JP4493904B2 - ジルコニアセッターの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンデンサー、圧電素子、フェライト素子、高周波セラミックス基板に代表されるセラミックス系電子デバイス部品(以下「電子デバイス部品」という)や、射出成形により製造される高精度な金属系並びにセラミックス部品等を熱処理又は焼成(以下「熱処理又は焼成」を「焼成等」という)する際に用いられるジルコニアセッター(以下単に「セッター」という)の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、様々な特性を持つセラミックスの薄膜が開発され、多種多様のセラミックス系電子デバイスへの展開がなされているが、電子デバイス部品の製造工程において、焼成等を行う場合には、生産性の点から、複数の電子デバイス部品を収納できるセッターが用いられている。具体的には、例えば、数ミリから数ミクロンの範囲の粒度分布を有するアルミナやアルミナ−シリカ(ムライト)を主たる構成相とする耐火物系材料をベースとし、これにジルコニアを溶射したセッターや、アルミナセラミックスの表面にジルコニアをコーティングしたセッター等が用いられている(特許文献1及び2参照)。
【0003】
ところで、近年の電子デバイス部品の生産性の向上、及び製品の品質の向上に伴い、電子デバイス部品の焼成過程に対しての更なる改善が求められている。射出成形により製造される高精度な金属系並びにセラミックス部品等の熱処理等においても同様の問題がある。
これに対して、出願人らは、既に、電子デバイス部品の成形工程で添加される多量の有機系結合材をより効率よく除去でき、しかも共存する電極材料を安定に保った状態で焼成等を行うことのできるセッターとして、75重量%のアルミナを含有する微細な直線状の複数の貫通孔を有するセラミックセッターを提案している。かかるセッターを用いれば、電子デバイス部品の積載量を増やした場合にも、焼成等の熱処理に際しての高い均一な通気性が実現されて、均一な温度分布、雰囲気ガスの均一性の維持を達成できる結果、製造された電子デバイス部品の品質が均質に維持され、高度な機能性材料である電子デバイス部品が得られる。更に、電子デバイス部品がセッターと反応を生じることを防止する方法として、セッターの表面にジルコニアをコーティングすることを提案している(特許文献3参照)。
【0004】
ジルコニアは、他の材料と比べて、載積される電子デバイス部品と反応することが少ないため、セッターの形成材料として有用であると考えられる。しかしながら、ジルコニアのみでセッターを形成した場合は、アルミナのような材料と比べて密度が高く重いため、取り扱い性に欠けるものとなると同時に、アルミナ製のセッターと比較してコストが高く、経済性に劣るものとなる。又、ジルコニアは、アルミナのような材料と比べて熱伝導率が低いため、焼成条件によっては、セッター上で温度差が生じて焼成物に焼きムラが生じるという、ジルコニアセッターに特有の問題もある。これに対しては、ジルコニアのみからなるセッターの厚みを0.2〜2mmと薄くし、表面に独立した貫通孔を形成させ、形成材料の理論密度を95%以上とすることが提案されている(特許文献4参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開昭61−24225号公報
【特許文献2】
特開平3−1090号公報
【特許文献3】
特開2002−145672号公報
【特許文献4】
特開平11−79853号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、上記特許文献3に記載のジルコニアをコーティングしたセッターの場合には、アルミナ製のセッターを製造し、その後にジルコニアを表面にコーティングしているため、製造工程が煩雑であるという問題があった。又、上記特許文献4には、ジルコニアのみからなるセッター及びその製造方法が記載されているが、この場合の製造方法は、泥漿鋳込成形法或いはドクターブレード法によってシート状の成形体を成形し、その後に該成形体を打抜加工し、更に、その後に焼成してセッターとしており、その製造方法は非常に煩雑で、しかも、該方法では、2mmよりも厚い成形体を得ることはできず、一方、0.2mmよりも薄くすると打抜加工の際、或いはその後に成形体が壊れ易く、これよりも薄いセッターを形成することはできなかった。特に、貫通孔の開孔率が高いものは、この傾向が強く、0.2mmよりも厚いものでも機械的強度が充分でなく、更に、成形体を打抜加工後に焼成しているため、焼成時に反りが発生するという問題もあり、上記した方法では歩留りよくジルコニアセッターを得ることができなかった。
【0007】
又、ジルコニアは、熱的安定性に欠けるため、ジルコニアのみからなるセッターを繰り返し使用して加熱や焼成処理を繰り返した場合には、亀裂が生じ、耐久性に劣るという問題もあった。これらのことから、本発明者らは、載積した電子デバイス部品と反応することがないジルコニア材料を用いたセッターでありながら、良好な状態で加熱や焼成処理をすることができ、しかも、耐久性に優れるジルコニアセッターの開発、更には、このようなセッターを簡易に且つ歩留りよく、経済的に得ることができる製造方法の開発が必要であると認識するに至った。
【0008】
従って、本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決し、充分な強度を有し、載積した電子デバイス部品と反応を起こすことがなく、更に、ジルコニア製でありながら、均一な温度分布を達成し、得られる焼成物に焼きムラを生じることがなく、加熱や焼成処理を繰り返した場合においても高い耐久性を示す、性能及び経済性に優れたジルコニアセッターを提供することにある。
また、本発明の別の目的は、上記のような優れたセッターを簡易に、且つ歩留りよく経済的に製造する方法を提供することにある。
更に、本発明の目的は、上記のような優れたセッター及びその製造方法を提供することで、そのセッターを利用して製造される電子デバイス部品の品質の向上、及び生産性の向上を達成し、ひいては、これらの部品等を使用するセラミックス系電子デバイス製品等の品質の向上、及び経済性の達成に寄与することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は下記の本発明によって達成される。
【0010】
本発明は、ジルコニア焼結体からなり、且つ被焼成物を載積する部分の厚みが0.2mmよりも薄いジルコニア製セッターの製造方法であって、Y 2 O 3 、CaO又はMgOで安定化させたジルコニア粉末に少なくとも有機化合物を添加して、該粉末に可塑性を付与した後、該可塑化粉末を押出し成形又は射出成形によって棒状の成形物に成形し、該成形物を乾燥後、乾燥した成形物を1400〜1700℃の温度で焼成し、得られた焼成物を切断機を用いて、その被焼成物を載積する部分の厚みが0.2mmよりも薄くなるように水平に切断してプレート状のセッターを複数形成することを特徴とするジルコニア製セッターの製造方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
先ず、本発明のセッターに載積される電子デバイス部品とは、先に挙げた、コンデンサー、圧電素子、フェライト素子、高周波セラミックス等の各種のセラミックス系電子デバイスの形成に用いられる、様々な特性を有するセラミックス製の薄膜(テープ或いはシート)、バルク(一定の大きさを有したもの)等の、セラミックス製の部材のことである。本発明のセッターは、これらの部材を製造する場合に行われる熱処理や焼成工程で用いられるものであるが、特に、微細形状の、上記したような電子デバイス部品等のセラミックス製の機能性材料全般に渡って好適に使用することができる。上記した電子デバイス部品は、高い機能性が要求されるために、特に、信頼性のある、均質で高い品質の製品が安定して供給されることが求められる。
【0012】
従って、その製造工程における焼成等における処理が、焼きムラを生じることなく均一に行われることが要求されると同時に、焼成等の段階で、これらの部材に対して、セッターから不純物が混入することを防止するのは勿論のこと、部材がセッター材料と反応することを完全に防止し、セッターを使用することによって生じる恐れのある悪影響を回避する必要がある。一方、セッターを利用して製造される電子デバイス部品を用いる各種分野においては、電子デバイス部品を用いた製品の生産性の向上、即ち、製造にかかるコストの削減を達成し、より経済性に優れる製品を得ることは急務であるといえ、セッター等、製造に使用される各種部材に対してもコストの削減が求められている。このため、セッターとしての品質を低減することなく、安価で、その機能性や、使い勝手にも優れ、載積した電子デバイス部品に対して効率的で均質な加熱や焼成等を可能とするセッターが待望されている。
【0013】
これに対し、本発明では、融点が高く、他の材料と反応することが少ないジルコニアをセッターの形成材料とする一方で、その被焼成物が載積される部分の厚みを0.2mmよりも薄くしているため、焼成等の処理を均一な条件下で行うことができ、電子デバイス部品の焼成処理に使用した場合に、焼成物に焼きムラを生じることがなく、更には、加熱や焼成処理を繰り返して使用した場合においても高い耐久性を達成できるセッターの提供が可能となる。以下、本発明のセッターの構成について詳細に説明する。
【0014】
上記したように、本発明のセッターは、ジルコニア焼結体からなるが、ジルコニアとしては、下記に説明する部分安定化ジルコニア及び安定化ジルコニアのいずれかを使用することが好ましい。部分安定化或いは安定化ジルコニアは、純粋なジルコニアに、CaO、MgO、Y2O3等を添加したものである。純粋なジルコニアは、単斜晶系、正方晶系、立方晶系の3種があり、1100℃付近、2370℃付近に相転移点を有するため、冷却時における正方晶から単斜晶の転移では体積膨張を伴うことが知られている。このため、純粋なジルコニアを用いた場合には、焼成時に生じる上記体積膨張によって亀裂を生じることがあるが、前記したような添加物を添加した部分安定化ジルコニア或いは安定化ジルコニアを使用すれば、亀裂の発生を有効に防止できる。
【0015】
本発明者らの検討によれば、中でも特に安定化ジルコニアを使用すれば、電子デバイス部品を載積するセッターとして、加熱や焼成処理を繰り返して用いた場合にも亀裂を生じることなく、高い耐久性を示すことがわかった。前記した特許文献4では、Y2O3/ZrO2のモル比で、1.5/98.5〜6.0/94.0の部分安定化ジルコニアを使用することが好ましいとされ、6.0/94.0を超えるとセッターの厚さが薄くなるほど機械的強度が弱くなって、繰り返し利用できないとされている。しかしながら、後述する本発明の製造方法によれば、0.2mmの厚みよりも薄く、しかも、複数の貫通孔を設けた場合であっても強度も充分なジルコニアセッターを容易に得ることができる。更に、例えば、Y2O3/ZrO2のモル比で8.0/92.0である安定化ジルコニアを使用した場合にも、同様に、被焼成物を載積する部分の厚みが0.2mmよりも薄いにもかかわらず、機械的強度が充分なセッターが得られる。本発明者らの検討によれば、特に、安定化ジルコニアを主原料とした場合は、加熱や焼成処理を繰り返した際に、より高い熱的安定性が実現され、より耐久性に優れるジルコニアセッターとなることがわかった。尚、上記においては、Y2O3を添加して安定化させた場合を例にとって説明したが、CaO又はMgOで安定化させた場合も上記と同様である。
【0016】
本発明のセッターは、図1に示したようなプレート状でも、底板と側壁とを少なくとも有するトレイ状のものでもよい(不図示)。また、プレート状に形成した後、プレートの少なくとも一方の面に、スペーサーとして機能する任意の形状の凸部材を接着等して設けた凸部付きのプレート状のものでもよい(図2参照)。このようにすれば、セッターを段組みして使用できるため、電子デバイス部品の焼成等を集約的に行うことができる。しかし、これに限定されるものではなく、図1に示したようなプレート状のセッターであっても、該セッターを集約的に載せることのできる専用台を用いれば、集約的な焼成処理を行なうことができる。更に、本発明のセッターは、例えば、図3に示したように、複数の貫通孔を有するものであっても、図1に示したように貫通孔を有さないものであってもよい。貫通孔の形状についても特に限定されないが、被焼成物を載積する部分の略全面にわたって微細な貫通孔(例えば、0.15〜1mm)を設けることが好ましい。しかし、本発明のセッターは、その厚みが0.2mmよりも薄いため、貫通孔を設けなくても、均一な温度分布を達成できるので、得られる焼成物に焼きムラを生じることなく焼成処理を行なうことが可能である。
【0017】
しかしながら、本発明はこれらに限定されず、セッターの被焼成物を載積する部分に電子デバイス部品を積載し、保持できるものであれば何れの形状であってもよい。セッターの大きさも特に限定されず、内部に載積する電子デバイス部品の大きさや数に応じて、更には、前記したセッターを載置するための専用台の形状との兼ね合いにおいて適宜に決定すればよい。
【0018】
以下に、貫通孔を複数有する形態の本発明のジルコニアセッターを製造するのに好適な製造方法について説明する。
先ず、セッターの形成材料としては、例えば、第一希元素化学工業(株)製や東ソー(株)製の、8モルY2O3安定化ジルコニア、CaO安定化ジルコニア、MgO安定化ジルコニア、或いは、3モルY2O3安定化ジルコニア等の部分安定化ジルコニアを用いることができる。これらの粉末材料の粒度としては、平均粒径が0.3〜3μmのものを使用することが好ましい。
【0019】
次に、上記に挙げたような粉末材料に有機化合物を添加して、該粉末に可塑性を付与する。この際に使用する有機化合物の添加割合は、上記したようなジルコニアの粉末材料に対して、質量基準で、3〜10%とすることが好ましい。この際に使用する有機化合物としては、具体的には下記に挙げるようなものを使用することができるが、上記に列挙したジルコニア粉末材料に適度な可塑性を付与し、これによって棒状の成形物を形成できるものであれば、いずれのものでもよい。
【0020】
ジルコニア粉末材料に可塑性を付与するために使用することができる有機化合物としては、具体的には、重量平均分子量が400〜6,000の範囲で、加熱時に溶融して適度な粘性を示し、加熱・焼成した後に残留しないような特性を有する有機化合物を使用することが好ましい。このようなものとしては、分子中に酸素原子が多く含まれているポリエステルやセルロースの誘導体、更には、適宜な重合度のポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシド、プロピレンオキシドに任意の量のエチレンオキシドを共重合させたポリエーテルを用いることが好ましい。
【0021】
ポリエーテル(工業用ポリグリコール)は、一般的に、非イオン性界面活性剤、潤滑剤、及び油圧流体等に用いられているが、例えば、プロピレンオキシドに任意の量のエチレンオキシドを混ぜて、エチレングリコールやプロピレングリコール等の2価アルコールや、グリセリンやペンタエリスリトール等の3価のアルコールを開始剤として共重合することで合成できる。かかるポリエーテルは、これらの合成材料を適宜に選択することで、多種多様な物理的特性を有するものが得られるため、セッターの使用目的に適した良好な物理的特性を有する特定のポリエーテルを適宜に選択して使用することができる。従って、原料粉末に可塑性を付与するための有機化合物としては、特に、重量平均分子量が400〜6,000の範囲のポリエーテルを用いることが好ましい。このようにすれば、下記のようにして得られる貫通孔を有する成形物が、その形状を保持できる程度の適度な強度を有するものとなるため、その後の焼成作業を良好に行うことができる。
【0022】
可塑性が付与されたジルコニア材料を用いて形成する棒状の成形物としては、その後に、0.2mmよりも薄い厚みに切断してセッターを形成した場合に、電子デバイス部品を載積するのに充分な載積部分が形成されるものであれば、いずれの形状のものであってもよい。更に、前記したセッターを載置するための専用台の形状に合わせて決定すればよい。例えば、その断面積が、円や楕円、三角、四角、五角等の多角形等、いずれのものであってもよい。その製造方法も限定されないが、内部にジルコニア材料の充填不足が生じて空胴等を生じ、セッターを形成した場合に不良品が発生することのないように、材料が充分に充填された状態の成形物とするためには、或いは、セッターに所望する形状の貫通孔を再現性よく形成するためには、押出し成形又は射出成形によって棒状の成形物を形成することが好ましい。以下、かかる方法について説明する。
【0023】
例えば、押出し成形による棒状の成形物は、下記の手順で簡便に得ることができる。先ず、ジルコニア粉末に、前記したような範囲内の適宜な分子量のポリエーテルを加え、押し出し成形機で、充分に混合・混練して可塑性を付与する。このようにして得られた混練物を押し出し成形機で、ダイを介して押し出せば、容易に棒状の成形物が得られる。この際に使用するダイの形状を適宜に選択することによって、円、楕円、各種の角形等、所望の断面形状を有する成形物を得ることができる。図4は、上記のようにして得られたブロック状の成形物の斜視図である。
【0024】
更に、例えば、所望する形状の貫通孔を複数有するセッターを製造するためには、ダイを選択する場合に、所望形状の開孔を有する直線状の貫通孔が複数設けられている成形物が得られるようなダイを用いて押し出し成形すればよい。例えば、図5に示したような、断面及び開孔形状が円形である複数の直線状の貫通孔を有するブロック状の成形物を成形すればよい。この際に断面及び開孔の円形形状としては、例えば、0.15〜1.0mm程度、より好ましくは、0.3〜0.5mm程度の範囲とすればよい。勿論、貫通孔の断面形状は円形に限定されるものではなく、楕円形や多角形等、各種の形状とすることができる。又、複数の貫通孔を図5に示したように同一としてもよいし、切断してセッターとした場合に、例えば、中心部の孔の開口径と周辺部の開口径を異ならせる等、不均一なものとしてもよい。図5(a)はブロック状の成形物の斜視図であり、図5(b)は、A及びBの位置で切断した場合の模式的な斜視図である。図5中の3は、直線状の貫通孔を示す。
【0025】
その他の形態にかかる本発明のセッターの製造方法としては、押し出し成形する際の可塑性を有するジルコニア粉末に気孔形成剤を加えることで、その後の焼成工程でジルコニア焼成体に、従来公知の方法で連続或いは不連続の孔を形成した棒状の成形物を使用してもよい。
【0026】
本発明においては、次に、上記のようにして得た成形物を、30〜80℃程度の温度で乾燥し、乾燥後の成形物を1400〜1700℃で焼成することが好ましい。乾燥時間は、使用した有機化合物及び成形物の大きさにもよるが、5〜 12時間程度とすればよい。
【0027】
最後に、上記のようにして得られた焼成物を下記の方法で切断してセッターに加工する。この際に使用する切断機としては、内周スライサー、マルチワイヤーソー、バンドソーのいずれか、より好ましくは、内周スライサーやマルチワイヤーソーを用いる。例えば、内周スライサーやマルチワイヤーソーは、インゴットからシリコンウェハを切り出す際の精密切断に使用されており、特に薄いセッターを作製する場合に有効である。内周スライサーを使用すれば、図4及び5に示したようなブロック状の成形物(焼成物)を、これらの図中に5で示した破線の位置を水平に切断することで、0.2mmよりも薄いプレート状のセッターを容易に作製することができる。しかしながら、本発明のセッターは、プレート状に限定されず、上記した切断機を適宜に用いることで、被焼成物を載積する部分の厚みが0.2mmよりも薄いトレイ状のものを切り出すことも可能である。
【0028】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。
<実施例1>
本実施例では、形成材料に、平均粒径が0.5μmの8モルY2O3安定化ジルコニア粉末を用いた。また、粉末に含有させる有機化合物には、プロピレンオキシドに任意の量のエチレンオキシドを混ぜて、グリセリンを開始剤として共重合して得られた重量平均分子量3,000のポリエーテルを用いた。そして、かかる共重合物をジルコニア粉体に5質量%の割合で含有させて、押し出し成形機で、混合・混練して可塑性を付与した。このようにして得られた混練物を用いて、押し出し成形機で、孔のない図4に示したような角柱状の成形物を成形した。これを50℃で12時間、乾燥後、60℃/時間の条件で1550℃まで昇温し、その温度で120分間焼成して、ジルコニア焼成体を作製した。得られた柱状の焼成体の大きさを測定したところ、およそ120×120×40mmであった。
【0029】
次に、上記で得られたジルコニア焼成体を、内周スライサー[(株)東京精密製、商品名:SL−LM−434D]を用いて水平に切断して、厚みが、0.19mm(A−1)、0.17mm(B−1)、0.15mm(C−1)、0.13mm(D−1)の、4種類の孔のないプレート状セッターを得た。
【0030】
<実施例2>
本実施例では、押し出し成形時に使用するダイを変更して、その断面形状が0.5mmφである直線状の貫通孔が複数形成されている以外は、実施例1と同様の柱状の成形物を得、その後の、焼成及び切断工程も実施例1と同様にしてセッターを得た。得られたセッターは、複数の貫通孔を有している以外は実施例1と同様である、0.19mm(A−2)、0.17mm(B−2)、0.15mm(C−2)0.13mm(D−2)の、4種類の厚みの貫通孔を有するプレート状セッターである。
【0031】
[評価]
上記した実施例1及び2で得た8種類のセッターを使用して、夫々のセッターに、電子デバイス用部材であるテープ状に成形されたチタン酸バリウム系セラミックス成形体を同じ量で積載させて、焼成処理を行なった。昇温条件は30℃/時間とし、1150℃で120分間焼成した。そして、上記した各セッターを用いた場合について、得られた焼成物に焼きムラが発生していないか否かを調べた。その結果、全てのセッターで、焼きムラのない良好な状態の焼成物が得られることが確認できた。
【0032】
<比較例>
比較のために、セッターの厚みを0.2mm、0.5mm、0.8mmとした以外は実施例1と同様にして、焼成物について焼きムラの発生を調べたところ、0.2mmでも僅かに焼きムラの発生が認められ、0.5及び0.8mmの厚みのセッターでは、焼きムラの発生が明確に認められた。
【0033】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明によれば、電子デバイス部品の熱処理又は焼成工程において使用した場合に、被焼成物と反応することがなく、焼成物に焼きムラを生じることもなく、しかも、機械的強度が充分で、繰り返し使用時における耐久性にも優れるセッターが提供される。又、本発明によれば、上記した優れたセッターを簡易且つ経済的に製造できるジルコニアセッターの製造方法が提供される。更に、本発明によれば、上記のような優れた機能を有するセッターを安価に提供することで、高品質の電子デバイス部品を安定して且つ生産性よく安価に得ることができると同時に、該電子デバイス部品を使用するセラミックス系電子デバイス製品等の品質及び生産性の向上に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 プレート状の本発明のセッターの一例の模式的な斜視図である。
【図2】 プレート状の本発明のセッターの別の一例の模式的な斜視図である。
【図3】 プレート状の本発明のセッターの別の一例の模式的な斜視図である。
【図4】 本発明のセッターを製造する場合に用いるジルコニア焼成体を示す図である。
【図5】 本発明のセッターを製造する場合に用いる別の形態のジルコニア焼成体を示す図である。
【符号の説明】
1:セッター
2:焼成体
3:貫通孔
4:凸部材
5:切断予定の線
Claims (2)
- ジルコニア焼結体からなり、且つ被焼成物を載積する部分の厚みが0.2mmよりも薄いジルコニア製セッターの製造方法であって、Y 2 O 3 、CaO又はMgOで安定化させたジルコニア粉末に少なくとも有機化合物を添加して、該粉末に可塑性を付与した後、該可塑化粉末を押出し成形又は射出成形によって棒状の成形物に成形し、該成形物を乾燥後、乾燥した成形物を1400〜1700℃の温度で焼成し、得られた焼成物を切断機を用いて、その被焼成物を載積する部分の厚みが0.2mmよりも薄くなるように水平に切断してプレート状のセッターを複数形成することを特徴とするジルコニア製セッターの製造方法。
- 棒状の成形物が、押し出された方向に複数の直線状の貫通孔が設けられたものである請求項1に記載のジルコニア製セッターの製造方法。
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