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JP4497395B2 - 光電変換素子の作成方法及び光電変換素子 - Google Patents

光電変換素子の作成方法及び光電変換素子 Download PDF

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JP4497395B2 JP2001238351A JP2001238351A JP4497395B2 JP 4497395 B2 JP4497395 B2 JP 4497395B2 JP 2001238351 A JP2001238351 A JP 2001238351A JP 2001238351 A JP2001238351 A JP 2001238351A JP 4497395 B2 JP4497395 B2 JP 4497395B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光電変換素子の作成方法に関し、詳しくは色素で増感した半導体微粒子を用いた光電変換素子の作成方法、この方法で作成した光電変換素子、並びにこの光電変換素子を用いた光電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
光電変換素子は各種光センサー、複写機、光発電装置等に用いられている。光電変換素子には金属を用いたもの、半導体を用いたもの、有機顔料や色素を用いたもの、或いはこれらを組み合わせたもの等の様々な方式が実用化されている。
【0003】
米国特許4927721号、同4684537号、同5084365号、同5350644号、同5463057号、同5525440号、WO98/50393号、特開平7-249790号及び特表平10-504521号には、色素によって増感した半導体微粒子を用いた光電変換素子(以下、「色素増感光電変換素子」と称する)並びにこれを作成するための材料及び製造技術が開示されている。この色素増感光電変換素子の利点は、二酸化チタン等の安価な酸化物半導体を高純度に精製することなく用いることができるため比較的安価に製造できる点にある。しかしながら、このような光電変換素子は変換効率が必ずしも十分に高いとは限らず、なお一層の変換効率向上が望まれている。
【0004】
また、特開平1-220380号には、色素の吸着した半導体微粒子をt-ブチルピリジンで後処理することによって、色素増感光電変換素子の変換効率が向上することが記載されている。しかしながら、この光電変換素子も変換効率が必ずしも十分に高いとは限らない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、優れた変換効率を示す色素増感光電変換素子の作成方法、この方法で作成した光電変換素子、並びにこの光電変換素子を用いた光電池を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の光電変換素子の作成方法は、色素が吸着した半導体微粒子の層と導電性支持体とを有する光電変換素子を作成する方法であり、半導体微粒子を下記一般式(I)で表される化合物で処理することを特徴とする。
(A1-L)n1-A2・M ・・・(I)
一般式(I)中、A1N - を有する基を表し、A2ピリジル基又はイミダゾリル基を表し、Mは(A1-L)n1-A2の負電荷を中和するカチオンを表し、Lは2価連結基又は単なる結合を表し、n1は1〜3の整数を表す。
【0007】
上記一般式(I)中、A 2 はピリジル基であるのが特に好ましい。
【0008】
本発明の光電変換素子の作成方法においては、半導体微粒子を一般式(I)で表される化合物と下記一般式(II)で表される化合物で処理することが好ましい。
【化2】
一般式(II)中、Xは酸素原子を表し、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子、脂肪族炭化水素基、アリール基、ヘテロ環基、-OR4、-N(R5)(R6)、-C(=O)R7、-C(=S)R8又はSO2R9を表し、Yは水素原子、脂肪族炭化水素基、アリール基、ヘテロ環基、-OR4、-N(R5)(R6)又は-SR10を表す。また、R3は水素原子、脂肪族炭化水素基、ヒドロキシ基又はアルコキシ基を表し、R4は水素原子又は脂肪族炭化水素基を表し、R5及びR6はR1及びR2と同義であり、R7、R8及びR9はYと同義であり、R10はR4と同義である。
【0009】
上記一般式(II)中、Yは-N(R5)(R6)を表すのが特に好ましい。また、一般式(II)で表される化合物は-Si(R11)(R12)(R13)で表される置換基を有するのが特に好ましい。ただし、R11、R12及びR13はそれぞれ独立にヒドロキシ基、アルキルオキシ基、イソシアネート基、ハロゲン原子又は脂肪族炭化水素基を表し、R11、R12及びR13のうち少なくとも1つはアルキルオキシ基、イソシアネート基又はハロゲン原子である。
【0010】
半導体微粒子に色素を吸着させた後に、一般式(I)で表される化合物及び/又は一般式(II)で表される化合物で処理することが特に好ましい。また色素はルテニウム錯体色素であるのが特に好ましい。
【0011】
本発明の光電変換素子は上記本発明の作成方法で作成されることを特徴とし、本発明の光電池は該光電変換素子からなる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の光電変換素子の作成方法は感光層と導電性支持体とを有する光電変換素子を作成する方法であり、感光層は色素が吸着した半導体微粒子からなる。本発明の方法ではこの半導体微粒子を後述する一般式(I)で表される化合物で処理することにより、光電変換素子の変換効率を改善する。また本発明では、半導体微粒子を一般式(I)で表される化合物と後述する一般式(II)で表される化合物で処理することが好ましい。以下本発明では、一般式(I)で表される化合物を「化合物(I)」と称し、一般式(II)で表される化合物を「化合物(II)」と称する。
【0013】
[I]化合物(I)
一般式(I)を以下に示す。
(A1-L)n1-A2・M ・・・(I)
【0014】
一般式(I)中、A 1 はN - を有する基である。A1はより好ましくはRSO2N--、RSO2N-SO2-、RCON--、RCON-CO-又はRSO2N-CO-であり、特に好ましくはRSO2N--である。
【0015】
なお、上記R及びR'はそれぞれ水素原子又は置換基を表し、互いに同じであっても異なっていてもよく、該置換基の例としては脂肪族炭化水素基、アリール基、ヘテロ環基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルキルオキシ基等が挙げられる。
R及びR'が表す脂肪族炭化水素基の具体例としては、炭素数1〜18の直鎖又は分岐の無置換アルキル基(メチル基、エチル基、i-プロピル基、n-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、2-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、t-オクチル基、2-エチルヘキシル基、1,5-ジメチルヘキシル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-ヘキサデシル基、n-オクタデシル基等)、炭素数1〜18の直鎖又は分岐の置換アルキル基(トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、メトキシカルボニルメチル基、n-ブトキシプロピル基、メトキシエトキシエチル基、ポリエトキシエチル基、アセチルオキシエチル基、メチルチオプロピル基、3-(N-エチルウレイド)プロピル基等)、炭素数3〜18の置換又は無置換の環状アルキル基(シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、アダマンチル基、シクロドデシル基等)、炭素数2〜16のアルケニル基(アリル基、2-ブテニル基、3-ペンテニル基等)、炭素数2〜10のアルキニル基(プロパルギル基、3-ペンチニル基等)、炭素数6〜16のアラルキル基(ベンジル基等)等が挙げられる。
R及びR'が表すアリール基の具体例としては、炭素数6〜20の置換又は無置換のフェニル基(フェニル基、メチルフェニル基、オクチルフェニル基、シアノフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、ブトキシフェニル基等)、置換又は無置換のナフチル基(ナフチル基、4-スルホナフチル基等)等が挙げられる。
R及びR'が表すヘテロ環基の具体例としては、置換又は無置換の含窒素ヘテロ5員環基、置換又は無置換の含窒素ヘテロ6員環基(トリアジノ基等)、フリル基、チオフリル基等が挙げられる。
R及びR'が表すアミノ基の具体例としては、ジメチルアミノ基等が挙げられる。
R及びR'が表すアルキルオキシ基の具体例としては、エチルオキシ基、メチルオキシ基等が挙げられる。
これらの中で、R及びR'はそれぞれ置換又は無置換のアルキル基、或いは置換又は無置換のフェニル基であるのが好ましく、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基であるのが特に好ましい。
【0016】
一般式(I)中、A2ピリジル基又はイミダゾリル基を表す。中でも、ピリジル基が特に好ましい。A 2 (A1-L)n1-以外の置換基を有していてもよい。
【0017】
一般式(I)中、Mは(A1-L)n1-A2の負電荷を中和するカチオンを表す。該カチオンの例としては、アルカリ金属カチオン(リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、ルビジウムカチオン、セシウムカチオン等)、アルカリ土類金属カチオン(マグネシウムカチオン、カルシウムカチオン、ストロンチウムカチオン等)、置換又は無置換のアンモニウムカチオン(無置換アンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラ-n-ブチルアンモニウムカチオン、テトラ-n-ヘキシルアンモニウムカチオン、エリルトリメチルアンモニウムカチオン等)、置換又は無置換のイミダゾリウムカチオン(1,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、2,3-ジメチル-1-プロピルイミダゾリウムカチオン等)、置換又は無置換のピリジニウムカチオン(N-メチルピリジニウムカチオン、4-フェニルピリジニウムカチオン等)等が挙げられる。Mは好ましくはアルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、4級アンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン又はピリジニウムカチオンであり、より好ましくはアルカリ金属カチオン又はイミダゾリウムカチオンであり、特に好ましくはリチウムカチオン又は1,3-ジアルキルイミダゾリウムカチオンである。なお、Mはカチオンの種類及び数を表すものであり、例えば、(A1-L)n1-A2が有する負電荷の総価数が1であり、カチオンの種類がMg2+である場合は、Mは「1/2(Mg2+)」である。
【0018】
一般式(I)中、Lは2価連結基又は単なる結合を表す。2価連結基の例としては、炭素数1〜18の置換又は無置換の直鎖又は分岐のアルキレン基(メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、イソプロピレン基、テトラフルオロエチレン基等)、炭素数1〜18のオキシアルキレン基(-CH2CH2OCH2CH2-、-CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2-等)、炭素数1〜18のアルキレンオキシ及びフェニレンオキシ基(-CH2CH2O-、-CH2CH2CH2O-、-CH2CH2OCH2CH2O-、-PhO-等)、炭素数1〜18のアルキレンアミノ基及びフェニレンアミノ基(-(CH2CH2)2N-、-(OCH2CH2)2N-、-PhNH-等)、炭素数1〜18のアルキレンチオ基又はフェニレンチオ基(-CH2CH2S-、-CH2CH2CH2S-、-CH2CH2OCH2CH2CH2S-、-PhS-等)、炭素数6〜20の置換又は無置換のフェニレン基、スルファモイル連結基(-SO2NH-)、カルバモイル連結基(-CONH-)、アミド連結基(-NHCO-)、スルホンアミド連結基(-NHSO2-)、ウレイド連結基(-NHCONH-)、チオウレイド連結基(-NHCSNH-)、ウレタン連結基(-OCONH-)、チオウレタン連結基(-OCSNH-)、オキシカルボニル連結基(-OCO-)、カルボニルオキシ連結基(-CO2-)、ヘテロ環連結基、これらの組み合わせ等が挙げられる。Lは炭素数1〜6のアルキレン基又は単なる結合であるのが好ましく、単なる結合であるのが特に好ましい。
【0019】
一般式(I)中、(A1-L)の数を示すn1は1〜3の整数である。n1は1であるのが好ましい。
【0020】
一般式(I)において、A1N - を有する基であり、A2ピリジル基又はイミダゾリル基であり、Mがアルカリ金属カチオン又はイミダゾリウムカチオンであり、Lが単なる結合であり、且つn1が1であることが好ましい。更に、A1がR1SO2N--(R1は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す)であり、A2がピリジル基であり、Mがリチウムカチオン又はイミダゾリウムカチオンであり、Lが単なる結合であり、且つn1が1であることが特に好ましい。
【0021】
化合物(I)の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0022】
【化3】
【0023】
【化4】
【0024】
【化5】
【0025】
【化6】
【0026】
【化7】
【0028】
化合物(I)は公知の方法を適用して容易に合成することができる。例えばA1がN-を有する基である場合、アミン又はアミドと求電子試剤(酸ハロゲン化物、酸無水物、ハロゲン化アルキル、ハロゲン置換ヘテロ環化合物等)の求核置換反応、アミン又はアミドと酸(カルボン酸等)との縮合反応等によりアミドやイミド等を調製し、これに塩基(アルカリ金属の水酸化物等)を添加したりカチオン交換を行って塩を形成することによって、化合物(I)を簡便かつ高収率で得ることができる。
【0029】
[II]化合物(II)
本発明の光電変換素子の作成方法においては、半導体微粒子を化合物(I)と下記一般式(II)で表される化合物(II)で処理することが好ましい。
【化9】
【0030】
一般式(II)中、Xは酸素原子を表す。
【0031】
一般式(II)中、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子、脂肪族炭化水素基、アリール基、ヘテロ環基、-OR4、-N(R5)(R6)、-C(=O)R7、-C(=S)R8又はSO2R9を表す。ここで、R4及びR10はそれぞれ水素原子又は脂肪族炭化水素基を表し、R5及びR6はR1及びR2と同義であり、R7、R8及びR9は後に述べるYと同義である。
【0032】
R1及びR2が脂肪族炭化水素基を表す場合、その例としては炭素数1〜30の直鎖又は分岐の無置換アルキル基(例えばメチル基、エチル基、i-プロピル基、n-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、2-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、t-オクチル基、2-エチルヘキシル基、1,5-ジメチルヘキシル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-ヘキサデシル基、n-オクタデシル基等)、炭素数1〜30の直鎖又は分岐の置換アルキル基(例えばN,N-ジメチルアミノプロピル基、トリフルオロエチル基、トリ-n-ヘキシルアンモニムプロピル基、ピリジルプロピル基、トリエトキシシリルプロピル基、トリメトキシシリルプロピル基、トリクロロシリルメチル基、カルボキシメチル基、スルホエチル基、スルホメチル基、ホスホプロピル基、ジメトキシホスホプロピル基、n-ブトキシプロピル基、メトキシエトキシエチル基、ポリエトキシエチル基、アセチルオキシエチル基、メチルチオプロピル基、3-(N-エチルウレイド)プロピル基等)、炭素数3〜18の置換又は無置換の環状アルキル基(例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、アダマンチル基、シクロドデシル基等)、炭素数2〜16のアルケニル基(例えばアリル基、2-ブテニル基、3-ペンテニル基等)、炭素数2〜10のアルキニル基(例えばプロパルギル基、3-ペンチニル基等)、炭素数6〜16のアラルキル基(例えばベンジル基等)等が挙げられる。
R1及びR2がアリール基を表す場合、その例としては炭素数6〜30の置換又は無置換のフェニル基(例えば無置換フェニル基、メチルフェニル基、オクチルフェニル基、シアノフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基、ジエチルホスホメチルフェニル基、スルホフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、トリメトキシシリルフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、カルボキシフェニル基、ブトキシフェニル基等)、ナフチル基(例えば無置換ナフチル基、4-スルホナフチル基等)等が挙げられる。
R1及びR2がヘテロ環基を表す場合、その例としては置換又は無置換の含窒素ヘテロ5員環(例えばイミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピロール基等)、置換又は無置換の含窒素ヘテロ6員環(例えばピリジル基、キノリル基、ピリミジル基、トリアジノ基、モルホリノ基等)、フリル基、チオフリル基等が挙げられる。
また、R1及びR2が-OR4を表す場合、R4で表される脂肪族炭化水素基の例としては、上述したR1及びR2が表す脂肪族炭化水素基の例と同様のものが挙げられる。R1及びR2が-N(R5)(R6)を表す場合のR5及びR6はR1及びR2と同義であり、-C(=O)R7、-C(=S)R8及びSO2R9を表す場合のR7、R8及びR9は以下に示すYと同義である。
【0033】
R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の置換又は無置換アルキル基、炭素数6〜20の置換又は無置換フェニル基、含窒素ヘテロ環基、-N(R5)(R6)、-C(=O)R7或いはSO2R9であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜18の置換又は無置換アルキル基、炭素数6〜18の置換又は無置換フェニル基或いは含窒素ヘテロ6員環であることがより好ましく、水素原子、炭素数1〜16の置換又は無置換アルキル基或いは炭素数6〜16の置換又は無置換フェニル基であることが特に好ましく、R1が水素原子を表し、且つR2が水素原子、炭素数1〜16の置換又は無置換アルキル基或いは炭素数6〜16の置換又は無置換フェニル基を表すことが最も好ましい。
【0034】
一般式(II)中、Yは水素原子、脂肪族炭化水素基、アリール基、ヘテロ環基、-OR4、-N(R5)(R6)又は-SR10を表す。Yで表される脂肪族炭化水素基、アリール基、ヘテロ環基、-OR4、-N(R5)(R6)の例としては、上記R1及びR2の例と同様のものが挙げられる。-SR10を表す場合のR10は上記R4と同義である。
【0035】
Yは水素原子、炭素数1〜16の置換又は無置換アルキル基、炭素数6〜16の置換又は無置換フェニル基、含窒素ヘテロ環基或いは-N(R5)(R6)であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜12の置換又は無置換アルキル基、炭素数6〜12の置換又は無置換フェニル基、含窒素ヘテロ6員環或いは-N(R5)(R6)であることがより好ましく、-N(R5)(R6)であることが特に好ましく、-NH2を表すことが最も好ましい。
【0036】
また、一般式(II)中のX、Y、R1及びR2は互いに連結して環を形成してもよい。
【0037】
好ましいR5及びR6としては、上記R1及びR2の好ましい例と同様のものが挙げられ、好ましいR7、R8及びR9としては上記Yの好ましい例と同様のものが挙げられる。
【0039】
また、本発明で用いる化合物(II)はR 1 、R 2 及び/又はY上に置換基を有していてもよい。該置換基の好ましい例としては、-C(=O)OR'、-P(=O)(OR')2、-S(=O)OR'、-OR'、-B(OR')2、-Si(R11)(R12)(R13)等が挙げられる。R'はそれぞれ独立に水素原子又は脂肪族炭化水素基(例えばメチル基、エチル基等)を表し、R11、R12及びR13はそれぞれ独立にヒドロキシ基、アルキルオキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、i-プロピル基等)、イソシアネート基、ハロゲン原子(例えば塩素原子等)又は脂肪族炭化水素基(例えばメチル基、エチル基等)を表し、R11、R12及びR13のうち少なくとも1つはアルキルオキシ基、イソシアネート基又はハロゲン原子である。また、より好ましい置換基としては、-C(=O)OR'、-P(=O)(OR')2及び-Si(R11)(R12)(R13)が挙げられ、特に好ましくは-Si(R11)(R12)(R13)である。
【0040】
また、化合物(II)が電荷を有する場合には、電荷を中和するための対イオンとしてアニオン又はカチオンを有してもよい。該アニオン又はカチオンは特に制限されず、有機イオンであっても無機イオンであってもよい。代表的なアニオンの例としては、ハロゲン化物イオン(フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン)、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロりん酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、メタンスルホン酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ビス(トリフルオロエタンスルホニル)イミドイオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドイオン等が挙げられ、カチオンの例としてはアルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等)、アルカリ土類金属イオン(マグネシウムイオン、カルシウムイオン等)、置換又は無置換のアンモニウムイオン(無置換アンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン等)、置換又は無置換のピリジニウムイオン(無置換ピリジニウムイオン、4-フェニルピリジニウムイオン等)、置換又は無置換のイミダゾリウムイオン(N-メチルイミダゾリウムイオン等)等が挙げられる。
【0041】
以下に本発明で好ましく用いられる化合物(II)の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0042】
【化10】
【0043】
【化11】
【0044】
【化12】
【0045】
【化13】
【0046】
[III]処理方法
(A)化合物(I)のみを用いた処理方法
ここで「処理」とは、電荷輸送層を設置する前に、半導体微粒子と化合物(I)をある時間接触させる操作を意味し、接触後に半導体微粒子に化合物(I)が吸着していても、吸着していなくても構わない。また、該処理を施される半導体微粒子は、光電変換素子の作成の過程における如何なる状態であってもよいが、半導体微粒子膜が形成された後に処理することが好ましく、半導体微粒子に色素を吸着させた後に処理することが特に好ましい。一方、処理する化合物(I)は、溶媒に溶解した溶液(以後、処理溶液と記す)、若しくは分散させた分散液(以後、処理分散液と記す)として用いることが好ましいが、化合物自体が液体の場合は無溶媒で使用してもよい。より好ましくは処理溶液を用いた処理であり、その溶媒は有機溶剤であることが好ましい。
【0047】
有機溶剤を用いる場合は、化合物(I)の溶解性に応じて適宜選択できる。例えばアルコール類(メタノール、エタノール、t-ブタノール、ベンジルアルコール等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、3-メトキシプロピオニトリル等)、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、ジメチルスルホキシド、アミド類(N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセタミド等)、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、3-メチルオキサゾリジノン、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭酸エステル類(炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等)、ケトン類(アセトン、2-ブタノン、シクロヘキサノン等)、炭化水素(へキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン等)、これらの混合溶媒等が使用できる。このうちニトリル類、アルコール類及びアミド類は特に好ましい溶媒である。
【0048】
処理溶液又は処理分散液(以後、両液をまとめて処理液と記す)を用いて処理する方法としては、半導体微粒子膜を該処理液に浸漬する方法(以後、浸漬処理法と記す)が好ましく挙げられる。また、処理液をスプレー状に一定時間吹き付ける方法(以後、スプレー法と記す)も適用できる。浸漬処理法を行う際、処理液の温度や処理にかける時間は任意に設定してよいが、20℃〜80℃の温度で、30秒〜24時間浸漬処理することが好ましい。浸漬処理の後には溶媒により洗浄するのが好ましい。洗浄に用いる溶媒は処理液に用いた溶媒と同一の組成のものか、ニトリル類、アルコール類、アミド類等の極性溶媒が好ましい。
【0049】
また、処理液は化合物(I)が少なくとも1種と、適宜これ以外の物質を添加剤として含有してもよい。添加剤を使用する例としては、色素間の凝集などの相互作用を低減するため、界面活性な性質、構造をもった無色の化合物を色素に添加し、半導体微粒子に共吸着させる場合等がある。添加剤の例としては、カルボキシル基を有するステロイド化合物(例えばケノデオキシコール酸、コール酸等)、紫外線吸収剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0050】
処理液中における化合物(I)の濃度は、好ましくは1×10-6〜2mol/Lであり、さらに好ましくは1×10-5〜5×10-1mol/Lである。
【0051】
(B)化合物(I)及び化合物(II)を用いた処理方法
上述したように、本発明では半導体微粒子を化合物(I)と化合物(II)で処理することが好ましい。ここでいう「処理」とは、電荷輸送層を設置する前に、半導体微粒子を化合物(I)及び化合物(II)にそれぞれある時間接触させる操作を意味し、接触後に半導体微粒子に化合物(I)又は化合物(II)が吸着していても、吸着していなくても構わない。また、該処理を施される半導体微粒子は、光電変換素子の作成の過程における如何なる状態であってもよいが、半導体微粒子膜が形成された後に処理することが好ましく、半導体微粒子に色素を吸着させた後に処理することが特に好ましい。一方、処理する化合物(I)及び化合物(II)は、処理溶液若しくは分散液として用いることが好ましいが、化合物自体が液体の場合は無溶媒で使用してもよい。より好ましくは処理溶液を用いた処理であり、その溶媒は有機溶剤であることが好ましい。有機溶剤を用いる場合は、上述した化合物(I)のみで処理する場合と同様の有機溶剤が使用できる。
【0052】
化合物(I)による処理と化合物(II)による処理は同時に行ってもそれぞれ別々に行ってもよく、同時に行うのが好ましい。同時に行う場合、化合物(I)及び化合物(II)の両方が溶解する溶液を用い、混合溶液として処理することが特に好ましい。
【0053】
化合物(I)及び化合物(II)の混合処理液を用いて処理する場合、化合物(I)のみで処理する場合と同様に、浸漬処理法が好ましく使用できる。浸漬処理法を行う際の処理液の温度や処理にかける時間は、化合物(I)のみで処理する場合と同様に任意に設定してよい。
【0054】
また処理液には、化合物(I)のみで処理する場合と同様にカルボキシル基を有するステロイド化合物、紫外線吸収剤、界面活性剤等の添加剤や、塩基を加えてもよい。
【0055】
化合物(II)による処理を、該化合物を含有する処理液を用いて行う場合、処理液中の化合物(II)の濃度は好ましくは1×10-6〜2mol/Lであり、より好ましくは1×10-5〜5×10-1mol/Lである。この好ましい濃度は、化合物(I)及び化合物(II)の混合処理液を用いて処理する場合も同様である。
【0056】
[IV]光電変換素子
本発明の光電変換素子は上記本発明の作成方法で作成される。本発明の光電変換素子は、好ましくは図1に示すように、導電層10、下塗り層60、感光層20、電荷輸送層30、対極導電層40の順に積層してなり、感光層20を色素22によって増感した半導体微粒子21とこの半導体微粒子21の間の空隙に浸透した電荷輸送材料23とから構成する。感光層20中の電荷輸送材料23は通常、電荷輸送層30に用いる材料と同じものである。また光電変換素子に強度を付与するため、導電層10及び/又は対極導電層40の下地として基板50を設けてもよい。本発明では、導電層10及び任意で設ける基板50からなる層を「導電性支持体」、対極導電層40及び任意で設ける基板50からなる層を「対極」と呼ぶ。なお、図1中の導電層10、対極導電層40、基板50は、それぞれ透明導電層10a、透明対極導電層40a、透明基板50aであってもよい。この光電変換素子を外部負荷に接続して電気的仕事をさせる目的(発電)で作られたものが光電池であり、光学的情報のセンシングを目的に作られたものが光センサーである。光電池のうち、電荷輸送材料が主としてイオン輸送材料からなる場合を特に光電気化学電池と呼び、また、太陽光による発電を主目的とする場合を太陽電池と呼ぶ。
【0057】
図1に示す光電変換素子において、半導体微粒子がn型である場合、色素22により増感された半導体微粒子21を含む感光層20に入射した光は色素22等を励起し、励起された色素22等中の高エネルギーの電子が半導体微粒子21の伝導帯に渡され、さらに拡散により導電層10に到達する。このとき色素22等の分子は酸化体となっている。光電池においては、導電層10中の電子が外部回路で仕事をしながら対極導電層40及び電荷輸送層30を経て色素22等の酸化体に戻り、色素22が再生する。感光層20は負極(光アノード)として働き、対極導電層40は正極として働く。それぞれの層の境界(例えば導電層10と感光層20との境界、感光層20と電荷輸送層30との境界、電荷輸送層30と対極導電層40との境界等)では、各層の構成成分同士が相互に拡散混合していてもよい。以下各層について詳細に説明する。
【0058】
(A)導電性支持体
導電性支持体は、(1)導電層の単層、又は(2)導電層及び基板の2層からなる。(1)の場合は、導電層として強度や密封性が十分に保たれるような材料、例えば、金属材料(白金、金、銀、銅、亜鉛、チタン、アルミニウム、これらを含む合金等)を用いることができる。(2)の場合、感光層側に導電剤を含む導電層を有する基板を使用することができる。好ましい導電剤としては金属(白金、金、銀、銅、亜鉛、チタン、アルミニウム、インジウム、これらを含む合金等)、炭素、及び導電性金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素又はアンチモンをドープしたもの等)が挙げられる。導電層の厚さは0.02〜10μm程度が好ましい。
【0059】
導電性支持体は表面抵抗が低い程よい。好ましい表面抵抗の範囲は50Ω/□以下であり、さらに好ましくは20Ω/□以下である。
【0060】
導電性支持体側から光を照射する場合には、導電性支持体は実質的に透明であるのが好ましい。実質的に透明であるとは、可視〜近赤外領域(400〜1200nm)の光の一部又は全域において透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であるのが好ましく、80%以上がより好ましい。特に、感光層が感度を有する波長域の透過率が高いことが好ましい。
【0061】
透明導電性支持体としては、ガラス又はプラスチック等の透明基板の表面に導電性金属酸化物からなる透明導電層を塗布又は蒸着等により形成したものが好ましい。透明導電層として好ましいものは、フッ素もしくはアンチモンをドーピングした二酸化スズ或いはインジウム−スズ酸化物(ITO)である。透明基板には低コストと強度の点で有利なソーダガラス、アルカリ溶出の影響のない無アルカリガラス等のガラス基板のほか、透明ポリマーフィルムを用いることができる。透明ポリマーフィルムの材料としては、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエステルスルフォン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ樹脂等が使用可能である。十分な透明性を確保するために、導電性金属酸化物の塗布量はガラス又はプラスチックの支持体1m2当たり0.01〜100gとするのが好ましい。
【0062】
透明導電性支持体の抵抗を下げる目的で金属リードを用いるのが好ましい。金属リードの材質は白金、金、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、銀等の金属が好ましい。金属リードは透明基板に蒸着、スパッタリング等で設置し、その上に導電性の酸化スズ又はITO膜からなる透明導電層を設けるのが好ましい。金属リード設置による入射光量の低下は、好ましくは10%以内、より好ましくは1〜5%とする。
【0063】
(B)感光層
感光層において、半導体は感光体として作用し、光を吸収して電荷分離を行い電子と正孔を生ずる。色素増感した半導体では、光吸収及びこれによる電子及び正孔の発生は主として色素において起こり、半導体微粒子はこの電子(又は正孔)を受け取り、伝達する役割を担う。本発明で用いる半導体は光励起下で伝導体電子がキャリアーとなり、アノード電流を与えるn型半導体であることが好ましい。
【0064】
(1)半導体
半導体としては、シリコン、ゲルマニウムのような単体半導体、III-V族系化合物半導体、金属のカルコゲナイド(酸化物、硫化物、セレン化物、それらの複合物等)、ペロブスカイト構造を有する化合物(チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム等)等を使用することができる。
【0065】
好ましい金属のカルコゲナイドとして、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ又はタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン又はビスマスの硫化物、カドミウム又は鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム−ヒ素又は銅−インジウムのセレン化物、銅−インジウムの硫化物等が挙げられる。さらには、MxOySz又はM1xM2yOz(M、M1及びM2はそれぞれ金属元素、Oは酸素、x、y、zは価数が中性になる組み合わせの数)のような複合物も好ましく用いることができる。
【0066】
本発明に用いる半導体の好ましい具体例は、Si、TiO2、SnO2、Fe2O3、WO3、ZnO、Nb2O5、CdS、ZnS、PbS、Bi2S3、CdSe、CdTe、SrTiO3、GaP、InP、GaAs、CuInS2、CuInSe2等であり、より好ましくはTiO2、ZnO、SnO2、Fe2O3、WO3、Nb2O5、CdS、PbS、CdSe、SrTiO3、InP、GaAs、CuInS2又はCuInSe2であり、特に好ましくはTiO2又はNb2O5であり、最も好ましくはTiO2である。TiO2の中でもアナターゼ型結晶を70%以上含むTiO2が好ましく、100%アナターゼ型結晶のTiO2が特に好ましい。また、これらの半導体中の電子伝導性を上げる目的で金属をドープすることも有効である。ドープする金属としては2又は3価の金属が好ましい。半導体から電荷輸送層へ逆電流が流れるのを防止する目的で、半導体に1価の金属をドープすることも有効である。
【0067】
本発明に用いる半導体は単結晶でも多結晶でもよいが、製造コスト、原材料確保、エネルギーペイバックタイム等の観点からは多結晶が好ましく、半導体微粒子の層は多孔質膜であるのが特に好ましい。また、一部アモルファス部分を含んでいてもよい。
【0068】
半導体微粒子の粒径は一般にnm〜μmのオーダーであるが、投影面積を円に換算したときの直径から求めた一次粒子の平均粒径は5〜200nmであるのが好ましく、8〜100nmがより好ましい。また分散液中の半導体微粒子(二次粒子)の平均粒径は0.01〜30μmが好ましい。粒径分布の異なる2種類以上の微粒子を混合してもよく、この場合小さい粒子の平均サイズは25nm以下であるのが好ましく、より好ましくは10nm以下である。入射光を散乱させて光捕獲率を向上させる目的で、粒径の大きな、例えば100〜300nm程度の半導体粒子を混合することも好ましい。
【0069】
種類の異なる2種以上の半導体微粒子を混合して用いてもよい。2種以上の半導体微粒子を混合して使用する場合、一方はTiO2、ZnO、Nb2O5又はSrTiO3であることが好ましい。また他方はSnO2、Fe2O3又はWO3であることが好ましい。さらに好ましい組み合わせとしては、ZnOとSnO2、ZnOとWO3、ZnOとSnO2とWO3等の組み合わせを挙げることができる。2種以上の半導体微粒子を混合して用いる場合、それぞれの粒径が異なっていてもよい。特に上記TiO2、ZnO、Nb2O5又はSrTiO3の粒径が大きく、SnO2、Fe2O3又はWO3が小さい組み合わせが好ましい。好ましくは大きい粒径の粒子を100nm以上、小さい粒径の粒子を15nm以下とする。
【0070】
半導体微粒子の作製法としては、作花済夫の「ゾル−ゲル法の科学」アグネ承風社(1998年)、技術情報協会の「ゾル−ゲル法による薄膜コーティング技術」(1995年)等に記載のゾル−ゲル法や、杉本忠夫の「新合成法ゲル−ゾル法による単分散粒子の合成とサイズ形態制御」、まてりあ, 第35巻, 第9号, 1012〜1018頁(1996年)等に記載のゲル−ゾル法が好ましい。またDegussa社が開発した塩化物を酸水素塩中で高温加水分解により酸化物を作製する方法も好ましく使用できる。
【0071】
半導体微粒子が酸化チタンの場合、上記ゾル-ゲル法、ゲル−ゾル法、塩化物の酸水素塩中での高温加水分解法はいずれも好ましいが、さらに清野学の「酸化チタン 物性と応用技術」技報堂出版(1997年)に記載の硫酸法又は塩素法を用いることもできる。さらにゾル−ゲル法として、Barbeらのジャーナル・オブ・アメリカン・セラミック・ソサエティー, 第80巻, 第12号, 3157〜3171頁(1997年)に記載の方法や、Burnsideらのケミストリー・オブ・マテリアルズ, 第10巻, 第9号, 2419〜2425頁に記載の方法も好ましい。
【0072】
(2)半導体微粒子層
半導体微粒子を導電性支持体上に塗布するには、半導体微粒子の分散液又はコロイド溶液を導電性支持体上に塗布する方法の他に、前述のゾル−ゲル法等を使用することもできる。光電変換素子の量産化、半導体微粒子液の物性、導電性支持体の融通性等を考慮した場合、湿式の製膜方法が比較的有利である。湿式の製膜方法としては、塗布法、印刷法、電解析出法及び電着法が代表的である。また、金属を酸化する方法、金属溶液から配位子交換等で液相にて析出させる方法(LPD法)、スパッタ等で蒸着する方法、CVD法、或いは加温した基板上に熱分解する金属酸化物プレカーサーを吹き付けて金属酸化物を形成するSPD法を利用することもできる。
【0073】
半導体微粒子の分散液を作製する方法としては、前述のゾル−ゲル法の他に、乳鉢ですり潰す方法、ミルを使って粉砕しながら分散する方法、半導体を合成する際に溶媒中で微粒子として析出させそのまま使用する方法等が挙げられる。
【0074】
分散媒としては、水及び各種の有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、シトロネロール、ターピネオール、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル等)が使用できる。分散の際、必要に応じてポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのようなポリマー、界面活性剤、酸、キレート剤等を分散助剤として用いてもよい。ポリエチレングリコールの分子量を変えることで、分散液の粘度が調節可能となり、さらに剥がれにくい半導体層を形成したり、半導体層の空隙率をコントロールできるので、ポリエチレングリコールを添加することは好ましい。
【0075】
塗布方法としては、アプリケーション系としてローラ法、ディップ法等、メータリング系としてエアーナイフ法、ブレード法等、またアプリケーションとメータリングを同一部分にできるものとして特公昭58-4589号に開示されているワイヤーバー法、米国特許2681294号、同2761419号、同2761791号等に記載のスライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法等が好ましい。また汎用機としてスピン法やスプレー法も好ましい。湿式印刷方法としては、凸版、オフセット及びグラビアの三大印刷法をはじめ、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等が好ましい。これらの中から、液粘度やウェット厚さに応じて製膜方法を選択してよい。
【0076】
半導体微粒子層は単層に限らず、粒径の違った半導体微粒子の分散液を多層塗布したり、種類が異なる半導体微粒子(或いは異なるバインダー、添加剤)を含有する塗布層を多層塗布したりすることもできる。一度の塗布で膜厚が不足の場合にも多層塗布は有効である。
【0077】
一般に半導体微粒子層の厚さ(感光層の厚さと同じ)が厚くなるほど、単位投影面積当たりの担持色素量が増えるため光の捕獲率が高くなるが、生成した電子の拡散距離が増すため電荷再結合によるロスも大きくなる。したがって、半導体微粒子層の好ましい厚さは0.1〜100μmである。光電池に用いる場合、半導体微粒子層の厚さは1〜30μmが好ましく、2〜25μmがより好ましい。半導体微粒子の支持体1m2当たりの塗布量は0.5〜100gが好ましく、3〜50gがより好ましい。
【0078】
半導体微粒子を導電性支持体上に塗布した後で半導体微粒子同士を電子的に接触させるとともに、塗膜強度の向上や支持体との密着性を向上させるために、加熱処理するのが好ましい。好ましい加熱温度の範囲は40〜700℃であり、より好ましくは100〜600℃である。また加熱時間は10分〜10時間程度である。ポリマーフィルムのように融点や軟化点の低い支持体を用いる場合、高温処理は支持体の劣化を招くため好ましくない。またコストの観点からもできる限り低温(例えば50〜350℃)であるのが好ましい。低温化は5nm以下の小さい半導体微粒子や鉱酸、金属酸化物プレカーサーの存在下での加熱処理等により可能となり、また、紫外線、赤外線、マイクロ波等の照射や電界、超音波を印加することにより行うこともできる。同時に不要な有機物等を除去する目的で、上記の照射や印加のほか加熱、減圧、酸素プラズマ処理、純水洗浄、溶剤洗浄、ガス洗浄等を適宜組み合わせて併用することが好ましい。
【0079】
加熱処理後、半導体微粒子の表面積を増大させたり、半導体微粒子近傍の純度を高め、色素から半導体微粒子への電子注入効率を高める目的で、例えば四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキ処理や三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行ってもよい。また、半導体微粒子から電荷輸送層へ逆電流が流れるのを防止する目的で、粒子表面に色素以外の電子伝導性の低い有機物を吸着させることも有効である。吸着させる有機物としては疎水性基を持つものが好ましい。
【0080】
半導体微粒子層は、多くの色素を吸着することができるように大きい表面積を有することが好ましい。半導体微粒子の層を支持体上に塗布した状態での表面積は、投影面積に対して10倍以上であるのが好ましく、さらに100倍以上であるのが好ましい。この上限は特に制限はないが、通常1000倍程度である。
【0081】
(3)色素
感光層に用いる増感色素は、可視域や近赤外域に吸収を有し、半導体を増感しうる化合物なら任意に用いることができるが、金属錯体色素、メチン色素、ポルフィリン系色素又はフタロシアニン系色素が好ましく、金属錯体色素が特に好ましい。また、光電変換の波長域をできるだけ広くし、かつ変換効率を上げるため、二種類以上の色素を併用又は混合して使用することができる。この場合、目的とする光源の波長域と強度分布に合わせるように、併用又は混合する色素とその割合を選ぶことができる。
【0082】
こうした色素は半導体微粒子の表面に対して吸着能力の有る適当な結合基(interlocking group)を有しているのが好ましい。好ましい結合基としては、-COOH基、-OH基、-SO2H基、-P(O)(OH)2基及び-OP(O)(OH)2基のような酸性基、並びにオキシム、ジオキシム、ヒドロキシキノリン、サリチレート及びα-ケトエノレートのようなπ伝導性を有するキレート化基が挙げられる。中でも-COOH基、-P(O)(OH)2基及び-OP(O)(OH)2基が特に好ましい。これらの基はアルカリ金属等と塩を形成していてもよく、また分子内塩を形成していてもよい。またポリメチン色素の場合、メチン鎖がスクアリリウム環やクロコニウム環を形成する場合のように酸性基を含有するなら、この部分を結合基としてもよい。以下、感光層に用いる好ましい増感色素を具体的に説明する。
【0083】
(a)金属錯体色素
色素が金属錯体色素である場合、金属フタロシアニン色素、金属ポルフィリン色素又はルテニウム錯体色素が好ましく、ルテニウム錯体色素が特に好ましい。ルテニウム錯体色素としては、例えば米国特許4927721号、同4684537号、同5084365号、同5350644号、同5463057号、同5525440号、特開平7-249790号、特表平10-504512号、WO98/50393号、特開2000-26487号等に記載のものが挙げられる。
【0084】
本発明で用いるルテニウム錯体色素は下記一般式(III):
(A3)pRu(B-a)(B-b)(B-c) ・・・(III)
により表されるのが好ましい。一般式(III)中、A3は1又は2座の配位子を表し、好ましくはCl、SCN、H2O、Br、I、CN、NCO、SeCN、β-ジケトン誘導体、シュウ酸誘導体及びジチオカルバミン酸誘導体からなる群から選ばれた配位子である。pは0〜3の整数である。B-a、B-b及びB-cはそれぞれ独立に下記式B-1〜B-10のいずれかにより表される有機配位子を表す。
【0085】
【化14】
【0086】
式B-1〜B-10中、R11はそれぞれ水素原子又は置換基を表し、該置換基の例としてはハロゲン原子、炭素原子数1〜12の置換又は無置換のアルキル基、炭素原子数7〜12の置換又は無置換のアラルキル基、炭素原子数6〜12の置換又は無置換のアリール基、前述の酸性基(これらの酸性基は塩を形成していてもよい)及びキレート化基が挙げられる。ここで、アルキル基及びアラルキル基のアルキル部分は直鎖状でも分岐状でもよく、またアリール基及びアラルキル基のアリール部分は単環でも多環(縮合環、環集合)でもよい。B-a、B-b及びB-cは同一でも異なっていてもよく、いずれか1つ又は2つでもよい。
【0087】
好ましい金属錯体色素の具体例を以下に示すが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0088】
【化15】
【0089】
【化16】
【0090】
(b)メチン色素
本発明で使用できる好ましいメチン色素は、シアニン色素、メロシアニン色素、スクワリリウム色素等のポリメチン色素である。好ましいポリメチン色素の例としては、特開平11-35836号、特開平11-67285号、特開平11-86916号、特開平11-97725号、特開平11-158395号、特開平11-163378号、特開平11-214730号、特開平11-214731号、特開平11-238905号、特開2000-26487号、欧州特許892411号、同911841号及び同991092号に記載の色素が挙げられる。好ましいメチン色素の具体例を以下に示す。
【0091】
【化17】
【0092】
【化18】
【0093】
(4)半導体微粒子への色素の吸着
半導体微粒子への色素の吸着は、色素の溶液中によく乾燥した半導体微粒子層を有する導電性支持体を浸漬するか、色素の溶液を半導体微粒子層に塗布する方法を用いることができる。前者の場合、浸漬法、ディップ法、ローラ法、エアーナイフ法等が使用可能である。浸漬法の場合、色素の吸着は室温で行ってもよいし、特開平7-249790号に記載されているように加熱還流して行ってもよい。また後者の塗布方法としては、ワイヤーバー法、スライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法等がある。また、インクジェット法等によって色素を画像状に塗布し、この画像そのものを光電変換素子とすることもできる。
【0094】
色素の溶液(吸着液)に用いる溶媒は、好ましくはアルコール類(メタノール、エタノール、t-ブタノール、ベンジルアルコール等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、3-メトキシプロピオニトリル等)、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、ジメチルスルホキシド、アミド類(N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセタミド等)、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、3-メチルオキサゾリジノン、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭酸エステル類(炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等)、ケトン類(アセトン、2-ブタノン、シクロヘキサノン等)、炭化水素(へキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン等)又はこれらの混合溶媒である。
【0095】
色素の全吸着量は、半導体微粒子層の単位面積(1m2)当たり0.01〜100mmolとするのが好ましい。また色素の半導体微粒子に対する吸着量は、半導体微粒子1g当たり0.01〜1mmolの範囲であるのが好ましい。このような色素の吸着量とすることにより半導体における増感効果が十分に得られる。これに対し、色素が少なすぎると増感効果が不十分となり、また色素が多すぎると半導体に付着していない色素が浮遊し、増感効果を低減させる原因となる。色素の吸着量を増大させるためには、吸着前に加熱処理を行うのが好ましい。加熱処理後、半導体微粒子表面に水が吸着するのを避けるため、常温に戻さずに半導体微粒子層の温度が60〜150℃の間で素早く色素の吸着操作を行うのが好ましい。
【0096】
未吸着の色素は、吸着後速やかに洗浄により除去するのが好ましい。洗浄は湿式洗浄槽を使い、アセトニトリル等の極性溶剤、アルコール系溶剤のような有機溶媒等で行うのが好ましい。
【0097】
(5)色素吸着液への添加剤
色素間の凝集等の相互作用を低減したり、色素の吸着量を増加させたりする目的で、無色の化合物を色素吸着液に添加し半導体微粒子に共吸着させてよい。このような無色の化合物の好ましい例としては、カルボキシル基を有するステロイド化合物(ケノデオキシコール酸等)、スルホン酸化合物、ウレイド基を有する化合物(以下、ウレイド化合物と称する)、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が挙げられる。中でもウレイド化合物及びアルカリ金属塩がより好ましく、アルカリ金属塩が特に好ましい。アルカリ金属塩の中ではリチウム塩が最も好ましい。
【0098】
上記ウレイド化合物の好ましい具体例を以下に示す。ウレイド化合物の添加量は、好ましくは色素に対して0.1〜1000倍モルであり、より好ましくは1〜500倍モルであり、特に好ましくは10〜100倍モルである。
【0099】
【化19】
【0100】
上記アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩において、アルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンの対となって塩を形成するアニオン種は特に限定されない。これらの塩はハロゲン塩(フッ素塩、塩素塩、臭素塩、ヨウ素塩等)、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ホスホン酸塩、スルホンアミド塩、スルホニルイミド塩(ビストリフルオロメタンスルホンイミド塩、ビスペンタフルオロエタンスルホンイミド塩等)、スルホニルメチド塩、硫酸塩、チオシアン酸塩、シアン酸塩、過塩素酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロりん酸塩等であってよく、好ましくはヨウ素塩、ビストリフルオロメタンスルホンイミド塩、チオシアン酸塩、テトラフルオロホウ酸塩又はヘキサフルオロりん酸塩であり、より好ましくはヨウ素塩、ビストリフルオロメタンスルホンイミド塩又はテトラフルオロホウ酸塩であり、特に好ましくはヨウ素塩である。アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩の添加量は、好ましくは色素に対して0.1〜1000倍モルであり、より好ましくは1〜500倍モルであり、特に好ましくは10〜100倍モルである。
【0101】
色素間の凝集を低減する目的では、界面活性な性質を持つ、カルボキシル基を有するステロイド化合物(ケノデオキシコール酸等)や下記のようなスルホン酸塩類などを色素吸着液に添加してもよい。
【0102】
【化20】
【0103】
(C)電荷輸送層
電荷輸送層は色素の酸化体に電子を補充する機能を有する電荷輸送材料を含有する層である。本発明で用いる電荷輸送材料は、(i)イオンが関わる電荷輸送材料であっても、(ii)固体中のキャリアー移動が関わる電荷輸送材料であってもよい。(i)イオンが関わる電荷輸送材料としては、酸化還元対イオンを含有する溶融塩電解質組成物、酸化還元対のイオンが溶解した溶液(電解液)、酸化還元対の溶液をポリマーマトリクスのゲルに含浸したいわゆるゲル電解質組成物、固体電解質組成物等が挙げられ、(ii)固体中のキャリアー移動が関わる電荷輸送材料としては、電子輸送材料や正孔(ホール)輸送材料等が挙げられる。これらの電荷輸送材料は、複数併用することができる。本発明では、電荷輸送層に溶融塩電解質組成物又は電解液を用いるのが好ましい。
【0104】
(1)溶融塩電解質組成物
溶融塩電解質は、光電変換効率と耐久性の両立という観点から、電荷輸送材料に好ましく使用される。溶融塩電解質とは、室温において液状であるか、又は低融点の電解質であり、例えばWO95/18456号、特開平8-259543号、電気化学, 第65巻, 11号, 923頁 (1997年)等に記載されているピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等を挙げることができる。溶融塩の融点は100℃以下であるのが好ましく、室温付近において液状であるのが特に好ましい。
【0105】
本発明では、下記一般式(Y-a)、(Y-b)及び(Y-c)のいずれかにより表される溶融塩が好ましく使用できる。
【0106】
【化21】
【0107】
一般式(Y-a)中のQy1は窒素原子と共に5又は6員環の芳香族カチオンを形成する原子団を表す。Qy1は炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれる原子により構成されるのが好ましい。Qy1が形成する5員環はオキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、インドール環又はピロール環であるのが好ましく、オキサゾール環、チアゾール環又はイミダゾール環であるのがより好ましく、オキサゾール環又はイミダゾール環であるのが特に好ましい。Qy1が形成する6員環はピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環又はトリアジン環であるのが好ましく、ピリジン環であるのが特に好ましい。
【0108】
一般式(Y-b)中のAy1は窒素原子又はリン原子を表す。
【0109】
一般式(Y-a)、(Y-b)及び(Y-c)中のRy1〜Ry11はそれぞれ独立に置換又は無置換のアルキル基(好ましくは炭素原子数1〜24であり、直鎖状であっても分岐状であっても、また環式であってもよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、t-オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、2-ヘキシルデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等)、或いは置換又は無置換のアルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜24であり、直鎖状であっても分岐状であってもよく、例えばビニル基、アリル基等)を表す。Ry1〜Ry11はそれぞれ独立に、より好ましくは炭素原子数2〜18のアルキル基又は炭素原子数2〜18のアルケニル基であり、特に好ましくは炭素原子数2〜6のアルキル基である。
【0110】
一般式(Y-b)中のRy2〜Ry5のうち2つ以上が互いに連結してAy1を含む非芳香族環を形成してもよく、一般式(Y-c)中のRy6〜Ry11のうち2つ以上が互いに連結して環を形成してもよい。
【0111】
上記Qy1及びRy1〜Ry11は置換基を有していてもよい。この置換基の好ましい例としては、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I等)、シアノ基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基等)、アリーロキシ基(フェノキシ基等)、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(エトキシカルボニル基等)、炭酸エステル基(エトキシカルボニルオキシ基等)、アシル基(アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等)、スルホニル基(メタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基等)、アシルオキシ基(アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、スルホニルオキシ基(メタンスルホニルオキシ基、トルエンスルホニルオキシ基等)、ホスホニル基(ジエチルホスホニル基等)、アミド基(アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、カルバモイル基(N,N-ジメチルカルバモイル基等)、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、2-カルボキシエチル基、ベンジル基等)、アリール基(フェニル基、トルイル基等)、複素環基(ピリジル基、イミダゾリル基、フラニル基等)、アルケニル基(ビニル基、1-プロペニル基等)、シリル基、シリルオキシ基等が挙げられる。
【0112】
一般式(Y-a)、(Y-b)及び(Y-c)のいずれかにより表される溶融塩は、Qy1及びRy1〜Ry11のいずれかを介して多量体を形成してもよい。
【0113】
一般式(Y-a)、(Y-b)及び(Y-c)中、X-はアニオンを表す。X-の好ましい例としてはハロゲン化物イオン(I-、Cl-、Br-等)、SCN-、BF4 -、PF6 -、ClO4 -、(CF3SO2)2N-、(CF3CF2SO2)2N-、CH3SO3 -、CF3SO3 -、CF3COO-、Ph4B-、(CF3SO2)3C-、等が挙げられる。X-はI-、SCN-、CF3SO3 -、CF3COO-、(CF3SO2)2N-又はBF4 -であるのがより好ましい。
【0114】
本発明で好ましく用いられる溶融塩の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
【0115】
【化22】
【0116】
【化23】
【0117】
【化24】
【0118】
【化25】
【0119】
【化26】
【0120】
【化27】
【0121】
溶融塩は単独で使用しても2種以上混合して使用してもよい。また、LiI等の他のヨウ素塩やLiBF4、CF3COOLi、CF3COONa、LiSCN、NaSCN等のアルカリ金属塩を併用することもできる。アルカリ金属塩の添加量は、組成物全体に対して0.02〜2質量%であるのが好ましく、0.1〜1質量%がさらに好ましい。
【0122】
溶融塩電解質は常温で溶融状態であるのが好ましく、これを含有する組成物には溶媒を用いない方が好ましい。後述する溶媒を添加しても構わないが、溶融塩の含有量は組成物全体に対して50質量%以上であるのが好ましく、90質量%以上であるのが特に好ましい。また、組成物が含む塩のうち50質量%以上がヨウ素塩であることが好ましい。
【0123】
溶融塩電解質組成物にはヨウ素を添加するのが好ましく、この場合、ヨウ素の含有量は、組成物全体に対して0.1〜20質量%であるのが好ましく、0.5〜5質量%であるのがより好ましい。
【0124】
(2)電解液
電解液は電解質、溶媒及び添加物から構成されることが好ましい。電解液には、電解質としてI2とヨウ化物(LiI、NaI、KI、CsI、CaI2等の金属ヨウ化物、テトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等の4級アンモニウム化合物ヨウ素塩等)の組み合わせ、Br2と臭化物(LiBr、NaBr、KBr、CsBr、CaBr2等の金属臭化物、テトラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロマイド等の4級アンモニウム化合物臭素塩等)の組み合わせのほか、フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩やフェロセン−フェリシニウムイオン等の金属錯体、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール−アルキルジスルフィド等のイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノン−キノン等を用いることができる。この中でもI2とLiI又はピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等の4級アンモニウム化合物ヨウ素塩を組み合わせた電解質が好ましい。上述した電解質は混合して用いてもよい。
【0125】
電解液中の電解質濃度は好ましくは0.1〜10Mであり、より好ましくは0.2〜4Mである。また、電解液にヨウ素を添加する場合の好ましいヨウ素の添加濃度は0.01〜0.5Mである。
【0126】
電解液に使用する溶媒は、粘度が低くイオン移動度を向上したり、若しくは誘電率が高く有効キャリアー濃度を向上したりして、優れたイオン伝導性を発現できる化合物であることが望ましい。このような溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、3-メチル-2-オキサゾリジノン等の複素環化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物、ジメチルスルホキシド、スルフォラン等の非プロトン極性物質、水等が挙げられ、これらを混合して用いることもできる。
【0127】
また、J. Am. Ceram. Soc., 80 (12) 3157-3171 (1997)に記載されているようなtert-ブチルピリジンや、2-ピコリン、2,6-ルチジン等の塩基性化合物や、上記化合物(I)を前述の溶融塩電解質組成物や電解液に添加することが好ましく、化合物(I)を添加することがより好ましい。塩基性化合物又は化合物(I)を電解液に添加する場合の好ましい濃度範囲は0.05〜2Mである。溶融塩電解質組成物に添加する場合、組成物全体に対する塩基性化合物又は化合物(I)の質量比は好ましくは0.1〜40質量%であり、より好ましくは1〜20質量%である。
【0128】
(3)ゲル電解質組成物
本発明では、ポリマー添加、オイルゲル化剤添加、多官能モノマー類を含む重合、ポリマーの架橋反応等の手法により、前述の溶融塩電解質組成物や電解液をゲル化(固体化)させて使用することもできる。ポリマー添加によりゲル化させる場合は、“Polymer Electrolyte Reviews-1及び2”(J. R. MacCallumとC. A. Vincentの共編、ELSEVIER APPLIED SCIENCE)に記載された化合物を使用することができるが、特にポリアクリロニトリル及びポリフッ化ビニリデンが好ましく使用できる。オイルゲル化剤添加によりゲル化させる場合は工業科学雑誌(J. Chem. Soc. Japan, Ind. Chem. Sec.), 46, 779 (1943)、J. Am. Chem. Soc., 111, 5542 (1989)、J. Chem. Soc., Chem. Commun., 1993, 390、Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 35, 1949 (1996)、Chem. Lett., 1996, 885、及びJ. Chem. Soc., Chem. Commun., 1997, 545に記載されている化合物を使用することができるが、好ましい化合物は分子構造中にアミド構造を有する化合物である。電解液をゲル化した例は特開平11-185863号に、溶融塩電解質をゲル化した例は特開2000-58140号にも記載されており、これらも本発明に適用できる。
【0129】
また、ポリマーの架橋反応によりゲル化させる場合、架橋可能な反応性基を含有するポリマー及び架橋剤を併用することが望ましい。この場合、好ましい架橋可能な反応性基は、アミノ基、含窒素複素環(ピリジン環、イミダゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、トリアゾール環、モルホリン環、ピペリジン環、ピペラジン環等)であり、好ましい架橋剤は、窒素原子に対して求電子反応可能な2官能以上の試薬(ハロゲン化アルキル類、ハロゲン化アラルキル類、スルホン酸エステル類、酸無水物、酸クロライド類、イソシアネート化合物、α,β-不飽和スルホニル化合物、α,β-不飽和カルボニル化合物、α,β-不飽和ニトリル化合物等)であり、特開2000-17076号及び同2000-86724号に記載されている架橋技術も適用できる。
【0130】
(4)正孔輸送材料
本発明では、溶融塩等のイオン伝導性電解質のかわりに、有機又は無機或いはこの両者を組み合わせた固体の正孔輸送材料を使用することができる。
【0131】
(a)有機正孔輸送材料
本発明に適用可能な有機正孔輸送材料としては、J. Hagen, et al., Synthetic Metal, 89, 215-220 (1997)、Nature, Vol.395, 8 Oct., p583-585 (1998)及びWO97/10617、特開昭59-194393号、特開平5-234681号、米国特許第4,923,774号、特開平4-308688号、米国特許第4,764,625号、特開平3-269084号、特開平4-129271号、特開平4-175395号、特開平4-264189号、特開平4-290851号、特開平4-364153号、特開平5-25473号、特開平5-239455号、特開平5-320634号、特開平6-1972号、特開平7-138562号、特開平7-252474号、特開平11-144773号等に示される芳香族アミン類や、特開平11-149821号、特開平11-148067号、特開平11-176489号等に記載のトリフェニレン誘導体類を好ましく用いることができる。また、Adv. Mater., 9, No.7, p557 (1997)、Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 34, No.3, p303-307 (1995)、JACS, Vol.120, No.4, p664-672 (1998)等に記載されているオリゴチオフェン化合物、K. Murakoshi, et al., Chem. Lett. p471 (1997)に記載のポリピロール、“Handbook of Organic Conductive Molecules and Polymers, Vol. 1,2,3,4”(NALWA著、WILEY出版)に記載されているポリアセチレン及びその誘導体、ポリ(p-フェニレン)及びその誘導体、ポリ(p-フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリトルイジン及びその誘導体等の導電性高分子を好ましく使用することができる。
【0132】
正孔輸送材料にはNature, Vol.395, 8 Oct., p583-585 (1998)に記載されているようにドーパントレベルをコントロールするためにトリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートのようなカチオンラジカルを含有する化合物を添加したり、酸化物半導体表面のポテンシャル制御(空間電荷層の補償)を行うためにLi[(CF3SO2)2N]のような塩を添加しても構わない。
【0133】
(b)無機正孔輸送材料
無機正孔輸送材料としては、p型無機化合物半導体を用いることができる。この目的のp型無機化合物半導体は、バンドギャップが2eV以上であることが好ましく、2.5eV以上であることがより好ましい。また、p型無機化合物半導体のイオン化ポテンシャルは色素の正孔を還元できる条件から、色素吸着電極のイオン化ポテンシャルより小さいことが必要である。使用する色素によってp型無機化合物半導体のイオン化ポテンシャルの好ましい範囲は異なってくるが、一般に4.5eV以上5.5eV以下であることが好ましく、さらに4.7eV以上5.3eV以下であることが好ましい。好ましいp型無機化合物半導体は1価の銅を含む化合物半導体であり、1価の銅を含む化合物半導体の例としてはCuI、CuSCN、CuInSe2、Cu(In,Ga)Se2、CuGaSe2、Cu2O、CuS、CuGaS2、CuInS2、CuAlSe2等が挙げられる。この中でもCuI及びCuSCNが好ましく、CuIが最も好ましい。このほかのp型無機化合物半導体としては、GaP、NiO、CoO、FeO、Bi2O3、MoO2、Cr2O3等を用いることができる。
【0134】
(5)電荷輸送層の形成
電荷輸送層の形成方法に関しては2通りの方法が可能である。1つは感光層の上に先に対極を貼り合わせておき、その間隙に液状の電荷輸送層を挟み込む方法である。もう1つは感光層上に直接、電荷輸送層を付与する方法で、対極はその後付与することになる。
【0135】
前者の方法の場合、電荷輸送層の挟み込み方法として、浸漬等による毛管現象を利用する常圧プロセス、又は常圧より低い圧力にして間隙の気相を液相に置換する真空プロセスを利用できる。
【0136】
後者の方法の場合、湿式の電荷輸送層においては未乾燥のまま対極を付与し、エッジ部の液漏洩防止措置を施すことになる。またゲル電解質の場合には湿式で塗布して重合等の方法により固体化する方法があり、その場合には乾燥、固定化した後に対極を付与することもできる。電解液のほか湿式有機正孔輸送材料やゲル電解質を付与する方法としては、前述の半導体微粒子層や色素の付与と同様の方法を利用できる。
【0137】
固体電解質や固体の正孔輸送材料の場合には真空蒸着法やCVD法等のドライ成膜処理で電荷輸送層を形成し、その後対極を付与することもできる。有機正孔輸送材料は真空蒸着法、キャスト法、塗布法、スピンコート法、浸漬法、電解重合法、光電解重合法等の手法により電極内部に導入することができる。無機固体化合物の場合も、キャスト法、塗布法、スピンコート法、浸漬法、電解析出法、無電解メッキ法等の手法により電極内部に導入することができる。
【0138】
(D)対極
対極は前述の導電性支持体と同様に、導電性材料からなる対極導電層の単層構造でもよいし、対極導電層と支持基板から構成されていてもよい。対極導電層に用いる導電材としては、金属(白金、金、銀、銅、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等)、炭素、及び導電性金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、フッ素ドープ酸化スズ等)が挙げられる。この中でも白金、金、銀、銅、アルミニウム及びマグネシウムが好ましく使用することができる。対極に用いる支持基板は、好ましくはガラス基板又はプラスチック基板であり、これに上記の導電材を塗布又は蒸着して用いる。対極導電層の厚さは特に制限されないが、3nm〜10μmが好ましい。対極導電層の表面抵抗は低い程よい。好ましい表面抵抗の範囲としては50Ω/□以下であり、さらに好ましくは20Ω/□以下である。
【0139】
導電性支持体と対極のいずれか一方又は両方から光を照射してよいので、感光層に光が到達するためには、導電性支持体と対極の少なくとも一方が実質的に透明であればよい。発電効率の向上の観点からは、導電性支持体を透明にして光を導電性支持体側から入射させるのが好ましい。この場合、対極は光を反射する性質を有するのが好ましい。このような対極としては、金属又は導電性酸化物を蒸着したガラス又はプラスチック、或いは金属薄膜を使用できる。
【0140】
対極は電荷輸送層上に直接導電剤を塗布、メッキ又は蒸着(PVD、CVD)するか、導電層を有する基板の導電層側を貼り付ければよい。また、導電性支持体の場合と同様に、特に対極が透明の場合には対極の抵抗を下げる目的で金属リードを用いるのが好ましい。なお、好ましい金属リードの材質及び設置方法、金属リード設置による入射光量の低下等は導電性支持体の場合と同じである。
【0141】
(E)その他の層
対極と導電性支持体の短絡を防止するため、導電性支持体と感光層の間には、緻密な半導体の薄膜層を下塗り層として予め塗設しておくことが好ましい。この下塗り層により短絡を防止する方法は、電荷輸送層に電子輸送材料や正孔輸送材料を用いる場合は特に有効である。下塗り層は好ましくはTiO2、SnO2、Fe2O3、WO3、ZnO又はNb2O5からなり、さらに好ましくはTiO2からなる。下塗り層は、例えばElectrochim. Acta, 40, 643-652 (1995)に記載されているスプレーパイロリシス法や、スパッタ法等により塗設することができる。下塗り層の好ましい膜厚は5〜1000nmであり、10〜500nmがさらに好ましい。
【0142】
また、電極として作用する導電性支持体と対極の一方又は両方の外側表面、導電層と基板の間又は基板の中間に、保護層、反射防止層等の機能性層を設けてもよい。これらの機能性層の形成には、その材質に応じて塗布法、蒸着法、貼り付け法等を用いることができる。
【0143】
(F)光電変換素子の内部構造の具体例
上述のように、光電変換素子の内部構造は目的に合わせ様々な形態が可能である。大きく2つに分ければ、両面から光の入射が可能な構造と、片面からのみ可能な構造が可能である。図2〜図9に本発明に好ましく適用できる光電変換素子の内部構造を例示する。
【0144】
図2に示す構造は、透明導電層10aと透明対極導電層40aとの間に、感光層20と電荷輸送層30とを介在させたものであり、両面から光が入射する構造となっている。図3に示す構造は、透明基板50a上に一部金属リード11を設け、その上に透明導電層10aを設け、下塗り層60、感光層20、電荷輸送層30及び対極導電層40をこの順で設け、更に支持基板50を配置したものであり、導電層側から光が入射する構造となっている。図4に示す構造は、支持基板50上に導電層10を有し、下塗り層60を介して感光層20を設け、更に電荷輸送層30と透明対極導電層40aとを設け、一部に金属リード11を設けた透明基板50aを金属リード11側を内側にして配置したものであり、対極側から光が入射する構造である。図5に示す構造は、透明基板50a上に一部金属リード11を設け、更に透明導電層10a(又は40a)を設けたもの1組の間に下塗り層60、感光層20及び電荷輸送層30を介在させたものであり、両面から光が入射する構造である。図6に示す構造は、透明基板50a上に透明導電層10a、下塗り層60、感光層20、電荷輸送層30及び対極導電層40を設け、この上に支持基板50を配置したものであり、導電層側から光が入射する構造である。図7に示す構造は、支持基板50上に導電層10を有し、下塗り層60を介して感光層20を設け、更に電荷輸送層30及び透明対極導電層40aを設け、この上に透明基板50aを配置したものであり、対極側から光が入射する構造である。図8に示す構造は、透明基板50a上に透明導電層10aを有し、下塗り層60を介して感光層20を設け、更に電荷輸送層30及び透明対極導電層40aを設け、この上に透明基板50aを配置したものであり、両面から光が入射する構造となっている。図9に示す構造は、支持基板50上に導電層10を設け、下塗り層60を介して感光層20を設け、更に固体の電荷輸送層30を設け、この上に一部対極導電層40又は金属リード11を有するものであり、対極側から光が入射する構造となっている。
【0145】
[V]光電池
本発明の光電池は、上記本発明の光電変換素子に外部負荷で仕事をさせるようにしたものである。光電池のうち、電荷輸送材料が主としてイオン輸送材料からなる場合を特に光電気化学電池と呼び、また、太陽光による発電を主目的とする場合を太陽電池と呼ぶ。
【0146】
光電池の側面は、構成物の劣化や内容物の揮散を防止するためにポリマーや接着剤等で密封するのが好ましい。導電性支持体及び対極にリードを介して接続する外部回路自体は公知のものでよい。
【0147】
本発明の光電変換素子を太陽電池に適用する場合も、そのセル内部の構造は基本的に上述した光電変換素子の構造と同じである。また、本発明の光電変換素子を用いた色素増感型太陽電池は、従来の太陽電池モジュールと基本的には同様のモジュール構造をとりうる。太陽電池モジュールは、一般的には金属、セラミック等の支持基板の上にセルが構成され、その上を充填樹脂や保護ガラス等で覆い、支持基板の反対側から光を取り込む構造をとるが、支持基板に強化ガラス等の透明材料を用い、その上にセルを構成してその透明の支持基板側から光を取り込む構造とすることも可能である。具体的には、スーパーストレートタイプ、サブストレートタイプ、ポッティングタイプと呼ばれるモジュール構造、アモルファスシリコン太陽電池等で用いられる基板一体型モジュール構造等が知られており、本発明の光電変換素子を用いた色素増感型太陽電池も使用目的や使用場所及び環境により、適宜モジュール構造を選択できる。具体的には、特願平11-8457号、特開2000-268892号等に記載の構造や態様とすることが好ましい。
【0148】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0149】
合成例1
化合物Ib-1の合成
3.8gの3-アミノピリジン、5.7mlのトリエチルアミン及び50mlのアセトニトリルからなる溶液に、窒素雰囲気下、6.8mlの無水トリフルオロメタンスルホン酸及び50mlの塩化メチレンからなる溶液を-50℃でゆっくりと滴下した。得られた反応液をそのまま1時間撹拌し、室温まで温度を上昇して更に1時間撹拌した。これを濾過して得られたろ液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して6.4gの3-トリフルオロメタンスルホンアミドピリジンを得た。
0.4gの3-トリフルオロメタンスルホンアミドピリジンを1.2gの水酸化ナトリウム及び80mlの水からなる水溶液に溶解させ、これに4.6gの硝酸銀及び20mlの水からなる水溶液を添加した。この反応液を40℃で2時間撹拌した後、反応液中に生成した沈殿物をろ別しアセトニトリルで洗浄した。洗浄した沈殿物を50mlのアセトニトリルに添加し、これに2.7gの1-エチル-3-メチルイミダゾリウムブロマイド及び50mlの水からなる水溶液を添加した。得られた混合物を40℃で2時間撹拌した後、沈殿した臭化銀をろ過により除去し、次いでろ液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、真空ポンプで乾燥して3.0gの化合物Ib-1を得た。
得られた化合物Ib-1は室温で低粘度の液体であった。また、化合物Ib-1の構造は1H-NMR及びMASSスペクトルで確認した。化合物Ib-1の1H-NMRピークシフト値を以下に示す。
1H-NMR(δ値、重ジメチルスルホキサイド):9.33 (s, 1H)、8.28 (s, 1H)、8.08 (d, 1H)、7.51 (d, 1H)、7.31 (s, 1H)、7.30 (s, 1H)、7.07 (dd, 1H)、4.09 (q, 2H)、3.89 (s, 3H)、1.49 (t, 3H).
【0150】
実施例1
1.二酸化チタン粒子塗布液の作製
オートクレーブ温度を230℃にしたこと以外はバルベらのジャーナル・オブ・アメリカン・セラミック・ソサエティ, 第80巻, 3157頁に記載の方法と同様の方法で、二酸化チタン濃度が11質量%の二酸化チタン粒子分散物を得た。この分散物中の二酸化チタン粒子の平均サイズは約10nmであった。この分散物に二酸化チタンに対して20質量%のポリエチレングリコール(分子量20000、和光純薬製)を添加し、混合して二酸化チタン粒子塗布液を得た。
【0151】
2.色素吸着二酸化チタン電極の作製
(1)色素吸着電極の作製
フッ素をドープした酸化スズをコーティングした透明導電性ガラス(日本板硝子製、表面抵抗:約10Ω/cm2)の導電面側に上記二酸化チタン粒子塗布液をドクターブレードで120μmの厚さに塗布し、25℃で30分間乾燥した後、電気炉(ヤマト科学製「マッフル炉FP-32型」)を用いて450℃で30分間焼成し、冷却して二酸化チタン層を形成し、二酸化チタン電極を得た。透明導電性ガラスの単位面積あたりの二酸化チタン塗布量は18g/m2であり、二酸化チタン層の膜厚は12μmであった。
得られた二酸化チタン電極をルテニウム錯体色素R-1(シス-(ジチオシアネート)-N,N'-ビス(2,2'-ビピリジル-4,4'-ジカルボキシリックアシッド)ルテニウム(II)錯体)を含有する色素吸着液に25℃で16時間浸漬し、エタノール及びアセトニトリルで順次洗浄して、色素吸着電極T-1を作製した。なお、色素吸着液はルテニウム錯体色素R-1及びエタノールとアセトニトリルの混合溶媒(エタノール:アセトニトリル=1:1(体積比))からなり、色素吸着液中のルテニウム錯体色素R-1の濃度は3×10-4モル/リットルとした。
また、色素吸着液に1×10-2モル/リットルの濃度となるようにヨウ化リチウムを添加したこと以外は色素吸着電極T-1の作製方法と同様にして、色素吸着電極T-2を作製した。更に、ルテニウム錯体色素R-1に換えてルテニウム錯体色素R-10を用いたこと以外は色素吸着電極T-1と同様に、色素吸着電極T-3を作製した。
【0152】
(2)処理電極の作製
上記色素吸着電極T-1〜T-3のいずれかを、下記表1に示す処理液A-1〜A-5のいずれかに40℃で1.5時間浸漬し、アセトニトリルで洗浄後、窒素気流下、暗所で乾燥して、処理電極TA-1〜TA-11をそれぞれ作製した。各処理液が含有する化合物(I)、化合物(II)及び添加物を表1に示す。なお、各処理液中の化合物(I)、化合物(II)及び添加物の濃度はそれぞれ0.01モル/リットルとし、処理液の溶媒としてはアセトニトリルを用いた。使用した化合物(I)及びt-ブチルピリジンのpKa値を併せて表1に示す。
【0153】
【表1】
【0154】
3.光電変換素子の作製
(1)電解液を用いた光電変換素子
上述のように得た色素吸着酸化チタン電極T-1(2cm×2cm)をこれと同じ大きさの白金蒸着ガラスと重ね合わせた。次に、両ガラスの隙間に毛細管現象を利用して電解液(ヨウ化1,3-ジメチルイミダゾリウム(0.65mol/l)及びヨウ素(0.05mol/l)のアセトニトリル溶液)をしみこませて酸化チタン電極中に導入し、比較用の光電変換素子CS-1を得た。この光電変換素子は、図10に示すような、導電性ガラス1(ガラス2上に導電層3が設層されたもの)、色素吸着二酸化チタン層4、電荷輸送層5、白金層6及びガラス7が順に積層された構造を有する。また、電極を下記表2に示すものに換えたこと以外は光電変換素子CS-1の作製と同様の方法により、比較用の光電変換素子CS-2〜CS-6及び本発明の光電変換素子CS-7〜CS-14をそれぞれ作製した。
【0155】
(2)溶融塩電解質組成物を用いた光電変換素子
上記電極T-1の二酸化チタン層(2cm×2cm)上に直径1cmの丸い穴を持つ厚さ25μmの熱可塑性樹脂(1.5cm×1.5cm)を載置し、100℃で20秒間圧着した。その後、この熱可塑性樹脂の穴に、1-メチル-3-プロピルイミダゾリウムアイオダイド(Y6-8)と1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレード(Y6-2)の2:1(質量比)混合液に2質量%のヨウ素I2を溶解して調製した溶融塩電解質組成物を10μl注液し、50℃で12時間放置することにより該溶融塩電解質組成物を色素吸着二酸化チタン電極に染み込ませた。続いて、この電極に白金蒸着ガラス(2cm×3cm)を重ね合わせ、はみ出した余分な溶融塩電解質組成物を拭き取った後、130℃で30秒間圧着して、比較用の光電変換素子CM-1を作製した。なお、これらの操作はすべて露点-50℃以下のドライルーム内で行った。この光電変換素子は、図10に示すような、導電性ガラス1(ガラス2上に導電層3が設層されたもの)、色素吸着二酸化チタン層4、電荷輸送層5、白金層6及びガラス7が順に積層された構造を有する。
また、電極を下記表3に示すものに換えたこと以外は光電変換素子CM-1の作製と同様の方法により、比較用の光電変換素子CM-2〜CM-6及び本発明の光電変換素子CM-7〜CM-14をそれぞれ作製した。
【0156】
4.光電変換効率の測定
500Wのキセノンランプ(ウシオ製)の光を分光フィルター(Oriel社製「AM1.5」)を通すことにより模擬太陽光を発生させた。この模擬太陽光の強度は垂直面において100mW/cm2であった。各光電変換素子CS-1〜CS-14及びCM-1〜CM-14の導電性ガラスの端部に銀ペーストを塗布して負極とし、この負極と白金蒸着ガラス(正極)を電流電圧測定装置(ケースレーSMU238型)に接続した。各光電変換素子に模擬太陽光を垂直に照射しながら電流電圧特性を測定し光電変換効率を求めた。表2及び表3に各光電変換素子の変換効率を示す。
【0157】
【表2】
【0158】
【表3】
【0159】
表2及び表3より、半導体微粒子を化合物(I)で処理していない比較用の光電変換素子CS-1〜CS-6及びCM-1〜CM-6と比較して、化合物(I)で処理した本発明の光電変換素子CS-7〜CS-14及びCM-7〜CM-14は、吸着させた色素の種類や電荷輸送材料の種類によらずいずれも変換効率が高いことがわかる。また、半導体微粒子を化合物(I)と化合物(II)で処理すると、更に変換効率が向上することがわかる。
【0160】
実施例2
下記表4に示すように、ルテニウム錯体色素に換えてメロシアニン色素M-3又はスクワリリウム色素M-1を用いたこと以外は上記実施例1と同様に比較用の光電変換素子CO-1、CO-2、CO-4及びCO-5、並びに本発明の光電変換素子CO-3及びCO-6を作製した。なお、電荷輸送材料としては上記溶融塩電解質組成物を用いた。また、色素吸着液中の各色素の濃度は1×10-4mol/lとした。各光電変換素子の変換効率を上記実施例1と同様に測定したところ、表4に示したように、化合物(I)で半導体微粒子を処理した本発明の光電変換素子CO-3及びCO-6は優れた変換効率を示した。
【0161】
【表4】
【0162】
【発明の効果】
以上詳述したように、半導体微粒子を化合物(I)で処理することによって、従来よりも変換効率に優れた色素増感光電変換素子が得られる。また、半導体微粒子を化合物(I)と化合物(II)で処理すると変換効率をより一層改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図2】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図3】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図4】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図5】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図6】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図7】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図8】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図9】 本発明の好ましい光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図10】 実施例で作製した光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【符号の説明】
10・・・導電層
10a・・・透明導電層
11・・・金属リード
20・・・感光層
21・・・半導体微粒子
22・・・色素
23・・・電荷輸送材料
30・・・電荷輸送層
40・・・対極導電層
40a・・・透明対極導電層
50・・・基板
50a・・・透明基板
60・・・下塗り層
1・・・導電性ガラス
2・・・ガラス
3・・・導電層
4・・・色素吸着二酸化チタン層
5・・・電荷輸送層
6・・・白金層
7・・・ガラス

Claims (8)

  1. 色素が吸着した半導体微粒子の層と導電性支持体とを有する光電変換素子の作成方法において、前記半導体微粒子を下記一般式(I)で表される化合物で処理することを特徴とする光電変換素子の作成方法。
    (A1-L)n1-A2・M ・・・(I)
    一般式(I)中、A1N - を有する基を表し、A2ピリジル基又はイミダゾリル基を表し、Mは(A1-L)n1-A2の負電荷を中和するカチオンを表し、Lは2価連結基又は単なる結合を表し、n1は1〜3の整数を表す。
  2. 請求項1に記載の光電変換素子の作成方法において、前記半導体微粒子を前記一般式(I)で表される化合物と下記一般式(II)で表される化合物で処理することを特徴とする光電変換素子の作成方法。
    一般式(II)中、Xは酸素原子を表し、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子、脂肪族炭化水素基、アリール基、ヘテロ環基、-OR4、-N(R5)(R6)、-C(=O)R7、-C(=S)R8又はSO2R9を表し、Yは水素原子、脂肪族炭化水素基、アリール基、ヘテロ環基、-OR4、-N(R5)(R6)又は-SR10を表す。また、R3は水素原子、脂肪族炭化水素基、ヒドロキシ基又はアルコキシ基を表し、R4は水素原子又は脂肪族炭化水素基を表し、R5及びR6はR1及びR2と同義であり、R7、R8及びR9はYと同義であり、R10はR4と同義である。
  3. 請求項2に記載の光電変換素子の作成方法において、前記Yが-N(R5)(R6)を表すことを特徴とする光電変換素子の作成方法。
  4. 請求項2又は3に記載の光電変換素子の作成方法において、前記一般式(II)で表される化合物が-Si(R11)(R12)(R13)で表される置換基を有することを特徴とする光電変換素子の作成方法。ただし、R11、R12及びR13はそれぞれ独立にヒドロキシ基、アルキルオキシ基、イソシアネート基、ハロゲン原子又は脂肪族炭化水素基を表し、R11、R12及びR13のうち少なくとも1つはアルキルオキシ基、イソシアネート基又はハロゲン原子である。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の光電変換素子の作成方法において、前記半導体微粒子に前記色素を吸着させた後に、前記一般式(I)で表される化合物及び/又は前記一般式(II)で表される化合物で処理することを特徴とする光電変換素子の作成方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の光電変換素子の作成方法において、前記色素がルテニウム錯体色素であることを特徴とする光電変換素子の作成方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の方法で作成されることを特徴とする光電変換素子。
  8. 請求項7に記載の光電変換素子からなることを特徴とする光電池。
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