JP4401533B2 - 成形薫香とその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は成形薫香とその製造方法、詳細には、物理的強度を増強した新規な成形薫香とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
薫香は、古くから、加熱して香気を立ち上らせて味わう香気成分含有物として広く知られ、通常、香木粉末、香料、色素などを水と混合してペースト状物とし、多くの場合、これを線状に押し出し成形し、乾燥して製造されている。このようにして製造される薫香は、一般にその保存中に香気が揮散及び/又は変質などして劣化し易く、商品価値の低下することが知られている。また、成形薫香は、製造時、輸送時、使用時などにおける環境変化、とりわけ湿度などの水分変化に伴う変形や、衝撃などの圧力変化に伴う折損などを起し易い、すなわち、物理的強度が不十分であるという欠点があることも知られている。以上の問題点を解消する薫香として、同じ特許出願人は、先に特願2000−137788号明細書(特開2001−48765号公報)に、トレハロース、マルチトール及びプルランから選ばれる1種又は2種以上の糖質、又は、この1種又は2種以上の糖質とともに環状糖質を配合した成形薫香を開示した。この成形薫香は、それまでの公知の薫香が抱えていた上記の欠点をともに解消するものである。
【0003】
しかしながら、本発明者らがさらに引き続き研究を続けたところ、上記明細書に開示された成形薫香は、香気の劣化のし易さは確かに十分に解消するものである一方、成形薫香の通常の流通形態や利用形態を考慮すると、その物理的強度はなお不十分であり、さらに改善の余地があることが判明した。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
斯かる状況に鑑み、この発明の課題は、従来の薫香における欠点であった、香気の劣化のし易さを解消しつつ、さらなる物理的強度が達成された成形薫香とその製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決することを目的に、成形薫香の構造と組成について鋭意研究を重ね、同じ特許出願人による特願2000−137788号明細書(特開2001−48765号公報)に開示された成形薫香にさらに別の配合成分を種々加えて鋭意検討を加えたところ、物理的強度の強化にはある程度の成果が見られるものの、その物理的強度はなお十分ではないことが判明した。そこで、本発明者らは観点を変えて、上記明細書に開示された成形薫香を膜状物で被覆して、香気の劣化の抑制ならびに物理的強度を調べたところ、膜状物で被覆された該成形薫香は、香気の劣化が十分に抑制されていながら、さらなる物理的強度が達成できることが確認された。この発明は、本発明者らによる以上の知見に基づいて完成されたものである。
【0006】
すなわち、この発明は、香気を示しうる植物由来の物質に加えて、トレハロース、マルチトール及びプルランから選ばれる1種若しくは2種以上の糖質又はこの1種若しくは2種以上の糖質とともに環状糖質とを含んでなる線状に成形された薫香部と、該薫香部の周囲を被覆する膜状物とからなる成形薫香とその製造方法を提供することにより上記の課題を解決するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の成形薫香の実施の形態について説明する。本発明の成形薫香は香気を示しうる植物由来の物質に加えて、トレハロース、マルチトール及びプルランから選ばれる1種若しくは2種以上の糖質又はこの1種若しくは2種以上の糖質とともに環状糖質とを含んでなる線状に成形された薫香部と、該薫香部の周囲を被覆する膜状物とからなる。本発明でいう香気を示しうる植物由来の物質とは、植物由来の物質であって、本発明の成形薫香に配合され、利用される際に香気を示す物質を意味し、例えば、元来香気を示す植物由来の物質、元来香気を示さない植物由来の物質と香料とを含む組成物、又はこれらの混合物が挙げられる。本発明で利用できる元来香気を示す植物由来の物質としては、常温でまたは加熱したときに芳香を示す、きのこ・海藻を含む植物からの単離物ないしはその加工物、具体的には、例えば、元来比較的強い香気を示す、伽羅、沈香、白檀、桂皮、丁子、甘松、乳香、安息香、唐木香、冷凌香、大茴香などのいわゆる香木の木部の切断物、破砕物、粉砕物や、比較的弱い香気を示すタブノキ、クスノキなどの広葉樹木、スギ、マツなどの針葉樹木の組織、器官、切断物、破砕物、粉砕物、さらには、花卉、香草、野菜、きのこ、海草、果物、種実などの破砕物、粉砕物などが挙げられる。以上のような元来香気を示す植物由来の物質はその適宜の2種以上を組み合わせたり、下記の香料と組み合わせて利用することもできる。一方、本発明で利用できる元来香気を示さない植物由来の物質は、常温でも、また、加熱したときにも実質的に芳香を示さない植物の成分、組織又は器官の単離物ないしはその加工物、具体的には、例えば、パルプ粉末、セルロース粉末、リグニン粉末、デンプンなどが挙げられる。以上のような元来香気を示さない植物由来の物質は香料と組み合わせて組成物の形態で利用することができる。本発明で利用できる香料としては、例えば、上記に示したような香木の抽出物である香木エキスや、ハーブエキス、ユーカリエキス、ローズオイル、ラベンダーオイル、チョウジオイル、ジャコウ、プロポリスエキスなどの天然香料のほか、メントール、ゲラニオール、バニリンなどの合成香料や、以上のような天然ないしは合成香料の2種類以上を適宜組み合わせてなる調合香料が挙げられる。
【0008】
本発明の成形薫香における薫香部は、上記の、香気を示しうる植物由来の物質に加えて、トレハロース、マルチトール及びプルランから選ばれる1種若しくは2種以上、又はこの1種若しくは2種以上の糖質とともに環状糖質(以下、トレハロース、マルチトール、プルラン及び環状糖質を総称して単に「本発明で用いる糖質」ということがある。)を含み線状に成形されてなる。当該薫香部の形状である線状の形状としては、具体的には、角柱状、円柱状、角錐状、円錐状、渦巻状、コイル状、馬蹄形などが挙げられる。
【0009】
本発明でいうトレハロースとは、2分子のグルコースが還元性基同士でα,α結合してなる非還元性二糖類を意味する。本発明でいうマルチトールとは、グルコースがα−1,4結合してなる二糖であるマルトースの還元体を意味する。本発明でいうプルランとは、グルコースがα−1,4結合した三糖であるマルトトリオースが互いにα−1,6結合して重合した多糖を意味する。
【0010】
本発明でいう環状糖質とは、複数のグルコース残基が相互に共有結合してなる、例えば、環状デキストリンや環状デキストランなどの環状オリゴ糖ならびにその誘導体を意味する。環状デキストリンとしては、6個、7個又は8個のグルコース残基が相互にα−1,4結合してなるものが知られ、これらはそれぞれ、別名、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンとも呼ばれる。ここでいう誘導体とは、例えば、以上のような環状糖質を構成するグルコース残基に1個又は2個以上のグルコース又はマルトオリゴ糖が結合してなる、分岐構造を有するものを意味する。
【0011】
本発明においては、トレハロース、マルチトール、プルラン及び環状糖質はそれぞれ上記のように定義される糖質であって、以下に詳述する本発明による成形薫香における他の成分と配合したときにこの発明の課題を解決する効果を発揮するものである限り、性状、純度、存在形態や、調製方法は特定のものに限定されず、例えば、食品用などの市販品や常法にしたがって得られる調製品はいずれも本発明に有利に利用できる。
【0012】
本発明で利用できるトレハロースの市販品としては、含水結晶トレハロース(株式会社林原商事販売、登録商標『トレハ』)や、トレハロース含有シロップ(株式会社林原商事販売、登録商標『トレハスター』)などがある。この発明で利用できるマルチトールの市販品としては、無水結晶マルチトール(商品名『粉末マビット』、固形分重量あたりの無水マルチトール含量93.5%以上、株式会社林原商事販売)や、マルチトール含有シラップ(商品名『マビット』、固形分74重量%以上、固形分重量あたりのマルチトール含量75%以上)などがある。また、例えば、特公昭47−13699号公報に開示された方法により得られるシラップ状のマルチトールや、特公昭63−2439号公報に開示された方法により得られる無水結晶マルチトールも適宜この発明において利用できる。さらにまた、本発明において、トレハロースとマルチトールを併用する場合には、特開平8−73482号公報に記載された、トレハロースとマルトースとの混合物を水素添加して得られるトレハロースとマルチトールの混合物を利用することも随意である。本発明で利用できるプルランの市販品としては、プルラン粉末(株式会社林原商事販売、商品名『プルランPF−20』、商品名『プルランPF−10』)などがある。本発明で利用できる環状糖質の市販品としては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン(以上、株式会社林原生物化学研究所販売)、分岐β−シクロデキストリン(マルハ株式会社販売、商品名『イソエリートP』)などがある。
【0013】
以上ような本発明で用いる糖質のうち、トレハロース、マルチトール及びプルランから選ばれる適宜の糖質は、薫香に含有されたとき、該薫香の香気の劣化を効果的に抑制するという本発明の課題を解決する効果を発揮する。香気劣化の抑制効果は、これらの糖質から選ばれる1種のみを使用した場合にも十分に発揮されるけれども、適宜選ばれる2種以上の糖質を使用すると該抑制効果が相乗的に増強されるのでより有利である。また、以上の糖質に加えて環状糖質を併用することにより該抑制効果をさらに増強することができる。本発明の成形薫香における、本発明で用いる糖質の合計としての含量の好適な範囲は、膜状物の形状や素材にもよるけれども、製品の薫香重量に対して無水物換算で、通常、0.5w/w%以上50w/w%未満(以下、特にことわらない限り、本明細書を通じてw/w%を単に%と略記する。)、望ましくは、約0.7%乃至約40%、さらに望ましくは、約1%乃至約30%である。該糖質の含量が多い場合、香気の揮散及び/又は変質などによる劣化はよく抑制されるものの、加熱による香気の立ち上がりが悪くなったり、薫香の火付きが悪くなる欠点が生じるので好ましくない。また、0.5%未満では香気の劣化の抑制には不十分である。
【0014】
上記のような本発明で用いる糖質は、成形薫香としての物理的強度を強化するという本発明の別の課題の解決にも関与する。これらの糖質はいずれも成形薫香の変形・折損の抑制に奏効するけれども、その効果を比較すると、プルランがより優れており、その適量は、膜状物の形状や素材にもよるけれども、製品の薫香重量に対して無水物換算で、通常、約0.5%以上、望ましくは、約1%乃至約10%である。
【0015】
以上のような成分に加えて、本発明の成形薫香における薫香部には、通常の成形薫香に一般的に利用される、例えば、無機塩などの賦形剤、その他の安定剤、溶剤、結合剤、香料、着色料、抗菌剤、防腐剤、乳化剤などを必要に応じて適宜含有せしめることができる。本発明で利用できる着色料としては、具体的には、赤色系の食用赤色2号、食用赤色102号、食用赤色106号、ローダミンなど、青色系の食用青色1号、メチルバイオレット、メチレンブルー、マラカイトグリーン等が挙げられる。
【0016】
本発明の成形薫香は、以上のように構成される薫香部の周囲が膜状物によって被覆されていることを特徴とする。本発明で利用できる膜状物としては、当該成形薫香が利用される際、すなわち、着火するか又は着火することなく加熱した際に、香気の立ち上がりを妨げないものが望ましく、例えば、可燃性材料からなるフィルム、シート、紙、織布、不織布などが挙げられる。着火して利用する当該成形薫香に利用する膜状物のより望ましい一例は、和紙などの紙である。また、着火することなく加熱して利用する当該成形薫香においては、膜状物は、可燃性であることに加えて、熱伝導性や通気性の良好なものが望ましく、例えば、可燃性材料による網目状のシートなどは好適な一例である。斯かる膜状物を用いる当該成形薫香の例としては、例えば、通常の線香のような円柱状の当該薫香部を、望ましくは、水溶性多糖類などの付着性のある可燃性素材を介して該膜状物でのり巻き状に巻き上げたものが挙げられる。また、例えば、斯かる膜状物で予め作成した、一端が底を有していてもよい筒状の膜状物に当該薫香部を、必要に応じて、互いに異なる香気を示す複数個封入してなるものも別の一例である。例えば、図1において符号1は薫香部を、符号2は膜状物を示す(図2及び図3においても同じ。)が、図1示すように、末広がりの円筒形の膜状物2の内部に薫香部1を封入した後に膜状物2の端部をその内側に凹型の構造を有するように畳み込めば、薫香部1が膜状物2からはみ出さなくなるとともに、当該成形薫香を、例えば、燭台のような針の上に垂直に立てて利用することが可能となる。本発明で利用できる膜状物の別の例としては、本発明で利用できる元来香気を示す植物由来の物質や元来香気を示さない植物由来の物質を含む成形物が挙げられる。例えば、当該薫香部を、斯かる植物由来の物質のいずれか又は両方と水を含むペースト状の平板で巻き上げ、乾燥させてなるものはその一例である。本発明で用いる膜状物のさらに別の例としては、例えば、水溶性多糖などの粘性物質の被膜が挙げられる。例えば、当該薫香部に適宜の該粘性物質の溶液を噴霧、塗布又は含浸などの処理を施した後に乾燥させてなるものはその一例である。ここで用いる水溶性多糖としては、例えば、プルラン、アラビアガム、ペクチン、アガロース、カラギーナン、マンナン、イヌリン、アルギン酸、ヒアルロン酸などが挙げられる。なお、以上のような本発明で利用する膜状物には、必要に応じて、本発明で用いる糖質・香料、さらには、着色料などを適宜含有せしめても良いけれども、当該薫香部本来の香気を利用するためには、該膜状物は、無臭ないしは微香性であるか、あるいは、当該薫香部と同じ香気を示すことが望ましい。
【0017】
以上のように構成される本発明の成形薫香は、個々の成分が上述のような所期の機能を発揮する状態で含有されている限り、製造方法や個々の成分の含量は問わない。すなわち、本発明の成形薫香においては、香気成分は、当該成形薫香の利用に際して、着火したり又は着火することなく加熱した際に香気が立ち上がるように含有されていればよく、本発明で用いる糖質は、当該成形薫香の香気の劣化を抑制したり、成形薫香としての物理的強度を強化するように含有されていればよく、また、膜状物は成形薫香としての物理的強度をさらに強化するように周囲を被覆していればよい。したがって、以上の要件を満たす限り、本発明の成形薫香における薫香部ならびに膜状物は、それぞれ、全体として均一な状態に混ざりあった形態のものであっても、部分ごとに成分の組成が異なる形態のものであってもよい。
【0018】
以上のような特徴を有する本発明の成形薫香は、複数香成形薫香として実施することもできる。本発明でいう複数香成形薫香とは、1個の成形薫香が、香気を示しうる植物由来の物質として、互いに香気の異なる複数の物質を含んでなり、該複数の物質が、実質的に同時に香気を立ち上がらせない、薫香部のそれぞれ異なる部分に含有しているものを意味し、その形状は線状である限り特に制限はない。円柱状の複数香成形薫香の例としては、具体的には、例えば図2に示すように香気の異なるそれぞれの物質を含む薫香部部分1aと1bとの接合部がZ字状構造を有するものや、図3に示すようにI字状構造を有するものなどが挙げられる。なお、ここでいうZ字状構造とは、「Z字」の上辺と下辺とを結ぶ斜め部分が図2のように平面的形状であるものに限定されず、円柱状の成形薫香の長軸方向に対して該接合部が垂直でないもの全般を意味し、例えば、その斜め部分が曲面的形状であるものをも包含する。本発明の成形薫香は線状に成形されているので、複数香成形薫香としての当該薫香は、香気を立ち上がらせ始めてからの時間の経過に伴って個々の香気をそれぞれ楽しむことができるという特徴がある。当該複数香成形薫香1個あたりの香気の数には特に制限はなく、利用対象などに応じて適宜選ばれる。通常は、同一の香気により嗅覚が麻痺して感知しにくくなるまでの時間を考慮して選択するのが望ましく、例えば、1個の複数香成形薫香の利用時間が0.5乃至3時間の場合、好適な香気の数は、通常、2乃至10、望ましくは2乃至6程度である。香気の性質としては、例えば、気分をリフレッシュさせるもの、優雅で満足感を与えるもの、気分を鎮静させるもの、気分を高揚させるものなど他種類のものが知られており、想定される利用対象などに応じて適宜選ばれる。
【0019】
なお、複数香成形薫香の場合、香気の異なる物質を含有するそれぞれの部分や、必要に応じてその部分を被覆する膜状物に加える着色料の色調を変えることにより、利用に際して所望の順序で香気を立ち上がらせることが容易となる。また、当該成形薫香における膜状物として、例えば、木目調などのデザイン施したり所望の文字を記入してなるものを用いることにより視覚に訴える薫香とすることもできる。さらにまた、例えば、着火させることなく加熱して香気を立ち上がらせる薫香の場合、加熱によって変色する色素を用いることにより、嗅覚とともに視覚をも楽しませる薫香とすることもできる。
【0020】
本発明の成形薫香は、上記で説明した当該薫香部を膜状物で被覆する工程を含む本発明による成形薫香の製造方法により容易に得ることができる。当該製造方法で用いる薫香部は、上記に示した成分を含み線状に成形されているものである限り、各成分を配合する順序やその方法、成形のための方法は問わない。例えば、(1)香気を示しうる植物由来の物質及び本発明で用いる糖質と、必要に応じて用いられる着色料などの他の成分とを予め所定の配合で適量の水とともに含むペースト状などの混合物を調製し、次いで該混合物を常法にしたがって所望の線状形に成形し、必要に応じて乾燥処理を施すことによって当該薫香部は得ることができる。また、例えば、(2)元来香気を示す植物由来の物質を先ず適量の水とを含むペースト状などの混合物を調製し、次いで、該混合物を常法にしたがって所望の線状形に成形し、必要に応じて乾燥処理を施して成形物とし、さらに、該成形物に本発明で用いる糖質を含有せしめることによっても当該薫香部は得ることができる。ここで得られる成形物に該糖質を含有せしめるには、該糖質を、例えば溶液の形態で該成形物に噴霧、塗布、含浸などするか、粉末など固形状の形態で粘着性物質などを用いて付着させるなどすればよい。さらにまた、例えば、(3)元来香気を示さない植物由来の物質と、本発明で用いる糖質と、適量の水とを所定の配合で含むペースト状などの混合物を前記(2)に準じて成形物とし、さらに、該成形物に香料を含有せしめることによっても当該薫香部は得ることができる。ここで得られる成形物に香料を含有せしめるには、香料を、例えば溶液の形態で該成形物に噴霧、塗布、含浸などするか、粉末など固形状の形態で粘着性物質などを用いて付着させるなどすればよい。
【0021】
複数香成形薫香の製造を目的とする場合、上記(1)の方法による場合には、例えば、香気の異なる混合物どうしを同じ特許出願人による特願2000−137788号明細書(特開2001−48765号公報)に開示された方法などにより一体化すればよく、また、上記(2)の方法による場合には、例えば、異なる香気の成形物どうしを後述する膜状物で被覆する方法により一体化すればよく、さらにまた、上記(3)の方法による場合には、例えば、香気を示さない成形物の所望の部分がそれぞれ異なる香気を示すように互いに香気の異なる植物由来の物質を含有せしめればよい。
【0022】
このようにして得られる成形物を膜状物で被覆すればこの発明の成形薫香は得られる。膜状物による被覆の方法は用いる膜状物の種類によって適宜選ばれる。膜状物がフィルム、シート、網、紙、織布又は不織布の場合には、例えば、付着性の素材を介して、該膜状物を上記成形物に固定しつつ被覆するか、又は、該膜状物により成形された筒状物ないしは有底筒状物に上記成形物を封入すればよい。膜状物が本発明で用いる元来香気を示す植物由来の物質や元来香気を示さない植物由来の物質を含む場合、通常、該物質と適量の水を混合した平板状のペーストで上記成形物を巻き上げるか又は包み込むなどすればよい。膜状物として水溶性多糖の被膜を利用する場合には、適宜の濃度の該水溶性多糖の溶液を該上記成形物に噴霧、塗布、含浸などすればよい。そして、必要に応じて被覆された成形物を乾燥すれば、本発明の成形薫香は得られる。
【0023】
以上のような本発明の成形薫香の香気を味わうには、加熱して香気を立ち上らせて味わえば良く、一般的には、着火させることにより加熱するか、又は着火させずに加熱、例えば、電気ヒーターで薫香を50℃以上、望ましくは、100乃至300℃程度に加熱して香気を立ち上らせて味わえば良い。複数香成形薫香の香気を味わう場合には、例えば、その一端に着火させてくゆらせながら時間の経過により加熱部分の移動によって異なる香気の変化を味わうことも、また、複数香成形薫香を、これと相対する複数の加熱部分を有する電気ヒーターに密着させて、着火させることなく、その加熱部分を任意の時間毎に移動させるなどして、異なる香気の変化を味わうことも随意である。
【0024】
以上のような本発明の薫香は、以上のような構成によって香気の劣化が抑制されており、長期保存も容易である。また、本発明による複数香成形薫香は、香気の劣化を抑制できるのに加えて、加熱し始めてから終るまでの間に、それぞれの薫香材料に含まれる異なった香料の趣きのある香りの変化を楽しんだり、アロマテラピーに利用したりすることができるとともに、環境変化にも安定で、物理的強度に優れた丈夫で高品質な成形薫香である。
【0025】
以下、本発明の成形薫香を実施例により詳細に説明する。
【0026】
【実施例1】
〈複数香成形薫香〉
パルプ(Tyler標準篩60メッシュ(目開き0.246mm)を通過できない粉末。以下、同標準篩を通過できない粒径の粉末を「粗末」という。)50重量部、パルプ(同標準篩60メッシュを通過する粉末。以下、同標準篩を通過する粒径の粉末を「細末」という。)40重量部、澱粉10重量部、トレハロース4重量部、マルチトール4重量部(登録商標「マビット」、株式会社林原商事販売)プルラン2重量部及び分岐β−シクロデキストリン1重量部に対して、適量の赤色色素とローズオイル又は紫色色素とラベンダーオイルを、それぞれ適量の水と練り合わせてペースト状物とし、次いで平板に加工し、次いで、それぞれの平板の一端を重ね合せ、圧延して、Z字構造で接合した平板とし、更に細断し、転動成形し、乾燥して、円柱状の薫香部を得た。この薫香部の全体に亙って5%プルラン水溶液を噴霧し、乾燥させ、表面をプルラン被膜で被覆した。斯くして本発明の複数香成形薫香を得た。本品は、ローズオイルとラベンダーオイルの香気の劣化を抑制し、長期保存しても安定した香気を保持する複数香成形薫香である。また、本品は、変形、折損を起しにくい丈夫で高品質な成形薫香である。
【0027】
【実施例2】
〈複数香成形薫香〉
パルプ(粗末)50重量部、同(細末)40重量部、澱粉10重量部、トレハロース4重量部、マルチトール4重量部(登録商標「マビット」、株式会社林原商事販売)プルラン2重量部及び分岐β−シクロデキストリン1重量部に対して、適量の赤色色素とローズオイル又は紫色色素とラベンダーオイルを、それぞれ適量の水と練り合わせてペースト状物とし、次いで平板に加工した。それぞれの平板を、常法により細断し、転動成形し、乾燥して、円柱状の薫香部を得た(それぞれ薫香部1及び薫香部2)。和紙の片面にプルラン水溶液を塗布し、この上に、薫香部1及び薫香部2を隙間のないように直列に並べ、該2個の薫香部を和紙でのり巻き状に巻き上げ、乾燥させた。本品は、ローズオイルとラベンダーオイルの香気の劣化を抑制し、長期保存しても安定した香気を保持する複数香成形薫香である。また、本品は、変形、折損を起しにくい丈夫で高品質な成形薫香である。
【0028】
【実施例3】
〈複数香成形薫香〉
セルロース粉末(細末)70重量部、リグニン粉末(粗末)30重量部、トレハロース3重量部、プルラン1重量部及び少量の緑色色素を、常法に従って、適量の水と練り合わせてペースト状とし、油圧成形機にて円柱状に押し出し成形し、通風乾燥して、円柱状の成形物を得た。これとは別途、伽羅の粉末100重量部に70w/v%エタノール水溶液を加え、40度で時間抽出し、濾過して香木エキス1を調製した。同様に白檀を抽出して香木エキス2を調製した。ここで得た香木エキス1の25重量部、トレハロース2重量部及びプルラン0.5重量部を70w/v%エタノール水溶液と混合し全量を100重量部として香木エキス1溶液を調製した。また、香木エキス1に代えて香木エキス2を用いたこと以外は香木エキス1の場合と同様に他の成分と混合し、香木エキス2溶液を調製した。上記で得た成形物を、その一端から中央部までに適量の香木エキス1溶液を噴霧し、乾燥させた。次に、該成形物の残る部分を、適量の香木エキス2溶液を先と同様に噴霧し、乾燥させ、薫香部を得た。この薫香部の全体に亙って5%プルラン水溶液を噴霧し、乾燥させ、表面をプルラン被膜で被覆した。斯くして本発明の複数香成形薫香を得た。本品は、伽羅と白檀の香気の劣化を抑制し、長期保存しても安定した香気を保持する複数香成形薫香である。また、本品は、変形、折損を起しにくい丈夫で高品質な成形薫香である。
【0029】
【発明の効果】
上述したように、本発明は、トレハロース、マルチトール及びプルランから選ばれる1種若しくは2種以上の糖質、又はこの1種若しくは2種以上の糖質とともに環状糖質を含有せしめることに加えて、周囲を膜状物で被覆するという、従来技術には全くない構成を適用することによって香気の劣化を抑制し、長期間安定な薫香を確立し、併せて変形、折損しにくい高品質の成形薫香を提供するものである。本発明の成形薫香は、アロマテラピーにおいて、また、香粧品、生活用品、仏具用品などとして有用である。このように本発明の産業的意義は、アロマテラピー業界、エステティック業界、健康関連商品業界、化粧品業界、医薬品業界、葬祭業界など、極めて多岐にわたる業界に及ぶものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の成形薫香の一例を示す図である。
【図2】本発明の成形薫香の別の一例を示す図である。
【図3】本発明の成形薫香のさらに別の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 薫香部
1a、1b 薫香部部分
2 膜状物
Claims (1)
- 線状に成形された薫香部と該薫香部の周囲を被覆するプルラン皮膜とからなる成形薫香であって、薫香部が、香気を示しうる植物由来の物質に加えて、製品薫香重量に対して無水物換算でプルランを1乃至10重量%、且つ、プルラン、トレハロース及び/又はマルチトール、及び、シクロデキストリンを合計50重量%未満含有してなり、且つ、被覆が、薫香部にプルラン水溶液を噴霧又は塗布するか、又は、薫香部をプルラン水溶液に浸漬した後、乾燥して行われることを特徴とする成形薫香。
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