JP4454069B2 - 慢性肝炎抑制剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アキノワスレグサの抽出物を有効成分として含有する慢性肝炎抑制剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
肝臓障害のうち急性肝障害についてはある程度研究も進み種々の治療が行われているが、慢性肝障害については原因等、不明な点が多く効果的な治療方法は確立されていない。この慢性肝障害は免疫系を介する肝障害であると考えられている。
【0003】
このような慢性肝障害に対しては漢方薬を用いた治療が行われている。この漢方療法においては、大柴胡湯、小柴胡湯、柴胡桂枝湯、柴胡桂姜湯、四逆散等が用いられている(「一般用漢方処方(漢方210処方)」日本製薬団体連合会漢方専門委員会(1975)、「漢方概論」藤平健、小倉重成著、創元社(1979)」)。これらの漢方薬に含まれている生薬の有効成分については不明な点が多いが、例えば三七人参については、その成分に肝保護作用が認められている(特願平8−46154)。また、これらの生薬は、副作用が少ないと言うメリットが知られている。
【0004】
しかし、これらの生薬は、海外に原料を依存するものが多いため入手が困難であり、且つ野生のものを採取するものもあり作用が一定ではない(「生薬学第4版」北川勲ら著(廣川書店)pp384−387、1992)、「漢方薬の評価と開発技術」東京生薬研究会編((株)シーエムシー)pp353−354(1983))という問題がある。すなわち、漢方薬は一般的に高価であり、日常的な摂取が困難であるというデメリットがある。
【0005】
また、野菜を原料に、肝障害抑制作用を有する有効成分の抽出も試みられている。野菜では、ニンニク(Kagawa, K. et al. Japan. J. Pharmacol.,Vol. 42, p.19-26(1986), Nakagawa, S. et al. Hiroshima J. Med. Sci., Vol. 34, p.303-309(1985))、人参(Bishayee, A. et al. J. Ethnopharmacl., Vol.47, p.69-74(1995)、オオヒジキ(САРТИКОВ, А.С.et al. Khim. Farm. Zh., Vol. 24, p.38-40(1990))が急性肝障害抑制効果を示す事が知られているが、慢性肝障害抑制効果を示すものは知られていなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、安全かつ調製が容易な慢性肝炎抑制剤を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するため精鋭探索したところ、アキノワスレグサに優れた慢性肝炎抑制作用があること見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、アキノワスレグサの抽出物を有効成分として含有する慢性肝炎抑制剤及びこの慢性肝炎抑制剤を含有する慢性肝炎用の医薬品組成物である。
【0008】
また、本発明においてアキノワスレグサから慢性肝炎抑制作用を示す有効成分を抽出する溶媒としては、水及び/または水溶性の極性有機溶媒を用いるのが好ましい。また、本発明の有効成分は、アキノワスレグサから非水溶性の有機溶媒を用いて抽出されたものを除いた後の残渣から水及び/または水溶性の極性有機溶媒を用いて抽出するのが好ましい。
【0009】
更に、水溶性の極性有機溶媒の中では、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール,i−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、アセトンから選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて用いるのが好ましい。更に、本発明の有効成分は、水及び/またはメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、t−ブチルアルコールから選ばれる1種又は2種以上を用いて抽出されたものから、更にn−ブチルアルコール,i−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコールから選ばれる1種又は2種以上を用いて抽出するのが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
<1>本発明の慢性肝炎抑制剤
(1)アキノワスレグサの抽出物
本発明の慢性肝炎抑制剤は、アキノワスレグサの抽出物を有効成分として含有する。本発明において用いるアキノワスレグサはユリ科キスゲ属に属する植物である。本発明ではアキノワスレグサの茎、葉、根等の植物組織のいずれの部分を使用しても良いが、特に、本発明の慢性肝炎抑制作用を示す有効成分は茎、葉の部分に多く含まれているため、これらの組織を用いることが好ましい。
【0011】
上記アキノワスレグサは慢性肝炎抑制作用を有する成分を含んでおり、粉砕した茎、葉の組織をそのまま用いることも可能であるが、抽出により前記有効成分を含む抽出物を取り出して、本発明の慢性肝炎抑制剤の有効成分として用いることが好ましい。本発明において抽出物とは、このような粉砕物及び抽出物、又はこれらの濃縮物のいずれでもよく、またこれらの混合物でもよい。
【0012】
アキノワスレグサの抽出処理は、連続式、バッチ式等の方法で、常法により冷浸または温浸にて任意の時間行う。例えば、アキノワスレグサは乾燥粉末を、細かく粉砕し、抽出溶媒に、室温で1〜48時間、浸漬及び又は振とうして行う。その後、抽出液から抽出残渣を除いて、減圧または限外濾過を行い抽出物を濃縮する。さらに、必要に応じて溶媒を留去して乾固するかまたは凍結乾燥する。
【0013】
このような抽出に用いる溶媒としては、水や各種の有機溶媒が挙げられるが、水もしくは水溶性の極性有機溶媒またはこれらの混合物が好ましい。水溶性の極性有機溶媒とは、水とある範囲以上で混ざる極性有機溶媒、すなわち、20℃で水に対する溶解度が10重量%以上である極性有機溶媒をいう。例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール,i−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、アセトン等が好ましくは挙げられる。
【0014】
上記のように、本発明の抽出物はアキノワスレグサから水もしくは水溶性の極性有機溶媒またはこれらの混合物により直接抽出することができるが、この抽出操作の前に、非水溶性の有機溶媒により抽出される不純物を取り除く処理を行うのが好ましい。非水溶性の有機溶媒とは、水とほとんど混ざらない溶媒、すなわち、20℃で水に対する溶解度が10重量%未満である溶媒をいう。例えば、ベンゼン、ヘキサン、四塩化炭素、クロロホルム、各種のエーテル、各種のエステル等が挙げられる。非水溶性の有機溶媒であれば非極性の溶媒、極性の溶媒のいずれでも用いることができる。これらの中では、ヘキサン等の非極性の有機溶媒と、酢酸エチル等の極性の有機溶媒の2種類以上の溶媒を用いて、それぞれの溶媒に溶解する不純物を取り除く処理を行うのが好ましい。
【0015】
したがって、好ましい態様としては、アキノワスレグサの乾燥粉末から非水溶性の有機溶媒により抽出される不純物を取り除く処理をし、次に、水溶性の極性有機溶媒を用いて本願発明の有効成分を抽出するのが好ましい。
【0016】
以下 本発明の有効成分の抽出例を以下に例示するが、本発明はこの抽出例に限定されるものではない。まず、アキノワスレグサを凍結乾燥し、この乾燥粉末にヘキサン等の非水溶性の非極性有機溶媒を加え、この溶媒に可溶性の成分を取り除く。この際に用いる非水溶性の非極性有機溶媒としは、n−ヘキサン、シクロヘキサン等が好ましくは例示できる。アキノワスレグサに加える溶媒の量は、乾燥粉末1g当たり、1〜200mlであるのが好ましく、10〜50mlであるのが更に好ましい。操作はアキノワスレグサにこの溶媒を加えた後、スターラー等でよく攪拌し、非極性の有機溶媒に可溶性の画分を抽出する。この操作は、通常2回〜5回繰り返すのが好ましい。
【0017】
次に、上記の操作で残渣として残った部分に、酢酸エチル等の非水溶性の極性有機溶媒を加え、この溶媒に可溶性の成分を取り除く。この際に用いる非水溶性の極性有機溶媒としては、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類が好ましくは例示できる。アキノワスレグサに加える溶媒の量は、乾燥粉末1g当たり、1〜200mlであるのが好ましく、10〜50mlであるのが更に好ましい。操作はアキノワスレグサにこの溶媒を加えた後、スターラー等でよく攪拌し、極性の有機溶媒に可溶性の画分を抽出する。この操作は、通常2回〜5回繰り返すのが好ましい。
【0018】
次に、上記の操作で残渣として残った部分に、アルコール等の水溶性の極性有機溶媒またはこれらと水の混合物を加え、本発明の有効成分を抽出する。水溶性の極性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール,i−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等が例示できる。これらの中では、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、t−ブチルアルコールまたはこれらと水との混合物を用いるのが好ましく、50〜90重量%のメタノールまたはエタノール水溶液を用いるのが特に好ましい。アキノワスレグサに加える溶媒の量は、乾燥粉末1g当たり、1〜200mlであるのが好ましく、10〜50mlであるのが更に好ましい。操作はアキノワスレグサにこの溶媒を加えた後、スターラー等でよく攪拌し、極性の有機溶媒に可溶性の画分を抽出する。この操作は、通常2回〜5回繰り返すのが好ましい。
【0019】
この抽出物は、慢性肝炎抑制剤としてそのまま用いることができるが、以下の処理により水に溶解する不純物を取り除く処理をするのが好ましい。この処理に用いる溶媒としては、水とある範囲でしか混ざらない水溶性の極性溶媒、すなわち、n−ブチルアルコール,i−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコールまたはこれらの混合物を用いるのが好ましい。抽出物に加える溶媒の量は、乾燥粉末1g当たり、1〜100mlであるのが好ましく、5〜20mlであるのが更に好ましい。操作は抽出物にブチルアルコールを加えた後、スターラー等でよく攪拌し、ブチルアルコールに可溶性の画分を抽出する。この操作は、通常3回〜7回繰り返すのが好ましい。
【0020】
このようにして得られた抽出物は、慢性肝炎抑制剤としてそのまま用いることができるが、濃縮して、溶媒を蒸発させることにより固形物として用いることが好ましい。濃縮は、常圧または減圧条件下で、通常に用いられる各種の濃縮方法を用いて行うことができる。
【0021】
(2)慢性肝炎抑制剤
本発明の慢性肝炎抑制剤は、上記のアキノワスレグサの抽出物を有効成分として含有す
るものである。また、これらの抽出物は、そのまま製剤とすることもできるし、また、各種基剤に配合して製剤としてもよい。配合量や基剤に種類は特に限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
【0022】
<2>本発明の慢性肝炎抑制剤を含有する組成物
本発明の組成物は、上記の慢性肝炎抑制剤を、常法にしたがって配合したものであり、例えば、食品、医薬品等が例示できる。本発明の医薬品の剤型は、特に限定されないが、一般に製剤上許容される1または2種類以上の担体、賦形剤、統合剤、防腐剤、安定剤、香味剤等と共に混合して、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、水薬、ドリンク剤等の内服剤型とすることが好ましい。このような製剤化は、通常、医薬の製造に用いられる方法にしたがって製剤化することができる。上記医薬品の投与量としては、疾患の種類、症状、患者の年齢、体重等に異なるが、成人1日当たり、アキノワスレグサの抽出物として、500mg〜5000mgを1回ないし数回に分けて経口投与するのが好ましい。
【0023】
食品に、上記の慢性肝炎抑制剤を用いる場合には、種々の食品に、食品として通常用いられている任意成分とともに、食品原料に抽出物を所要量配合することができる。この抽出物を配合する際に特に留意するすることはなく、通常の製造方法により加工製造することにより、健康食品、機能性食品を製造することができる。配合量は、食品の種類のより異なるが、食品の味を損なわず、且つ十分な慢性肝炎抑効果を得るためには、食品全量に対して、0.1〜10重量%の割合で配合するのが好ましい。
【0024】
【実施例】
以下実施例により、本発明を更に具体的に説明する。
【0025】
【実施例1】
<本発明の有効成分の抽出>
アキノワスレグサの茎、葉の部分を凍結乾燥し、乾燥粉末100gを得た。この乾燥粉末を、以下の図1に示す流れに従って分画し、後の評価に使用した。
【0026】
(a)ヘキサンによる不純物の除去
アキノワスレグサの茎の部分を凍結乾燥して得た乾燥粉末100gに2Lのn−ヘキサンを加え十分に攪拌後、残渣を取り除いた上清をヘキサン抽出液として得た。この操作を更に2回繰り返し、計3回の操作により、6000mlのヘキサン抽出液を得た。この抽出液をエバポレーターを用いて濃縮乾固させることにより、1.8gの固形物がヘキサン画分から得られた。
【0027】
(b)酢酸エチルによる不純物の除去
次に上記の操作(a)の残渣98.2gに酢酸エチル2Lを加え十分に攪拌後渣を取り除いた上清を酢酸エチル抽出液として得た。この操作を更に2回繰り返し、計3回の操作により、6000mlの酢酸エチル抽出液を得た。この抽出液をエバポレーターを用いて濃縮乾固させることにより、1.8gの固形物が酢酸エチル画分から得られた。
【0028】
(c)70%エタノールによる抽出
次に上記の操作(b)の残渣96.4gに70%エタノール2Lを加え十分に攪拌後、残渣を取り除いた上清を70%エタノール抽出液として得た。この操作を更に3回繰り返し、計4回の操作により、8000mlの70%エタノール抽出液を得た。この抽出液をエバポレーターを用いて濃縮乾固させることにより42.8gの固形物が70%エタノール画分から得られた。また、操作(c)により、53.6gのエタノール残渣が得られた。
【0029】
(d)ブチルアルコール(ブタノール)による抽出
次に上記の操作(c)による濃縮乾固物42.8gを500mlの蒸留水に溶解させた。そして、この溶液に500mlのn−ブタノールを加え十分に攪拌後、分液ロートを用いた向流分配によりブタノール層を抽出した。残った水層には、更に500mlのn−ブチルアルコールを加え十分に攪拌後、n−ブチルアルコールによる抽出を行った。この抽出を更に3回繰り返し、計5回の抽出操作により、2500mlのブチルアルコール抽出液を得た。このブチルアルコール抽出液をエバポレーターを用いて濃縮乾固させることにより10.0gの固形物がブチルアルコール画分から得られた。
【0030】
また、操作(d)で水層部分の溶液を凍結乾燥装置を用いて濃縮乾固させることにより32.8gの固形物が水溶性画分から得られた。上記の操作による分画により得られた各分画への分配率(重量%)を表1に示す。ここで、分配率とは、各分画から得られた固形物の重量を、分画開始前の重量(100g)で除した値に100を乗じて%表示したものである。
【0031】
【表1】
【0032】
【実施例2】
<慢性肝炎抑制剤の評価>
慢性肝炎に対する肝保護作用は、ラットを用いたD−ガラクトサミン誘導性の肝障害モデルにより評価した。このD−ガラクトサミン誘導性の肝障害は、免疫系を介しての肝障害作用が示唆されるため、慢性肝炎のモデルとされており、臨床試験での評価結果と相関性が高い。
【0033】
評価には、5週齢の雄性ウィスター系ラットを用いた。4〜5日間の予備飼育の後、試験飼料を10日間摂取させた。試験に用いた飼料の基本組成は以下の表2の通りである。また、各分画からの抽出物の飼料への添加は、表3の示した通りである。すなわち、飼料1kg当たり、各添加物とコーンスターチの合計量を401gに維持しつつ、ヘキサン画分、酢酸エチル画分、ブチルアルコール画分および水溶性画分においては、各画分の抽出物をそれぞれ1.0g、1.1g、5.8g及び19.2gの比率で添加物として配合して飼料を調整した。
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
上記の試験飼料を10日間摂取させた後に、肝障害を誘発するD−ガラクトサミンを350mg/kg腹膜内投与した。そして、その22時間後に被検ラットを屠殺し、採血及び肝臓摘出を行った。偽薬投与群には、同容量の生理食塩水を投与した。
【0037】
この採血した血液を用いて、肝細胞の脱落により血中濃度が上昇することが知られている酵素、すなわち、ALT:アラニンアミノトランスフェラーゼ(GPT)活性と、AST:アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(GOT)活性を市販の測定キット(和光純薬)により測定した。そして、この酵素活性の増減を肝障害の指標とした。また、摘出した肝臓の重量も測定した。酵素活性の増減の結果を図2および3にそれぞれ示す。
【0038】
図2および3に示したとおり、偽処理群(D−ガラクトサミン非投与群)に比べて、対照群(D−ガラクトサミン投与群)では顕著に、ALT活性とAST活性の両方が上昇しており、肝細胞の壊死がおきていることが示唆された。一方、アキノワスレグサの抽出画分を添加した飼料で飼育した群の中では、ブチルアルコール抽出画分を添加物として加えた群で、明かに肝障害抑制作用が観察された。なお、分散分析の後、Duncan法による検定を行ったところ、ブチルアルコール抽出画分を添加物として加えた群は、他のすべてのD−ガラクトサミン投与群に対して5%以下の危険率で統計的に有意差があることを示した。なお、図2および3中に示してあるアルファベット(a,b,c)は、共通するアルファベットを有しない群間で、危険率5%未満で有意差があることを示す。
【0039】
また、摘出された肝臓重量の測定結果を、各群7匹のラットの平均値として、標準偏差とともに表4に示す。表4に示すように、D−ガラクトサミン投与群では、非投与群と比較してすべての群で肝臓重量の減少が観察された。この減少はD−ガラクトサミン処理により肝臓の壊死が引き起こされたためであると示唆される。ブチルアルコール抽出画分を添加物として加えた群では、肝臓重量の減少が他のD−ガラクトサミン投与群に比べて少なく、このブチルアルコール抽出画分は肝臓の壊死に対しても抑制作用を示した。
【0040】
【表4】
【0041】
【比較例1】
<他の肝障害抑制作用を有する植物との比較>
これまでに四塩化炭素誘導性の肝障害に対して抑制作用を有すると報告されているオカヒジキ、ニンジン、ニンニクについて、アキノワスレグサとの比較試験を行った。いずれの植物とも、可食部分の凍結乾燥粉末をサンプルとした。
慢性肝炎に対する肝保護作用は、ラットを用いたD−ガラクトサミン誘導性の肝障害モデルにより評価した。試験に用いた飼料の基本組成は前出の表2の通りである。また、各植物の乾燥粉末の飼料への添加は、いずれも30g/kgとし、粉末とコーンスターチの含有量を401g(サンプル30g+コーンスターチ371g)とした。結果を、各群7匹のラットの平均値として、標準偏差とともに以下の表5に示す。
【0042】
【表5】
【0043】
オカヒジキ、ニンジンを、アキノワスレグサと同量添加しても、有意な肝保護作用はみとめられなかった。ニンニクを添加した群は、対照群と比較して、有意にD−ガラクトサミン誘導性の肝障害を抑制したが、アキノワスレグサを添加した群よりもその抑制の程度は低かった。
【0044】
【発明の効果】
本発明のアキノワスレグサの抽出物を有効成分として含有する慢性肝炎抑制剤は、優れ
た慢性肝炎の抑制効果を有する。また、本発明の慢性肝炎抑制剤は植物由来であるため安全であり、且つその抽出が容易であるため、処方が容易な、該慢性肝炎抑制剤を含む慢性肝炎用の医薬品組成物を提供することができる。
【0045】
【図面の簡単な説明】
【図1】 アキノワスレグサから慢性肝炎抑制剤の有効成分を抽出する一例を示す図である。
【図2】 薬物投与22時間後のALT(GPT)活性値を示す図である。
【図3】 薬物投与22時間後のAST(GOT)活性値を示す図である。
Claims (6)
- アキノワスレグサの抽出物を有効成分として含有する慢性肝炎抑制剤であって、
前記抽出物が、水及び/またはメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、アセトンから選ばれる1種又は2種以上の水溶性の極性有機溶媒を用いて抽出されたものであることを特徴とする慢性肝炎抑制剤。 - 前記抽出物が、アキノワスレグサから非水溶性の有機溶媒を用いて抽出されたものを除いた後の残渣から水及び/または前記水溶性の極性有機溶媒を用いて抽出されたものであることを特徴とする請求項1に記載の慢性肝炎抑制剤。
- 前記非水溶性の有機溶媒がn−ヘキサン、酢酸エチルまたはこれらの混合物である請求項1又は2に記載の慢性肝炎抑制剤。
- 前記抽出物が、水及び/または前記水溶性の極性有機溶媒を用いて抽出されたものから、更にn−ブチルアルコール,i−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコールから選ばれる1種又は2種以上を用いて抽出されたものであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の慢性肝炎抑制剤。
- 前記抽出物が、アキノワスレグサから非水溶性の有機溶媒を用いて抽出されたものを除いた後の残渣から水及び/またはメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、t−ブチルアルコールから選ばれる1種または2種以上を用いて抽出されたものから、更にn−ブチルアルコール,i−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコールから選ばれる1種又は2種以上を用いて抽出されたものであることを特徴とする請求項1に記載の慢性肝炎抑制剤。
- 前記請求項1〜5の何れか1項に記載の慢性肝炎抑制剤を含有する慢性肝炎用の医薬品組成物。
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