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JP4456285B2 - 燃料噴射弁駆動装置 - Google Patents

燃料噴射弁駆動装置 Download PDF

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JP4456285B2
JP4456285B2 JP2001028866A JP2001028866A JP4456285B2 JP 4456285 B2 JP4456285 B2 JP 4456285B2 JP 2001028866 A JP2001028866 A JP 2001028866A JP 2001028866 A JP2001028866 A JP 2001028866A JP 4456285 B2 JP4456285 B2 JP 4456285B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、燃料噴射弁駆動装置に関し、より具体的には、燃料噴射弁における断線および短絡を検知する燃料噴射弁駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、内燃機関の燃料噴射弁駆動装置においては、電磁アクチュエータによる動弁機構が採用されている。電磁アクチュエータは、ばねによって閉弁方向に付勢されるニードル(弁)と、ニードルが近接して配設されるソレノイド型の電磁石を備える。ニードルには、ばねによって付勢された可動部材が連結されており、電磁石に電力を供給すると可動部材が電磁石に吸引され、ニードルが開く。電磁石への電力供給を停止すると、ばねの力で可動部材が電磁石から離れる方向に移動し、ニードルが閉じる。
【0003】
このような燃料噴射弁駆動装置において、電磁石のコイルおよび該コイルへの配線における断線および短絡を検出する方法が提案されている。たとえば、特開昭64−64523号公報には、電気負荷駆動素子に流れる電流の一部を検出する電流センス回路を設け、該センス回路に流れる電流と所定値とを比較し、センス回路を流れる電流が所定値を超えた場合、電気負荷の短絡による過電流と判定する方法が開示されている。
【0004】
また、特開平9−112735号公報には、燃料噴射弁の電磁石のコイルに通電するためのトランジスタをオンにする直前のコンデンサの両端の電圧を監視し、該両端の電圧が所定値以上でなければ、電磁石のコイルの何らかの電流経路が短絡したと判定し、該両端の電圧が所定値以下でなければ、電磁石のコイルの何らかの電流経路が断線したと判定する方法が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の特開昭64−64523号公報に開示された方法によると、新たにセンス回路を設ける必要があるので配線の本数が多くなり、また検出することのできる異常が過電流に限られる。また、上記の特開平9−112735号公報に開示された方法によると、回路内部で他の原因による電圧降下の異常が生じた場合にも異常と判定されるので、この異常が燃料噴射弁における断線および短絡に起因するものかどうかを判断することができない。さらに、この方法によると、各気筒の燃料噴射弁について異常判定のためのコンデンサが共用で使用されるので、異常と判定された場合、実際に異常が発生した気筒以外のすべての気筒も動作できなくなる。
【0006】
一方、近年、筒内直接噴射式のガソリン内燃機関が提案されている。直接噴射式の内燃機関においては、燃料噴射弁が燃焼室の中央頂部に設けられており、昇圧された燃料がこの燃料噴射弁から直接燃焼室内に噴射される。燃料噴射弁が高圧の燃料で押されているので、燃料噴射弁を開弁するときは、たとえば150Vの電圧にチャージしたコンデンサのエネルギーを燃料噴射弁に印加する。そのため、燃料噴射弁において短絡が発生している場合、燃料噴射弁の電磁石のコイルに流れる駆動電流の立ち上がりが非常に早く、燃料噴射弁における電磁石のコイル(駆動素子)を破壊するおそれがある。そのため、駆動電流がコイルの許容する最大電流に達する前に過電流を検出する必要がある。
【0007】
したがって、燃料噴射弁における短絡による過電流だけでなく、燃料噴射弁における断線をも同時に検出することができ、かつ異常と判定された場合でも自走することができる燃料噴射弁駆動装置が必要とされている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、請求項1の燃料噴射弁駆動装置は、電磁石を有し、該電磁石に通電することにより開弁する燃料噴射弁と、電源電圧を昇圧させて前記電磁石に通電することにより前記燃料噴射弁を開弁させる励磁電流を供給する第1制御手段と、前記第1制御手段による開弁動作後に前記燃料噴射弁を開弁保持するための目標電流を供給する第2制御手段と、前記電磁石に直列に設けられ、前記第1制御手段により前記電磁石を開弁制御される期間であって、通電を開始してから所定時間経過後該電磁石に流れる電流の立ち上がりにおける値を検出する電流検出手段と、該電流検出手段によって検出された電流が予め決められた第1のしきい値を超えたならば、前記燃料噴射弁における電流経路に短絡が発生していると判定し、前記電流検出手段によって検出された電流が予め決められた第2のしきい値を下回ったならば、前記燃料噴射弁における電流経路に断線が発生していると判定する異常判定手段と、を備えるという構成をとる。
【0009】
請求項1の発明によると、燃料噴射弁の電磁石に流れる電流に基づいて燃料噴射弁における断線および短絡を判定するので、燃料噴射弁における断線および短絡の両方を同時に判定することができる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明の燃料噴射弁駆動装置において、電流検出手段は、前記電磁石に直列に接続された抵抗であるという構成をとる。
【0011】
請求項2の発明によると、電磁石に直列に接続された抵抗に流れる電流を検出することにより燃料噴射弁における異常を判定するので、負荷に流れる電流を直接監視することにより異常判定の精度を高めることができ、また少ない部品点数で異常を判定することができる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1の発明の燃料噴射弁駆動装置において、前記燃料噴射弁を複数有するとともに、前記異常判定手段によって異常と判定されたならば、前記電磁石への通電を停止することにより、異常が発生した燃料噴射弁に対応する気筒のみ前記燃料噴射弁の動作を不能とする通電停止手段を備えるという構成をとる。
【0013】
請求項3の発明によると、異常と判定されたならば該異常と判定された燃料噴射弁の電磁石への通電が停止されるので、異常判定された燃料噴射弁だけを動作停止状態にすることができ、よって異常判定がされた場合でも自走することができる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1の発明の燃料噴射弁駆動装置において、第1のしきい値および第2のしきい値は、それぞれの燃料噴射弁の特性に適合するよう設定されるという構成をとる。
【0015】
請求項4の発明によると、それぞれの燃料噴射弁に適合するようしきい値が設定されるので、それぞれの燃料噴射弁についての異常判定の精度を高めることができる。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1の発明の燃料噴射弁駆動装置において、電流検出手段によって検出された電流が予め決められた第1のおよび第2のしきい値と比較されるタイミングは、それぞれの燃料噴射弁の特性に適合するよう設定されるという構成をとる。
【0017】
請求項5の発明によると、それぞれの燃料噴射弁に適合するよう比較タイミングが設定されるので、それぞれの燃料噴射弁についての異常判定の精度を高めることができる。
【0018】
請求項6の発明は、請求項1の発明の燃料噴射弁駆動装置において、燃料噴射弁は、筒内直接噴射式の内燃機関に搭載されるという構成をとる。
【0019】
請求項6の発明によると、筒内直接噴射式の内燃機関の燃料噴射弁における異常を判定することができるので、燃料噴射弁において短絡が発生した場合でも電磁石のコイルを破壊することなく、該燃料噴射弁を動作停止状態にすることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1は、内燃機関に設けられる燃料噴射弁1を示す。燃料噴射弁1は、ほぼ円筒形状をしたハウジング2、および該ハウジング2の先端部にカシメ等により連結された円筒形状の接続部3を備える。接続部3は、その先端に、内燃機関の燃焼室に臨んで該燃焼室内に燃料を噴射する噴射口4を備え、その内部には、該噴射口4を開閉する弁体5が収納されている。図において参照番号6は開弁時に燃料に渦流を形成する渦流形成部材であり、参照番号7は、遮熱性を有する環状のシール部材である。
【0021】
ハウジング2の内部には、電磁石アクチュエータ8が設けられている。電磁石アクチュエータ8は、円筒状のボビン9に巻回支持されたコイル10と、該コイル10に挿入するよう設けられた円筒形状のコア11とからなる電磁石12を備える。また、電磁石アクチュエータ8は、電磁石12のコア11の端面13に吸引される磁性材または軟磁性材から成る可動部材14を備える。
【0022】
可動部材14は、ロッド15を介して弁体5に連結されており、コア11に内蔵されたスプリング16によつてコア11から離れる方向に付勢されている。ロッド15は、ハウジング2と接続部3との間に設けられた隔壁17を貫通して軸方向に運動可能なように設けられている。また、ロッド15には、隔壁17への当接によりロッド15の移動を規制する規制部材19が設けられている。
【0023】
コア11から連続して後方に延びる延設部20の後端には、フィルタ21を有する燃料供給部22が設けられる。燃料供給部22から圧縮されて送り込まれた燃料は、コア11に内挿された燃料導通路23および可動部材14の内壁とロッド15との隙間を経てハウジング2の先端部に充満する。このとき、充満した高圧燃料の外部への漏れを防止するため、コア11とボビン9との間、ボビン9とハウジング2の内壁との間にシール部材24および25が設けられる。また、図において参照番号26によって示されるのは、コイル10に導体27を介して電力を供給する給電コネクタである。給電コネクタ26には、電力供給手段(図示せず)が接続される。
【0024】
コア11は、可動部材14の外径よりも大きい外径を持つ磁路形成部28を備え、これにより、可動部材14を吸引する際の磁束を十分に形成することができる。さらに、コア11の端面13には、磁路形成部28から先端に向かって次第に径が小さくなっていくテーパ面29と、該テーパ面29の先端縁であって可動部材14の当接面30に対応する吸着面31が形成されている。吸着面31は、可動部材14の当接面と同様にコア11の軸線に直交する線を基準とするテーパ角θが40°〜60°ぐらいに設定されるのが好ましい。
【0025】
燃料噴射弁1における電磁石アクチュエータ8の動作を簡単に説明する。給電コネクタ26を介してコイル10に電力が供給される。この電力供給状態では、可動部材14の当接面30がコア11の吸着面31に吸着され、弁体5がシート面から離れて噴射口4から燃料が噴射される。
【0026】
給電コネクタ26からのコイル10への電力供給が停止されると、スプリング16の付勢によって可動部材14がコア11から離れる方向に移動する。これに伴い、ロッド15の先端に設けられた弁体が燃料噴射口4を閉じる。こうして、噴射口4からの燃料噴射が停止される。
【0027】
その後、給電コネクタ26を介してコイルに電力を供給すると、電磁石12の吸引動作によって可動部材14がコア11に向かって移動し、可動部材14の当接面30がコア11の吸着面31に吸着される。このとき、可動部材14の移動に伴って、ロッド15を介して弁体5が噴射口4から離れ、噴射口4から燃料室内に接続部3内の燃料が高圧状態で噴射される。
【0028】
図2は、この発明の一実施例に従う筒内直接噴射方式の内燃機関に適用される燃料噴射弁駆動回路を概略的に示す図である。この駆動回路は、それぞれの燃料噴射弁ごとに設けられる。
【0029】
高電圧制御回路31は、車載の12ボルトの電源電圧をたとえば150Vに昇圧させる回路である。高電圧制御回路31によって昇圧された電圧は、コンデンサC1に蓄えられる。
【0030】
タイミング回路32は、エンジンの運転を制御するエンジンECU(電子制御装置)からの制御信号に基づいて燃料噴射弁駆動回路の各部の動作を制御する回路である。駆動制御回路33は、タイミング回路32を介してECUから受け取った制御信号に従って、高電圧制御回路31に対して制御を行い、また燃料噴射弁に備えられた電磁石35への通電を制御する。タイミング回路32および駆動制御回路33は、エンジンECUの一部であってもよく、または別個に設けられても良い。
【0031】
電磁石35は、駆動制御回路33からの制御信号に基づき、励磁または非励磁状態にされる。前述したように、電磁石35は、励磁されるとニードルを吸引し、燃料を噴射する。一方、電磁石35は、非励磁されるとニードルの吸引動作を停止し、燃料噴射を停止する。
【0032】
駆動制御回路33に接続されたハイサイドスイッチSW1は、車載バッテリ電圧12Vから供給される電力をスイッチング制御して、電磁石35に流れる電流を予め決められた目標保持電流になるよう制御する。ここで、目標保持電流とは、燃料噴射弁を開弁状態に保持するために電磁石35に通電する電流である。同じく駆動制御回路33に接続されたハイサイドスイッチSW2は、コンデンサC1に蓄えられた電気エネルギーを励磁電流として電磁石35に通電させるスイッチである。
【0033】
さらに、駆動制御回路33に接続されたロウサイドスイッチSW3は、電磁石35に通電するときにオン状態になるスイッチであり、電磁石35に流れた電流を放電するよう動作する。これらのスイッチSW1〜SW3は、タイミング回路32からの制御信号に従って駆動制御回路33によってオン/オフ制御される。
【0034】
ロウサイドスイッチSW3と接地との間には抵抗Rが接続されており、抵抗Rに流れる電流を検出することにより、電磁石35に流れる電流値を検出することができる。
【0035】
異常判定部37は、燃料噴射弁を開弁するために電磁石への通電を開始してから所定時間経過後の電流を抵抗Rによって検出し、これを予め決められたしきい値と比較して、燃料噴射弁における短絡および断線を判定する。具体的には、検出された電流が第1のしきい値を超えたならば燃料噴射弁において短絡が発生していると判定し、検出された電流が第2のしきい値を下回ったならば燃料噴射弁において断線が発生していると判定する。図3の(a)に、燃料噴射弁の電磁石35のコイルが短絡した例を、図3の(b)に、燃料噴射弁の電磁石35のコイルが断線した例を、それぞれ模式的に示す。
【0036】
燃料噴射弁によって駆動電流の立ち上がりにばらつきがあるので、第1および第2のしきい値は、それぞれの燃料噴射弁の個別の特性を考慮して設定されるのが好ましい。たとえば、燃料噴射弁ごとに駆動電流の立ち上がり方を予めモニターし、正常な駆動電流の立ち上がりのばらつきの範囲を求める。第1および第2のしきい値は、この正常な駆動電流のばらつきの範囲内に入らないよう設定される。
【0037】
または、駆動電流としきい値電流とを比較するタイミングを、燃料噴射弁の特性を考慮して設定するようにしてもよい。たとえば、比較的駆動電流の立ち上がりが遅い燃料噴射弁については比較タイミングを遅めに設定し、比較的駆動電流の立ち上がりが速い燃料噴射弁については比較タイミングを早めに設定する。
【0038】
異常判定部37は、短絡または断線と判定した場合、これらの異常が発生したことを示す制御信号を駆動制御回路33に出力する。駆動制御回路33はこれに応答して、電磁石35への通電を停止する。たとえば、駆動制御回路33は、異常判定を受け取ると同時にハイサイドスイッチSW2またはロウサイドスイッチSW3をオフ状態にする。または、短絡と判定した場合のみ、スイッチSW2またはSW3をオフ状態にするようにしてもよい。こうすることにより、電磁石に過電流が流れて駆動素子を破壊するのを回避することができる。
【0039】
図2に示される燃料噴射弁駆動回路の一部、たとえば高電圧制御回路31、駆動制御回路33、タイミング回路32などを、それぞれの燃料噴射弁について共用するよう設計することができる。異常判定部37も、それぞれの燃料噴射弁について共用することができるが、その場合でも、異常判定はそれぞれの燃料噴射弁について個別に実行される。また、スイッチSW1〜SW3は、それぞれの燃料噴射弁について個別に動作するよう設計され、抵抗Rは、それぞれの燃料噴射弁について個別に設けられる。
【0040】
このように、個別に異常判定が実行され、異常と判定された場合には、それぞれの燃料噴射弁について個別に動作するよう設計されたスイッチSW2およびSW3を動作させることにより、異常が発生した燃料噴射弁に対応する気筒のみが動作不能となる。他の気筒はそのまま動作を継続することができるので、自走可能な状態を維持することができる。
【0041】
他の実施例では、異常判定部37は、燃料噴射弁を開弁する際に、自動車の運転状態を考慮に入れて予め設定されたしきい値マップ(図示せず)を参照することにより、第1および第2のしきい値を決定する。たとえば、しきい値マップは、エンジン回転数Ne、吸気管圧力Pb、第1のしきい値および第2のしきい値の対応関係を示すマップである。
【0042】
さらに他の実施例では、異常判定部37は、燃料噴射弁を開弁する際に、自動車の運転状態を考慮に入れて予め設定されたタイミングマップ(図示せず)を参照することにより、第1および第2のしきい値と駆動電流とを比較するタイミングを決定する。たとえば、このタイミングマップは、エンジン回転数Ne、吸気管圧力Pb、比較タイミングの対応関係を示すマップである。
【0043】
図4は、駆動信号、スイッチSW1〜SW3のオン/オフ状態および電磁石35に流れる駆動電流の時間波形を示す。図3および図4を参照して、燃料噴射弁の開弁動作について説明する。図4に示される駆動電流波形50は、電磁石35に流れる電流の大きさを示している。
【0044】
タイミング回路32から駆動信号を受け取った駆動制御回路33は、それに応答して、高電圧制御回路31に対して昇圧停止の制御信号を出力する。この昇圧停止制御信号は、保持動作に移行する時刻t2まで出力される。昇圧停止信号が出力されたとき、コンデンサC1には、高電圧制御回路31によって高電圧がすでに蓄えられている。
【0045】
駆動制御回路33は、また、駆動信号を受け取ると同時に、ハイサイドスイッチSW2およびロウサイドスイッチSW3をオン状態にする(時間t1)。これにより、コンデンサC1に蓄えられた電気エネルギーは、励磁電流としてハイサイドスイッチSW2を通って電磁石35およびロウサイドスイッチSW3へと流れる。電磁石35が通電されると、前述したように可動部材の吸引動作が実行され、これによって燃料噴射弁は開弁し、燃料を噴射する。
【0046】
時刻t2において、燃料噴射弁の開弁状態を保持する保持動作に移行するため、ハイサイドスイッチSW2をオフ状態にし、ハイサイドスイッチSW1のオン/オフのスイッチング制御を開始する。これにより、電磁石35に流れる保持電流(これは、抵抗Rによって検出される)が、予め決められた目標保持電流になるようフィードバック制御される。
【0047】
時刻t3において、タイミング回路32からの駆動信号がオフにされると(デアサートされると)、駆動制御回路33はそれに応答して、ハイサイドスイッチSW1およびロウサイドスイッチSW3をオフ状態にする。こうして、燃料噴射弁は閉弁され、燃料噴射が停止される。
【0048】
便宜上、時刻t1〜t2の高電圧による電磁石の励磁動作を初期過励磁動作と呼び、時刻t2〜t3の燃料噴射弁を開弁状態に保持するため電磁石に保持電流を通電する動作を保持動作と呼ぶ。
【0049】
図5は、図4の時刻t1〜t2において実行される初期過励磁動作における電磁石に流れる電流の時間波形50を拡大した図である。破線51は、燃料噴射弁において短絡が発生している場合の駆動電流の時間波形を示し、破線52は、燃料噴射弁において断線が発生している場合の駆動電流の時間波形を示す。短絡が発生している場合は、前述したように駆動電流が急激に立ち上がる。一方、断線している場合は、電磁石35に駆動電流は流れない。したがって電磁石35への駆動電流の通電を開始してから所定時間経過後に、該駆動電流が、第1および第2のしきい値の範囲内に収まっていれば、短絡も断線も発生していないと判断することができる。
【0050】
したがって、電磁石35への通電開始から所定時間Tが経過した後の駆動電流を監視し、該駆動電流が、予め決められた第1のしきい値を超えたならば、燃料噴射弁において短絡が生じていると判定し、予め決められた第2のしきい値を下回ったならば、燃料噴射弁において断線が生じていると判定する。第1および第2のしきい値は、燃料噴射弁の個別のばらつきを考慮して設定されるのが好ましい。
【0051】
図6は、異常判定部37によって実行される、燃料噴射弁における短絡/断線を判定するフローチャートである。ステップ101において、電磁石への駆動電流の通電開始と共に起動されたタイマがゼロに達したかどうか判断する。このタイマは、所定時間T(図5)が設定されたダウンタイマである。タイマがゼロに達していなければ、まだ所定時間Tが経過していないことを示すので、そのままこのルーチンを抜ける。タイマがゼロに達したならば、所定時間が経過したことを示すので、ステップ102に進む。
【0052】
ステップ102において、抵抗Rにより、電磁石に流れる駆動電流Iを検出する。ステップ103において、駆動電流Iと第1のしきい値とを比較し、前者が後者より大きければ、短絡と判定する(ステップ104)。一方、駆動電流Iが第1のしきい値以下ならばステップ105に進み、駆動電流Iと第2のしきい値とを比較する。前者が後者より小さければ、断線と判定する(106)。駆動電流Iが、第1のしきい値以下で、かつ第2のしきい値以上ならば、正常な駆動電流値なので、そのままこのルーチンを抜ける。
【0053】
上記の実施例は、筒内直接噴射方式の内燃機関に適用される燃料噴射弁駆動装置について説明したきたが、この燃料噴射弁における短絡および断線を判定する手法は、他の内燃機関における燃料噴射弁にも適用することができる。また、燃料噴射弁だけでなく、吸排気弁のような他の電磁アクチュエータにおける短絡および断線を判定するのに適用することもできる。
【0054】
【発明の効果】
この発明によると、燃料噴射弁における断線および短絡を判定することができ。さらにこの発明によると、異常と判定された場合でも自走することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例における燃料噴射弁の機械的構造を示す図。
【図2】この発明の一実施例における、燃料噴射弁駆動回路の全体的なブロック図。
【図3】この発明の一実施例における燃料噴射弁における短絡および断線を模式的に示す図。
【図4】この発明の一実施例における、燃料噴射弁を開弁するときの各信号の時間波形を示す図。
【図5】この発明の一実施例における、燃料噴射弁を開弁するときの、正常時、短絡時、および断線時の駆動電流の立ち上がりを示す。
【図6】この発明の一実施例における、燃料噴射弁における短絡および断線を判定するフローチャート。
【符号の説明】
31 高電圧制御回路
32 タイミング回路
33 駆動制御回路
35 電磁石
37 異常判定部

Claims (6)

  1. 電磁石を有し、該電磁石に通電することにより開弁する燃料噴射弁と、
    電源電圧を昇圧させて前記電磁石に通電することにより前記燃料噴射弁を開弁させる励磁電流を供給する第1制御手段と、
    前記第1制御手段による開弁動作後に前記燃料噴射弁を開弁保持するための目標電流を供給する第2制御手段と、
    前記電磁石に直列に設けられ、前記第1制御手段により前記電磁石を開弁制御される期間であって、通電を開始してから所定時間経過後該電磁石に流れる電流の立ち上がりにおける値を検出する電流検出手段と、
    前記電流検出手段によって検出された電流が予め決められた第1のしきい値を超えたならば、前記燃料噴射弁における電流経路に短絡が発生していると判定し、前記電流検出手段によって検出された電流が予め決められた第2のしきい値を下回ったならば、前記燃料噴射弁における電流経路に断線が発生していると判定する異常判定手段と、
    を備える燃料噴射弁駆動装置。
  2. 前記電流検出手段は、前記電磁石に直列に接続された抵抗である請求項1に記載の燃料噴射弁駆動装置。
  3. 前記燃料噴射弁を複数有するとともに、前記異常判定手段によって異常と判定されたならば、前記電磁石への通電を停止することにより、異常が発生した燃料噴射弁に対応する気筒のみ前記燃料噴射弁の動作を不能とする通電停止手段を備える請求項1に記載の燃料噴射弁駆動装置。
  4. 前記第1のしきい値および第2のしきい値は、それぞれの燃料噴射弁の特性に適合するよう設定される請求項2に記載の燃料噴射弁駆動装置。
  5. 記電流検出手段によって検出された電流が予め決められた第1のおよび第2のしきい値と比較されるタイミングは、それぞれの燃料噴射弁の特性に適合するよう設定される請求項1に記載の燃料噴射弁駆動装置。
  6. 前記燃料噴射弁は、筒内直接噴射式の内燃機関に搭載される請求項1に記載の燃料噴射弁駆動装置。
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