JP4483929B2 - 導体パターン形成用インク、導体パターンおよび配線基板 - Google Patents
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Description
そして、このようなセラミックス回路基板は、セラミックス粒子とバインダーとを含む材料で構成されたセラミックス成形体上に、形成すべき配線(導体パターン)に対応するパターンで、金属粒子を含む組成物を付与し、その後、当該組成物が付与されたセラミックス成形体に対し、脱脂、焼結処理を施すことにより製造されている。
そこで、近年、セラミックス成形体上へのパターン形成の方法として、液滴吐出ヘッドから金属粒子を含む液体材料(導体パターン形成用インク)を液滴状に吐出する液滴吐出法、いわゆるインクジェット法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、従来の導体パターン形成用インクでは、セラミックス成形体に、脱脂、焼結処理を施した際に、セラミックス成形体の熱膨張によって、形成した導体パターンの一部に断線が生じてしまうといった問題があった。特に、近年の配線の微細化、狭ピッチ化による回路基板の高密度化に伴い、このような問題の発生が顕著であった。
本発明の導体パターン形成用インクは、セラミックス粒子と、バインダーとを含む材料で構成されたシート状のセラミックス成形体上に付与され、導体パターンの形成に用いられる導体パターン形成用インクであって、
水系分散媒と、
前記水系分散媒中に分散した金属粒子と、
ポリグリセリンで構成された断線防止剤とを含むことを特徴とする。
これにより、セラミックス成形体の熱膨張による導体パターンの断線を防止することができる導体パターン形成用インクを提供することができる。
これにより、セラミックス成形体の熱膨張による導体パターンの断線を防止することができるとともに、導体パターンの電気的特性をより高いものとすることができる。
これにより、セラミックス成形体の熱膨張による導体パターンの断線をさらに効果的に防止することができる。
これにより、セラミックス成形体の熱膨張による導体パターンの断線をより確実に防止することができる。
本発明の導体パターン形成用インクでは、液滴吐出法による導体パターンの形成に用いられることが好ましい。
これにより、より簡便な方法で、しかも微細で複雑な導体パターンを容易に形成することができる。
これにより、信頼性の高い導体パターンを提供することができる。
本発明の配線基板は、本発明の導体パターンが備えられてなることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い配線基板を提供することができる。
《導体パターン形成用インク》
本発明の導体パターン形成用インクは、セラミックス粒子とバインダーとを含む材料で構成されたセラミックス成形体上に付与され、導体パターンの形成に用いられるインクである。
本実施形態の導体パターン形成用インク(以下、単にインクともいう)は、水系分散媒と、分散媒に分散した銀コロイド粒子と、セラミックス成形体に対して脱脂・焼結処理を施した際のセラミックス成形体の熱膨張に追従しうる有機物で構成された断線防止剤とを含むコロイド液で構成されている。
まず、水系分散媒について説明する。
本発明において、「水系分散媒」とは、水および/または水との相溶性に優れる液体(例えば、25℃における水100gに対する溶解度が30g以上の液体)で構成されたもののことを指す。このように、水系分散媒は、水および/または水との相溶性に優れる液体で構成されたものであるが、主として水で構成されたものであるのが好ましく、特に、水の含有率が70wt%以上のものであるのが好ましく、90wt%以上のものであるのがより好ましい。
次に、銀コロイド粒子について説明する。
銀コロイド粒子(金属コロイド粒子)とは、分散剤が表面に吸着した銀粒子(金属粒子)のことを言う。
分散剤としては、COOH基とOH基とを合わせて3個以上有し、かつ、COOH基の数がOH基と同じか、それよりも多いヒドロキシ酸塩を用いるのが好ましい。これらの分散剤は、銀粒子の表面に吸着してコロイド粒子を形成し、分散剤中に存在するCOOH基の電気的反発力によってコロイド粒子を水溶液中に均一に分散させてコロイド液を安定化する働きを有する。これに対して、分散剤中のCOOH基とOH基の数が3個未満であったり、COOH基の数がOH基の数よりも少ないと、銀コロイド粒子の分散性が十分に得られない場合がある。
このような分散剤としては、例えば、クエン酸、りんご酸、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三リチウム、クエン酸三アンモニウム、りんご酸二ナトリウム、タンニン酸、ガロタンニン酸、五倍子タンニン等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、銀コロイド粒子の平均粒径は、1〜100nmであるのが好ましく、10〜30nmであるのがより好ましい。これにより、インクの吐出性をより高いものとすることができるとともに、微細な導体パターンを容易に形成することができる。
なお、銀コロイド粒子の形成については、後に詳述する。
本発明の導体パターン形成用インクには、セラミックス成形体の熱膨張に追従しうる有機物で構成された断線防止剤が含まれている。
ところで、従来の導体パターン形成用インクでは、セラミックス成形体に、脱脂、焼結処理を施した際に、セラミックス成形体の熱膨張によって、形成した導体パターンの一部に断線が生じてしまうといった問題があった。特に、近年の配線の微細化、狭ピッチ化による回路基板の高密度化に伴い、このような問題の発生が顕著であった。
ポリグリセリンエステルとしては、例えば、ポリグリセリンのモノステアレート、トリステアレート、テトラステアレート、モノオレエート、ペンタオレエート、モノラウレート、モノカプリレート、ポリシノレート、セスキステアレート、デカオレエート、セスキオレエート等が挙げられる。
上述した中でも、特に、ポリグリセリン骨格を有するポリグリセリン化合物を用いるのが好ましく、ポリグリセリンを用いるのがより好ましい。これにより、セラミックス成形体の熱膨張による導体パターンの断線の発生をさらに効果的に防止することができる。さらに、これら化合物は、水系分散媒への溶解度も高いので、好適に用いることができる。
また、導体パターン形成用インクには、上記成分の他、インクの乾燥を抑制する乾燥抑制剤が含まれていてもよい。
このようなインクの乾燥を抑制する乾燥抑制剤が含まれている場合、以下のような効果が得られる。
上述した中でも、多価アルコールとして糖アルコールを含むものを用いた場合、インクジェットヘッドの吐出部付近における水系分散媒の揮発をさらに効果的に抑制することができるとともに、焼結して導体パターンを形成する際には導体パターン内からより容易に除去(分解除去)することができる。また、導体パターン形成用インクによって形成された膜(後に詳述する導体パターンの前駆体)を乾燥(脱分散媒)する際に、水系分散媒が揮発とともに、糖アルコールが析出する。これにより、導体パターンの前駆体の粘度が上昇するため、前駆体を構成するインクの不本意な部位への流れ出しがより確実に防止される。その結果、形成される導体パターンをより高い精度で所望の形状とすることができるとともに、セラミックス成形体の脱脂・焼結の際に、断線が発生するのをより確実に防止することができる。
糖アルコールとしては、例えば、トレイトール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、スレイトール、グリトール、タリトール、ガラクチトール、アリトール、アルトリトール、ドルシトール、イディトール、グリセリン(グリセロール)、イノシトール、マルチトール、イソマルチトール、ラクチトール、ツラニトール等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、グリセリン、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、マルチトール、マンニトール、ガラクチトール、イノシトール、ラクチトールなる群から選択される少なくとも1種の糖アルコールを含むのが好ましく、2種以上の糖アルコールを含むのがより好ましい。これにより、糖アルコールを含むことによる上述したような効果をより顕著なものとすることができる。
乾燥抑制剤中に糖アルコールを含む場合、その含有量は、15wt%以上であるのが好ましく、30wt%以上であるのがより好ましく、40〜70wt%であるのがさらに好ましい。これにより、インクジェットヘッドの吐出部付近における水系分散媒の揮発をより確実に抑制することができる。
乾燥抑制剤中に1,3−プロパンジオールを含む場合、その含有量は、10〜70wt%であるのが好ましく、20〜60wt%であるのがより好ましい。これにより、インクの吐出安定性をより効果的に向上させることができる。
このように、導体パターン形成用インクと基材との接触角を所定の範囲に調整することにより、より微細な導体パターンを形成することができる。特に、このように微細な導体パターンを形成する場合であっても、上記のような断線防止剤が含まれているので、断線の発生が確実に防止される。
特に、インク中に含まれる2種以上のアセチレングリコール系化合物のうち、最もHLB値が高いアセチレングリコール系化合物のHLB値と、最もHLB値が低いアセチレングリコール系化合物のHLB値との差が、4〜12であるのが好ましく、5〜10であるのがより好ましい。これにより、より少ない表面張力調整剤の添加量で、導体パターン形成用インクと基材との接触角を所定の範囲により容易に調整することができる。
また、インク中に2種以上のアセチレングリコール系化合物を含むものを用いる場合、最もHLB値の低いアセチレングリコール系化合物のHLB値は、2〜7であるのが好ましく、3〜5であるのがより好ましい。
なお、導体パターン形成用インクの構成成分は、上記成分に限定されず、上記以外の成分を含んでいてもよい。
次に、上述したような導体パターン形成用インクの製造方法の一例について説明する。
本実施形態のインクを製造する際には、まず、上記分散剤と、還元剤とを溶解した水溶液を調製する。
分散剤の配合量としては、出発物質である硝酸銀のような銀塩中の銀と分散剤とのモル比が1:1〜1:100程度となるように配合することが好ましい。銀塩に対する分散剤のモル比が大きくなると、銀粒子の粒径が小さくなって導体パターン形成後の粒子同士の接触点が増えるため、体積抵抗値の低い被膜を得ることができる。
還元剤としては、特に限定されず、例えば、ヒドラジン、ジメチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン系;水酸化ホウ素ナトリウム、水素ガス、ヨウ化水素等の水素化合物系;一酸化炭素、亜硫酸、次亜リン酸等の酸化物系、Fe(II)化合物、Sn(II)化合物等の低原子価金属塩系、D−グルコースのような糖類、ホルムアルデヒド等の有機化合物系、あるいは上記の分散剤として挙げたヒドロキシ酸であるクエン酸、りんご酸やヒドロキシ酸塩であるクエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三リチウム、クエン酸三アンモニウム、りんご酸二ナトリウムやタンニン酸等が挙げられる。中でも、タンニン酸や、ヒドロキシ酸は還元剤として機能すると同時に分散剤としての効果を発揮するため好適に用いることができる。また、金属表面で安定した結合を形成する分散剤として上記に挙げたメルカプト酸であるメルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、チオジプロピオン酸、メルカプトコハク酸、チオ酢酸やメルカプト酸塩であるメルカプト酢酸ナトリウム、メルカプトプロピオン酸ナトリウム、チオジプロピオン酸ナトリウム、メルカプトコハク酸ナトリウム、メルカプト酢酸カリウム、メルカプトプロピオン酸カリウム、チオジプロピオン酸カリウム、メルカプトコハク酸カリウム等を好適に用いることができる。これらの分散剤や還元剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。これらの化合物を使用する際には、光や熱を加えて還元反応を促進させてもよい。
また、還元剤の配合量としては、上記出発物質である銀塩を完全に還元できる量が必要であるが、過剰な還元剤は不純物として銀コロイド水溶液中に残存してしまい、成膜後の導電性を悪化させる等の原因となるため、必要最小限の量が好ましい。具体的な配合量としては、上記銀塩と還元剤とのモル比が1:1〜1:3程度である。
これは、以下のような理由による。例えば、分散剤であるクエン酸三ナトリウムと還元剤である硫酸第一鉄とを混合した場合、全体の濃度にもよるがpHは大体4〜5程度と、上記したpH6を下回る。このとき存在する水素イオンは、下記反応式(1)で表される反応の平衡を右辺に移動させ、COOHの量が多くなる。したがって、その後、銀塩溶液を滴下して得られる銀粒子表面の電気的反発力が減少し、銀粒子(銀コロイド粒子)の分散性が低下してしまう。
−COO−+H+ → −COOH…(1)
添加するアルカリ性の化合物としては、特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水等を用いることができる。これらの中では、少量で容易にpHを調整できる水酸化ナトリウムが好ましい。
なお、アルカリ性の化合物の添加量が多すぎて、pHが10を超えると、鉄イオンのような残存している還元剤のイオンの水酸化物の沈殿が起こりやすくなる。
銀塩としては、特に限定されず、例えば、酢酸銀、炭酸銀、酸化銀、硫酸銀、亜硝酸銀、塩素酸銀、硫化銀、クロム酸銀、硝酸銀、二クロム酸銀等を用いることができる。これらの中では、水への溶解度が大きい硝酸銀が好ましい。
また、銀塩の量は、目的とするコロイド粒子の含有量、および、還元剤により還元される割合を考慮して定められるが、例えば、硝酸銀の場合、水溶液100重量部に対して15〜70重量部程度とするのが好ましい。
この工程において、銀塩は還元剤により銀粒子に還元され、さらに、該銀粒子の表面に分散剤が吸着して銀コロイド粒子が形成される。これにより、銀コロイド粒子が水溶液中にコロイド状に分散した水溶液が得られる。
洗浄の方法としては、例えば、得られたコロイド粒子を含む水溶液を一定期間静置し、生じた上澄み液を取り除いた上で、純水を加えて再度攪拌し、さらに一定期間静置して生じた上澄み液を取り除く工程を幾度が繰り返す方法、上記静置の代わりに遠心分離を行う方法、限外濾過等でイオンを取り除く方法を挙げることができる。
これは、還元後に洗浄を行ったため、電解質イオンであるナトリウム濃度が減少している場合があり、このような状態の溶液では、下記反応式(2)で表される反応の平衡が右辺へ移動する。このままでは、銀コロイドの電気的反発力が減少して銀粒子の分散性が低下するため、適当量の水酸化アルカリを添加することにより、反応式(2)の平衡を左辺に移動させ、銀コロイドを安定化させるのである。
−COO−Na++H2O → −COOH+Na++OH−…(2)
pHが6未満では、反応式(2)の平衡が右辺に移動するため、コロイド粒子が不安定化し、一方、pHが11を超えると、鉄イオンのような残存しているイオンの水酸化塩の沈殿が起こりやすくなるため好ましくない。ただし、予め鉄イオン等を取り除いておけば、pHが11を超えても大きな問題はない。
なお、ナトリウムイオン等の陽イオンは水酸化物の形で加えるのが好ましい。これは、水の自己プロトリシスを利用できるため最も効果的にナトリウムイオン等の陽イオンを水溶液中に加えることができるからである。
なお、断線防止剤等の他の成分の添加時期は、特に限定されず、銀コロイド粒子の形成後ならいつでもよい。
次に、本実施形態の導体パターンについて説明する。
この導体パターンは、上記インクをセラミックス成形体上に塗布した後、加熱することにより形成される薄膜状の導体パターンであって、銀粒子が相互に結合されてなり、少なくとも導体パターン表面において前記銀粒子同士が隙間なく結合しており、かつ比抵抗が20μΩcm未満のものである。
特に、当該導体パターンは、本発明の導体パターン形成用インクを用いて形成されるので、セラミックス成形体の脱脂・焼結時の熱膨張による断線が防止されたものであるため、特に信頼性が高い。
乾燥条件としては、例えば、40〜100℃で行うのが好ましく、50〜70℃で行うのがより好ましい。このような条件とすることにより、乾燥した際に、クラックが発生するのをより効果的に防止することができる。また、焼結は、200℃以上で20分以上加熱すればよい。なお、この焼結は、例えば、セラミックス成形体の焼結とともに行うことができる。
また、本実施形態の導体パターンを形成する際には、インクを付与してから予備加熱して水系分散媒を蒸発させ、予備加熱後の膜の上に再度インクを付与する、といった工程を繰り返し行うことで、厚膜の導体パターンを形成することもできる。
また、上述したような断線防止剤は比較的沸点も高いので、インクを付与して乾燥してから長時間放置してもインクが変質するおそれがなく、再度インクを付与することが可能になり、均質な膜を形成できる。これにより、導体パターン自体が多層構造になるおそれがなく、層間同士の間の比抵抗が上昇して導体パターン全体の比抵抗が増大するおそれがない。
なお、上記のような導体パターンは、携帯電話やPDA等の移動通話機器の高周波モジュール、インターポーザー、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、加速度センサー、弾性表面波素子、アンテナや櫛歯電極等の異形電極、その他各種計測装置等の電子部品等に適用することができる。
次に、本発明の導体パターン形成用インクによって形成された導体パターンを有する配線基板(セラミックス回路基板)およびその製造方法の一例について説明する。
本発明に係る配線基板は、各種の電子機器に用いられる電子部品となるもので、各種配線や電極等からなる回路パターン、積層セラミックスコンデンサ、積層インダクター、LCフィルタ、複合高周波部品等を基板に形成してなるものである。
図1に示すように、セラミックス回路基板(配線基板)1は、セラミックス基板2が多数(例えば10枚から20枚程度)積層されてなる積層基板3と、この積層基板3の最外層、すなわち一方または両方の側の表面に形成された、微細配線等からなる回路4とを有して形成されたものである。
また、これら回路5には、これに接続するコンタクト(ビア)6が形成されている。このような構成によって回路5は、上下に配置された回路5、5間が、コンタクト6によって導通したものとなっている。なお、回路4も、回路5と同様に、本発明の導体パターン形成用インクにより形成されたものとなっている。
まず、原料粉体として、平均粒径が1〜2μm程度のアルミナ(Al2O3)や酸化チタン(TiO2)等からなるセラミックス粉末と、平均粒径が1〜2μm程度のホウ珪酸ガラス等からなるガラス粉末とを用意し、これらを適宜な混合比、例えば1:1の重量比で混合する。
また、バインダーの熱分解温度は、200〜500℃程度であるのが好ましく、300〜400℃程度であるのがより好ましい。これにより、セラミックス成形体の熱膨張による導体パターンの断線をより確実に防止することができる。
続いて、製品の用途に合わせて切断し、さらに所定寸法のシートに裁断する。本実施形態では、例えば1辺の長さを200mmとする正方形状に裁断する。
本実施形態において、導体パターン形成用インクの付与は、例えば図4に示すインクジェット装置(液滴吐出装置)50、および、図5に示すインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)70を用いることにより行う。以下に、インクジェット装置50およびインクジェットヘッド70について説明する。
インクジェット装置50は、インクジェットヘッド(以下、単にヘッドと呼ぶ)70と、基板S(本実施形態ではセラミックスグリーンシート7)を載置するテーブル46とを有している。なお、インクジェット装置50の動作は、制御装置53により制御されるようになっている。
基板Sを載置するテーブル46は、第1移動手段54によりY方向に移動および位置決め可能とされ、モータ44によりθz方向に揺動および位置決め可能とされている。
また、テーブル46の裏面には、ラバーヒータ(図示せず)が配設されている。テーブル46上に載置されたセラミックスグリーンシート7は、その上面全体がラバーヒータにて所定の温度に加熱されるようになっている。
この加熱温度は、前述した乾燥条件と同様となっている。
液滴吐出方式として、圧電体素子としてのピエゾ素子を用いてインクを吐出させるピエゾ方式や、インクを加熱して発生した泡(バブル)によりインクを吐出させる方式など、公知の種々の技術を適用することができる。このうちピエゾ方式は、インクに熱を加えないため、材料の組成に影響を与えないなどの利点を有する。そこで、図5に示すヘッド70には、前述したピエゾ方式が採用されている。
また、ヘッド本体90の下端面には、インク吐出面を構成するノズルプレート(図示せず)が装着されている。このノズルプレートには、インク10を吐出する複数のノズル91が、各インク室93に対応して開口されている。そして、各インク室93から対応するノズル91に向かって、インク流路が形成されている。一方、ヘッド本体90の上端面には、振動板94が装着されている。この振動板94は、各インク室93の壁面を構成している。その振動板94の外側には、各インク室93に対応してピエゾ素子92が設けられている。ピエゾ素子92は、水晶等の圧電材料を一対の電極(不図示)で挟持したものである。その一対の電極は、駆動回路99に接続されている。
このようにして前駆体11を形成したら、同様の工程により、前駆体11を形成したセラミックスグリーンシート7を必要枚数、例えば10枚から20枚程度作製する。
このようにして積層体12を形成したら、例えば、ベルト炉などによって加熱処理する。これにより、各セラミックスグリーンシート7は焼成されることで、図3(b)に示すようにセラミックス基板2(本発明の配線基板)となり、また、前駆体11は、これを構成する銀コロイド粒子が焼結して配線パターンや電極パターンからなる回路(導体パターン)5となる。そして、このように積層体12が加熱処理されることで、この積層体12は図1に示した積層基板3となる。
ここで、セラミックスグリーンシート7上に配されたインク10中では、断線防止剤等の成分が分解除去され、また、インク中の金属粒子が、加熱処理によって互いに融着し、連続する。これにより、形成される回路(導体パターン)5が導電性を示すようになる。
なお、このような加熱処理により、回路4についても前記回路5と同時に形成することができ、これによってセラミックス回路基板1を得ることができる。
例えば、前述した実施形態では、金属粒子を溶媒に分散してなる分散液として、コロイド液を用いる場合について説明したが、コロイド液でなくてもよい。
[1]導体パターン形成用インクの調製
(実施例1〜12、参考例13〜16、実施例17、18)
各実施例、各参考例における導体パターン形成用インクは、以下のようにして製造した。
なお、導体パターン形成用インクの各構成材料の含有量を、表1に示した。
断線防止剤を添加しなかった以外は、前記実施例1と同様にして導体パターン形成用インクを製造した。
なお、表1中、キシリトールをXY、ソルビトールをSB、エリスリトールをER、マルチトールをMT、グリセリンをGRと示した。
まず、以下のようにしてセラミックスグリーンシートを用意した。
平均粒径が1〜2μm程度のアルミナ(Al2O3)と酸化チタン(TiO2)等からなるセラミックス粉末と、平均粒径が1〜2μm程度のホウ珪酸ガラスからなるガラス粉末とを1:1の重量比で混合し、バインダー(結合剤)としてポリビニルブチラール(熱分解開始温度:310℃)、可塑剤としてジブチルフタレートを加え、混合・撹拌することにより得たスラリーを、ドクターブレードでPETフィルム上にシート状に形成したものをセラミックスグリーンシートとし、1辺の長さを200mmとする正方形状に裁断したものを使用した。
各実施例、各参考例および比較例で得られた導体パターン形成用インクを、それぞれ図4、5に示すようなインクジェット装置に投入した。
次に、上記セラミックスグリーンシートを60℃に昇温保持した。各吐出ノズルからそれぞれ1滴当り15ngの液滴を順次吐出し、線幅が50μm、厚み15μm、長さが10.0cmのライン(前駆体)を20本描画した。そして、このラインが形成されたセラミックスグリーンシートを乾燥炉に入れ、60℃で30分間加熱して乾燥した。
上記のようにして、ラインが形成されたセラミックスグリーンシートを第1のセラミックスグリーンシートとした。この第1のセラミックスグリーンシートを各インクにつき、20枚ずつ作成した。
この端子部が形成されたセラミックスグリーンシートを第2のセラミックスグリーンシートとした。
次に、生の積層体を、95℃の温度において、250kg/cm2の圧力で30秒間プレスした後、大気中において、昇温速度66℃/時間で約6時間、昇温速度10℃/時間で約5時間、昇温速度85℃/時間で約4時間といった連続的に昇温する昇温過程を経て、最高温度890℃で30分間保持するといった焼成プロファイルに従って焼成した。
冷却後、20本の導体パターン上に形成された端子部間にテスタをあて、導通の有無を確認し、導通率を測定した。なお、導通率とは、導通できた良品の数を総数で除して得られる数値を示す。
この結果を、表2に合わせて示した。
また、インク中における銀コロイド粒子の含有量を20wt%、30wt%に変更したところ、上記と同様の結果が得られた。
Claims (7)
- セラミックス粒子と、バインダーとを含む材料で構成されたシート状のセラミックス成形体上に付与され、導体パターンの形成に用いられる導体パターン形成用インクであって、
水系分散媒と、
前記水系分散媒中に分散した金属粒子と、
ポリグリセリンで構成された断線防止剤とを含むことを特徴とする導体パターン形成用インク。 - 前記ポリグリセリンの熱分解開始温度をT1[℃]、前記バインダーの熱分解開始温度をT2[℃]としたとき、−150≦T1−T2≦50の関係を満足する請求項1に記載の導体パターン形成用インク。
- 前記ポリグリセリンの重量平均分子量は、300〜3000である請求項1または2に記載の導体パターン形成用インク。
- 前記ポリグリセリンの含有量は、7〜30wt%である請求項1ないし3のいずれかに記載の導体パターン形成用インク。
- 液滴吐出法による導体パターンの形成に用いられる請求項1ないし4のいずれかに記載の導体パターン形成用インク。
- 請求項1ないし5のいずれかに記載の導体パターン形成用インクによって形成されたことを特徴とする導体パターン。
- 請求項6に記載の導体パターンが備えられてなることを特徴とする配線基板。
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