JP4491983B2 - 誘導加熱コイル - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は一般家庭及びレストラン、あるいは工場などで使用される誘導加熱装置に使用される誘導加熱コイルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の誘導加熱装置の加熱構造を誘導加熱調理器を例に取り上げ、説明する。
【0003】
図14は従来の誘導加熱調理器の断面図で、1は高周波磁界を発生する加熱コイル、2は加熱コイル1から発生する高周波磁界によって誘導加熱される被加熱物、3は加熱コイル1に高周波電流を供給するインバータ回路で図には特に記載していないが、加熱コイル1と接続されている。4は被加熱物2がその上面に載置されるトッププレートでその材質はセラミックである。5は筐体、6は加熱コイル1を載置するコイル台、7は冷却ファンで、加熱コイル1、インバータ回路3を冷却風を送り、冷却する。このとき、筐体5の薄型化に伴い、冷却ファン7と加熱コイル1、インバータ回路3の位置関係は限定されることが多く、通常加熱コイル1、インバータ回路3の横方向から冷却風を送る構成となる。
【0004】
加熱コイル1のコイル線は、直径0.3mm〜0.5mm程度の素線を30本程度撚り合わせたもので構成(リッツワイヤ構成)されている。この撚りピッチは数cm程度で、それぞれの素線は1ターン中に数回被加熱物2の下面に対して上下の位置関係を繰り返す構成となっている。
【0005】
加熱コイル1に供給される電流の周波数が高くなると、電流がコイル線の各素線表面近傍に集中する表皮効果のため、抵抗が増加して前記加熱コイル1の損失が増加するが、リッツワイヤ構成とすることで、コイル全体の表面積を増加させ、表皮効果による影響を低減させている。
【0006】
一方、リッツワイヤを用いない簡易な構成で低損失の加熱コイル1を実現するために、複数枚の薄肉なリボン状電気導体を絶縁層を介して巻回する構成が公開特許公報昭63−259991に提案されている。この方式の特徴は、リボン状電気導体の表面積は、リッツワイヤ素線に比べて大きいために、表皮抵抗の上昇及びコイル損失を抑える構造とすることができるということである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、加熱コイル1の損失増加要因として、高周波電流の表皮効果に加えて近接効果が挙げられる。これは、近接する電気導体からの磁界の影響で電流分布が偏るものである。例えば渦巻き状の電気導体のある1ターンにおいて、近接する内周側ターンより外周側ターンの方が長いため、その影響を大きく受け、 電流分布が内周側に偏る。また、1ターン内においても、構成する各電気導体間の近接効果により、表面側に電流分布が偏る。つまり、図15に示すような電流分布となる。この図において、色の濃さは流れている電流量で、色が濃いほど電流が多く流れていることを示している。
【0008】
このとき、公開特許公報昭63−259991に記載されているような、リボン状電気導体を用いた従来の方式では、積層した電気導体をただ巻回するだけであるため、表皮効果の影響は除去できるが、近接効果の影響により前記電流分布の偏りを改善することが出来ず、損失低減効果は大きくは望めないということがわかった。
【0009】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、損失を低減し、冷却が容易となる安価な加熱コイルを実現し、結果安価な誘導加熱装置を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記従来の課題を解決するために、本発明の誘導加熱コイルは、断面が略長方形状あるいは略楕円形状の電気導体を複数、それぞれ他の電気導体と電気絶縁し、かつ、コイル径方向に積層した集合線を、渦巻き状に巻回されてなる誘導加熱コイルであって、
巻回中に前記集合線内における前記電気導体の位置をコイル外周側とコイル内周側とで入れ替わるように巻回されてなる構成としたものである。
これによって、高周波電流の特有の性質である、表皮効果と近接効果による、電気導体内部おける電流分布の不均一化と、集合線内における電流分布の不均一化をともに抑制するでき、低損失で安価な誘導加熱コイルを提供することが可能となる。
【0011】
また、近接効果による集合線内における内周側電気導体への電流分布の偏集中を均一化し、損失を低減することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
請求項1記載の発明は、断面が略長方形状あるいは略楕円形状の電気導体を複数、それぞれ他の電気導体と電気絶縁し、かつ、コイル径方向に積層した集合線を、渦巻き状に巻回されてなる誘導加熱コイルであって、巻回中に前記集合線内における前記電気導体の位置をコイル外周側とコイル内周側とで入れ替わるように巻回されてなることにより、従来のリッツ線に比較して絶縁された電気導体の表面積を大きくして、使用する電気導体の本数を減じること、あるいは導体を薄肉にして積層し、ブロック化することにより製造コストを低減することができ、また電流分布が均一な、低損失の誘導加熱コイルとすることができる。また、近接効果による集合線内における内周側電気導体への電流分布の偏集中を均一化し、損失を低減することができる。
【0013】
請求項2記載の発明は、断面が略長方形状あるいは略楕円形状の電気導体を複数、それぞれ他の電気導体と電気絶縁し、かつ、コイル径方向および上下方向に積層した集合線を、渦巻き状に巻回されてなる誘導加熱コイルであって、巻回中に集合線内における前記電気導体の位置をコイル外周側とコイル内周側とで、および上方向と下方向とで入れ替わるように巻回されてなることにより、コイル巻き線相互の近接効果による高周波電流の偏在と、コイル面に対向して配設された負荷の影響による電流の偏在を緩和して損失低減効果を大きくすることができる。
【0014】
【実施例】
以下本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
(実施例1)
図1は、本発明の第1の実施例における誘導加熱コイルの要部断面図を示すものである。なお本体の構成は図14に示す従来の誘導加熱調理器と同様であるので、本実施例では図14の部品の番号を引用する。
【0016】
図2は図1に示す電気導体積層線11の拡大断面を示す図である。図2に示すように電気導体積層線11は厚みが40ミクロンメートルの銅材からなる断面が略長方形の薄肉の電気導体9A,9B,9C,9Dがエナメル樹脂などの絶縁材料からなる絶縁層10を介して積層された線材である。この電気導体積層線11はリールにテープ状に巻かれ、複数枚の幅の広い金属箔が絶縁層を介して積層された積層部材をカットしてリボン状に作成することにより、コスト的に非常に廉価なものとすることができる。
【0017】
次ぎに、この電気導体積層線11を、渦巻き状に形成し加熱コイル1を形成する。 また、図1に示すように、電気導体積層線11は、加熱コイルのコイル面と電気導体9A,9B,9C,9Dの断面長手方向が略垂直になるよう配置され、コイル径方向に電気導体9A〜9Dが積層された状態で、毎ターンに一度、電気導体9Aと9B,電気導体9Cと9Bをそれぞれ対にして、内周側と外周側を入れ替える構成としている。(図1でA,B,C,Dはそれぞれ電気導体9A,9B,9C,9Dを示す。以下の実施例でも同様である)。
【0018】
なお、上記でコイル面とは、図1においては、加熱コイルの上面であり、実際には電気導体積層線11が巻回された面であるので、凹凸があるが、その凹凸を平均化して想定した面あるいは凸部含んで得られる包絡面を言う。(以下他の実施例でも同様とする。)
以上のように構成された加熱コイルについて、以下その動作、作用を説明する。 加熱コイル1にインバータ3から周波数が約80kHz高周波電流が供給されると、図15のように近接効果による影響で、電気導体9A〜9Dにおいて内周側に電流が集中しようとする。しかしながら、電気導体9A〜9Dは厚みが40ミクロンメートルと薄くかつ断面長手方向がその近傍の集合線の形成するコイル面と略垂直であり、それぞれ絶縁層10で絶縁されているので電気導体9A〜9D内においてはほぼ均一に電流が流れる。
【0019】
また、電気導体積層線11において電気導体9A〜9Dに流れる電流を観測すると近接効果により、内周側の電気導体に電流が集中する傾向がある。しかしながら、本実施例においては、毎ターンに一度、加熱コイル1の内周側電気導体と外周側電気導体が入れ替わる構成としているので、電気導体積層線11内における、近接効果による内周側電気導体への電流集中が抑制され平均化される。従って、加熱コイル1全体の高周波抵抗は低減され、低損失とすることが可能となる。
【0020】
なお、本実施例において、絶縁層10を電気導体9A〜9D間に配置する構成としたが、これに限定されるものではなく、電気導体9A〜9Dそれぞれの外面全体を被覆するものであれば、ターン間の絶縁も同時に可能とすることが出来る。
【0021】
また、絶縁層10をシリコーン系接着剤などの、接着と絶縁を兼ねる材料を用いることにより、電気導体9A〜9Dの積層を容易とすることが出来る。
【0022】
また、内周側電気導体と外周側電気導体の入れ替えは、上記では毎ターンに一度としたが、これに限定されるものではなく、一定のピッチで(例えば10cm程度)行っても良い。その程度が多いほど損失低減効果が大きくなる傾向がある。
【0023】
(実施例2)
図3は、本発明の第2の実施例における誘導加熱コイルの要部断面図を示すものである。
【0024】
図3において、12は電気導体積層線で基本構造は図2で示したものと同様であるので説明を省略する。実施例1の図1と異なるのは、毎ターンに一度、電気導体積層線12をねじる構成としている点である。
【0025】
以上のように構成することにより、実施例1と同様の効果を得るとともに、誘導加熱コイルの製造を容易にすることができる。
【0026】
(実施例3)
図4は、本発明の第3の実施例における誘導加熱コイルの要部断面図を示すものである。
【0027】
図4において、13は電気導体積層線であり、実施例1の図2と比較すると、図2のものでは内外周方向(その近傍の電気導体積層線の形成するコイル面と略平行に)に電気導体を積層しただけであったがそれを上下(その近傍の電気導体積層線の形成するコイル面と略垂直)にも2段積層している点で異なり、また、実施例1の図1の構成と異なるのは、毎ターンに一度、電気導体の対(9A,9B),(9C,9D),(9E,9F),(9G,9H)を対角状に入れ替え、すなわち、内外周入れ替え、上下の入れ替えをともに行う構成としている点である。当然のことながら上下の電気導体は絶縁されている(以降の実施例でも同様である)。本実施例では、電気導体積層線11の周囲に、絶縁層が設けられている(図示はしていない)。
【0028】
以上のように構成することで、実施例1よりも電気導体の総断面積を増加させるとともに、内外周方向の入れ替えを行うことで他の巻き層との間の近接効果により内周方向に電流分布が偏るのと、上方に被加熱物が配置されたときに上方(被加熱物側)に電流分布が偏るのを同時に防止するという作用により電流分布を平均化できるので加熱コイル1全体の高周波抵抗を下げ低損失化することができる。
【0029】
(実施例4)
図5は、本発明の第4の実施例における誘導加熱コイルの要部断面図を示すものである。
【0030】
図5において、14は電気導体積層線で基本構造は実施例4の図4で示したものと同様であるが、図4と異なる点は毎ターンに一度、内周側電気導体の対と外周側電気導体の対の入れ替えを行い、かつ全体をねじる構成として、内外周入れ替え、上下の入れ替えを行う構成としている点である。
【0031】
以上のように構成することにより、実施例4と同様の効果を得ることができるとともに、加熱コイル1の外形が大きくなることなく、容易に製造で可能な加熱コイルを提供することができる。
【0032】
(実施例5)
図6は、本発明の第5の実施例における誘導加熱コイルの要部断面図を示すものである。
【0033】
図6において、15は電気導体積層線で基本構造は実施例4の図5で示したものと同様であるが、図5と異なる点は毎ターンに一度、積層された前記電気導体15全体をねじることにより、内周側電気導体と外周側電気導体の入れ替えと、上段側電気導体と下段側電気導体の入れ替えを、同時に行う構成としている点である。
【0034】
以上のように構成することにより実施例3または4と同様に、加熱コイルの損失低減効果が得られる上、加熱コイル外形が大きくなることなく、容易に製造することの可能な誘導加熱コイルが得られる。
【0035】
(実施例6)
図7は、本発明の第6の実施例における誘導加熱コイルの全体断面図を示すものである。
【0036】
図7において、16は電気導体積層線であり、実施例3の図4とは、図7のものでは上下方向に3段積層し、また、毎ターンに一度、内周側と外周側の電気導体の対を入れ替えるとともに、上段と中段を入れ替えている点で異なる。
【0037】
以上のように構成されることにより、上下に積層される段が増えると、被加熱物の影響と巻き線間の近接効果で、上方および内周側が最も電流集中しやすく、中段および外周側が最も流れにくい傾向があるが内周側電気導体と外周側電気導体の入れ替えに加え、上段電気導体と中段電気導体の入れ替えにより、電流が流れにくい中段外周側電気導体にも電流が流れやすい構成となるため、電気導体積層線16内の電流の均一化を図ることができ前記電気導体16の抵抗は低減され、低損失とすることが可能となる。
【0038】
なお、本実施例において、上段電気導体と中段電気導体を入れ替える構成としたが、これに限定するものではなく、下段と中段、上段と中段及び中段と下段の組み合わせであってもよい。
【0039】
(実施例7)
図8は、本発明の第7の実施例における誘導加熱コイルの要部断面図を示すものである。
【0040】
図8において、17は電気導体積層線であり、実施例6の図7のものとは、基本的に同じであるが、毎ターンに一度、電気導体積層線17の上中段全体をねじり、下段は単独でねじる構成としている点で異なる。
【0041】
以上のように誘導加熱コイルを構成することにより、上中段の内周側電気導体と外周側電気導体の入れ替えと、上段電気導体と中段電気導体の入れ替えを、積層された前記電気導体17の上中段全体をねじることで行うため、実施例6と同様の効果を得ることができ、容易に製造することが出来る。
【0042】
(実施例8)
図9、図10は、本発明の第8の実施例における誘導加熱コイルの断面図と側面図を示すものである。
【0043】
図9において、18は電気導体積層線であり、実施例7の図8の構成と基本的の同じであるが、本実施例では図10にも示すように、毎ターンに一度元の位置関係となるよう電気導体の対を旋回させて巻回する構成としている。
【0044】
以上のように誘導加熱コイルを構成することにより、複数の積層された前記電気導体積層線18を旋回させながら巻回しているので、近接効果による電流分布の偏りを抑える効果が高まり、前記電気導体積層線18を構成する電気導体に流れる電流は平均化される。従って、加熱コイル1全体の高周波抵抗は低減され、低損失とし、製造も容易となる。
【0045】
なお、本実施例において、電気導体積層線18は、電気導体2本で構成されるブロックを内外周方向に2ブロック、上下方向に3ブロックとして構成したが、これに限定するものではなく、ブロックの構成する電気導体の数、あるいはブロック数は設計条件に応じて任意に選定することができる。ブロック数が多いほど損失低減効果が高まる。
【0046】
また、電気導体積層線18は整列して積層する必要はなく、絶縁された略長方形あるいは略楕円の断面を有する電気導体の長手方向がその近傍の電気導体積層線の形成する加熱コイル面に略垂直になっており旋回するように巻回されて加熱コイルを構成すれば、上記実施例の奏した効果と同様の効果を得ることができる。
【0047】
(実施例9)
図11は、本発明の第9の実施例における誘導加熱コイルの要部断面図を示すものである。
【0048】
図11において、20は電気導体積層線であり、実施例1の図2の構成と基本的の同じであり、本実施例では毎ターンに一度、内周側電気導体対と外周側電気導体対を入れ替え、さらに、同一径で上下に2ターン巻回し、同一径となるターン間は距離を空ける構成としている。
【0049】
以上のように構成された誘導加熱コイルにおいて、近接したターン間距離を大きくすることが可能となり、ターン間の影響を抑え、さらに低損失とすることが出来る。
【0050】
なお、本実施例において、同一径となるターン間は空気層としているが、絶縁を可能とする層であればよい。また、同一径となるターン間距離は、最近径ターンとの距離の半分以上であれば損失低減効果が高い。
【0051】
図12は、上記実施例における誘導加熱コイルの電気導体1層厚み−加熱コイル損失相関を示すものである。
【0052】
図12において、横軸は電気導体1層の厚み、縦軸はある電流周波数における加熱コイル損失を示している。電気導体1層の厚みを薄くしていくことにより、加熱コイル損失が低減されていき、最終的には高周波電流による影響である表皮効果、近接効果をほぼなくすことが可能となる。発明者の実験により、表皮効果および近接効果の影響のなくなる電気導体の最大厚みと電流周波数の関係をプロットすると図13に示すようになり、電気導体1層の厚み[μm]=120[μm]−電流周波数[kHz]とすれば表皮効果、近接効果をほぼなくすことが可能となる。
【0053】
実際機器に加熱コイルの構成部材として上記の構成にして使用する上で、電気導体の厚みを、薄くすれば製造コストが増え、厚くすれば加熱コイルの熱損失が増え形状も大きくなるので、上記の計算式で決まる厚みの略プラスマイナス30%の範囲内で使用するのが効果的である。
【0054】
なお、近接効果の影響をほぼなくすことができることから、従来リッツワイヤ同等の損失低減で十分冷却出来る場合には、電気導体1層の厚みを、リッツワイヤ素線1本の直径と同じとすれば、リッツ線の断面積に対する電気導体の断面永手方向の長さで決まる断面積の比率に比例して、リッツ線が増えたのとほぼ等価となる。したがって、電気導体の本数を低減でき、製造工程において電気導体が断線しにくくなることなどから、製作スピードを上げることも可能となり、製造コストを大幅に低減できる。
【0055】
また、薄膜化により絶縁層を介して積層できること(ブロック化を含む)、あるいは断面積を増やすことができることから、線材の切断強度が増すので、材料としてアルミなどが使用でき、電気導体材料の低減化も図ることができる。
【0056】
なお、実施例1〜9において電気導体積層線の電気導体を2本の対で位置を変えるていたが、これに限るものではなく、1本あるいは3本以上を1ブロックとしてもよいし、すべてのブロックを同一本数にする必要もない。
【0057】
また、実施例1〜9において毎ターンに1度電気導体の位置を変えたが、位置を変える度合いはこれに限らず、集合線が所定の間隔を巻かれるごとに位置を変えても良く、多いほど電流の均一効果は大きくなる傾向がある。また、連続的に位置が変わっても良いし、所定の距離あるいは角度巻かれるまで、位置を変えないなど、電気導体の断面長手方向がコイル面に略垂直であれば電気導体の位置を変える方法を限定するものではない。
【0058】
なお、上記の実施例では、平板状の加熱コイルで説明したが、これに限定されるものではない。集合線の形成するコイル面が曲面であっても良いのは言うまでもない。また、コイル全体にこの構成を採用せず、特定の巻き線部分にこの構成を採用して本発明の効果を奏するようにしてもよい。例えば、コイル面が平面と曲面を有する場合、曲面部分にのみ本発明の構成を適用して電気導体の断面長手方向がその電気導体近傍の集合線の形成するコイル面に略垂直としても良いし、逆に平面部分のみ本発明の構成を採用すれば、その部分について上記実施例で説明した損失低減効果を得ることができる。
【0059】
また、上記でコイル面とは、集合線表面で形成されるので、通常凹凸があるので、その凹凸を平均化して想定される面あるいは凸部の頂部で形成される包絡面をいう。
【0060】
なお、上記1〜9の実施例では電気導体積層線で集合線を形成したが、断面が円形の絶縁線を圧延して、薄肉の電気導体としてもよい。この場合には、電気導体が絶縁されているので電気導体間の絶縁が容易にできるので製造が簡単になる。またその電気導体を複数積層してブロック化し、接着剤あるいは、融着層を有するものを使用して電気導体間を接着して、これを集積して集合線とすれば製造が容易となる。
【0061】
【発明の効果】
以上のように、請求項1〜2に記載の発明によれば、簡易な構成で、電気導体間の電流
偏りを抑え、加熱コイルの低損失化を図り、安価な誘導加熱コイルを得ることが出来る。また、近接効果を抑制する効果が高いのでアルミや銅製の被加熱物を誘導加熱する誘導加熱コイルとして使用すれば加熱コイル部での損失を大幅に低減でき、機器への実装が容易となるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1における誘導加熱コイルの部分断面図
【図2】 本発明の実施例1における誘導加熱コイルを構成する電気導体積層線の断面図
【図3】 本発明の実施例2における誘導加熱コイルの要部断面図
【図4】 本発明の実施例3における誘導加熱コイルの要部断面図
【図5】 本発明の実施例4における誘導加熱コイルの要部断面図
【図6】 本発明の実施例5における誘導加熱コイルの要部断面図
【図7】 本発明の実施例6における誘導加熱コイルの要部断面図
【図8】 本発明の実施例7における誘導加熱コイルの要部断面図
【図9】 本発明の実施例8における誘導加熱コイルの要部断面図
【図10】 本発明の実施例8における誘導加熱コイルを構成する電気導体積層線の側面図
【図11】 本発明の実施例9における誘導加熱コイルの要部断面図
【図12】 本発明の実施例9における誘導加熱コイルの電気導体1層厚み−加熱コイル損失相関グラフ
【図13】 表皮効果と近接効果をほぼなくせる厚みと周波数の関係を示す図
【図14】 従来の誘導加熱装置の概略構成を示す断面図
【図15】 従来の誘導加熱コイルにおける電気導体内の電流分布を示す図
【符号の説明】
9A,9B,9C,9D 電気導体
11〜20 電気導体積層線(集合線)
Claims (2)
- 断面が略長方形状あるいは略楕円形状の電気導体を複数、それぞれ他の電気導体と電気絶縁し、かつ、コイル径方向に積層した集合線を、渦巻き状に巻回されてなる誘導加熱コイルであって、
巻回中に前記集合線内における前記電気導体の位置をコイル外周側とコイル内周側とで入れ替わるように巻回されてなる誘導加熱コイル。 - 断面が略長方形状あるいは略楕円形状の電気導体を複数、それぞれ他の電気導体と電気絶縁し、かつ、コイル径方向および上下方向に積層した集合線を、渦巻き状に巻回されてなる誘導加熱コイルであって、
巻回中に集合線内における前記電気導体の位置をコイル外周側とコイル内周側とで、および上方向と下方向とで入れ替わるように巻回されてなる誘導加熱コイル。
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