以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のトナーは、少なくともモノアゾ系着色剤及び該モノアゾ系着色剤に対して0.1〜20質量%のロジン化合物を含有する顔料組成物と、結着樹脂と、ワックスとを少なくとも含有するトナーであって、23℃において、上記トナーをn−ヘキサン中に15mg/cm3の濃度で分散させ、該トナー中のワックスを1分間抽出して得られる抽出液中のワックス濃度が、0.080〜0.500mg/cm3の範囲であることを特徴とする。上記ワックス濃度がこの範囲にあるトナーとすることで、優れた低温定着性や耐高温オフセット性を発現することができる。
本発明のトナーは、ワックスがトナー中で微細化、均一化されるように、即ちワックスの少なくとも一部を、トナーの結着樹脂中において分子レベルで均一に分散させた状態となるように製造されたものである。
本発明者らは、トナー中のワックスを均一に微分散させるために、結着樹脂の種類、組成及び製造条件;ワックスの種類、融点及び添加量;並びにその他のトナー原材料の種類、添加量、トナーの製造条件等について種々の検討を行い、得られたトナーの定着性について検討を行った結果、ワックスをトナー中に微分散するほど低温定着性と耐高温オフセット性が良好となることを見出した。また同時に、特定の手法を用いて、トナー中においてワックスの更なる微細化と均一化を行い、結着樹脂中でワックスの少なくとも一部を分子レベルで均一に分散させた状態とすることにより、例えば、厚紙を転写材として出力したフルカラー画像を折り曲げても、定着画像の剥離による画像欠陥が生じにくく、美しい画像が転写材に保持されるという、従来にない優れた低温定着性が発現されることを見出した。
また、トナー中でのワックスの分散度合いと、トナーをn−ヘキサンに分散したときの、トナーからn−ヘキサンへのワックスの溶出速度との間には相関があり、トナー中にワックスが高度に分散しトナー中に存在するワックス粒子やワックスドメインの存在量が減少するほど、n−ヘキサンへのトナーからのワックスの溶出速度が速くなるということも、本発明者らは見出した。そして、ワックスの分散度合いを簡便且つ再現性良く定量化する手段について検討を行った結果、23℃においてトナーをn−ヘキサン中に15mg/cm3の濃度で分散させ、該トナー中のワックスを1分間抽出して得られる抽出液中のワックス濃度をガスクロマトグラフ法により定量するという方法を用いることで、トナー中におけるワックスの分散度合いを簡便且つ再現性良く判定できることを見出した。
種々のトナーについて、23℃において、トナーをn−ヘキサン中に15mg/cm3の濃度で分散させ、1分間の抽出を行って得られる抽出液中のワックス濃度の測定と、トナーの定着性についての検討を行った結果、抽出液のワックス濃度が0.080mg/cm3以上、好ましくは0.120mg/cm3以上、となるトナーにすることで、ワックスの少なくとも一部が分子レベルで結着樹脂中に均一に分散された状態となり、トナー中に存在するワックス粒子やワックスドメインの存在量が減少することが分かった。このことにより、定着時にトナー内部からも速やかにワックスが染み出し、ワックスの添加効果が最大限に発現され、前述したように、厚紙を転写材として出力したフルカラー画像を折り曲げても、定着画像の剥離による画像欠陥が生じにくく、美しい画像が転写材に保持されるという、従来にない優れた低温定着性が発現されることを見出した。
一方で、前記抽出液中のワックス濃度が高いほど定着性が向上する傾向があるものの、トナー中のワックス含有量を大幅に増やし、ワックス濃度が0.500mg/cm3を超えるトナーとした場合には、例えば高温高湿環境下にトナーを放置したときに、分子レベルで結着樹脂中に均一に分散していたワックスが凝集を起こしてワックス分散の急激な悪化を生じやすく、優れた定着性が発現しない場合がある。従って、環境変動によらず長期にわたって優れた定着性を発現させるためには、上記抽出液中のワックス濃度は0.500mg/cm3以下となるトナーにすることが必須であり、好ましくは上記抽出液中のワックス濃度が0.400mg/cm3以下、となるトナーにすることで、再現性良く優れた定着性を発現することができる。
以上の理由から、本発明のトナーは、23℃において、トナーをn−ヘキサン中に15mg/cm3の濃度で分散させ、該トナー中のワックスを1分間抽出して得られる抽出液中のワックス濃度が0.080〜0.500mg/cm3の範囲にあることが必須であり、好ましくは0.120〜0.400mg/cm3、の範囲であるものがよい。
なお、ワックスの少なくとも一部が分子レベルで結着樹脂中に均一に分散された状態となることで、n−ヘキサンへのワックスの溶出速度が速くなる理由については必ずしも定かではないが、本発明者等は以下のように推定している。
結着樹脂に比較して極性が低く、融点が低いワックスは、非極性溶媒であるn−ヘキサンに対する飽和溶解度が常温で数質量%と比較的高いものの、その溶解速度は非常に遅く、数時間をかけて膨潤した後に、徐々に均一に溶解していく。その溶解速度はワックスの粒子径に強く依存しており、粒子径が小さいほど、その溶解速度は加速度的に上昇していく。従って、トナー中に存在するワックスについても同様のことが予想される。即ち、トナー中におけるワックスの分散粒子径が小さいほどn−ヘキサンへの溶出速度が上昇すると考えられ、その究極の状態が分子レベルでのワックスの均一分散といえる。また、トナーにワックスを微分散させると、本来n−ヘキサンとは相互作用のほとんどない結着樹脂であっても、分子レベルで均一に分散したワックスの影響で、n−ヘキサンと結着樹脂との馴染み性が良好となる。以上のような理由から、ワックスの少なくとも一部を分子レベルで結着樹脂中に均一に分散させた状態とした本発明のトナーは、n−ヘキサンに分散したときに、トナー内部からも極めて速やかにワックスの溶出が見られるようになったものと考えられる。
前述したように、結着樹脂へのワックスの分散性を改良したトナーがいくつか知られている。しかし、本発明の特徴である、23℃において、トナーをn−ヘキサン中に15mg/cm3の濃度で分散させ、該トナー中のワックスを1分間抽出して得られる抽出液中のワックス濃度を特定の範囲に調整したトナーについては知られておらず、これらの従来知られているワックスを含有するトナーについて本発明と同様の検討を行ったところ、上記抽出液中のワックス濃度はいずれも0.080mg/cm3未満であった。また、そのトナーの定着性能を評価したところ、低温定着性、耐高温オフセット性に改善の余地があることが明らかとなった。
例えば、前述した特開平11−352720号公報(特許文献1)に記載されている、ビニル系モノマー、酸及びアルコール成分、並びにワックスからなる混合物から合成してなるハイブリッド樹脂をトナー原材料として用いた場合、溶融混練を行った際に樹脂中に分散していたワックス粒子の再凝集が生じやすく、結果として前記抽出液のワックス濃度が0.080mg/cm3未満となった。
また、特開2003−76066号公報(特許文献2)及び特開2003−76056号公報(特許文献3)に記載されている、スチレン、N含有ビニルモノマー及び(メタ)アクリル酸系モノマーからなる共重合体をポリオレフィンにグラフトしたワックス分散剤を用いて製造されたトナーや、特開2003−76065号公報(特許文献4)に記載されている混練を段階的に繰り返すことにより製造されたトナーは、ワックスの一次平均分散径自体は微粒子化しているものの、トナー製造工程においてワックスと結着樹脂を混合するという工程を経るため、どうしても分散粒子が近接して凝集したワックスドメインを多数形成しやすく、また、このドメインの粒子径が溶融混練条件により大きくなり過ぎたり、場合によってはワックス分散粒子の再凝集が生じ、ワックス分散径の粗大化を起こすことがあり、結果として前記抽出液のワックス濃度が0.080mg/cm3未満となってしまう。
更に、特許第3225889号公報(特許文献5)に記載されている、溶剤に溶解したポリエステルの溶液に、微粒子化したワックスのスラリー及び顔料スラリーを混合してこれを水中で造粒し、その後に溶剤を常温で留去することにより製造したトナーは、ワックスを機械的に微粒子化してこれを溶液状の結着樹脂と混合するというものである。従って、トナー中におけるワックスの数平均分散径は1μm程度と微分散とは言い難く、上記抽
出液中のワックス濃度も0.080mg/cm3未満であった。
本発明のトナーにおいて、23℃においてn−ヘキサン中に15mg/cm3の濃度でトナーを分散させて、該トナー中のワックスを1分間抽出して得られる抽出液のワックス濃度を0.080〜0.500mg/cm3とするためには、ワックスの少なくとも一部を分子レベルで結着樹脂中に均一に分散させた状態とすることにより、製造することができる。
本発明において、ワックスの少なくとも一部を分子レベルで結着樹脂中に均一に分散させた状態とする方法としては、例えば、ワックス、ビニル系共重合体ユニットを形成するためのビニル系モノマー及びポリエステルユニットを形成するための酸及びアルコール成分の混合物からハイブリッド樹脂を合成する際に、ビニル系モノマーの重合反応を、水素引き抜き能力の比較的強い重合開始剤(例えば、t−ブトキシラジカルが分解により生成するジ−t−ブチルパーオキサイド等)を使用して比較的高い重合温度で行い、ビニル系モノマーの重合と共にビニル系モノマーのワックスや樹脂へのグラフト重合を意図的に起こし、ワックスのビニル系共重合体への相溶性及びワックスのハイブリッド樹脂への相溶性を向上させる方法が挙げられる。また、上記モノマー混合物にワックス及びハイブリッド樹脂の良溶媒を添加し、完全に溶解した状態でハイブリッド樹脂を合成し、ワックスを分子レベルで均一に分散する方法が挙げられる。更に、溶剤に溶解したワックスとハイブリッド樹脂の均一混合物から、低温で溶剤を除去してワックスの高分散性を維持する方法等も適用可能であり、もちろんこれらの各方法を組み合わせて用いることもできる。
更に本発明のトナーは、着色剤としてロジン化合物によって処理されたモノアゾ系着色剤を含有する。即ち、本発明のトナーは、モノアゾ系着色剤及び該モノアゾ系着色剤に対して0.1〜20質量%、好ましくは1〜18質量%、のロジン化合物を含有する着色剤組成物を含有する。
ロジン化合物は、(1)着色剤粒子の内部に染み込み、着色剤粒子の凝集を防ぎ、1次粒子のまま存在させる効果、(2)結着樹脂との相溶性に優れ、トナー中における着色剤粒子の分散を安定させる効果、の両方を併せ持つことによりトナーの発色性を向上させ、カブリの発生を抑制する。また、転写材との接着性にも優れる為、オフセットを抑える効果があり、好ましく用いられる。
着色剤に対するロジン化合物の含有量が0.1質量%未満の場合、ロジン化合物による着色剤分散効果が十分に得られず好ましくない。更に、トナー製造工程において異なる複数の材料を加熱、溶融混練するため、ロジン化合物による表面処理が十分になされていないモノアゾ系着色剤を用いた場合、熱による着色剤の再凝集が発生する。このような凝集塊は、結着樹脂のシャープメルト性を奪うばかりか、それ自身が定着阻害因子として挙動する。また、トナー粒子中のワックス成分の染み出しを妨害する作用も有する為、低温定着性や耐オフセット性を悪化させることも判明している。一方、ロジン化合物の含有量が20質量%よりも多い場合、着色剤の分散性は良好であるが、融点の高いロジン化合物の影響で定着性が悪化するだけでなく、OHT透過性が悪くなり好ましくない。
また、本発明に用いられるモノアゾ系顔料組成物は、例えば以下の方法で製造することができる。上記モノアゾ系顔料組成物を構成するモノアゾ系着色剤の原材料となる全ての芳香族アミンを均一に溶解混合した後、塩酸塩化し、更に亜硝酸ナトリウムによってジアゾニウム塩とする。これを、カップリング剤であるモノアゾ系着色剤の原材料となる全てのβ−ナフトール誘導体を均一に溶解混合したものと一括してカップリング反応させ、これを顔料化することにより目的のモノアゾ系顔料組成物を得ることができる。なお、この時、モノアゾ系顔料組成物は2種類以上のモノアゾ系着色剤同士が分子〜微結晶レベルで
混在化していることが好ましく、固溶体化していることがより好ましい。
なお、上記モノアゾ系顔料組成物を好ましくは上記のように混在化、更に好ましくは固溶体化させることにより、以下の結果が得られた。(1)両者間の相互作用に基づく共存効果により、モノアゾ系着色剤自身が元来有している以上の発色性が得られた。(2)互いに顔料結晶の成長を抑制し合うことで、トナーに望ましい顔料粒子形状となった。その結果として、トナー粒子により望ましい発色性や帯電性が付与されることを見出した。
しかしながら、単にモノアゾ系着色剤を微分散させた場合、モノアゾ系着色剤は一般に結晶自体が堅く、崩れ難い傾向にあるため、結晶形状によっては粒子表面の一部分だけに帯電が偏ってしまう。すると、特にトナー表面に着色剤が露出した場合、現像特性や帯電特性に悪影響を及ぼすばかりか、静電潜像担持体や中間転写体、定着ローラ等の装置との接触面において部材の汚染や削れといった問題を生じる恐れがある。
それに対して本発明のようにモノアゾ系着色剤をロジン化合物によって表面処理することにより、ロジン化合物が着色剤粒子表面に物理的に吸着し、また一部は着色剤と錯体を形成して、帯電性を均一にすることを可能とする。これによりトナーの帯電安定性や、トナー表面への着色剤の露出によって発生するカブリを抑制する効果が得られることに加えて、着色剤に対する優れた分散効果により高い着色力、良好な混色性と色再現性を有することが可能となった。そして更には、トナー製造工程におけるにワックス分散粒子の凝集を抑え、トナー粒子中のワックス成分の染み出しを悪化させず、低温定着性や耐オフセット性といった定着性能や、現像性に優れることが判明した。
より具体的には、少なくとも、モノアゾ系着色剤及び該モノアゾ系着色剤に対して0.1〜20質量%のロジン化合物を含有するモノアゾ系顔料組成物を用い、23℃において、トナーをn−ヘキサン中に15mg/cm3の濃度で分散させ、該トナー中のワックスを1分間抽出して得られる抽出液中のワックス濃度(mg/cm3)が下記式(i)〜(iii)の関係を満たすトナーとすることで、前述の効果が好適に発揮されることが判明し
た。
(i) C[01] ≧ D×0.2
(ii) C[01] ≧ C[20]×0.6
(iii)C[20] ≧ C[90]×0.8
(但し、Dはトナーをトルエンで12時間抽出したときの抽出液中のワックス濃度、C[01]はトナーをn−ヘキサンで1分間抽出したときの抽出液中のワックス濃度、C[20]はトナーをn−ヘキサンで20分間抽出したときのワックス濃度、C[90]はトナーをn−ヘキサンで90分間抽出したときのワックス濃度を、それぞれ表す。)
なお、Dは23℃においてトナーをトルエンで12時間抽出した時のワックス濃度であるが、トルエンはワックス及び結着樹脂の両方を室温で比較的速やかに溶解するので、前記ワックス濃度Dはトナーに含有されるワックスのほぼ全量が溶出したときの濃度に相当する。
本発明においては、トナーからn−ヘキサン及びトルエンへ溶出するワックスの濃度を上記式(i)〜(iii)を満足する範囲とし、ワックスの溶出速度が制御されたトナーと
することで、上述したような優れたトナーとすることができる。
このような優れた効果が発現される理由は定かではないが、本発明者らは以下のように推定している。
トナーからn−ヘキサン及びトルエンへ溶出するワックスの濃度を上記式(i)〜(ii
i)を満足する範囲にするということは、トナー中のワックスのかなりの部分が分子レベ
ルで結着樹脂中に完全に均一に分散された状態となることを意味する。このレベルまでワックスが完全に均一分散されると、トナー中の着色剤粒子(ロジン化合物に表面を覆われた着色剤も均一分散していると考えられる)の近傍にはワックスが必ず存在し、場合によっては着色剤粒子がワックスで取り囲まれるような状態となる。この時、着色剤とワックスの間に存在するロジン化合物は、両者間の濡れ性を高め、いわば「糊」として作用することにより安定した分散状態を保つことが可能となる。
このような状態となると、定着時のトナーの溶融の際に、ワックスと共にワックス近傍の着色剤粒子も速やかに転写材上に広がり、他色のトナー中の着色剤粒子とも混ざり合うので、極めて優れた混色性と色再現性が発現される。また、着色剤に起因するトナーの環境変動に関わる問題、例えば、高温高湿環境下で着色剤がリークサイトとなり、トナーの帯電量が低下してカブリが増加する問題や、低温低湿環境下で着色剤自身がチャージアップを生じ、トナーの帯電量が上昇して画像濃度が低下するといった問題が従来のトナーでは生じやすい。しかしながら、n−ヘキサンへのワックスの溶出速度を上記の範囲とした本発明のトナーの場合には、着色剤がロジン化合物に覆われることに加え、着色剤粒子の近傍に均一に微分散したワックスが存在することで、着色剤はリークサイトとなりにくくなり、また、着色剤のチャージアップも防止されるため、これらの着色剤に起因する問題が抑制されたものとなる。
更に、上記のようにモノアゾ系着色剤をロジン化合物で処理することによって、トナーに含有されるモノアゾ系着色剤の粒径及び粒度分布を制御した粒子とすることが可能となり、より高品位な画像特性を得ることができるものと考えている。
本発明のトナー中の着色剤は、個数平均粒径が0.01〜0.30μmの粒子であることが好ましく、より好ましくは個数平均粒径0.05〜0.25μmの粒子である。更に、トナー中の着色剤は、粒径0.05〜0.25μmの粒子を65個数%以上、好ましくは75個数%以上含有し、粒径0.4μm以上の粒子を10個数%以下、好ましくは8個数%以下含有していることが良い。着色剤の粒子が、個数平均粒径0.30μmよりも大きい場合には、着色剤粒子がトナー表面に存在する場合、リークサイトとなりやすくカブリが発生したり、OHT透過性が悪くなる場合がある。
一方、着色剤の個数平均粒径が0.01μmよりも小さい場合には、着色剤の帯電特性の制御が困難となる場合がある。また、粒径0.05〜0.25μmの粒子が65個数%より少ない場合には、高い着色力が得られなくなる場合がある。更に、粒径0.4μm以上の粒子を10個数%より多く含有している場合には、OHT透過性が低下する傾向になる。
本発明者らは、上述した23℃において、トナーをn−ヘキサン中に15mg/cm3の濃度で分散させ、該トナー中のワックスを1分間抽出して得られる抽出液中のワックス濃度が0.080〜0.500mg/cm3であるトナーに関して更に検討を進めた。その結果、多数枚の画像出力を行った際に、上記抽出液中のワックス濃度がほぼ同じ値のトナーであっても、トナーの種類により画像濃度、カブリ、階調性といった現像性や、中抜けに代表される転写性の耐久安定性が大きく異なる場合があることを見出した。そして、この現像性、転写性の耐久安定性の違うトナーを、加熱、加圧といった過酷な状態に放置した際の凝集度の悪化度合いという指標によって明確に区別できることも見出した。
本発明のトナーは、23℃、50%RHの雰囲気中に24時間放置したときの凝集度をA(%)とし、上記トナーに50℃において1.56kPaの荷重を24時間かけ、その後荷重を開放して23℃、50%RHの雰囲気中に24時間放置したときの凝集度をB(
%)としたときに、凝集度の比B/Aが2.0以下であることが好ましく、より好ましくは1.5以下である。また、上記凝集度Aが3〜80%、上記凝集度Bが3〜99%の範囲であると、現像性と転写性が優れたものとなり、好ましい。
本発明者らの検討によれば、トナーに、50℃において1.56kPaの荷重を24時間かけたとき、その前後における凝集度の比B/Aが2.0以下となるトナーにすることにより、例えば、長期使用において現像器内で繰り返し機械的ストレスを受け続けても、ワックスのトナー表面への遊離が低いレベルに抑えられ、現像スリーブ等の部材の汚染が防止される。また、外添剤のトナー粒子への埋め込みも抑制されて、トナーの流動性の低下や帯電性能の低下が起こりにくく、現像性と転写性が長期にわたり安定となる。更に、B/Aを1.5以下とすることにより、例えば、高温高湿といった過酷な環境下においても耐久安定性が向上し、トナーの感光体ドラム等の部材への融着等も起こりにくく、安定した画像が得られる。
上記凝集度の比B/Aを2.0以下とすることにより、前述した種々の優れた効果が発現される理由は定かではないが、本発明者等は以下のように推定している。
トナー中に含有されるワックスは、通常、複数の低融点化合物からなる混合物であり、その融点に多少なりとも幅を有している。
このようなワックスを含有するトナーを50℃の環境にさらした場合、ワックス成分中のより低融点の成分が軟化し、溶融しかけた状態となりやすい。この状態のトナーに更に1.56kPaの荷重をかけると、溶融しかけた低融点成分のワックスが近接するワックスをも軟化させ、トナー中に分散しているワックスが凝集、合一を繰り返して粗大粒子状のワックスとなり、トナー表面にもワックスが遊離してしまうことになる。このような状態となったトナーは、トナー同士の付着性が増大することから凝集度が高くなる。前記B/Aが2を超えるトナーは、表面に結着樹脂よりも柔らかいワックスが遊離しているため、現像器内で機械的なストレスを受けた際に外添剤がトナー表面に埋没しやすく、その結果として、トナーの流動性の低下や帯電性能の低下が起こりやすく、現像性と転写性が悪化しやすい。また、感光体ドラムや現像スリーブ等の部材との摩擦により、これらの部材へのトナーの融着も生じやすくなり、その結果として画像欠陥が発生する場合がある。
トナー中にワックス粒子やワックスドメインが多数形成されている、ワックス分散が不充分なトナーの場合、この傾向は非常に強く、ワックス粒子やワックスドメインがトナー中に多いほど、50℃において1.56kPaの荷重をかけたときのトナー表面へのワックスの遊離が多く、凝集度が悪化し、上記B/Aが高い値となってしまう。そして、前記した外添剤のトナー粒子への埋没に由来する種々の弊害や部材へのトナーの融着が生じる。一方、ワックスの少なくとも一部が分子レベルで結着樹脂中に均一に分散されて、トナー中に存在するワックス粒子やワックスドメインの存在量が少ない状態となっているトナーの場合には、例えワックスの低融点成分が軟化した状態となっても、近接するワックスがほとんど存在しないため、ワックス分散が初期の状態を維持しやすく、結果として前記B/Aは低い値となり、外添剤の埋没も極めて起こりにくくなる。そのため、現像性や転写性の耐久安定性が良好となる。
次に本発明のトナーの組成について説明する。
本発明のトナーは少なくともモノアゾ系着色剤及び該モノアゾ系着色剤に対して0.1〜20質量%のロジン化合物を含有する顔料組成物を含有する。本発明において、モノアゾ系着色剤としては従来トナーに用いられる種々のものを使用することができ、特に限定されないが、下記構造式(1)で示される着色剤を含むことが好ましい。
中でも、本発明に用いられるモノアゾ系着色剤は、上記構造式(1)において、R2が、−H、−Cl、−CH3、−OCH3、−NO2、及び−COOCH3から選ばれ、R3が、−H、−Cl、−NO2、−SO2OC6H4NO2、−SO2OC6H4CO2CH3、−SO2N(C2H5)2、−CONHC6H5、−CONHC6H4−CONH2、−CONHC6H3Cl2、−CONH2、−SO2CH2C6H5、−OCH3、及び−CH3から選ばれ、R4が、−H、−Cl、−CH3、−NO2、−CONH2、−SO2NHCH3、及び−NHCOC6H5から選ばれる置換基である化合物であることが好ましい。また、上記構造式(1)においてR5〜R8が、−H、−Cl、−CH3、−OCH3、−OC2H5、−NO2、−NHCOCH3から選ばれる置換基であることが好ましい。
特に好ましくは、このようなモノアゾ系着色剤として、C.I.Pigment Red 5,31,32,146,147,150,176,184,238,269(それぞれカラーインデックス第4版記載の名称による)から選択される2種類以上のモノアゾ系着色剤が各々20質量%以上となるように組み合わせて混在化、更に好ましくは固溶体化させて用いることである。このような態様のモノアゾ系着色剤を用いることにより、トナーに望ましい色相を与え、着色剤のトナー中における分散性を改善し、更にはトナーの発色性や帯電性を向上させることができる。
また、本発明においては上記顔料のみを着色剤として使用しても構わないが、本発明のトナーをフルカラー画像形成に用いる場合、画質の点から、上記モノアゾ系着色剤の他に、染料や顔料を1種類以上併用してその鮮明度を向上させて用いることも可能である。
着色剤の使用量は、中間色の再現性と着色力とのバランスから、結着樹脂100質量部に対して、1〜15質量部、好ましくは3〜10質量部含有していることが良い。着色剤の含有量が15質量部より多い場合には、透明性が低下し、加えて人間の肌色に代表される様な中間色の再現性も低下し易くなり、更にはトナーの帯電性の安定性が低下し、目的
とする帯電量が得られにくくなる。また、着色剤の含有量が1質量部より少ない場合には、目的とする着色力が得られ難く、高い画像濃度の高品位画像が得られ難い。
本発明のトナーに用いられる顔料組成物は、上記モノアゾ系着色剤をロジン化合物で処理して得られるものである。上記モノアゾ系着色剤を好ましく処理出来るロジン化合物としては、トール油ロジン、ガムロジン、ロッドロジン等の天然ロジン;水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等の変性ロジン;スチレンアクリルロジン等の合成ロジン;更には、上記ロジンのアルカリ金属塩やエステル化合物を挙げることができる。
上記ロジン化合物の中でも、特に、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸、レボピマール酸、及びパラストリン酸、並びにこれらのアルカリ金属塩やエステル化合物が結着樹脂との相溶性の観点から好ましい。
本発明に係るモノアゾ系着色剤は、公知の方法によりその表面を処理することができ、ロジン化合物による処理が着色剤の再凝集を防止し、トナー粒子中での着色剤の分散性を向上させる。ロジン化合物によるモノアゾ系着色剤の表面処理について以下に述べる。モノアゾ系着色剤の表面処理は、下記(2)に示すように着色剤製造時に行うことが特に好ましいが、これに限定されるものではない。
上記したようなロジン化合物により、着色剤を処理する方法としては、(1)ロジン化合物と着色剤を乾式混合した後、必要に応じて溶融混練等の熱処理を施す乾式混合法、(2)着色剤製造時の着色剤の合成溶液中にロジンのアルカリ水溶液を加えた後、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、又はマンガン等のレーキ金属塩を添加し、ロジンを不溶化することで着色剤表面に被覆処理を施す湿式処理法、等が挙げられる。
さらに本発明のトナーにおいては、上記モノアゾ系着色剤とロジン化合物を結着樹脂中に高濃度に分散させた、顔料分散樹脂(所謂、着色剤マスターバッチ)を中間体として、使用することが好ましい。結着樹脂と着色剤を溶融混合して顔料分散樹脂を製造する際には、混練混合物に大きな剪断力がかかり、ロジン化合物による着色剤表面への表面処理がより均一になるだけでなく、着色剤の凝集体が崩れ、着色剤分散性がより向上する。その結果、高い着色力や、良好な混色性と色再現性を得ることができるためである。
本発明に用いる、顔料分散樹脂を作る方法としては、例えば、少なくとも結着樹脂とモノアゾ系着色剤とロジン化合物を含む原材料を、ニーダー型ミキサーに仕込み、さらにここに水を加え、非加圧下において加熱混合させる。そして、十分に樹脂中に着色剤が均一分散した後、着色剤の分散した樹脂から分離している水を排出する。その後、混合物の温度を130℃以下、より好ましくは120℃以下に保ち加熱溶融混練を行うことで、残っている水分を蒸発させながら、着色剤の分散性をさらに向上させることができる。混合物の温度が130℃より高くなると、混合物中に含まれているロジン化合物の一部が、昇華してしまうため、好ましくない。
また、本発明に用いるモノアゾ系着色剤としては粉末状の着色剤であっても、着色剤合成後、粉末にすることなく含水状態のままのペースト状着色剤であっても良い。
本発明のトナーは結着樹脂を少なくとも含有する。
本発明のトナーに含有される結着樹脂は、トナー中にワックスが高分散される限り、従来トナーに用いられる一般的なものを用いることができ特に限定されないが、ポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットとを有するハイブリッド樹脂、又はポリエステル樹脂、又はビニル系共重合体とこれらの樹脂との混合物のいずれかであるポリエステル系樹脂であることが好ましく、ハイブリッド樹脂がより好ましい。
なお、上述の通り、本発明における「ポリエステル系樹脂」とは、ポリエステルユニッ
トを有する樹脂のことであり、結着樹脂全体の50質量%以上がポリエステルユニットを有する樹脂が好ましく、更に結着樹脂全体の70質量%以上がポリエステルユニットを有する樹脂が好ましい。結着樹脂全体の50質量%以上がポリエステルユニットを有する樹脂とすることにより、高い着色力、鮮明な色味と良好な混色性、そして優れた透明性がより顕著に発現できる。特に、結着樹脂全体の50質量%以上がポリエステルユニットを有するハイブリッド樹脂とすることにより、良好な顔料分散性、ワックス分散性、低温定着性、更に耐高温オフセット性の向上が期待できる。
なお、本発明において「ポリエステルユニット」とはポリエステルに由来する部分を示し、「ビニル系共重合体ユニット」とはビニル系共重合体に由来する部分を示す。ポリエステルユニットを構成するポリエステル系モノマーは、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分である。ビニル系共重合体ユニットを構成するビニル系モノマーは、ビニル基を有するモノマー成分である。
本発明において「ハイブリッド樹脂」とは、ビニル系共重合体ユニットとポリエステルユニットが化学的に結合された樹脂を意味する。具体的には、例えば(メタ)アクリル酸エステル等のカルボン酸エステル基を有するモノマーを重合したビニル系共重合体ユニットとポリエステルユニットとがエステル交換反応によって形成されるものであり、好ましくはビニル系共重合体ユニットを幹重合体、ポリエステルユニットを枝重合体としたグラフト共重合体(又はブロック共重合体)を形成するものである。
本発明のトナーに含有される結着樹脂として、ポリエステル樹脂又はポリエステルユニットを有するハイブリッド樹脂を用いる場合、ポリエステル樹脂又はハイブリッド樹脂のポリエステルユニットを生成するためのポリエステル系モノマーとして、多価のアルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、又は多価カルボン酸エステル等が原料モノマーとして使用できる。
具体的には、例えば2価アルコール成分としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物や、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
3価以上のアルコール成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
2価カルボン酸成分としては、例えばフタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;コハク酸、ドデセニルコハク酸、アジピン酸、セバ
シン酸及びアゼライン酸等のアルキルジカルボン酸類又はその無水物;炭素数6〜12のアルキル基で置換されたコハク酸又はその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸類又はその無水物;が挙げられる。
また、3価以上のカルボン酸成分としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(別名トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸及びこれらの無水物やエステル化合物が挙げられる。
なお、上記の中でも、特に、下記一般式(2)で代表されるビスフェノール誘導体をジオール成分とし、2価以上のカルボン酸又はその酸無水物、又はその低級アルキルエステルとからなるカルボン酸(例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等)を酸成分として、これらを縮重合したポリエステル樹脂が特に好ましい。この組成としたポリエステル樹脂は、良好な帯電特性を有する。
本発明のトナーに含有される結着樹脂として、ビニル系共重合体又はビニル系共重合体ユニットを有するハイブリッド樹脂を用いる場合、ビニル系共重合体又はハイブリッド樹脂のビニル系共重合体ユニットを生成するためのビニル系モノマーとして、次のようなものを用いることができる。スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン等のスチレン誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等の不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレン等の不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等のビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸−2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケト
ン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸又はメタクリル酸誘導体等が挙げられる。
更に、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステル等の不飽和二塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸等の不飽和二塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸等のα,β−不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物等のα,β−不飽和酸無水物、該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステル等のカルボキシル基を有するモノマーが挙げられる。更に、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸エステル類;4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレン等のヒドロキシ基を有するモノマーが挙げられる。
本発明のトナーに含有させる結着樹脂として、ビニル系共重合体又はビニル系共重合体ユニットを有するハイブリッド樹脂を用いる場合には、これらの樹脂はビニル基を2個以上有する架橋剤で架橋されたものであってもよい。この場合に用いられる架橋剤としては、以下のものが挙げられる。ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等のアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート等のエーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類及び以上の化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの;ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート等の芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの等が挙げられる。
上記以外に多官能の架橋剤を用いることもでき、多官能架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート等が挙げられる。
ビニル系共重合体ユニットやポリエステルユニットを有するハイブリッド樹脂をトナーに含有させる場合、そのビニル系共重合体ユニットやポリエステルユニット中には、両樹脂成分と互いに反応し得るモノマー成分を含むことが好ましい。ポリエステルユニットを構成するポリエステル系モノマーのうちビニル系共重合体ユニットと反応し得るものとし
ては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物等が挙げられる。ビニル系共重合体ユニットを構成するビニル系モノマーのうちポリエステルユニットと反応し得るものとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するもの、アクリル酸又はメタクリル酸エステル類が挙げられる。
ビニル系共重合体ユニットとポリエステルユニットとの反応生成物を得る方法としては、先に挙げたビニル系共重合体ユニット及びポリエステルユニットのそれぞれと反応し得るモノマー成分を含むポリマーが存在しているところで、どちらか一方又は両方の樹脂の重合反応をさせることにより得る方法が好ましい。
ビニル系共重合体やビニル系共重合体ユニットを有するハイブリッド樹脂を製造する場合に用いられるラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(−2メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カーバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチル−プロパン)、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−クミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリオイルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−メトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート,ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート等が挙げられる。
本発明のトナーに含有させることができるハイブリッド樹脂の製造方法としては、例えば、以下の(1)〜(6)に示す製造方法を挙げることができる。
(1)ビニル系共重合体、ポリエステル樹脂及びハイブリッド樹脂をそれぞれ製造後にブレンドする方法であり、ブレンドは有機溶媒(例えば、キシレン)に溶解・膨潤した後に有機溶媒を留去することで行う。なお、ハイブリッド樹脂は、ビニル系共重合体とポリエステル樹脂を別々に製造後、少量の有機溶媒に溶解・膨潤させ、エステル化触媒及びアルコールを添加し、加熱することによりエステル交換反応を行って合成されるエステル化合物を用いることができる。
(2)ビニル系共重合体ユニット製造後に、これの存在下にポリエステルユニット及びハイブリッド樹脂を製造する方法である。ハイブリッド樹脂はビニル系共重合体ユニット(必要に応じてビニル系モノマーも添加できる)とポリエステル系モノマー(アルコール、
カルボン酸)及び/又はポリエステルとの反応により製造される。この場合も適宜、有機溶媒を使用することができる。
(3)ポリエステルユニット製造後に、これの存在下にビニル系共重合体ユニット及びハイブリッド樹脂を製造する方法である。ハイブリッド樹脂はポリエステルユニット(必要に応じてポリエステルモノマーも添加できる)とビニル系モノマー及び/又はビニル系共重合体ユニットとの反応により製造される。
(4)ビニル系共重合体ユニット及びポリエステルユニット製造後に、これらの重合体ユニット存在下にビニル系モノマー及び/又はポリエステル系モノマー(アルコール、カルボン酸)を添加することによりハイブリッド樹脂が製造される。この場合も適宜、有機溶媒を使用することができる。
(5)ハイブリッド樹脂を製造後、ビニル系モノマー及び/又はポリエステル系モノマー(アルコール、カルボン酸)を添加して付加重合及び/又は縮重合反応を行うことによりビニル系共重合体ユニット及びポリエステルユニットが製造される。この場合、ハイブリッド樹脂は上記(2)〜(4)の製造方法により製造されるものを使用することもでき、必要に応じて公知の製造方法により製造されたものを使用することもできる。更に、適宜、有機溶媒を使用することができる。
(6)ビニル系モノマー及びポリエステル系モノマー(アルコール、カルボン酸等)を混合して付加重合及び縮重合反応を連続して行うことによりビニル系共重合体ユニット、ポリエステルユニット及びハイブリッド樹脂が製造される。更に、適宜、有機溶媒を使用することができる。
上記(1)〜(5)の製造方法において、ビニル系共重合体ユニット及び/又はポリエステルユニットは複数の異なる分子量、架橋度を有する重合体ユニットを使用することができる。また、上記の(1)〜(6)の製造方法のうち、本発明のトナーに用いられるハイブリッド樹脂を得る方法としては、(6)の製造方法が好適に採用される。(6)の製造方法により得られたハイブリッド樹脂は、ビニル系共重合体ユニットとポリエステルユニットが非常に均一な状態となりやすく、好ましい。
また、本発明においては、上記(6)の製造方法において、ビニル系モノマー及びポリエステル系モノマーに加えて、更にワックスもモノマー混合物に共存させ、その状態で付加重合及び縮重合反応を連続して行えば、結着樹脂として用いられるハイブリッド樹脂中でのワックスの分散性が向上しやすく、好ましい。
更に、上記各方法においてビニル系モノマーの付加重合の際に、水素引き抜き能力の比較的強い重合開始剤(例えば、t−ブトキシラジカルが分解により生成するジ−t−ブチルパーオキサイド等)を使用して比較的高い重合温度で行う等、適当に重合条件を選択して、ビニル系共重合体の生成とともにワックスへのビニル系モノマーのグラフト重合を起こせば、ワックスのビニル系共重合体への相溶性、及びワックスのハイブリッド樹脂への相溶性を向上させることができ、結果として、トナー中にワックスを分子レベルで均一に分散することが可能であり、特に好ましい。
本発明において用いられる結着樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定における分子量分布において、テトラヒドロフラン(THF)に可溶な成分のピーク分子量(Mp)が4,000〜20,000の範囲にあることが好ましく、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が5以上であることが好ましい。前記Mpが4,000未満の場合、得られるトナーの保存安定性に問題が生じた
り、耐高温オフセット性が不充分になるとともに、感光体ドラムへの融着及びフィルミング等が発生しやすくなる場合がある。一方、Mpが20,000を越える場合、低温定着性が不充分となるとともに、画像のグロスが低くなりすぎたり、混色性に問題が生じたりする場合がある。また、Mw/Mnが5未満である場合には耐高温オフセット性に問題が生じる場合がある。
本発明のトナーは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定における分子量分布において、該トナーに含有されるTHFに可溶な結着樹脂成分のピーク分子量(Mp)が4,000〜20,000、特に6,000〜15,000の範囲にあることが好ましく、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が100以上、特に200以上であることが好ましい。トナーに含有される樹脂成分のピーク分子量が4,000未満の場合、トナーの保存安定性に問題が生じたり、耐高温オフセット性が不充分になったりするとともに、感光体ドラムへの融着及びフィルミング等が発生しやすくなる場合がある。一方、ピーク分子量が20,000を越える場合、低温定着性が不充分となるとともに、画像のグロスが低くなりすぎたり、混色性に問題が生じたりする場合がある。また、Mw/Mnが100未満である場合には、耐高温オフセット性に問題が生じる場合がある。
本発明のトナーに含有されるTHFに可溶な結着樹脂成分のMpを4,000〜20,000の範囲にするためには、THFに可溶な成分のMpが4,000〜20,000の結着樹脂を適宜選択してトナーの原材料として用いればよい。また、(Mw/Mn)を100以上とするためには、(Mw/Mn)が100以上である結着樹脂を用いても良いし、(Mw/Mn)が100未満の結着樹脂と後述する有機金属化合物とをトナー製造工程のひとつである混練工程において金属架橋させることにより、Mw/Mnが100以上である樹脂を得ることもできる。また、この金属架橋による方法を用いて(Mw/Mn)を調整する場合には、有機金属化合物の種類、添加量や混練時の温度を適宜選択することにより、(Mw/Mn)の調整が可能である。
本発明のトナーは、更にワックスを含有する。
本発明のトナーに含有させることができるワックスとしては、例えば次のものが挙げられる。ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、オレフィン共重合体ワックスワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス、また酸化ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、又はそれらのブロック共重合物;カルナウバワックス、モンタン酸エステルワックス等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;ベヘン酸ベヘニルやステアリン酸ベヘニル等の高級脂肪酸と高級アルコールとの合成反応物であるエステルワックス;及び脱酸カルナウバワックス等の脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの等が挙げられる。
パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸等の飽和直鎖脂肪酸類;ブランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸等の不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール等の飽和アルコール類;ソルビトール等の多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸
マグネシウム等の脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸等のビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリド等の脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加等によって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物等が挙げられる。
本発明において、好ましく用いられるワックスとしては脂肪族炭化水素系ワックスが挙げられ、より好ましくは低分子量ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックスが挙げられ、特に好ましくはパラフィンワックスが挙げられる。脂肪族炭化水素系ワックスを用いると、ワックスのトナー中での分散状態を最適としやすく、低温定着性に優れるだけでなく、高い着色力、鮮明な色味と混色性が発現され、現像性、転写性、耐久性等の各種特性のバランスの優れたトナーが得られやすい。
また、優れた低温定着性、高い着色力、鮮明な色味と混色性、及び優れた環境安定性、耐久性を達成するために、前記ワックスの示差熱分析(DSC)測定における吸熱曲線において、最大吸熱ピークのピーク温度が60〜105℃の範囲にあることが好ましく、70〜90℃の範囲にあることがより好ましい。50℃未満であると、例えばトナーの保存安定性が劣る場合があり、105℃を超えると省エネの観点から望まれる低温定着を行うことが困難となる場合がある。
ワックスは結着樹脂100質量部あたり1〜10質量部、好ましくは2〜7質量部使用するのが良い。1質量部よりも少ないと低温定着性に効果がなく、10質量部を超えるとトナーの保存安定性や現像性に問題が出る場合がある。
本発明のトナーは、示差熱分析(DSC)測定における吸熱曲線において、温度30〜200℃の範囲に1個又は複数の吸熱ピークを有し、該吸熱ピーク中の最大吸熱ピークのピーク温度が60〜105℃の範囲にあることが好ましく、60〜105℃の範囲にあることが更に好ましく、特に好ましくは70〜90℃の範囲である。最大吸熱ピークのピーク温度がこの範囲にあれば、優れた低温定着性と現像性とのバランスが良好となる。最大吸熱ピークのピーク温度が50℃未満であるとトナーの保存安定性が劣る場合があり、105℃を超えると省エネの観点から望まれる低温定着を行うことが困難となる場合がある。なお、最大吸熱ピークのピーク温度を60〜105℃とするには、前述した最大吸熱ピークのピーク温度が60〜105℃のワックスを、トナーに含有させることにより達成可能である。
本発明のトナーには、更に有機金属化合物を含有させてもよい。有機金属化合物を含有させると、帯電レベルを調整でき、帯電の立ち上がりを良くし、トナーの熱溶融特性を改良することが出来る等の点で好ましい。本発明のトナーに含有させる有機金属化合物としては、芳香族オキシカルボン酸及び芳香族アルコキシカルボン酸から選択される芳香族カルボン酸誘導体又は該芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物であることが好ましく、その金属としては、2価以上の金属が好ましい。また、芳香族カルボン酸誘導体としては、サリチル酸誘導体が好ましい。
芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物は、例えば、2価以上の金属イオンが溶解している水溶液を、芳香族カルボン酸を溶解した水酸化ナトリウム水溶液に滴下し、加熱撹拌し、次に水溶液のpHを調整し、常温まで冷却した後、ろ過水洗することにより合成することができるが、上記の合成方法だけに限定されるものではない。上記芳香族カルボン酸誘導体の金属化合物を構成する2価の金属としては、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Pb2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Zn2+、Cu2+が挙げられる。これらのうち、Zn2+、Ca2+、Mg2+、Sr2+が好ましい。3価以上の金属としてはAl3
+、Cr3+、Fe3+、Ni3+、Zr4+が挙げられる。これら3価以上の金属の中で好ましいのはAl3+、Cr3+、Zr4+であり、特に好ましいのはAl3+、Zr4+である。
本発明のトナーに有機金属化合物を含有させる場合、有機金属化合物は結着樹脂100質量部あたり0.1〜5質量部含有させることが好ましい。この範囲の含有量とすると、トナーの帯電レベルを適度に調整できるため現像時に必要な絶対帯電量が得られやすく、また、混練時の金属架橋による(Mw/Mn)の調整も可能であり、トナーの熱溶融特性も改良することができる。
本発明のトナーは、トナー粒子に流動性向上剤が外部添加(以下、「外添」という)されているトナーであることが好ましい。ここで、流動性向上剤とは、トナー粒子に外添することにより、添加前に比して流動性が増加し得る機能を有するものであり、形成される画像の画質向上の観点から添加される。このような流動性向上剤として、例えば、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末等のフッ素系樹脂粉末;湿式製法で得られるシリカ微粉末、乾式製法で得られるシリカ微粉末等のシリカ微粉末;それらシリカ微粉末をシラン化合物、チタンカップリング剤、シリコーンオイル等の処理剤により表面処理を施した処理シリカ微粉末;酸化チタン微粉末;アルミナ微粉末、処理酸化チタン微粉末、処理酸化アルミナ微粉末等が用いられる。このような流動性向上剤は、BET法で測定した窒素吸着による比表面積が30m2/g以上、好ましくは50m2/g以上のものが良好な結果を与える。流動性向上剤は、トナー粒子100質量部に対して0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部使用するのが良い。
本発明のトナーは重量平均粒径が4〜9μm、特に5〜8μmであることが好ましい。トナーの重量平均粒径をこの範囲として小粒径化することにより、画像の輪郭部分、特に文字画像やラインパターンの現像での再現性が良好なものとなる。重量平均粒径が4μm未満であると、例えば感光体の表面への付着力が高くなり、転写不良に基づく画像の不均一、ムラの原因となりやすい。また、トナーの単位質量あたりの帯電量が高くなり、例えば低温低湿環境下において画像濃度が低下してしまう場合がある。更に、流動性の低下や部材への付着性の増加により、例えば二成分系現像剤とした場合、キャリアとの摩擦帯電がスムーズに行われにくく、充分に帯電し得ないトナーが増大し、非画像部のカブリが目立つ様になる。また、重量平均粒径が9μmを超えると、高画質化に寄与し得る微粒子が少ないことを意味し、トナーの流動性に優れるというメリットがあるものの、感光体上の微細な静電荷像上に忠実に付着しづらく、ハイライト部の再現性が低下し、更に階調性も低下する場合がある。また、感光体表面等の部材への融着が起きやすい。
更に、4μm以下の粒径を有するトナーが3〜40個数%含有され、10μm以上の粒径を有するトナーが10体積%以下含有されていると、現像性、転写性のバランスの取れたトナーが得られやすく、特に好ましい。
本発明のトナーは、円相当径が3μm以上の粒子において、平均円形度が0.920〜0.950、特に0.925〜0.945の範囲にあることが好ましい。トナーの平均円形度を上記範囲とすることにより、トナーの流動性、転写性、帯電性を好適なものとすることが出来る。平均円形度が0.920より小さいと転写性、特に転写効率に劣り、逆に、平均円形度が0.950より大きいと形状が球形となりすぎるため、感光ドラムのクリーニングの際に転写残トナーがクリーニングブレードをすり抜ける等、クリーニング不良による画像欠陥が出る場合がある。
しかしながら、トナー中にワックスを含有させたトナーにおいては、トナーの粒径や円形度を制御するのみでは転写性や帯電性等の性能特性が不充分となる場合がある。このよ
うなワックスを含有するトナーにおいて優れた性能特性を発現させるには、更にトナー表面におけるワックスの量を制御することが重要であることを本発明者等は見出した。そこで、45体積%のメタノール水溶液におけるトナーの透過率が、トナー表面近傍のワックスの量を把握するための簡易且つ精度の高い方法であること、及びこの透過率を特定の値とすることにより、上記ワックスを含有するトナーにおいても優れた性能特性を発現できることを、本発明者等は見出した。
本発明のトナーは、45体積%のメタノール水溶液にトナーを2mg/cm2の濃度で分散させた溶液の、波長600nmにおける透過率が5〜70%であることが好ましく、更に好ましくは10〜50%である。
この45体積%のメタノール水溶液におけるトナーの透過率は、トナーを水とメタノールの混合溶液中で強制分散させ、更に一定時間後の透過率を測定することにより得られる値であり、トナー表面近傍のワックスの存在量を再現性良く、且つ正確に把握できるものである。このような透過率の測定方法によれば、疎水性であるワックスがトナー表面に多く存在すると、溶媒に分散しにくく凝集するため、上記透過率が70%を超える高い値になる。逆にトナー表面のワックスが少ないと、親水性である結着樹脂のポリエステルユニットが多く存在するため、トナーが混合溶媒中に均一分散し、上記透過率が5%未満の小さな値になる。
45体積%のメタノール水溶液におけるトナーの透過率が70%より大きいと、トナー表面のワックスが過度に多いため、例えばワックスが現像スリーブ表面に融着して現像スリーブが高抵抗化することになり、そのため現像にかかる実際の現像バイアスの効力が下がり、ひいては画像濃度の低下が生じる場合がある。一方、上記透過率が5%より小さいと、表面に露出しているワックスが少なすぎることから、定着時にワックスの効果が現れにくく、省エネルギーの低温定着を行うことが困難な場合がある。
本発明のトナーは、前述したようにトナーからn−ヘキサンへのワックスの溶出速度が非常に速いトナーである。粒子径の非常に小さいワックスがトナー表面に多量に存在している場合、n−ヘキサンへのワックスの溶出速度はある程度高くなることが予想される。しかし、このようなトナーでは、ここでいう45体積%のメタノール水溶液におけるトナーの透過率が非常に高いものとなる。本発明のトナーは、45体積%のメタノール水溶液における透過率を5〜70%とすることが好ましく、前記透過率をこの範囲とすることで、定着性、現像性、転写性等、種々の特性のバランスのとれた、長期にわたり性能の安定したトナーが得られる。
本発明のトナーは、トナーの粒度分布、平均円形度、分子量、最大吸熱ピーク及び透過率等を上記のように調整することによって、帯電分布が更にシャープなものとなり、それにより現像効率が向上するばかりでなく、カブリが激減するといった効果も得られる。更なる効果として、感光体上に形成された潜像を忠実に再現することが可能であり、網点及びデジタルの様な微小ドット潜像の再現性にも優れ、特にハイライト部の階調性及び解像性に優れたトナー像を与えることができる。更に画像出力を続けた場合でも高画質を保持し、且つ高濃度の画像の場合でも少ないトナー消費量で良好な現像を行うことが可能であり、長期に渡り鮮明な色味で色再現性が良好なカラー画像が得られる。
本発明のトナーは、中間転写体を設けた画像形成装置への適用も可能である。中間転写体を設けた画像形成装置は多種多様の転写材に対応可能であるため、近年急速に普及しつつある。中間転写体を設けた画像形成装置の場合、転写工程が実質2回行われるため、転写効率の低下はトナーの利用効率の低下を招き問題となる。しかし、本発明のトナーは、粒度分布、平均円形度及び前記透過率等を上記のように調整することによって、高い転写
性が達成され、中間転写体を設けた画像形成装置にも好適に使用できる。このような高転写性を有する本発明のトナーを用いれば、中間転写体を用いた系で起こりやすい転写抜け等の転写不良がほとんど生じないため、2次色の色再現性や色味が極めて良好となり、多種多様の転写材を用いた場合でも、美しいカラー画像を得ることができる。
本発明のトナーは、少なくとも、モノアゾ系着色剤及び該ものアゾ系着色剤に対して0.1〜20質量%のロジン化合物を含有する顔料組成物と、結着樹脂と、ワックスとを含有するトナー粒子と、必要に応じてトナー粒子に外添される流動性向上剤等の外添剤とから構成される。本発明におけるトナー粒子は、以下で述べる方法により得ることができる。即ち、トナー原材料をヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機により充分混合し、ニーダー、エクストルーダー等の熱混練機を用いて溶融、捏和及び練肉し、溶融混練物を冷却固化後に固化物を粉砕し、粉砕物を分級することにより、所定の平均粒径のトナー粒子を得ることができる。
本発明のトナーにおいて、平均円形度を調整する手段としては特に限定されないが、例えば、機械的衝撃法により粉砕トナー粒子を球形化する方法、ディスク又は多流体ノズルを用い溶融混合物を空気中に霧化し球状トナー粒子を得る方法等様々な方法が採用できる。
上記のうち機械的衝撃法によりトナー粒子を得た場合には、トナー粒子表面のワックス量の調整が簡便であり、より好ましい。トナー粒子表面のワックス量の調整(即ち45体積%のメタノール水溶液におけるトナーの透過率の調整)は原材料の物性、特に樹脂の粘弾性を制御したり、製造条件、特に溶融混練条件や重合条件を制御することによって行うことができるが所望の物性が得られれば特に限定されない。
しかし、従来用いられていた多くの製造手段においては、これらの物性を同時に満足することは困難である。例えば、エアージェット式を用いた場合は45体積%のメタノール水溶液におけるトナーの透過率を5〜70%と所望の値とすることができるものの、平均円形度が所望の値には至らず0.920未満となってしまう。そこで球形化する手段として、例えば奈良機械製作所製のハイブリタイザー等を行うこともできるが、トナー粒子に過度の熱履歴がかかるためトナー表面にワックスが遊離し、前記透過率が70%を超えるものとなってしまう。また粉砕と球形化を同時に行うものとして、川崎重工業社製のクリプトロンシステム、日清エンジニアリング社製のスーパーローター等があるが、これらも同様に過度の熱履歴がトナー粒子にかかるため、前記透過率が70%を超えてしまう。
このように従来のトナーの物性において、平均円形度が0.920未満の場合は前記透過率が5〜70%の範囲にあるものも存在するが、円形度が小さく転写性等に関して不充分である。逆に平均円形度が0.920〜0.950となるようにトナーに球形化処理をすると、ワックスが表面に出やすくなり、前記透過率が70%を超えてしまい、現像特性等に弊害を生じている。
そこで、本発明のトナーの平均円形度を0.920〜0.950とする有効なものとしては、図1及び図2に記載の装置を用いることが好ましい。この装置を用いればトナーの円形度を上記範囲に調整すると同時に、上記透過率を5〜70%の範囲とすることが可能である。
図1は、本発明のトナーの製造に好ましく用いられる表面改質装置の構成の一例を示す模式的断面図であり、図2は、図1の表面改質装置が有する分散ローターの構成を示す模式的平面図である。表面改質装置は、発生する微粉を系外に排出しながら、機械的衝撃力を与えることにより、所望の形状、性能を得るものである。通常、機械的に球形化処理す
る場合には、粉砕時に生じる、かなり小さな微粉が再度凝集することで形状を凹凸にするため、発生する微粉を系外に排出しながら行わなければならず、所望の球形度にするには必要以上に機械的衝撃力が必要となる。その結果、余分な熱量を与えトナー表面のワックス量が多くなる弊害が生じる。また、ごく小さな微粉はキャリアへのスペントを悪化させる大きな原因となる。これに対し、図1及び図2に示す表面改質装置においては、機械的衝撃力を加えている同一気流を止めることなく分級するため、再凝集させることなく効率良く系外に排出することができる。
更に詳しく説明すると、図1に示す表面改質装置は、ケーシング、冷却水又は不凍液を通水できるジャケット(図示しない)、ケーシング内において中心回転軸に取り付けられた、上面に角型のディスク又は円筒型のピン40を複数個有し、高速で回転する円盤状の回転体である表面改質手段としての分散ローター36、分散ローター36の外周に一定間隔を保持して配置された、表面に多数の溝が設けられているライナー34(なお、ライナー表面上の溝はなくても構わない)、表面改質された原料を所定粒径に分級するための手段である分級ローター31、冷風を導入するための冷風導入口35、被処理原料を導入するための原料供給口33、表面改質時間を自在に調整可能となるように開閉可能なように設置された排出弁38、処理後の粉体を排出するための粉体排出口37、分級ローター31と分散ローター36−ライナー34との間の空間を、分級ローター31へ導入される前の第一の空間41と、分級ローター31により微粉を分級除去された粒子を表面処理手段へ導入するための第二の空間42に仕切る案内手段である円筒形のガイドリング39から構成されている。分散ローター36とライナー34との間隙部分が表面改質ゾーンであり、分級ローター31及びその周辺部分が分級ゾーンである。
以上のような構成の表面改質装置は、排出弁38を閉じた状態で原料供給口33から微粉砕品を投入すると、投入された微粉砕品は、まずブロワー(図示しない)により吸引され、分級ローター31で分級される。その際、分級された所定粒径以下の微粉は装置外へ連続的に排出除去され、所定粒径以上の粗粉は遠心力によりガイドリング39の内周(第二の空間42)に沿いながら分散ローター36により発生する循環流にのり表面改質ゾーンへ導かれる。
表面改質ゾーンに導かれた原料は、分散ローター36とライナー34間で機械式衝撃力を受け、表面改質処理される。表面改質された表面改質粒子は、機内を通過する冷風にのって、ガイドリング39の外周(第一の空間41)に沿いながら分級ゾーンに導かれる。この時発生した微粉は、分級ローター31により再度機外へ排出され、粗粉は循環流に乗って再度表面改質ゾーンに戻され、繰り返し表面改質作用を受ける。一定時間経過後、排出弁38を開き、排出口37より表面改質粒子を回収する。
本発明者等が検討した結果、上記表面改質装置を用いた表面改質処理の工程において、原料供給口33からの微粉砕品の投入から排出弁開放までの時間(サイクルタイム)と分散ローターの回転数が、トナーの平均円形度と上記透過率(即ち、トナー粒子表面のワックス量)をコントロールする上で重要なことが分かった。平均円形度を上げるには、サイクルタイムを長くするか、分散ローターの周速を上げるのが効果的である。またトナーの透過率を低く抑えようとするなら、逆にサイクルタイムを短くするか、分散ローターの周速を下げることが有効である。その中でも特に分散ローターの周速がある一定以上にならないと、トナーを効率的に球形化できないため、サイクルタイムを長くして球形化しなければならず、必要以上にトナーの透過率を高くしてしまうことがある。前記透過率を所定以下に抑えつつトナーの円形度を向上させて、トナーの平均円形度及び前記透過率を上記範囲とするためには、分散ローターの周速は1.2×105mm/s以上で、サイクルタイムは5〜60秒であることが有効である。
本発明のトナーは、一成分系現像剤としても二成分系現像剤としても使用可能であるが、二成分系現像剤として使用すると、長期に渡り鮮明なカラー画像が得られやすく、好ましい。本発明のトナーを二成分系現像剤として用いる場合、本発明のトナーとキャリアとを混合して二成分系現像剤とすればよい。キャリアとしては、例えば表面酸化又は未酸化の鉄、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、カルシウム、マグネシウム、希土類等の金属及びそれらの合金又は酸化物及び磁性フェライト等の磁性キャリアが使用できる。
また、上記磁性キャリアの表面を樹脂等で被覆した樹脂コートキャリアは、本発明において好適に用いられる。樹脂コートキャリアの製造方法としては、従来公知の方法を採用することができ特に限定されないが、一例を挙げれば、磁性キャリアを浮遊流動させながら樹脂溶液をスプレーしキャリア表面にコート膜を形成させる方法、スプレードライ法、樹脂等の被覆材料を溶剤中に溶解又は懸濁させて磁性キャリアと混合し、剪断応力を加えながら溶剤を徐々に揮発させる方法、単に粉体と磁性キャリアを混合する方法等が挙げられる。
磁性キャリアの被覆材料としては、トナー融着等の磁性キャリアへのスペント化を防ぐ為に有用と考えられる表面エネルギーの小さい樹脂、例えばシリコーン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられ、その他にもポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリビニルブチラール、アミノアクリレート樹脂等が例示され、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いる。
また、磁性キャリアに対する接着性を高めるために、種々の添加物を併用し被膜の強靭性を高めることが好ましい。特にシリコーン樹脂を被覆する際は使用する被覆樹脂希釈溶剤中に水を添加することで、得られる被覆キャリアの耐久性及び帯電特性が更に改良される。これは、硬化型シリコーン樹脂の架橋点及びシランカップリング剤の加水分解が促進され、硬化反応がより進行すること、及び短時間ではあるがシリコーン樹脂の表面エネルギーが増加し、磁性キャリアとの密着性が向上することによるものである。
被膜樹脂の磁性キャリアに対する塗布量は、磁性キャリア100質量部あたり樹脂固形分が0.05〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部であることが好ましい。
また、磁性キャリアの重量平均粒径は好ましくは25〜80μm、より好ましくは30〜65μmである。粒径の測定はマイクロトラック粒度分析計(日機装社製)のSRAタイプを使用し、0.7〜125μmのレンジ設定で行うことができる。磁性キャリアの重量平均粒径が25μmよりも小さい場合、トナーとの混合が難しくなる。また、重量平均粒径が80μmを超えると、磁性キャリアの比表面積が小さいことから、トナー補給時の帯電能力が劣り、カブリやトナー飛散の原因となることがある。
本発明のトナーと上記形態の磁性キャリアとを混合して二成分系現像剤を調製する場合、その混合比率は現像剤中のトナー濃度として2〜15質量%、好ましくは4〜13質量%にすると通常良好な結果が得られる。トナー濃度が2質量%未満では画像濃度が低下しやすく、15質量%を超えるとカブリや機内飛散が発生しやすく、現像剤の耐用寿命が低下しやすい。
なお、本発明のモノアゾ系着色剤を含有するトナーとともに、本発明のモノアゾ系着色剤を含有しないトナーを使用する場合には、公知の材料を使用することができる。しかしながら、本発明のトナーと同様の優れた定着性、着色力、混色性、現像性、耐久性及び環境安定性や高精細、高品位のフルカラー画像を得るためには、本発明のトナーと同様にヘキサン中に抽出するワックス濃度を本発明の範囲内としたものを用いることが好ましい。
以下、本発明で用いられる各種物性の測定方法について説明する。
<トナーの抽出液中のワックス濃度の定量>
(1)サンプルの調製及びワックス濃度の算出
以下の操作は、23℃に温度制御された室内で行う。
30cm3のサンプルビン(例えば、商品名「SV−30」日電理化硝子社)にトナー300mgを精秤し、これにマグネティックスターラー用の長さ2cmの攪拌子を入れる。次いで、マグネティックスターラーを用いて攪拌子を回転させながら、液温を23℃に調整した溶剤(n−ヘキサン又はトルエン)20cm3を速やかに容器に入れて密閉し、トナーが溶剤中に充分に分散するように攪拌子の回転数を調整し、抽出時間の計測を行う。所定時間が経過したら直ちに抽出液をシリンジで吸引し、ポア径が0.45μmの耐溶剤性メンブランフィルター(例えば、商品名「マエショリディスク」東ソー社製)で濾過して、トナー抽出液としてのサンプル溶液とする。
得られたサンプル溶液について、以下の条件でガスクロマトグラフ分析を行う。抽出液のワックス濃度の算出には、予めワックスをn−ヘキサン及びトルエンに完全に溶解した標品数点を用意し、これをガスクロマトグラフ分析することでワックス濃度とガスクロマトグラフチャートにおけるワックスピークの面積値から検量線を作成し、この検量線に基づいて、サンプル溶液中のワックス濃度を算出する。
(2)ガスクロマトグラフ測定装置及び測定条件
ガスクロマトグラフ:HEWLETT PACKARD 6890GC
検出器:FID(水素炎イオン化検出器)
カラム:DB−1ht
(J&W社製 キャピラリーカラム、長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.10μm)
注入口温度:400℃
検出器温度:430℃
キャリアーガス:He
オーブン温度:150℃スタート、10℃/分で400℃まで昇温、15分ホールド
注入量:5.0×10−3cm3
スプリットレス、コンスタントフロー1.0cm3/min
<トナーの凝集度A及び凝集度Bの測定>
(1)サンプルの調製
(i)凝集度A測定用サンプルの調製
直径4cmの円筒状の容器にトナー20gを計りとり、表面を平らにして30分間放置する。その後、パウダーテスター(ホソカワミクロン社製)のタッピングモードを使用し、タッピング速度1回/1秒にて50回のタッピングを行い、1時間放置する。そして、容器を23℃、50%RHにて24時間放置した後、トナー全量をポリビンに移し、トナーの凝集塊がないようによく振る。
(ii)凝集度B測定用サンプルの調製
直径4cmの円筒状の容器にトナー20gを計りとり、表面を平らにして30分間放置する。その後、パウダーテスター(ホソカワミクロン社製)のタッピングモードを使用し、タッピング速度1回/1秒にて50回のタッピングを行い1時間放置する。そして、試料表面に均等に荷重がかかるようにして1.56kPaの荷重をかけ、50℃の乾燥機中に24時間放置する。その後、荷重をはずして23℃、50%RHにて24時間放置した後、トナー全量をポリビンに移し、トナーの凝集塊がないようによく振る。
(2)測定
測定はホソカワミクロン(株)製のパウダーテスターPT−R型を用い、目開き150μm、75μm、38μmの3種類の篩をそれぞれ上段、中段、下段として用いる。均一に混合した上記のトナー5.0gを最上段の篩上に計り取り、振動幅0.50mmで10秒間振動させ、各々の篩上に残存したトナー量から下記式を用いて、上記各サンプルの凝集度(A及びB)をそれぞれ算出する。
目開き150μmの篩上に残ったトナー質量×100/5.0 = a
目開き75μmの篩上に残ったトナー質量×0.6×100/5.0 = b
目開き38μmの篩上に残ったトナー質量×0.2×100/5.0 = c
凝集度(%) = a+b+c
<45体積%メタノール水溶液におけるトナーの透過率の測定>
(1)トナー分散液の調製
メタノールと水の体積混合比が45:55の水溶液を作製する。この水溶液10cm3を30cm3のサンプルビン(日電理化硝子:SV−30)に入れ、トナー20mgを液面上に浸しビンのフタをする。その後、ヤヨイ式振とう器(モデル:YS−LD)により2.5S−1で5秒間振とうする。この時、振とうする角度は、振とう器の真上(垂直)を0度とすると、前方に15度、後方に20度、振とうする支柱が動くようにする。サンプルビンは支柱の先に取り付けた固定用ホルダー(サンプルビンの蓋が支柱中心の延長上に固定されたもの)に固定する。サンプルビンを取り出した後、30秒後の分散液を測定用分散液とする。
(2)透過率の測定
上記(1)で得た分散液を1cm角の石英セルに入れ、分光光度計MPS2000(島津製作所社製)を用いて10分後の分散液の波長600nmにおける透過率(%)を測定する。
透過率(%) = I/I0×100
(上記式において、Iは透過光束、I0は入射光束を表す)
<トナーの重量平均粒径及び粒度分布の測定>
トナーの重量平均粒径及び粒度分布はコールターカウンターTA−II型又はコールターマルチサイザー(コールター社製)等種々の方法で測定可能である。本発明においては、コールターマルチサイザー(コールター社製)を用い、個数分布、体積分布を出力するインターフェイス(日科機製)及びパーソナルコンピュータを接続し、電解液には1級塩化ナトリウムを用いて調製した1%NaCl水溶液を用いる。このような電解液として、例えば、ISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。
測定法としては、前記電解水溶液100〜150cm3中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩0.1〜0.3cm3を加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、上記コールターマルチサイザーによりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2μm以上のトナー粒子の体積、個数を測定して体積分布と個数分布を算出する。これより、本発明に係わるところの体積分布から求めた重量平均粒径(D4:各チャンネルの中央値をチャンネルの代表値とする)を求めることができる。
<トナー中の着色剤の個数平均粒径測定>
本発明において、トナー中の着色剤の個数平均粒径は、下記の様にして測定する。具体的には、紫外線硬化型のアクリル樹脂中にトナーを充分に分散させた後、該アクリル樹脂
に紫外線を照射して硬化させる。ウルトラミクロトームを用いて得られた硬化物の面出しを行い、それを四酸化ルテニウム(RuO4)、又は必要に応じて四酸化オスミウム(OsO4)を併用して電子染色を施した後、ダイヤモンドナイフを備えたウルトラミクロトームを用いて薄片状のサンプルを切り出す。得られたサンプルを透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することにより、トナーの断面層形態を観察し、顕微鏡写真を得る。こうして得られたトナーの断面写真(例えば4万倍に拡大した断面写真)より、凝集体を形成していない着色剤を無作為に抽出し粒径の解析を行う。サンプリング数が300回を超えるまで測定を繰り返して着色剤の個数平均粒径を求める。
本発明では画像処理装置を用いて写真中の着色剤像を球形近似し、得られる直径より定義される値を着色剤の個数平均粒径(A)とする。また、TEM写真より直接着色剤の平均一次粒径を測定する際には、着色剤の長径を粒径とし、同じくサンプリング数が300回を超えるまで測定を繰り返して個数平均粒径(B)を求める。本発明では、上記の(A)も(B)もほぼ同じ結果が得られている。
<トナーの平均円形度の測定>
トナーの平均円形度は、フロー式粒子像測定装置「FPIA−2100型」(シスメックス社製)を用いて測定を行い、下式を用いて算出する。
ここで、「粒子投影面積」とは二値化されたトナー粒子像の面積であり、「粒子投影像の周囲長」とは該トナー粒子像のエッジ点を結んで得られる輪郭線の長さと定義する。測定は、512×512の画像処理解像度(0.3μm×0.3μmの画素)で画像処理した時の粒子像の周囲長を用いる。
本発明における円形度はトナー粒子の凹凸の度合いを示す指標であり、トナー粒子が完全な球形の場合に1.000を示し、表面形状が複雑になる程、円形度は小さな値となる。また、円形度頻度分布の平均値を意味する平均円形度Cは、粒度分布の分割点iでの円形度(中心値)をci、測定粒子数をmとすると、次式から算出される。
なお、本発明で用いている測定装置である「FPIA−2100」は、各粒子の円形度を算出後、平均円形度及び円形度標準偏差の算出に当たって、得られた円形度によって、粒子を円形度0.4〜1.0を0.01ごとに等分割したクラスに分け、その分割点の中心値と測定粒子数を用いて平均円形度及び円形度標準偏差の算出を行う。
具体的な測定方法としては、容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水10mlを用意し、その中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を加えた後、更に測定試料を0.02g加え、均一に分散させる。分散させる手段としては、超音波分散機「Tetora150型」(日科機バイオス社製)を用い、2分
間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、該分散液の温度が40℃以上とならない様に適宜冷却する。また、円形度のバラツキを抑えるため、フロー式粒子像分析装置FPIA−2100の機内温度が26〜27℃になるよう装置の設置環境を23℃±0.5℃にコントロールし、一定時間おきに、好ましくは2時間おきに2μmラテックス粒子を用いて自動焦点調整を行う。
トナー粒子の円形度測定には、前記フロー式粒子像測定装置を用い、測定時のトナー粒子濃度が3,000〜1万個/μlとなる様に該分散液濃度を再調整し、トナー粒子を1,000個以上計測する。計測後、このデータを用いて、円相当径3μm未満のデータをカットして、トナー粒子の平均円形度を求める。
<示差熱分析測定>
示差走査熱量計(DSC測定装置)、DSC−7(パーキンエルマー社製)やDSC2920(TAインスツルメンツジャパン社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。測定試料は2〜10mg、好ましくは5mgを精密に秤量する。これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。なお、測定においては、昇温、続いて降温をまず始めに1回行った後に再度昇温を行い、この昇温過程における温度30〜200℃の範囲におけるDSC曲線の最大の吸熱ピークを、本発明における最大吸熱ピークのピーク温度とする。
<分子量分布の測定>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるテトラヒドロフラン(THF)に可溶な樹脂成分の分子量分布の測定は、以下の様にして行えばよい。
結着樹脂又はトナーをTHFに常温で24時間静置して溶解した溶液を、ポア径が0.45μmの耐溶剤性メンブランフィルター(例えば、商品名「マエショリディスク」東ソー社製)で濾過してサンプル溶液とし、以下の条件で測定する。なお、サンプル調製は、THFに可溶な成分の濃度が0.4〜0.6質量%になるようにTHFの量を調整する。
装置:高速GPC HLC8120 GPC(東ソー社製)
カラム:Shodex KF−801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0cm3/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10cm3
また、試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(東ソー社製TSK スタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−5.000、A−1000、A−500)により作成した分子量校正曲線を使用する。
以下、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の配合量における「部」は「質量部」を意味する。
<結着樹脂の製造>
(ハイブリッド樹脂Aの製造例)
温度計、攪拌機、コンデンサー及び窒素導入管を備えたオートクレーブに、トルエン1
00部、オクタン100部、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン48.1部(35.0モル%)、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン19.2部(15.0モル%)、テレフタル酸20.4部(31.3モル%)、無水トリメリット酸9.4部(12.4モル%)、フマル酸2.9部(6.3モル%)、DSCにおける最大吸熱ピークのピーク温度が75℃の精製ノルマルパラフィンワックス4部、及び酸化ジブチル錫0.3部を入れ、オートクレーブ内を窒素ガスで置換した後、密閉した。その後、撹拌しながら徐々に昇温し、180℃で保持した。
一方、スチレン17.8部、アクリル酸2−エチルヘキシル4.8部、フマル酸2.0部、ジ−t−ブチルパーオキサイド0.5部を常温でよく混合し、この混合物を先のオートクレーブに5時間かけて注入してビニル系モノマーのラジカル重合を行い、ビニル系共重合体の生成と共に、前記パラフィンワックスへのビニル系モノマーのグラフト化反応を行った。その後、反応液を200℃まで昇温して3時間保持した後、一旦反応液を100℃まで冷却、保持し、減圧下で、反応で生成した縮合水と共にトルエン、オクタンの大部分を留去した。その後、更に反応液を200℃まで昇温し、3時間保持することで、縮合反応を完結すると共に脱水、脱溶剤を行い、ハイブリッド樹脂Aを得た。GPCによる分子量測定結果を表1に示す。
(ハイブリッド樹脂Bの製造例)
温度計、撹拌機、コンデンサー及び窒素導入管を備えた反応容器に、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン48.1部(35.0モル%)、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン19.2部(15.0モル%)、テレフタル酸20.4部(31.3モル%)、無水トリメリット酸9.4部(12.4モル%)、フマル酸2.9部(6.3モル%)及び酸化ジブチル錫0.3部を入れ、反応容器内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、135℃の温度で撹拌した。
一方、スチレン4.18部、アクリル酸2−エチルヘキシル1.15部、フマル酸0.52部、α−メチルスチレンの2量体0.12部、ジクミルパーオキサイド0.20部を常温でよく混合し、これを先の反応容器に4時間かけて滴下した。その後、反応液を200℃まで昇温し、6時間反応させてハイブリッド樹脂Bを得た。GPCによる分子量測定結果を表1に示す。
(ポリエステル樹脂Cの製造例)
温度計、撹拌機、コンデンサー及び窒素導入管を備えた反応容器に、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン48.1部(35.0モル%)、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン19.2部(15.0モル%)、テレフタル酸20.4部(31.3モル%)、無水トリメリット酸9.4部(12.4モル%)、フマル酸2.9部(6.3モル%)及び酸化ジブチル錫0.30部を入れ、反応容器内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、215℃で4時間縮合反応させ、ポリエステル樹脂Cを得た。GPCによる分子量測定結果を表1に示す。
(ビニル系共重合体Dの製造例)
温度計、撹拌機、コンデンサー及び窒素導入管を備えた反応容器にキシレン200部を仕込み、撹拌しながら容器内を十分に窒素で置換して120℃に昇温させた。そこに、下記の各成分を常温でよく混合したものを5時間かけて滴下して、ラジカル重合を行った。更に昇温を行い、キシレン還流下でラジカル重合を完了し、減圧下で溶媒を蒸留除去して、ビニル系共重合体Dを得た。GPCによる分子量測定結果を表1に示す。
・スチレン 77部
・アクリル酸2−エチルヘキシル 18部
・マレイン酸モノブチル 5部
・ジ−t−ブチルパーオキサイド 1部
<着色剤の製造>
(モノアゾ系顔料組成物の製造例1)
3−アミノ−4−メトキシベンズアニライド48部を水1000部に分散させ、5℃以下の温度条件下で35%−希塩酸60部を加えて20分間撹拌した。その後、30%−亜硝酸ナトリウム水溶液50部を加えて60分間撹拌後、スルファミン酸2部を加えて過剰の亜硝酸を分解した。更に酢酸ナトリウム50部と90%−酢酸75部を添加し、ジアゾニウム塩水溶液を調製した。
これとは別に、5℃以下の温度条件下で3−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボキシアミド19部とN−(3−ニトロフェニル)−3−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボキシアミド26部を水酸化ナトリウム25部と共に水1,000部に溶解させた後、塩化カルシウム水溶液と顔料組成物の粒径調整剤としてアニオン性界面活性剤であるアルキルベンゼンスルフォン酸を適量添加し、カップラー水溶液を調製した。
次いで、該カップラー水溶液に上記ジアゾニウム塩水溶液を撹拌しながら一括投入し、5℃以下の温度を維持しながらpH5の条件下でカップリング反応を行った。更に、アビエチン酸の水酸化ナトリウム水溶液を加え、十分に撹拌してレーキ化反応を完了させ、90℃以上の温度条件下で加熱熟成処理を行い、粗顔料組成物(1)を得た。
該粗顔料組成物(1)を濾別した後、得られた顔料組成物ケーキを水酸化ナトリウム水溶液中に再分散させ、アルカリ洗浄を行った。アルカリ洗浄後、再度、粗顔料組成物(1)を濾別回収し、これを十分に水洗浄した。この操作を数回繰り返した後、高温下で乾燥し、微粉砕を行うことにより、アビエチン酸カルシウムで処理された「P.R.150」と「P.R.31」を主成分とするモノアゾ系顔料組成物(1)を得た。得られたモノアゾ系顔料組成物(1)の、「P.R.150」と「P.R.31」とアビエチン酸カルシウムの質量比は、50:50:10であった。
(モノアゾ系顔料組成物の製造例2、3、4)
アビエチン酸の水酸化ナトリウム水溶液の投入量を変えてレーキ化反応をすることを除いては、上記「モノアゾ系顔料組成物の製造例1」と同様の方法を用いて「P.R.150」と「P.R.31」とアビエチン酸カルシウムの質量比がそれぞれ、50:50:18であるモノアゾ系顔料組成物(2)、50:50:2であるモノアゾ系顔料組成物(3)、及び50:50:0.8であるモノアゾ系顔料組成物(4)を得た。
<顔料分散樹脂の製造>
(顔料分散樹脂Aの製造例)
・ハイブリッド樹脂B 50部
・モノアゾ系顔料組成物(1) 50部
・水 30部
上記の原材料をヘンシェルミキサーで十分に混合した後、ニーダー型ミキサーに仕込み、混合しながら非加圧下で昇温させた。上記混合物の温度が105℃に達した後、更に10分間加熱溶融混練させ、顔料を樹脂中に分散させた。その後、混合物から分離した水を排水し、混合物の温度を更に118℃まで昇温させ、約20分間加熱溶融混練を行い、顔料を十分に分散させた。分散後、混合物の温度を約60℃まで冷却し、再度、加熱せずに混練物温度を110℃以下に保ちながら約15分間混錬を行って、更に顔料を分散させた。その後、混練物を取り出し、冷却し、ハンマーミルを用いて約1〜2mm程度に粗粉砕して、顔料分散樹脂Aを得た。
(顔料分散樹脂Bの製造例)
着色剤として、モノアゾ系顔料組成物(2)を使用したこと以外は、顔料分散樹脂Aの製造例と同様の方法を用いて顔料分散樹脂Bを得た。
(顔料分散樹脂Cの製造例)
着色剤として、モノアゾ系顔料組成物(3)を使用したこと以外は、顔料分散樹脂Aの製造例と同様の方法を用いて顔料分散樹脂Cを得た。
(顔料分散樹脂Dの製造例)
着色剤として、モノアゾ系顔料組成物(4)を使用したこと以外は、顔料分散樹脂Aの製造例と同様の方法を用いて顔料分散樹脂Dを得た。
(顔料分散樹脂Eの製造例)
着色剤として「P.R.150」12部及び「P.R.31」30部を用い、更に水添ロジン8部を使用したこと以外は、顔料分散樹脂Aの製造例と同様の方法を用いて顔料分散樹脂Eを得た。
(顔料分散樹脂Fの製造例)
着色剤として、「P.R.269」45.5部を用い、更に水添ロジン4.5部を添加したこと以外は、顔料分散樹脂Aの製造例と同様の方法を用いて顔料分散樹脂Fを得た。
(顔料分散樹脂Gの製造例)
着色剤として、「P.Y.5」45.5部を用い、更にトール油ロジン4.5部を添加したこと以外は、顔料分散樹脂Aの製造例と同様の方法を用いて顔料分散樹脂Gを得た。
<トナーの製造>
(トナーの製造例1)
・ハイブリッド樹脂A 104部
・顔料分散樹脂A 11部
・3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 2部
上記の材料を十分にヘンシェルミキサーにより予備混合した。その後、二軸押出し混練機で上記混合物を溶融混練し、冷却後、ハンマーミルを用いて約1〜2mm程度に粗粉砕し、次いでエアージェット方式による微粉砕機で20μm以下の粒径に微粉砕して微粉砕物を得た。
その後、図1及び図2に示す、機械式衝撃力を用いる表面改質処理(球形化処理)と分級を同時に行う装置にて上記微粉砕物を処理して、平均円形度が0.931であるトナー
粒子1を得た。更に、このトナー粒子1を100部と、i−C4H9Si(OCH3)3で表面処理した疎水性酸化チタン微粉末(BET法による比表面積150m2/g)1.5部とをヘンシェルミキサーにより混合して、トナー1を得た。トナー1の内添処方を表2に、トナー1の物性を表3−1及び表3−2に、それぞれ示す。
(トナーの製造例2)
トナーの製造例1において、顔料分散樹脂Aの代わりに顔料分散樹脂Bを使用したこと、及び図1及び図2に示す装置の運転条件を変更した以外はトナーの製造例1と同様の方法を用いて、平均円形度が0.945のトナー2を得た。トナー2の内添処方を表2に、トナー2の物性を表3−1及び表3−2にそれぞれ示す。
(トナーの製造例3)
トナーの製造例1において、顔料分散樹脂Aの代わりに顔料分散樹脂Cを使用したこと、及び図1及び図2に示す装置の運転条件を変更した以外はトナーの製造例1と同様の方法を用いて、平均円形度が0.957のトナー3を得た。トナー3の内添処方を表2に、トナー3の物性を表3−1及び表3−2にそれぞれ示す。
(トナーの製造例4)
トナーの製造例2において、図1及び図2に示す装置による微粉砕物の処理を行わず、風力分級装置(エルボージェット分級機、日鉄鉱業社製)を用いて分級を行い、トナー粒子4を得た。その後、トナーの製造例1と同様にして、平均円形度が0.915のトナー4を得た。トナー4の内添処方を表2に、トナー4の物性を表3−1及び表3−2にそれぞれ示す。
(トナーの製造例5)
3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物を3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸ジルコニウム化合物(商品名TN−105、保土谷化学社製)に代えた以外はトナーの製造例2と同様の方法を用いてトナー5を得た。トナー5の内添処方を表2に、トナー5の物性を表3−1及び表3−2にそれぞれ示す。
(トナーの製造例6)
トナーの製造例1において、顔料分散樹脂Aの代わりに顔料分散樹脂Dを使用し、ハイブリッド樹脂A[104部]を、ハイブリッド樹脂A[78部]及びハイブリッド樹脂B[25部]に代え、DSCにおける最大吸熱ピークのピーク温度が75℃の精製ノルマルパラフィンワックス1部を更に加えた以外は、上記製造例1と同様の方法を用いてトナー6を得た。トナー6の内添処方を表2に、トナー6の物性を表3−1及び表3−2にそれぞれ示す。
(トナーの製造例7)
トナーの製造例1において、顔料分散樹脂Aの代わりに顔料分散樹脂Eを使用し、ハイブリッド樹脂A[104部]を、ハイブリッド樹脂A[78部]とポリエステル樹脂C[25部]に代え、DSCにおける最大吸熱ピークのピーク温度が75℃の精製ノルマルパラフィンワックス1部を更に加えた以外は、上記製造例1と同様の方法を用いてトナー7を得た。トナー7の内添処方を表2に、トナー7の物性を表3−1及び表3−2にそれぞれ示す。
(トナーの製造例8)
トナーの製造例1において、顔料分散樹脂Aの代わりに顔料分散樹脂Fを使用し、ハイブリッド樹脂A[104部]を、ハイブリッド樹脂A[78部]及びビニル系共重合体D[25部]に代え、DSCにおける最大吸熱ピークのピーク温度が75℃の精製ノルマル
パラフィンワックス1部を更に加えた以外は、上記製造例1と同様の方法を用いてトナー8を得た。トナー8の内添処方を表2に、トナー8の物性を表3−1及び表3−2にそれぞれ示す。
(トナーの製造例9)
トナーの製造例1において、ハイブリッド樹脂A[104部]を、ハイブリッド樹脂A[52部]及びハイブリッド樹脂B[50部]に代え、DSCにおける最大吸熱ピークのピーク温度が75℃の精製ノルマルパラフィンワックス2部を更に加えた以外は、上記製造例1と同様の方法を用いてトナー9を得た。トナー9の内添処方を表2に、トナー9の物性を表3−1及び表3−2にそれぞれ示す。
(トナーの製造例10)
トナーの製造例1において、ハイブリッド樹脂A[104部]を、ハイブリッド樹脂A[52部]及びハイブリッド樹脂B[50部]に代え、DSCにおける最大吸熱ピークのピーク温度が68℃のステアリン酸ステアリル(エステルワックス)2部を更に加え、図1及び図2に示す装置による微粉砕物の処理を行わず、風力分級装置(エルボージェット分級機)を用いて分級を行って、トナー粒子10を得た。その後、トナーの製造例1と同様にして、平均円形度が0.914のトナー10を得た。トナー10の内添処方を表2に、トナー10の物性を表3−1及び表3−2にそれぞれ示す。
(トナーの製造例11)
粉砕装置の粉砕圧力条件を変更した以外はトナーの製造例9と同様の方法を用いて、10μm以上の粒径を有するトナーが15体積%、重量平均粒径が9.6μmのトナー11を得た。トナー11の内添処方を表2に、トナー11の物性を表3−1及び表3−2にそれぞれ示す。
(トナーの製造例12)
トナーの製造例9において、顔料分散樹脂Aの代わりに顔料分散樹脂Dを使用し、粉砕装置の粉砕圧力条件を変更した以外は、上記製造例9と同様の方法を用いて、4μm以下の粒径を有するトナーが58個数%、重量平均粒径が3.9μmのトナー12を得た。トナー12の内添処方を表2に、トナー12の物性を表3−1及び表3−2にそれぞれ示す。
(トナーの製造例13)
トナーの製造例1において、顔料分散樹脂Aの代わりに着色剤としてP.R.184を7.8質量部及び着色剤分散剤として水添ロジンを1.5質量部使用し、DSCにおける最大吸熱ピークのピーク温度が75℃の精製ノルマルパラフィンワックス8部を加えた以外は、上記製造例1と同様の方法を用いてトナー13を得た。トナー13の内添処方を表2に、トナー13の物性を表3−1及び表3−2にそれぞれ示す。
(トナーの製造例14)
顔料分散樹脂Aの代わりに顔料分散樹脂Gを使用した以外は、トナーの製造例1と同様の方法を用いてトナー14を得た。トナー14の内添処方を表2に、トナー14の物性を表3−1及び表3−2にそれぞれ示す。
(トナーの製造例15)
・ハイブリッド樹脂B 100部
・DSCにおける最大吸熱ピークのピーク温度が75℃の精製パラフィンワックス
4部
・P.R.8 8部
・3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 2部
上記の材料を十分にヘンシェルミキサーにより予備混合した。その後、二軸押出し混練機で溶融混練し、冷却後ハンマーミルを用いて約1〜2mm程度に粗粉砕し、次いでエアージェット方式による微粉砕機で20μm以下の粒径に微粉砕した。その後、風力分級装置(エルボージェット分級機)を用いて分級を行い、トナー粒子15を得た。
更に、このトナー粒子15を100部と、i−C4H9Si(OCH3)3で表面処理した疎水性酸化チタン微粉末(BET法による比表面積150m2/g)1.5部とをヘンシェルミキサーにより混合して、トナー15を得た。トナー15の内添処方を表2に、トナー15の物性を表3−1及び表3−2にそれぞれ示す。
(トナーの製造例16)
ハイブリッド樹脂B[100部]の代わりに、ポリエステル樹脂C[70部]及びビニル系共重合体D[30部]を使用した以外はトナーの製造例15と同様の方法を用いて、トナー16を得た。トナー16の内添処方を表2に、トナー16の物性を表3−1及び表3−2にそれぞれ示す。
(トナーの製造例17)
トナーの製造例15において、P.R.8の代わりにP.R.17を7.8部使用し、着色剤分散剤としてトール油ロジンを1.8部使用し、ハイブリッド樹脂B[100部]
の代わりにポリエステル樹脂C[100部]を使用した以外は、上記製造例15と同様の方法を用いてトナー17を得た。トナー17の内添処方を表2に、トナー17の物性を表3−1及び表3−2にそれぞれ示す。
(トナーの製造例18)
トナーの製造例15において、P.R.8の代わりにP.R.112を7.9部使用し
、着色剤分散剤としてトール油ロジンを2.4部使用し、ハイブリッド樹脂B[100部
]の代わりにビニル系共重合体D[100部]を使用した以外は、上記製造例15と同様の方法を用いてトナー18を得た。トナー18の内添処方を表2に、トナー18の物性を表3−1及び表3−2にそれぞれ示す。
(トナーの製造例19)
トナーの製造例1において、顔料分散樹脂Aの代わりに着色剤としてP.R.8を8質量部使用し、DSCにおける最大吸熱ピークのピーク温度が75℃の精製ノルマルパラフィンワックス15部を更に加えた以外は、上記製造例1と同様の方法を用いてトナー19を得た。トナー19の内添処方を表2に、トナー19の物性を表3−1及び表3−2にそれぞれ示す。
(トナーの製造例20)
4つ口フラスコ中に、イオン交換水700部と0.1kmol/m3のNa3PO4水溶液800部を投入して60℃に加温した。これをTK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)にて170s−1で撹拌しつつ、1.01kmol/m3のCaCl2水溶液70部を添加し、微小な難水溶性分散剤Ca3(PO4)2を含む水系分散媒体を調製した。
一方、下記からなる混合物をアトライター(三井金属社製)を用いて常温で4時間分散し、均一な重合性単量体組成物を調製した。
・スチレン 78部
・アクリル酸n−ブチル 22部
・ジビニルベンゼン 0.2部
・P.R.238 4部
・DSCにおける最大吸熱ピークのピーク温度が78℃のベヘン酸ベヘニル(エステルワックス)
10部
・3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 2部
・2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 3部
次に、前記水系分散媒体中に該重合性単量体組成物を投入し、内温60℃の窒素雰囲気下で、ホモミキサーで10分間撹拌して、造粒を行った。その後、撹拌装置をパドル撹拌羽根に換え、3.3s−1で撹拌しながら60℃で5時間保持した後、更に80℃まで昇温して5時間保持し、トナー粒子の懸濁液を得た。
その後懸濁液を冷却し、希塩酸を添加して2時間撹拌を行い、分散剤Ca3(PO4)2を溶解した。更に、この懸濁液をろ過し、トナー粒子の水洗を繰り返し行った。その後、得られた含水トナー粒子を40℃で3日間熱風乾燥して、トナー粒子20を得た。
更に、このトナー粒子20を100部と、i−C4H9Si(OCH3)3で表面処理した疎水性酸化チタン微粉末(BET法による比表面積150m2/g)1.5部とをヘンシェルミキサーにより混合してトナー20を得た。トナー20の内添処方を表2に、トナー20の物性を表3−1及び表3−2にそれぞれ示す。
(トナーの製造例21)
ポリエステル樹脂Cを3部、P.R.238を5部、酢酸エチル92部をアトライターを用いて分散し、顔料分散液を調製した。
次いで、DSCにおける最大吸熱ピークのピーク温度が75℃の精製ノルマルパラフィンワックス15部とトルエン85部を加熱可能な分散機に投入し、撹拌しながら100℃に加熱し、3時間撹拌した。そして、撹拌しながら毎分約2℃の割合で室温まで冷却し、微粒子化したワックスを析出させた。ワックスの平均粒度は約1μmであった。このワックス分散液を高圧乳化機(APV GAULIN HOMOGENIZER 15MR型)を用い、圧力49MPaで再度分散を行った。ワックス粒度を測定したところ0.81μmであった。作製した微粒子化ワックスの分散液は、ワックスの濃度が15質量%になるように酢酸エチルで希釈した。
ポリエステル樹脂Cを98部、顔料分散液(顔料濃度5質量%)80部、微粒子化ワックスの分散液(ワックス濃度15質量%)26部、及び酢酸エチル32部を混合し、ポリエステル樹脂を充分に溶解した。そして、混合物をTK式ホモミキサーにて回転数170s−1で10分間撹拌し、均一な油相を調製した。
一方、炭酸カルシウム(重量平均粒径0.03μm)60部、及び水40部をボールミルで4日間撹拌し、炭酸カルシウム水溶液を調製した。また、カルボキシルメチルセルロース2部及び水98部を混合して、カルボキシルメチルセルロース水溶液を調製した。
上記の油相60部、炭酸カルシウム水溶液10部、及びカルボキシルメチルセルロース水溶液30部をコロイドミル(日本精機社製)に投入し、ギャップ間隔1.5mm、回転数133s−1で20分間乳化を行った。次にこの乳化物を、ロータリーエバポレータに投入し、室温の減圧(15hPa)下で3時間脱溶媒を行った。その後12N塩酸をpH2になるまで加え、炭酸カルシウムをトナー粒子表面から除去した。その後、10Nの水酸化ナトリウムをpH10になるまで加え、更に超音波洗浄槽中で撹拌機で撹拌しながら一時間撹拌を継続した。更に遠心沈降を行い、その上澄みを3回交換して洗浄した後、乾燥してトナー粒子21を得た。
更に、このトナー粒子21を100部と、i−C4H9Si(OCH3)3で表面処理した疎水性酸化チタン(BET法による比表面積150m2/g)1.5部とをヘンシェルミキサーにより混合して、トナー21を得た。トナー21の内添処方を表2に、トナー21の物性を表3−1及び表3−2にそれぞれ示す。
(トナーの製造例22)
スチレン2500g、アクリル酸n−ブチル300g、アクリル酸56g、ドデカンチオール110g、4臭化炭素30gを混合し、油相を調製した。一方、フラスコ中でポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル43g、及びアルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム59gをイオン交換水3,500gに溶解した。これに上記の油相を分散させて乳化し、10分間ゆっくりと混合しながら、過硫酸アンモニウム29gを溶解したイオン交換水700gを投入し、窒素置換を行った。その後フラスコを攪拌しながらオイルバスで内容物を70℃になるまで加熱し、6時間そのまま乳化重合を継続し、分散樹脂微粒子の平均粒径が155nmのアニオン性の樹脂微粒子分散液(1)を得た。
スチレン1940g、アクリル酸n−ブチル830g、及びアクリル酸57gを混合し、油相を調製した。一方、フラスコ中でポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル43g、及びアルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム90gをイオン交換水3,500gに溶解した。これに上記の油相を分散させて乳化し、10分間ゆっくりと混合しながら過硫酸アンモニウム15gを溶解したイオン交換水700gを投入し、窒素置換を行った。その後、フラスコを攪拌しながらオイルバスで内容物が70℃になるまで加熱し、6時間そのまま乳化重合を継続し、分散樹脂微粒子の平均粒径が100nmのアニオン性の樹脂微粒子分散液(2)を得た。
P.R.238を210g、アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム42g、及び水1,400gを混合溶解し、超音波分散機を10回通過させて、顔料分散液を得た。また、DSCにおける最大吸熱ピークのピーク温度が75℃の精製ノルマルパラフィンワックス350g、アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム53g、及び水1,400gを95℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理して離型剤分散液を得た。更に、ポリ塩化アルミニウム(10質量%)18g、0.1%硝酸水溶液162gをホモジナイザーを用いて5分間分散し、分散された凝集剤水溶液を得た。
樹脂微粒子分散液(1)835g、樹脂微粒子分散液(2)550g、顔料分散液210g、離型剤分散液280g、及び水4,300gを加熱ジャケット付攪拌槽で室温で十分に混合した。これに凝集剤水溶液を180gを攪拌槽上部より3分間かけて加えながら、5分間攪拌を継続し、その後6分間分散処理を行い、分散液を調製した。この分散液の重量平均径は約2.5μmであった。
次いで、前記攪拌槽の加熱ジャケットで分散液を48℃まで加熱し、60分間保持した。その際の分散液の重量平均粒径は約4.8μmであり、凝集粒子が確認された。この分散液に樹脂微粒子分散液(1)を緩やかに430g追加し、更に1時間保持すると、重量平均径が約5.4μmの凝集粒子が確認された。次いで、この分散液に、4%水酸化ナトリウム水溶液150gを追加して97℃まで加熱し、更に2質量%の硝酸水溶液100gを添加して6時間保持して凝集粒子を融合させた。その後、冷却し、ろ過し、水で充分洗浄した後、400メッシュの篩でろ過を行った。前記融合粒子を水で洗浄した後、真空乾燥機で乾燥してトナー粒子22を得た。
更に、このトナー粒子22を100部と、i−C4H9Si(OCH3)3で表面処理
した疎水性酸化チタン(BET法による比表面積150m2/g)1.5部とをヘンシェルミキサーにより混合して、トナー22を得た。トナー22の内添処方を表2に、トナー22の物性を表3−1及び表3−2にそれぞれ示す。
<二成分現像剤の調製>
上記トナーの製造例で製造した各トナーと、磁性フェライトキャリアをシリコーン樹脂で表面被覆した樹脂コートキャリア(平均粒径50μm:Mn−Mgフェライト)を、トナー濃度が6質量%になるように均一に混合し、二成分系現像剤を作製した。
<実施例1>
二成分系現像剤1について、カラー複写機iRC−3200(キヤノン製)を使用し、転写材として複写機用普通紙(80g/m2、キヤノン製)を用い、24枚(A4サイズ)/分の速度で、画像を5000枚出力し、耐印試験を行った。
出力画像は、低温低湿度環境下(15℃/10%RH)、常温常湿環境下(23℃/50%RH)、高温高湿環境下(30℃/80%RH)において、それぞれ画像面積比率4%、7%、12%の画像を出力した。
次に、各評価項目について説明する。評価結果を表4に示す。
(1)低温定着性
以下の操作は低温低湿(15℃、10%RH)環境下で行った。
定着装置を画像形成装置から取り外し、「プローバーボンド紙」(105g/m2、フォックスリバー社製)を転写材として用い、紙上のトナーの載り量が0.45〜0.50mg/cm2のベタ画像の未定着画像20枚を用意した。次いで、定着装置の速度を40枚(A4サイズ)/分に設定し(定着温度は180℃設定)、上記未定着画像20枚を定着装置に連続で通し、定着させた。
20枚目の定着画像の後端から5cmの部分において、4.9kPaの荷重をかけつつ柔和な薄紙(例えば、商品名「ダスパー」、小津産業社製)により、得られた定着画像を5往復摺擦し、摺擦前と摺擦後の画像濃度をそれぞれ測定して、下式により画像濃度の低下率ΔD1(%)を算出した。なお、画像濃度はX−Riteカラー反射濃度計(Color reflection densitometer X−Rite 404A)で測定した。
ΔD1(%) = (摺擦前の画像濃度−摺擦後の画像濃度)×100/摺擦前の画像濃度
次に、上記20枚目の定着画像の中心部の画像濃度を測定し、この部分に素材がポリエステルの透明な粘着テープを貼り、その上から4.9kPaの荷重をかけつつ柔和な薄紙により5往復摺擦した。その後、テープを剥がして画像濃度を測定し、テープを貼る前とテープを剥がした後での画像濃度の低下率ΔD2(%)を下式により算出した。
ΔD2(%) = (テープを貼る前の画像濃度−テープを剥がした後の画像濃度)
×100/テープを貼る前の画像濃度
更に、上記20枚目の定着画像の先端から5cmの部分の画像濃度を測定し、まずその部分を縦方向に軽く折り曲げ、その上から4.9kPaの荷重をかけつつ柔和な薄紙により1往復摺擦した。その後、折り曲げた定着画像を一旦開き、今度は先端から5cmの部分を横方向に折り曲げて同様に摺擦した。次いで、折り曲げた定着画像を開き、定着画像上の縦と横の折り目の交差した部分に、4.9kPaの荷重をかけつつ柔和な薄紙により5往復摺擦し、折り曲げる前の画像濃度と折り曲げて5往復摺擦した後の画像濃度をそれぞれ測定し、画像濃度の低下率ΔD3(%)を下式により算出した。
ΔD3(%) = (折り曲げる前の画像濃度−折り曲げて5往復摺擦した後の画像濃度)
×100/折り曲げる前の画像濃度
そして、ΔD1、ΔD2、及びΔD3の合計値ΔD(%)を算出し(ΔD=ΔD1+ΔD2+ΔD3)、ΔDについて以下の基準で低温定着性を評価した。
A:非常に良好(10%未満)
B:良好(10%以上、20%未満)
C:普通(20%以上、30%未満)
D:悪い(30%以上)
(2)耐高温オフセット性
以下の操作は高温高湿(30℃、80%RH)環境下で行った。
定着装置を画像形成装置から取り外し、複写機用再生紙(68g/m2、キヤノン製)を転写材として用い、紙上のトナーの載り量が1.5mg/cm2の未定着画像10枚を用意した。次いで、定着装置の速度を8枚(A4サイズ)/分に設定し、前記の未定着画像10枚を定着装置に連続で通し、その直後に、前記複写機用再生紙1枚を定着装置に通した。そして、最後に定着装置に通した再生紙と未使用の再生紙の白色度の最悪値をそれ
ぞれ測定し、これらの白色度の差を算出した。そして、この白色度の差について、以下の基準で耐高温オフセット性を評価した。尚、白色度はアンバーフィルターを搭載したリフレクトメーター(東京電色株式会社製の「REFLECTOMETER MODEL TC−6DS」)によって測定した。
A:非常に良好(0.5%未満)
B:良好(0.5%以上、1.0%未満)
C:普通(1.0%以上、2.0%未満)
D:悪い(2.0%以上)
(3)OHT透過性
以下の操作は常温常湿(23℃、50%RH)環境下で行った。
オーバーヘッドプロジェクター(OHP)に投影したOHP画像の透明性については、市販のオーバーヘッドプロジェクターを用いて、トランスペアレンシーフィルムに形成したベタ画像を投影して、投影像を目視で観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。評価基準は以下の通りである。
A:透明性に優れ、明暗ムラもなく、色再現性も優れる。
B:若干明暗ムラがあるものの、実用上問題ない。
C:明暗ムラがあり、色再現性に乏しい。
D:透明性、色再現性に乏しく実用上問題あり。
(4)着色力
以下の操作は常温常湿(23℃、50%RH)環境下で行った。
カラー複写機用普通紙(80g/m2、キヤノン製)を転写材として用い、紙上のトナーの載り量が0.2mg/cm2から0.8mg/cm2の範囲である数種類のベタ画像を作成し、それらの定着画像の画像濃度を上記のX−Riteカラー反射濃度計を用いて測定した。各トナー載り量の画像について得られた画像濃度から、転写紙上のトナー量と画像濃度の関係をグラフ化した。そして、紙上のトナーの載り量が0.50mg/cm2のときの画像濃度をグラフから読み取り、以下の評価基準に基づいて相対的に着色力を評価した。
A:非常に良好(1.40以上)
B:良好(1.35以上、1.40未満)
C:普通(1.20以上、1.35未満)
D:悪い(1.20未満)
(5)画像濃度
常温常湿環境下における3,000枚目のベタ画像の画像濃度より、以下の基準に基づいて評価した。なお、画像濃度は前記したX−Riteカラー反射濃度計で測定した。
A:非常に良好(1.60以上)
B:良好(1.40以上、1.60未満)
C:普通(1.20以上、1.40未満)
D:悪い(1.20未満)
(6)カブリ
高温高湿環境下での画像出力が終了した後、ベタ白画像を出力し、ベタ白画像形成途中で画像形成装置を強制的に停止させ、感光ドラム上のベタ白画像部分を透明な粘着テープでテーピングし、白色紙に貼りつけた。同じ白色紙に未使用のテープのみを貼りつけてそ
れぞれの白色度を測定し、白色度の差からカブリを算出した。得られたカブリの値より、以下の評価基準に基づいて評価を行った。なお、白色度は前記したリフレクトメーターにより測定した。
A:非常に良好(2.0%未満)
B:良好(2.0%以上、3.0%未満)
C:普通(3.0%以上、5.0%未満)
D:悪い(5.0%以上)
(7)環境安定性
低温低湿環境下、及び高温高湿環境下における5,000枚目のベタ画像の画像濃度をそれぞれ測定し、これらの濃度差を算出した。この濃度差をトナーの環境安定性の指標とし、以下の評価基準に基づいて評価した。なお、画像濃度は前記したX−Riteカラー反射濃度計で測定した。
A:非常に良好(0.10未満)
B:良好(0.10以上、0.15未満)
C:普通(0.15以上、0.25未満)
D:悪い(0.25以上)
(8)耐久安定性
高温高湿環境下における1,000枚目と5,000枚目のベタ画像の画像濃度をそれぞれ測定し、その濃度差を算出した。この濃度差をトナーの耐久安定性の指標とし、以下の評価基準に基づいて評価した。なお、画像濃度は前記したX−Riteカラー反射濃度計で測定した。
A:非常に良好(0.10未満)
B:良好(0.10以上、0.15未満)
C:普通(0.15以上、0.25未満)
D:悪い(0.25以上)
(9)耐久使用後の階調性
耐久使用後の階調性の評価については、常温常湿環境下での画像出力が終了した後、カラー複写機用普通紙(80g/m2、キヤノン製)を転写材として、図4に示すパターン形成方法の異なる8種類の画像を出力し、前記したX−Riteカラー反射濃度計によりそれぞれの画像濃度を測定することにより判断した。階調性再現性の点から、各パターン画像の濃度範囲は以下の範囲であることが好ましく、この観点から評価を行った。
パターン1:0.10〜0.15
パターン2:0.15〜0.20
パターン3:0.20〜0.30
パターン4:0.25〜0.40
パターン5:0.55〜0.70
パターン6:0.65〜0.80
パターン7:0.75〜0.90
パターン8:1.40以上
判断基準は、以下の通りである。
A:非常に良好(すべてのパターン画像が上記の濃度範囲を満足する。)
B:良好(1つのパターン画像が上記の濃度範囲を外れる。)
C:普通(2つ又は3つのパターン画像が上記の濃度範囲を外れる。)
D:悪い(4つ以上のパターン画像が上記の濃度範囲を外れる。)
(10)耐久使用後の中抜け
耐久後の中抜けについては、常温常湿環境下での画像出力が終了した後、カラー複写機用普通紙(80g/m2、キヤノン製)を転写材として、図3aに示した「驚」文字パターン画像を出力し、「驚」文字パターンの中抜け(図3bの状態)を目視で判断し、以下の評価基準に基づいて評価した。
A:非常に良好(ほとんど発生せず)
B:良好(軽微)
C:普通(多少発生)
D:悪い(かなり発生)
<実施例2〜14>
現像剤1の代わりに現像剤2〜14をそれぞれ使用した以外は、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表4に示す。
<比較例1〜8>
現像剤1の代わりに現像剤15〜22をそれぞれ使用した以外は、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表4に示す。