JP4404283B2 - ネジ付き缶 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ネジキャップを冠着させるための口頸部を備えたネジ付き缶に関し、特に、合成樹脂被膜で被覆されたアルミニウム合金板や表面処理鋼板等の金属薄板により一体成形された口頸部の上端開口縁に沿って外巻きのカール部が形成されているネジ付き缶に関する。
【0002】
【従来の技術】
飲料缶詰の缶容器をリシール可能なものとするために、缶にネジ付きの口頸部を設け、該口頸部にネジキャップを着脱可能に冠着させることで、口頸部の上端開口部をネジキャップにより密閉するようにした、所謂ネジ付き缶というものが従来から提案されており、そのようなネジ付き缶において、アルミニウム合金板や表面処理鋼板等の金属薄板により一体成形される口頸部として、キャップのネジ部と螺合するネジ部が周面に形成された口頸部の上端に、開口縁に沿って内巻き又は外巻きのカール部を形成したような構造が従来から公知となっている。
【0003】
すなわち、例えば、特表平10−509095号公報中には、底部と胴部が一体成形された缶体に対して口頸部が形成された上蓋を胴部上端開口部に巻締め固着したタイプや、底部と胴部が一体成形された缶体の胴部上部を絞って口頸部を形成したタイプや、口頸部と肩部と胴部が一体成形された缶体の胴部下端開口部に底蓋を巻締め固着したタイプ等の様々なタイプのボトル形状の缶について、また、特開平1−210136号公報中には、底部と胴部が一体成形された缶体の胴部上端部をネックイン加工して口頸部とした広口タイプの缶について、何れも、口頸部の上端開口縁に沿って内巻き又は外巻きのカール部を形成した構造がそれぞれ開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のようにカール部やネジ部が形成された口頸部を有するネジ付き缶では、カール部やネジ部が形成された後の口頸部に対して、その内面側或いは内外両面に保護被膜となる合成樹脂被膜を後塗装しても、既にカール部やネジ部が形成された部分に対して均一に合成樹脂被膜を形成することは困難であることから、合成樹脂被膜で被覆されたアルミニウム合金板や表面処理鋼板等の金属薄板を材料として、この被覆金属薄板から口頸部を成形しカール部やネジ部を成形することが必要となる。
【0005】
また、口頸部の上端にカール部が形成されたネジ付き缶では、カール部が内巻きであると、消費者が缶を開けて中身の飲料を飲用するときに、カール部により飲料の流れが阻害されてスムーズに注出し難くなり、また、中身を飲み残してキャップで再密閉するときに、カール部に飲料が付着したまま残って不衛生な状態となり、更には、カール部の切断端部(金属板の切断端面)が缶の内部に位置することで、カール部の切断端部に対しても特に塗膜処理を施さないと、缶内に充填された飲料によりカール部の切断端部に腐食の起きるような虞もあることから、口頸部の上端に形成されるカール部は外巻きとしておくことが望ましい。
【0006】
しかしながら、合成樹脂被膜で被覆されたアルミニウム合金板や表面処理鋼板等の金属薄板により一体成形された口頸部では、カール部を形成するより前の工程で、未開口の口頸部の先端部分を切断して開口させる際に、金属薄板に被覆されている合成樹脂被膜がきれいに切断されず、合成樹脂被膜の一部が切断端部で毛羽立ったり剥がれたりするようなことがある。
【0007】
そのため、口頸部の上端のカール部を外巻きに形成した場合には、合成樹脂被膜がきれいに切断されていない切断端部がカール部の下端で外側から見えて見苦しくなることがあり、また、切断端部で合成樹脂被膜が綺麗な状態に切断されたとしても、切断端部で露出した金属面に錆や腐食が生じたりすると、やはりそれが外側から見苦しく見えることで、何れの場合も缶の外観が悪くなるという問題がある。
【0008】
一方、そのような外観上の問題とは別に、口頸部の上端にカール部が形成されたネジ付き缶では、その口頸部にキャップを装着する場合、通常、キャップを口頸部に被せて上から押さえ付けながらキャップの側壁を口頸部のネジ部にロールで半径方向に押し付けて変形させることでキャップにネジ部を成形しながら装着させる方式や、ネジ付きキャップとネジ付き缶を相対的に回転させて装着する方式や、ネジ付きキャップをネジ付き缶の口頸部に被せて上から強制的に押し込む打栓方式等が採用されている。
【0009】
そのため、何れかの方式により缶の口頸部に対してキャップを装着する際に、最大で1275〜1373N程度の垂直荷重が上方から口頸部に加えられることとなるが、口頸部上端のカール部を外巻きとした場合には、カール部のリング外径がネジ形成部分よりも半径方向外方に突出すると、キャップのネジ部とカール部が干渉してキャップを着脱自在に螺着させることができないため、カール部からネジ形成部分に続く部分をネジ形成部分から半径方向内方に延びる傾斜壁とする必要があり、それによって、金属薄板により形成されている口頸部に対してキャップを装着する際に、上方から口頸部上端のカール部に作用する大きな垂直荷重が、その下方の傾斜壁を内側に折り曲げる力として働くことで、傾斜壁の部分が座屈を起こし易くなる。
【0010】
これに対して、金属薄板の板厚に対するカール幅の大きさやカール部下方の傾斜壁の角度を工夫することで、上方からの垂直荷重に対する口頸部の必要強度を一応は得ることができるものの、上方からの垂直荷重に対して余裕を持った状態となるように口頸部の強度を更に高めようとした場合、カール部の下方の傾斜壁を更に座屈が起こり難い形状として補強しても、それにより却ってカール部に荷重が集中することでカール部自体が変形してしまうという問題が起きる。
【0011】
本発明は、上記のような問題の解消を課題とするものであり、具体的には、合成樹脂被膜で被覆された金属薄板により口頸部が一体成形されるネジ付き缶について、外巻きのカール部の切断端部が外側から見えることで外観が悪くなるということを回避できるようにすると共に、上方からの垂直荷重に対する口頸部の全体的な強度を更に高められるようにすることを課題とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記のような課題を解決するために、合成樹脂被膜で被覆された金属薄板からの成形によって、少なくとも、上端開口縁に沿ってリング状に形成される外巻きのカール部と、該カール部から下方且つ外方に延びる傾斜壁と、該傾斜壁から下方に延びるネジ形成部分とを備えた口頸部が一体成形されているネジ付き缶において、カール部から下方の傾斜壁を、その下方のネジ形成部分との間の屈曲部分の曲率半径が1.5〜2.5mmで、水平面に対する傾斜角度が40〜50°となるように形成すると共に、傾斜壁の上端から外方に屈曲したカール部を、カール部の下端を屈曲部分として傾斜壁に近接させて、カール部の切断端部をカール部の内部に巻き込むように形成することを特徴とするものである。
【0013】
上記のようなネジ付き缶によれば、口頸部上端のカール部が外巻きに形成されていても、カール部の下端が屈曲部分となるように、カール部の切断端部がカール部の内部に巻き込まれていることによって、カール部の切断端部が見苦しい状態となっていても、それが外側から見えるようなことはなく、それによって缶の外観を悪化させるようなことはない。
【0014】
また、上記のようなカール部の構造では、カール部がその幅方向で少なくとも部分的に三重壁となっていて、カール部の縦断面が単なる円形のものと比べて、カール部自体が補強されているため、カール部の下方の傾斜壁を座屈を起し難いような形状にして補強することで、キャップの装着時に上方から加えられる垂直荷重がカール部に集中しても、カール部自体が変形することはなく、その結果、上方からの垂直荷重に対する口頸部の全体的な強度をより一層高めることが可能となる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のネジ付き缶の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、図1は、本発明のネジ付き缶の一実施形態に係るボトルタイプのネジ付き缶の全体を示し、図2は、図1に示したネジ付き缶の缶胴に巻締め固着される前の状態の缶蓋を示し、図3(A)〜(F)は、図2に示した缶蓋の口頸部の成形工程を概略的に示し、図4は、本発明のネジ付き缶における口頸部上端のカール部の断面構造を示し、図5は、比較例のネジ付き缶における口頸部上端のカール部の断面構造を示し、図6は、本発明のネジ付き缶の他の実施形態に係る各タイプの缶体(A)(B)(C)をそれぞれ示すものである。
【0016】
本実施形態のネジ付き缶1は、3ピース缶(3部品から構成されている缶)によるボトルタイプの缶体であって、図1に示すように、円筒体の上下両方の開口端部にそれぞれネック&フランジ加工が施された缶胴3に対して、その上端開口部に、内容液の注出口を備えた缶蓋2が二重巻締めにより固着され、その下端開口部に、閉鎖用の底蓋4が二重巻締めにより固着されていて、缶蓋2には、内容液の注出口となる小径の口頸部5が一体的に成形されている。
【0017】
そのようなネジ付き缶1において、缶胴3は、一方の面に合成樹脂被膜を施し他方の面に標章等の印刷模様を施した表面処理鋼板の長方形のブランクを材料として、印刷模様が外側になるようにブランクを丸めてその両端部の重ね合わせ部を従来の電気抵抗溶接方法によりシーム溶接し、溶接した継ぎ目に保護塗装を施して円筒体に形成してから、ネック&フランジ加工により両開口端部にネックイン部と水平フランジ部を形成したものである。
【0018】
缶胴3の下端開口部を閉鎖する底蓋4は、アルミニウム合金板や表面処理鋼板の両面に合成樹脂被膜を施した金属薄板を材料として、外周縁にフランジ部が形成されるようにプレス加工で一体成形したものであって、缶胴3との巻締め部分となるフランジ部には、合成樹脂とゴムとからなるシーリングコンパウンドを密封のために塗布している。なお、缶胴3と底蓋4の内面側に被覆される合成樹脂被膜を厚いものにすれば、合成樹脂とゴムとからなるシーリングコンパウンドをフランジ部に施さない底蓋を使用しても、缶胴3と底蓋4の巻締め部分での密封には差し支えない。
【0019】
缶胴3の上端開口部に巻締め固着される缶蓋2は、アルミニウム合金板や表面処理鋼板の片面(缶の内面となる面)或いは両面に熱可塑性樹脂フィルムのラミネートによる合成樹脂被膜を施した金属薄板を材料として、複数工程の絞り加工により上端を塞がれた口頸部を有する基本形状に一体成形してから、図3(A)〜(F)に示すような成形工程によって、口頸部の上端を開口させてその周壁にカールやネジ等を成形したものである。
【0020】
なお、缶蓋2の材料となる金属薄板における熱可塑性樹脂フィルムのラミネートの仕方としては、熱可塑性樹脂フィルムを金属薄板の金属面に直接熱接着させる方法の他に、接着性プライマー層又は硬化型の接着剤層若しくは熱接着性の良好な熱可塑性樹脂層を介して熱可塑性樹脂フィルムを金属薄板の金属面に熱接着する方法がある。
【0021】
缶胴3に巻締められる前の缶蓋2は、図2に示すように、缶蓋2の外周縁部に、缶胴3との巻締め部分となるフランジ部8が形成され、フランジ部8の内側に、缶蓋2と缶胴3のフランジ部同士を二重巻締めするときに二重巻締め装置のチャックが嵌入するためのカウンターシンク部7が縦断面略V字状で環状に形成され、カウンターシンク部7から内側上方に肩部6が形成されていて、注出口となる略円筒状の口頸部5が、肩部6の中央部分から上方に立設されているものである。
【0022】
なお、図示していないが、外周端縁をカールさせたフランジ部8の下面側には、通常は、合成樹脂とゴムとからなるシーリングコンパウンドが密封のために塗布されることとなるが、上記の缶胴3と底蓋4の巻締め部分での密封の場合と同様に、缶蓋2と缶胴3の内面側の合成樹脂被膜を厚いものにすれば、合成樹脂とゴムとからなるシーリングコンパウンドをフランジ部8に施さなくても、缶蓋2と缶胴3の巻締め部分での密封には差し支えない。
【0023】
缶蓋2の注出口となる口頸部5には、その上端開口縁に沿って、上方から見た全体の形状がリング状となるように外巻きのカール部11が形成されており、カール部11の下方に、径方向外方に向う傾斜壁12が形成され、傾斜壁12の下方に、キャップのネジ部と螺合するためのネジを形成したネジ形成部分13が設けられている。ネジ形成部分13に形成されるネジの形状については、特に限定されるものではなく、ネジ形成部分13の円筒状の基部を巻回する凸部や凹部からなるネジや、不連続に形成された凸条や凹溝からなるネジであっても良く、また、一条ネジ或いは二条ネジの何れでも良い。
【0024】
ネジ形成部分13の下方には環状のビード部14が形成され、ビード部14の略円筒状の外周面は、上方に向かって僅かに窄むように傾斜して円筒面に近似したテーパー面となっていて、ビード部14の下端は内方への段部を介して小径円筒部15に続き、小径円筒部15の下端は外方への段部を介して肩部6の上端に続いている。
【0025】
なお、ビード部14の下端とそれに続く小径円筒部15は、キャッパーにより金属製のキャップを口頸部に装着する際に、小径円筒部15にキャップ装着装置(キャッパー)のローラーが入り込み、キャップの下端壁をビード部14の下端の段部に押し付けて変形させることで、口頸部5にキャップをピルファープルーフの状態で係止させるためのものである。
【0026】
上記のような構造に口頸部5を成形するための工程について、図3(A)〜(F)により以下に説明すると、先ず、図示していないが、合成樹脂被膜で被覆された金属薄板をカップにプレス成形し、次に、該カップに再絞り加工を施して外周縁部に水平なフランジ部を備えたフランジ付きカップに成形し、該フランジ付きカップを徐々に絞り加工することで、図3(A)に示すような、上端小径部を端壁17で塞がれた未成形の口頸部5,肩部6,カウンターシンク部7,および水平なフランジ部8を備えた缶蓋を一体成形する。
【0027】
そして、図3(A)に示した口頸部5が未成形の缶蓋について、図3(B)に示すように、先ず未開口の口頸部5の端壁17を切断して除去することで、口頸部5の上端小径部を開口させると共に、金属薄板の結晶方向等で伸び方が異なって円形でないフランジ部8を所定の円形に打ち抜いてトリミングしてから、図3(C)に示すように、口頸部5の上端開口縁を僅かに外方にプレカールさせると共に、フランジ部8の外周端縁を下向きにカールさせる。
【0028】
次いで、口頸部5の上端小径部の下方に形成された傾斜壁12を所定の形状に維持するための金型を口頸部5の内側に挿入した状態で、上方からカール成形パンチを押し下げることにより、図3(D)に示すように、口頸部5の上端開口縁に外巻きのカール部11を成形すると共に、カール部11から下方に続く傾斜壁12を所定の形状に維持する。
【0029】
この口頸部5の上端に形成される外巻きのカール部11について、本実施形態のネジ付き缶1では、図5に示すようなカール幅の縦断面が略円形の通常のカール部に形成するのではなく、図4に示すように、カール部11の下端が屈曲部分11bとして傾斜壁12に近接し、カール部の切断端部(口頸部5の切断端部)11aがカール部11の内部に巻き込まれるように形成しており、また、カール部11から下方に続く傾斜壁12については、その下方のネジ形成部分13との間の屈曲部分の曲率半径Rが1.5〜2.5mmで、水平面に対する傾斜角度θが40〜50°となるようにしている。
【0030】
そのように上端開口縁に外巻きカール部11が形成された口頸部5に対して、更に、図3(E)に示すように、傾斜壁12の下方の口頸部5にネジ形成部分13を成形する。その際のネジ形成部分13のネジ山とネジ谷の成形方法については、口頸部5の内側に雌型を挿入して外側からロールを押し付けて成形する方法と、口頸部5の内側からロールを押し付けて形成させる方法がある。
【0031】
そのようにネジ形成部分13を成形した後、図3(F)に示すように、ネジ形成部分13の下方の口頸部5を元の円筒形状に所定の幅だけ環状のビード部14として残した状態で、該ビード部14の下方にロールを外側から押し付けることによって、口頸部5の下端を小径円筒部15に成形した後に、合成樹脂とゴムとから成るシーリングコンパウンドを、外周端縁をカールさせたフランジ部8の下面に塗布して、それを乾燥させて固着させる。
【0032】
上記のように成形された缶蓋2を有する本実施形態のネジ付き缶1について、更にその一具体例を説明すると、缶蓋2の材料として使用される金属薄板としては、例えば、厚さ0.315mmのアルミニウム合金板(3004−H191)の両面に対して、イソフタル酸と他のジカルボン酸成分及びグリコール成分との共重合ポリエステル製のフィルムを12μmの厚さで熱融着させ急冷させて非晶質化させたフィルムを積層したものを使用する。
【0033】
なお、このフィルムは、外層と内層で融点の異なるイソフタル酸と他のジカルボン酸成分及びグリコール成分との共重合ポリエステルを同じ厚さで積層させた二層のフィルムで、外層側に割れが発生した場合に、その割れが内層側にまで及ばなくなっており、更に、外層側の融点が内層側の融点よりも高く、且つ、アルミニウム合金板の外面側の二層フィルムの融点の方が、内面側の二層フィルムの融点よりも高い性質を備えている。
【0034】
そのような性質を備えた積層フィルムが被覆されている被覆金属薄板では、フィルムの内層側が外層側よりも変形し易く、さらに、内面側が外面側よりも変形し易くなっているので、外面側の内層よりも変形量の大きい内面側の内層が最も変形し易く、金属薄板の変形にフィルム全体が滑らかに追従し、フィルムが割れ難くなっている。
【0035】
そのようにフィルムが積層された被覆金属薄板を、例えば、直径87mm、高さ16mmのカップに打ち抜き、既に述べたような成形工程を経ることで、全体の高さが45mm、フランジ部8の外径が70mm、フランジ部8からカウンターシンク部7の底までの深さが6.9mmとなるように、図2に示した形状の缶蓋2に成形して、この缶蓋2に対して、合成樹脂とゴムとから成るシーリングコンパウンドを、外周端縁をカールさせたフランジ部8内に約65mg塗布してから、それを室温にて貯蔵し、溶剤を自然乾燥させて固着させる。
【0036】
なお、そのような缶蓋2では、その口頸部5を、例えば、小径円筒部15の外径が26mm、小径円筒部15の幅(高さ)が2.4mm、ビード部14の外径が27.6mm、ネジ形成部分13におけるネジ山の外径が27.6mmでネジ谷の外径が26mm、カール部11のリング内径が19.9mmでリング外径が24.9mm、カール部11の下方の傾斜壁12は、その下方のネジ形成部分13との間の屈曲部分の曲率半径Rが1.5〜2.5mmで、水平面に対する傾斜角度θが40〜50°となるように形成している。
【0037】
一方、缶胴3としては、例えば、厚さ0.22mmの極薄スズメッキ鋼板の内外面の溶接継ぎ目となる部分以外にエポキシ系樹脂塗料を塗布し、外面側に印刷模様を施し、従来法で継ぎ目を溶接し、該継ぎ目の内外面をエポキシ系樹脂塗料で被覆し、両開口端部にネックイン部と水平フランジ部を形成させ、直径約65mm、高さ235mmにしたものを使用する。
【0038】
また、底蓋4としては、例えば、厚さ0.21mmのクロムメッキ鋼板の内外面にエポキシ系樹脂塗料を塗布し、従来法によってカール外径が約72mmとなるように成形し、合成樹脂とゴムとから成るシーリングコンパウンドを、缶蓋2の場合と同様に、外周端縁をカールさせたフランジ部内に約65mg塗布したものを使用する。そして、上記のような缶胴3に、先ず、底蓋4を二重巻締め法で固着させてから、次いで、缶蓋2を缶胴3に二重巻締め法で固着させることにより、内容量が1000ccのネジ付き缶とする。
【0039】
ところで、上記のような具体例を含むような本実施形態のネジ付き缶1では、両面が熱可塑性樹脂層で被覆された被覆金属薄板から缶蓋2が形成されていることにより、図3(B)に示すように、缶蓋2の口頸部5の成形工程の最初で、先ず未開口の口頸部5の先端閉鎖部(端壁17)を切断・除去して口頸部5を開口させる際に、被覆された熱可塑性樹脂層の一部がきれいに切断されずに切断端部で毛羽立って剥がれたような状態となることがある。
【0040】
そのため、図5に示すように、外巻きのカール部11を単に断面(カール幅方向の縦断面)が略円形の状態に形成したのでは、熱可塑性樹脂層がきれいに切断されていない切断端部11aがカール部11の下端で外側から見えて、缶の外観が悪いものとなり、また、切断端部11aで熱可塑性樹脂層がきれいに切断されていたとしても、切断端部11aで露出した金属面に錆や腐食が生じたような場合には、そのような錆や腐食がカール部11の下端で外側から見えることで、やはり缶の外観が悪いものとなる。
【0041】
これに対して、本実施形態のネジ付き缶1では、外巻きのカール部11は、図4に示すように、その下端が屈曲部分11bとして傾斜壁12に近接するように、切断端部11aがカール部11の内部に巻き込まれた状態に形成されており、外側から見えるカール部11の下端は滑らかな屈曲部分11bとなっていて、切断端部11aは外部から隠されていることから、切断端部11aが見苦しい状態となっていても、それによって缶の外観が悪くなるようなことはない。
【0042】
一方、上記のような外観上の問題とは別に、ネジ付き缶では、缶の口頸部にキャップを装着する際に、口頸部に対して上方から最大で1275〜1373N程度の垂直荷重が加えられることになるが、そのような上方からの垂直荷重に対して余裕を持った状態となるように口頸部の強度を更に高めようとした場合、カール部の下方の傾斜壁を一層座屈が起こり難い形状として補強すると、それによりカール部に荷重が集中することで、図5に示すような断面が略円形のカール部では、カール部自体が変形してしまう虞がある。
【0043】
これに対して、本実施形態のネジ付き缶1では、図4に示すように、カール部11がその幅方向で少なくとも部分的に三重壁となっており、図5に示すようなものと比べてカール部11自体が変形し難いように補強されているため、カール部11の下方の傾斜壁12を座屈し難いように補強することで、上方からの荷重がカール部11に集中しても、カール部11自体を変形させることなく、上方からの垂直荷重に対する口頸部の全体としての強度を高めることができる。
【0044】
この点に関して、図4に示したカール部を有する本発明の実施例のネジ付き缶と、図5に示したカール部を有する比較例のネジ付き缶とについて、カール部自体の構造の違いを除いて全て同じ構造(上記の具体例に示した構造)とした上で、それぞれ20個ずつの缶について、缶の口頸部の何処かで変形が起きるまで上方から垂直荷重を加えて、変形時の垂直荷重の大きさを測定することで、口頸部全体としての強度の違いを比較した。
【0045】
なお、実施例と比較例の各缶では、図4および図5に示すように、カール部11から下方の傾斜壁12が、その下方のネジ形成部分13との間の屈曲部分の曲率半径Rが1.5〜2.5mmで、水平面に対する傾斜角度θが40〜50°となるように形成されており、これによって、カール部11の下方の傾斜壁12が上方から垂直荷重により簡単に座屈を起すことのないようにしている。
【0046】
その結果、図5に示したカール部を有する比較例の20個では、1397〜1422Nでそれぞれ口頸部のカール部に変形が起きた(何れも1275〜1373N程度の垂直荷重には一応耐えられる)のに対して、図4に示したカール部を有する実施例の20個では、1704〜1729Nでそれぞれ口頸部のカール部に変形が起きたことから、外巻きのカール部の構造を図4に示したようなものとすることで、缶の口頸部を全体的に上方からの垂直荷重に対して充分に余裕を持った強度のものにできることが判った。
【0047】
以上、本発明のネジ付き缶の一実施形態について説明したが、本発明は、上記のような実施形態に限られるものではなく、例えば、ネジ付き缶のタイプについては、上記の実施形態に示したようなキャップを除いた缶の部分が3ピース缶(3部品で構成されている缶)でボトルタイプのネジ付き缶に限らず、図6(A)に示すように、周知の深絞り加工方法や絞りしごき加工方法により缶胴と缶底を一体的に成形した缶体(所謂ドローアンドリドロー缶やDI缶)の上端開口部に口頸部を有する缶蓋を巻締め固着した2ピース缶(2部品で構成されている缶)でボトルタイプのネジ付き缶として実施することも可能である。
【0048】
また、図6(B)に示すように、口頸部と肩部と胴部が一体成形された缶体の胴部下端開口部に底蓋を巻締め固着した2ピース缶(2部品で構成されている缶)でボトルタイプのネジ付き缶として実施することも可能であり、更には、ボトルタイプのネジ付き缶に限らず、図6(C)に示すようなネックイン加工したDI缶の缶胴上端部を口頸部とした缶全体がシームレスの1ピース缶(1部品で構成されている缶)で広口タイプのネジ付き缶として実施することも可能である等、適宜設計変更可能なものであることはいうまでもない。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したような本発明のネジ付き缶によれば、口頸部を切断したときの切断端部がカール部の内部に隠されることから、切断端部が見苦しい状態となっていても、それによって缶の外観が悪くなるということがなく、また、カール部自体が変形し難いように補強されていることで、上方からの垂直荷重に対する口頸部の全体的な強度を更に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のネジ付き缶の一実施形態に係る3ピース缶でボトルタイプのネジ付き缶について、キャップを除いた缶全体の外観を示す側面図。
【図2】図1に示したネジ付き缶の缶蓋(缶胴に巻締め固着される前の状態)を示す部分断面側面図。
【図3】図2に示した缶蓋における口頸部の成形工程を(A)〜(F)の順に示す断面説明図。
【図4】本発明のネジ付き缶における口頸部上端のカール部の構造を示す断面図。
【図5】比較例のネジ付き缶における口頸部上端のカール部の構造を示す断面図。
【図6】本発明のネジ付き缶の他の実施形態に係る(A)口頸部が形成された缶蓋を有する2ピースでボトルタイプの缶,(B)口頸部と肩部と胴部が一体成形されて底蓋が巻締め固着された2ピースでボトルタイプの缶,および(C)1ピースで広口タイプの缶のそれぞれについて、キャップを除いた缶全体の外観を示す側面図。
【符号の説明】
1 ネジ付き缶
2 缶蓋
5 口頸部
11 カール部
11a (カール部の)切断端部
11b (カール部の下端の)屈曲部分
12 傾斜壁
13 ネジ形成部分
Claims (2)
- 合成樹脂被膜で被覆された金属薄板からの成形によって、少なくとも、上端開口縁に沿ってリング状に形成される外巻きのカール部と、該カール部から下方且つ外方に延びる傾斜壁と、該傾斜壁から下方に延びるネジ形成部分とを備えた口頸部が一体成形されているネジ付き缶において、カール部から下方の傾斜壁が、その下方のネジ形成部分との間の屈曲部分の曲率半径が1.5〜2.5mmで、水平面に対する傾斜角度が40〜50°となるように形成されていると共に、傾斜壁の上端から外方に屈曲したカール部が、カール部の下端を屈曲部分として傾斜壁に近接させて、カール部の切断端部をカール部の内部に巻き込むように形成されていることを特徴とするネジ付き缶。
- 口頸部を成形するための金属薄板が、少なくとも缶内面側が熱可塑性樹脂フィルムで被覆された厚さが0.1〜0.4mmの被覆金属薄板であることを特徴とする請求項1に記載のネジ付き缶。
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