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JP4494854B2 - 歯科用カチオン硬化性組成物 - Google Patents

歯科用カチオン硬化性組成物 Download PDF

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Description

本発明は歯科用材料、特に歯科用充填修復材料として好適に使用されるカチオン硬化性組成物に関する。
齲蝕や破折等により損傷をうけた歯牙の修復においては、一般にコンポジットレジンと呼ばれる光硬化性の複合充填修復材料が、その操作の簡便さや審美性の高さから汎用されている。このようなコンポジットレジンは、通常、重合性単量体、フィラー(充填材)及び重合開始剤からなり、重合性単量体としては、その光重合性の良さから(メタ)アクリレート系のラジカル重合性単量体が用いられている。
歯科治療において審美性の高さは重要な要件である。一般に、歯科用コンポジットレジンの使用形態としては口腔内に充填、その後、硬化させる手法が主流であるが、その硬化前後で色調の変化が大きいと、充填時(硬化前)には周囲の歯の色調と一致していたのに、硬化させると色調が変化してしまうと良好な審美性を得ることが困難となる(変色の度合いを示すΔEが1.5以下であれば通常は肉眼では確認できないと言われている)。また、治療直後の審美性のみならず、その審美性が使用に伴って低下することのないことも求められる。口腔内で用いられる歯科用材料は、食物由来の各種着色物質などによって容易に変着色してしまうことも避ける必要がある。
しかしながら、ラジカル重合性単量体は、酸素による重合阻害を受けるため、口腔内で重合・硬化させた際には、表面に未重合層や重合度の低い層が残存し、この未重合層のために経時的に着色・変色し、充分な審美性を得にくいという問題がある。このため、硬化後にこの未重合層を研磨し、取り除かなければならない。
酸素による重合阻害がない重合性単量体としては、エポキシ化合物類、オキセタン化合物類、またはビニルエーテルや1−プロペニルエーテルなどに代表されるアルケニルエーテル化合物類等のカチオン重合性単量体がある(非特許文献1)。なかでもエポキシ化合物類、オキセタン化合物類は開環重合性であるため重合収縮率が小さく、また硬化速度も速いため研究が盛んであり、歯科用コンポジットレジンにおける重合性単量体として、このような開環重合性のカチオン重合性単量体を用いる技術は既にいくつか提案されている(例えば、特許文献1〜5参照)。
しかしながら、カチオン重合性単量体は水によって重合阻害を受けるという問題を本質的に有しているため、口腔内で用いた場合には、やはり表面未重合層を生じやすく、未だ改善の余地があった。
他方、歯科以外の分野においてもカチオン重合性単量体は種々検討されており、上記水分による重合阻害の問題を解決すべく、特殊な構造のオキセタン化合物を用いる技術(例えば、特許文献6)や、特定の重合開始剤を用いる技術(例えば、特許文献7)が提案されている。
ラドテック研究会編、「UV・EV硬化技術の現状と展望」、株式会社シーエムシー出版、2002年12月27日、p.45−48 特開平8−245783号公報 特平10−508067号公報 特開平11−130945号公報 特表2001−520758号公報 特表2001−520759号公報 特開2004−91553号公報 特開2004−91698号公報
本発明は、酸素による重合阻害を受けないカチオン重合・硬化性の歯科用組成物であって、かつ特殊な重合性単量体や特定の重合開始剤を用いなくても、口腔内のような高湿度環境下でも表面未重合層を生じ難く、よって審美性に優れた硬化体が得られる歯科用の硬化性組成物を提供することを目的とする。
本発明は上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、オキセタン化合物に対しアルケニルエーテル化合物を少量配合することにより、各々を単独で用いた場合よりも遥かに水分の影響を受け難くなることを見出し、更に検討を進めた結果、本発明を完成した。
即ち、本発明は、(I)カチオン重合開始剤と(II)カチオン重合性単量体とを含む硬化性組成物において、該(II)カチオン重合性単量体は、1分子平均a個のオキセタン官能基を有するオキセタン化合物をAモルと、1分子平均b個のアルケニルエーテル官能基を有するアルケニルエーテル化合物をBモルとを含んでなり、かつ、(a×A):(b×B)が91:9〜40:60の範囲にある混合物からなることを特徴とする歯科用カチオン硬化性組成物である。
本発明の歯科用カチオン硬化性組成物は、カチオン重合性であるため、従来歯科用として汎用されてきた(メタ)アクリレート系のラジカル重合性単量体を用いた歯科用材料と異なり酸素による重合阻害がない。さらに、オキセタン化合物とアルケニルエーテル化合物とを、各々の有する官能基が特定の割合になるように配合することにより、水分による重合阻害も起き難くなる。
また、オキセタン官能基とアルケニルエーテル官能基をさらに特定の割合にすることによって、硬化前後の色調変化も少なくなり、良好な審美性を得ることが一層容易となる。
本発明のカチオン硬化性組成物には、(I)カチオン重合開始剤と(II)カチオン重合性単量体とが含まれる。
当該(I)カチオン重合開始剤は特に限定されるものではなく、公知の如何なるカチオン重合開始剤でもよい。このようなカチオン重合開始剤としては、ルイス酸或いはブレンステッド酸、又は加熱や光照射によりルイス酸或いはブレンステッド酸を生じる化合物などが知られている。口腔内などの環境で速やかに重合させることが容易な点で、光照射によりルイス酸或いはブレンステッド酸を生じる、所謂、光酸発生剤を採用することが特に好適である。
当該光酸発生剤としては、ジアリールヨードニウム塩系化合物、スルホニウム塩系化合物、スルホン酸エステル化合物、およびハロメチル置換−S−トリアジン有導体等が挙げられる。
これらの中でも、ジアリールヨードニウム塩系化合物及びスルホニウム塩系化合物が、重合活性が特に高い点で優れている。ジアリールヨードニウム塩系化合物の具体例を例示すれば、ジフェニルヨードニウム、ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウム、ジトリルヨードニウム、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、p−イソプロピルフェニル−p−メチルフェニルヨードニウム、ビス(m−ニトロフェニル)ヨードニウム、p−tert−ブチルフェニルフェニルヨードニウム、p−メトキシフェニルフェニルヨードニウム、ビス(p−メトキシフェニル)ヨードニウム、p−オクチルオキシフェニルフェニルヨードニウム、p−フェノキシフェニルフェニルヨードニウム等のカチオンと、クロリド、ブロミド、p−トルエンスルホナート、トリフルオロメタンスルホナート、テトラフルオロボレート、テトラキスペンタフルオロフェニルボレート、テトラキスペンタフルオロフェニルガレート、ヘキサフルオロフォスフェート、ヘキサフルオロアルセナート、ヘキサフルオロアンチモネート等のアニオンからなるジアリールヨードニウム塩系化合物が挙げられる。
これらのなかでも、重合性単量体に対する溶解性の点から、p−トルエンスルホナート、トリフルオロメタンスルホナート、テトラフルオロボレート、テトラキスペンタフルオロフェニルボレート、テトラキスペンタフルオロフェニルガレート、ヘキサフルオロフォスフェート、ヘキサフルオロアルセナート、ヘキサフルオロアンチモネートをアニオンとして有する化合物が好適に使用でき、また、求核性が低く、光照射を行わなければ重合性単量体との混合物として安定に保存できる点で、ヘキサフルオロアンチモネート、テトラキスペンタフルオロフェニルボレート、テトラキスペンタフルオロフェニルガレートをアニオンとして有する化合物が好適に使用できる。
また、スルホニウム塩系化合物としては、ジメチルフェナシルスルホニウム、ジメチルベンジルスルホニウム、ジメチル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウム、ジメチル−4−ヒドロキシナフチルスルホニウム、ジメチル−4,7−ジヒドロキシナフチルスルホニウム、ジメチル−4,8−ジヒドロキシナフチルスルホニウム、トリフェニルスルホニウム、p−トリルジフェニルスルホニウム、p−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム、ジフェニル−4−フェニルチオフェニルスルホニウム等のカチオンと、クロリド、ブロミド、p−トルエンスルホナート、トリフルオロメタンスルホナート、テトラフルオロボレート、テトラキスペンタフルオロフェニルボレート、テトラキスペンタフルオロフェニルガレート、ヘキサフルオロフォスフェート、ヘキサフルオロアルセナート、ヘキサフルオロアンチモネート等のアニオンとからなるスルホニウム塩系化合物が挙げられる。
これら光酸発生剤は必要に応じて、1種または2種以上混合して用いても何等差し支えない。これら光酸発生剤の使用量は、光照射により重合を開始しうる量であれば特に制限されることはないが、適度な重合の進行速度と得られる硬化体の各種物性(例えば、耐候性や硬度)を両立させるために、一般的にはカチオン重合性単量体100質量部に対し、0.001〜10質量部を用いればよく、好ましくは0.05〜5質量部を用いるとよい。
上記のような光酸発生剤は通常、近紫外〜可視域には吸収の無い化合物も多く、重合反応を励起するためには、特殊な光源が必要となる場合が多い。そのため、近紫外〜可視域に吸収をもつ化合物を増感剤として、上記光酸発生剤に加えてさらに配合することが好ましい。
このような増感剤として用いられる化合物は、例えばアクリジン系色素、ベンゾフラビン系色素、アントラセン、ペリレン等の縮合多環式芳香族化合物、フェノチアジン等が挙げられる。
これら増感剤のなかでも、重合活性が良好な点で、縮合多環式芳香族化合物が好ましく、さらに、少なくとも1つの水素原子を有する飽和炭素原子が縮合多環式芳香族環と結合した構造を持つ縮合多環式芳香族化合物が好適である。
このような少なくとも1つの水素原子を有する飽和炭素原子が縮合多環式芳香族環と結合した構造を持つ縮合多環式芳香族化合物を具体的に例示すると、1−メチルナフタレン、1−エチルナフタレン、1,4−ジメチルナフタレン、アセナフテン、1,2,3,4−テトラヒドロフェナントレン、1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、ベンゾ[f]フタラン、ベンゾ[g]クロマン、ベンゾ[g]イソクロマン、N−メチルベンゾ[f]インドリン、N−メチルベンゾ[f]イソインドリン、フェナレン、4,5−ジメチルフェナントレン、1,8−ジメチルフェナントレン、アセフェナントレン、1−メチルアントラセン、9−メチルアントラセン、9−エチルアントラセン、9−シクロヘキシルアントラセン、9,10−ジメチルアントラセン、9,10−ジエチルアントラセン、9,10−ジシクロヘキシルアントラセン、9−メトキシメチルアントラセン、9−(1−メトキシエチル)アントラセン、9−ヘキシルオキシメチルアントラセン、9,10−ジメトキシメチルアントラセン、9−ジメトキシメチルアントラセン、9−フェニルメチルアントラセン、9−(1−ナフチル)メチルアントラセン、9−ヒドロキシメチルアントラセン、9−(1−ヒドロキシエチル)アントラセン、9,10−ジヒドロキシメチルアントラン、9−アセトキシメチルアントラセン、9−(1−アセトキシエチル)アントラセン、9,10−ジアセトキシメチルアントラセン、9−ベンゾイルオキシメチルアントラセン、9,10−ジベンゾイルオキシメチルアントラセン、9−エチルチオメチルアントラセン、9−(1−エチルチオエチル)アントラセン、9,10−ビス(エチルチオメチル)アントラセン、9−メルカプトメチルアントラセン、9−(1−メルカプトエチル)アントラセン、9,10−ビス(メルカプトメチル)アントラセン、9−エチルチオメチル−10−メチルアントラセン、9−メチル−10−フェニルアントラセン、9−メチル−10−ビニルアントラセン、9−アリルアントラセン、9,10−ジアリルアントラセン、9−クロロメチルアントラセン、9−ブロモメチルアントラセン、9−ヨードメチルアントラセン、9−(1−クロロエチル)アントラセン、9−(1−ブロモエチル)アントラセン、9−(1−ヨードエチル)アントラセン、9,10−ジクロロメチルアントラセン、9,10−ジブロモメチルアントラセン、9,10−ジヨードメチルアントラセン、9−クロロ−10−メチルアントラセン、9−クロロ−10−エチルアントラセン,9−ブロモ−10−メチルアントラセン、9−ブロモ−10−エチルアントラセン、9−ヨード−10−メチルアントラセン、9−ヨード−10−エチルアントラセン、9−メチル−10−ジメチルアミノアントラセン、アセアンスレン、7,12−ジメチルベンズ(a)アントラセン、7,12−ジメトキシメチルベンズ(a)アントラセン、5,12−ジメチルナフタセン、コラントレン、3−メチルコラントレン、7−メチルベンゾ(a)ピレン、3,4,9,10−テトラメチルペリレン、3,4,9,10−テトラキス(ヒドロキシメチル)ペリレン、ビオランスレン、イソビオランスレン、5,12−ジメチルナフタセン、6,13−ジメチルペンタセン、8,13−ジメチルペンタフェン、5,16−ジメチルヘキサセン、9,14−ジメチルヘキサフェン等が挙げられる。
また上記以外の縮合多環式芳香族化合物としては、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、ナフタセン、ベンズ[a]アントラセン、ピレン、ペリレン等が挙げられる。
これら縮合多環式芳香族化合物のなかでも、生体に対する為害性を考慮すると可視光で重合を励起することが可能となる、可視域に吸収を有する化合物が好ましく、可視域に極大吸収を有する化合物がより好ましい。また、これら縮合多環式芳香族化合物は必要に応じて複数の化合物を併用しても良い。
縮合多環式芳香族化合物の添加量も、組み合わせる他の成分や重合性単量体の種類によって異なるが、通常は前期した光酸発生剤1モルに対し、縮合多環式芳香族化合物が0.001〜20モルであり、0.005〜10モルであることが好ましい。
さらに上記縮合多環式芳香族化合物に加えて、酸化型の光ラジカル発生剤を配合すると、より一層重合活性が向上し好ましい。酸化型の光ラジカル発生剤とは、光照射により励起してラジカルを発生する化合物であって、励起により水素供与体から水素を引き抜いてラジカルを生成するいわゆる水素引き抜き型のラジカル発生剤、励起により自己開裂を起こしてラジカルを発生し(自己開裂型ラジカル発生剤)、次いで該ラジカルが電子供与体から電子を引き抜くタイプのもの、及び光照射により励起して電子供与体から直接電子を引き抜いてラジカルとなるもの等の、光照射による励起によって活性ラジカル種を発生させる機構が酸化剤的な作用による(自らは還元される)ものである光ラジカル発生剤である。これら酸化型の光ラジカル発生剤は特に制限されず、公知の化合物を用いれば良いが、光照射を行った際の重合活性が他の化合物に比してより高い点で、水素引き抜き型の光ラジカル発生剤が好ましく、なかでも、ジアリールケトン化合物、α−ジケトン化合物又はケトクマリン化合物が特に好ましい。
ジアリールケトン化合物を具体的に例示すると4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、9−フルオレノン、3,4−ベンゾ―9−フルオレノン、2―ジメチルアミノ―9−フルオレノン、2−メトキシ―9―フルオレノン、2−クロロ―9−フルオレノン、2,7−ジクロロ―9―フルオレノン、2−ブロモ―9―フルオレノン、2,7−ジブロモ―9―フルオレノン、2−ニトロ−9−フルオレノン、2−アセトキ−9−フルオレノン、ベンズアントロン、アントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1−ジメチルアミノアントラキノン、2,3−ジメチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、1,5−ジクロロアントラキノン、1,2−ジメトキシアントラキノン、1,2−ジアセトキシ−アントラキノン、5,12−ナフタセンキノン、6、13−ペンタセンキノン、キサントン、チオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、9(10H)−アクリドン、9−メチル−9(10H)−アクリドン、ジベンゾスベレノン等を挙げることができる。
α−ジケトン化合物の具体例を例示すれば、カンファーキノン、ベンジル、ジアセチル、アセチルベンゾイル、2,3−ペンタジオン、2,3−オクタジオン、4,4’−ジメトキシベンジル、4,4’−オキシベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、アセナフテンキノン等が挙げられる。
またケトクマリン化合物としては、3−ベンゾイルクマリン、3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−(4−メトキシベンゾイル)7−メトキシ−3−クマリン、3−アセチル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンゾイル−7−ジメチルアミノクマリン、3,3’−クマリノケトン、3,3’−ビス(7−ジエチルアミノクマリノ)ケトン等を挙げることができる。
これら酸化型の光ラジカル発生剤は単独または2種類以上を混合して用いて使用できる。また、添加量も組み合わせる他の成分や重合性単量体の種類によって異なるが、通常は前記した光酸発生剤1モルに対し、光ラジカル発生剤が0.001〜20モルであり、0.005〜10モルであることが好ましい。
本発明のカチオン硬化性組成物は、(II)カチオン重合性単量体として、オキセタン官能基を有するオキセタン化合物(以下、単にオキセタン化合物)と、アルケニルエーテル官能基を有するアルケニルエーテル化合物(以下、単にアルケニルエーテル化合物)の双方を含んでいる必要がある。
なお、オキセタン官能基とは、下記式(1)
Figure 0004494854
(式中、nは0〜6の整数であり、Rは1価の基であり、nが2〜6の場合には、該Rは各々同一でも異なっていても良い。)
で示される四員環エーテル(オキセタン環)官能基であり、アルケニルエーテル官能基とは、下記式(2)
Figure 0004494854
(式中、Rは置換基を有していても良いアルキル基を示し、R、R、Rは各々独立に水素原子又は1価の基を示す。)
で示されるアルケニルエーテルからなる官能基である。
本発明で使用されるオキセタン化合物は、カチオン重合可能な化合物であれば特に限定されることはなく公知の化合物を使用することができるが、上記式(1)において、1個又は2個のRがオキセタン環の3位に結合しており、他方、他の位置にはRが結合していない化合物が好ましい。当該オキセタン化合物を具体的に例示すると、3−メチル−3−オキセタニルメタノール、3−エチル−3−オキセタニルメタノール、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン、3,3−ジエチルオキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシ)オキセタン等の1つのオキセタン環を有すもの、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチルオキシ)ベンゼン、4,4′−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチルオキシ)ビフェニール、4,4′−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチルオキシメチル)ビフェニール、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)ジフェノエート、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等、あるいは下記に示す化合物
Figure 0004494854
等のオキセタン環を2つ以上有す化合物が挙げられる。これらオキセタン化合物は、複数種のものを併用しても良い。
特に得られる硬化体の物性の点から、1分子中にオキセタン官能基を2つ以上有するものが好適に使用される。
また、アルケニルエーテル化合物もまた、カチオン重合可能な化合物であれば特に限定されることはなく公知のものが使用できるが、前記式(2)において、R、R、Rが各々独立に水素原子又はアルキル基である化合物が好ましく、入手の容易さからR、R、Rがすべて水素原子の化合物(ビニルエーテル化合物)が望ましい。
代表的なアルケニルエーテル化合物を具体的に例示すれば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、エチレングリコールメチルビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、エチレングリコールフェニルビニルエーテル、エチル−1−プロペニルエーテル、ヘキシル−1−プロペニルエーテル、2−エチルヘキシル−1−プロペニルエーテル、1−メトキシ−1,3−ブタンジエン、2−(1−プロペニルオキシメチル)−1、3−ジオキソラン−2−オン等のアルケニルエーテル官能基を1つ有する化合物、また、
Figure 0004494854
等のアルケニルエーテル官能基を二つ有する化合物、更に
Figure 0004494854
等の、1分子中にアルケニルエーテル官能基を三つ以上有する化合物が挙げられる。これらアルケニルエーテル化合物は、異なる種類のものを複数用いても良い。
本発明における最大の特徴は、組成物中におけるオキセタン官能基の量と、アルケニルエーテル官能基の量とが特定の範囲となるよう、オキセタン化合物とアルケニルエーテル化合物の配合量を調整する点にある。即ち、オキセタン化合物が1分子平均a個のオキセタン官能基を有し、アルケニルエーテル化合物が1分子平均b個のアルケニルエーテル官能基を有する場合、(a×A):(b×B)が91:9〜40:60の範囲となるように、オキセタン化合物をAモルと、アルケニルエーテル化合物をBモル配合する必要がある。
なお、前述したように本発明においては、オキセタン化合物は単一のものを用いても良いし、異なる種類のものを複数用いても良い。オキセタン化合物として単一のものを用いた場合、あるいはその有するオキセタン官能基数が同一のオキセタン化合物のみを用いた場合の、上記一分子平均のオキセタン官能基数は、該オキセタン化合物の有するオキセタン官能基の数に等しい。一分子当たりの官能基の数の異なる化合物を用いた際には、上記オキセタン官能基の数は、その配合量(比)と各々の化合物が有する官能基の数とから求める平均値である。例えば、オキセタン官能基を1つだけ有すオキセタン化合物と、2つ有すオキセタン化合物を等モル量用いた場合には、1分子平均1.5個のオキセタン官能基を有するオキセタン化合物を用いたものとして計算する。同様に、オキセタン官能基を1つだけ有すオキセタン化合物と2つ有すオキセタン化合物をモル比にして1:3の割合で用いた場合には、1分子平均1.75個のオキセタン官能基を有するオキセタン化合物を用いたものとして計算する。
アルケニルエーテル化合物の一分子あたりの平均官能基数も、上記と同様にして算出すればよい。
また、本発明において、オキセタン化合物、アルケニルエーテル化合物のいずれも、各々必ず1つ以上のオキセタン官能基、アルケニルエーテル官能基を有するから、上記a、bのいずれも1未満になることはない。化合物の入手の容易さや、本発明の硬化性組成物の粘度等の操作性、硬化後の硬化体の機械的物性等を考慮すると、a、bのいずれもが1〜5の範囲にあることが好ましく、1.5〜3の範囲にあることがより好ましい。
上述の通り、本発明においては(a×A):(b×B)が91:9〜40:60の範囲にあることが必須である。この範囲にすることにより、重合反応に対する水分の影響を大幅に低減することができ、口腔内のような高湿度条件下でも使用可能となる。さらに、(a×A):(b×B)を50:50よりもアルケニルエーテル官能基の割合を小さくすることにより、硬化前後の色調変化が小さくなるため好ましい。他方、アルケニルエーテルは極めてカチオン重合性の高い官能基であるため、該官能基の割合が高い方がより良好な硬化性が得られる。本発明において好ましくは、(a×A):(b×B)が85:15〜50:50の範囲であり、より好ましくは85:15〜55:45の範囲である。
本発明のカチオン硬化性組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、オキセタン化合物及びアルケニルエーテル化合物に加えて、他のカチオン重合性官能基を有する化合物が配合されていても良いが、硬化性組成物中のカチオン重合性官能基中に占める他のカチオン重合性官能基の割合が増えるほど、硬化速度が遅くなったりするため、カチオン硬化性組成物中の全カチオン重合性官能基の総和を100モル%としたとき、その他の官能基の占める割合は30モル%未満であることが好ましく、10モル%未満であることが好ましく、5モル%未満であることが更に好ましく、オキセタン官能基及びアルケニルエーテル官能基以外の他のカチオン重合性官能基は実質的に存在しないことが特に好ましい。
また、必要に応じて(メタ)アクリレート系単量体等の付加重合型のラジカル重合性単量体を配合することも可能である。ラジカル重合性単量体を配合することにより、さらに見かけの硬化時間を短くすることができる。一方、付加重合型のラジカル重合性は酸素により重合阻害をうけるため、あまり多量に配合することは好ましくない。ラジカル重合性単量体を配合する場合のその配合量は、カチオン重合性単量体とラジカル重合性単量体の合計100質量%に対して、30質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下とすることが好ましい。
このようなラジカル重合性単量体を具体的に例示すれば、メチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−シアノメチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル]プロパン、2,2−ビス{4−[3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ]フェニル}プロパン、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系単量体等を挙げることができる。
本発明の歯科用カチオン硬化性組成物には、上記重合開始剤及び重合性単量体に加えて、歯科用硬化性組成物の配合成分として公知の他の成分を配合することができる。
代表的な他の配合成分としては(III)充填材が挙げられる。本発明の歯科用カチオン硬化性組成物に充填材を配合することにより、重合収縮をさらに小さくすることができる。また、充填材を用いることにより、硬化前の硬化性組成物の操作性を改良したり、あるいは、硬化後の機械的物性の向上を計ることができ、特に歯科用の充填修復材料として有用性の高いものとなる。
本発明の歯科用カチオン硬化性組成物に対して充填材を配合する場合、その充填材の種類や配合量は、該組成物の用途に応じて適宜設定すればよい。例えば、本発明の歯科用カチオン硬化性組成物を充填修復材料として用いる場合には、歯科用充填修復材料の充填材として公知の充填材を配合すればよい。
より具体的には、石英、シリカ、アルミナ、シリカチタニア、シリカジルコニア、ランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス等の無機粒子(以下、無機フィラー)が挙げられる。さらに、これら無機フィラーと重合性単量体を予め混合し、ペースト状にした後、重合させ、粉砕して得られる粒状の有機−無機複合粒子(有機−無機複合フィラー)を用いてもよい。なお、無機フィラーとして、ジルコニア等の重金属を含むものを用いることによってX線造影性を付与することもできる。
これら充填材の粒径、形状は特に限定されず、一般的に歯科用材料として使用されている、球状や不定形の、平均粒子径0.01μm〜100μmの粒子を目的に応じて適宜使用すればよい。また、これら充填材の屈折率も特に限定されず、一般的な歯科用組成物の充填材が有する1.4〜1.7の範囲のものが制限なく使用できる。
本発明のカチオン硬化性組成物に上記充填材を配合する場合の配合量も特に限定されないが、歯科用充填修復材料として用いる場合には、前記重合性単量体100質量部に対して、50〜1500質量部、好ましくは70〜1000質量部とすることが好ましい。さらに、これら無機フィラー、有機−無機複合フィラー等の充填材は各々単独で用いても良いし、材質、粒径、形状等の異なる複数種のものを併用しても良い。硬化後の機械的物性に優れる点で、歯科用充填修復材料として用いる場合には、無機フィラーを主とすることが特に好ましい。
また必要に応じてポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、メチルメタクリレート−エチルメタクリレート共重合体、架橋型ポリメチルメタクリレート、架橋型ポリエチルメタクリレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等の有機高分子からなる粒子(有機フィラー)を充填材として配合することも可能である。
さらに本発明の歯科用カチオン硬化性組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、重合禁止剤、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、帯電防止剤、顔料、香料、有機溶媒や増粘剤等の公知の添加剤が配合されていても良い。
本発明の歯科用カチオン重合性組成物は上記のような歯科用充填修復材料として特に好適に使用されるが、それに限定されるものではなく、歯科用接着材や義歯床用材料等その他の用途にも使用できる。
本発明の歯科用カチオン硬化性組成物の製造方法は特に制限されるものではなく、公知の製造方法を適宜採用すればよい。具体的には、本発明の歯科用カチオン硬化性組成物を構成する、カチオン重合開始剤、カチオン重合性単量体ならびに必要に応じて配合されるその他の配合成分を所定量秤取り、これらを混合すればよい。
本発明の歯科用カチオン硬化性組成物の包装形態は特に制限されるものではなく、その目的や保存安定性を考慮して適宜決定すればよい。例えば、カチオン重合開始剤として光カチオン重合開始剤を配合した際には、本発明の歯科用カチオン硬化性組成物を構成する全ての成分を遮光状態で一つの包装とすればよい。一方、光照射を行わずとも室温でカチオン重合を開始できるような成分を重合開始剤として用いる場合には、保存中に重合・硬化してしまわないように、2つ以上の包装に分割しておき、使用直前に両者を混合するような形態が好ましい。
本発明の歯科用カチオン硬化性組成物を硬化させる手段としては用いたカチオン重合開始剤の重合開始機構に従い適宜、公知の重合手段を採用すればよく、具体的には、カーボンアーク、キセノンランプ、メタルハライドランプ、タングステンランプ、蛍光灯、太陽光、ヘリウムカドミウムレーザー、アルゴンレーザー等の光源による光照射、或いは加熱重合器等を用いた加熱、またはこれらを組み合わせた方法等が何等制限なく使用される。光照射により重合させる場合には、その照射時間は、光源の波長、強度、硬化体の形状や材質によって異なるため、予備的な実験によって予め決定しておけばよいが、一般には、照射時間が5〜60秒程度の範囲になるように、各種成分の配合割合を調整しておくことが好ましい。同様に加熱時間及び加熱温度も予備的な実験によって予め決定しておけばよい。
以下、実施例により本発明を具体的に示すが、本発明はこの実施例によって何等限定されるものではない。尚、本文中、並びに実施例中に使用した化合物の略称は以下の通りである。
1.オキセタン化合物
Figure 0004494854
2.アルケニルエーテル化合物
Figure 0004494854
3.ラジカル重合性単量体
Figure 0004494854
5.光酸発生剤
Figure 0004494854
6.縮合多環芳香族化合物
Figure 0004494854
7.酸化型の光ラジカル発生剤
CQ:カンファーキノン。
8.その他
DMPT:p−ジメチルアミノトルイジン。
DMBE:4−ジメチルアミノエチル安息香酸エチル。
また実施例、比較例における各種物性の評価方法を以下に示す。なお、硬化に際しての雰囲気条件は、温度22℃、相対湿度20%を条件1、温度37℃、相対湿度100%を条件2とした。条件2は口腔内の環境を想定した雰囲気である。
(1)表面未重合
条件1又は条件2の雰囲気下で、6mmφ×0.3mmの孔を有するポリテトラフルオロエチレン製のモールドの底面に、パスツールピペットを用いて硬化性組成物を塗布した。同様に組成物液面上面約5mmの距離から歯科用可視光線照射器(トクヤマデンタル社、パワーライト)にて60秒間光照射し、光硬化させた。硬化体の照射面にべたつきがある物を×、べたつきは無いが表面が白化しているものを△、べたつきおよび白化がないものを○とした。
(2)微小硬度
条件1又は条件2の雰囲気下で、6mmφ×1.5mmの孔を有するポリテトラフルオロエチレン製のモールドに硬化性組成物が平らになるように充填した。雰囲気中に3分間放置し、その後、ポリプロピレンフィルムで覆い、さらにスライドグラスで圧接した状態で、充填面上5mmの位置から歯科用可視光線照射器にて60秒間光照射し、光硬化させた。硬化後、ポリプロピレンフィルムを剥がし、微小硬度計MHT−1(松沢精機株式会社製)、加重200g、加重時間30秒にて照射面の硬度を測定した。
(3)硬化体の変色
6mmφ×1.5mmの孔を有するポリテトラフルオロエチレン製のモールドに硬化性組成物を充填し、ポリプロピレンフィルムで覆い、この未硬化の状態で分光色差計(カラーアナライザーTC−1800MK−II)を用い、黒バックにてL 、a 、b を測定した。
別途、条件1の雰囲気下で6mmφ×1.5mmの孔を有するポリテトラフルオロエチレン製のモールドに硬化性組成物を充填し、ポリプロピレンフィルムで覆い、さらにスライドグラスで圧接した状態で、充填面上5mmの位置から歯科用可視光線照射器にて60秒間光照射し、光硬化させた。硬化後、モールドから取り出し、分光色差計にてL、a、bを測定し、下記式に従って硬化前後の色差(ΔE)を算出した。
ΔE={(L−L +(a−a +(b−b 1/2
また、この試料片表面を硬化前の組成物と比較し、著しく着色している物を×、極僅かに着色している物を○、肉眼では着色が確認できない物を◎とした。
(4)曲げ強度・曲げ弾性率
条件1の雰囲気下で硬化性組成物を2×2×25mmの金型に充填し、ポリプロピレンフィルムで覆い、光照射器にて1.5分間光照射し硬化させた。硬化物を37℃で一晩保存した後、オートグラフ(島津製作所社製)を使用し、支点間距離20mm、クロスヘッドスピード0.5mm/分で3点曲げ強度と曲げ弾性率を各々5個の硬化物について測定し、その平均値を算出した。
実施例1
相対湿度20%以下の環境下でOX−1とDVE−1とを、OX−1が1モルに対して、DVE−1が0.111モルとなるように量を調節して配合した。この場合、OX−1は2官能のオキセタン化合物であるからaが2であり、DVE−1は二官能のアルケニルエーテル化合物であるからbが2であるから、(a×A):(b×B)=(2×1):(2×0.111)=90:10である。
暗所下、この重合性単量体の混合物100質量部に対し、重合開始剤としてIMDPIを0.1質量部、DMBAnを0.03質量部、カンファーキノンを0.03質量部加え均一になるまで攪拌・溶解した。表面未重合及び変色について評価した結果を表1に示す。
実施例2〜4、比較例1〜7
OX−1とDVE−1との配合割合を、表1に示す官能基の割合となるよう変えた以外は実施例1と同様にして物性を評価した。結果をあわせて表1に示す。なお、表中、オキセタン化合物の欄の数値は(a×A)+(b×B)を100とした場合の(a×A)を、アルケニルエーテル化合物の欄の数値は同じく(b×B)を示す(以下、全ての表において同じ)。
Figure 0004494854
実施例5
重合開始剤を、IMDPIが0.1質量部、CQが0.03質量部、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル0.03質量部とした以外は実施例1と同様にして硬化性組成物を調製し物性を評価した。結果を表2に示す。
実施例6〜8、比較例8〜13
OX−1とDVE−1との配合割合を、表1に示す官能基の割合となるよう変えた以外は実施例5と同様にして物性を評価した。結果をあわせて表2に示す。
Figure 0004494854
表1、2に結果を示したように、オキセタン官能基とアルケニルエーテル官能基の割合を本発明で規定する範囲にした組成物は、高湿度条件下(条件2)でも表面未重合がなく、口腔内で用いる歯科用組成物として好適な物性を有していることがわかる。さらに、アルケニルエーテル官能基の割合の少ない実施例1、2では硬化前後の色調変化も目視で確認できないほど小さく、高い審美性を要求される歯科用コンポジットレジンとして特に有用である。
他方、オキセタン官能基とアルケニルエーテル官能基の割合が、本発明で規定する範囲をはずれた場合には、オキセタン官能基、アルケニルエーテル官能基のいずれが多くても表面未重合層を生じていた。また表1に示した結果と、表2に示した結果との比較から理解されるように、重合開始剤を変更しても本発明の効果には影響がなく、本発明の効果は官能基の割合を特定の範囲とすることによって達成される。
実施例9
球状シリカ−ジルコニア(粒径0.5μm)と球状シリカ−チタニア(粒径0.1μm)の重量比7:3の混合物20gを、pH4.0に調整した塩酸80mlに縣濁させ、攪拌しながら3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン1.2gを滴下した。1時間攪拌後、エバポレーターで水を留去し、得られた固体を乳鉢で粉砕後、減圧下80℃で15時間乾燥した。乾燥後、得られた粉末を無機フィラーaとし、シリカゲルを乾燥剤としたデシケーター中で保存した。
一方、実施例1と同様にして、OX−1とDVE−1とを、(a×A):(b×B)=90:10となるように混合し、この混合物100質量部に対して、重合開始剤としてIMDPIを0.1質量部、DMBAnを0.03質量部、カンファーキノンを0.03質量部加え均一になるまで攪拌・溶解した。
この重合性単量体混合物を、室温22℃、湿度20%に保たれた恒温・恒湿室中で上記無機フィラーaと、無機フィラー含有率76質量%となるようにメノウ乳鉢で混合し、該混合物を真空下、脱泡して気泡を取り除き歯科用充填修復材料を得た。この材料について、硬化後の微小硬度と硬化前後の変色について評価した。結果を表3に示す。
実施例10〜13、比較例14〜19
OX−1とDVE−1との配合割合を、表1に示す官能基の割合となるよう変えた以外は実施例9と同様にして歯科用充填修復材料を調製し物性を評価した。結果をあわせて表3に示す。なお、微小硬度の欄において「測定不可」とあるのは表面が極めて脆い硬化体であり、前記微小硬度計の測定下限未満の硬度であったことを表す(以下、表4、5においても同じ)。
Figure 0004494854
実施例14〜17、比較例20〜24
オキセタン化合物としてOX−1に代えてOX−2を用い、表4に示す官能基割合となるようにDVE−1と混合して用いた以外は、実施例9と同様にして歯科用充填修復材料を調製し物性を評価した。結果をあわせて表4に示す。
Figure 0004494854
実施例18〜20、比較例25〜29
アルケニルエーテル化合物としてDVE−1に代えてDVE−2を用い、表5に示す官能基割合となるようにOX−1と混合して用いた以外は、実施例9と同様にして歯科用充填修復材料を調製し物性を評価した。結果をあわせて表5に示す。
Figure 0004494854
また、実施例14、比較例14及び比較例19で調製した歯科用充填修復材料の曲げ強度及び曲げ弾性率を測定した結果を表6に示す。
Figure 0004494854

Claims (3)

  1. (I)カチオン重合開始剤と(II)カチオン重合性単量体とを含む硬化性組成物において、該(II)カチオン重合性単量体は、1分子平均a個のオキセタン官能基を有するオキセタン化合物をAモルと、1分子平均b個のアルケニルエーテル官能基を有するアルケニルエーテル化合物をBモルとを含んでなり、かつ、(a×A):(b×B)が91:9〜40:60の範囲にある混合物からなることを特徴とする歯科用カチオン硬化性組成物。
  2. さらに、(III)充填材を含む請求項1記載の歯科用カチオン硬化性組成物。
  3. 歯科用充填修復材料であることを特徴とする請求項1又は2に記載の歯科用カチオン硬化性組成物。
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