコード)し、それら符号化後のデータによってエレメンタリストリーム(Elementary Stream:ES)を生成する他、エレメンタリストリームに所定の制御用ヘッダ(Packetized Elementary Stream Header)を付加することでパケッタイズドエレメンタリストリーム(Packetized Elementary Stream:PES)を生成する。更に、1又は複数のエレメンタリストリームやパケッタイズドエレメンタリストリームの集合に所定の制御用ヘッダ(Transuport Stream Header)を付加することで、固定長(188バイト)のトランスポートストリームパケット(Transuport Stream Packet:TSP)を生成し、各々のトランスポートストリームパケットを時系列的に並べて、トランスポートストリーム(Transuport Stream:MPEG-2 TS)として、伝送路符号化部に入力する。
次に、伝送路符号化部は、入力されたトランスポートストリームTSに対してリードソロモン符号化による外符号化(誤り訂正のための外符号を付加するための処理)を行った後、所定のパケット単位で最大3つの階層に階層分離する。つまり、図1(b)に例示したような3つの番組を、異なった劣化耐性の下で同じ時間帯に放送しようとする場合に、各番組を分けて並列処理するために、階層分離が行われる。そして、階層分離された各々のパケットに対して並列処理を施すことにより、バイトインタリーブと、たたみ込み符号化による内符号化(誤り訂正のための内符号を付加するための処理)と、キャリア変調を行って、各々の階層の変調信号を生成する。
ここで、各階層毎に各々所定の符号化率(Code Rate)で内符号化を行い、更に各階層毎にQPSK、16QAM、64QAM等のキャリア変調方式の中から選択してキャリア変調を行うことにより、劣化耐性の異なる変調信号を生成する。すなわち、符号化率が低いほど劣化耐性に優れ、また、64QAMよりも16QAMの方が劣化耐性を向上させることができると共に、16QAMよりもQPSK変調方式の方が劣化耐性を向上させることができるという夫々の伝送パラメータの特徴を考慮して、各階層毎に符号化率とキャリア変調方式を種々に組み合わせて、変調信号を生成するようになっている。
例えば、図1(b)に示した6MHzの伝送帯域を使用して、移動受信用の音声番組及び標準テレビ番組と、固定受信用の標準テレビ番組とを同じ時間帯でいわゆる多重放送する場合、移動受信用音声番組を放送すべく変調信号を生成するための階層では、マルチパスに対するエラー耐性の向上等を図るべく、所定の低符号化率で内符号化を行ってQPSKによってキャリア変調を行い、移動受信用の標準テレビ番組を放送すべく変調信号を生成するための階層では、同じくマルチパスに対するエラー耐性の向上等を図るべく、所定の低符号化率で内符号化を行って16QAMによってキャリア変調を行い、固定受信用の標準テレビ番組を放送すべく変調信号を生成するための階層では、所定の高符号化率で内符号化を行って64QAMによってキャリア変調を行う、等の処理が行われる。
次に、階層毎に生成される変調信号を合成(階調合成)した後、後述のIFFTのサンプルクロックに同期したシンボル単位で以下の処理が行われる。まず、階調合成後の変調信号に対して、移動受信性能とマルチパスに対するエラー耐性を向上させるために、時間インタリーブとOFDMセグメントの配置に対応した周波数インタリーブを施した後、上述した階層毎の誤り訂正方式と符号化率とキャリア変調方式等(以下「伝送パラメータ」と総称する)の情報を受信機側へ知らせるための伝送多重制御信号(TMCC)と、同期受信を可能にするためのフレーム同期信号とを所定フレーム単位で挿入してOFDMフレームを構成し、次に、OFDMフレームをIFFT(逆フーリエ変換)して、ガードインターバルを付加した後、図1(a)〜(d)に例示したような複数セグメント構成の伝送スペクトルで表されるOFDM信号(ベースバンド信号)を生成し、アップコンバート等の手法により所望の放送周波数に変換して、送信アンテナを介して送信している。
このように、地上デジタル放送方式によれば、トランスポートストリームTSをいわゆる階層伝送することにより、劣化耐性の異なる複数の番組を1放送チャンネルの伝送帯域幅(6MHzや4MHz)内で多重放送することができるようになっている。
次に、本実施形態のデジタル受信機の構成について図2(a)を参照して説明する。
図2(a)において、このデジタル受信機1は、到来電波(放送波)を受信する受信アンテナ2が接続されたフロントエンド部3と、復調部4と、デマックス部5、デコーダ部6とを有して構成された受信再生手段の他、選局部7と選択制御部8及び記憶部9を有して構成された制御手段とを備え、選択制御部8には速度情報検出部10が接続されている。
なお、受信アンテナ2は、フロントエンド部3に着脱自在に接続するようにしてもよいし、本デジタル受信機1に含めて一体化した構成としてもよい。
フロントエンド部3は、選局部7からの選局制御信号Drxで指示される放送チャンネルについて同調受信すべく、同調周波数の局発信号を内部発生し、その局発信号と受信アンテナ2からのRF受信信号とを混合することによる周波数変換によって中間周波信号を生成し、更に、その中間周波信号に対し所定の帯域制限等の処理を施すことにより、OFDM信号(ベースバンド信号)IFを生成して出力する。
復調部4は、OFDM信号IFをアナログデジタル変換して入力し、図1(e)を参照して説明した伝送路符号化処理とは逆の処理(以下「デジタル復調」と称する)を行うことにより、OFDM信号IFからトランスポートストリームTSを再生して、デマックス部5に供給する。
なお、図2(a)では、フロントエンド部3と復調部4による1系統の受信系統が設けられているが、図2(b)の変形例に示すように、受信品質を向上させるために、受信アンテナが接続されたフロントエンド部3と復調部4の構成を複数個備えた複数の受信系統を備えるようにし、各受信系統で生成されるトランスポートストリームTSをデマックス部5側に出力するようにしてもよい。
更に、復調部4は、このデジタル復調の際、前述のOFDMフレーム毎に送られてきた伝送パラメータの情報を有する伝送多重制御信号(TMCC)を抽出し、受信状態検出情報Dcmとして選択制御部8に供給する。
デマックス部5は、トランスポートストリームTSを入力し、前述した各トランスポートストリームパケット(TSP)に付けられている制御用ヘッダ(Transuport Stream Header)や、パケッタイズドエレメンタリストリーム(PES)に付けられている制御用ヘッダ(Packetized Elementary Stream Header)等に含まれている識別制御情報に基づいて、エレメンタリストリーム(ES)やパケッタイズドエレメンタリストリーム(PES)を識別検出し、更に、検出した各々のエレメンタリストリーム(ES)やパケッタイズドエレメンタリストリーム(PES)を、映像や音声やデータコンテンツ等のいわゆる属性毎にデマルチプレクス(分離)して、デコーダ部6へ供給する。
デコーダ部6は、音声のエレメンタリストリームESやパケッタイズドエレメンタリストリームPESに対してMPEG-2 ACCに準拠した復号を施すことで音声データDauを再生し、映像のエレメンタリストリームESやパケッタイズドエレメンタリストリームPESに対してMPEG-2ビデオに準拠した復号を施すことで映像データDvdを再生し、データ圧縮されているデータコンテンツのエレメンタリストリームESやパケッタイズドエレメンタリストリームPESに対して所定の伸張処理を施すことで元のデータコンテンツDdtに戻して、各々のデータDau,Dvd,Ddtを出力する。
更に、デコーダ部6は、複数の番組が多重化されている放送を本デジタル受信機1が受信する際、操作部(図示略)を介してユーザの所望する番組が指定されると、その指定された番組を構成しているエレメンタリストリームESやパケッタイズドエレメンタリストリームPESを選択して、上述の復号や伸張処理を施すことで、指定された番組の各データDau,Dvd,Ddtを再生して出力する。
更に、詳細については後述するが、複数の番組が多重化されている放送を本デジタル受信機1が受信する際、ユーザから「自動切替モード」による受信方法が指定されると、選択制御部8が各番組の劣化耐性を解析して、デコードすべきエレメンタリストリームESやパケッタイズドエレメンタリストリームPESと、デコード方式(すなわち、復号方式や伸張方式)とを選択させるための選択制御信号Dstをデコーダ部6に供給する。そして、デコーダ部6は、選択制御信号Dstの指示に従ってデコード処理を行うことにより、例えばマルチパス妨害やドップラーシフトやフェージング等の悪影響に対して強い移動受信を実現している。
選局部7は、ユーザから操作部を介して所望の放送チャンネルが指定された場合や、「自動切替モード」の指定と共に所望の放送チャンネルが指定されると、選局制御信号Drxによってその放送チャンネルをフロントエンド部3に指示し、同調受信を行わせてOFDM信号IFを生成させる。
速度情報検出部10は、本デジタル受信機1の移動速度を検出し、その検出信号を選択制御部8に供給する。具体例として、本デジタル受信機1が自動車等の移動体に搭載等される場合、自動車に設けられている車速センサやパーキングブレーキに設けられているパーキングブレーキスイッチ等が、速度情報検出部10として利用され、それらの車速センサから出力される車速検出信号Spや、パーキングブレーキスイッチから出力されるブレーキオン又はブレーキオフの状態を示すブレーキ操作状態検出信号Spbkを選択制御部8が入力し、それらの検出信号Sp,Spbkに基づいて、本デジタル受信機1の移動速度を検出する。
なお、本デジタル受信機1は、自動車に搭載される場合に限られるものではなく、更に、速度情報検出部12は、自動車に設けられている車速センサやパーキングブレーキスイッチに限られるものではなく、本デジタル受信機1の移動速度を検出し、電気信号として出力する装置や電子素子等であればよい。また、速度情報検出部12は、デジタル受信機1とは別体の構成としてもよいし、デジタル受信機1に含めて一体化した構成としてもよい。
記憶部9は、図3(a)に模式的に示すような、いわゆるルックアップテーブル形式のデータベースであり、半導体メモリ等で形成されている。
図3(a)を参照してこのデータベースの構成を説明すると、本デジタル受信機1が移動したり停止したときの各々の速度、すなわち、異なる移動速度SPの情報に関連付けて、地上デジタル放送の伝送路符号化方式における劣化耐性に関する伝送パラメータ群(図には、代表例として、QPSK,16QAM,64QAM等のキャリア変調方式と、1/2,3/4,7/8等の符号化率が示されている)の各伝送パラメータについて、移動速度SPの影響で変化する劣化耐性に優れた順番を示す優先順位情報Kが記憶されている。
つまり、図3(b)に模式的に示すように、一般的に、デジタル受信機で移動受信を行った場合における、伝送パラメータ(符号化率とキャリア変調方式)毎の移動速度に対するビットエラーレート(Bit Error Rate:BER)の関係を調べて見ると、2×10−4の値を境として、それよりビットエラーレートが大きい場合には、何れの伝送パラメータで伝送路符号化がなされている番組であっても受信困難となり、それよりビットエラーレートが小さい場合には、何れの伝送パラメータで伝送路符号化がなされている番組であっても受信可能となる。更に、移動速度が変化した場合には、夫々の伝送パラメータ毎に、受信可能な範囲内における受信状態の良否に差が生じることとなる。
更に又、説明の便宜上、図3(a)を参照してビットエラーレートと移動速度との関係に基づいて、夫々の伝送パラメータで伝送路符号化がなされた各番組の受信状態の良否について説明したが、受信感度と移動速度との関係や、パケットエラーレート(Paket Error Rate:PER)と移動速度との関係を調べても同様の傾向が得られる。
そこで、ビットエラーレート又は受信感度若しくはパケットエラーレートについての所定の基準値に基づいて、受信可能となる範囲を決めておき、更に、その受信可能となる範囲内で移動速度の変化に応じて、より良好な受信品質の得られる伝送パラメータであるほど、劣化耐性に優れているものとして、優先順位情報Kにより劣化耐性の優れている伝送パラメータに順番を付けるようにしている。
より詳細に述べれば、このデータベースでは、移動速度(単位は時速)SPが予め異なる速度範囲毎の複数段階のレベル(L1)〜(L6)に分けられており、それらの各レベル(L1)〜(L6)毎に、放送局側で行われる伝送路符号化時の伝送パラメータであるキャリア変調方式(QPSK,16QAM,64QAM等)と符号化率(1/2,3/4,7/8等)が関連付けられている。
そして、実際に本デジタル受信機1が移動すると、ビットエラーレート又は受信感度若しくはパケットエラーレートに基づいて決められた受信可能な範囲における各伝送パラメータによる劣化耐性は、移動速度の違いによるマルチパス妨害やドップラーシフトやフェージング等の悪影響を受けて変化することから、それらの各伝送パラメータについて、移動速度SPの影響で実際に変化した場合の劣化耐性の良い順番を示すべく、ビットエラーレート又は受信感度若しくはパケットエラーレートを判断基準として決められた優先順位を示す優先順位情報Kが記憶されている。
なお、各々のレベル(L1)〜(L6)において、優先順位情報Kの値が大きいものほど、劣化耐性に優れた伝送パラメータであることを示している。
選択制御部8は、ユーザから「自動切替モード」の指定がなされると、速度情報検出部10からの検出信号Sp,Spbk等による移動速度情報と、復調部4からの受信状態検出情報Dcmに含まれている伝送多重制御信号(TMCC)中の伝送パラメータ(すなわち、受信中の放送に含まれている番組の伝送路符号化時の伝送パラメータ)の情報を引数として、記憶部9を検索する。そして、引数の移動速度に該当している移動速度SPに関連付けるられている記憶部9内の伝送パラメータのうちで、引数の伝送パラメータと同じものの優先順位情報Kを調べ、その優先順位情報Kの中で最も高い優先順位が付けられている伝送パラメータを選択する。そして更に、その選択した伝送パラメータと同じ伝送パラメータによって伝送路符号化がなされている番組を有効番組として選択し、その有効番組のエレメンタリストリーム(ES)やパケッタイズドエレメンタリストリーム(PES)をデコードさせるべく、選択制御信号Dstによって、有効番組の指定と、MPEG-2ビデオやMPEG-2 ACC等のデコード方式をデコーダ部6に指令する。
これにより、選択制御部8は、多重化されている番組の中で、移動速度の違いに起因して変化することとなるマルチパス妨害やドップラーシフトやフェージング等の悪影響の程度に即して、より良好な受信状態の得られる番組を自動的に再生させて、ユーザに提供することが可能となっている。
例えば、本デジタル受信機1が自動車等の移動体に搭載されて移動中に、ユーザから「自動切替モード」の指定と共に選局された放送が複数の番組を有する多重化された放送であった場合、選択制御部8は、移動速度と各番組のキャリア変調方式と符号化率の伝送パラメータとを引数として記憶部9を検索する。
そして、その受信中の放送が例えば2つの番組を含んで多重化されており、第1の番組は、符号化率が1/2でキャリア変調方式が16QAMである伝送パラメータに基づいて伝送符号化がなされており、第2の番組は、符号化率が3/4でキャリア変調方式が64QAMである伝送パラメータに基づいて伝送符号化がなされているような場合に、移動速度が時速30km/hになると、選択制御部8は、図3(a)に示したレベル(L2)に該当する各優先順位情報Kを調べる。そして、2つの番組のうちで、優先順位の高い方の伝送パラメータに基づいて伝送符号化がなされている番組を選択する。つまり、図3(a)から明らかなとおり、レベル(L2)では、第1の番組の符号化率とキャリア変調方式の優先順位はK=2、第2の番組の符号化率とキャリア変調方式の優先順位はK=4であることから、選択制御部8は、優先順位の高い第2の番組を有効番組としてデコードすべきと判断し、選択制御信号Dstによって、デコーダ部6に指令する。
そして、移動速度SPが時速30km/hと比較的低速の場合であることから、結果的に、劣化耐性の高低を問う必要のない第2の番組が選ばれるようにデータベースの内容が決められており、ユーザに対して受信状態のよい番組を有効番組として提供することが可能である。
また、第1,第2の番組が多重化されている上述の放送を受信中に、移動速度が時速60km/hになると、選択制御部8は、図3(a)に示したレベル(L3)に該当する各優先順位情報Kを調べて、2つの番組のうちで、優先順位の高い方の伝送パラメータに基づいて伝送符号化がなされている番組を選択する。つまり、図3(a)から明らかなとおり、レベル(L3)では、第1の番組の符号化率とキャリア変調方式の優先順位はK=4、第2の番組の符号化率とキャリア変調方式の優先順位はK=3であることから、選択制御部8は、優先順位の高い第1の番組を有効番組としてデコードすべきと判断し、選択制御信号Dstによって、デコーダ部6に指令する。
また、上述の放送を受信中に、移動速度が時速60km/hを超える例えば80km/hや100km/h、或いは100km/hを超える値になった場合、図3(a)に示されているレベル(L4)〜(L6)の夫々について最も優先順位の高い符号化率とキャリア変調方式の番組は、2つの番組のうちの第1の番組であることから、選択制御部8は第1の番組を有効番組としてデコードすべきと判断し、選択制御信号Dstによって、デコーダ部6に指令する。
したがって、移動速度が上がるのに従って大きくなるマルチパス妨害やドップラーシフトやフェージング等の悪影響の程度に即して、その悪影響を受け難い第1の番組を選択することとなり、実際の受信環境の下で最も良好に受信することが可能な番組を自動的にユーザに提供することが可能となっている。
以上説明したように、本実施形態のデジタル受信機1によれば、異なる移動速度の情報に関連付けて、地上デジタル放送の伝送路符号化方式における劣化耐性に関する伝送パラメータ群の各伝送パラメータについて、移動速度の影響で変化する劣化耐性に優れた順番を示す優先順位情報が記憶されている記憶部9と、速度情報検出部10で検出される移動速度と、受信中の放送に含まれている番組の伝送路符号化時の伝送パラメータとを引数として記憶部9を検索し、検索した各伝送パラメータのうちで優先順位情報により最も劣化耐性に優れた順番が示されている伝送パラメータと同じ伝送パラメータによって伝送路符号化がなされている番組を選択して、受信再生手段のデコーダ部6に再生させる選択制御部8を備えたので、移動速度の違いに応じて変化するマルチパス妨害やドップラーシフトやフェージング等の悪影響に即して、強い移動受信を実現するデジタル受信機、すなわち、より劣化耐性の良い番組を自動的に選択してユーザに提供することが可能なデジタル受信機を実現することができる。
なお、本実施形態のデジタル受信機1では、選択制御部8が有効番組を選択する際、記憶部9で実現されている上記所定のデータベースを検索するようになっているが、該データベースに相当する引数関数を選択制御部8に記憶させておき、速度情報検出部10で検出される移動速度と、受信中の放送に含まれている番組の伝送路符号化時の伝送パラメータとを引数として、その引数関数を検索し、検索した各伝送パラメータのうちで優先順位情報により最も劣化耐性に優れた順番が示されている伝送パラメータと同じ伝送パラメータによって伝送路符号化がなされている番組を有効番組として選択するようにしてもよい。
かかる引数関数を選択制御部8に設けておく構成とすることで、記憶部9を不要とすることができ、部品点数の低減等を図ることができる。
次に、より具体的なデジタル受信機の実施例について、図4ないし図6を参照して説明する。図4は、本実施例のデジタル受信機の構成を表したブロック図であり、図2と同一又は相当する部分を同一符号で示している。図5は、後述する動き解析部の機能を説明するための図、図6は、本実施例のデジタル受信機の動作を説明するためのフローチャートである。
まず、図4に基づいて、本実施例のデジタル受信機1の構成を説明する。なお、図2に基づいて既に説明した構成要素については、その説明を省略することとする。
このデジタル受信機1は、自動車等の移動体に搭載されるいわゆる車載型オーディオビジュアル機器に設けられており、後述する操作部12をユーザが操作すると、本実施例のデジタル受信機1を動作させたり、車載型オーディオビジュアル機器に設けられている他のDVDプレーヤや、ナビゲーション装置等を選択的に動作させる等の操作を行うことが可能となっている。
図4において、復調部4は、フロントエンド部3から出力されるOFDM信号(ベースバンド信号)IFをアナログデジタル変換して入力するA/D変換器4aと、FFT(高速フーリエ変換)部4b、デインターリーブ部4c、ビタビ復号部4d、バイトデインターリーブ部4e、TS再生部4f、RS訂正部4gを有して構成されている。
FFT部4bはA/D変換器4aからのアナログデジタル変換されたOFDM信号IFをフーリエ変換し、そのフーリエ変換後の信号に対してデインターリーブ部4cが時間デインターリーブと周波数デインターリーブを施すことによって、いわゆる受信データと伝送多重制御信号(TMCC)を再生する。そして、受信データに対してビタビ復号部4dがビタビ復号による誤り訂正復号(内符号誤り訂正復号)を行うと共に、バイトデインターリーブ部4eがバイト単位でのデインターリーブを行い、更にTS再生部4fがバイトデインターリーブ部4eの出力からMPEG-2に準拠したトランスポートストリームを再生した後、RS訂正部4gがそのトランスポートストリームについてリードソロモン復号による誤り訂正復号(外符号誤り訂正復号)を行うことで、最終的にトランスポートストリームTSを生成して出力する。
また、復調部4は、上述のビタビ復号部4dにおいて誤り訂正復号が行われるときに検出されるビットエラーレート(Bit Error Rate:BER)の情報と、RS訂正部4gにおいて誤り訂正復号が行われるときに検出されるパケットエラーレート(Packet Error Rate:PER)の情報と、OFDM信号IFのスペクトルパワーに基づいて検出される受信感度を示す情報等の受信状態を示す情報を有するデータEfpと、伝送多重制御信号(TMCC)とを受信状態検出情報Dcmとして、選択制御部8に供給する。
動き解析部11は、選択制御部8と共にマイクロプロセッサ(MPU)やデジタルシグナルプロセッサ(DSP)によって形成されており、自動車に設けられている車速センサ10aとパーキングブレーキスイッチ10bから成る速度情報検出部10が接続されている。そして、動き解析部11は、車速センサ10aから出力される車速検出信号Spとパーキングブレーキスイッチ10bから出力されるブレーキ操作状態検出信号Spbkに基づいて、デジタル受信機1の移動速度の変化の傾向を解析し、その解析結果を示す速度信号Dpを選択制御部8に供給する。
ここで、動き解析部11は、パーキングブレーキスイッチ10bがオン操作されており、自動車が一時停止している状態ではなく、定常的に停車している状態であることをブレーキ操作状態検出信号Spbkに基づいて検出すると、本デジタル受信機1の移動速度が時速0km/hであって且つパーキングブレーキスイッチ10bがオン操作されていることを示す速度信号Dpを選択制御部8に供給する。
一方、パーキングブレーキスイッチ10bがオン操作されていない場合には、車速センサ10aから出力される車速検出信号Spに基づいて、デジタル受信機1の移動速度の変化の傾向を解析し、その解析結果を示す速度信号Dpを選択制御部8に供給する。
更に、図5に模式的に示すように、自動車が高速道路を走行中の場合や、円滑に走行可能な一般路を走行中の場合や、渋滞した道路を走行中の場合では、経過時間に対する移動速度の変化パターン(いわゆる走行パターン)が異なることから、動き解析部11は、パーキングブレーキスイッチ10bがオフ操作されていることを確認した上で、車速検出信号Spを所定の規定期間T毎に検出し、その規定期間T毎に検出した移動速度をデジタル受信機1の移動速度の変化の傾向を示すものであるとして解析し、解析結果を示す速度信号Dpとして選択制御部8に供給する。
つまり、自動車が高速道路を走行中の場合や、円滑に走行可能な一般路を走行中の場合等では、移動速度は短時間に変動しないが、渋滞した道路を走行中の場合では、ユーザによる停止や加速や制動運転が短時間に繰り返されることとなるため、移動速度は短時間に変動することとなり、車速検出信号Spも短時間で変化することとなる。そして、短時間で変化する車速検出信号Spをそのまま速度信号Dpとして選択制御部8に供給することとすると、選択制御部8では、その短時間に変化する移動速度を引数として記憶部9を頻繁に検索し、受信中の放送に含まれている有効番組を頻繁に切り替えてデコーダ部6でデコードさせるようになるため、頻繁に切り替わる番組を視聴するユーザに対して違和感を感じさせる等の事態を招来することとなる。
そこで、動き解析部11は、車速検出信号Spをそのまま速度信号Dpとして選択制御部8に供給するのではなく、ユーザに対して違和感を感じさせることなく番組切替えを行い得る期間を規定期間Tとし、その規定期間T毎に車速検出信号Spを検出することで、デジタル受信機1の移動速度の変化の傾向を解析して、その解析した規定期間T毎の移動速度を示す速度信号Dpを選択制御部8に供給するようになっている。
記憶部9は、図3(a)に示したのと同様のデータベースで構成されている。レベル(L1)に関連付けられている優先順位情報Kは、パーキングブレーキ10bがオン操作されて移動速度SPが0km/hとなっている場合、レベル(L1)に関連付けられている優先順位情報Kは、パーキングブレーキ10bがオフ操作されているが、車速検出信号Spに基づいて規定期間T毎に解析された移動速度SPが0km/hとなっている場合、残余のレベル(L2)〜(L6)に夫々関連付けられている優先順位情報Kは、車速検出信号Spに基づいて規定期間T毎に解析された移動速度SPが時速0km/hを超える夫々所定の速度範囲となっている場合を示している。
選択制御部8は、制御手段に接続されている操作部12を介して、ユーザから受信すべき放送の指定と「自動切替モード」による受信方法が指定されると、速度信号Dpによって示される移動速度と、復調部4から供給される伝送多重制御信号(TMCC)に含まれている伝送パラメータとを引数として、図3(a)に示したデータベースの構成から成る記憶部9を逐次検索することにより、現在受信中の番組よりも良好な受信状態の得られる番組を識別する。
つまり、パーキングブレーキ10bがオン操作されて移動速度SPが0km/hとなった場合には、選択制御部8は、現在受信中の放送に含まれている番組が伝送符号化されたときの伝送パラメータのうちで、レベル(L1)に関連付けられている優先順位情報Kによって最も高い優先順位が付けられている伝送パラメータを調べ、その最も高い優先順位が付けられている伝送パラメータによって伝送路符号化がなされている番組を有効番組として識別する。
また、パーキングブレーキ10bがオフ操作されて移動速度SPが時速0km/hとなった場合には、選択制御部8は、現在受信中の放送に含まれている番組が伝送符号化されたときの伝送パラメータのうちで、レベル(L1)に関連付けられている優先順位情報Kによって最も高い優先順位が付けられている伝送パラメータを調べ、その最も高い優先順位が付けられている伝送パラメータによって伝送路符号化がなされている番組を有効番組として識別する。
また、移動速度が時速0km/hを超えている場合には、夫々の移動速度の範囲に該当するレベル(L2)〜(L6)に関連付けられている各優先順位情報Kに基づいて、現在受信中の放送に含まれている番組が伝送符号化されたときの伝送パラメータのうちの最も高い優先順位が付けられている伝送パラメータを調べ、その最も高い優先順位が付けられている伝送パラメータによって伝送路符号化がなされている番組を有効番組として識別する。
更に、選択制御部8は、現在受信中の番組よりも良好な受信状態の得られる有効番組を識別すると、受信状態検出情報Dcmに含まれているビットエラーレート(BER)とパケットエラーレート(PER)と受信感度との全ての情報に基づいて、その識別した有効番組が真に良好な受信状態の得られる番組か否かの最終判断を行い、良好な受信状態が得られる番組であれば、その有効番組に切替えてデコードすべく、選択制御信号Dstによってデコーダ部6に指示し、真に良好な受信状態の得られる番組でないと判断した場合には、現在受信中の番組をそのまま継続して受信すべく、選択制御信号Dstをデコーダ部6に供給しないようになっている。
すなわち、選択制御部8は、図3(b)に模式的に示したビットエラーレート(BER)に基づいて真に良好な受信状態の得られる有効番組か否かの判断を行う際には、識別した有効番組に関して、受信状態検出情報Dcmに含まれているビットエラーレート(BER)が2×10-4以下の値となっていることを確認することで、真に良好な受信状態の得られる有効番組であるとの判断を行う。更に、パケットエラーレート(PER)と受信感度の値に基づいて判断を行う場合にも、夫々について予め決められている判断基準値に基づいて、真に良好な受信状態の得られる有効番組であるか否かの判断を行う。そして、ビットエラーレート(BER)とパケットエラーレート(PER)と受信感度の値との全ての情報に基づいて、真に良好な受信状態の得られる有効番組であるとの最終判断を行うと、その有効番組をデコードすべく、選択制御信号Dstをデコーダ部6に供給し、一方、ビットエラーレート(BER)とパケットエラーレート(PER)と受信感度との何れか1つに基づいて、真に良好な受信状態の得られる番組ではないと判断した場合には、現在受信中の番組をそのまま継続して受信すべく、選択制御信号Dstをデコーダ部6に供給しないようになっている。
なお、本実施例の選択制御部8では、ビットエラーレート(BER)とパケットエラーレート(PER)及び受信感度の値の全てに関して、真に良好な受信状態の得られる有効番組であるとの確認が得られた場合に、その番組に切り替えるべく最終判断を行うようになっているが、製品の設計仕様の相違などに応じて、ビットエラーレート(BER)とパケットエラーレート(PER)と受信感度の値のうちの少なくとも1つを基準にして、真に良好な受信状態の得られる有効番組であるか否かの最終判断を行うようにしてもよい。
次に、図6を参照して、本実施例のデジタル受信機1の動作について説明する。
図6において、ユーザが操作部12を介して本デジタル受信機1をオン操作し、所望の放送を指定すると(ステップST1)、車載型オーデォビジュアル機器に設けられているシステムコントローラ(図示略)が、本デジタル受信機1が選択されたと判断し(ステップST2)、指定された放送を受信すべく受信動作を開始させる(ステップST3)。一方、上述のステップST1において、DVDプレーヤやナビゲーション装置等の他のソースが選択された場合には、上述のシステムコントローラが、ステップST2において、他のソースが選択されたと判断し、ステップST100の処理に移行して、他のソースを動作させる。
上述のシステムコントローラの制御の下で、本デジタル受信機1がステップST3の受信開始の処理を行うと、次に、ステップST4において、選択制御部8が、ユーザから「自動切替モード」の指定がなされているか判断する。ここで、「自動切替モード」の指定がなされていない場合には、ステップST200に移行して、指定された放送を受信するだけの通常受信のモードに移行する。一方、「自動切替モード」の指定がなされていると、ステップST5へ移行して、「自動切替モード」による受信方式を設定する。
次に、ステップST6において、動き解析部11が、ブレーキ操作状態検出信号Spbkに基づいて、パーキングブレーキ10bがオン操作されているか否か判断し、オン操作されていると判断すると、ステップST7に移行して、「パーキングモード」の開始を設定し、オン操作されていないと判断すると、ステップST12に移行して、「走行モード」の開始を設定する。
上述のステップST7において、動き解析部11が「パーキングモード」の開始を設定すると、ブレーキ操作状態検出信号Spbkによって検出される移動速度0km/hを示す速度信号Dpを選択制御部8に供給するようになり、次のステップST8において、選択制御部8が、その速度信号Dpで示される移動速度(時速0km/h)と、現在受信中の放送に含まれている番組に関する伝送多重制御信号(TMCC)に含まれている伝送パラメータとを引数として、図3(a)に示した記憶部9のレベル(L1)に関連している優先順位情報Kを調べ、更にステップST9において、その優先順位情報Kで指定されている最も優先度の高い伝送パラメータのうちで、現在受信中の放送に含まれている番組が伝送路符号化されたときの伝送パラメータと同じものを選択し、次に、ステップST10において、その選択した伝送パラメータに該当する番組を有効番組とする。更に、ステップST10では、上述の有効番組が、良好な受信状態の得られる真の有効番組であるかを、受信状態検出情報Dcmに含まれているビットエラーレート(BER)と、パケットエラーレート(PER)と、受信感度に基づいて判断し、真に有効番組であると最終的に判断すると、その有効番組を構成しているエレメンタリストリームESやパケッタイズドエレメンタリストリームPESを選択してデコードさせるべく、選択制御信号Dstによって、その有効番組の指定とデコード方法についてデコーダ部6に指令することにより、より良好な受信状態の得られる番組を再生させる。
一方、選択制御部8は、有効番組が存在しないと判断すると、現在受信中の番組を継続して受信させるべく、選択制御信号Dstをデコーダ部6に供給しない。 次に、ステップST11では、システムコントローラが、ユーザから本デジタル受信機1の受信動作を終了すべきオフ操作がなされたか否かの判断を行い、オフ操作がなされた場合には、本デジタル受信機1の受信動作を終了させ、オフ操作されていない場合には、ステップST6に戻って受信動作を継続させる。
このように、ステップST6〜ST11では、動き解析部11がブレーキ操作状態検出信号Spbkによって検出される移動速度0km/hを示す速度信号Dpを選択制御部8に供給する「パーキングモード」となり、選択制御部8は、その速度信号Dpで示される時速0km/hである移動速度に基づいて、より良好な受信状態の得られる番組を判断し、有効番組であれば、その有効番組に切り替えて受信するようにデコーダ部6を自動的に制御することにより、ユーザに対して品質の良好な番組を提供する。
次に、上述のステップST12に移行して、動き解析部11が「走行モード」の開始を設定すると、車速検出信号Spに基づいて規定期間T毎に移動速度を解析するようになる。
そして、ステップST13において、動き解析部11が車速検出信号Spに基づいて移動速度を解析し、次に、ステップST14において、選択制御部8が、記憶部9に設定されているレベル(L1)〜(L6)のうちで速度信号Dpで示される移動速度に該当するものを調べると共に、ステップST15において、該当するレベルが存在したか否かの判断を行う。そして、該当するレベルが存在しないと判断すると、ステップST16へ移行して、所定の判定回数Nを1カウントアップし、その判定回数Nが3回を超えていない場合には、ステップST13からの処理を繰り返し、一方、判定回数Nが3回を超えた場合には、ステップST17に移行して、「自動切替モード」を解除した後、ステップST200の通常受信のモードへ移行する。
すなわち、ステップST13〜ST16では、速度信号Dpで示される移動速度が、記憶部9に設定されているレベル(L1)〜(L6)の何れにも該当しない不適切な値となった場合、例えば、車速センサーに異常が生じた場合等を選択制御部8が検出し、3回調べても速度信号Dpで示される移動速度が不適切な値となる場合は、復帰不可能な何らかの問題が発生したと判断し、「自動切替モード」による受信を継続することがユーザの利便性等を損なうこととなることから、ステップST200の通常受信のモードへ移行するようになっている。
次に、選択制御部8は、ステップST15において、レベル(L1)〜(L6)のうち、速度信号Dpで示される移動速度に該当するレベルを判定できると、ステップST18に移行し、その判定したレベルに関連付けられている優先順位情報Kを調べ、その優先順位情報Kで指定されている最も優先度の高い伝送パラメータのうちで、現在受信中の放送に含まれている番組が伝送路符号化されたときの伝送パラメータと同じものを選択し、更に、その選択した伝送パラメータに該当する番組を有効番組とする。
更に、ステップST19において、上述の有効番組が、良好な受信状態の得られる真の有効番組であるかを、受信状態検出情報Dcmに含まれているビットエラーレート(BER)と、パケットエラーレート(PER)と、受信感度に基づいて判断し、真に有効番組であると最終的に判断すると、その有効番組を構成しているエレメンタリストリームESやパケッタイズドエレメンタリストリームPESを選択してデコードさせるべく、選択制御信号Dstによって、その有効番組の指定とデコード方法についてデコーダ部6に指令することにより、より良好な受信状態の得られる番組を再生させる。
次に、ステップST20において、システムコントローラが、ユーザから本デジタル受信機1の受信動作を終了すべきオフ操作がなされたか否かの判断を行い、オフ操作がなされた場合には、本デジタル受信機1の受信動作を終了させ、オフ操作されていない場合には、ステップST21に移行する。
ステップST21では、動き解析部11が、車速検出信号Spに基づいて移動速度を検出し、更にステップST22において、その検出した移動速度が変化しているか否か判断する。そして、移動速度が変化していない場合には、ステップST21に戻って処理を繰り返す。したがって、移動速度が変化していない場合には、選択制御部8には移動速度が変化していないことを示す速度信号Dpが供給されることとなるため、選択制御部8は、デコードすべき番組を切り替えるための指令をデコーダ部6に対して行わなくなり、同じ番組を継続して受信することとなる。
一方、ステップST22において、動き解析部11が、車速検出信号Spに基づいて移動速度を検出した結果、その移動速度が変化していると判断すると、ステップST23へ移行し、所定の規定時間Tが経過したことを測定した後、ステップST24において、車速検出信号Spに基づいて移動速度を再検出する。そして、ステップST25において、上述のステップST21で検出した移動速度とステップST24で検出した移動速度とが異なっているか否か判断し、異なっていなければステップST21に戻って処理を繰り返し、一方、異なっていれば、ステップST13からの処理を繰り返す。
すなわち、ステップST23〜ST25では、動き解析部11が、車速検出信号Spで示される移動速度をそのまま速度信号Dpとして選択制御部8に供給しないようにするため、規定時間Tの期間を介在させて、車速検出信号Spから移動速度を検出し、規定時間Tの前後で検出される移動速度が異なっているか否かの解析を行って、異なっていればステップST13からの処理に移行することで、本デジタル受信機1の移動傾向を示す移動速度を検出するようにしている。
そして、ステップST13からの処理が繰り返され、移動速度の変化に応じて、より劣化耐性に優れた伝送パラメータによって伝送路符号化がなされている有効番組が見つかると、有効番組をデコーダ部6がデコードするように切り替わり、ユーザに対して良好な受信状態の得られる番組を自動的に提供することができる。
以上説明したように、本実施例のデジタル受信機1によれば、選択制御部8が、速度情報検出部10で検出される移動速度と、受信中の放送に含まれている番組の伝送路符号化時の伝送パラメータとを引数として記憶部9を検索し、検索した各伝送パラメータのうちで優先順位情報により最も劣化耐性に優れた順番が示されている伝送パラメータと同じ伝送パラメータによって伝送路符号化がなされている番組を有効番組として選択して、デコーダ部6にデコード再生させるので、移動速度の違いに応じて変化するマルチパス妨害やドップラーシフトやフェージング等の悪影響に即して、強い移動受信を実現するデジタル受信機、すなわち、より劣化耐性の良い番組を自動的に選択してユーザに提供することが可能なデジタル受信機を実現することができる。
更に、速度情報検出部10の車速センサ10aから出力される車速検出信号Spに基づいて動き解析部11が移動速度を検出する際、所定の規定時間T毎にその移動速度を検出するので、選択制御部8は、本デジタル受信機1の移動速度の傾向に即して、且つユーザに対して違和感を与えることなく、有効番組を提供することができる。
すなわち、動き解析部11が車速センサ10aから出力される車速検出信号Spに基づいて、所定の規定時間T毎に移動速度を検出すると、本デジタル受信機1の移動速度の全体的な変化率を移動速度の変化傾向として捉えて、有効番組への切替が行われることとなるため、頻繁に有効番組への切替が行われこととなる場合に較べて、ユーザに対して違和感を与えることなく、有効番組を提供することができる。
なお、本実施例では、動き解析部11は、自動車が高速道路を走行中の場合と、円滑に走行可能な一般路を走行中の場合と、渋滞中の道路を走行中の場合とで区別することなく、同じ規定時間T(例えば、5秒)毎に、車速センサ10aから出力される車速検出信号Spに基づいて移動速度を検出するようになっているが、かかる検出方法に限定されるものではなく、自動車が高速道路を走行中の場合には比較的長い規定時間T1(例えば、10秒)、円滑に走行可能な一般路を走行中の場合にはそれより短い規定時間T2(例えば、5秒)、渋滞中の道路を走行中の場合には、最も長い規定時間T3(例えば、15秒)として、夫々の走行状態(走行パターン)に応じて規定時間を変更するようにしてもよい。
更に、走行パターンの違いを検出するのに、車速検出信号Spの振幅変化の時間密度を、図6中のステップST23の前段階で測定し、密度が所定の閾値よりも高ければ渋滞中の道路を走行中、密度が当該閾値よりも低ければ、高速道路又は一般路を走行中と判定し、更に、高速道路を走行中の場合の密度と一般路を走行中の場合の密度を識別するための他の閾値に基づいて判定して、夫々の走行パターンに応じて規定時間を変更するようにしてもよい。
また、ユーザが走行パターンを判断して、本実施例のデジタル受信機1に対して、規定時間の設定や変更を行うようにしてもよい。
地上デジタル放送の放送方式を概説するための図である。
実施形態に係るデジタル受信機の構成を表したブロック図である。
図2に示すデジタル受信機に設けられている記憶部の構成と原理を説明するための図である。
実施例に係るデジタル受信機の構成を表したブロック図である。
図4に示すデジタル受信機に設けられている動き解析部の機能を説明するための図である
図2に示すデジタル受信機の動作を説明するためのフローチャートである。
符号の説明
1…デジタル受信機
8…選択制御部
9…記憶部
10…速度情報検出部
11…動き解析部