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JP4492167B2 - 有機elディスプレイおよびその製造方法 - Google Patents

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JP4492167B2 JP2004083578A JP2004083578A JP4492167B2 JP 4492167 B2 JP4492167 B2 JP 4492167B2 JP 2004083578 A JP2004083578 A JP 2004083578A JP 2004083578 A JP2004083578 A JP 2004083578A JP 4492167 B2 JP4492167 B2 JP 4492167B2
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Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(以下有機ELとも称する)ディスプレイとその製造方法に関する。特に、本発明は、パッシベーション層を含むボトムエミッション方式のパッシブ型有機ELディスプレイとその製造方法に関する。
有機ELディスプレイのカラー化方式の一つに、基板上にカラーフィルタや蛍光変換層のような色変換層を形成し、これを利用して有機発光層からの光を赤、緑、青の3原色に分離あるいは3原色を発生させる方式がある。この方法では、基板上に色変換層を形成するため段差が生じ、色変換層上に透明電極および補助電極を形成した場合にこれらが断線するおそれがある。このような断線を防止するために有機材料からなる平坦化層を設け、この上に透明電極や補助電極を設けることが行われている。平坦化層に使用される有機材料は、水分や有機溶媒成分を含んでおり、これらの成分がディスプレイの駆動時に発生する熱などにより揮発し、ガスとして放出される。このガスは有機EL層を劣化させディスプレイの信頼性を低下させる。
このような問題を解決するため、特許文献1には、酸化珪素からなるパッシベーション層をRFスパッタリング法で形成する方法が開示されている。また、特許文献2には、窒化珪素からなるパッシベーション層をCVD法またはプラズマCVD法により形成する方法が開示されている。
有機ELディスプレイの膜形成に関するものではないが、スパッタリング法の1つとして、特許文献3および4には、デュアルカソード方式マグネトロンスパッタリング法を用い、結晶性の光触媒活性の高い酸化チタン膜を形成することも開示されている。
特開平11−260562号公報 特開2002−134268号公報 特開2003−123853号公報 特開2003−117404号公報
パッシベーション層には、高い防湿性、高い平坦性、色変換フィルタ層および有機発光層との屈折率差が小さいこと、高い生産性などが要求される。
パッシベーション層はRF、DC、CVDなどのスパッタリング法を用いて成膜されるが、これらのスパッタリング法は、防湿性を低下させる要因を含んでいる。防湿性を低下させる要因としては、パッシベーション層にピンホールが形成されることや、層中に結晶粒の粒界が形成されることなどが挙げられる。パッシベーション層へのピンホールの形成は、基板を搬送する間に、スパッタチャンバ内のパーティクルが飛散して基板に付着することにより、あるいはスパッタの際の異常放電の発生によってターゲット上のパーティクルが高いエネルギーで基板に衝突することなどにより起こる。RFによる放電方式ではターゲットの電位がほとんどの時間負に維持されるため、ターゲット表面がチャージアップして異常放電が発生しやすい。また、DCによる放電方式では、高いスパッタレートが得られる利点を有するが、ターゲットに例えば0.01Ωcm以上の導電性が必要であり、不純物濃度の高いターゲットを用いた反応性のスパッタ方法が必要であり、十分な膜質を得ることができない。
さらに、異常放電の発生により、パーティクルが基板に付着し、パッシベーション層の表面平坦性(表面粗さ(Ra))や、ピーク・トゥ・バレイ(Peak-to-Valley)値が大きくなる。パッシベーション層の表面に形成されるおよそ10nm以上の突起が、陽極−陰極間の短絡の原因となり、有機ELディスプレイの欠陥となる。
パッシベーション層を形成する他の方法として挙げられるCVD法は、原料ガスとしてシラン等の反応性の高い危険なガスを用いるため、安全性を重視した生産設備が必要となり、投資、維持費用が大きくなるという欠点を有する。
このように、上述の性能を満足するパッシベーション層およびその製造工程は開発されていない。
従って、本発明の目的は、発光不良やダークスポットの発生を抑制することができるパッシベーション層を含む有機ELディスプレイおよびそのようなパッシベーション層を形成できる方法を含めた有機ELディスプレイの製造方法を提供することにある。
本発明は、有機ELディスプレイの製造方法に関する。第1の実施形態は、色変換フィルタ層と平坦化層を少なくとも有する透明な支持基板上に、パッシベーション層を形成する工程と、該パッシベーション層上に第1電極、有機発光層および第2電極を形成する工程を含み、該パッシベーション層が酸化珪素からなり、デュアルカソードを用いた交流印加方式によるスパッタリング法により形成され、該スパッタリング法が、基板の加熱を行わずに以下の条件により行われる。
実行電力密度:1から6W/cm
スパッタガス:酸素およびアルゴン、流量比:酸素/アルゴン=0.3から0.7
第2の実施形態では、有機ELディスプレイの製造方法は、色変換フィルタ層と平坦化層を少なくとも有する透明な支持基板上に、パッシベーション層を形成する工程と、該パッシベーション層上に第1電極、有機発光層および第2電極を形成する工程を含み、該パッシベーション層が酸化窒化珪素からなり、デュアルカソードを用いた交流印加方式によるスパッタリング法により形成され、該スパッタリング法が、基板の加熱を行わずに以下の条件により行われる。
実行電力密度:1から6W/cm
スパッタガス:酸素、窒素およびアルゴン
流量比:酸素/アルゴン=0.03から0.3;窒素/アルゴン=0.2から0.4
本発明によれば、優れた特性を有するパッシベーション層を含む有機ELディスプレイとその製造方法が提供できる。
本発明の第1は、優れた特性を有するパッシベーション層を含む有機ELディスプレイに関する。この有機ELディスプレイは、透明な支持基板上に、少なくとも色変換フィルタ層、平坦化層およびパッシベーション層を含む色変換基板と、第1電極、有機発光層、および第2電極とを備えており、前記平坦化層の表面粗さ(Ra)が、0.1nmより大きく、1.0nmより小さく、前記パッシベーション層が酸化珪素または酸化窒化珪素からなり、表面粗さ(Ra)が0.5nmより大きく、2nmよりも小さい非晶質膜であり、前記パッシベーション層がデュアルカソードを用いた交流印加方式によるスパッタリング法により形成されることを特徴とする。前記平坦化層は、そのピーク・トゥ・バレイ値が1nmより大きく10nmより小さいことが好ましく、前記パッシベーション層は、そのピーク・トゥ・バレイ値が3nmより大きく、20nmより小さいことが好ましい。本発明の有機ELディスプレイは、パッシベーション層の平坦性に特徴を有し、この平坦性は、平坦化層の表面特性を合わせて制御することで所望の値にすることができる。すなわち、本発明では、パッシベーション層の特性を所望の範囲にするために、平坦化層の表面粗さ(Ra)、ピーク・トゥ・バレイ値などの表面特性を所定の範囲内にする。本明細書で使用する表面粗さ(Ra)とは、JIS B 0601−2001に示される算術平均高さを意味する。また、本明細書において、ピーク・トゥ・バレイ値とは、JIS B 0601−2001に示される最大高さ(Rz)を意味する。
さらに、本発明では、パッシベーション層の特性を改善するために、その成膜にデュアルカソード方式のスパッタリング法を採用する。この方式を採用することで、放電が安定し、ピンホールや突起の形成を低減することができる。以下に具体例を挙げて本発明の有機ELディスプレイを説明する。
本発明の有機ELディスプレイは、ボトムエミッション方式で積層型のパッシブ型有機ELディスプレイである。具体的には、例えば、図1の有機ELディスプレイを挙げることができる。なお、図1において、有機ELディスプレイは、複雑化を避けるため一画素として表したが、もちろん複数画素からなる有機ELディスプレイであってもよい。
第1の実施形態の有機ELディスプレイ100は、透明な支持基板102上に設けられたブラックマトリックス106および色変換フィルタ層104B、104G、104Rを有する。これらの層は、平坦化層110およびパッシベーション層112により被覆される。パッシベーション層上には、発光部が設けられる。発光部は、少なくとも、ストライプ状に形成された透明な第1電極114と、有機EL層116と、第1電極と垂直なストライプパターンの第2電極126から構成される。図1では示していないが、本発明の有機ELディスプレイは、封止基板および外周封止層などにより封止される。
以下に本発明の有機ELディスプレイの各構成要素について説明する。なお、以下の説明では、図1に示されていない任意要素についても説明する。
(I)支持基板(102)
支持基板102として、ガラスやプラスチックなどからなる絶縁性基板、または、半導電性や導電性基板に絶縁性の薄膜を形成した基板を用いることができる。あるいはまた、ポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂またはポリイミド樹脂などから形成される可撓性フィルムを、支持基板102として用いてもよい。本発明では、支持基板102は透明であることが必要である。
支持基板の厚さなどのパラメータは従来の通りであり、当業者により適切に選択されうる。
(II)色変換フィルタ層
次に、支持基板上に設けられる、色変換フィルタ層(104B、104G、104R)について説明する。各色変換フィルタ層は、それぞれ、赤、緑および青の染料または顔料からなる赤色変換フィルタ層、緑色変換フィルタ層および青色変換フィルタ層である。
本明細書において、色変換フィルタ層は、カラーフィルタ層、蛍光変換層、およびカラーフィルタ層と蛍光変換層との積層体の総称である。蛍光変換層は、有機EL層で発光される近紫外領域ないし可視領域の光、特に青色ないし青緑色領域の光を吸収して異なる波長の可視光を蛍光として発光するものである。フルカラー表示を可能にするためには、少なくとも青色(B)領域、緑色(G)領域および赤色(R)領域の光を放出する独立した色変換フィルタ層が設けられる。R、G、Bそれぞれの蛍光変換層は、少なくとも有機蛍光色素とマトリクス樹脂とを含む。
1)R、G、B色変換フィルタ層
本発明では、有機蛍光色素として、少なくとも赤色領域の蛍光を発する蛍光色素の一種類以上が用いられ、緑色領域の蛍光を発する蛍光色素の一種以上と組み合わせることが好ましい。これは以下の理由による。有機EL層が発光源である場合、青色ないし青緑色領域の光を発光するものが得やすいが、これを単なる赤色フィルタに通して赤色領域の光に変更しようとすると、元々赤色領域の波長の光が少ないため、極めて暗い出力光になってしまう。従って、十分な強度の出力を持った赤色領域の光を得るためには、発光体としての有機EL層からの光を蛍光色素によって一旦吸収させ、赤色領域の光に変換させることが必要となる。このように、赤色領域の光は、発光体からの光を蛍光色素によって赤色領域の光に変換させることにより、十分な強度の出力が可能となる。
一方、緑色領域の光は、赤色領域の光と同様に、発光体からの光を別の蛍光色素によって緑色領域の光に変換させて出力させてもよいし、または、発光体の発光が緑色領域の光を十分に含むならば、この発光体からの光を単に緑色フィルタを通して出力してもよい。
また、青色領域の光に関しては、発光源からの光(例えば有機EL層からの光)を単なる青色フィルタに通して出力させることが可能である。
(有機蛍光色素)
本発明において、有機蛍光色素は、有機EL層のような発光体から発せられる近紫外領域ないし可視領域の光、特には青色ないし青緑色領域の光を吸収して、該発光体とは異なる波長の可視光を発するものであれば特に限定されない。
有機EL層から発せられる青色から青緑色領域の光を吸収して、赤色領域の蛍光を発する蛍光色素には、例えば以下のような有機蛍光色素がある。すなわち、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミン3B、ローダミン101、ローダミン110、スルホローダミン、べ一シックバイオレット11、べーシックレッド2などのローダミン系色素、シアニン系色素、1−エチル−2−[4−(p−ジメチルアミノフェニル)−13−ブタジエニル]−ピリジウム−パークロレート(ピリジン1)などのピリジン系色素、あるいはオキサジン系色素などである。さらに、各種染料(直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料など)も所望の蛍光を発することができれば使用することができる。
有機EL層から発せられる青色ないし青緑色領域の光を吸収して、緑色領域の蛍光を発する蛍光色素には、例えば以下のような有機蛍光色素がある。すなわち、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン(クマリン6)、3−(2’−ベンゾイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン(クマリン7)、3−(2’−N−メチルベンゾイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン(クマリン30)、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−トリフルオロメチルキノリジン(9,9a,1−gh)クマリン(クマリン153)などのクマリン系色素、または、クマリン色素系染料であるべーシックイエロー51、さらにはソルベントイエロー11、ソルベントイエロー116などのナフタルイミド系色素などである。さらに、各種染料(直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料など)も所望の蛍光を発することができれば使用することができる。
なお、本発明に用いることができる有機蛍光色素を、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、アルキッド樹脂、芳香族スルホンアミド樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂およびこれらの樹脂混合物などに予め練り込んで顔料化して、有機蛍光顔料としてもよい。また、これらの有機蛍光色素や有機蛍光顔料(本明細書中で、前記2つを合わせて有機蛍光色素と総称する)は単独で用いてもよく、蛍光の色相を調整するために二種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明に用いる有機蛍光色素は、色変換フィルタ層に対して、この色変換フィルタ層の重量を基準として0.01〜5重量%、より好ましくは0.1〜2重量%の量で含有される。有機蛍光色素の含有量が0.01重量%未満の場合には、十分な波長変換を行うことができず、その含有量が5%を越える場合には、濃度消光等の効果により色変換効率の低下が起こる。
2)マトリックス樹脂
次に、本発明の色変換フィルタ層に用いられるマトリックス樹脂について説明する。マトリックス樹脂は、光硬化性樹脂または光熱併用型の硬化性樹脂からなる。これを、光および/または熱処理して、ラジカル種やイオン種を発生させて重合または架橋させ、樹脂を不溶不融化させて、色変換フィルタ層等を形成する。
光硬化性または光熱併用型の硬化性樹脂には、(1)アクロイル基やメタクロイル基を複数有するアクリル系多官能モノマーおよびオリゴマー、(2)ポリビニル桂皮酸エステル、(3)鎖状または環状オレフィン、(4)エポキシ基を有するモノマーなどが含まれる。また、光硬化性樹脂または光熱併用型の硬化性樹脂は、色変換フィルタ層として硬化されない状態では、有機溶媒またはアルカリ溶液に可溶であることが好ましい。
これらの硬化性樹脂は、例えば以下のような組成物として使用され、基板上に塗布された後、パターンニングされる。例えば、(1)の硬化性樹脂は、光または熱重合開始剤と混合され、この組成物を塗布した後、光または熱処理して、光ラジカルや熱ラジカルを発生させて重合させる。また、(2)の硬化性樹脂は、増感剤と混合され、この組成物を塗布した後、光または熱処理により二量化させて架橋する。(3)の硬化性樹脂は、ビスアジドと混合され、この組成物を塗布した後、光または熱処理によりナイトレンを発生させ、オレフィンと架橋させる。(4)の硬化剤は、光酸発生剤と混合され、この組成物を塗布した後、光または熱処理により、酸(カチオン)を発生させて重合させる。本発明では、特に(1)の光硬化性または光熱併用型硬化性樹脂からなる組成物が高精細でパターンニングが可能であり、耐溶剤性、耐熱性等の信頼性の面でも好ましい。
3)ブラックマトリックス
ブラックマトリックスは、可視光をよく吸収し、発光部および色変換フィルタ層へ悪影響を与えないものであれば特に限定されない。本発明では、黒色の無機層、黒色顔料または黒色染料を樹脂に分散した層等によりブラックマトリックスを形成することが好ましい。例えば、黒色の無機層としては、クロム膜(酸化クロム/クロム積層膜)などを挙げることができる。また、黒色顔料または黒色染料を樹脂に分散した層としては、例えば、カーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン等の顔料または染料をポリイミドなどの樹脂に分散したもの、カラーレジストなどが挙げられる。これらのブラックマトリックスは、スパッタ法、CVD法、真空蒸着等のドライプロセス、スピンコート法のようなウエットプロセスにより形成することができ、フォトリソグラフィー法等によりパターンニングすることができる。
本発明では、ブラックマトリックスの光反射率は、40%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは10%以下である。これ以上の反射率であると、外部からの入射光を反射し、コントラストを低下させる原因となる。本発明では、上記クロム膜(数十%)、および顔料分散樹脂層(10%以下)が好ましい光反射率を有するが、クロム膜よりも顔料分散樹脂層の方が低い反射率を有するため好ましい。ただし、無機層は、材料により電気伝導性を持たせることが可能であり、透明電極の補助電極としての機能を持たせることができる場合があるので、ブラックマトリックスの材料は、色変換フィルタ層の用途に応じて適宜選択すればよい。ブラックマトリックスは、好ましくは0.5〜2.0μmの厚さを有する。
(III)平坦化層(110)
平坦化層は、色変換フィルタ層により生じる支持基板上の凹凸を平坦化する。平坦化層は、当該技術分野で知られている任意の材料により形成することができる。好ましくは、SiO、SiN、SiN、AlO、TiO、TaO、ZnO等の無機酸化物または窒化物、あるいはポリイミドまたはアクリル樹脂から形成される。本発明では、平坦化層は有機材料、特にアクリル樹脂が好ましい。平坦化層の膜厚は、1μm〜10μmであることが好ましい。
本発明では、以下に説明するパッシベーション層の表面粗さ(Ra)を所定範囲にするために、平坦化層の表面粗さ(Ra)、ピーク・トゥ・バレイ値などの表面特性を所定範囲にすることが必要である。すなわち、本発明では、平坦化層とパッシベーション層の両方の表面特性を所定の範囲に制御することにより、パッシベーション層の優れた特性を実現することができる。
本発明では、平坦化層は、0.1から1.0nmの表面粗さ(Ra)と1から10nmのピーク・トゥ・バレイ値を有することが好ましい。なお、本発明において、表面粗さ(Ra)およびピーク・トゥ・バレイ値は、例えば原子間力顕微鏡などを用いて測定することができる。
(IV)パッシベーション層(112)
本発明では、支持基板上のブラックマトリックス、色変換フィルタ層、平坦化層などを覆うパッシベーション層112を設ける。パッシベーション層は、外部環境からの酸素、低分子成分および水分の透過を防止し、それらによる有機EL層の機能低下を防止するのに有効である。また、パッシベーション層は、この上に形成される第1電極などが断線しないように、高い平坦性を有していることが好ましい。さらに、パッシベーション層は、有機EL層の発光を外部へと透過させるために、その発光波長域において透明であることが好ましい。
これらの要請を満たすために、パッシベーション層は、可視域における透明性が高く(400〜800nmの範囲で透過率50%以上)、電気絶縁性を有し、水分、酸素および低分子成分に対するバリア性を有し、好ましくは鉛筆硬度2H以上の膜硬度を有する材料で形成される。例えば、SiO、SiN、SiN、AlO、TiO、TaO、ZnO等の無機酸化物、無機窒化物等の材料を使用できる。
また、パッシベーション層112は、その屈折率が、平坦化層110と第1電極114(本発明では透明な電極)の屈折率の間であることが好ましい。例えば、平坦化層としてアクリル樹脂を用い、第1電極としてITOを用いる場合、パッシベーション層の屈折率は約1.5〜2.0となることが好ましい。従って、この例の場合、酸化珪素(SiO)または酸化窒化珪素(SiN)膜を形成することが最も好ましい。本発明では、平坦化層とパッシベーション層の材料は上記材料の組み合わせであることが好ましい。
本発明では、デュアルカソード方式のスパッタリング法を使用してパッシベーション層を成膜する。本発明のパッシベーション層の表面粗さ(Ra)は、0.5nmより大きく2nmよりも小さい。また、パッシベーション層は非晶質であることが好ましい。パッシベーション層が非晶質ではなく、上記表面粗さ(Ra)の範囲外であると、第1電極と第2電極間の短絡が発生しやすくなり、有機ELディスプレイを長時間駆動した場合、ダークスポットの発生が著しくなる。パッシベーション層の厚さは、0.1〜10μmであることが好ましい。
(V)第1電極、有機EL層および第2電極
本発明の有機ELディスプレイは、一対の電極の間に少なくとも有機発光層を挟持し、必要に応じ、正孔注入層や電子注入層などを導入した構造を有する。即ち、本発明の有機ELディスプレイは、第1電極と、正孔注入層、有機発光層、電子輸送層などを含む有機EL層と第2電極とを少なくとも含む。具体的には、第1電極、有機EL層および第2電極は下記のような層構造を有する。
(1)陽極/有機発光層/陰極
(2)陽極/正孔注入層/有機発光層/陰極
(3)陽極/有機発光層/電子輸送層/陰極
(4)陽極/正孔注入層/有機発光層/電子輸送層/陰極
(5)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層/陰極
(6)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
上記の層構造において、陽極および陰極の少なくとも一方は、有機EL層の発する光の波長域において透明であることが望ましい。この透明な電極を通して光が放出される。
なお、本明細書において、第1電極および第2電極に挟持された有機層(有機発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層および/または電子注入層)の部分を有機EL層116と称する。また、本明細書において、第1電極、有機EL層、および第2電極を併せて発光部と称する。
(i)電極および有機EL層
本発明では、以下に示す第1電極および第2電極を用いることができる。
イ)第1電極114
第1電極114は、パッシベーション層112上に形成される。第1電極114は、有機発光層に対して効率よく電子または正孔を注入することができるものである。第1電極は、陽極または陰極として用いることができるが、本発明では陽極として用いることが好ましい。
第1電極を陽極として用いる場合、正孔の注入を効率よく行うために、仕事関数が大きい材料が用いられる。本発明のようなボトムエミッション型の場合、第1電極は透明である。この場合の第1電極としては、ITO、IZO、ATOなどの導電性金属酸化物を用いることができる。
ITOなどの電極は、抵抗率が10−4Ω・cm台であり、金属と比較して1桁以上の抵抗率が高い。そこで、ITOなどの導電性金属酸化物を用いる場合、その下に抵抗率の低いメタル電極を補助電極として用いることが好ましい。このメタル電極は、導電性金属酸化物より抵抗率の低く、所望の形状にパターン形成できるものであれば特に限定されず、金属全般を使用することができる。好ましい材料としては、Al,Ag,Mo,Wなどを挙げることができる。
ロ)第2電極(126)
第2電極は、有機発光層に対して効率よく電子または正孔を注入することができるものである。本発明のようなボトムエミッション型の場合には、第2電極は必ずしも透明である必要はない。
本発明では、第2電極を陰極として用いることが好ましい。第2電極を陰極として用いる場合には、仕事関数の小さい材料を用いることができる。例えば、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、カリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウムなどのアルカリ土類金属、またはこれらのフッ化物等からなる電子注入性の金属、その他の金属との合金や化合物などの材料の極薄膜(10nm以下)を用いることができる。また、Al、Mg/Agのような材料を用いることもできる。
ハ)有機EL層(116)
有機EL層の各層の材料は、公知のものが使用できる。青色から青緑色の発光を得るためには、有機発光層には、例えばベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、べンゾオキサゾール系などの蛍光増白剤、金属キレート化オキソニウム化合物、スチリルベンゼン系化合物、芳香族ジメチリディン系化合物などが好ましく使用される。電子注入層としては、上記電極の欄で説明した仕事関数の小さな材料を使用することができる。従って、第2電極は電子注入層を兼ねることができる。また、電子輸送層としては、金属錯体系(Alq3)とオキサジアゾール、トリアゾール系化合物等を用いることができる。また、正孔注入層としては、芳香族アミン化合物、スターバースト型アミンや、ベンジジン型アミンの多量体および銅フタロシアニン(CuPc)などを用いることができる。正孔輸送層としては、スターバースト型アミン、芳香族ジアミンなどを用いることができる。
上記第1電極、第2電極および有機EL層の各層の厚さは、従来通りである。
次に、外周封止層、封止用基板および充填剤層について説明する。これらは、本発明の有機ELディスプレイの気密性を保つために必要に応じて設けられるものである。
(VI)外周封止層
外周封止層は、封止用基板と共に、色変換フィルタ層、発光部(第1電極、有機EL層、第2電極)などを設けた支持基板を外部環境の酸素、水分などから保護する機能を有する。外周封止層は、例えば紫外線硬化型樹脂から形成ることができる。
封止用基板と支持基板とのアライメントが完了したならば、紫外線を照射して、紫外線硬化型樹脂を硬化させればよい。
また、外周封止層に紫外線硬化型樹脂を用いる場合、これには、直径5〜50μm、好ましくは直径5〜20μmのガラスビーズ、シリカビーズなどを含ませることができる。これらのビーズ類は、封止用基板との貼り合わせにおいて、基板間距離(基板と封止用基板との間の距離)を規定すると共に、接着のために印加される圧力を負担する。
なお、内部空間に充填剤を封入する場合には、外周封止層の一部に孔を設けて外周封止層を硬化させ、この孔から充填剤を注入した後、この孔を塞げばよい。
(VII)封止用基板
封止用基板は、本発明の有機ELディスプレイを封止し、外部の水分や有害なガスなどを透過させないものであれば特に限定されない。また、膜厚等も従来の通りである。例えば、従来の封止用の基板をそのまま使用することができる。
(VIII)充填剤層
充填剤層は、有機ELディスプレイ内の内部空間を充填して、素子の密閉性を高めるためのものである。
充填剤層を形成するための充填剤は、発光部、色変換フィルタ層などの特性に悪影響を及ぼさない不活性液体または不活性なゲルであればよい。また、充填剤は、内部空間に注入した後にゲル化する液体であってもよい。本発明で使用しうるこのタイプの充填剤の例は、シリコーン樹脂、フッ素系不活性液体、またはフッ素系オイルなどを含む。充填剤の所要量は、当業者によって容易に決定されうる。
本発明の有機ELディスプレイでは、封止用基板、外周封止層および充填剤層は、例えば紫外線硬化樹脂または熱光併用型硬化樹脂などの樹脂を均一に塗布し、これを硬化することで一体に形成してもよい。
(IX)絶縁膜
本発明の有機ELディスプレイでは、第1電極と第2電極の間に絶縁膜(図示せず)を配設することができる。本発明では、特に第1電極を形成した後に成膜することができる。絶縁膜により素子の発光部位を制御し、消費電力を押さえることができる。例えばパッシブマトリックス型で、絶縁層を設けない場合、色変換フィルタ層の側面だけでなく、ブラックマトリックスの部分でも発光が起こる。この部分で発光した光は、色変換フィルタ層や外部へ到達できない。従って、有機ELディスプレイとして有効に活用することができないため、有機ELディスプレイの消費電力を増大させる原因になる。このような損失を低減するため、絶縁膜をサブピクセルの周囲に形成することが好ましい。
絶縁膜の材料としては、発光部の駆動電圧に対し、十分な絶縁耐性を有し、且つ、発光部へ悪影響を及ぼさないものであればよい。例えば、無機酸化物膜または無機窒化物膜を用いることができる。このような無機酸化物膜または無機窒化物膜には、例えば、窒化ケイ素、酸化チタン、酸化タンタル、窒化アルミニウム等がある。また、フォトレジスト、ノボラック樹脂等の感光性材料や、ポリイミド等の有機材料を用いることもできる。フォトレジスト材料を用いれば、フォトリソグラフィ法によりパターンニングが可能であるので、微細な形状の加工が容易にでき、好ましい。
絶縁膜の膜厚などのパラメータは従来の通りであり、当業者により適切に選択されうる。例えば、膜厚は、200〜400nm、好ましくは250〜350nmである。
次に本発明の有機ELディスプレイの製造方法について説明する。
第1の実施形態は、色変換フィルタ層と平坦化層を少なくとも有する透明な支持基板上に、パッシベーション層を形成する工程と、該パッシベーション層上に第1電極、有機発光層および第2電極を形成する工程を含み、該パッシベーション層が酸化珪素からなり、デュアルカソードを用いた交流印加方式によるスパッタリング法により形成され、該スパッタリング法が、基板の加熱を行わずに以下の条件により行われる。
実行電力密度:1から6W/cm
スパッタガス:酸素およびアルゴン、流量比:酸素/アルゴン=0.3から0.7
すなわち、本発明は、パッシベーション層の形成工程に特徴を有する。なお、本発明では、パッシベーション層の特性を所望の範囲にするために、平坦化層の表面粗さ(Ra)、ピーク・トゥ・バレイ値などの表面特性を所定の範囲内にすることが必要である。
第2の実施形態では、有機ELディスプレイの製造方法は、色変換フィルタ層と平坦化層を少なくとも有する透明な支持基板上に、パッシベーション層を形成する工程と、該パッシベーション層上に第1電極、有機発光層および第2電極を形成する工程を含み、該パッシベーション層が酸化窒化珪素からなり、デュアルカソードを用いた交流印加方式によるスパッタリング法により形成され、該スパッタリング法が、基板の加熱を行わずに以下の条件により行われる。
実行電力密度:1から6W/cm
スパッタガス:酸素、窒素およびアルゴン
流量比:酸素/アルゴン=0.03から0.3;窒素/アルゴン=0.2から0.4
第2の実施形態においても、パッシベーション層の形成工程に特徴がある。なお、本発明では、パッシベーション層の特性を所望の範囲にするために、平坦化層の表面粗さ(Ra)、ピーク・トゥ・バレイ値などの表面特性を所定の範囲内にすることが必要である。
本発明の製造方法の対象は、図1のボトムエミッション方式で積層型のパッシブマトリックス型有機ELディスプレイである。以下に図面を参照して本発明の製造方法を説明するが、以下の説明では、第1電極114が陽極であり、第2電極126が陰極である場合を例に取る。
本発明の製造方法では、まず、透明な支持基板102上に、ブラックマトリックス106をパターン形成し、色変換フィルタ層104をまず形成する(図2(a))。
具体的な製造方法は、例えば黒色の無機層、黒色顔料または黒色染料を樹脂に分散した層等を、例えばコーニング社製のガラスのような透明な支持基板上に、スパッタ法、CVD法、真空蒸着等のドライプロセス、スピンコート法のようなウエットプロセスにより形成することができ、フォトリソグラフィー法等によりパターンニングしてブラックマトリックス106を形成することができる。
次に、染料または顔料を含有したマトリックス樹脂を、ブラックマトリックス106を設けた透明な支持基板102上にスピンコート法などを用いて塗布し、フォトリソグラフィー法などによりパターンニングを行うことにより色変換フィルタ層(104B、104G、104R)を形成する。より具体的には、例えば、マトリックス樹脂は、光硬化性樹脂または光熱併用型の硬化性樹脂からなるので、これを光および/または熱処理して、ラジカル種やイオン種を発生させることができる。従って、樹脂を塗布した後、光および/または熱処理により樹脂を必要なパターンのみ重合または架橋させて硬化させる。次いで、未硬化の部分を除去して、色変換フィルタ層を形成する。このような成膜の条件は、従来通りである。
本発明では、続いて平坦化層110、パッシベーション層112を形成する(図2(b)および図2(c))。平坦化層の形成方法は、例えば、上記の色変換フィルタ層、ブラックマトリックスなどを設けた支持基板上に、平滑化層を形成するための材料を、スピンコート法等で塗布し、これに紫外線を照射して平坦化層を硬化し、次いでアルカリ液等を用いて未硬化の部分を除去するというような手段が含まれる。
本発明では、平坦化層は、表面粗さ(Ra)が0.1nmより大きく、1.0nmより小さく、ピーク・トゥ・バレイ値が1nmより大きく、10nmより小さいことが好ましい。このような範囲とすることで、平坦化層上に形成されるパッシベーション層の表面特性(表面粗さ(Ra)など)が、デュアルカソード方式のスパッタリング法を用いた場合、特定の範囲になり、有機ELディスプレイのパッシベーション層として優れた特性をもたらすことができる。平坦化層の材料、膜厚などの諸条件は先に記載した通りである。
本発明では、有機ELディスプレイの発光部が水分やアルカリ等に弱いことがあるので、色変換フィルタ層の各要素を密閉し、保護するためのパッシベーション層112を設ける。パッシベーション層は、スパッタ法などで成膜することができる。
本発明では、パッシベーション層は2つのターゲットに交流を印加するデュアルカソード方式のスパッタリング法を用いて成膜される。デュアルカソード方式のスパッタリング法は、ターゲットの電位が正負に切り替わるために、チャージアップが起こりにくく、異常放電が防止でき、ピンホールや突起の形成などを防止することができる。また、この方式を用いることで、室温〜150℃程度の基板温度で非晶質性の酸化珪素膜および酸化窒化珪素膜の形成が可能となり、RFスパッタ方式を用いるよりも高い成膜レートを得ることが可能となる。さらに、この方式では、不純物濃度の高いターゲットを必要とせず、反応性の高い危険なガスを使用する必要もない。このように、デュアルカソード方式のスパッタリング法を用いることで、パッシベーション層の表面特性や膜質のような種々の特性を改善することができる。この結果として、本発明の方法で製造される有機ELディスプレイは、ダークスポットの発生を抑えることができ、電極の短絡を防止することができる。
本発明では、パッシベーション層を蛍光材料を使用した色変換フィルタ層の上方に成膜するため、基板の温度の上昇を抑制し蛍光材料の失活を抑える必要がある。実効電力密度が6W/cmを超えると基板温度が150℃以上となり望ましくない。また、6W/cm以上の電力を用いると異常放電の頻度が上昇する傾向がある。さらに、1W/cmよりも低い実効電力密度では、効率的な成膜が行えず、異常放電の頻度も上昇する傾向がある。従って本発明は、1〜6W/cmの実効電力密度を印加することが好ましい。また、本発明では、デュアルカソード方式のスパッタリング法の交流の周波数は20〜60kHz、好ましくは30〜50kHzである。
本発明では、パッシベーション層は酸化珪素または酸化窒化珪素を材料とすることが好ましい。従って、両材料でパッシベーション層を形成する場合、スパッタターゲットには珪素を用いる。ターゲットの電導度は約0.01〜10Ωcmであることが好ましく、ターゲットにはホウ素を添加することが好ましい。
酸化珪素のパッシベーション層を形成する場合、デュアルカソード方式のスパッタリング法のスパッタガスには、アルゴンおよび酸素を用い、酸素のアルゴンに対する流量比は0.3〜0.7であることが好ましい。酸化窒化珪素のパッシベーション層を形成する場合、デュアルカソード方式のスパッタリング法のスパッタガスには、アルゴン、酸素および窒素を用い、酸素のアルゴンに対する流量比は0.03〜0.3であることが好ましく、窒素のアルゴンに対する流量比は0.2〜0.4であることが好ましい。これらの範囲外の流量比であると所望のパッシベーション層の特性(透過性、平坦性など)が得られない。
本発明では、デュアルカソード方式のスパッタリング法を実施する際の装置は公知の装置を使用することができ、上記以外の条件も公知の条件でよい。例えば、スパッタリング時の圧力は0.1Pa〜1Paとすることができる。
パッシベーション層とその下層の平坦化層との密着性を高めるために、平坦化層を上記表面特性の範囲内で、紫外線照射や酸素プラズマによって表面処理してもよい。
次に、第1電極104、有機EL層116および第2電極106の作製について説明する(図3(a)〜(c))。
パッシベーション層の上面にスパッタ法などにより透明な第1電極(陽極)114を全面成膜する。この第1電極上にレジスト剤を塗布した後、フォトリソグラフィー法などによりパターンニングを行い、R、G、Bそれぞれの色の発光部の位置する部分にストライプパターンの第1電極(陽極)を形成することができる(図3(a))。また、第1電極は、外部駆動回路との接続部および引き出し部にも形成される。第1電極の材料には、ITO、IZO、ATOなどの導電性金属酸化物を用いることができるが、IZOは室温での成膜により比較的低い抵抗の膜が得られ、且つ弱酸でパターンニングが可能となるので好ましい。
第1電極は、端部をテーパー形状に加工することが好ましい。このような加工方法の1つには、フォトリソグラフィによるパターンニングを行う場合には、フォトレジストと第1電極との密着性を下げることにより、第1電極をエッチングする際、フォトレジストと第1電極界面にエッチング液を浸透させ、端部をテーパー形状にするという手段がある。フォトレジストと第1電極との密着性を低下させるためには、フォトレジスト膜を形成する時のベーク温度を低くすることや、ベーク時間を短くすることにより基板の温度上昇を抑えることが挙げられる。
第1電極の成膜後、必要に応じて、絶縁膜をリフトオフ法(無機材料の場合)やフォトレジスト法(例えば有機材料の場合)などを用いて成膜することができる(図示せず)。絶縁膜は、例えば発光に必要な領域を開口部として持つパターンで、第1電極を形成した後に成膜することができる。絶縁膜もその端面をテーパー形状にすることが好ましい。絶縁膜の材料等は先に説明した通りである。
次に、第1電極上に有機EL層116を形成する。有機EL層116は、抵抗加熱蒸着装置などを用いて、例えば正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子注入層を、真空を破らずに順次成膜すればよい(図3(b))。
この後、第1電極のラインと垂直なストライプパターンが得られるマスクを用いて第2電極(陰極)126を、真空を破らずに形成する(図3(c))。
上述のようにして得られた素子をグローブボックス内で封止ガラスとUV効果接着剤等を用いて封止することができる。
以上のようにして、有機ELディスプレイを製造するが、上記製造方法は例示であり、従来から公知の各種構成要素を付加することができ、また、種々の公知の手法を併用して有機ELディスプレイを製造することができる。
以下に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。なお、以下に示す実施例および比較例において、表面粗さ(Ra)およびピーク・トゥ・バレイ値は、例えば原子間力顕微鏡(セイコーインスツルメンツ社製、SPA300)を用いて測定した。
まず、本発明のパッシベーション層を成膜する際のデュアルカソード方式のスパッタリング法の各種条件を設定するため、実効電力密度と基板温度、スパッタガスの流量比等を検討した。以下に示す手順で透明基板上に色変換フィルタ層、平坦化層を形成した。
[青色フィルター層の作製]
透明支持基板としてコーニングガラスTM(50×50×0.7mm)を用い、青色フィルタ材料(富士ハントエレクトロニクステクノロジー社製、カラーモザイクCB−7001)をスピンコート法で塗布した後フォトリソグラフィ法によりパターンニングを実施して、青色フィルタの線幅0.1mm、ピッチ0.33mm、膜厚10μmのラインパターンを得た。
[緑色変換フィルタ層の作製]
蛍光色素としてクマリン6(0.7重量部)を溶剤のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)120重量部へ溶解させた。光重合性樹脂(V259PA/P5、新日鐵化学(株)製)100重量部を加えて溶解させ塗布液を得た。この塗布溶液を、青色フィルタのラインパターンが形成済である透明支持基板上にスピンコート法で塗布し、フォトリソグラフィ法によりパターンニングを実施して、緑色変換フィルタ層の線幅0.1mm、ピッチ0.33mm、膜厚10μmのラインパターンを得た。
[赤色変換フィルタ層の作製]
蛍光色素としてクマリン6(0.6重量部)、ローダミン6G(0.3重量部)、ベーシックバイオレット11(0.3重量部)を溶剤のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)120重量部へ溶解させた。光重合性樹脂(V259PA/P5、新日鐵化学(株)製)100重量部を加えて溶解させ塗布液を得た。この塗布溶液を、青色フィルタおよび緑色変換フィルタ層のラインパターンが形成済である透明支持基板上にスピンコート法で塗布し、フォトリソグラフィ法によりパターンニングを実施して、赤色変換フィルタ層の線幅0.1mm、ピッチ0.33mm、膜厚10μmのラインパターンを得た。
[平坦化層(高分子膜層)の作製]
これらの色変換フィルタ層の上に、UV硬化型樹脂(エポキシ変性アクリレート;JSR社製、NN810)をスピンコート法にて塗布し、高圧水銀灯にて照射して膜厚8μmで高分子膜層を形成した。このとき、色変換フィルタ層のパターンは変形がなかった。高分子膜層の表面粗さ(Ra)は約1nmであり、ピーク・トゥ・バレイ値は約5nmであった。
[パッシベーション層(無機膜層)の作製の条件設定]
室温において、デュアルカソード方式のスパッタリング法によりSiOx膜またはSiOxNyを成膜した。スパッタターゲットにはホウ素を添加した、抵抗率0.1ΩcmのSiを用い、スパッタガスとしてアルゴンおよび酸素、あるいは、アルゴン、酸素および窒素の混合ガスを用いた。
実効電力密度、アルゴンおよび酸素の混合ガスの流量比と、アルゴン、酸素および窒素の混合ガスの流量比について検討した。
1)実効電力密度と基板温度、異常放電の頻度
実効電力密度と基板温度、異常放電の頻度を検討した。酸素流量は50sccmであり、アルゴン流量100sccmであった。結果を表1に示す。
Figure 0004492167
異常放電の発生頻度が3回/バッチ以下である実効電力密度を有効と判断した。
酸素、窒素およびアルゴンの混合ガスを用いた場合でも同様の結果を得た。なお、酸素、窒素およびアルゴンの混合ガスを用いた場合の各ガスの流量は、酸素流量3sccm、窒素流量30sccm、アルゴン100sccmであった。
以上の結果から、実効電力密度は1〜6W/cmであることが好ましい。
2)アルゴンと酸素の混合ガスの流量比、アルゴン、酸素と窒素の混合ガスの流量比
アルゴンと酸素の混合ガスの流量比、アルゴン、酸素と窒素の混合ガスの流量比を検討した。結果を表2および表3に示す。
Figure 0004492167
透過率が98%以上、被エッチングレートが10nm/分以下である条件を有効と判断した。
Figure 0004492167
なお、表2および3には、パッシベーション層の特性の1つである被エッチングレートを合わせて記載した。
本発明では、透過率に着目し、酸化窒化珪素が形成されている範囲である、酸素0.03〜0.3、窒素0.2〜0.4の範囲を有効と判断した。
被エッチングレートは、平坦化層上に形成したそれぞれのパッシベーション層をエッチング液(HF:HNO:HO=3:2:60の混合比、室温)に規定の時間浸漬し、その後、SEMを用いて残留したパッシベーション層の膜厚を測定することにより算出した。
上記条件で成膜された酸化珪素および酸化窒化珪素からなるパッシベーション層は、表面粗さ(Ra)が1.2〜1.8nm、ピーク・トゥ・バレイ値が7〜11nmであった。
(実施例1)
以下に、第1の実施例を説明する。この実施例では、有機ELディスプレイは画素数160×120×RGB、画素ピッチ0.33mmで形成した。
[青色フィルタの作製]
透明支持基板としてコーニングガラスTM(50×50×0.7mm)を用い、この上に青色フィルタ材料(富士ハントエレクトロニクステクノロジー社製、カラーモザイクCB−7001)をスピンコート法で塗布した後フォトリソグラフィ法によりパターンニングを実施して、青色フィルタの線幅0.1mm、ピッチ0.33mm、膜厚10μmのラインパターンを得た。
[緑色変換フィルタ層の作製]
蛍光色素としてクマリン6(0.7重量部)を溶剤のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)120重量部へ溶解させた。光重合性樹脂(V259PA/P5、新日鐵化学(株)製)100重量部を加えて溶解させ塗布液を得た。この塗布溶液を、青色フィルタのラインパターンが形成済である透明支持基板上にスピンコート法で塗布し、フォトリソグラフィ法によりパターンニングを実施して、緑色変換フィルタ層の線幅0.1mm、ピッチ0.33mm、膜厚10μmのラインパターンを得た。
[赤色変換フィルタ層の作製]
蛍光色素としてクマリン6(0.6重量部)、ローダミン6G(0.3重量部)、ベーシックバイオレット11(0.3重量部)を溶剤のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)120重量部へ溶解させた。光重合性樹脂(V259PA/P5、新日鐵化学(株)製)100重量部を加えて溶解させ塗布液を得た。この塗布溶液を、青色フィルタおよび緑色変換フィルタ層のラインパターンが形成済である透明支持基板上にスピンコート法で塗布し、フォトリソグラフィ法によりパターンニングを実施して、赤色変換フィルタ層の線幅0.1mm、ピッチ0.33mm、膜厚10μmのラインパターンを得た。
[平坦化層(高分子膜層)の作製]
これらの色変換フィルタ層の上に、UV硬化型樹脂(エポキシ変性アクリレート;JSR社製、NN810)をスピンコート法にて塗布し、高圧水銀灯にて照射して膜厚8μmで高分子膜層を形成した。このとき、色変換フィルタ層のパターンは変形がなかった。高分子膜層の表面粗さ(Ra)は約0.3nmであり、ピーク・トゥ・バレイ値は約5nmであった。
[パッシベーション層(無機膜層)の作製]
デュアルカソード方式のスパッタリング法を用いて、室温において、酸化珪素膜を300nm成膜した。スパッタターゲットにはホウ素を添加した、抵抗率0.1ΩcmのSiを用いた。また、スパッタガスとしてアルゴン100sccm、酸素45sccmの混合ガスを用いた。
ターゲットと基板の距離は120mmであり、成膜圧力は0.6Paであり、実効電力密度4W/cmであり、搬送速度50mm/分であった。
得られたパッシベーション層の表面粗さ(Ra)は、約1.3nmであり、ピーク・トゥ・バレイ値は約11nmであった。
[第1電極の形成]
第1電極としてIn−Zn酸化物(IZO)パターンを形成した。第1電極は外部駆動回路との接続部および表示領域に形成される。DCスパッタ法により、室温でIn−Zn酸化物膜を200nm形成した。スパッタターゲットにはIn−Zn酸化物ターゲットを用い、スパッタガスとしてアルゴンおよび酸素の混合ガスを用いた。フォトリソグラフィによりレジストをパターンニングした後に蓚酸をエッチング液として用いてパターンニングすることにより配線幅100μmのパターンを形成した。
[絶縁膜の形成]
絶縁膜として窒化珪素膜をリフトオフ法により形成した。リフトオフレジストを、第1バス電極と第1電極との接合部および外部駆動回路との接合部に形成した。次いで、RFスパッタ法により室温において窒化珪素膜を300nm形成した後に、レジスト剥離液でリフトオフレジストを除去し、絶縁膜を第1電極との接合部および外部駆動回路との接合部を除いて形成した。
[有機発光層および第2電極の作製]
以上の工程に続き、第1電極を形成した第1電極基板を抵抗加熱蒸着装置内に装着し、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子注入層を、真空を破らずに順次成膜した。成膜に際して真空槽内圧は1×10−4Paまで減圧した。正孔注入層は銅フタロシアニン(CuPc)を100nm積層した。正孔輸送層は4,4′−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)を20nm積層した。発光層は4,4′−ビス[2,2′−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)を30nm積層した。電子注入層はアルミキレート(Alq)を20nm積層した。
この後、第1電極のラインと垂直に幅0.30mm、空隙0.03mmギャップのストライプパターンが得られるマスクを用いて、厚さ200nmのMg/Ag(10:1の重量比率)層からなる第2電極(陰極)を、真空を破らずに形成した。こうして得られた素子をグローブボックス内乾燥窒素雰囲気(酸素および水分濃度ともに10ppm以下)下において、封止ガラスとUV硬化接着剤を用いて封止した。
(実施例2)
パッシベーション層として以下の条件で酸化窒化珪素を成膜した以外、実施例1と同様にして有機ELディスプレイを作製した。
デュアルカソード方式のスパッタリング法を用いて、室温において、酸化窒化珪素膜を300nm成膜した。スパッタターゲットにはホウ素を添加した、抵抗率0.1ΩcmのSiを用いた。また、スパッタガスとしてアルゴン100sccm、酸素10sccm、窒素30sccmの混合ガスを用いた。
ターゲットと基板の距離は120mmであり、成膜圧力は0.6Paであり、実効電力密度4W/cmであり、搬送速度50mm/分であった。
得られたパッシベーション層の表面粗さ(Ra)は、およそ1.4nmであった。
(比較例1)
パッシベーション層として以下の条件で酸化珪素を成膜した以外、実施例1と同様にして有機ELディスプレイを作製した。
DCスパッタリング法(パルス周波数50kHz)を用いて、室温において、酸化窒化珪素膜を300nm成膜した。スパッタターゲットにはホウ素を添加した、抵抗率0.01ΩcmのSiを用いた。また、スパッタガスとしてアルゴン100sccm、酸素10sccm、窒素30sccmの混合ガスを用いた。
ターゲットと基板の距離は120mmであり、成膜圧力は0.6Paであり、実効電力密度4W/cmであり、搬送速度50mm/分であった。
得られたパッシベーション層の表面粗さ(Ra)は、2.2nmであった。
(比較例2)
パッシベーション層として以下の条件で酸化珪素を成膜した以外、実施例1と同様にして有機ELディスプレイを作製した。
RFスパッタリング法を用いて、室温において、酸化珪素膜を300nm成膜した。スパッタターゲットにはホウ素を添加した、抵抗率0.1ΩcmのSiを用いた。また、スパッタガスとしてアルゴン100sccm、酸素10sccm、窒素30sccmの混合ガスを用いた。
ターゲットと基板の距離は120mmであり、成膜圧力は0.6Paであり、実効電力密度4W/cmであり、搬送速度50mm/分であった。
得られたパッシベーション層の表面粗さ(Ra)は、1.8nmであった。
(評価)
上記のようにして得られた有機ELディスプレイを、環境温度85℃、湿度90%において、初期面輝度100cd/mで連続点灯試験を行い、ダークスポットの発生数、を比較した。ダークスポット数はその直径が10μmを超えた時点で計数した。
また、上下配線の短絡密度を測定した。短絡密度は、以下のように評価した。すなわち、有機ELディスプレイを初期輝度100cd/mにおいて連続駆動した場合に、上下配線の短絡(第1電極と第2電極間の絶縁破壊による短絡)は、目視観察により輝線として観察される(短絡のない部分は駆動デューティー1/60であるのに対し、短絡部分は1/1となるため、短絡部分が明るく見える。)。この輝線の発生数を有機ELディスプレイごとに評価した。
これらの結果を表4に示した。
Figure 0004492167
上記結果から明らかなように、本発明に従った有機ELディスプレイは、ダークスポットの発生を抑制することができた。
本発明の有機ELディスプレイの具体的構造を示す断面図である。 本発明の有機ELディスプレイの製造工程を示す断面図である。 本発明の有機ELディスプレイの製造工程を示す断面図である。
符号の説明
100 有機ELディスプレイ
102 透明基板
104B 青色変換フィルタ層
104G 緑色変換フィルタ層
104R 赤色変換フィルタ層
106 ブラックマトリックス
110 平坦化層
112 パッシベーション層
114 第1電極
116 有機EL層
118 正孔注入層
120 正孔輸送層
122 発光層
124 電子輸送層
126 第2電極

Claims (2)

  1. 色変換フィルタ層と平坦化層を少なくとも有する透明な支持基板上に、パッシベーション層を形成する工程と、該パッシベーション層上に第1電極、有機発光層および第2電極を形成する工程を含む有機ELディスプレイの製造方法であって、該パッシベーション層が酸化珪素からなり、デュアルカソードを用いた交流印加方式によるスパッタリング法により形成され、該スパッタリング法が、基板の加熱を行わずに以下の条件により行われることを特徴とする有機ELディスプレイの製造方法。
    実行電力密度:1から6W/cm
    スパッタガス:酸素およびアルゴン、流量比:酸素/アルゴン=0.3から0.7
  2. 色変換フィルタ層と平坦化層を少なくとも有する透明な支持基板上に、パッシベーション層を形成する工程と、該パッシベーション層上に第1電極、有機発光層および第2電極を形成する工程を含む有機ELディスプレイの製造方法であって、該パッシベーション層が酸化窒化珪素からなり、デュアルカソードを用いた交流印加方式によるスパッタリング法により形成され、該スパッタリング法が、基板の加熱を行わずに以下の条件により行われることを特徴とする有機ELディスプレイの製造方法。
    実行電力密度:1から6W/cm
    スパッタガス:酸素、窒素およびアルゴン
    流量比:酸素/アルゴン=0.03から0.3;窒素/アルゴン=0.2から0.4
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