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JP4478626B2 - グロープラグおよびその製造方法 - Google Patents

グロープラグおよびその製造方法 Download PDF

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JP4478626B2 JP2005213511A JP2005213511A JP4478626B2 JP 4478626 B2 JP4478626 B2 JP 4478626B2 JP 2005213511 A JP2005213511 A JP 2005213511A JP 2005213511 A JP2005213511 A JP 2005213511A JP 4478626 B2 JP4478626 B2 JP 4478626B2
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Description

本発明は、ディーゼルエンジンの始動を補助するためのグロープラグおよびその製造方法に関するものである。
従来、ディーゼルエンジンの始動の補助をするために使用されるグロープラグは、金属製で筒状の主体金具を有し、その軸孔内先端側にて保持する棒状のヒータの先端部を突出させている。また、主体金具の後端側から金属製で棒状の中軸が突出されており、主体金具とは絶縁された状態で、その軸孔内に保持されている。そして、ヒータに通電するための両電極が、主体金具と中軸とのそれぞれに電気的に接続されている。
こうした構造を有するグロープラグが用いられるディーゼルエンジンは、近年、小型化、高燃費化、高出力化などへの要望から、従来の副室式ディーゼルエンジンに代わり直噴式ディーゼルエンジンへと移行しつつある。また、これに伴ってエンジンへの取り付け構造が変更される場合もあり、グロープラグには、小径化や長尺化が求められている。さらに、グロープラグには、耐腐食性の高いセラミックヒータが使用される場合も多い。
ところで、グロープラグの全長が長くなったことから中軸の固有振動数が低下するので、ディーゼルエンジンの稼働に伴い発生する振動負荷の振動数が中軸の固有振動数に一致する機会が増え、共振してしまうことが頻発する虞が生じた。そして共振が発生すれば、中軸の振動の腹に相当する部位が主体金具の内周面に接触して絶縁性が保てなくなる虞がある。また、その振幅が大きくなれば中軸の撓りも大きくなり、破断する虞がある。さらに、中軸から伝達される内部応力によりセラミックヒータが破損したりする虞があった。
そこで中軸(リード部材)に絶縁被覆を被覆して共振による中軸と主体金具との短絡を防止し、さらに、絶縁被覆の外径を主体金具の内径に近づけることで、共振による中軸の振動の腹の振幅を制限し、発生する応力を低減して中軸の破断を防止したグロープラグが提案されている(例えば特許文献1参照)。このように中軸の共振により発生する応力を低減すれば、セラミックヒータの破損も防止することが可能となる。
特開平11−176563号公報
しかしながら、特許文献1では絶縁被覆と中軸とが密着されるため、グロープラグの製造過程において中軸に絶縁被覆を装着させにくく、絶縁被覆を破損したりする虞があり、これを防止するためには、あらかじめ中軸にグリス等の潤滑剤を塗布する必要があり、手間がかかるという問題があった。
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、製造の際に組み付けられる可撓性部材の破損の防止や、その製造の手間を低減することができるグロープラグおよびその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明のグロープラグは、軸線方向に沿って延びる中軸と、通電によって発熱する発熱体を有するヒータ部材と、軸孔を有し、その軸孔内に前記中軸が挿通されるとともに、前記ヒータ部材の径方向を保持する主体金具と、前記中軸と前記軸孔との間隙に介在され、可撓性を有するチューブ状の可撓性部材とを備え、前記可撓性部材は前記間隙の大きさよりも厚みが小さく、前記軸線方向と平行な方向に圧縮された形態を有し、その圧縮に伴う変形によって前記中軸と前記軸孔とのそれぞれに接触した状態で、前記間隙に介在されていることを特徴とする。
また、請求項2に係る発明のグロープラグは、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記軸孔の後端部にて前記中軸と前記軸孔との間隙に嵌着される絶縁部材であり、該絶縁部材の先端部が直接または他部材を介して前記可撓性部材を前記軸線方向と平行な方向に押圧し、当該可撓性部材の圧縮された状態を維持する絶縁部材を備えている。
また、請求項3に係る発明のグロープラグは、請求項2に記載の発明の構成に加え、前記絶縁部材のうち前記可撓性部材を押圧する部位の外径は、当該可撓性部材のうち前記絶縁部材に当接した部位の外径よりも大きいことを特徴とする。
また、請求項4に係る発明のグロープラグの製造方法は、請求項2または3に記載のグロープラグを製造する方法であって、前記ヒータ部材が固定された前記中軸を前記主体金具の前記軸孔内に挿通するとともに、前記軸孔の先端側で前記ヒータ部材の径方向を保持するヒータ保持工程と、前記軸孔の後端側から、その軸孔内に、前記可撓性部材を挿入するとともに、前記可撓性部材の内周に前記中軸を挿通させる挿入工程と、前記軸孔の後端側に前記絶縁部材を配設するとともに、その絶縁部材で、前記軸線方向と平行な方向に前記可撓性部材を圧縮する圧縮工程とを備えている。
請求項1に係る発明のグロープラグでは、主体金具の軸孔と中軸との間隙に介在させる可撓性部材は、軸線方向と平行な方向に圧縮された形態で、その圧縮に伴う変形によって中軸と軸孔とのそれぞれに接触した状態であるため、軸孔内で、中軸が可撓性部材に支持される形態となる。グロープラグが取り付けられたエンジンの振動などに伴い中軸が共振を生じた場合、その共振によって振動の腹となる中軸の一部分が大きく揺動する虞があるが、上記のように可撓性部材によって中軸が支持される形態となるため、共振の振幅を制限することができる。これにより、共振発生時の中軸の撓りが抑えられるので、破断を防止することができる。また、主体金具と中軸とをそれぞれ発熱体への通電のための電極とするグロープラグの構成において、中軸の撓りが抑えられれば軸孔と中軸とが接触することはなく、短絡を防止することができる。
ところで、グロープラグの製造過程において、軸孔内に中軸が挿通された状態で可撓性部材を上記間隙に配置させるとき、軸孔の内周面や中軸の外周面に可撓性部材が密着した状態でその間隙に配置させようとすると、密着した面同士の摩擦によってスムーズに配置させることができず、可撓性部材を破損する虞がある。しかし、本発明では可撓性部材の厚みが軸孔と中軸との間隙の大きさよりも小さいので、可撓性部材は容易に変形することができ、軸孔の内周面や中軸の外周面に可撓性部材が全周に亘って密着することなく容易に配置させることができる。このため、製造過程における手間を軽減するとともに、可撓性部材の破損を減らし、歩留まりを高くすることができる。
また、請求項2に係る発明のように、中軸と軸孔とが接触しないように軸孔の後端側に絶縁部材を配設することは、グロープラグ完成後の可撓性部材の変形を防止する上で有効である。さらに絶縁部材によって軸線方向と平行な方向に可撓性部材を圧縮することができるので、グロープラグの製造過程において可撓性部材を予め圧縮した上でその後端側に絶縁部材を配置するという2段階の工程を用いる必要がなく、手間を軽減することができる。また、グロープラグの完成後も絶縁部材により可撓性部材の圧縮状態を維持できるため、可撓性部材がその性質として弾性を有していてもよく、可撓性部材として選択可能な材料を増やすことができ、生産コストを低減することができる。
また、グロープラグの製造過程において可撓性部材を圧縮する際に、その可撓性部材の押圧されるべき位置が変形に伴なってずれたとしても、請求項3に係る発明のように、可撓性部材の外径よりも絶縁部材の外径が大きければ、絶縁部材による押圧可能な範囲内で可撓性部材の押圧されるべき位置がずれるため、位置合わせをする手間を軽減することができる。
また、請求項4に係る発明のグロープラグの製造方法では、ヒータ保持工程にて、ヒータ部材が固定された中軸を主体金具の軸孔内に挿通しつつ軸孔の先端側でヒータ部材を保持し、挿入工程にて、軸孔と中軸との間隙に可撓性部材を配置させ、圧縮工程にて、軸孔の後端側に軸孔と中軸とが接触しないように絶縁部材を配設するとともに、その絶縁部材で可撓性部材を軸線方向と平行な方向に圧縮することができる。こうした製造工程を経て製造されるグロープラグでは、可撓性部材が圧縮によって軸孔と中軸との間隙において変形し、軸孔内で中軸を支持する形態となるため、グロープラグが取り付けられたエンジンの振動などに伴い中軸が共振を生じた場合でも、可撓性部材によって共振の振幅を制限することができる。また、上記間隙への可撓性部材の配置を可撓性部材の圧縮前に行うため、その配置の際に、可撓性部材が軸孔の内周面や中軸の外周面に密着することなく容易に配置させることができる。そして、絶縁部材を配設する際に可撓性部材を圧縮するため、予め可撓性部材を圧縮する工程を省くことができ、手間を軽減することができる。
以下、本発明を具体化したグロープラグの一実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本実施の形態のグロープラグ100の全体の構造について説明する。図1は、グロープラグ100の縦断面図である。なお、軸線O方向において、セラミックヒータ20の配置された側(図1における下側)をグロープラグ100の先端側として説明する。
図1に示すグロープラグ100は、例えば直噴式ディーゼルエンジンの燃焼室(図示外)に取り付けられ、エンジン始動時の点火を補助する熱源として利用される。
セラミックヒータ20は丸棒状をなし、先端部22が曲面状に加工された絶縁性セラミックからなる基体21の内部に、導電性セラミックからなる断面略U字状の発熱素子24が埋設された構造を有する。発熱素子24は、セラミックヒータ20の先端部22に配置され、その曲面にあわせて両端が略U字状に折り返された発熱体27と、その発熱体27の両端にそれぞれ接続され、セラミックヒータ20の後端部23に向けて軸線Oに沿って略平行に延設されたリード部28,29とから構成される。発熱体27は、その断面積がリード部28,29の断面積よりも小さくなるように成形されており、通電時、主に発熱体27において発熱が行われる。また、セラミックヒータ20の後端部23の外周面には、リード部28,29のそれぞれから突出された電極取出部25,26が、互いに軸線O方向にずれた位置に露出されている。なお、セラミックヒータ20が、本発明における「ヒータ部材」に相当する。
このセラミックヒータ20は、その胴部分の外周を取り巻くように、円筒状の筒状体80に保持されている。電極取出部25,26のうち先端側に形成された電極取出部25は、筒状体80の筒孔内で筒状体80に接触し、電気的に接続されている。筒状体80は金属製の部材からなり、胴部81の後端側には肉厚の鍔部82が形成されている。その鍔部82の後端には段状の係合部83が形成され、円筒状をなす主体金具40の先端部41の内周が、この係合部83に係合される。その係合の際には、セラミックヒータ20の軸と、主体金具40の軸とが軸線Oに一致する。この状態で、セラミックヒータ20のうち筒状体80よりも後端側の部分は主体金具40の内部に収容され、主体金具40が筒状体80の係合部83によって位置決めされるため、セラミックヒータ20の後端部分に設けられた電極取出部26が金属製の主体金具40には接触しない構造となっている。なお、この電極取出部26は中軸30に電気的に接続されている(後述)。
次に、主体金具40は、軸線O方向に貫通する軸孔43を有する長細い筒状の金属部材であり、胴部44の後端側に、グロープラグ100を内燃機関のエンジンヘッド(図示外)に取り付けるための雄ねじ部42が形成されている。また、胴部44の後端には、エンジンヘッドへの取り付けの際に使用される工具が係合する、軸線断面六角形状の工具係合部46が形成されている。その工具係合部46内で、軸孔43は拡径された拡径部45を有し、径の異なる部位間を接続する段部47が形成されている。
中軸30は、軸線O方向に延びる金属棒であり、主体金具40の軸孔43内に挿通される。中軸30の先端部31はセラミックヒータ20の後端部23に嵌合された接続リング35に嵌合され、中軸30とセラミックヒータ20とが一体に連結されている。そしてセラミックヒータ20の電極取出部26は接続リング35の筒孔内壁に接触しており、接続リング35を介して中軸30と電気的に接続されている。主体金具40と中軸30とは空隙をもって電気的に絶縁されており、後述するが、両者の間隙にチューブ200が介在されている。そして、主体金具40と中軸30とのそれぞれが、セラミックヒータ20の発熱体27に電圧を印加するための電極として機能する。
中軸30の後端部32には絶縁性のOリング70が係合され、主体金具40の軸孔43の段部47に配置されている。さらに後端部32には絶縁性の支持リング60が係合され、拡径部45に嵌合されるとともに、その先端面62で軸線O方向先端側に向けてOリング70を押圧している。これにより、中軸30の外周面と、軸孔43の段部47における内周面と、支持リング60の先端面62とのそれぞれにOリング70が接触され、軸孔43内外の気密性が保たれている。また、支持リング60の後端側に形成された鍔部61が、工具係合部46の後端に当接されており、ピン端子50と主体金具40との間に介在することで両者を絶縁している。なお、支持リング60が、本発明における「絶縁部材」に相当する。
次に、中軸30の後端部32で支持リング60の鍔部61から後端側に突出された部分には、ピン端子50が嵌合されている。ピン端子50は、中軸30の後端部32に被さって覆うキャップ状の胴部52と、胴部52から後端側に突設されたピン状の突起部53と、胴部52の先端側にて径方向に突設された鍔部51とから構成される。胴部52の外周が加締められることによって中軸30の後端部32にピン端子50が固定されており、ピン端子50と中軸30とが電気的に接続されている。グロープラグ100がエンジンヘッド(図示外)に取り付けられる際には、突起部53には図示外のプラグキャップが嵌められ、外部回路から電力が供給される。
ところで、上記した構造を有する本実施の形態のグロープラグ100の中軸30は、その先端部31が、主体金具40に接合される筒状体80に圧入嵌合されたセラミックヒータ20に接続リング35によって固定されている。一方、後端部32は、支持リング60およびOリング70によって主体金具40の後端の軸孔43内(拡径部45内)にて支持される形態ではあるものの、固定されてはいない。このため、グロープラグ100がエンジンヘッド(図示外)に取り付けられた際に、中軸30の後端部32に固定されたピン端子50に嵌められるプラグキャップや、プラグキャップに接続されたコードの重量を中軸30で支えた場合、エンジンの振動等、外部からの振動による衝撃が中軸30にかかることによって、中軸30が破断する虞がある。そこで本実施の形態では、中軸30の外径が、主体金具40の軸孔43の内径に対し70%以上の大きさとなるように構成している。一例として、本実施の形態のグロープラグ100では、主体金具40の軸孔43の内径をΦ5.4、中軸30の外径をΦ4.0として構成している。
また、上記のようにピン端子50が加締められることによって、支持リング60は軸線O方向先端側に向けて押圧された状態で位置決めされ、さらにOリング70が支持リング60に押圧された状態で位置決めされる。そしてチューブ200は、先端部201が筒状体80の後端面に当接した状態で後端部202をOリング70によって押圧されており、軸線O方向に圧縮された状態となって軸孔43内に配置されている。なお、チューブ200が、本発明における「可撓性部材」に相当する。
以下、チューブ200の詳細な構成について、図2,図3を参照して説明する。図2は、チューブ200の斜視図である。図3は、図2の一点鎖線P−Pにおいて矢視方向から見たチューブ200の断面図である。なお、図3においては、チューブ200の大きさの関係を示すため、中軸30および主体金具40の軸線を等しくして描いている。
図2に示す、チューブ200は、絶縁性のシリコンからなる筒状で可撓性を有する部材である。このような構成のチューブ200は、押し出し成形によって連続したチューブ状に形成され、一定の寸法に切断されることによって作製される。その作製の際に、チューブ200の各部の寸法は以下のように規定される。チューブ200の軸線O方向における長さBは、グロープラグ100の組み立て後に、軸線O方向において筒状体80の後端面の配置される位置と、Oリング70の配置される位置との間の長さA(図1参照)よりもやや長くなるように、押し出し成形されたチューブ200が切断される。また、成形されるチューブ200の外径Cが、図3に示すように、主体金具40の軸孔43の内径Eよりも小さくなるように、かつ、チューブ200の内径Dが、中軸30の外径Fよりも大きくなるように、押し出し成形機の口金(図示外)が選択される。すなわち、成形されたチューブ200の厚みH(外径Cと内径Dとの半径差)は、主体金具40と中軸30との間隙の大きさG(主体金具40の内径Eと中軸30の外径Fとの半径差)よりも小さくなるように構成される。
また、Oリング70は、軸孔43の段部47に配置されるが、その内径Jは、中軸30の外径Fと略同一に構成され、外径Kは、軸孔43の内径Eよりも大きく構成されており、径方向の厚みI(外径Kと内径Jとの半径差)がチューブ200の厚みHや、軸孔43の間隙の大きさGよりも大きく構成されている。つまり、Oリング70は、内径Jがチューブ200の内径Dよりも小さく、外径Kがチューブ200の外径Cよりも大きく、軸孔43内でチューブ200を圧縮するとともに、チューブ200をその軸孔43内に収容した状態で維持する蓋材として機能する。すなわち、チューブ200は、Oリング70を介して間接的に、支持リング60によって押圧される形態となっている。
このような構造のグロープラグ100では、その製造過程において、チューブ200を主体金具40の軸孔43と、その軸孔43内を挿通されている中軸30との間隙に挿入する工程が行われるが、上記のように軸孔43の内周面や中軸の外周面とチューブ200とが密着しないようにチューブ200の各部の寸法が規定されているため、その挿入が容易である。以下、図4,図5を参照して、グロープラグ100の製造過程について説明する。図4は、グロープラグ100の製造過程の概略的な流れを示す図である。図5は、図4のチューブ圧縮工程をより詳細に示すグロープラグ100の部分断面図である。
[ヒータ形成工程]
図4に示すように、まず、導電性のセラミック粉末やバインダ等を原料として射出成形し、セラミックヒータ20の発熱素子24の原形となる素子成形体251を形成する。一方、基体21の原形となる基体成形体252は、絶縁性セラミック粉末を原料に金型プレス成形を行い、素子成形体251が収容される凹部を自身の合わせ面に備えた2分割の成形体として形成する。そして基体成形体252の凹部に素子成形体251を挟んで収容し、プレス圧縮を行った後、脱バインダ処理、ホットプレス等の焼成工程を経て、その外周面を、先端が半球状の棒状に研磨して整形することで、セラミックヒータ20を形成する。
[ヒータ圧入工程]
次に、接続リング35は、ステンレス等の鋼材をパイプ状に成形し、セラミックヒータ20に圧入嵌合させて電極取出部26の導通を図る。同様に、筒状体80も所定の形状に成形し、セラミックヒータ20に圧入嵌合させて電極取出部25の導通を図る。電気的な導通を安定化させるためにAuやCu等のめっきを施すとよい。
[中軸接合工程]
中軸30は、一定の寸法に切断された鉄系材料(例えば、Fe−Cr−Mo鋼)の棒状部材から塑性加工や切削等により形成する。そして、中軸30の先端部31をヒータ一体部材250の接続リング35内に係合させた状態で外周をレーザ溶接し、中軸30とヒータ一体部材250とを一体に接合する。
[ヒータ保持工程]
次に、主体金具40は、S45C等の鉄系素材を工具係合部46等が形成された筒状に成形し、雄ねじ部42にねじ山を転造する。この主体金具40の軸孔43内に中軸30を挿通させる。そして主体金具40の先端部41の内周を筒状体80の係合部83に係合させ、主体金具40と筒状体80をとレーザ溶接により接合する。なお、鉄系素材である主体金具40が錆びてしまうことを回避するために筒状体80と接合した後にめっきや塗装等の防錆処理を行ってもよい。
[チューブ挿入工程]
次に、絶縁性のシリコンを押し出し成形により円筒状に成形し、予め定められた寸法に切断することでチューブ200(図2参照)を得る。このチューブ200を、内周側に中軸30が挿通されるようにして主体金具40の軸孔43内に挿入し、主体金具40と中軸30との間隙に配置させる。図3にて前述したように、チューブ200の外径Cは主体金具40の軸孔43の内径Eより小さく、チューブ200の内径Dは中軸30の外径Fより大きいため、チューブ200が主体金具40や中軸30と密着することがなく、両者の間隙へ容易に挿入することができる。このとき、チューブ200の先端部201が筒状体80の後端面に当接すると、それより先端側には移動しないため、主体金具40と中軸30および接続リング35との間隙内にて、軸線O方向においてチューブ200が位置決めされる。なお、チューブ挿入工程が、本発明における「挿入工程」に相当する。
[チューブ圧縮工程]
その後、図4に示すように、中軸30の後端部32にOリング70,支持リング60およびピン端子50を係合する。図5に示すように、まず、Oリング70を中軸30の後端部32に係合し、軸線O方向後端側よりチューブ200の後端部202に当接させる。さらに中軸30の後端部32に支持リング60を係合し、その先端面62で軸線O方向先端側に向けてOリング70を押圧しつつ、軸孔43の拡径部45に嵌合させる(圧縮工程)。
このとき、チューブ200は、Oリング70を介し支持リング60の嵌合に伴う軸線O方向先端側への押圧力を受ける。一方、チューブ200の先端部201は筒状体80の後端面(図1参照)に当接されており、筒状体80の後端面とOリング70とによって挟まれたチューブ200は、軸線O方向に圧縮されて変形を生ずる。このチューブ200の変形は主体金具40と中軸30との間隙内で行われるため、変形に伴うチューブ200の径の膨れや縮みが規制される。このためチューブ200は、軸線O方向の何ヶ所にもわたって、主体金具40の軸孔43の内周面や中軸30の外周面に当接し、蛇腹状の変形を生ずることとなる。中軸30は主体金具40の軸孔43内でチューブ200により支持される形態となるため、中軸30が共振した際の振幅を効果的に制限することができる。
そして、中軸30の後端部32にピン端子50を嵌め(端子配置工程)、鍔部51で支持リング60を先端側に向けて押圧した状態で、胴部52の外周を加締める(加締め工程)。これにより、支持リング60およびOリング70を位置決めした状態でピン端子50が中軸30に固定され、グロープラグ100が完成する。
なお、本発明は各種の変形が可能である。例えば、Oリング70は軸孔43の段部47の位置に配置されたが、必ずしも軸孔43内に配置される必要はない。例えば円環状の板状に形成し、工具係合部46の後端面と中軸30の外周面とに当接しつつ軸孔43を閉蓋する形態とし、その際に、チューブ200の後端部202を軸線O方向に押圧する構成としてもよい。
また、チューブ200に折り目や溝などを形成し、チューブ200の圧縮に伴う変形が軸線O方向において均一に行われるようにしてもよい。同様に、チューブ200の成形時に、その形状が予め蛇腹状となるように形成してもよい。また、チューブ200を予め圧縮して塑性変形させた状態で、主体金具40と中軸30との間隙に配置させてもよい。このような構成の場合、チューブ200自身の変形によって、主体金具40や中軸30に対するチューブ200の接触面積が小さくなるため、挿入は容易である。
また、本実施の形態では、可撓性部材として絶縁性を有するシリコンからなるチューブ200を例に説明したが、共振した際の中軸の振幅を制限できればよいため、例えば絶縁性のゴムや軟質プラスチック等であってもグロープラグを使用する上で求められる耐熱性を有していればチューブを作製してもよい。本実施の形態ではOリング70を介し支持リング60によってチューブ200が圧縮された状態で維持されるので、弾性部材からチューブを形成してもチューブの変形は保たれ、同様の効果が得られる。また、中軸30が絶縁性の被覆等により被覆された状態であれば、導電性のチューブを用いてもよい。
なお、チューブ200の厚みや接続リング35の厚み、主体金具40と中軸30との間隙の大きさなどの設計寸法によっては、チューブ挿入工程において、チューブ200の先端部201の端面が接続リング35の後端側の端面に当接し、接続リング35の外周面と主体金具40の軸孔43の内周面との間隙にチューブ200を挿入できないことがある。あるいは、チューブ200の厚みにより、その先端部201が、主体金具40の軸孔43の内周面と、中軸30の外周面や接続リング35の外周面との間隙を通過中に引っかかってしまい、先端部201がその位置で停止してしまうことがある。しかし、チューブ圧縮工程において、その接続リング35の後端側の端面と、Oリング70との間で圧縮されて変形を生じたチューブ200が、本実施の形態と同様に、中軸30の外周面と主体金具40の軸孔43の内周面との双方に当接する形態となり、かつ、変形したチューブ200の後端部202の端面の位置が、Oリング70よりも軸線O方向先端側に位置すれば十分であり、チューブ200の先端部201と後端部202との双方共に押圧された状態で維持されなくともよい。
もっとも、チューブ200の先端部201の端面が接続リング35の後端側の端面と当接しないように設計することも可能であり、例えば図6に示すグロープラグ300のように、中軸330の先端部331に鍔部338を設け、チューブ400の挿入時に、その先端部401の端面が確実に鍔部338に当接し、チューブ400の挿入深さが制限されるようにしてもよい。
または、接続リング35の後端側の端面に面取り加工を施して、チューブ200の挿入時に、その先端部201が、主体金具40の軸孔43の内周面と、接続リング35の外周面との間に案内されるようにしてもよい。あるいは、中軸30の外径を接続リング35の外径と略同一に設計し、接続リング35に嵌入される部位の外径を接続リング35の内径に合わせて小径化することで、仮に、軸線O方向後端側から軸孔43を覗いたときに、接続リング35の後端側の端面が見えない構成とし、チューブ200の先端部201の端面と、接続リング35の後端側の端面との接触を防止してもよい。
また、グロープラグ100が備えるヒータ部材として本実施の形態ではセラミックヒータ20を備え、その製法を交えて説明したが、この製法に限定されることはなく、公知のいかなる製法により作製してもよい。さらに、ヒータ部材はセラミックヒータ20に限られず、先端部が半球状に閉塞した金属製のシースチューブ内にコイル状の発熱抵抗体や制御抵抗体を配したシーズヒータであってもよい。すなわち、本発明はヒータ部材の形状にとらわれるものではなく、ヒータの発熱の仕様も適宜設定すればよい。
本発明は、発熱機能のみを有するグロープラグだけでなく、温度センサや圧力センサ等を組み込んだグロープラグに対しても利用することができる。
グロープラグ100の縦断面図である。 チューブ200の斜視図である。 図2の一点鎖線P−Pにおいて矢視方向から見たチューブ200の断面図である。 グロープラグ100の製造過程の概略的な流れを示す図である。 図4のチューブ圧縮工程をより詳細に示すグロープラグ100の部分断面図である。 変形例としてのグロープラグ300の縦断面図である。
符号の説明
20 セラミックヒータ
27 発熱体
30 中軸
40 主体金具
43 軸孔
60 支持リング
100 グロープラグ
200 チューブ

Claims (4)

  1. 軸線方向に沿って延びる中軸と、
    通電によって発熱する発熱体を有するヒータ部材と、
    軸孔を有し、その軸孔内に前記中軸が挿通されるとともに、前記ヒータ部材の径方向を保持する主体金具と、
    前記中軸と前記軸孔との間隙に介在され、可撓性を有するチューブ状の可撓性部材と
    を備え、
    前記可撓性部材は前記間隙の大きさよりも厚みが小さく、前記軸線方向と平行な方向に圧縮された形態を有し、その圧縮に伴う変形によって前記中軸と前記軸孔とのそれぞれに接触した状態で、前記間隙に介在されていることを特徴とするグロープラグ。
  2. 前記軸孔の後端部にて前記中軸と前記軸孔との間隙に嵌着される絶縁部材であり、
    該絶縁部材の先端部が直接または他部材を介して前記可撓性部材を前記軸線方向と平行な方向に押圧し、当該可撓性部材の圧縮された状態を維持する絶縁部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載のグロープラグ。
  3. 前記絶縁部材のうち前記可撓性部材を押圧する部位の外径は、当該可撓性部材のうち前記絶縁部材に当接した部位の外径よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載のグロープラグ。
  4. 請求項2または3に記載のグロープラグを製造する方法であって、
    前記ヒータ部材が固定された前記中軸を前記主体金具の前記軸孔内に挿通するとともに、前記軸孔の先端側で前記ヒータ部材の径方向を保持するヒータ保持工程と、
    前記軸孔の後端側から、その軸孔内に、前記可撓性部材を挿入するとともに、前記可撓性部材の内周に前記中軸を挿通させる挿入工程と、
    前記軸孔の後端側に前記絶縁部材を配設するとともに、その絶縁部材で、前記軸線方向と平行な方向に前記可撓性部材を圧縮する圧縮工程と
    を備えたことを特徴とするグロープラグの製造方法。
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