以下、本発明の実施の形態によるダンプトラックの走行駆動装置を、後輪駆動式のダンプトラックを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
ここで、図1ないし図9は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は本実施の形態で採用したダンプトラックで、このダンプトラック1は、図1に示すように頑丈なフレーム構造をなす車体2と、該車体2上に起伏可能に搭載された荷台としてのベッセル3とにより大略構成されている。
そして、ベッセル3は、例えば砕石物等の重い荷物を多量に積載するため全長が10〜13m(メートル)にも及ぶ大型の容器として形成され、その後側底部が、車体2の後端側にピン結合部4等を介して起伏(傾転)可能に連結されている。また、ベッセル3の前側上部には、後述のキャビン5を上側から覆う庇部3Aが一体に設けられている。
5は庇部3Aの下側に位置して車体2の前部に設けられたキャビンで、該キャビン5は、ダンプトラック1の運転者が乗降する運転室を形成し、その内部には運転席、起動スイッチ、アクセルペダル、ブレーキペダル、操舵用のハンドルおよび複数の操作レバー(いずれも図示せず)等が設けられている。
そして、ベッセル3の庇部3Aは、キャビン5を上側からほぼ完全に覆うことにより、例えば岩石等の飛び石からキャビン5を保護すると共に、車両(ダンプトラック1)の転倒時等にもキャビン5内の運転者を保護する機能を有しているものである。
6,6は車体2の前部側に回転可能に設けられた左,右の前輪で、該各前輪6は、ダンプトラック1の運転者によって操舵(ステアリング操作)される操舵輪を構成するものである。そして、前輪6は後述の後輪7と同様に、例えば2〜4mに及ぶタイヤ径(外径寸法)をもって形成されている。
7,7は車体2の後部側に回転可能に設けられた左,右の後輪で、該各後輪7は、ダンプトラック1の駆動輪を構成し、図4に示す後述の走行駆動装置11により車輪取付筒19と一体に回転駆動される。そして、後輪7は、2本のタイヤ7A,7Aと、該各タイヤ7Aの内側に配設されるリム7B,7Bと、該各リム7Bのうち軸方向外側のリム7Bに着脱可能に嵌合して設けられるホイールキャップ7C(図3参照)等とにより構成されるものである。
8はキャビン5の下側に位置して車体2内に設けられる原動機としてのエンジンで、該エンジン8は、例えば大型のディーゼルエンジン等により構成され、図2に示すように発電機としてのオルタネータ9を駆動するものである。また、エンジン8は、油圧源となる油圧ポンプ(図示せず)等を回転駆動し、後述の起伏シリンダ73、パワーステアリング用の操舵シリンダ(図示せず)等に圧油を給排させる機能も有している。
10はダンプトラック1の制御装置を構成する電気コントローラで、該電気コントローラ10は、図1に示すようにキャビン5の後側に位置して車体2上に立設された配電盤等により構成されている。そして、電気コントローラ10は、図2に示すオルタネータ9で発生した電気をバッテリ(図示せず)を充電させると共に、この電気を後述の電動モータ17に出力し、電動モータ17の回転数を個別にフィードバック制御する機能等を有している。
11はダンプトラック1の後輪7側に設けられた走行駆動装置で、該走行駆動装置11は、後述のアクスルハウジング12、電動モータ17、車輪取付筒19および減速機構24等により構成されている。そして、走行駆動装置11は、電動モータ17の回転を減速機構24により減速し、車両の駆動輪となる後輪7を車輪取付筒19と一緒に大なる回転トルクで走行駆動するものである。
12は車体2の後部側に設けられた後輪7用のアクスルハウジングで、該アクスルハウジング12は、図2に示すように左,右の後輪7,7間を軸方向に延びる筒状体として形成されている。そして、アクスルハウジング12は、ショックアブソーバ等の緩衝器(図示せず)を介して車体2の後部側に取付けられる中間の懸架筒13と、該懸架筒13の左,右両側にそれぞれ設けられた後述のモータ収容筒14および筒状スピンドル15とにより構成されるものである。
14,14は懸架筒13の両端側に設けられた駆動源収容部としてのモータ収容筒で、該各モータ収容筒14は、図4および図5に示す如くテーパ形状をなす筒体として形成され、その大径部14A側が図2に示す懸架筒13にボルト等を用いて着脱可能に固着される。また、モータ収容筒14の小径部14B側には、図5、図7に示すように後述の筒状スピンドル15がボルト16等を介して着脱可能に固着され、その内部は後述する第1の減速機収容空間Aとなっている。
そして、モータ収容筒14内には、後輪7の駆動源となる後述の電動モータ17が収容されるものである。また、モータ収容筒14の内周側には、電動モータ17との間に環状の仕切板14Cが設けられ、この仕切板14Cは、後述する油溜まり43内の潤滑油100が電動モータ17の周囲に漏出するのを抑えるものである。
15はアクスルハウジング12の先端側開口部を構成する筒状スピンドルで、該筒状スピンドル15は、例えば80〜100cm程度の内径寸法をもった大径の段付筒状体からなり、その内部は図4、図5、図7に示すように1段目の遊星歯車減速機構25を収容する第1の減速機収容空間Aとして形成されている。また、筒状スピンドル15の外周面は、後述の軸受20,21を介して後輪7側の車輪取付筒19を回転可能に支持する構成となっている。
ここで、筒状スピンドル15の軸方向中間部には、その内周面から径方向内向きに突出する環状凸部15Aが一体に形成され、この環状凸部15Aには、後述する1段目のキャリア30が固定して取付けられている。また、筒状スピンドル15は、軸方向の一側(基端側)がモータ収容筒14にボルト16等を介して連結される連結部15Bとなり、軸方向の他側(先端側)には、図7、図8に示す如く径方向外向きに突出する環状の鍔部15Cが一体に形成されている。
そして、筒状スピンドル15の鍔部15Cには、後述する最終段のキャリア39が固定して取付けられるものである。この場合、鍔部15Cの外周側は、筒状スピンドル15のうち外径寸法が最も大きい最大外径部となり、鍔部15Cの外径は、後述する軸受20,21の外径寸法D1 (図8参照)に等しい寸法、または外径寸法D1 よりも小さい寸法に形成されている。
また、筒状スピンドル15の下側位置には、図8に示すように環状凸部15Aを前,後(軸方向)に貫通して延びる油孔15Dが穿設されている。そして、筒状スピンドル15内に後述の如く供給された潤滑油100は、この油孔15Dを通じて環状凸部15Aの前,後(筒状スピンドル15の軸方向)に流通できるものである。
そして、筒状スピンドル15は、後述の如く遊星歯車減速機構25,34のキャリア30,39が固定して設けられることにより、頑丈な構造をなす有蓋筒状体として組立てられ、その外周側で車輪取付筒19(後輪7)を内側から高い剛性(強度)をもって支持できるものである。また、筒状スピンドル15は、後述の遊星歯車減速機構25,34に発生する回転反力等を、キャリア30,39を介して十分な強度で受承する機能を有するものである。
ここで、第1の減速機収容空間Aは、図5、図7に示す如くモータ収容筒14、筒状スピンドル15に囲まれ、その軸方向一側(内側)が仕切板14Cと後述の電動モータ17で閉塞され、軸方向他側(外側)が後述のカップリング33等により覆われている。そして、減速機収容空間Aの内部には、後述する1段目の遊星歯車減速機構25が収容されるものである。
17はアクスルハウジング12のモータ収容筒14に着脱可能に設けられる駆動源としての電動モータで、該電動モータ17は、図2に示す如く左,右の後輪7,7を互いに独立して回転駆動するため、アクスルハウジング12の両側に位置する左,右のモータ収容筒14,14内にそれぞれ取付けられている。
そして、電動モータ17は、図4、図5に示すようにモータ収容筒14内から筒状スピンドル15内の減速機収容空間Aに向けて軸方向に延びる回転軸18を有し、この回転軸18は、電動モータ17により正方向または逆方向に回転駆動されるものである。また、回転軸18の先端側には、後述の太陽歯車26が一体回転するようにスプライン結合されている。
19は車輪としての後輪7と一体に回転する車輪取付筒で、該車輪取付筒19は、所謂ホイールハブを構成し、その外周側には、後輪7のリム7B,7Bが圧入等の手段を用いて着脱可能に取付けられる。そして、車輪取付筒19は、軸受20,21間にわたって軸方向に延びる一側筒部19Aと、該一側筒部19Aの端部から後述のリングギヤ36に向けて軸方向に延び、内周面19B1 が一側筒部19Aよりも大なる内径に形成された他側筒部19Bとにより段付筒状体として形成されている。
また、車輪取付筒19の一側筒部19Aには、その内周側に後述の軸受20,21が嵌合して取付けられる軸受取付部19C,19Dが段差となって設けられている。また、一側筒部19Aの内周側には、軸方向一側の端面と軸受取付部19Cとの間に位置してテーパ状に拡開し、後述するシール装置60のリテーナ63が取付けられる拡開部としてのリテーナ取付部19Eが形成されている。
ここで、車輪取付筒19の他側筒部19Bは、その内周面19B1 が後述するディスク保持筒22の内径D2 にほぼ等しい内径をもって形成されている。そして、他側筒部19Bは、筒状スピンドル15の鍔部15C等を径方向外側から取囲み、後述の減速機収容空間Bから環状空間Cに向けて潤滑油100が流通するのを許すものである。
また、車輪取付筒19の他側筒部19Bには、後述のリングギヤ36とディスク22A用のディスク保持筒22とが長尺ボルト23(図6参照)等を用いて一体的に固着され、これにより車輪取付筒19は、リングギヤ36と一体に回転される。即ち、車輪取付筒19には、電動モータ17の回転を減速機構24で減速することにより大トルクとなった回転がリングギヤ36を介して伝えられる。そして、車輪取付筒19は、車両の駆動輪となる後輪7を大なる回転トルクで回転させるものである。
この場合、車輪取付筒19、ディスク保持筒22およびリングギヤ36の内周側は、後述する2段目の遊星歯車減速機構34が収容される第2の減速機収容空間Bとして形成されている。そして、第2の減速機収容空間Bは、軸方向一側に位置する第1の減速機収容空間Aとの間が後述のカップリング33等により取囲まれ、軸方向の他側(外側)は、後述のキャリア39、内側キャップ42およびシール装置71等で覆われるものである。
また、車輪取付筒19と筒状スピンドル15との間は、筒状スピンドル15の外周側を環状に取囲む環状空間Cとなり、環状空間Cの下側部位には、潤滑油100が収容されるものである。そして、この環状空間Cは、軸受21内の隙間等を介して第2の減速機収容空間Bと常に連通している。
また、車輪取付筒19の一側筒部19Aは、軸受取付部19C,19D間に位置する内周面が図5、図7〜図9に示す如く軸受21側から軸受20側に向けて漸次拡径するテーパ状のガイド面(以下、傾斜面19Fという)として形成され、環状空間C内の潤滑油100は、この傾斜面19Fにより後述の排出管69側に向けてガイドされるものである。そして、車輪取付筒19の軸方向一側(内側)には、アクスルハウジング12のモータ収容筒14、筒状スピンドル15と車輪取付筒19との間となる位置に後述のシール装置60等が設けられている。
20,21は筒状スピンドル15の外周側で車輪取付筒19を回転可能に支持する軸受で、該軸受20,21は、例えば同一の円錐ころ軸受等を用いて構成され、車輪取付筒19の一側筒部19Aと筒状スピンドル15との間に軸方向に離間して配設されている。即ち、一方の軸受20は、車輪取付筒19の軸受取付部19C内に嵌合して取付けられ、他方の軸受21は、車輪取付筒19の軸受取付部19D内に嵌合して取付けられている。
そして、軸受20,21の外径寸法D1 (軸受取付部19C,19Dの内径寸法)は、図8に示すように一側筒部19Aの内径よりも大きく、他側筒部19Bの内径(後述するディスク保持筒22の内径D2 )よりも小さく形成されている。
また、軸受20,21の外径寸法D1 は、後述する最終段(2段目)のキャリア39の最大外径以上の寸法に形成され、最終段のリングギヤ36の内径D4 (図8参照)に近い寸法に形成される。そして、軸受20,21の外径寸法D1 は、後述の如くリングギヤ36の内径(図8に示す内歯36Aの内径D4 )以上となる寸法に形成されるものである。
22は車輪取付筒19の一部をリングギヤ36と共に構成するディスク保持筒で、該ディスク保持筒22は、図5に示すように車輪取付筒19の軸方向外側となる位置にリングギヤ36を挟んで取付けられ、図6に示す複数の長尺ボルト23,23,…を用いて車輪取付筒19に着脱可能に固着(一体化)されるものである。
そして、ディスク保持筒22には、図6に示すようにリング状(環状)をなすディスク22Aが抜止め、廻止め状態で取付けられ、このディスク22Aは、後述のディスクブレーキ56により制動力が付与される。即ち、後輪7と車輪取付筒19は、ディスク保持筒22およびディスク22Aと一体に回転し、該ディスク22Aに付与されるブレーキ力により走行時の回転が停止(制動)されるものである。
この場合、ディスク保持筒22の内径D2 は、図8に示すように車輪取付筒19の他側筒部19B(内周面19B1 )とほぼ等しい内径寸法に形成されている。そして、他側筒部19Bとディスク保持筒22の内径D2 は、軸受20,21の外径寸法D1 に対して下記の数1式による関係に設定されている。
なお、内歯36Aの径方向寸法D3 とは、内歯36Aの歯底と歯先との間の高さ寸法であり、図8に示すディスク保持筒22の内径D2 とリングギヤ36の内径D4 とに対して下記の数2式による関係を満たすものである。
24は筒状スピンドル15と車輪取付筒19との間に設けられた減速機構で、該減速機構24は、後述する1段目の遊星歯車減速機構25と2段目の遊星歯車減速機構34とにより構成され、後輪7側の車輪取付筒19に対し回転軸18の回転を減速して伝えるものである。
25はアクスルハウジング12の筒状スピンドル15内に設けられたキャリア固定型である1段目の遊星歯車減速機構で、該遊星歯車減速機構25は、図4、図5、図7および図8に示すように回転軸18の先端側にスプライン結合された太陽歯車26と、該太陽歯車26とリングギヤ27の内歯27Aとに噛合し、該太陽歯車26の回転に従って自転する例えば3個の遊星歯車28(1個のみ図示)と、該各遊星歯車28を支持ピン29を介して回転可能に支持したキャリア30とにより構成されている。
そして、1段目のキャリア30は、その外周側が筒状スピンドル15の環状凸部15Aにボルト31(図8参照)等を用いて非回転状態で、かつ着脱可能に固定され、複数の遊星歯車28等と共に筒状スピンドル15の減速機収容空間A内に収容されている。また、キャリア30の内周側には、図8に示すように回転軸18の先端側を回転可能に支持する軸受32等が設けられている。
また、1段目のリングギヤ27は、太陽歯車26、遊星歯車28、支持ピン29およびキャリア30等を径方向外側から取囲む短尺の筒形歯車として形成され、筒状スピンドル15の内周側に小さな径方向隙間(例えば、2〜5mm程度)を介して相対回転可能に配置されている。そして、リングギヤ27の内周側には、各遊星歯車28に噛合する内歯27A(図8参照)が形成されている。
ここで、1段目の遊星歯車減速機構25は、キャリア30が筒状スピンドル15に固定されることにより、遊星歯車28の公転(キャリヤ30の回転)が拘束される。そして、1段目の遊星歯車減速機構25は、電動モータ17の回転軸18によって太陽歯車26が一体に回転されると、この太陽歯車26の回転を複数の遊星歯車28の自転に変換する。
そして、1段目の遊星歯車減速機構25は、各遊星歯車28の自転(回転)をリングギヤ27の減速した回転として取出すと共に、このリングギヤ27の回転を後述のカップリング33を介して2段目の遊星歯車減速機構34に伝えるものである。
また、各遊星歯車28の支持ピン29には、図8に示すように潤滑油100を供給するための油路29Aが形成され、この油路29Aには、筒状スピンドル15内を軸方向に延びる後述の導管45が接続される。そして、この導管45から油路29A内に導かれる潤滑油100は、遊星歯車28の軸受28A等に向けて噴射するように供給され、これらの軸受28Aおよび遊星歯車28の歯面等を潤滑状態に保つものである。
また、遊星歯車減速機構25のキャリア30には、例えば遊星歯車28から周方向に離間した位置に図7、図8中に点線で示す油路30Aが穿設され、この油路30Aは、後述の分岐管49と導管50との間をキャリア30の前,後で連通させるものである。なお、キャリア30には、後述するブレーキ配管53,54の間でブレーキ液圧を流通させる液穴(図示せず)も穿設されている。
33は1段目のリングギヤ27と一体に回転する回転伝達部材としてのカップリングで、該カップリング33は、1段目の遊星歯車減速機構25と2段目の遊星歯車減速機構34との間に位置する環状の板体として形成され、その外周側は1段目のリングギヤ27にスプライン等の手段で結合されている。
また、カップリング33の内周側は、後述する2段目の太陽歯車35にスプライン等の手段で結合されている。そして、カップリング33は、1段目のリングギヤ27の回転を2段目の太陽歯車35に伝え、この太陽歯車35をリングギヤ27と一体的に同一の速度で回転させるものである。なお、カップリング33には、第1の減速機収容空間A内の潤滑油100を第2の減速機収容空間B側に向けてカップリング33の前,後で流通させる複数の油穴(図示せず)等を形成してもよい。
34は本実施の形態で採用した最終段となる2段目の遊星歯車減速機構で、該遊星歯車減速機構34は、筒状スピンドル15と車輪取付筒19との間に1段目の遊星歯車減速機構25を介して配設され、1段目の遊星歯車減速機構25と共に回転軸18の回転を減速して車輪取付筒19に大なる回転トルクを発生させるものである。
この場合、2段目の遊星歯車減速機構34は、回転軸18と同軸に配置されカップリング33と一体的に回転する筒状の太陽歯車35と、該太陽歯車35とリングギヤ36の内歯36A(図8参照)とに噛合し、太陽歯車35の回転に従って自転する例えば3個の遊星歯車37(1個のみ図示)と、該各遊星歯車37を支持ピン38を介して回転可能に支持したキャリア39等とにより構成されている。
そして、2段目のキャリア39は、その外周側が筒状スピンドル15の鍔部15Cにボルト40(図8参照)等を用いて非回転状態で、かつ着脱可能に固定されている。これによりキャリア39は、筒状スピンドル15の開口端で減速機収容空間Aを外側から覆う蓋体を兼用するものである。また、キャリア39の内周側には、図8に示すように軸受41等が設けられ、この軸受41は、カップリング33との間で太陽歯車35を軸方向両側から回転可能に支持している。
一方、2段目のリングギヤ36は、太陽歯車35、遊星歯車37、支持ピン38およびキャリア39等を径方向外側から取囲む短尺の筒状体として形成され、車輪取付筒19とディスク保持筒22との間に一体的に固着して設けられている。そして、リングギヤ36の内周側には、各遊星歯車37に噛合する内歯36A(図8参照)が形成されている。
また、リングギヤ36の内径(内歯36Aの内径D4 )は、図8に示す軸受21の外径寸法D1 に近い寸法で、かつ外径寸法D1 以下となる寸法(D4 ≦D1 )に形成されるものである。そして、内歯36Aの歯底と歯先との間の径方向寸法D3 (内歯36Aの高さ寸法)は、前述した数1式と数2式を満たすように、例えば10〜20mm程度の寸法に設定されている。
ここで、最終段となる2段目の遊星歯車減速機構34は、キャリア39が筒状スピンドル15に固定されることにより、遊星歯車37の公転(キャリヤ39の回転)が拘束される。そして、2段目の遊星歯車減速機構34は、太陽歯車35がカップリング33と一体に回転すると、この太陽歯車35の回転を複数の遊星歯車37の自転に変換しつつ、この自転(回転)をリングギヤ36から減速した回転として取出す。
即ち、この場合のリングギヤ36は、ディスク保持筒22と共に車輪取付筒19に一体化して設けられている。そして、後輪7側の車輪取付筒19には、1段目の遊星歯車減速機構25と2段目の遊星歯車減速機構34とで2段階に減速された大出力の回転トルクが伝えられるものである。
また、各遊星歯車37の支持ピン38には、図8に示すように油路38Aが形成され、該油路38Aには、キャリア39の外側から後述の供給管51が接続される。そして、供給管51から油路38A内に導かれる潤滑油100は、遊星歯車37の軸受37A等に向けて噴射するように供給され、これらの軸受37Aおよび遊星歯車37の歯面等を潤滑状態に保つものである。
一方、遊星歯車減速機構34のキャリア39には、図8に示すように筒状スピンドル15の鍔部15Cに沿って上,下方向に延びる油溝39Aが形成されている。そして、キャリア39の径方向内側と外側とは、この油溝39Aを介して常時連通し、第1,第2の減速機収容空間A,B内に供給された潤滑油100は、油溝39Aを介して車輪取付筒19の下側となる位置に向けて流通するものである。
42はキャリア39の内周側を施蓋する内側キャップで、該内側キャップ42は、図8に示すようにキャリア39の内周側にボルト等を介して着脱可能に設けられ、軸受41等をキャリア39との間で抜止め状態に保持している。そして、内側キャップ42は、筒状スピンドル15の開口端側をキャリア39と共に施蓋し、第2の減速機収容空間B内の潤滑油100等がキャリア39の内側から漏洩するのを防ぐものである。
43は筒状スピンドル15と車輪取付筒19の内部に設けられた油溜まりで、この油溜まり43は、前述した第1,第2の減速機収容空間A,Bおよび環状空間Cの下側となる位置に形成され、減速機構24に供給された潤滑油100を、例えば図7に示す液面高さで収容するものである。この場合、油溜まり43内の潤滑油100は、遊星歯車28、支持ピン29の中心軸線(後述の導管45)よりも下方となる液面高さに設定されている。
これにより、油溜まり43内の潤滑油100は、遊星歯車減速機構25,34のリングギヤ27,36、自転する遊星歯車28,37およびカップリング33等に与える回転抵抗(潤滑油の粘性抵抗による回転負荷)を小さく抑えると共に、軸受20,21およびリングギヤ27,36等を常に潤滑状態に保つものである。
44はアクスルハウジング12内に設けられた第1の潤滑油供給部で、この潤滑油供給部44は、筒状スピンドル15内を軸方向に延びた導管45と、各遊星歯車28の支持ピン29内に形成された前記油路29A等とにより構成されている。そして、導管45の一側(基端側)は、図7に示す仕切板14Cの位置で潤滑油の供給配管46に接続され、この供給配管46は、潤滑油100の供給源となる車載の潤滑油ポンプ(図示せず)等に接続されている。
また、導管45の他側(先端側)は、支持ピン29の油路29Aに接続され、この油路29A内には、前記潤滑油ポンプから吐出された潤滑油が供給配管46、導管45を介して導かれる。そして、油路29A内の潤滑油100は、遊星歯車28の軸受28A等に向けて噴射するように供給され、これらの軸受28Aおよび遊星歯車28の歯面等を潤滑状態に保つものである。
なお、1段目のキャリア30には、複数(例えば、3個)の遊星歯車28が支持ピン29を介して取付けられ、図7中には示していない他の遊星歯車28に対しても、導管45の途中位置から後述の継手48等により分岐された分岐管(図示せず)を介して同様に潤滑油が供給されるものである。
47は2段目の遊星歯車減速機構34に潤滑油100を供給する第2の潤滑油供給部で、この潤滑油供給部47は、図7に示すように前記導管45の途中位置から継手48を介して分岐された分岐管49と、該分岐管49の先端側が接続されたキャリア30の前記油路30Aと、この油路30Aを介して分岐管49に接続された潤滑油の導管50と、後述の供給管51等とにより構成されるものである。
ここで、潤滑油の導管50は、図8中に二点鎖線で示すように2段目の太陽歯車35の内側を隙間をもって軸方向に延び、その先端側が内側キャップ42に取付けられている。そして、内側キャップ42から外部に引出された導管50の端部には、後述の供給管51が接続されている。また、導管50の基端側は、前述の如く1段目のキャリア30に穿設した油路30A等を介して分岐管49に接続されている。
51,51,…は2段目の遊星歯車減速機構34に潤滑油100を供給する他の導管としての供給管で、これらの供給管51は、図6に示すようにキャリア39の外側となる位置で各支持ピン38の油路38A(図8参照)に接続されている。また、これらの供給管51には、図8中に二点鎖線で示す導管50等が接続され、前記分岐管49側から潤滑油が供給される。そして、この潤滑油100は、各供給管51を介して各支持ピン38の油路38A内へと噴射状態で供給されるものである。
52は内側キャップ42の外側に設けられた戻し管で、この戻し管52は、図6に示す如く供給管51の最下流側に接続され、供給管51内で余剰となった潤滑油を図8に示す如く内側キャップ42の内部に戻すものである。そして、この戻り油(潤滑油)は、内側キャップ42と太陽歯車35との間の軸受41等に供給された後に、油溜まり43内に徐々に落下して収容される。
53は筒状の太陽歯車35内に隙間をもって配置され軸方向に延びたブレーキ配管で、このブレーキ配管53は、潤滑油の導管50と同様に先端側が内側キャップ42に取付けられ、内側キャップ42から外部に引出されている。また、ブレーキ配管53の基端側(一側)は、1段目のキャリア30に向けて延び、1段目のキャリア30に穿設した前述の液穴(図示せず)等を介して他のブレーキ配管54に接続されている。
また、他のブレーキ配管54は、図5に示す如く筒状スピンドル15の減速機収容空間A内を軸方向に延び、その基端側は車両に搭載されたブレーキ用の液圧制御弁等を介してマスタシリンダ(図示せず)に接続されている。そして、ブレーキ操作時には、前記マスタシンダからのブレーキ液圧がブレーキ配管54からブレーキ配管53に向けて供給される。
また、内側キャップ42から外部に引出されたブレーキ配管53の先端側は、例えば可撓性ホース等からなる合計3本の分岐管55,55,…(図6参照)に接続されている。そして、これらの分岐管55は、ブレーキ配管53側からのブレーキ液圧を後述の各ディスクブレーキ56にそれぞれ供給するものである。
56,56,…はディスク22Aと共にブレーキ手段を構成する複数のディスクブレーキで、該各ディスクブレーキ56は、図8に示すように最終段となる2段目のキャリア39に軸方向の外側(減速機収容空間Aの外側)からボルト57等を用いて取付けられている。また、ディスクブレーキ56は、図6に示すようにディスク22Aの周方向に間隔をもって合計3個設けられている。
そして、ディスクブレーキ56は、前記マスタシリンダからのブレーキ液圧がブレーキ配管54,53および各分岐管55等を介して供給されることにより、ディスク22Aを軸方向の両側から挟持し、ディスク22Aと一体に回転する車輪取付筒19(後輪7)に制動力を付与するものである。
58は車輪取付筒19の最下部位に形成されたドレン孔で、該ドレン孔58は、図7に示すようにリングギヤ36およびディスク保持筒22を貫通して軸方向に延び、その先端側はプラグ59により着脱可能に閉塞されている。そして、プラグ59を取外したときには、油溜まり43(車輪取付筒19)内に溜まった潤滑油100をドレン孔58を通じて外部に排出できるものである。
60は筒状スピンドル15と車輪取付筒19との間を液密にシールするシール装置で、該シール装置60は、図5、図7、図9に示すように所謂フローティングシールにより構成されている。そして、シール装置60は、筒状スピンドル15と車輪取付筒19との間の環状空間C内に収容した潤滑油100が後述するリテーナ61の外部に漏洩するのを抑えると共に、土砂、雨水等が環状空間C内に侵入するのを防止するものである。
ここで、シール装置60は、図9に示すようにアクスルハウジング12のモータ収容筒14と筒状スピンドル15との間にボルト16等を介して挟持された固定側のリテーナ61と、車輪取付筒19のリテーナ取付部19E内に位置し軸方向一側の端面にボルト62等を介して取付けられた回転側のリテーナ63と、これらのリテーナ61,63との間でシール部材としての一対のOリング64,64を挟持し、互いに軸方向で対向して配置された一対のシールリング65,65とにより構成されている。
そして、シール装置60は、リテーナ61,63とシールリング65,65との間で一対のOリング64を弾性変形させ、リテーナ61,63と各Oリング64との間をシールすると共に、Oリング64の弾性復元力で各シールリング65に対して軸方向の押圧力を付与する。これにより、一対のシールリング65,65は、軸方向で互いに摺接し合うようになり、両者の摺接面を液密にシールするものである。
また、固定側のリテーナ61は、図9に示すように筒状スピンドル15の外周側に嵌合される筒部61Aと、該筒部61Aの基端側から径方向内向きに突出しモータ収容筒14と筒状スピンドル15との間に挟持される環状突部61Bと、筒部61Aの基端側から径方向外向きに突出しOリング64の保持部61Cが一体形成された環状のフランジ部61Dとにより構成されている。
そして、リテーナ61の環状突部61Bは、筒部61Aを筒状スピンドル15の外周側に嵌合させるときに、筒状スピンドル15の軸方向一側(基端側)の端面に後述のシム板67を介して当接され、ボルト66により筒状スピンドル15の端面側に固定される。また、リテーナ61は、後述する潤滑油排出部68の一部であるシール取付体を構成し、そのフランジ部61Dには、後述の排出管69が接続されるものである。
67は固定側のリテーナ61と筒状スピンドル15との間にボルト66を用いて挟持されたシム板で、該シム板67は、筒状スピンドル15の基端側端面に沿って周方向に延びる環状平板として形成されている。そして、シム板67は、その板厚または枚数に応じてリテーナ61の環状突部61Bと筒状スピンドル15の端面との間の間隔S(図9参照)を可変に調節する。
この場合、筒状スピンドル15の外周側に嵌合するリテーナ61の筒部61Aは、その先端側が軸受20の内輪に当接し、この軸受20に対する軸方向のセット荷重(スラスト荷重)を、シム板67の厚さまたは枚数に応じて可変に調整する。また、筒状スピンドル15と車輪取付筒19との間に配設された他の軸受21についても、その内輪側が図7に示す如く筒状スピンドル15の鍔部15C側に当接しているので、軸受21のセット荷重(スラスト荷重)は、シム板67の厚さまたは枚数に応じて可変に調整されるものである。
68は油溜まり43内の潤滑油100を車輪取付筒19の外部に吸引して排出する潤滑油排出部で、該潤滑油排出部68は、前述したリテーナ61のフランジ部61Dに後述の排出管69を接続して設けることにより構成されている。
69はリテーナ61のフランジ部61Dに接続して設けられた潤滑油の排出管で、該排出管69は、筒状スピンドル15と車輪取付筒19との間で最も下側となる最下部位に配設され、例えば第1,第2の減速機収容空間A,Bおよび環状空間C内に前述の如く供給されて油溜まり43に溜められた潤滑油100を、前述した車載の潤滑油ポンプ等により環状空間Cの外部に向けて吸引しつつ、排出させるものである。
この場合、排出管69は、一方の端部が吸込口69Aとなってリテーナ61に取付けられ、この吸込口69Aは、筒状スピンドル15の下側で軸受20のころ(転動子)と同等の高さ位置に配置されている。そして、排出管69は、吸込口69Aの位置からリテーナ61を介してアクスルハウジング12(モータ収容筒14)の外部に引き出されている。また、排出管69の下流側となる他方の端部69Bは、モータ収容筒14の大径部14A側に取付けられ、図2に示すアクスルハウジング12の懸架筒13側から他の配管、フィルタ、冷却装置(いずれも図示せず)等を介して前記潤滑油ポンプの吸込側に接続されるものである。
また、前記モータ収容筒14の小径部14B側には、例えば油溜まり43内に収容した潤滑油100の液面高さを検知する検知器(図示せず)等が設けられている。そして、油溜まり43内の液面高さが予め決められた基準液面よりも高くなると、前記ポンプにより油溜まり43内の潤滑油100を排出管69から図7、図9中の矢示D方向へと強制的に排出させる。
これによって、油溜まり43内の潤滑油100は、図7に例示する液面高さ(例えば、遊星歯車28、支持ピン29の中心軸線と同等、またはこれよりも僅かに下側となる液面高さに設定されているものである。なお、排出管69から排出された潤滑油は、前記フィルタで異物を除去し、前記冷却装置で冷却された後に、再び供給配管46側に供給されるものである。
70はモータ収容筒14の仕切板14Cに設けられたエア排出管で、該エア排出管70は、図7に示すように仕切板14Cの上部側に取付けられ、例えば減速機収容空間A内のエアを外部に排出する。これにより、筒状スピンドル15と車輪取付筒19内は、常に大気圧と同等またはそれ以下の圧力に保たれるものである。
71は車輪取付筒19の軸方向外側となる位置に配設された他のシール装置で、該シール装置71は、所謂フローティングシールとして構成され、図7、図8に示す如くディスク保持筒22と最終段(2段目)のキャリア39との間に固定側のリテーナ71A等を介して設けられている。そして、このシール装置71も、車輪取付筒19の軸方向一側(内側)に配設した図7、図9に示すシール装置60とほぼ同様に構成され、第2の減速機収容空間B内の潤滑油100がディスク保持筒22とキャリア39側のリテーナ71Aとの間から外部に漏洩するのを抑えると共に、外部の土砂、雨水等が侵入するのを防止するものである。
72は後輪7を車輪取付筒19の外周側に着脱可能に固定する楔部材で、該楔部材72は、図4および図5に示すように、車輪取付筒19の軸方向外側から後輪7のリム7Bと車輪取付筒19との間に圧入され、後輪7を車輪取付筒19に対して抜止め、廻止め状態に保持するものである。
このため、楔部材72は、車輪取付筒19の周方向に間隔をもって10個以上設けられ、これらの楔部材72を脱着することによって、後輪7は車輪取付筒19から取外されるものである。なお、図7ないし図9中では、車輪取付筒19の外周側から後輪7と楔部材72等を取外した状態を示している。
また、73は図1に示すリフトトラック1のベッセル3を起伏させるための起伏シリンダで、該起伏シリンダ73は、図1に示す如く前輪6と後輪7との間に位置して車体2の左,右両側に配設されている。そして、起伏シリンダ73は、外部から圧油が給排されることにより上,下方向に伸縮し、後部側のピン結合部4を中心にしてベッセル3を起伏(傾転)させるものである。
74は作動油タンクで、該作動油タンク74は、図1に示すようにベッセル3の下方に位置して車体2の側面等に取付けられている。そして、作動油タンク74内に収容した作動油は、前記油圧ポンプにより圧油となって起伏シリンダ73およびパワーステアリング用の操舵シリンダ等に給排されるものである。
本実施の形態によるダンプトラック1の走行駆動装置11は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
まず、ダンプトラック1のキャビン5に乗り込んだ運転者が、図2に示すエンジン8を起動すると、油圧源となる油圧ポンプ(図示せず)が回転駆動されると共に、オルタネータ9により発電が行われ、この電気がバッテリ等に充電されつつ、電気コントローラ10等に給電される。
そして、車両を走行駆動するときには、電気コントローラ10から後輪7側の各電動モータ17に駆動電流が供給され、このときに電気コントローラ10は、左,右の電動モータ17,17の回転数を個別にフィードバック制御する。これにより、車両の駆動輪となる左,右の後輪7,7は、互いに独立して回転駆動され、直進走行時には互いに同一の回転数で駆動される。
即ち、ダンプトラック1の後輪7側に設けられた走行駆動装置11は、電動モータ17(回転軸18)の回転を複数段の遊星歯車減速機構25,34により、例えば30〜40程度の減速比で減速し、駆動輪となる後輪7を車輪取付筒19と一緒に大なる回転トルクで走行駆動するものである。そして、左,右の後輪7は、左,右の電動モータ17により独立した回転数で駆動される。
また、1段目,2段目の遊星歯車減速機構25,34等には、車載の潤滑油ポンプ(供給源)から吐出された潤滑油100が図7に示す供給配管46を通じて第1の潤滑油供給部44と第2の潤滑油供給部47とに供給され、それぞれの太陽歯車26,35、遊星歯車28,37等が潤滑状態に保持される。そして、このときの潤滑油100は、それぞれの歯面等を潤滑しつつ、重力の作用で下方の油溜まり43内に滴下して溜められる。
この場合、第1の潤滑油供給部44では、供給配管46から導管45を介して支持ピン29の油路29A内に導かれた潤滑油100を、各遊星歯車28の軸受28A等に向けて噴射させる。そして、自転する各遊星歯車28は、その回転による遠心力で潤滑油100を径方向の外側へと導き、遊星歯車28と太陽歯車26、リングギヤ27との噛合面等を潤滑状態に保つことができる。
また、第2の潤滑油供給部47では、図7に例示したように導管45の途中位置から継手48を介して分岐された分岐管49、キャリア30内の油路30A、導管50および各供給管51(図6参照)等を通じて支持ピン38の油路38A内に導かれた潤滑油100を、各遊星歯車37の軸受37A等に向けて噴射させる。そして、これらの遊星歯車37は、その回転による遠心力で潤滑油100を径方向の外側へと導き、遊星歯車38と太陽歯車35、リングギヤ36との噛合面等を潤滑状態に保つことができる。
また、図6に示す供給管51の最下流側には戻し管52が接続され、供給管51内で余剰となった潤滑油を戻し管52により内側キャップ42の内部に戻す。そして、この戻り油(潤滑油)は、内側キャップ42と太陽歯車35との間の軸受41等に供給された後に、油溜まり43内に徐々に滴下して収容される。
また、油溜まり43内に収容された潤滑油100は、回転する1段目,2段目のリングギヤ27,36の内歯27A,36A等により順次上方へと掻き上げられ、遊星歯車減速機構25,34に対する掻き上げ潤滑等を行うことができる。そして、筒状スピンドル15と車輪取付筒19との間の軸受20,21にも、環状空間C内の潤滑油100を供給することができる。
一方、筒状スピンドル15と車輪取付筒19との間には、環状空間C内に潤滑油100を封止するシール装置60が設けられ、このシール装置60のシール取付体となるリテーナ61には、筒状スピンドル15と車輪取付筒19との最下部位に潤滑油排出部68の排出管69を接続して設けている。そして、排出管69の下流側となる端部を、フィルタ、冷却装置(いずれも図示せず)等を介して前記潤滑油ポンプの吸込側に接続している。
また、油溜まり43内に収容した潤滑油100の液面高さは、検知器等を用いて常に監視され、油溜まり43内の液面高さが予め決められた基準液面(例えば、図7に示す液面)よりも高くなると、前記潤滑油ポンプにより油溜まり43内の潤滑油100を排出管69から強制的に外部に排出することができる。これにより、油溜まり43内の潤滑油100は、環状空間Cの外部に向け排出管69を通じて排出され、このときに排出油(潤滑油)内の異物を、前記フィルタで濾過して除去できると共に、前記冷却装置により潤滑油を冷却することができる。
ところで、筒状スピンドル15と車輪取付筒19の内に設けた油溜まり43内には、減速機構24等に供給された潤滑油100が徐々に滴下して溜められるため、油溜まり43の底部側には、摩耗粉、金属粉等の異物が滞留し易く、潤滑油100の油温も高くなる傾向にある。
そこで、本実施の形態によれば、車両の後輪7側に設けるアクスルハウジング12を、モータ収容筒14と、該モータ収容筒14の軸方向外側に着脱可能に設けられる筒状スピンドル15等とにより構成し、筒状スピンドル15の外周側でその下側となる部位には、油溜まり43内の潤滑油100を車輪取付筒19と筒状スピンドル15との間の環状空間Cから外部に吸引して矢示D方向に排出する潤滑油排出部68を設ける構成としている。
そして、この潤滑油排出部68は、筒状スピンドル15と車輪取付筒19との間で環状空間C内に潤滑油100を封止するシール装置60のリテーナ61に対し、筒状スピンドル15よりも下側となる位置で排出管69の吸込口69Aを接続することによって構成され、この排出管69は、環状空間C内の潤滑油100をリテーナ61の外部に吸込口69Aから排出する構成としている。
このため、油溜まり43内の潤滑油100を排出管69の吸込口69Aから外部に吸引して排出するときには、この潤滑油100が筒状スピンドル15と車輪取付筒19との間の環状空間Cを通って外部に排出されることになり、環状空間C内に油温の高い古い潤滑油100が滞留するのを防止でき、環状空間C内での潤滑油100の循環(排出)性能を高めることができる。
そして、筒状スピンドル15と車輪取付筒19との間に設ける軸受20,21には、環状空間C内を排出管69の吸込口69Aに向けて流通する循環性の高い潤滑油100を供給でき、軸受20,21を常に新しい潤滑油100で潤滑状態に保つことができると共に、このときの潤滑油100を車輪取付筒19(環状空間C)の外部に排出管69を介して円滑に排出することができる。
また、筒状スピンドル15の最大外径部となる鍔部15C、最終段のキャリア39を、軸受20,21の外径寸法D1 (図8参照)以下となる寸法に形成し、筒状スピンドル15内には、1段目の遊星歯車減速機構25を収容するようにしている。そして、2段目の遊星歯車減速機構34はリングギヤ36の内径D4 を、図8に例示したように軸受21の外径寸法D1 に近い寸法で、かつ外径寸法D1 以下となる寸法(D4 ≦D1 )に形成している。
また、車輪取付筒19の他側筒部19Bとディスク保持筒22の内径D2 を、前述した数1式を満たすように軸受20,21の外径寸法D1 に近付けることにより、両者の寸法差(D2 −D1 )を、リングギヤ36の内歯36Aによる径方向寸法D3 以下となる寸法まで小さくする構成としている。
このため、油溜まり43内の潤滑油100が、車輪取付筒19の他側筒部19B、リングギヤ36の下側位置等に滞留するのを最小限に抑えることができ、例えば減速機収容空間B側から環状空間Cに向けて油溜まり43内の潤滑油100を良好に循環させることができる。そして、この潤滑油100を環状空間Cから排出管69により吸引させつつ、外部に円滑に排出することができる。
しかも、車輪取付筒19の一側筒部19Aは、その内周面を軸受21側から軸受20側に向けて下向きに傾斜した傾斜面19Fとしているので、環状空間C内の潤滑油100が軸受20,21間で滞留するのを傾斜面19Fによって防止でき、排出管69から車輪取付筒19の外部に排出する潤滑油100の排出性能を高めることができる。
従って、本実施の形態によれば、油溜まり43内の潤滑油100を排出管69に向けて効率的に循環させることができ、軸受20,21等に新鮮な潤滑油を供給することができる。また、遊星歯車減速機構25,34のリングギヤ27,36に対しても油溜まり43内の新しい潤滑油100を供給し続けることができ、軸受20,21やリングギヤ27,36等の耐久性や寿命を向上することができる。
また、筒状スピンドル15の内側には、1段目の遊星歯車減速機構25を収容しているので、2段目の遊星歯車減速機構34が筒状スピンドル15から軸方向外側に張出す寸法を小さく抑えることができ、走行駆動装置11全体の軸方向長さ(全長)を短くできると共に、装置全体の小型化、軽量化等を図ることができる。
また、遊星歯車減速機構25,34のキャリア30,39を、筒状スピンドル15に非回転状態で設ける構成としているので、遊星歯車28,37を回転可能に支持する支持ピン29,38をキャリア30,39と共に非回転状態に保つことができ、潤滑油供給部44,47の導管45,50等を支持ピン29,38内の油路29A,38Aに対して安定した状態で接続することができる。
そして、このような支持ピン29,38は、太陽歯車26,35の周囲に定間隔をもって配置され各遊星歯車28,37の回転中心をなしているので、前記導管45,50から支持ピン29,38の油路29A,38A内に供給された潤滑油を、遊星歯車28,37の自転に伴う遠心力の作用で放射状に噴射させることができ、例えば遊星歯車28,37と太陽歯車26,35との噛合面、遊星歯車28,37とリングギヤ27,36との噛合面等に対して霧状に微細化された潤滑油をほぼ均等に供給することができる。
これにより、減速機構24に対する潤滑油の供給を効率的に行うことができ、減速機構24の各構成部品(歯車)の耐久性、寿命等を向上することができる。また、前記各歯車の噛合面等に供給された潤滑油は、自然落下により油溜まり43内に溜められ、例えばリングギヤ27,36の内歯27A,36A等を潤滑できると共に、回転する車輪取付筒19と非回転の筒状スピンドル15との間で軸受20,21等を潤滑状態に保つことができる。
また、筒状スピンドル15内に非回転状態で設けたキャリア30には、各遊星歯車28から周方向に離間した位置に図7、図8中に点線で示すように油路30Aを形成し、潤滑油供給部47の分岐管49と導管50とをキャリア30の前,後で油路30Aにより連通させることができ、キャリア30の油路30Aを潤滑油の供給通路として活用することができる。
また、非回転状態となったキャリア30には、油路30Aとは異なる位置にブレーキ液の供給通路となる液穴等も形成することができる。そして、非回転のキャリア30を活用することにより、例えば図7に示すブレーキ配管53,54をキャリア30の前,後で連通させることができ、車両のディスクブレーキ56に対しブレーキ液圧を安定して供給することができる。
しかも、本実施の形態によれば、最終段のキャリア39を筒状スピンドル15の開口端側を覆う蓋体として活用し、キャリア39の外側面には、ディスクブレーキ56をボルト57等で固定して設ける構成としているので、後輪7(車輪取付筒19)の径方向内側で、筒状スピンドル15の軸方向外側となる位置にディスクブレーキ56を設置することができる。
このために、ディスクブレーキ56のメンテナンス時には、例えば後輪7のホイールキャップ7C(図3参照)を軸方向の外側から取外すだけで、後輪7のタイヤ7Aおよびリム7B等を取外すことなく、ディスク保持筒22(車輪取付筒19)の軸方向外側からディスクブレーキ56の保守、点検を容易に行うことができ、メンテナンス時の作業性を高めることができる。
なお、前記実施の形態では、1段目のキャリア30を筒状スピンドル15の環状凸部15Aにボルト31で固定する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば鋳造または鍛造等の手段を用いて1段目のキャリアを筒状スピンドル15内に一体形成する構成としてもよく、1段目のキャリアを筒状スピンドル内に非回転状態で設ける構成とすればよいものである。
また、前記実施の形態では、2段目のキャリア39を筒状スピンドル15の鍔部15Cにボルト40を用いて固定する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば鋳造または鍛造等の手段を用いて最終段のキャリアを筒状スピンドル15の開口端側に一体形成する構成としてもよい。
また、前記実施の形態では、減速機構24を1段目,2段目の遊星歯車減速機構25,34により構成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば減速機構を1段のみの遊星歯車減速機構、3段以上の遊星歯車減速機構、または遊星歯車減速機構以外の減速装置等で構成してもよいものである。
また、前記実施の形態では、電動モータ17を駆動源として用いる場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば油圧モータ等を走行駆動装置の駆動源として用いてもよいものである。
さらに、前記実施の形態にあっては、後輪駆動式のダンプトラック1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば前輪駆動式または前,後輪を共に駆動する4輪駆動式のダンプトラックに適用してもよいものである。