以下、本発明が適用された光ピックアップ装置及びこれを用いた記録及び/又は再生装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。この光ピックアップ装置1は、CD、DVD、BDといった少なくとも3種類の光ディスク2に対して情報信号の記録及び再生を行うピックアップ装置であり、各光ディスク2のフォーマットに対応した3種の波長レーザを出射する3種の光源を個別に、もしくは複数を近接配置してなる少なくとも1つのレーザ光出射部と、上記3種の波長レーザを受光する少なくとも1つ以上の受光素子と、各レーザ光出射部より出射されたレーザ光もしくは受光素子に入射するレーザ光を発散又は収束光中において、特定波長のレーザ光のみ偏光状態に応じて透過又は反射させる偏光ビームスプリッタとを備えることで、3波長に対応したピックアップ光学系のコンパクト化を図るものである。
このような光ピックアップ装置1は、図1及び図2に示すように、光ディスク2の径方向に配された一対のガイド軸3,4に支持されたピックアップベース5を備え、このピックアップベース5内に光学系6が形成されている。光学系6は、BDに対応した波長405nmのレーザ光のレーザ光を出射する1波長レーザダイオード10と、CDに対応した波長780nmのレーザ光及びDVDに対応した波長660nmの受発光素子及びBDに対応した受光素子が搭載されたレーザカプラ11と、波長選択性を有する偏光ビームスプリッタ12と、レーザ光の光軸方向に移動可能に支持されたコリメータレンズ14と、コリメータレンズ14を透過した波長405nmのレーザ光を光ディスク2側へ立ち上げると共に波長660nm及び780nmのレーザ光を透過させるビームスプリッタ13と、コリメータレンズ14を透過した波長660nm及び780nmのレーザ光を光ディスク2側へ立ち上げる立ち上げミラー16と、ビームスプリッタ13及び立ち上げミラー16によって立ち上げられたレーザ光の偏光方向を直線偏光から円偏光へ変換する1/4波長板17と、出射されたレーザの波長に応じて開口数を制限する絞り機能を有する開口フィルタ18と、波長405nmのレーザ光を光ディスク2の信号記録面に収束させる第1の対物レンズ19と、波長660nm及び780nmのレーザ光を光ディスク2の信号記録面に収束させる第2の対物レンズ20とを有する。
1波長レーザダイオード10は、一つのパッケージ内にレーザ光の発光部となる1つの半導体レーザチップが内蔵されている。この発光部からはBDに対応した波長405nmのレーザ光が偏光ビームスプリッタ12に向かって出射される。1波長レーザダイオード10と第1の偏光ビームスプリッタ12との間には、波長405nmのレーザ光に対する半波長板機能を兼ね備えたグレーティング24が設けられ、1波長レーザダイオード10から出射されたレーザ光は、このグレーティング24により、偏光方向を偏光ビームスプリッタ12に対してほぼS偏光となるように回転されるとともに、差動プッシュプル法によりトラッキングエラー信号を生成するための3つのビームに分岐された後、偏光ビームスプリッタ12に入射される。
レーザカプラ11は、図3に示すように、表面領域に波長405nmのレーザ光検出用のフォトディテクタ31及び波長660nm及び780nmのレーザ光検出用のフォトディテクタ32が設けられたシリコンチップ33上に、波長660nmのレーザ光及び波長780nmのレーザ光の発光源である2波長レーザダイオード34とプリズム35が取り付けられたレーザカプラチップ36を、例えば、フラットパッケージ37内に収容して構成されている。
2波長レーザダイオード34は、通常、表面領域にPINフォトダイオード38が設けられたフォトダイオードチップ39を介してシリコンチップ33に取り付けられている。このフォトダイオードチップ39に設けられたPINフォトダイオード38は、2波長レーザダイオード34の出力を制御する目的で、その2波長レーザダイオード34の後面から出射するレーザ光をモニターする。
2波長レーザダイオード34の前面から出射した出射光は、プリズム35の傾斜端面35aでほぼ直角に反射され、フラットパッケージ37上面の透明カバーガラスを通して、図1に示すように、偏光ビームスプリッタ12側に出射される。一方、光ディスク2の信号記録面で反射した各波長の戻り光は、偏光ビームスプリッタ12を透過してフラットパッケージ37内へ入射され、プリズム35の傾斜端面35aを透過したレーザ光がプリズム35内を通ってフォトディテクタ31,32により検出される。フォトディテクタ31,32は、3ビームに分岐された各ビームの光量及びスポット位置より差動プッシュプル信号を生成し、この差動プッシュプル信号によりトラッキングエラー信号を生成する。
また、この光学系6に用いられる波長選択性を有する偏光ビームスプリッタ12は、入射されたレーザ光の波長によって透過又は反射させるものであり、例えば所定の構成を有する光学薄膜をプリズムの接合面12aに設けることにより形成される。具体的に偏光ビームスプリッタ12は、波長660nmのレーザ光及び波長780nmのレーザ光を偏光状態に係わらず透過し、且つ波長405nmのレーザ光を偏光状態に応じて透過又は反射させる。
すなわち、偏光ビームスプリッタ12は、1波長レーザダイオード10より出射されるとともに、グレーティング24によってS偏光とされた波長405nmのレーザ光の入射角度が設計中心値のとき、図4(a)に示すように、接合面12aによってコリメータレンズ14側へ全光量反射させる。また、偏光ビームスプリッタ12は、光ディスク2の信号記録面に反射されるとともに1/4波長板17によってP偏光とされた波長405nmの戻りのレーザ光の入射角度が設計中心値のとき、レーザカプラ11側へ全光量透過させる。
また、偏光ビームスプリッタ12は、波長405nm、660nm及び780nmのレーザ光が、上記最適な入射角度よりずれて入射された場合にも、良好な反射透過特性を有する。図4(b)及び(c)は、各波長のレーザ光の入射角が設計中心値よりも±7.5°ずれて入射された場合の、偏光ビームスプリッタ12の反射透過特性を示すグラフである。図4(b)及び(c)に示すように、偏光ビームスプリッタ12に入射したレーザ光の入射角度が、設計中心値よりも±7.5°ずれた場合にも、各波長のレーザ光がP偏光出射されたときには全光量透過し、また波長405nmのレーザ光がS偏光出射されたときには全光量反射し、波長660nm及び780nmのレーザ光がS偏光出射されたときには全光量透過する。
このように、偏光ビームスプリッタ12は、入射角に依存することなく、所望の波長のレーザ光を偏光方向によって透過又は反射させることができるため、この偏光ビームスプリッタ12を用いた光学系6は、波長660nm及び780nmのレーザ光を出射するレーザカプラ11にとって最適な光学配置に影響されることなく、独立して波長405nmのレーザ光を出射する1波長レーザダイオード10にとって最適な光学配置を決定することができる。
また、このように入射角依存性の低い偏光ビームスプリッタ12を用いて、波長405nmのレーザ光の光路を他の波長の光学系の光路に合成することができるため、各波長レーザ光のコリメータレンズ14に入射する光軸の最適化や第1、第2の対物レンズ19,20に入射する光軸の最適化等に関する自由度を大きく取ることができ、限られたピックアップベース5内において、容易にコンパクトな光学系を実現することができる。
このような偏光ビームスプリッタ12は、接合面12aに上述したように、入射角依存性の低い特性を備えた偏光分離膜が形成されており、偏光分離膜は高屈折率材料と低屈折率材料とを交互に積層して構成されるとともに、一対の透明部材で挟み込まれた構造になる。低屈折率材料は、SiO2、MgFなどから選ばれ、高屈折率材料は、TiO2、Ta2O5、Nb2O5、ZrO2、HfO2、TiO2−ZrO2、TiO2−Pr2O5、TiO2−La2O3、Al2O3、Y2O3などから選ばれる。
偏光分離膜の膜構成を表1に示す。透明基材の屈折率は約1.52である。
偏光ビームスプリッタ12は、接合面12aに形成される偏光分離膜の各層の層厚を最適化することによって、BD用の波長405nmのレーザ光のみを選択的に偏光分離する偏光ビームスプリッタであってDVD光及びCD光を偏光状態に係わらず透過する偏光ビームスプリッタや、DVD用の波長660nmのレーザ光のみを選択的に偏光分離する偏光ビームスプリッタであってBD光及びCD光を偏光状態に係わらず透過する偏光ビームスプリッタのいずれの特性も実現することが可能となる。
偏光ビームスプリッタ12を透過又は反射された各波長のレーザ光を平行光とするコリメータレンズ14は、レンズホルダ51に支持されるとともに、このレンズホルダ51の両端が、光軸方向に延設された一対のガイド軸52,53に挿通支持されている。またレンズホルダ51は、駆動モータ54のリードスクリュー55に係合されることにより光軸方向に移動可能とされている。そしてコリメータレンズ14は、記録及び/又は再生装置内に装着された光ディスク2のフォーマットに応じて駆動モータ54のリードスクリュー55が回転駆動されることにより、レンズホルダ51が光軸方向に移動され、光ディスク2に発生する球面収差を補正することができる。
このコリメータレンズ14を透過した波長405nmのレーザ光は、ビームスプリッタ13によって第1の対物レンズ19側へ立ち上げられ、また、波長660nm及び780nmのレーザ光はビームスプリッタ13を透過して立ち上げミラー16によって第2の対物レンズ20側へ立ち上げられる。これら各レーザ光は、レーザ光の偏光方向を直線偏光から円偏光へ変換する1/4波長板17と、出射されたレーザの波長に応じて開口数を制限する絞り機能を有する開口フィルタ18を介して第1又は第2の対物レンズ19,20に入射される。第1、第2の対物レンズ19,20は、いずれもレンズ部57と、各波長のレーザ光に応じて、開口数及びそれぞれの光ディスク2のカバー層厚の違いにより発生する球面収差を補正するためのホログラム素子58から構成されている。
また、光ディスク2に反射されたレーザ光は、再度1/4波長板17に入射されることにより、偏光方向が往路光のときより90°回転されて出射される。したがって、戻りのレーザ光は、往路光との干渉が回避され、干渉によるノイズが低減される。
以上のような光学系6では、1波長レーザダイオード10より出射された波長405nmのレーザ光は、グレーティング24によってS偏光出射されることにより偏光ビームスプリッタ12の接合面12aで全光量反射され、BDの球面収差を取り除く所定の焦点距離に設定されたコリメータレンズ14及び所定の開口数に開口制限された第1の対物レンズ19を通って光ディスク2の信号記録面に収束する。また光ディスク2の信号記録面に反射された戻りのレーザ光は、1/4波長板17によってP偏光出射されることにより偏光ビームスプリッタ12を全光量透過し、レーザカプラ11に入射されフォトディテクタ31の受光面に収束される。
また、レーザカプラ11より出射された波長660nm及び780nmのレーザ光は、フラットパッケージ37の上部に設けられたグレーティングによって3ビームに分岐された後、偏光ビームスプリッタ12を全光量透過し、DVD又はCDの球面収差を取り除く所定の焦点距離に設定されたコリメータレンズ14及び所定の開口数に制限された第2の対物レンズ20を通って光ディスク2の信号記録面に収束する。また光ディスク2の信号記録面に反射された戻りのレーザ光は、往路と同一の光路を戻ってレーザカプラ11内に入射され、プリズム35の傾斜端面35aを透過してフォトディテクタ32の受光面に収束される。
このように光ピックアップ装置1の光学系6は、BD専用の第1の対物レンズ19とDVD及びCD用の第2の対物レンズ20とを備えることにより、3つのディスクフォーマットに応じて、各波長のレーザ光を適切な光量にて対応する光ディスク2の信号記録面に光スポットを結ぶ3つの光学倍率を形成した3つの光路を構成する。
また、光ピックアップ装置1は、波長選択性を有し3つの光路を合成又は分岐させる偏光ビームスプリッタ12を備えるため、DVDやCD用に設計された光学系とは独立して、発散又は収束光中においてBDに最適な光学系を配置することができ、コンパクトな3波長対応のピックアップ光学系を構成することができる。さらに、この光学系6は、偏光ビームスプリッタ12を介してDVD及びCD光学系の光路と独立してBD光学系を構成できるため、各波長レーザ光のコリメータレンズ14に入射する光軸の最適化や第1、第2の対物レンズ19,20に入射する光軸の最適化等に関する自由度を大きく取ることができる。したがって、光ピックアップ装置1は、3波長光学系をコンパクトに実現することができるとともに、良好な記録再生特性を実現することができる。
なお、上記光学系6においては、波長405nmのレーザ光のみ選択的に透過または反射させる構成としたが、例えば、偏光ビームスプリッタ12の偏光分離膜の構成によって、波長660nmのレーザ光のみ選択的に透過または反射させるようにしてもよい。
また、本発明が適用された光ピックアップ装置は、光ディスク2に反射された戻りのレーザ光のうち、特定波長の戻り光のみを他の波長の戻り光の光路より分岐させるようにしてもよい。この光ピックアップ装置60の光学系61は、図1に示す光学系6と同様にピックアップベース5内に形成されるものであり、図5に示すように、波長405nm、660nm及び780nmのレーザ光を出射する発光素子と、光ディスク2に反射された波長660nm及び780nmのレーザ光を検出する受光素子とが搭載されたレーザカプラ62と、光ディスク2に反射された波長405nmのレーザ光を検出するフォトディテクタ63と、波長選択性を有する偏光ビームスプリッタ64と、各ディスクフォーマットに応じて最適な往路倍率に変換する補正レンズ65と、球面収差補正を行うコリメータレンズ66と、図示しない立ち上げミラーと、立ち上げミラーによって立ち上げられたレーザ光の偏光方向を直線偏光から円偏光へ変換する3波長対応の1/4波長板67と、各波長のレーザ光を光ディスク2の信号記録面に収束させる対物レンズ68とを有する。
3波長共通の発光素子となるレーザカプラ62は、図6に示すように、表面領域に波長660nmのレーザ光検出用のフォトディテクタ71と波長780nmのレーザ光検出用のフォトディテクタ72とが設けられたシリコンチップ73上に、660nm、780nmの各波長のレーザ光の発光源である2波長レーザダイオード74と、波長405nmのレーザ光の発光源である1波長レーザダイオード75と、プリズム76とが取り付けられたレーザカプラチップ77を、例えばフラットパッケージ78内に収容して構成されている。
2波長レーザダイオード74及び1波長レーザダイオード75は、フォトダイオードチップ79を介してシリコンチップ73に取り付けられている。フォトダイオードチップ79には、2波長レーザダイオード74及び1波長レーザダイオード75の出力を制御する目的で、出射されたレーザ光をモニタする図示しないPINフォトダイオードが形成されている。
2波長レーザダイオード74及び1波長レーザダイオード75から出射した出射光は、プリズム76の傾斜端面76aでほぼ直角に反射され、フラットパッケージ78上面の透明カバーガラスを通して、図5に示すように、偏光ビームスプリッタ64側に出射される。一方、光ディスク2の信号記録面で反射した波長660nm及び780nmの戻り光は、偏光ビームスプリッタ64を透過してフラットパッケージ78内へ入射され、プリズム76の傾斜端面76aを透過したレーザ光がプリズム76内を通ってフォトディテクタ71,72により検出される。フォトディテクタ71,72は、3ビームに分岐された各ビームの光量及びスポット位置より差動プッシュプル信号を生成し、この差動プッシュプル信号によりトラッキングエラー信号を生成する。
また、この光学系61に用いられる波長選択性を有する偏光ビームスプリッタ64は、入射されたレーザ光の波長によって透過又は反射させるものであり、上記偏光ビームスプリッタ12と同様の所定の構成を有する光学薄膜をプリズムの接合面64aに設けることにより形成される。具体的に偏光ビームスプリッタ64は、波長660nmのレーザ光及び波長780nmのレーザ光を偏光状態に係わらず透過し、且つ波長405nmのレーザ光を偏光状態に応じて透過又は反射させる。
すなわち、偏光ビームスプリッタ64は、レーザカプラ62より出射されるとともに図示しないグレーティングによってS偏光とされた波長405nmのレーザ光が、直前に設けられた半波長板80によってP偏光出射されると、補正レンズ65側へ全光量透過させる。また、偏光ビームスプリッタ64は、光ディスク2の信号記録面に反射されるとともに1/4波長板67によってS偏光とされた波長405nmの戻りのレーザ光をフォトディテクタ63側へ全光量反射させる。
また、偏光ビームスプリッタ64は、上記偏光ビームスプリッタ12と同様に、入射角依存性の低い特性を備えた偏光分離膜が形成されており、この偏光分離膜が透明部材で挟み込まれた構造を備える。したがって、各波長のレーザ光の入射角度が設計中心値より±7.5°ずれて入射されたときにも、各波長のレーザ光がP偏光出射されたときには全光量透過し、また波長405nmのレーザ光がS偏光出射されたときには全光量反射し、波長660nm及び780nmのレーザ光がS偏光出射されたときには全光量透過する(図4(a)〜(c)参照)。
このように、入射角依存性の低い偏光ビームスプリッタ64を用いて、所望の波長のレーザ光を偏光方向によって透過又は反射させることができるため、この偏光ビームスプリッタ64を用いた光学系61は、レーザカプラ11にとって最適な光学配置に影響されることなく、独立して波長405nmのレーザ光を検出するフォトディテクタ63にとって最適な光学配置を決定することができる。
すなわち、波長405nmのレーザ光を検出するフォトディテクタ63や、このレーザ光を偏光状態に応じて透過又は反射させる偏光ビームスプリッタ64は、レーザカプラ62やコリメータレンズ66といった他の光学素子の配置とは独立してその光学配置を決定することができ、限られたピックアップベース内において、容易にコンパクトな光学系を実現することができる。
また、波長405nmのレーザ光のみを選択的に、他の波長のレーザ光より光路分岐させてフォトディテクタ63へ入射させることができるため、レーザカプラ62内のフォトディテクタ71,72上の最適位置に最適なスポット径で波長660nm及び780nmのレーザ光を収束させるための位置調整と、フォトディテクタ63上の最適位置に最適なスポット径で波長405nmのレーザ光を収束させるための位置調整に関する自由度を大きくすることができる。
光ディスク2のフォーマットに対応した光学倍率に変換する補正レンズ66は、図示しない移動系に支持されて略光軸方向に移動自在とされている。そして補正レンズ66は、出射されたレーザ光の波長に応じて、最適な光学倍率を有する光学系を構成する位置に移動される。同時に、補正レンズ66は略光軸方向に移動されることにより、コリメータレンズ14に入射するレーザ光の光軸補正を行う。
偏光ビームスプリッタ64及び補正レンズ65を透過した各波長のレーザ光を平行光とするコリメータレンズ66は、図示しない移動系に支持されて光軸方向に移動自在とされている。そしてコリメータレンズ66は、出射されたレーザ光の波長に応じて、球面収差を補正するに最適な位置に移動される。
3波長対応の1/4波長板67は、光ディスク2に向けて透過したレーザ光が光ディスク2に反射されて再度透過されることにより、偏光方向を往路光のときより90°回転させて出射する。具体的に、1/4波長板67は、半波長板80によりP偏光出射された往路光を、復路光のときにはS偏光として出射する。したがって、戻りのレーザ光は、往路光との干渉が回避され、干渉によるノイズが低減される。
以上のような光学系61では、レーザカプラ62よりS偏光出射された各波長のレーザ光は、半波長板80によってP偏光とされ、偏光ビームスプリッタ64を全光量透過する。そして補正レンズ65、コリメータレンズ66及び1/4波長板67を介して対物レンズ68を通り、光ディスク2の信号記録面に収束される。また光ディスク2の信号記録面に反射された波長660nm及び780nmの戻りのレーザ光は、1/4波長板17によってS偏光出射されると偏光ビームスプリッタ12を全光量透過し、レーザカプラ11に入射されフォトディテクタ71又は72に検出される。一方、光ディスク2の信号記録面に反射された波長405nmの戻りのレーザ光は、1/4波長板17によってS偏光出射されると偏光ビームスプリッタ12を全光量反射し、調整レンズ81を介してフォトディテクタ63の受光面に収束される。
このような光学系61においても、波長選択性を有し3つの光路を合成又は分岐させる偏光ビームスプリッタ64を備えるため、DVDやCD用に設計された光学系とは独立して、発散又は収束光中においてBDに最適な光学系を配置することができ、コンパクトな3波長対応のピックアップ光学系を構成することができる。また、この光学系61は、波長405nmのレーザ光のみを選択的に、他の波長のレーザ光より光路分岐させてフォトディテクタ63へ入射させることができるため、レーザカプラ62内のフォトディテクタ71,72上の最適位置に最適なスポット径で波長660nm及び780nmのレーザ光を収束させるための位置調整と、フォトディテクタ63上の最適位置に最適なスポット径で波長405nmのレーザ光を収束させるための位置調整に関する自由度を大きくすることができる。したがって、光ピックアップ装置60は、3波長光学系をコンパクトに実現することができるとともに、良好な記録再生特性を実現することができる。
なお、上記光学系61においては、波長405nmのレーザ光のみ選択的に透過または反射させる構成としたが、例えば、偏光ビームスプリッタ64の偏光分離膜の構成によって、波長660nmのレーザ光のみ選択的に透過または反射させるようにしてもよい。
また、本発明が適用された光ピックアップ装置は、図7に示すように、波長405nmのレーザ光を検出するフォトディテクタを、レーザカプラ内に収容すると共に、フラットパッケージ上に偏光ビームスプリッタを集積配置するようにしてもよい。なお、以下の説明において上記光学系61と同一の部材については同一の符号を付してその詳細を省略する。
この図7に示す光ピックアップ装置82の光学系83は、図1に示す光学系6と同様にピックアップベース内に形成されるものであり、波長405nm、660nm及び780nmのレーザ光を出射する発光素子と、光ディスク2に反射された波長660nm及び780nmのレーザ光を検出する第1の受光素子と、光ディスク2に反射された波長405nmのレーザ光を検出する第2の受光素子と、レーザ光の偏光方向を回転させる半波長板と、波長選択性を有する偏光ビームスプリッタとが集積された光集積素子84と、各ディスクフォーマットに応じて最適な往路倍率に変換する補正レンズ65と、球面収差補正を行うコリメータレンズ66と、図示しない立ち上げミラーと、立ち上げミラーによって立ち上げられたレーザ光の偏光方向を直線偏光から円偏光へ変換する3波長対応の1/4波長板67と、各波長のレーザ光を光ディスク2の信号記録面に収束させる対物レンズ68とを有する。
3波長共通の受発光素子となる光集積素子84は、フラットパッケージ78内に、図6に示すとおり、660nm、780nmの各波長のレーザ光の発光源である2波長レーザダイオード74と、波長405nmのレーザ光の発光源である1波長レーザダイオード75と、660nmのレーザ光検出用のフォトディテクタ71と波長780nmのレーザ光検出用のフォトディテクタ72とが設けられたレーザカプラチップ77と、波長405nmのレーザ光検出用のフォトディテクタ63とが収容されている。また、光集積素子84は、フラットパッケージ84上に、レーザ光の偏光方向を回転させる半波長板及び差動プッシュプル法によりトラッキングエラー信号を生成するための3つのビームに分岐させるグレーティングが集積されている。
さらに、光集積素子84は、最上部に入射されたレーザ光の波長によって透過又は反射させる波長選択性を有する偏光ビームスプリッタ85が集積されている。偏光ビームスプリッタ85は、所定の構成を有する光学薄膜をプリズムの接合面85aに設けることにより、波長660nmのレーザ光及び波長780nmのレーザ光を偏光状態に係わらず透過し、且つ波長405nmのレーザ光を偏光状態に応じて透過又は反射させる。
すなわち、偏光ビームスプリッタ85は、フラットパッケージ78より出射されるとともに半波長板によってP偏光とされた波長405nmのレーザ光を補正レンズ65側へ全光量透過させる。また、偏光ビームスプリッタ85は、光ディスク2の信号記録面に反射されると共に1/4波長板67によってS偏光とされた波長405nmの戻りのレーザ光を全光量反射し、ミラー86を介してフラットパッケージ78内に収容されているフォトディテクタ63へ入射させる。
また、偏光ビームスプリッタ85は、上記偏光ビームスプリッタ12と同様に、入射角依存性の低い特性を備えた偏光分離膜が形成されており、この偏光分離膜が透明部材で挟み込まれた構造を備える。したがって、波長405nmのレーザ光の入射角度が設計中心値より±7.5°ずれて入射されたときにも、各波長のレーザ光がP偏光出射されたときには全光量透過し、また波長405nmのレーザ光がS偏光出射されたときには全光量反射し、波長660nm及び780nmのレーザ光がS偏光出射されたときには全光量透過する(図4(a)〜(c)参照)。
このように、偏光ビームスプリッタ85は、入射角に依存することなく、所望の波長のレーザ光を偏光方向によって透過又は反射させることができるため、この偏光ビームスプリッタ85を用いた光学系83は、レーザカプラチップ77にとって最適な光学配置に影響されることなく、独立して波長405nmのレーザ光を検出するフォトディテクタ63にとって最適な光学配置を決定することができる。
すなわち、波長405nmのレーザ光を検出するフォトディテクタ63や、このレーザ光を偏光状態に応じて透過又は反射させる偏光ビームスプリッタ85は、レーザカプラチップ77やコリメータレンズ66といった他の光学素子の配置とは独立してその光学配置を決定することができ、限られたピックアップベース内において、容易にコンパクトな光学系を実現することができる。
また、波長405nmのレーザ光のみを選択的に、他の波長のレーザ光より光路分岐させてフォトディテクタ63へ入射させることができるため、レーザカプラチップ77のフォトディテクタ71,72上の最適位置に最適なスポット径で波長660nm及び780nmのレーザ光を収束させるための位置調整と、フォトディテクタ63上の最適位置に最適なスポット径で波長405nmのレーザ光を収束させるための位置調整に関する自由度を大きくすることができる。
なお、上記光学系83においては、波長405nmのレーザ光のみ選択的に透過または反射させる構成としたが、例えば、偏光ビームスプリッタ85の偏光分離膜の構成によって、波長660nmのレーザ光のみ選択的に透過または反射させるようにしてもよい。
また、本発明が適用された光ピックアップ装置は、図8に示すように、波長選択性を有する偏光ビームスプリッタを2つ備え、特定波長のレーザ光のみ往路光及び復路光を合成又は分岐させるようにしてもよい。なお、以下の説明において上記光学系6と同一の部材については同一の符号を付してその詳細を省略する。
この光ピックアップ装置90の光学系91は、図1及び図2に示す光学系6と同様にピックアップベース5内に形成されるものであり、図8に示すように、BDに対応した波長405nmのレーザ光のレーザ光を出射する1波長レーザダイオード10と、CDに対応した波長780nmのレーザ光及びDVDに対応した波長660nmの受発光素子が搭載されたレーザカプラ92と、BDに対応した波長405nmのレーザ光を検出するフォトディテクタ93と、波長選択性を有する第1、第2の偏光ビームスプリッタ94,95と、レーザ光の光軸方向に移動可能に支持されたコリメータレンズ14と、コリメータレンズ14を透過した波長405nmのレーザ光を光ディスク2側へ立ち上げると共に波長660nm及び780nmのレーザ光を透過させるビームスプリッタ13と、コリメータレンズ14を透過した波長660nm及び780nmのレーザ光を光ディスク2側へ立ち上げる立ち上げミラー16と、ビームスプリッタ13及び立ち上げミラー16によって立ち上げられたレーザ光の偏光方向を直線偏光から円偏光へ変換する1/4波長板17と、出射されたレーザの波長に応じて開口数を制限する絞り機能を有する開口フィルタ18と、波長405nmのレーザ光を光ディスク2の信号記録面に収束させる第1の対物レンズ19と、波長660nm及び780nmのレーザ光を光ディスク2の信号記録面に収束させる第2の対物レンズ20とを有する。
1波長レーザダイオード10は、発光部からはBDに対応した波長405nmのレーザ光が第1の偏光ビームスプリッタ12に向かって出射する。1波長レーザダイオード10と第1の偏光ビームスプリッタ94との間には、波長405nmのレーザ光に対する半波長板機能を兼ね備えたグレーティング24が設けられ、1波長レーザダイオード10から出射されたレーザ光は、このグレーティング24により、偏光方向を第1の偏光ビームスプリッタ12に対してほぼS偏光となるように回転されるとともに、差動プッシュプル法によりトラッキングエラー信号を生成するための3つのビームに分岐された後、第1の偏光ビームスプリッタ94に入射される。
レーザカプラ92は、図9に示すように、表面領域に光検出用のフォトディテクタ101,102が設けられたシリコンチップ103上に、波長660nmのレーザ光及び波長780nmのレーザ光の発光源である2波長レーザダイオード104とプリズム105が取り付けられたレーザカプラチップ106を、例えば、フラットパッケージ107内に収容して構成されている。
2波長レーザダイオード104は、通常、表面領域にPINフォトダイオード108が設けられたフォトダイオードチップ109を介してシリコンチップ103に取り付けられる。このフォトダイオードチップ109に設けられたPINフォトダイオード108は、2波長レーザダイオード104の出力を制御する目的で、その2波長レーザダイオード104の後面から出射するレーザ光をモニターする。
2波長レーザダイオード104の前面から出射した出射光は、プリズム105の傾斜端面105aでほぼ直角に反射され、フラットパッケージ107上面の透明カバーガラスを通して、図8に示すように、第1又は第2の偏光ビームスプリッタ94,95側に出射される。一方、光ディスク2の信号記録面で反射した戻り光は、光ディスク2とフラットパッケージ107との間を同一経路で進んでフラットパッケージ107内へ入射され、プリズム105の傾斜端面105aを透過したレーザ光がプリズム105内を通ってフォトディテクタ101,102により検出される。
また、この光学系91に用いられる波長選択性を有する第1及び第2の偏光ビームスプリッタ94,95は、入射されたレーザ光の波長によって透過又は反射させるものであり、例えば所定の構成を有する光学薄膜をプリズムの接合面94a,95aに設けることにより形成される。これにより第1、第2の偏光ビームスプリッタ94,95は、波長660nmのレーザ光及び波長780nmのレーザ光を偏光状態に係わらず透過し、且つ波長405nmのレーザ光を偏光状態に応じて透過又は反射させる。
すなわち、第1の偏光ビームスプリッタ94は、1波長レーザダイオード10より出射されるとともに、グレーティング24によってS偏光とされた波長405nmのレーザ光の入射角度が設計中心値のとき、図4(a)に示すように、接合面94aによってコリメータレンズ14側へ全光量反射させる。また、第1の偏光ビームスプリッタ94は、光ディスク2の信号記録面に反射されるとともに1/4波長板17によってP偏光とされた波長405nmの戻りのレーザ光の入射角度が設計中心値のとき、第2の偏光ビームスプリッタ95側へ全光量透過させる。
また、第2の偏光ビームスプリッタ95は、第1の偏光ビームスプリッタ95側に半波長板96が設けられている。したがって、第1の偏光ビームスプリッタ94を透過したP偏光とされた波長405nmの戻りのレーザ光は、再度S偏光とされて第2の偏光ビームスプリッタ95へ入射される。第2の偏光ビームスプリッタ95は、S偏光とされた波長405nmのレーザ光の入射角度が設計中心値のとき、上記第1の偏光ビームスプリッタ94と同様に図4(a)に示すように、接合面95aによってフォトディテクタ93側へ全光量反射させる。接合面95aによって反射された戻り光は、調整レンズ97、ミラー98を介してフォトディテクタ93の受光面へ入射される。
なお、これら第1、第2の偏光ビームスプリッタ94,95は、プリズムの接合面94a,95aに、上記偏光ビームスプリッタ12と同様に入射角依存性の低い特性を備えた偏光分離膜が形成されているため、波長405nm、660nm及び780nmのレーザ光が、設計中心値よりも±7.5°ずれて入射された場合にも、良好な反射透過特性を有する(図4(b)及び(c)参照)。
以上のような光学系91では、1波長レーザダイオード10より出射された波長405nmのレーザ光は、グレーティング24によってS偏光出射されることにより第1の偏光ビームスプリッタ94の接合面94aで全光量反射され、BDの球面収差を取り除く所定の焦点距離に設定されたコリメータレンズ14及び所定の開口数に開口制限された対物レンズ19を通って光ディスク2の信号記録面に収束する。また光ディスク2の信号記録面に反射された戻りのレーザ光は、1/4波長板17によってP偏光出射されることにより第1の偏光ビームスプリッタ94を全光量透過し、次いで、第2の偏光ビームスプリッタ95の直前に設けられた半波長板96によってS偏光出射されることにより第2の偏光ビームスプリッタ95の接合面95aで全光量反射されてフォトディテクタ93の受光面に収束する。
また、レーザカプラ92より出射された波長660nm及び780nmのレーザ光は、フラットパッケージ107の上部に設けられたグレーティングによって3ビームに分岐された後、第2の偏光ビームスプリッタ95、半波長板96及び第1の偏光ビームスプリッタ94を全光量透過し、DVD又はCDの球面収差を取り除く所定の焦点距離に設定されたコリメータレンズ14及び所定の開口数に制限された対物レンズ20を通って光ディスク2の信号記録面に収束する。また光ディスク2の信号記録面に反射された戻りのレーザ光は、往路と同一の光路を戻ってレーザカプラ92内に入射され、プリズム105の傾斜端面105aを透過してフォトディテクタ101,102に収束する。
このように、入射角依存性の低い第1、第2の偏光ビームスプリッタ94,95を用いて、所望の波長のレーザ光を偏光方向によって透過又は反射させることができるため、この第1、第2の偏光ビームスプリッタ94,95を用いた光学系91は、波長660nm及び780nmのレーザ光の光路に波長405nmのレーザ光の光路を合成又は分岐させることができ、限られたピックアップベース内において、容易にコンパクトな光学系を実現することができる。
また、光学系91は、第1、第2の偏光ビームスプリッタ94,95を介して、BD光学系をDVD及びCD光学系とは独立して構成することができるため、各波長レーザ光のコリメータレンズ14に入射する光軸の最適化や第1、第2の対物レンズ19,20に入射する光軸の最適化、フォトディテクタ71,72,93の各受光面の最適位置にレーザスポットを収束させるための位置調整、あるいは光ディスク2のフォーマットに応じた波長毎の倍率変換等に関する自由度を大きく取ることができる。したがって、光ピックアップ装置90は、3波長光学系をコンパクトに実現することができるとともに、良好な記録再生特性を実現することができる。
なお、上記光学系91においては、波長405nmのレーザ光のみ選択的に透過または反射させる構成としたが、例えば、第1、第2の偏光ビームスプリッタ94,95の偏光分離膜の構成によって、波長660nmのレーザ光のみ選択的に透過または反射させるようにしてもよい。
また、本発明が適用された光ピックアップ装置は、上記光ピックアップ装置90のように2つの対物レンズを用いる以外にも、例えば図10及び図11に示すように、BD、DVD及びCDの3波長共通の対物レンズを設けてもよい。なお、以下の説明において図8に示す光ピックアップ装置90の光学系91と同一の部材については同一の符号を付してその詳細を省略する。
図10及び図11に示す光ピックアップ装置110の光学系111においては、上記光学系91の第1、第2の対物レンズ19,20に代えて、波長405nm、660nm及び780nmのレーザ光を光ディスク2の信号記録面に収束させる3波長共通の対物レンズ113と、コリメータレンズ14を透過した各波長のレーザ光を対物レンズ113側に立ち上げる立ち上げミラー114と、立ち上げミラー16と対物レンズ113との間に設けられレーザ光の偏光方向を直線偏光から円偏光へ変換する1/4波長板115と、出射されたレーザの波長に応じて開口数を制限する絞り機能を有する開口フィルタ116とを備える。
対物レンズ113は、レンズ部118と、各波長のレーザ光に応じて、開口数及びそれぞれの光ディスク2のカバー層厚の違いにより発生する球面収差を補正するためのホログラム素子119から構成されている。
また、光ディスク2に反射されたレーザ光は、再度1/4波長板115に入射されることにより、偏光方向が往路光のときより90°回転されて出射される。したがって、戻りのレーザ光は、往路光との干渉が回避され、干渉によるノイズが低減される。
この光学系111は、レーザカプラ92及び1波長レーザダイオード10より出射されたレーザ光のコリメータレンズ14までの往路光学系、及び光ディスク2に反射されコリメータレンズ14を透過した戻りのレーザ光のフォトディテクタ101,102,93までの復路光学系は、上記光学系91と同様である。
光学系111の往路において、コリメータレンズ14を透過した各波長のレーザ光は、立ち上げミラー114によって対物レンズ113側へ立ち上げられ、1/4波長板115を透過することによって偏光方向を直線偏光から円偏光へ変換される。そして、出射されたレーザの波長に応じて開口数を制限する開口フィルタを介して対物レンズ113へ入射し、光ディスク2の信号記録面に収束される。
また、光学系111の復路において、光ディスク2の信号記録面に反射された戻りのレーザ光は、対物レンズ113、開口フィルタ116を透過し、再度1/4波長板115に入射されることにより、偏光方向が往路光のときより90°回転されてP偏光出射される。次いで立ち上げミラー114によりコリメータレンズ14側へ反射される。
そして、この光学系111においても、第1、第2の偏光ビームスプリッタ94,95を用いることにより、波長660nm及び780nmのレーザ光の光路に波長405nmのレーザ光の光路を合成又は分岐させることができ、限られたピックアップベース内において、容易にコンパクトな光学系を実現することができる。
また、光学系111は、第1、第2の偏光ビームスプリッタ94,95を介して、BD光学系をDVD及びCD光学系とは独立して構成することができるため、各波長レーザ光のコリメータレンズ14に入射する光軸の最適化や対物レンズ113に入射する光軸の最適化、フォトディテクタ71,72,93の各受光面の最適位置にレーザスポットを収束させるための位置調整、あるいは光ディスク2のフォーマットに応じた波長毎の倍率変換等に関する自由度を大きく取ることができる。したがって、光ピックアップ装置110は、3波長光学系をコンパクトに実現することができるとともに、良好な記録再生特性を実現することができる。
また、本発明が適用された光ピックアップ装置は、例えば図12に示すように、特定波長のレーザ光のみを偏光状態に応じて透過又は分離させる偏光ビームスプリッタを2種類用いた光学系としてもよい。なお、以下の説明において、図1に示す光ピックアップ装置1の光学系6又は図8に示す光ピックアップ装置90の光学系91と同一の部材については同一の符号を付してその詳細を省略する。
図12に示す光ピックアップ装置120の光学系121は、この光ピックアップ装置120の光学系121は、図1に示す光学系6と同様にピックアップベース5内に形成されるものであり、波長405nmのレーザ光を出射する1波長レーザダイオード10と、波長660nm及び780nmのレーザ光を出射右する2波長レーザダイオード及び光ディスク2に反射された波長780nmの戻りのレーザ光を検出するフォトディテクタとが搭載されたレーザカプラ122と、光ディスク2に反射された波長405nmの戻りのレーザ光を検出する第1のフォトディテクタ123と、光ディスク2に反射された波長660nmの戻りのレーザ光を検出する第2のフォトディテクタ124と、波長405nmのレーザ光に対してのみ透過反射特性を有する第1の偏光ビームスプリッタ125と、波長660nmのレーザ光に対してのみ透過反射特性を有する第2の偏光ビームスプリッタ126と、レーザ光の光軸方向に移動可能に支持されたコリメータレンズ14と、コリメータレンズ14を透過した波長405nmのレーザ光を光ディスク2側へ立ち上げると共に波長660nm及び780nmのレーザ光を透過させるビームスプリッタ13と、コリメータレンズ14を透過した波長660nm及び780nmのレーザ光を光ディスク2側へ立ち上げる立ち上げミラー16と、ビームスプリッタ13及び立ち上げミラー16によって立ち上げられたレーザ光の偏光方向を直線偏光から円偏光へ変換する図示しない1/4波長板と、出射されたレーザの波長に応じて開口数を制限する絞り機能を有する図示しない開口フィルタと、波長405nmのレーザ光を光ディスク2の信号記録面に収束させる第1の対物レンズ19と、波長660nm及び780nmのレーザ光を光ディスク2の信号記録面に収束させる第2の対物レンズ20とを有する。
レーザカプラ122は、上述したレーザカプラ11と略同様に、波長660nm及び780nmのレーザ光を出射する2波長レーザダイオードと、波長780nmのレーザ光を検出するフォトディテクタとが設けられたレーザカプラチップがフラットパッケージに搭載されることにより形成されている。またこのパッケージ上部にはレーザ光を差動プッシュプル法によりトラッキングエラー信号を生成するための3つのビームに分岐するグレーティングが形成されている。
波長405nmのレーザ光に対してのみ透過反射特性を有する第1の偏光ビームスプリッタ125は、例えば所定の構成を有する光学薄膜をプリズムの接合面125aに設けることにより形成される。具体的に第1の偏光ビームスプリッタ125は、波長660nmのレーザ光及び波長780nmのレーザ光を偏光状態に係わらず透過し、且つ波長405nmのレーザ光を偏光状態に応じて透過又は反射させる。また、第1の偏光ビームスプリッタ125は、1波長レーザダイオード10より出射された波長405nmのレーザ光を他の波長の光路に合成させる光路合成用偏光ビームスプリッタ128と、光ディスク2に反射された波長405nmの戻りのレーザ光を他の波長の光路より分岐させる光路分岐用偏光ビームスプリッタ129の2つを光路上に設けられている。
これら第1の偏光ビームスプリッタ125は、いずれも接合面に上記偏光ビームスプリッタ12と同様に入射角依存性の低い特性を備えた偏光分離膜が形成されているため、各波長のレーザ光の入射角度が設計中心値より±7.5°ずれて入射されたときにも、各波長のレーザ光がP偏光出射されたときには全光量透過し、また波長405nmのレーザ光がS偏光出射されたときには全光量反射し、波長660nm及び780nmのレーザ光がS偏光出射されたときには全光量透過する(図4(a)〜(c)参照)。
波長660nmのレーザ光に対してのみ透過反射特性を有する第2の偏光ビームスプリッタ126も、上記偏光ビームスプリッタ12と同様に所定の構成を有する光学薄膜をプリズムの接合面126aに設けることにより形成される。具体的に第2の偏光ビームスプリッタ126は、波長405nmのレーザ光及び波長780nmのレーザ光を偏光状態に係わらず透過し、且つ波長660nmのレーザ光を偏光状態に応じて透過又は反射させる。そして、第2の偏光ビームスプリッタ126は、第1の偏光ビームスプリッタ125の光路合成用偏光ビームスプリッタ128と光路分岐用偏光ビームスプリッタ129との間に設けられ、レーザカプラ122より出射された波長660nmのレーザ光をコリメータレンズ14側へ透過させ、また光ディスク2より反射された戻りの波長660nmのレーザ光を波長780nmのレーザ光の光路から分岐させる。
また、第2の偏光ビームスプリッタ126は、接合面に入射角依存性の低い特性を備えた偏光分離膜が形成されているため、図13(a)〜(c)に示すように、各波長のレーザ光の入射角度が設計中心値の場合のみならず、各波長のレーザ光の入射角度が設計中心値より±7.5°ずれて入射されたときにも、各波長のレーザ光がP偏光出射されたときには全光量透過し、また660nmのレーザ光がP偏光出射されたときには全光量透過し、また波長660nmのレーザ光がS偏光出射されたときには全光量反射する。
なお、第2の偏光ビームスプリッタ126は、光路合成用偏光ビームスプリッタ128側に半波長板130が設けられている。この半波長板130は、光路合成用偏光ビームスプリッタ128を反射した波長405nmのレーザ光の偏光状態をS偏光からP偏光へ変換することにより、光路分岐用偏光ビームスプリッタ129を透過可能とする。
以上のような光学系121は、1波長レーザダイオード10よりS偏光出射された波長405nmのレーザ光は、光路合成用偏光ビームスプリッタ128を第2の偏光ビームスプリッタ126側へ全光量反射され、半波長板130によってP偏光に変換される。P偏光出射された波長405nmのレーザ光は、第2の偏光ビームスプリッタ126、光路分岐用偏光ビームスプリッタ129及びコリメータレンズ14を透過し、ビームスプリッタ13によって第1の対物レンズ19へ立ち上げられて光ディスク2に収束される。また光ディスク2に反射された戻りのレーザ光は、1/4波長板を再度透過することによりS偏光出射されるため、光路分岐用偏光ビームスプリッタ129を第1のフォトディテクタ123側に全光量反射される。そして波長405nmのレーザ光は、マルチレンズ131によって第1のフォトディテクタ123の受光面に収束される。
またレーザカプラ122より出射された波長660nmのレーザ光は、半波長板の機能を有するグレーティングによりS偏光出射され、光路合成用偏光ビームスプリッタ128に全光量透過され、半波長板130によりP偏光に変換される。P偏光出射された波長660nmのレーザ光は、第2の偏光ビームスプリッタ126、光路分岐用偏光ビームスプリッタ129、コリメータレンズ14及びビームスプリッタ13を透過し、立ち上げミラー16によって第2の対物レンズ20へ立ち上げられて光ディスク2に収束される。また光ディスク2に反射された戻りのレーザ光は、1/4波長板を再度透過することによりS偏光出射されるため、第2の偏光ビームスプリッタ126を第2のフォトディテクタ124側へ全光量反射される。そして波長660nmのレーザ光は、マルチレンズ132によって第2のフォトディテクタ124の受光面に収束される。
また、レーザカプラ122より出射された波長780nmのレーザ光は、光路合成用偏光ビームスプリッタ128、第2の偏光ビームスプリッタ126、光路分岐用偏光ビームスプリッタ129、コリメータレンズ14及びビームスプリッタ13を透過し、立ち上げミラー16によって第2の対物レンズ20へ立ち上げられて光ディスク2に収束される。また光ディスク2に反射された戻りのレーザ光は、往路と同一の経路を戻ってレーザカプラ122に入射され、フラットパッケージ内に搭載されたレーザカプラチップ上のフォトディテクタに検出される。
このように、光ピックアップ装置120の光学系121においては、入射角依存性の低い第1の偏光ビームスプリッタを用いて波長405nmのレーザ光を他の波長のレーザ光の光路に合成又は分岐させるとともに、入射角依存性の低い第2の偏光ビームスプリッタを用いて波長660nmのレーザ光を他の波長のレーザ光の光路から分岐させることができるため、限られたピックアップベース内において、容易にコンパクトな光学系を実現することができる。
また、光学系121は、第1、第2の偏光ビームスプリッタ125,126によって、BD光学系及びDVD光学系をそれぞれ他の光学系とは独立して構成することができるため、各波長レーザ光のコリメータレンズ14に入射する光軸の最適化や第1、第2の対物レンズ19,20に入射する光軸の最適化、第1、第2のフォトディテクタ123,124及びレーザカプラ122内のフォトディテクタの各受光面の最適位置にレーザスポットを収束させるための位置調整、あるいは光ディスク2のフォーマットに応じた波長毎の倍率変換等に関する自由度を大きく取ることができる。したがって、光ピックアップ装置120は、3波長光学系をコンパクトに実現することができるとともに、良好な記録再生特性を実現することができる。
なお、上記光学系121においては、波長405nmのレーザ光のみ選択的に透過または反射させる第1の偏光ビームスプリッタ125を、光路合成用及び、光路分岐用の2つ備える構成としたが、例えば、波長660nmのレーザ光のみ選択的に透過または反射させる第2の偏光ビームスプリッタ126を、光路合成用及び、光路分岐用の2つ備える構成としてもよい。
1 光ピックアップ装置、2 光ディスク、6 光学系、10 1波長レーザダイオード、11 レーザカプラ、12 第1の偏光ビームスプリッタ、13 第2の偏光ビームスプリッタ、14 コリメータレンズ、15 半波長板、16 立ち上げミラー、17 1/4波長板、20 対物レンズ、21 フォトディテクタ、24 グレーティング