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JP4462722B2 - 金属板表面被覆用ポリエステル積層体 - Google Patents

金属板表面被覆用ポリエステル積層体 Download PDF

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JP4462722B2
JP4462722B2 JP2000172909A JP2000172909A JP4462722B2 JP 4462722 B2 JP4462722 B2 JP 4462722B2 JP 2000172909 A JP2000172909 A JP 2000172909A JP 2000172909 A JP2000172909 A JP 2000172909A JP 4462722 B2 JP4462722 B2 JP 4462722B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐レトルト性、耐熱性、耐衝撃性、成形加工性、フレーバー性に優れ、成形加工によって製造される飲料用の金属缶に好適な金属板表面被覆用ポリエステル積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、金属缶の内面および外面のコーティングには、腐食や内容物への金属溶出防止の為、エポキシ系、フェノール系等の各種熱硬化性樹脂塗料を塗布する方法が一般的である。しかしながら、このような熱硬化性樹脂を塗布する方法は、熱硬化性樹脂塗料の乾燥に長時間を要し、また絞りしごき缶では多量の水による水洗工程を必要とするために生産性が低下したり、多量の有機溶剤の排燃による二酸化炭素排出等の問題がある。
【0003】
これらの問題を解決する方法として、鋼板、アルミニウム板、あるいはメッキ処理を施した金属板に、あらかじめ製造したポリエステルフィルムをラミネートし、その後で成形加工して金属缶を製造する方法が提案されている。例えば、特定の密度、面配向係数を有する共重合ポリエステルフィルム(特開昭64−22530号公報)、特定の結晶性を有する共重合ポリエステルフィルム(特開平2−57339号公報)等を金属缶に貼り合わせる方法が開示されている。しかしながら、これらの方法では単層のポリエステルフィルムを用いているため、フィルムを構成するポリエステル樹脂の融点以上の温度で金属板に熱接着した場合、製缶加工時の衝撃によりフィルム破れ(クラック)が発生する。また、融点以下の温度で熱接着させた場合は、製缶加工時の衝撃によるクラックの発生は抑えられるが、金属板との接着性が不十分でありフィルムの剥離が生じる。
【0004】
かかる問題点を解消するために、高融点のポリエステルよりなる基材層と低融点のポリエステルよりなる接着層の2層からなる複合フィルムを金属板と貼合わせる方法(特開平2−81630号公報、特開平7−1693号公報、特開平7−47650号公報、特開平9−150492号公報)が開示されている。これらの方法によれば、飲料缶としては耐腐食性については一応満足できる評価は得られているものの、未だフィルムの金属基体への密着性の一層の向上、高速製缶に対応できる加工性の一層の向上が求められている。更に充填する内容物の保存性の一層の向上のために、レトルト殺菌やその後の経時に耐える耐高温湿熱性の向上やレトルト殺菌後の耐衝撃性の向上、レトルト殺菌や衝撃を受けた後での耐食性の向上などが重要な技術課題となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点を解消し、耐レトルト性、耐熱性、耐衝撃性、成形加工性、フレーバー性に優れ、成形加工によって製造される飲料用の金属缶に好適な金属板表面被覆用ポリエステル積層体を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、エチレンテレフタレートを主体とするポリエステルよりなる基材層(I)と、エチレンテレフタレートを主体とするポリエステル(A)30〜90重量%、およびブチレンテレフタレートを主体とし構成単位として脂環族ダイマー酸および/または芳香族ダイマー酸成分を3〜8モル%含有する共重合ポリエステル(B)70〜10重量%とからなるポリエステル組成物からなる接着層(II)より構成されることを特徴とする金属板表面被覆用ポリエステルフィルムによって達成される。
【0007】
【発明の実施の形態】
[ポリエステル樹脂]
本発明において基材層に用いられるポリエステル樹脂は、テレフタル酸を主体とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主体とするジオール成分とからなる飽和ポリエステル樹脂であり、耐熱性の点から融点が220℃以上であることが好ましい。融点が220℃以上であると、製缶工程での印刷焼き付け時の加熱処理にも十分耐えられ、耐衝撃性にも優れるので好ましい。
【0008】
テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸の如き脂環族ジカルボン酸が例示できる。また、エチレングリコール以外のジオール成分としては、プロパンジオール、ブタンジオール等の脂肪族ジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリアルキレングリコール、ビスフェノールAまたはビスフェノールSのジエトキシ化合物等が例示できる。これらは単独又は二種以上を使用することができる。
【0009】
このうち、好ましいポリエステル樹脂としては、テレフタル酸とエチレングリコールからなるポリエチレンテレフタレート樹脂、およびこれに第三成分としてイソフタル酸を添加した共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂が好適に用いられ、安価で重合反応も進みやすいことから好ましい。イソフタル酸を第三成分として用いる場合、その共重合比率は前述の融点範囲を満足するために15モル%以下とすることが好ましい。
【0010】
また、ポリエステル樹脂の極限粘度(以下IVと記す)が0.6〜1.2dl/gの範囲にあることが、耐衝撃性に優れた被覆用ポリエステル積層体(フィルム)製膜性が得られるために好ましく、さらに0.7〜0.8dl/gが特に好ましい。IVが0.6未満となる場合は、フィルム製膜性が劣り、1.2を超える場合は製膜時のトルクが上昇し、スクリュー負荷が過大となる。
【0011】
[ポリエステル樹脂(A)]
本発明において接着層に用いられるポリエステル樹脂(A)は、テレフタル酸とエチレングリコールを主たる構成成分とするポリエステル樹脂であり、その融点が220℃以上のものであることが好ましい。融点が220℃以上であると、製缶工程での乾燥、印刷焼き付け時の加熱処理に耐えることができるので好ましい。
【0012】
本発明のポリエステル樹脂(A)は、ホモポリマーであっても良いが目的に応じて共重合成分を用いることも可能である。使用することのできる化合物として具体的には、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等のジカルボン酸及び、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリアルキレングリコール、ビスフェノールAまたはビスフェノールSのジエトキシ化合物等のジオール成分が挙げられる。
【0013】
このうち、好ましい共重合成分としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸成分が挙げられ、熱安定性、フレーバー性に優れるため好適に用いられる。特に、これらの芳香族ジカルボン酸成分のうちでもイソフタル酸が好適に用いられ、安価で重合反応も進みやすいことから好ましい。イソフタル酸を用いる場合、その共重合比率は前述の融点範囲を満足するために15モル%以下とすることが好ましい。
【0014】
[架橋剤]
更に本発明のポリエステル樹脂(A)には、金属板表面被覆用ポリエステル積層体(フィルム)の製膜性向上のために、その製造工程でエステル結合形成性官能基を1分子中に3個または4個有する多官能化合物(以下多官能化合物と記す)を添加することがより好ましい。多官能化合物とは、ポリエステル分子鎖中のカルボキシル基、水酸基と反応してエステル結合を形成する化合物であり、カルボキシル基、水酸基、メチルエステル基、エチルエステル基を有する化合物である。このような官能基を3個から4個含有する化合物を添加することによりポリエステル分子鎖中に架橋構造が形成され、フィルム製膜性が向上する。
【0015】
多官能化合物として具体的には、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸及びそれらの酸無水物、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多官能の酸及びアルコール等を挙げることができ、添加量はフィルム製膜性改善効果の点から考えてポリマー全量に対して0.1〜2.0モル%であることが好ましく、0.2〜0.5モル%であることがさらに好ましい。
【0016】
[共重合ポリエステル樹脂(B)]
本発明において接着層に用いられる共重合ポリエステル樹脂(B)は、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールを主たる構成成分とし、脂環族ダイマー酸および/または芳香族ダイマー酸を共重合成分として全酸成分に対して3〜8モル%含有するポリエステル樹脂である。脂環族ダイマー酸および/または芳香族ダイマー酸の共重合比率が3モル%未満であると金属板表面被覆用ポリエステル積層体(フィルム)が柔軟性に乏しいものとなるため良好な耐衝撃性や加工性が得られない。一方、8モル%を超えると耐熱性が不十分となり、フィルム製膜の際に樹脂が冷却ロールに粘着する等のトラブルが生じやすくなる。また、脂環族ダイマー酸および/または芳香族ダイマー酸成分を含む共重合ポリエステル樹脂(B)は耐加水分解性に優れており、耐レトルト性に優れた金属板被覆用ポリエステル積層体が得られる。
【0017】
本発明の脂環族ダイマー酸および/または芳香族ダイマー酸成分を含む共重合ポリエステル樹脂(B)はその融点が200℃以上220℃以下であることが好ましく、210℃以上220℃以下であることがより好ましい。融点がこの範囲にあれば、十分な耐熱性を有し製膜時のトラブル発生も少なくなり、ポリエステル積層体と金属板の接着性も良好になるので好ましい。
【0018】
本発明に用いる共重合ポリエステル樹脂(B)の共重合成分として用いられる脂環族ダイマー酸および/または芳香族ダイマー酸は、粘土触媒を用いて不飽和脂肪酸の低重合体から分離によってトリマー酸、モノマー酸等の副生成物を除去した後に得られる。このような方法により得られるダイマー酸には、(化1)、(化2)、(化3)、(化4)で表される脂環族ダイマー酸、(化5)で表される芳香族ダイマー酸以外に、(化6)、(化7)で表される脂肪族ダイマー酸も含まれているが、その含有率はダイマー酸全体の50モル%未満であることが好ましく、30モル%未満であることがより好ましい。脂肪族ダイマー酸の含有率が50モル%以上の場合、得られる金属板表面被覆用ポリエステル積層体の耐加水分解性が低下する。
【0019】
【化1】
Figure 0004462722
(ここで、R1、R2はアルキル基、R3、R4はアルキレン基であり、R1〜R4の炭素数の合計が24〜36の範囲にある。)
【0020】
【化2】
Figure 0004462722
(ここで、R1、R2はアルキル基、R3、R4はアルキレン基であり、R1〜R4の炭素数の合計が24〜36の範囲にある。)
【0021】
【化3】
Figure 0004462722
(ここで、R1、R2はアルキル基、R3、R4はアルキレン基であり、R1〜R4の炭素数の合計が24〜36の範囲にある。)
【0022】
【化4】
Figure 0004462722
(ここで、R1、R2はアルキル基、R3、R4はアルキレン基であり、R1〜R4の炭素数の合計が24〜36の範囲にある。)
【0023】
【化5】
Figure 0004462722
(ここで、R1、R2はアルキル基、R3、R4はアルキレン基であり、R1〜R4の炭素数の合計が24〜36の範囲にある。)
【0024】
【化6】
Figure 0004462722
(ここで、R1、R2はアルキル基、R3、R4はアルキレン基であり、R1〜R4の炭素数の合計が24〜36の範囲にある。)
【0025】
【化7】
Figure 0004462722
(ここで、R1、R2はアルキル基、R3はアルキレン基であり、R1〜R3の炭素数の合計が24〜36の範囲にある。)
【0026】
好ましい具体例としては、ユニケマ社製のPRIPOL1008(炭素数36で、芳香族タイプ/脂環族タイプ/脂肪族タイプ=9/54/37(モル%)の水添ダイマー酸)、PRIPOL1009(炭素数36で、芳香族タイプ/脂環族タイプ/脂肪族タイプ=13/64/23(モル%)の水添ダイマー酸)、PRIPOL1098(炭素数36で、芳香族タイプ/脂環族タイプ/脂肪族タイプ=13/64/23(モル%)の未水添ダイマー酸)、さらにエステル形成性誘導体としてユニケマ社製のPRIPLAST3008(PRIPOL1008のジメチルエステル)が挙げられる。
【0027】
[組成物]
本発明の接着層に用いられるポリエステル樹脂組成物は、エチレンテレフタレートを主体としたポリエステル樹脂(A)を30〜90重量%、好ましくは35〜70重量%、特に好ましくは40〜60重量%、およびブチレンテレフタレートを主体とし、脂環族ダイマー酸および/または芳香族ダイマー酸を構成成分として含む共重合ポリエステル樹脂(B)が70〜10重量%、好ましくは65〜30重量%、特に好ましくは60〜40重量%からなるポリエステル樹脂組成物である。ポリエステル樹脂(A)が30重量%未満の場合は耐熱性とフレーバー性が不十分であり、90重量%を超える場合は耐衝撃性と接着性が不足する。
【0028】
[添加剤]
また本発明の接着層に用いられるポリエステル樹脂組成物には、必要に応じて他のポリマーまたは各種添加剤を添加してもよい。例えば、易滑性を向上させる無機滑剤及び有機滑剤として、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、酸化ケイ素、テレフタル酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、フッ化リチウム等の公知の不活性外部粒子、ポリエステル樹脂よりも高融点の有機化合物、および架橋ポリマー、さらにアルカリ金属化合物触媒等のポリマー内部に形成される内部粒子等がある。また、その他の添加剤として酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、耐候剤なとが挙げられる。
【0029】
ここで、酸化防止剤は製缶工程での乾燥、印刷焼き付け等の加熱処理における樹脂組成物の熱劣化を防止し、耐衝撃性を維持するため添加することが望ましい。有用な酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の有機化合物が好ましく、かかる化合物の具体例としては(化8)が例示できる。酸化防止剤の添加量は、ポリエステル樹脂組成物に対して0.01〜0.5重量%である。添加量が0.01重量%未満の場合、樹脂組成物の熱劣化を防止する効果がなく、また0.5重量%を超える場合、効果は上がらずフィルムの白濁が激しくなる。酸化防止剤の添加時期は、ポリエステル樹脂組成物製造工程のいずれの段階でも構わないが、ポリエステル組成物中に均一に分散されるためには、ポリエステル樹脂(A)及び/またはポリエステル樹脂(B)の重合工程において添加することが好ましい。
【0030】
【化8】
Figure 0004462722
【0031】
[ポリエステル樹脂組成物の粘度]
本発明のポリエステル樹脂組成物は、混合物として測定した極限粘度(以下IVと記す)が、0.70〜1.2dl/gの範囲にあることが、優れた耐衝撃性と良好なフィルム製膜性が得られるために好ましく、更に0.8〜1.0dl/gが特に好ましい。IVが0.70未満となる場合は、フィルム製膜性が劣り、かつ耐衝撃性が劣る。IVが1.2を超える場合は、樹脂溶融押出機のトルクが上昇し、スクリューへの負荷が過大となる。
【0032】
[ポリエステル樹脂(A)、(B)の粘度]
また、上記混合物が前記範囲のIVを有するためには、ポリエステル樹脂(A)のIVは0.6〜1.0dl/g、更に好ましくは0.7〜0.85dl/g、ポリエステル樹脂(B)のIVは0.7〜2.0dl/g、更に好ましくは0.8〜1.2dl/gの範囲とすることが好ましい。一方の樹脂のみが極端に高IVであれば、混合物としてのバランスが崩れてフィルム製膜性の悪化につながるためである。
【0033】
[製造方法]
[ポリエステルの重合方法]
本発明で用いるポリエステルは、例えばテレフタル酸、エチレングリコール(または1,4−ブタンジオール)及び共重合成分をエステル化反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合させてポリエステルとする方法、あるいはジメチルテレフタレート、エチレングリコール(または1,4−ブタンジオール)及び共重合成分をエステル交換反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合させてポリエステルとする方法等を用いて重合することができる。
【0034】
[組成物の製造方法]
本発明の接着層に使用するポリエステル樹脂組成物の製造方法としては、従来公知の任意の方法を採用することができる。例えば、乾燥したポリエステル樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)のチップをタンブラー等で混合し、通常の一軸または二軸押出し機を用いて溶融混合する方法、2種類の樹脂をチップの状態で混合し、これを後述する溶融押出機に供給する方法等によって製造することができる。 尚、本発明の範囲内であれば、各々2種類以上のポリエステル樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)を用いて良いことは言うまでもない。
【0035】
[金属板表面被覆用ポリエステル積層体]
[金属板への被覆]
本発明の金属板表面被覆用ポリエステル積層体は、ポリエステル樹脂基材層(I)とポリエステル樹脂組成物接着層(II)とを積層した構造を有している。かかる積層構造の被覆積層体は、例えば各々の層を構成するポリエステル樹脂とポリエステル樹脂組成物を金属板上に直接溶融押出しラミネートする方法、各々の層を構成するポリエステル樹脂とポリエステル樹脂組成物を別々に溶融して、共押出し、固化前に積層融着させた積層フィルムを未延伸または延伸させた状態で金属板と貼り合わせる方法、または前記各層ポリエステル樹脂を別に溶融、押出してフィルム化し、未延伸または延伸させた状態で両者を積層融着させた後に金属板と貼り合わせる方法等により製造することが出来る。しかしながら、工程の簡略化が図れることから、金属板上に被覆積層体を直接溶融押出しラミネートする方法が好ましい。
【0036】
[被覆層厚み]
本発明の金属板被覆用ポリエステル積層体は、好ましくは厚みが5〜60μmである。特に10〜50μmであることが好ましい。
【0037】
接着層の厚みは金属板の表面粗度によって異なるが、通常の滑らかな表面の場合には、安定した接着力を得るために、5μm以上で十分である。特に耐レトルト性や防錆性等を重視すると、10μm以上が好ましい。従って基材層の厚みTAと接着層の厚みTBとの比(TA/TB)は0.2〜1.0程度が好ましく、特に好ましくは0.25〜0.7である。具体的には、例えば被覆層の厚みが25μmの場合、接着層の厚みを6.25〜17.5μmとすることが好ましい。
【0038】
[金属板]
本発明のポリエステル積層体が被覆される金属板には、一般的に金属缶に使用される公知の錫メッキ鋼板(ブリキ)、錫なし鋼板(電解クロム酸処理鋼板)、アルミニウムまたはアルミニウム合金板などを用いることができる。被覆材との接着性向上のために、極性基やキレート構造を有する有機物処理やリン酸塩およびクロム酸塩処理を施しても良い。
【0039】
[金属缶]
本発明のポリエステル積層体を被覆した金属板は、飲料用の金属缶に用いることができる。具体的には、接着ないし溶接により筒状とした缶胴に蓋と底をつけた3ピース缶、深絞り成形や絞りしごき成形によって得られる2ピース缶のいずれでも良いが、本発明のポリエステル積層体から得られるポリエステル積層体被覆金属板は、延展性や金属と被覆層の接着性が優れていることから特に2ピース缶に利用することが好ましい。
【0040】
このようにして得られた金属缶は、優れた接着性、耐熱性、耐衝撃性、成形加工性、フレーバー性を有するためコーヒー、紅茶、ジュース、ビール等の各種飲料用の缶として好ましく使用することができる。
【0041】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。各物性の測定及び評価は下記の方法に従った。
【0042】
(1)融点(Tm)
ポリエステル樹脂を結晶化させた後、示差走査熱量計(パーキン・エルマー社製DSC−7型)により、10℃/分の昇温速度で測定した。
【0043】
(2)極限粘度(IV)
ポリエステル樹脂または被覆用ポリエステル積層体をフエノール/テトラクロロエタン=60/40の混合溶液に溶かし、20℃にて測定した。
【0044】
(3)押出しラミネート性
基材層、接着層を構成するポリエステル樹脂を別々の押出し機に供給して溶融し、スリット厚み1mm、幅方向長さ300mmのT型ダイス内で2層化したポリエステル積層体を、予め予熱したアルミニウム板上に押出した後急冷することにより、厚さ30〜50μmのポリエステル積層体層を有する被覆金属板を生産する。同様にして両面被覆金属板を作成した。得られた被覆金属板におけるポリエステル積層体層部分の幅方向長さおよび耳部揺れの有無により評価した。
◎:幅方向長さ250mm以上、耳部の揺れなし
○:幅方向長さ250mm以上、耳部の揺れややあり
△:幅方向長さ250mm以上、耳部の揺れあり
×:幅方向長さ250mm未満
【0045】
(4)耐レトルト性
前述の被覆金属板を130℃で30分間レトルト後、90℃の水中で2週間放置した前後において被覆用ポリエステル積層体の粘度を測定し、下記式に示した粘度保持率から評価した。
粘度保持率(%)=(処理後粘度/処理前粘度)×100
◎:粘度保持率70%以上
○:粘度保持率60%以上、70%未満
△:粘度保持率50%以上、60%未満
×:粘度保持率50%未満
【0046】
(5)成形加工性
前述の被覆金属板を直径150mmの円板状に切り取り、絞りダイスとポンチを用いて4段階で深絞り加工し、直径60mm、深さ75mmのツーピース缶を製造した。加工後の缶の被覆材部分について亀裂や剥離等の欠陥を観察した。
○:亀裂や剥離等の欠陥が見られない
△:一部に気泡、シワによる剥離が見られる
×:一部に破断による亀裂が見られる
【0047】
(6)耐衝撃性(耐熱性)
成形が良好な缶について、220℃、6分間熱処理を行い室温まで冷却する。次いで胴部に高さ10cmから0.5kgの鋼球を落とした後、被覆割れによる金属露出を電流試験により行った。
◎:0.05mA未満
○:0.05以上0.1mA未満
△:0.1以上1mA未満
×:1mA以上
【0048】
(7)味特性
成形が良好な缶について、220℃、6分間熱処理を行い室温まで冷却する。次いでミネラルウオーターを10缶ずつ充填して密封し、レトルト殺菌後40℃、3ヶ月保持した。開封後、香り・味の変化を官能検査した。
○:香り・味の変化はなかった
△:香り・味が若干変化しているものが2〜3本あった
×:香り・味の変化が5本以上認められた
【0049】
実施例1〜14、比較例1〜8
ポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂(A))の製造方法
ステンレス製オートクレーブに、テレフタル酸ジメチルエステル及びイソフタル酸ジメチルエステルとエチレングリコールをジオール成分が酸成分に対してモル比2.0となる量を仕込み、次いでエステル交換触媒として酢酸カルシウムを添加して230℃にてエステル交換反応を行った。メタノールの留出が完了した後、重合触媒として三酸化アンチモンと熱安定剤としてトリメチルリン酸を加え、280℃減圧下で重縮合反応を行いポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂(A))を得た。
【0050】
ポリエステル樹脂(B)の製造方法
上記のポリステル樹脂(A)の場合と同様の装置を用い、脂環族ダイマー酸および/または芳香族ダイマー酸と1,4−ブタンジオールをジオール成分が酸成分に対してモル比1.4となる量を仕込み、次いでエステル交換触媒としてチタン原子換算値で35ppmのテトラブチルチタネートを添加して210℃にてエステル交換反応を行った。メタノールの留出が完了した後、先ほどと同量のテトラブチルチタネートを重合触媒として、245℃、減圧下で重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂(B)を得た。
【0051】
ポリエステル積層体被覆金属板製造
表1に示すポリエステル樹脂(A)と表2に示すポリエステル樹脂(B)、及び酸化防止剤としてチバガイギ社製イルガノックス1010を0.2重量%のブレンドよりなるポリエステル樹脂組成物が接着層に、表1に示すポリエステル樹脂が基材層となるように、それぞれを別々に乾燥して押出し機に供給して溶融し、スリット厚み1mm、幅方向長さ300mmのT型ダイス内で2層化した後、予め予熱したアルミニウム金属板上に押出し急冷することにより、表3および表4に示すポリエステル樹脂層厚さ25μmのポリエステル積層体を両面に被覆した金属板(基材層および接着層の厚みは、それぞれ10μm及び15μm)を製造した。こうして得られたポリエステル積層体被覆金属板を用いて、前述の評価を実施した。評価結果を表5、表6に示す。
【0052】
【表1】
Figure 0004462722
【0053】
【表2】
Figure 0004462722
【0054】
【表3】
Figure 0004462722
【0055】
【表4】
Figure 0004462722
【0056】
【表5】
Figure 0004462722
【0057】
【表6】
Figure 0004462722
【0058】
【発明の効果】
本発明に係わる金属板被覆用ポリエステル積層体は、金属板との接着性、金属缶への成形加工性に優れ、かかるポリエステル積層体を被覆したラミネート鋼板からなる金属缶は耐レトルト性、耐衝撃性、味特性に優れ、コーヒー、紅茶、ジュース、ビール等の各種飲料用途に使用するのに好適である。

Claims (2)

  1. エチレンテレフタレートを主体とするポリエステル樹脂よりなる基材層(I)と、エチレンテレフタレートを主体とするポリエステル樹脂(A)30〜90重量%、およびブチレンテレフタレートを主体とし構成単位として脂環族ダイマー酸および/または芳香族ダイマー酸成分を3〜8モル%含有する共重合ポリエステル樹脂(B)70〜10重量%とを配合したポリエステル樹脂組成物からなる接着層(II)より構成されることを特徴とする金属板表面被覆用ポリエステル積層体。
  2. ポリエステル樹脂(A)が、エステル結合形成性官能基を3または4個有する化合物を0.1〜2.0モル%含有し、エチレンテレフタレートを主体とするポリエステル樹脂である請求項1に記載の金属板表面被覆用ポリエステル積層体。
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